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LL2:携帯電話

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欧州環境庁(EEA)

『早期警告からの遅すぎる教訓:科学、予防原則、革新』

要約

目次 謝辞 ---5 序文 ---6 1 イントロダクション ---9 パート A 健康への害からの教訓 2 予防原則と誤った警告—学んだ教訓---12 ステフェン・フォス・ハンセン、ジョエル・A・ティッカー 3 ガソリンの中の鉛は「精神状態を壊す」---13 ハーバート・ニードルマン、ディビッド・ギー 4 飲み込むには多すぎる:主要な水の PCS 汚染---14 ディビッド・オゾノフ 5 水俣病:民主主義と正義のための挑戦---15 頼藤貴志、津田敏秀、原田正純 6 ベリリウムの「公的関連問題」---16 ディビッド・マイケル、セレステ・モンフォートン 7 タバコ産業の調査の不正操作---17 リサ・A・ベロ 8 塩化ビニル:秘密主義の伝説---18 モーランド・ソフリッティ、ジェニファー・ベス・サス、バリー・キャッス ルマン、ディビッド・ギー 9 殺虫剤 DBCP と男性の不妊---19 エウラ・ビンガム、セレステ・モンフォートン 10 ビスフェノール A:論争する科学、相違する安全評価---20 アンドレアス・ギエス、アナ・M・ソートー 11DDT:沈黙の春から 50 年---21 ヘンク・ボウマン、リアナ・ボアマン、ヘンク・ファン・デン・ベルク、ヘ ンリック・キリーン パート B 生態系から新たに現れた教訓

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12 促進する殺虫剤アンチファウランツ:歴史は繰り返すのか? アンドリュー・R・G・ライス、ジェームス・W・リードマン 13 水環境のエストロゲン製剤---23 スーザン・ジョブリング、リチャード・オーウェン 14 気候変動:科学と予防原則---24 ハートマス・グラッスル、バート・メッツ 15 水害:早期警告システムについての教訓---25 ズビグニュ・W・クンゼヴァイツ 16 種子粉衣体系殺虫剤とミツバチ---26 ローラ・マキシム、ジェローン・ファン・デル・スルージェス 17.生態系と変化の力学を扱う---27 ジャクリーン・マックグレイド、しビリー・ファン・デン・ホーへ パート C 新しく現れた問題 18 チェルノブイリからの遅すぎる教訓、フクシマからの早期警告---28 ポール・ドーフマン、アレクサンドラ・フシック、ステファン・トーマス 19 革新への切望:GM 作物から農業生態学へ---29 ディビッド・クィスト、ジャック・A・ハイネマン、アン・I ・ミール、イ ウ リー・アスラクセン、シルヴィオ・ファントウィック 20 侵略的外来種:増大しているのに放置されている脅威?---30 サラ・ブルーネル、エラディオ・フェルナンデス-ガリアーノ、ピエロ・ジェ ノベッシ、ベルモン・H・ヘイウッド、クリストフ・クウェッファー、ディ ビ ッド・M・リチャードソン 21 携帯電話使用と脳腫瘍のリスク:早期警告、早期行動?---31 レナート・ハーデル、マイケル・カールベルグ、ディビッド・ギー 22 ナノテクノロジー 早期警告からの早期教訓---32 ステフェン・フォス・ハンセン、アンドリュー・メイナード、アンダース・ バウン、ジョエル・A・ティックナー、ディアナ・M・ボウマン パート D コストと正義と革新 23 何もしないことの理解と経理---33 ミカエル・スコウ・アンデルセン、ディビッド・ウウェイン・クラブ 24 早期警告者と後の被害者の保護---34 カール・クレイナー 25 なぜ企業は早期警告への予防に反応しなかったのか?---35

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マーク・レ・メネストレルとジュリアン・ロード パート E 科学と管理の影響 26 予防的意思決定のための科学---36 フィリプ・グラジーン 27 多い予防か、少ない予防か?---37 ディビッド・ギー 28 結論---28 報告書のフル・バージョンは下記で見ることができる。 http://www.eea.europe.eu/publications/late-lessons-2

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21 携帯電話使用と脳腫瘍のリスク:早期警告、早期行動? レナート・ハーデル、マイケル・カールベルグ、デヴィッド・ギー1 2011 年、世界保健機関の国際がん研究機関(IARC)は、携帯電話と、同様 の非電離放射線の電磁界(EMFs)を発生させるその他の機器からの電磁波を、 グループ 2B、つまりヒトに対して発がん性の「可能性」がある、と分類した。 9 年前に IARC は、頭上の電力送電線からの磁場を、同じ 2B に分類している。 携帯電話に関する IARC の決定は、携帯電話使用と脳腫瘍の潜在的な関連性 に関する、ヒトを対象にした 2 組の症例対象研究に主に基づいている。それは、 IARC インターフォーン研究とスウェーデンのハーデル・グループの研究だ。 どちらの研究も、相補性があり、概して互いに支持的な結果を提示した。本章 は、2011 年の IARC 決定に至る議論とレビューだけでなく、二つのグループ— そして異なる結論を導いた他のグループの―研究の報告を述べる。また、様々 なグループが、権威ある IARC 評価を大きく相違して、どのように解釈したか も記述する。 携帯電話と脳腫瘍について、今までにいくつかのメタ・アナリシスと論評が これまでに発表されている。それらは、この問題について疫学的に行なってい る問題、これまでに発表された主な研究の方法論的な限界、そしてそれらの結 果の解釈の難しさについて述べている。 脳腫瘍発症率の国レベルのデータは、症例対象研究で観察された携帯電話と 脳腫瘍の関連性を、適格または不適格にするために使うことができるだろう、 と提唱されてきた。しかし、方法論的な欠点に加えて、全体的な発症率に影響 する他の因子があるかもしれない。例えば、記述的な研究でわかっていない、 脳腫瘍の他のリスク因子への被曝の変化などだ。がんの発症は、病気の開始、 進行、促進によって決まる。無線周波数電磁界の発がんメカニズムは、はっき りしていないので、脳腫瘍発症に関する記述的データは有用性が限られている という見解を支持する。 この章は、多様な研究の検討と IARC 発がん分類の考慮における携帯電話産業 の無気力さを、そして潜在的な健康リスクについて、豊富で一貫した情報を公 衆に提供することにメディアが失敗したことを指摘する。IARC 発がん性分類 も、電磁波の広範な発生源から公衆衛生を守るという政府の責任の認識に、大 きな影響を与えなかったことも示す。 携帯電話通信の利便性は多数あるが、そのような利便性は、危害が広範囲に

1 本章は Cnacer-och Allergifonden and Cancerhjälpen に資金提供された。ハ ーデル・グループのさまざまな発表で同僚による寄与は謝辞された。

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広まる可能性を考慮する必要がある。今、頭部への被曝を減らすための予防(原 則)的行動は、存在するかもしれない脳腫瘍のあらゆるリスクの大きさと深刻 さを限定的なものにするだろう。被曝削減は、脳腫瘍の症例研究で検討されて いない、その他の潜在的な害を減らすことにも役立つだろう。 神経膠腫と聴神経腫を発症した無線電話を長時間使うヘビーユーザーの労働 者は補償されなくてはいけない、とする証拠が増えている。世界初の判決は、 2012 年 10 月 12 日に確定した。イタリア最高裁判所は、労働者のための保険団 体(INAIL)が、無線電話を 12 年間使って脳の神経腫になった会社員に補償を 与えなくてはいけない、とした前判決に対する上告を棄却した。 21.1 イントロダクション 2011 年 5 月 31 日、世界保健機関の国際がん研究機関(IARC)は、携帯電話 と、それと同様の非電離放射線の電磁界(EMFs)を発生させる、その他の機器 からの放射線電磁界をグループ 2B、つまりヒトに対して発がん性の「可能性」 がある、と分類した。9 年前に IARC は、頭上の電力送電線からの磁場も、2B に分類している。 携帯電話に関する IARC 決定は、主に 2 組のヒトを対象にした症例対照研究 に基づいている。それは、IARC インターフォン[ Interphone] 研究とスウェーデ ンのハーデル[Hardell]・グループの研究だ。どちらの研究も相補性があるが、 だいたい相互に支持する結果になった。 だが、携帯電話で脳腫瘍になる可能性に関するこれらの症例研究は、なぜ始 まったのか? 21.2 ハーデル・グループ研究̶1999 2011 年 スウェーデンはイスラエルと並んで、世界で最初に無線電話通信技術を広く 採用した国の一つだ。アナログ式電話(NMT、北欧携帯電話システム)は 450 メガヘルツ(MHz)と 900 MHz の電磁界の両方を使って 1980 年代初めに導入 された。NMT450 はスウェーデンで 1981 年から運用されたが、2007 年 12 月 31 日に停止され、一方、NMT900 は 1986 2000 年まで運用された。 二つの周波数帯、900 MHz と 1800 MHz を使うデジタル式システム(GSM、 汎ヨーロッパ・デジタル移動通信システム)は、1991 年に運用が始まり、現在、 市場で優位を占めている。1900/2000 MHz の RF 電磁界を使う第三世代携帯電 話、3G または UMTS(万国移動通信システム)は、数年前から世界的に導入さ れ、スウェーデンは 2003 年から利用されてきた。目下、800/2600MHz で運用 する第四世代、4G と、電話中継無線通信(TETRA、380 400MHz)がスウェ ーデンと他のヨーロッパ諸国で導入されているところだ。 デスクトップ・コードレス電話(例えば強化型デジタル式コードレス電話、

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DECT)は、スウェーデンでは 1988 年から利用されていた。最初はアナログ式 800 900MHz を使っていたが、1990 年代初めからデジタル式 1900MHz システ ムが利用されるようになった。 現在、スウェーデンでは携帯電話が固定電話よりも利用されている。 (http://www.pts.se/upload/Rapporter/Tele/2011/sv-telemarknad-halvar-2011-pts-er-2 011-21.pdf)。 それらの放射線電磁界への被曝と使用の実際の増加は、1990 年代末からあっ た。無線電話は無線周波数(RF)電磁界を発生させ、片手で持てるタイプの電 話を使っている間、脳を主な標的器官にする(Cardis 等、2008)。 著者らの一人(レナート・ハーデル)は、送電線からの超低周波(ELF)電磁界へ の被曝による発がんリスクを評価したスウェーデン委員会において、彼の積極 的参加によって始められた、この研究分野に関心を持った。その結論は、送電 線からの距離に従って小児白血病のリスクが増える、というものだった(Hardell 等,1995)。2002 年に IARC は、送電線などからの ELF 電界と磁界はヒトに対す る発がん性の可能性があるグループ 2B 発がん性物質だ、と結論を出した (IARC,2002)。 文献のレビューによると、電子機器産業で脳腫瘍のリスク増加が見られるよ うだった(Hardell 等、1995)。脳腫瘍のリスク増加を、症例対照研究でさらに 調査することが決定された。しかし当時、携帯電話産業に対するアメリカでの 裁判にも、いくつかのメディアが注目していた。 それは、携帯電話を繰り返し使用したために、ある女性は命に関わる脳腫瘍 になったと主張していた。ロサンゼルス・タイムス紙の見出しは「過剰な携帯 電話電磁波が有害性の疑問を提起する裁判」だった(Carlo と Scharm、2001)。 そこで、下記で簡潔に述べた症例対照研究につながる 4 件の研究の最初で、携 帯電話に関する質問を加えることが決まった。 これは、長期使用のデータがいくつかある他の著名な発表論文やインターフ ォン研究、RF とがんの証拠に関する IARC 評価、そして関連する反応と議論に よって追求された。 その目的は、この研究分野の全体的な論評をすることではないし、無線電話 の使用に関する脳腫瘍リスクのメタ分析を伴う他の発表論文で見られがちな RF 被曝の潜在的な他の影響を扱うことでもない(Hardell 等、2006d;2009; Myung 等、2009;Cardis と Sadezki,2011;Levis 等 2011;IARC モノグラフ,印刷 中)。

21.3 携帯電話使用と脳腫瘍に関する最初のハーデル・グループ研究—1999 年 1999 年、スウェーデンのハーデル・グループは、脳腫瘍と携帯電話の使用に 関する彼らの最初の症例対象研究の結果を発表した(Hardell 等、1999a)。合計

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で、参入基準を満たした症例群の 209 人(90%)と対照群の 425 人(91%)が、 郵送アンケートに回答した。全体的に、携帯電話の使用と脳腫瘍の関連性はみ られなかった。 アナログ式携帯電話(NMT)の使用と 10 年以上の潜伏期間でわずかなリスク 増加(しかし、統計学的に有意ではない)が見られた。オッズ比(OR)は 1.20 倍 (95%信頼区間:CI=0.56-2.59)だった。脳の側頭葉2、または後頭葉、側頭頂 葉部にある腫瘍のリスクは、同側3被曝で増えた。OR は 2.42 倍(95%CI= 0.97-6.05)だった。(Hardell 等、1999a、2001)。 しかし、全ての結果は、少人数の被曝対象者と組織病理学的に異なる脳腫瘍 のタイプに基づいていたので、確固とした結論を導くことはできなかった。し かも、この最初の研究ではコードレス電話の使用は含まれなかった。 2001 年にある学術誌の編集部の著者等は、ハーデル等の最初の研究の後で発 表されたアメリカの「陰性」の研究(Inskip 等,2001)の論評で、「 携帯電話の 使用は脳腫瘍のリスクを検出可能な程度に増やさなかった」、そして「携帯電話 の使用は脳腫瘍を増やすという人騒がせな報告で高まった不安を、この研究は 鎮めた」と述べた(Trichopoulos と Adami, 2001)。この主張は、科学的な弁護を 遥かに越えている。例えば、脳腫瘍の患者 782 人の間で 22 人だけが 5 年以上携 帯電話を使っていて、長い潜伏期間のデータは提示されなかった。編集部は、 ありがちな間違った考えを示した。それは、データが仮定を実際に支持しない 場合、「陽性ではない」研究がしばしば、「陰性」研究だと仮定されることだ。 21.4 第二、第三のハーデル・グル−プ研究—2002 2006 年 ハーデル・グループによるこの最初の研究は、携帯電話の使用と脳腫瘍の関 連をいくぶん支持した。しかしその結果は、とくに腫瘍のタイプと長期間の使 用について数が少なかった。そのため最初の研究の後、1997 2003 年の間に診 断された症例を含む二つのより大規模な研究を続けた。第二の研究は、1997 年 1 月 1 日から 2000 年 6 月 30 日までに、第三の研究は 2000 年 7 月 1 日から 2003 年 12 月 31 日までに診断された症例を網羅した。その方法は同じで、どちらも 同一の質問票を使った。これらの二つの研究期間の結果は、個別に発表された が(Hardell 等、2002、2005,2006a)、1997 2003 年の全体の研究期間について、 ここで貯めた結果が提示された(Hardell 等、2006b、2006c,Hardell と Carlberg,2009)。詳細は他の出版物で見ることができる。 2 110 件の電話モデルの論評は、電磁波への被曝は一般的に、耳に近い脳の一部であ る側頭葉で高いことを示す(Cardis 等、2008)。 3 つまり、腫瘍は携帯電話が普段使われる頭の側で現れた。

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要約すれば、全ての症例はがんの登録について報告され、腫瘍診断の病理組 織学的な確証があった。診断時に 20 80 歳の男性と女性の両方が含まれた。合 致した対照群は、スウェーデン人口登録から確認された。研究は、携帯電話と コードレス(DECT)電話(無線電話)の使用を対象にした。DECT は、他のほ とんどの研究が無視した被曝だ6。他の質問、例えば職業被曝に関するものも尋 ねられた。無線電話の使用は、自己管理式質問票で評価された。必要があれば、 電話以外の情報も補足された。 携帯電話・コードレス電話で通話する間に、たいてい使われていた耳は、区 4 Bradford Hill 卿の古典的な疫学論文「環境と病気:関連性か因果関係か?」(王立医学会会 報、1965 年)を参照。彼は統計学的有意性を過大評価しないよう警告した。データの中にあ る「影を捕まえて本質を失う」よう、人々を導くことがしばしばあるからだ。予防(原則)的 意思決定の科学について26 章も参照。

5 Stein Y., Levy-Nativ, O., Richter, E.D., 「非電離放射線電磁界と他の作因に対する職業被曝

を伴うがん患者の歩哨症例シリーズ」、Eur. J.Oncol.,2011(16/1)21-54.1945 年に日本へ投下さ れた原爆も脳腫瘍を起こした確証を得るために、この論文は約50 年かけた。それまでのデー タは明確でなく十分な強さがなかった(Shibata, Y.等. 「長崎原爆生存者の間の頭蓋内髄膜種」、 Lancet,1994、(344)1 770)。 6 インターフォン研究(セクション 20.9 参照)は、少なくとも数か国でコードレス電話に関す る質問をいくつかしたが、その情報が適切に分析され、発表されることは決してなかった。 コラム 21.1 ヒトを対象にした研究でがんのリスクを確認する概念と手段 OR:オッズ比。オッズ比は、関連リスクの評価だ。因子(例えば携帯電話) に曝された人が、曝されていない人に比べてある結果(例えば脳腫瘍)に、 どのくらいなりやすいかを示す。OR=1 ならリスクがないことを、OR<1 は リスク減少を、OR>1 はリスクが高いことを示す。例えば OR が 1.5 だと、 被曝した人はそうでない人より、病気になるリスクが 1.5 倍高いことを示す。 SIR:標準化罹患比。SIR は、参照集団(例えば一般の集団)で観察されたのと 同じ率になるように適用された予測された症例数と、特定の集団で観察され た症例数を比較すること。SIR が 1 だとリスクがないことを示し、SIR<1 は リスク減少を、SIR>1 はリスク増加を示す。 CI:信頼区間。信頼区間は、統計学的評価の不確かさを示す。OR と SIR の場 合、対応する CI の幅が 1.0 を含まないなら、その結果は統計学的に有意だと 考えられる。通常 95%の信頼区間は、95%の統計学的信頼性で、OR/SIR の 本当の幅を示して報告されている。「統計学的有意性」がないことは、リスク を検出するための研究の出力に対して、リスクの証拠の強度が弱ことを示す 指標にたいていなる4 潜伏期間。最初の被曝から病気だと確認されるまでの期間。がん、とくに白 血病等の血液のがんに比べて脳腫瘍等の充実性腫瘍のがんの場合、潜伏期間 は被曝時の年齢や被曝の種類、強度などに従って平均で 15 45 年になるだろ う5。これは、がんのリスクが明らかに証明される前に研究される脳腫瘍につ いて、全てのがんの研究は、少なくとも平均的な潜伏期間と同じくらい長く なければいけないことを示す。

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別するための質問をして評価した。片側の耳で 50%以上使うか、それとも両側 とも同等かだ。この情報は補足的な電話での質問の間に確認された。さらに、 無線電話を使った全員が、通話中に使った耳と、主に使った頭の側の範囲をも う一度明記するよう求める手紙を後に受け取った。これらのデータを評価する ために、この三つの方法を使う結果について、非常に良く同意された。 それとは独立して、コンピューター断層撮影(CT)や磁気共鳴映像法(MRI) 等 の医学的記録を使って、腫瘍の位置を明らかにした。携帯電話やコードレス電 話の使用は、腫瘍のある側について、同側(通話時間の 50%以上)または同側・ 反対側で同等の時間、反対側(通話時間の 50%以下)で明確にされた。数年以 上の累積使用時間の計算は、使用した最初の年と最後の年(期間)と、その使 用期間の一日あたりの平均的な使用時間の情報に基づいた。外部アンテナでの 車内での使用は、ハンズフリー機器の使用と同様に無視された。最も短い潜伏 期間として 1 年が採用された。従って、異なる種類の電話について累積使用時 間と潜伏期間が確認された。 21.5 第四のハーデル・グループ研究—2010 年 旧スウェーデン放射線防護協会(現在のスウェーデン放射線安全庁)に委託 された論評で、死亡した症例の除外は、ハーデル・グループ研究の偏りの原因 だと示唆された(Boice と McLaughlin,2002)。この示唆の科学的根拠は示されな かった。 その批評への反応として、第四の研究が行われた。これは 1997 2003 年の症 例対象研究に参入する前に亡くなった悪性腫瘍の症例を含む。これらの症例は、 主に星状膠細胞腫の悪精度Ⅳ度の腫瘍で、予後の乏しい患者を表した。対照は スウェーデン死亡記録から選ばれた。 この研究には二つの対照群が含まれた。一つは脳腫瘍以外の他のタイプの悪 性腫瘍で死亡した対照群に一致し、もう一つはがん以外の病気で死亡した対照 群だ。症例と対照の両方について、スウェーデン国税庁のスウェーデン人口登 録を通じて確認された。本研究は、悪性腫瘍で死亡した 464 人の症例群と 464 人の対照群、他の原因で死亡した 463 人の対照群を網羅する。過去の研究と同 様の質問票が使用され、それぞれの死亡症例群と対照群の近親者へ送られた質 問表で、被曝が評価された。 返信は、症例で 346(75%)、がん対照群で 343(74%)、他の死因の対照群か ら 276(60%)通得られた。携帯電話の使用はリスクを増やし、10 年以上の潜 伏期間で最も高く、オッズ比は 2.4 倍(95%CI=1.4-4.1)になった。リスクは生 涯使用時間の累積とともに増加し、2000 時間以上のグループで OR3.4 倍 (95%CI=1.6-7.1)と最も高くなった。コードレス電話の使用について明確な関 連性は見られなかったが、累積使用 2000 時間以上のグループで 1.7 倍のオッズ

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比(95%CI=0.8-3.4)が見られた。この調査は、携帯電話と悪性脳腫瘍の関連 性についての過去の結果を裏付けた(Hardell 等、2010)。ボイス[Boice]とマ クロウグリン[McLaughlin]による批判は科学的根拠が無い、と結論が下され た。 21.6 ハーデル・グループ研究に対するスウェーデンの反応 携帯電話使用と脳腫瘍のリスクに関する最初の発表(Hardell ら、1999a)は、 学術誌へのレター論文で素早くフォローされた(Ahlbom と Feychting, 1999)。 彼らは、症例の選択的バイアスが、ハーデル研究で高い回答率を作り出したか もしれない、と示唆した。しかし、その批判は根拠がなく、簡単に退けられた (Hardell ら、1999b)。ハーデル等の全研究で、がんの疫学研究で訓練を重ねてき た脳腫瘍学者への回答率はいつも高かった。これは、携帯電話に関係のない研 究にも同様に当てはまる。 インターフォン研究のスウェーデンの部門では面白いことに、著者等の一人 (アンダース・アールボム[Anders Ahlbom])が、研究が始まる前でさえ、携 帯電話使用と脳腫瘍の関連性は生物学的に奇妙だ、と「意見」書で述べた(Adami 等、2001)。アールボム自身の研究では、頭上の送電線からの磁界被曝と小児白 血病の関連性について証拠を提示している。その関連性も生物学的な奇妙さに 関わっていたのだろう(Feychting と Ahlbom、1993)。 インターフォン研究のスウェーデンの部門に参加していたマリア・フェイチ ング[Maria Feychting]は「その質問は、症例群と対照群の間で本当に同じ方 法で置かれていたのか」どうかを尋ねた(Bjōrkstén, 2006)。実際にハーデル研究 は同じ方法だったが、インターフォン研究では症例群と対照群の面談で異なる 方法が使われたようだ。例えば、臨床の面談は症例群でのみ行われた。 一方、ハーデル研究と電磁界からの潜在的な健康リスクのその他の証拠は、 科学者のグループのバイオイニシアティブ報告で、この証拠を要約するよう彼 らを発奮させた(バイオイニシアティブ・ワーキング・グループ[Bioinitiative Working Group] 2007)。同報告書は、新しく登場したリスクの証拠と、WHO の電磁界プロジェクトの声明や、リスクが無かったというその他の報告書(例 えば、SCENIHR 2007)に賛同しない、少数派の専門家が増えつつあることを 大勢の人々へ警告し、少なからぬ衝撃を与えた。 報告書「早期警告からの遅すぎる教訓」(EEA、2001)を制作した欧州環境庁 (EEA)は、有名な遅すぎる教訓 14 例と電磁界の新しく出現した問題の関連性に ついて一つの章を書くため、バイオイニシアティブ・ワーキング・グループに 招かれた。発表された証拠を考慮すると、EEA は、携帯電話からの脳腫瘍の潜 在的なリスクについて慎重な早期警告を出すのに時宜が良い、と 2007 年 9 月に 決意した(コラム 21.2 参照)。

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21.7 ハーデル・グループ研究のプール分析 1997 2003 年の期間中に診断された脳腫瘍(神経膠腫、髄膜種、聴神経腫7 表 21.1)に関する二つの症例対照研究のプール分析が行われ、悪性腫瘍(Hardell 等、2006b)と良性腫瘍(Hardell 等、2006c)の両方について結果が報告された。 この分析は、同一の質問表を両方の研究で使った同じ研究方法だったから可能 だった。この発表で、4 番目の研究での神経膠腫の結果が加えられた(Hardell 等、2010、Hardell 等、2011a)。 潜伏期間は、無線電話を初めて使ってから診断されるまで>1 5 年、>5 10 年、>10 年の 3 段階に分けられた。携帯電話とコードレス電話の両方を使う と、神経膠腫のリスクが全体的に高くなった。>10 年の潜伏期間群で最も高く なり、同側側の使用でさらに高くなった。携帯電話のオッズ比は 2.9 倍(95%CI =1.8-4.7)、コードレス電話のオッズ比は 3.8 倍(95%CI=1.8-8.1)。最も高いオ ッズ比は、同様に総体的な無線電話使用について>10 年の潜伏期間を持つグル ープで見られた。 表 21.1 は、髄膜種について同じ分析結果を示す(対象人数 916 人)。リスク増 加に一定のパターンはなかったが、最も高いリスクは>10 年の潜伏期間を持つ 携帯電話の同側被曝で見られた。オッズ比は 1.6 倍(95%CI=0.9-2.9)。潜伏期 間が>10 年で、コードレス電話を同側で使用することもリスクを増やし、オッ ズ比は 3.0 倍(95%CI=1.3-7.2 だった)。 聴神経腫について(対象人数 243 人)、無線電話の使用は>10 年の潜伏期間 でオッズ比が 2.2 倍(95%CI=1.3-3.7)だった。携帯電話とコードレス電話の両 方について、同側使用は反対側の使用よりもリスクを高めた。 21.8 子どもへのリスク 無線電話の使用は子どもと若者の間で広まった(Söderqvist 等、2007、2008)。 子どもの脳は大人よりも RF(無線周波数)電磁界照射からの電磁波を高く吸収 する(Cardis 等,2008;Christ 等,2010;Gandhi 等,2012)。これは頭が小さいこと、 頭蓋骨が薄いこと、脳組織の伝導性が高いことが原因だ。成長中の脳は毒物に 対してより敏感で(Kheifets 等,2005)、脳は 20 歳頃まで成長を続ける(Dosenbach 等,2010)。時間単位毎の RF エネルギーの吸収がより大きいこと、子どもたちの 脳がより敏感なこと、脳腫瘍になるまでの生涯の期間がより長いことで、子ど もたちは大人よりも携帯電話電磁波からのリスクが高い状況に置かれている。 ハーデル・グループの結果の分析は、20 歳になる前に初めて携帯電話を使う ことは神経膠腫と聴神経腫のリスクが最も高くなることに関連した。表 21.2 参 7 特に長期間の使用と左右の偏りについて研究

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照(Hardell, Carlberg,2009)。 無線電話を初めて使った年齢群を、<20 歳、20-49 歳、50-80 歳の三つのグル ープに分けけた。神経膠腫について、携帯電話を初めて使ったのが<20 歳だと オッズ比は 3.1 倍(95%CI=1.4-6.7)だった。同様のパターンがコードレス電話 の使用でも見られた(データ提示せず)。聴神経腫も、最も若いグループでリス クが高くなり、オッズ比は 5.0 倍だった(95%CI=1.5-1.6)。しかし、20 歳前に 初めてコードレス電話を使ったのは 1 症例だけだったので、コードレス電話に ついて結論を出すことはできない。これらのオッズ比は、最も若いグループで 同側での携帯電話使用で更に高くなった。神経膠腫はオッズ比 4.4 倍(95% CI=1.3-1.5)、聴神経腫はオッズ比 6.8 倍(95%CI=1.4-3.4)だった。髄膜種につ いては、リスク増加パターンに関連する明らかな年齢は見られなかった。 非常にわずかながら、携帯電話使用と子どもについて、CEFALO 研究(エイデ ィン[Aydin]等,2011)と、進行中である EU のモビキッズ[Mobikids]8以外に も研究が行われている。 デンマーク、スウェーデン、ノルウェー、スイスで行われた多施設症例対象 研究 CEFALO は、下記で例証したように、深刻な方法論的問題があったので、 スーダークヴィスト[Söderqvist]等によって詳細に論評された(2011)。 研究の要約で、通常の携帯電話使用が脳腫瘍のリスクを増やすことを観察 しなかったと著者等は記した。この結論には、リスクの増加は「再確認」され なかったというストックホルムのカロリンスカ研究所の報道発表(Karolinska Institute, 2011)だけでなく、研究は脳腫 瘍 の増加を 示さ なかった(Boice と Tarone, 2011)という編集部の声明が添えられた。しかし、その声明は研究が実 際に示したこととは、かけ離れている。 例えば、コードレス電話使用のデータ収集と分析は妥当ではなかった。コー ドレス電話の使用は、使用から最初の 3 年間でのみ評価され、それについて最 も特異的な定義を著者等は説明せず、参照文献も載せなかった。さらに、その 研究は被曝分類として、携帯電話とコードレス電話の両方を含む、無線電話使 用を全く考慮しなかった。IARC は関連する被曝グループとして無線電話使用 を分類した(Baan 等,2011)。それどころか、エイディン等(2011)は、コード レス電話の使用を「非被曝」分類に含めた。そのため、携帯電話使用のリスク は過小評価されただろう。同様に、コードレス電話の使用を考える場合、携帯 電話使用は「非被曝」に含まれ、従ってリスク増加は潜在的に隠された。 その研究は、通常の携帯電話使用での脳腫瘍についてリスク増加が統計学的 に有意でないと示し、オッズ比は 1.36 倍(95%CI=0.92-2.02)だった。このオ ッズ比は、携帯電話の契約期間や通話期間の累積でいくぶん増えた(Aydin 等, 8 連絡先:詳細については ecardis@creal.cat

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2011)。5 年以上の潜伏期間は、この分類の中ではごくわずかな症例しかなかっ た。さらに、本当の関連性の支持は、症例 62 人と対象 101 人の、電話操作者が 記録した使用時間に基づく結果で見られた。最初の契約から>2.8 年で、統計 学的に有意な傾向(P=0.001)とともに、統計学的に有意なオッズ比 2.15 倍(95% CI=1.07-4.29)が生じた。 著者等は結果がリスク増加を示したことを強調しなかったが、低被曝や短い 潜伏期間、限定的な研究デザインと分析にも関わらず、そのデータは控えめな リスク増加を示した。明らかにそれは、解説で議論されたように、関連性に対 抗する再確認の証拠として使われるべきではなかった(Söderqvist 等,2011)。 残念ながら、CEFALO 研究(Aydin 等,2011)は、2011 年 5 月の IARC 会議の 後で発表された。IARC 会議に間に合ったなら、ヒトの RF 電磁界被曝はグルー プ 2B の発がん性物質だ、という IARC の結論を支持するための、さらなる証 拠を提供しただろう。 コラム 21.2 携帯電話からの脳腫瘍に関する EEA の早期警告,2007-2011 年 「過去に予防原則の使用に失敗した例が多数ある。それは深刻で、時には健 康や環境への取り返しのつかない損傷につながった。電磁界による健康への あり得そうな、深刻で潜在的な脅威を避けるために、妥当で予防(原則)的 で、釣り合った行動を今、取ることは、将来の展望から慎重で懸命であるよ うにみえる」(EEA,2007)。 この早期警告は、下記を含めて 2009 年に更新された。 「携帯電話からの頭部腫瘍リスクの証拠は、未だに非常に限られ、多くの論 争があるが、残念なことに、私たちが最初に早期警告を出した 2 年前よりも、 証拠はより強くなっている」。 その証拠は、下記の段階を正当化するために、予防原則を今、使うだけの 十分な強さがある(EEA、2009)。 1.政府と携帯電話産業、公衆に対して、電磁界とくに携帯電話からの無線 周波数電磁界への被曝を減らす、あらゆる合理的な対策を取ること。そし て、頭部腫瘍のリスクが最も高いようである子どもと若者への、あらゆる 合理的な対策を取ること。そのような対策は、頭の側に携帯電話を置いて 使うことの禁止を含むだろう。これはメール、ハンズフリーセット、電磁 波の発生が少なくなるように設計された電話の使用、ハンズフリーセット の利用を便利にすることで達成できるだろう9 2. 重大な限界のある現在の電磁界被曝基準の科学的根拠を再検討するこ と。現在の基準は、異論のある熱効果パラダイムに依存し、無線周波数の 9利用が増えたせいで特に若い世代でハンズフリー機器の使用が増えたことを、 いくらか明確にEEA が述べた。

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複雑さについて単純すぎる仮定に頼っている。 3. 潜在的なリスクについて、効果的な表示と警告を携帯電話ユーザーのた めに提供すること。欧州連合全域で、大多数の市民(80%)は、電磁界の 潜在的な健康リスクに関る現在の防護体制について、情報を与えられてい ない、と感じている。市民の 65%は、電磁界に関する潜在的な健康リスク について受け取る情報に満足していない、と言う。(電磁界、フィールドワ ークに関する特別ユーロ・バロメ̶ター報告、2006 年 10/11 月、発表 2007 年)。 4.電話と関連する塔(基地局)の健康影響について、緊急に必要とされる 研究へ資金提供し組織するために、必要な資金をつくること。そのような 資金は、企業からの助成金や、携帯電話の購入や使用による小額の徴税を 含むかもしれない。調査徴税のこのアイデアは、ゴム業界で肺がんと胃が んの問題が現れた 1970 年代に、ゴム業界の調査徴税でアメリカが先駆けと なった、と私たちが考える実践例がある。調査資金は独立した団体によっ て使われるだろう10 (http://latelessons.ew.eea.europe.eu/fol5272324/sttements/Bebefuts _ of _ mobile phones_and_potential_hazards_of_EMF.doc) 2011 年 2 月、欧州評議会の携帯電話に関する公聴会に科学的証拠が提出さ れた 2011 年に、これは更新された。 10 EEA は、資金提供源によって結果が強く結びつけられる科学的研究の「資金バイ アス」の証拠が増えていることを示した。この観察は薬学、タバコ、鉛、アスベスト、 BPA、電磁界からの証拠だけでなく、費用-効果分析と輸送建設計画コスト評価などの 他の分野の証拠に基づく。

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表 21.1 無線電話(携帯電話とコードレス電話)の使用と神経膠腫、髄膜種、聴 神経腫のオッズ比(OR)と 95%信頼区間(CI) 同側 >10 年潜伏 >10 年潜伏 合計 >1 年潜伏 OR,CI OR,CI OR,CI 神経膠腫(1148 人) 無線電話 — 2.1(1.6-2.8) 1.3(1.1-1.5) 携帯電話 コードレス電話 2.9(1.8-4.7) 3.8(1.8-3.1) 2.5(1.8-3.3) 1.7(1.1-2.6) 1.3(1.1-1.6) 1.3(1.1-1.6) 髄膜種(916 人) 無線電話 — 1.4(0.97-2.0) 1.0(0.9-1.2) 携帯電話 1.6(0.9-2.9) 1.4(0.9-2.1) 1.1(0.9-1.3) コードレス電話 3.0(1.3-7.2) 1.6(0.9-2.8) 1.1(0.9-1.4) 神経膠腫(243 人) 無線電話 — 2.2(1.3-3.7) 1.5(1.1-2.0) 携帯電話 3.0(1.4-6.2) 2.6(1.5-4.6) 1.7(1.2-2.3) コードレス電話 2.3(0.6-8.8) 1.0(0.3-2.9) 1.5(1.04-2.0) 注:太字=統計学的に有意。対照群の人数は、神経膠腫の分析で 2436 人(生存,死亡対照群)、 髄膜種と聴神経腫で 2162 人(生存対照群のみ)。生存している症例と対照だけが携帯・コードレ ス電話の同側使用の分析に含まれた。 出典:Hardell 等,2006b、2006c、2010、2011a 表 21.2 携帯電話を初めて使った年齢が異なる集団での神経膠腫、髄膜種、聴 神経腫のオッズ比(OR)と信頼区間(CI) 神経膠腫 (1148 人) 髄膜腫 (916 人) 聴神経腫 (243 人) 携帯電話 OR, (CI) 1.3(1.1-1.6) OR, (CI) 1.1(0.9-1.3) OR, (CI) 1.7(1.2-2.3) >20 歳 3.1(1.4-6.7) 1.9(0.6-5.6) 5.0(1.5-16) 20-49 歳 1.4(1.1-1.7) 1.3(0.99-1.6) 2.0(1.3-2.9) ≧50 歳 1.3(1.01-1.6) 1.0(0.8-1.3) 1.4(0.9-2.2)

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注:太字=統計学的に有意。対照群の人数は、神経膠腫の分析で 2436 人(生存,死亡 対照群)、髄膜種と聴神経腫で 2162 人(生存対照群のみ)。 調整は、年齢、性別、社会経済的条件,診断された年で行った。神経膠腫の調整も生 存状況で行った。 出典:Hardell 等、2006b、2006c、2010、2011a 21.9 インターフォン研究 2000-2010:意見の相違と遅れ インターフォン研究は、WHO の独立機関である IARC の指導の下で行われ た、携帯電話使用と脳腫瘍リスクに関する国際的な共同研究だ。その研究は、 RF 電磁界への潜在的な健康影響を研究するために、専門家グループのいくつか の忠告によって初められた(McKinly,1997;Cardis 等,2007)。2000 年から 2004 年の異なる期間で 13 か国、16 の研究センターで行われた。そのコストは約 2200 万ユーロで、そのうち 550 万ユーロを企業が寄付した(IARC, 2010)11 インターフォン研究の各国の分析のなかには、異なる結果を生じたものがあ る。いくつかは陽性、つまり脳腫瘍の増加を見いだし、いくつかは陰性、つま りリスク減少、すなわち一見したところは「防御的な」電磁波の影響を発見し ている。 研究に参加した著者等は従って、一致した結論に達するのが困難だった。そ して、国毎の結果発表と、全体的な研究結果発表の間には 4 年の開きがあった。 一つのグループは、伝えられる所によれば、とくに 10 年以上の被曝群の結果を 分けて分析した場合、インターフォン研究は全体的に携帯電話と脳腫瘍の間に 陽性の関連性を示した、と考えた。他のグループは、リスクの兆候を発見せず、 脳腫瘍の見かけ上の過剰さは研究デザインと方法の直接的な結果だ、と見なし た。第三のグループは、どちらの立場もとらなかった。 全体的なインターフォン研究の結果の発表は、最終的に IARC 局長のクリス トファー・ワイルド[Christopher Wild]によって始められた。彼は、2010 年 5 月に発表された結果を最終的に得るために、科学者達の間で十分な合意を調整 した。 携帯電話使用と髄膜種の関連性は全体的なインターフォン研究では見られな かったが、その一方で、小集団の分析では、最も高い被曝群、つまり携帯電話 を 1640 時間以上使った人たちで、神経膠腫のリスクが統計学的に有意に増えた ことを示した。1640 時間は、1 日あたり 30 分の割合で、10 年間使用した時間 に相当し、オッズ比は 1.40 倍(95%CI=1.03-1.89)だった(Interphone Study 11 ハーデル研究のコストは約410000 ユーロで、スウェーデン労働環境基金、 Cnacer-och Allergifonden,Cancerhjälpen、Telia, Fondkistan, オルベロ大学病院が ん基金から資金提供された。

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Group,2010)。そのリスクは同側被曝でさらに増加し(オッズ比 1.96 倍、95% CI=1.22-3.16)、神経膠腫の最高被曝群では、脳で最も被曝した部分、頭頂葉の 腫瘍リスクが高くなった(オッズ比 1.87 倍,95%CI=1.09-3.22)。 しかし、対立する科学者の間でとられた妥協案は、違う方向を向いている二 つの相対する文章を併記することだった。神経膠腫のリスク増加と、髄膜種で はずっと少ないリスク増加、最も高い被曝レベルと同側被曝について、そして 頭頂葉での腫瘍に関して神経膠腫で、リスク増加の示唆があった。続いて、 偏りとエラーは、私たちがこれらの分析から導くことができる結論の強さを制 限し、因果関係(太字は著者等による)の解釈を妨げた(Interphone Study Group, 2010)。 原因と影響の繋がりの強さが、「リスクの科学的疑念」から「論理的な確実性」 を経て「強い関連性」へどのように変わるのか、そして最も強い証拠を求める 「因果関係」についての説明はなかった。タバコと肺がんの論争の最中に書か れたブラッドフォード・ヒル[Bradford Hill]の論文で説明された(Hill,1965)、こ の証拠の強さの連続体は、インターフォン論文では説明されなかったのだ。こ れはメディアと公衆が、「因果関係がない」を、携帯電話と脳腫瘍の「関連性が 無い」と見なしたであろうことを意味する。他の疫学者は、むしろ有意なニュ アンスを見いだした。 国際疫学ジャーナルで発表された、インターフォン研究の結果に添えられた 論評で(Saracci と Samet, 2010)、インターフォン研究の結果の主な結論は、洗練 されてあいまいで、 (それは)全く正反対の解釈を許容する、と述べられた。 彼らは、なぜインターフォン研究の結果がリスクを過小評価しそうだったのか、 最初の被曝から普及する前までの短期的な潜伏期間など、いくつかの方法論的 な理由も指摘した。10 年以上の被曝期間は、インターフォンで研究された症例 の 10%以下だった。 タバコを含む、現在確立した発がん性物質の中で、最初の被曝から、または 最初の 10 年間でリスクが増えたと確かに確認されたものは一つもない。 インターフォン研究の「あいまいな」結論の文章は、そのため、メディアが 正反対の結論を報告することを許してしまった。例えば、2010 年 5 月 17 日付 のイギリスのデイリー・テレグラフ紙は、インターフォン研究が携帯電話から の脳腫瘍のリスクの証拠を示したと報道した。 (http://www.telegraph.co.uk/health/7729676/Half-an-hour-of-mobile-use-a-day-incre ases-brain-cancer-risk.html)。一方、BBC ニュースは同じ日に、リスクはないと 報道した(http://news.bbc.co.uk/2/hi/health/8685839.stm)。このメディアの正反対 の報道パターンは、いたるところで広く繰り返された12 12 EEA はこの混乱を予測し、異なるインターフォン・グループの対立する見解を、同じ科学

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さらに、公衆と政策決定者の混乱は、インターフォン研究者の異なる声明が メディアで報道されたために続いた。例えば、マイクロウェーブ・ニュースは、 インターフォン研究のコーディネーターであるエリザベス・カーディス [Elisabeth Cardis]が、全体的に その結果は実際の影響を示す、と考えてい ることを 5 月 17 日に報道した。オーストラリアのインターフォン研究の参加者 であるブルース・アームストロング[Bruce Armstrong]は、それは神経膠腫の リスク増加についていくぶんの兆候を示すが、私は確信を持って言うことがで きない、と述べた。イスラエルのシエガル・サデツキー[Siegal Sadezki]は、 結果はリスクの兆候で一貫し、因果関係(太字は著者等)の解釈について十分 な強さがないものの、予防(原則)的政策を支持するには十分だ、と言った (http://www.microwavenews.com/Interphone.Main.html)。 それに対し、他の共著者であるフェイッチング[Feychting]は、10 年以上の 携帯電話の使用は脳腫瘍のリスク増加を示さなかった、と考えた (http://www.i-sis.org.uk/EEA_Hihlight_Mobile_Phone_Cancer_Risks.php)。 スウェーデンのインターフォン研究の参加者であるアールボムは、これらのデ ータにも過去のデータにも、ここで関わる何らかのリスクを示すものは実際に 何も無い、と中国国営テレビに語った (http://www.youtube.com/watch?v=TllmreWZdoA)。 インターフォンのデータの後日の発表で、脳腫瘍部分で携帯電話使用から概 算された RF 量は、インターフォン・グループの一部で神経膠腫のリスク増加 にも関連していた。オッズ比は、診断の 7 年以上前の概算された腫瘍の中心で 吸収された比エネルギー(J/kg)の合計累積量が増えるとともに増加した。最 も高い被曝群の 20%で、オッズ比は 1.91 倍(95%CI=1.05-3.47)だった(Cardis 等,2011)。 この重要な結果は、腫瘍の誘発について吸収された電磁波の量(被曝/累積使 用時間の年月の代わりより適正な)を初めて関連させたが、メディアの注目を ごくわずかしか集めなかった。 適切さがいっそう少ない方法に基づく同様の研究は、インターフォン研究グ ループの他の部門によって後に発表された。下記参照(Larjavaare 等、2011)。 結果は今や聴神経腫についても発表された(Interphone Study Group,2011)。リ スク増加は、参照データの前に同側での携帯電話使用を始めてから 10 年以上で、 そして累積使用 1640 時間以上で見られた。オッズ比は 3.74 倍だ(95% CI=1.58-8.83)。 的文献で、異なる論争とはっきり示したデータ解釈とともに、それぞれ一緒に発表するべきだ とIARC に早い段階で提案していた。これは、メディアと公衆がインターフォン研究者の間の 意見が相違する理由を、よりよく理解するのに役立っただろう。しかし、この提案は採用され なかった。

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耳下腺の腫瘍13についての総合的なインターフォン研究の結果は、未だに発 表されていない。IARC がインターフォン研究をすでに終わらせた14ので、スウ ェーデン(Lõnn 等、2006)とイスラエル(Sadezki 等、2008)の結果だけが有効だ。 左右の偏り(使用する側と腫瘍のリスク)や使用量(累積時間)を考慮した小 集団の分析は、リスクを高めた。しかし、他の研究の結果はリスク増加につい て一貫したパターンを示さなかった(Auninen 等、2002;Hardell 等、2004;Duan 等、2011;Sõderqvist 等、2012a)。長期間使用の結果は、しかしながら、恐ろし いものだ。 21.10 ハーデル・グループとインターフォン研究のいくつかの論評と議論 これまでに、携帯電話とがんに関するメタ分析と論評がいくつかあり、それ らは、この問題を疫学的に研究する挑戦、今までに発表された主要な研究の方 法論的な限界、それらの結果を解釈する上での困難さを述べた。 例えば、インターフォン研究の結果のいくつかは、リスクを過小評価する傾 向のある観察バイアスやリコールバイアスのせいで、被曝についての異なる誤 分類を示す。インターフォン研究では、症例群と対照群の両方で参加率が低か った。例えば、症例の 50%と対照の 40%しか参加しなかった国もあった。生存 者を対象にしたハーデル・グループ研究の場合、悪性脳腫瘍の症例の 90%、良 性腫瘍の 88%、対照の 89%が回答した点と、この低回答率は比較される(Hardell 等,2006b,2006c)。死亡した症例は、インターフォン研究の参加者として計算さ れたが、ハーデル研究では、悪性脳腫瘍に関する別の副研究に含まれた。 症例の約 40%は、インターフォン研究では病院で面談された。その上、面談 されたのが症例者か対照者か、常に面談者に知られていた。コードレス電話の 使用は、インターフォン研究では適切に評価されなかったか、少なくとも報告 されなかった。なお、これらの方法論的点に関する議論は、他でも知ることが できるだろう(Hardell 等,2008;Kundi,2009)。 ミュン[Myung]等(2009)は、携帯電話の使用と脳腫瘍のリスクに関する、発 表された全ての論文の結果と方法を続いて比較した。彼らは、その時入手でき た異なる国のインターフォン研究の結果に基づいて、ハーデル研究はインター フォン研究より質が高い、と結論を出した。 しかし、ミュン等(2009)の論評では、ある重要な問題が取り上げられていな い。すなわち、ハーデル・グループは、インターフォン研究グループと対照的 に、コードレス電話の使用も評価したことだ。コードレス電話の RF 電磁界発 13 耳の前の頬にある腺の腫瘍。 14 公式サイト(http://interphone.iarc.fr/)によると、インターフォン研究は 2012 年 2 月に終了した。

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生は、何度も指摘されてきたように、デジタル式携帯電話からの電磁波と同じ 規模だ(Hardell 等,2006d;Kundi,2009;Redmayne 等,2010)。さらに、コードレス 電話は通常、携帯電話よりも長い通話で使われる(Hardell 等,2006b、2006c)。 インターフォン研究で行われたように、コードレス電話の使用を「非被曝」群 に含めることは、リスクに対する評価を偏らせるだろう。 インターフォン研究のように、症例者に臨床で面談するのは、重大な不利に なる可能性があり、倫理的な問題がある。当時、患者は手術等から十分に回復 しておらず、診断、治療、予後について十分に情報を与えられないかもしれな いし、医薬品による鎮静状態だったかもしれない。実際、デンマークでのイン ターフォン研究では、言葉を思い出す問題(失語)や麻痺による筆記や描く問 題のために、患者の点数は対照群よりも有意に低かった(Christensen 等,2005)。 明らかに、これらの臨床面談によって観察バイアスが導かれただろう。 それに比べて、ハーデル・グループの症例群は、診断から約 2 か月後に郵送 で質問表を受け取り、対照群と同様にリラックスした状態で答えることができ た。全症例と対照は、異なる被曝を確認し、明らかにするために電話で質問さ れた。これは、症例か対照か分からない状態で行われた。 リコールバイアスと観察バイアスの可能性は、ハーデル等による二度目の症 例対照研究で調べられた(2002)。無線電話の使用は、過去にがんになったと報 告したか、質問票へ記入するのに家族が手伝ったかに関わらず、症例と対象で 類似性があった。電話で質問する間の潜在的な観察バイアスは、質問後に症例 と対照で被曝変化を比較することで分析された。有意な差は見られず、結果を 観察バイスで説明することはできないことを示した。さらなる詳細は、その論 文のディスカッションを参照(Hardell 等、2002)。全ての質問は、体系的な教 育と実施要項を用いて訓練された人たちによって実施された。 ミュン等の論文は、携帯電話業界を代表する、例えばロウリー[Rowley]とミ リガン[Milligan](2010)によって論評された。彼らは、インターフォン研究は業 界の影響から独立していたと主張した。しかし、携帯電話業界は、インターフ ォン研究に 550 万ユーロを提供し、いくつかの国々では、業界によって更に資 金が提供された。その上、研究の実施要項によると、他の団体もオブザーバー やコンサルタントとして、研究グループに参加するかもしれない、とある。こ れらの団体は、業界やその他の関係組織の代表を伴うかもしれない さらに、 業界やその他の関係団体の代表は 公表の少し前(最大で 7 日間)に知らされ るべきで、科学的な団体や素人が研究結果を入手する前に情報を得るべきだ、 とされている(IARC,2001)。 ロウリーとミリガンは、ハーデル研究には、選択バイアス、情報バイアス、 リコールバイアスの証拠と、著しく高く報告された参加率がある、と主張した (Rowley と Milligan。2010)。これらの急場しのぎの声明は、著者らや参照文

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献によって立証されていない。高い参加率は、症例対照研究で質を高くするた めの事前要請だ。

他の科学者たちは、ハーデル研究の結果をもっと好意的に分析し

(Kundi,2009;Myung 等,2009;Mead, 2009;Cardis と Sadetzki,2011;Levis 等,2011)、 IARC は、RF の証拠の評価のためにハーデル・グループの結果とインターフォ ン研究グループの結果を主に信頼した。 カーディスの論評はとくに興味深い。彼女はインターフォン研究のコーディ ネーターだからだ。他のインターフォン研究の参加者であるサデツキーとの共 著のその論評で、ハーデルとインターフォン研究の方法論的な強さと弱さを十 分に議論した後で彼らは次のように結論づけた。 研究結果の異なる潜在的なバイアスの規模と方向を評価すること、そし て脳腫瘍のリスクについて携帯電話のネット影響を評価することは不 可能だ。上記で述べた論争の全体的なバランスは、しかしながら、潜在 的な関連性(つまり、携帯電話と脳腫瘍の間の)の存在を示唆する。 彼らは次のように結論づけて締めくくった。 単純で低コストな方法、メール送信やハンズフリー、電話のスピーカー 機能の使用などは、携帯電話から脳への被曝をかなり減らすだろう。従 って最も確実な科学的な回答が出るまで、とくに若者の間で、そのよう な予防(原則)的選択が望ましい(Cardis と Sadetzki,2011,p170)。 21.11 2011 年の RF 電磁界と発がん性の IARC 評価 2011 年に IARC は、フランスのリヨンでの 8 日間の会議(5 月 24 31 日)で、 RF 電磁界発生のヒトに対する発がん影響を評価した。これは携帯電話やコード レス電話だけでなく、無線周波数電磁波の全ての発生源を含む。無線電話の使 用について Hardell グループによって発表された全研究が、インターフォンの 全体的な結果と同様に含められた(Interphone Study Group,2010,2011、Cardis 等,2011)。同じ参入・除外基準が使われた場合、神経膠腫の結果は、ハーデル・ グループとインターフォン研究で同様だった(Hardell 等,2011b)。これは、2 組 の研究の結果は大きく異なっている、という広く普及した言説とは違う。 IARC ワーキンググループは、「動物のがん研究」、「疫学」、「被曝」、「力学的 またはその他の関連するデータ」の 4 つの分野を代表する、30 人の科学者たち 15から構成された。それぞれの専門家グループは、幾人かの専門家によって会 15 EEA のデーヴィッド・ギーは、「オブザーバーとしてよりむしろ、貴組織の代表と して」グループに参加するようIARC に求められた(代表とオブザーバーの定義に付い ては序文を参照のこと。 http://monographs.iarc.fr/ENG/Preamble/currenta5participants0706.php)。しかし、

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議前に書かれた草案を最初に受け取った。その後の作業は専門家グループの中 で行われ、最終合意は、一文毎に、参加した全ての専門家とともに、総会で得 られた。 ワーキンググループは、無線電話からの RF 電磁界への被曝と神経膠腫や聴 神経腫の陽性の関連性に基づき、RF 電磁界への発がん性について「ヒトにおけ る限定的な証拠」がある、と結論づけた。この結論は、インターフォン研究と ハーデル・グループ研究に基づいた。携帯電話契約者に関するデンマークのコ ホート研究からは結論が導かれなかった。被曝評価での相当な誤分類が原因だ (Baan ら,2011)。 最終的な結論は、30 人の科学者全員による投票で承認された。職業被曝にも 基づき、RF 電磁界はヒトへの「発がん性の可能性がある」グループ 2B だ、と いう結論に大部分が賛成した。 21.12 IARC 結論に対するいくつかの反応 権威ある IARC の評価でさえ、異なるグループによって、大きく違う解釈が されたのは興味深い。 これまでに、携帯電話使用で起きると立証された有害な健康影響はない。こ の文章は IARC 決定の後、WHO 電磁界プログラムから、2011 年 6 月のファク トシートで発表されたものだ(http://www.who.int/mediacentre/factsheets/fs193/en)。 そしてさらに、脳腫瘍の証拠を説明できる非熱効果を何も認めずに、組織の加 熱は人体と無線周波数エネルギーの間の相互作用の主要なメカニズムだ、と明 言した(Guiliani と Soffriti,2010)。 携帯製造業フォーラム(MMF)のマイケル・ミリガン[Michael Milligan]は次の ように述べた。 入手できる科学的な証拠を評価した後、RF 電磁界は確定したヒトへの 発がん物質でも、おそらく発がん性があるのでもない、と IARC が結論 を出したのは意義があった (http://www.mmfai/org/public/docs/eng/MMF _PR_310511_IARC.pdf)。

GSMA 協会(GSMA)のジャック・ロウリー[Jack Rowley] は、このように述 べた。 IARC の分類は、危害の可能性はあるが、そうではないようだ、という IARC 会議が始まる数日前、完全なインターフォンの結果の発表の更なる遅れと、会 議の疫学グループの議長であるアールボム[Ahlbom]の知識人としての偏向が原因で、 それらは撤回されていると述べる手紙をEEA は IARC に出した。会議開始の前日に、 アールボムは利害の対立が報告された結果、IARC によって議長から外された。そし て会議も、未発表のインターフォン研究のデータを与えられた。しかし、これはEEA が参加するには遅すぎた。

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ことを示す (http://www.gsma.com/articles/gsma-statement-on -the -iarc-classfication/17567)。

フィンランド技術産業連盟(Finnish Technology Industries,FFTI)のパトリッ ク・フォステル[Patrick Fostell]は、次のように述べた。 無線周波数電磁界は、ヒトへの発がん性も発がん性の可能性もないとい う、現在の研究データの優勢な解釈に、IARC 分類は沿っている (http://www.technologiateollisuus.fi/en/news/announcements/2011-6/no-chang e-in-international-assessment-of-the-health-effects-of-mobile-phone)。 フィンランド放射線原子核安全庁(STUK)と IARC 専門パネルのメンバーで あるダリウス・レステンスキー[Dariuz Leszczynski]教授は、次のように記した。 携帯電話電磁波ががんを発症させる可能性があることや、発がん性 2B として分類した最近の IARC の評価は、科学者、業界、報道機関の間で 賛否両論の騒ぎを起こした。残念ながら、この大きな注目の唯一の結果 は、たった一つのことにつながる―混乱だ。一般の携帯電話ユーザーは、 高い教育を受けた人もそうでない人も、この正反対の見解と変化する声 明の動揺によって混乱させられた (http://betweemrockandhardplace.wordpress.com/2011/06/29%e2%80%a2viva -confusion)。 エコノミスト誌は次のように書いた。 携帯電話ががんを起こすことに関する全ての騒ぎは、懸念される他の あらゆるものに比べて途方も無く不適切だ、とあなたの特派員は考える (http://www.economist.com/blogs/babbage/2011/06/mobile-phone-and-health )。 マイクロウェーブ・ニュースは、長い間、この分野を追跡してきた。IARC の全ての物語の大半とその結果が、ウェブサイトで見られる。例えば ICNIRP [訳注:国際非電離放射線防護委員会]の視点については次のように書かれて いる。 ICNIRP は、自らの財源を発表するのを断って自己永続する団体だ。新し い解説を書いた ICNIRP の疫学常設委員会は、同じ意見を持った人にだ け歓迎された。前議長、アンダース・アールボムも、携帯電話の脳腫瘍 リスクは存在しないという.彼の見解を表明した(彼は、携帯電話とがん に関する、前回の ICNIRP 論評の筆頭著者だった)。他の過去のメンバー、 マリア・ブレットナー[Maria Blettner]は、IARC ワーキンググループの最 終投票で唯一異議を唱えていた。ブレットナーもアールボムも二人とも、 インターフォン研究に参加した (http://www.microwavenews.com/ICNIRP.Interphone.html)。

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ところで、大半が批判したデンマークのコホート研究だが、大部分は陽性で はないと意見が一致したように見えることで、IARC までもがこの混乱に加わ っていた。下記参照(http://www,microwavenews.com)。 全世界規模で回る機械を IARC の決定がスタートさせたことは疑いようがな い。それはおそらく、IARC が 1990 年代に受動喫煙を発がん性物質として研究 し評価した時に、タバコ産業によって始められたものと似ている(Ong と Glantz,2000)16。混乱の種と「作られた疑念」をまき散らすことは、タバコ産 業や他の業界で使われた、良く知られた戦略だ(Michaels,2008;McGarity と Wagner,2008:Oreskes と Conwaty.2010)。 21.13 IARC 結論の後に発表された、いくつかの研究 インターフォンの北欧部門は、携帯電話電磁波に対する脳腫瘍の位置に関す る研究を発表した(Larjavaara 等,2011)。その研究は上記で議論したように、カ ーディス等(2011)による結果と矛盾するように見えるが、異なった、明確さが 少ない方法を使っている。42 症例だけが携帯電話を 10 年以上使っていて、使 用期間が最も長い高被曝グループでの分析は行われなかった。従って、この研 究は、カーディス等(2011)が行った精巧さが少なく、有益さが非常にとぼしい。 デンマークで、携帯電話契約者のコホート研究は、国際疫学研究所(IEI)とアメ リカのロックヴィル[Rockville]医学博士、デンマークがん協会との協力で立 案され開始された。そのコホート研究は、デンマークの二つの電話運営会社 (The Denmark Mobile と Sonafon)、IEI、デンマークがん協会による資金提供に よって行われた。IEI の資金源は公開されていない。

携帯電話契約者の脳腫瘍リスクに関するデンマーク研究からの最初の結果は、 2001 年に発表され、2006 年と 2011 年に更新された(Johansen 等,2001;Schüz 等,2006,2011;Frei 等,2011)。それは、デンマークの二つの事業者 The Denmark Mobile と Sonafon のコンピューター化されたファイルで確認された、1982 年 1 月 1 日から 1995 年 12 月 31 日までの対象者を含む。合計で 723,421 人の契約者 が確認されたが、これらの契約者の 58%だけが最初のコホートと一致する。 IARC が評価の証拠として、デンマーク研究を使わなかった主な理由は、被 16 1990 年代初め、フィリップ・モリスたばこ会社は、IARC の研究と二次的な喫煙に関する IARC モノグラフの可能性が、ヨーロッパでの規制を増やすことを怖れ、IARC の作業を打ち 砕くための産業間の三つの戦略の先頭に立った。科学的戦略は、IARC の研究の力をそぎ、予 測される結果に対抗する業界主導の研究を行うことだった。コミュニケ̶ション戦略は、メデ ィアと公衆を操ることで具体的な意見の計画をたてた。政府戦略は、喫煙規制の増加を妨げる よう求めた。IARC の研究費は 10 年で 200 万米ドルだった。フィリップ・モリス社は研究に 1 年だけで200 万米ドルを使い、400 万米ドルまで上げた(Ong と Glanz.2000)。

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曝評価で相当な誤分類の結果になったからだ(Baan 等,2011)。 デンマーク研究の著者等は、そのような相当の被曝の誤分類の主な原因を自 身で指摘した(Frei 等,2011)。電話を使わない携帯電話契約者が「被曝」とし て分類された。携帯電話を使う非契約者が「非被曝」として分類された。ヘビ ーユーザーがいる傾向がある法人契約者(200,507 人)が「非被曝」として分 類された。1995 年以降に携帯電話契約をした人(デンマークの人口の 80%以上) が「非被曝」として分類された。ハーデル等が脳腫瘍の非常に高いリスクを関 連させたコードレス電話の大勢の使用者も、「非被曝」として分類された。その 他の限界は、側面(携帯電話を使った頭の側と脳腫瘍の関係)による分析がな いこと、そして実際の被曝データが完全にないことだ。このコホート研究のこ れらと、その他の欠点はもっと詳しく他でも議論されてきた(Ahlbom 等,2007;Söderqvist 等,2012b)。 「大規模で全国的な携帯電話使用に関するコホート研究のこの更新において、 因果関係の小さな証拠を提供する、中枢神経系の腫瘍リスクは増えなかった」 という著者等の結論には十分な根拠が無いことは、これらの限界から明らかだ (Frei 等、2011)。 21.14 神経系腫瘍の全国的な長期傾向を監視する必要性 各国の脳腫瘍に関する全体的な発症データは、症例対象研究で観察された携帯 電話と脳腫瘍の関連性を適格または不適格にするために使われるかもしれない、 と指摘されてきた(Aydin 等,2011;Ahlbom と Feychting,2011;Deltour 等,2012;Little 等,2012)。フレイ[Frei] 等(2011)がデンマーク研究で提示した見解を支持する際 に、アールボムとフェイッチング(2011)は、関連性が高いデンマークがん登録 ではなく、スウェーデンがん登録(1990 年代以降、脳腫瘍発症が全体的に増え ていないことを示す)から、全体的な脳腫瘍の発症データを参照した。 中枢神経腫瘍、とくに悪精度の高い神経膠腫の報告でスウェーデンがん登録 の質は、重く問われてきた(Bergenheim 等,2007;Barlow 等,2009)。デルトワ [Deltour]等の論文(2012)で、スウェーデンは人口と症例の約 40%を明らかに した。従って、スウェーデンがん登録への脳腫瘍症例の過小報告は、確かさが 少ないデルトワ等の研究で結論されるだろう。 デンマークでは、2000 2009 年の間、脳腫瘍と中枢神経系腫瘍(結合)の年 ごとの発症率が、統計学的に有意に増加した。男性は+2.7%(95%CI=1.1-4.3)、 女性は+2.9%(95%CI=0.7-5.2)(NORDCAN)。最近更新された脳腫瘍と中枢神 経系腫瘍の結果が、デンマークで公表された。脳腫瘍と中枢神経系腫瘍の年齢 標準化発症率は、2001 2010 年にかけて男性で 40%、女性で 29%まで増えた (Sundhedsstyrelsen,2010)。 デンマークがん登録に基づく、ごく最近の報道発表は、過去 10 年間で最も悪

表 21.1 無線電話(携帯電話とコードレス電話)の使用と神経膠腫、髄膜種、聴 神経腫のオッズ比(OR)と 95%信頼区間(CI)  同側  >10 年潜伏  >10 年潜伏  合計  >1 年潜伏  OR,CI  OR,CI  OR,CI  神経膠腫(1148 人)    無線電話  —  2.1(1.6-2.8)  1.3(1.1-1.5)  携帯電話  コードレス電話  2.9(1.8-4.7) 3.8(1.8-3.1)  2.5(1.8-3.3) 1.7(1.1-2.6)  1.3(1.1-1

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