事務所ビルの省エネルギー効果予測に関する研究 [ PDF
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(2) 3.サブシステムのモデル化事例. (3) スタティック型氷蓄熱槽. 図-1に空調システムシミュレーションの方法を示す。 基本原理は、他の空調システムシミュレーションと同 じである。問題点をあげるなら、HASP/ACSS/8502. 2). エネルギー面や経済面での利点として、空調システ ムに蓄熱槽を採用することは良く知られていることで. は、. あるが、実際のところ、その普及率が高くなってきた. 作成された時代が1980年代であるため、現在における. のはここ最近である。しかし、電力の平準化の視点か. 建物の空調システムに対応していないものもあるとい. ら考えても、今後蓄熱槽を持ち合わせ建物が増加する. う点である。従って、近年の空調システムの傾向を分. 可能性は否めない。また、蓄熱槽形式の割合を見ても、. 析し、今後省エネルギー効果の予測を行う際に扱う可. 現在採用されている蓄熱システムの大半は水蓄熱と氷. 能性の高いものについてモデル化を行った。以下(1). 蓄熱で、特にここ最近、氷蓄熱の割合が高くなってい. ∼(3)にサブシステムのモデル化事例の背景を示す。. ることが分かる。そこで、今後、建物の省エネルギー. (1). 効果を予測する際にも氷蓄熱槽を扱う機会は当然多く. 個別分散型空調システム. 個別分散型空調システムは、特に中小規模の事務所. なると予想されることから、氷蓄熱槽のモデル化を行. ビルにおいて増加してきている (ここ 4、5 年に竣工し. った。ただし、氷蓄熱槽にも様々な形態があり、今回. た事務所ビルの約 50%) 。その理由として次の 3 つの. のモデル化では、氷蓄熱ユニットとして普及している. 事が挙げられる。. スタティック型氷蓄熱槽とした (水蓄熱槽の計算モデ. ・ 設計、施工が比較的容易. ルについては HASP/ACSS/85022)や HVACSIM+(J)3) の. ・ 室温の個別制御が可能. なかに計算モデルがある) 。また、スタティック型氷. ・ 電気(ガス)料金の分離計測に都合が良い. 蓄熱槽モデルの計算事例としては、後ほど省エネルギ ー効果の予測事例の中で述べることとする。. いる。 直膨コイルモデル. 室内乾球温度(3部屋平均) 外気乾球温度. 10 5. 6. 12. 18. 0. 6. (a) 15 除去熱量[kW]. システムが室温を感知しながら流量や風量を制御し、 結果的に室の設定温度近くに室温が推移していく実際. 0. 6. 12. 18. 0. 表-2. えにくいし、また、一般のビル空調では冷房の湿度制 御を行わないのが普通である。実際に、(1)のモデルと 6月 7月 8月 9月 合計. 膨コイルありの場合でほとんど同値となるが(収束誤. 6. 差により若干の差)、潜熱成分に関しては、直膨コイル 6月 7月 8月 9月 合計. 21%小さくなる。その結果、除去熱量の全熱で約 7%、 エネルギー消費量も約 6%小さくなる。 37-2. 室内相対湿度(3部屋平均). 100. 30. 80. 12 18. 0. 6. 12. 15 18 24 [h]. 8月3日. 直膨コイルなし. 各月積算除去熱量とエネルギー消費量 (a) 直膨コイルあり. 顕熱 4474 7745 9516 5933 27668. 0. 35. 直膨コイルの導入効果. 除去熱量[MJ] 潜熱 全熱 1688 6164 4943 12694 5012 14534 2626 8564 14269 41956. (b). 40. 8月3日. 8月2日. 顕熱 4476 7751 9522 5938 27687. 60 20. 20. 図-2. ありの場合が直膨コイルなしよりも夏期積算値で約. 12. 5. 定温湿度から得られる除去顕熱・潜熱の熱量が、実際. 除去熱量の顕熱成分は、直膨コイルなしの場合と直. 6. 25. (b). 月積算除去熱量とエネルギー消費量を表-2 に示す。. 80. 直膨コイルあり. 室内乾球温度(3部屋平均) 外気乾球温度. 挙げられる。例えば、冷却除湿を考えたとき、室の設. の比較計算を行ったのでその結果を以下の図-2 に、各. 0. 顕熱 全熱(顕熱+潜熱). 8月1日. のコイルでそれらをそのまま同時に処理されるとは考. 30. 15 18 24 [h]. 10. 0. の空調プロセスとは大きな隔たりがあるということが. 12 18 8月2日. 機に適用される。したがって、個別分散型空調システ った。モデル化背景としては、(1)の計算方法が、空調. 100. 20. 8月1日. ムの室内機を前提にして、直膨コイルのモデル化を行. 35. 25. 0 0. 直膨コイルは、個別分散型空調システムなどの室内. 室内相対湿度(3部屋平均). 湿度[%]. 除去熱量[kW]. にわたしてエネルギー消費量を計算する方法を用いて (2). 顕熱 全熱(顕熱+潜熱). 15. エネルギー 消費量[kWh] 412 844 973 538 2767. 直膨コイルなし. 除去熱量[MJ] 潜熱 全熱 1006 5480 3862 11607 4452 13968 1915 7848 11235 38903. エネルギー 消費量[kWh] 412 772 900 525 2609. 60 40 20 0. 湿度[%]. 仮定して得られる処理熱量を空調機あるいは熱源機器. 温度[℃]. の設定温湿度を入力して、それらの両者が実現すると. 温度[℃]. 空調システムシミュレーションの方法としては、室.
(3) 表-3 に空調シミュレーションによる省エネルギー. 表-3. 評価可能空調システム及び省エネルギー手法. . 効果を予測評価可能となった空調システム及び省エネ. . Low-E . ルギー手法を示す。空調システム及び省エネルギー手. 7 . . 法合わせて、約 30 種類程の計算が行えるようになり、. 8 . 2 . 空調システムシミュレーションを行う上で基本となる システムはおよそカバーしていると言ってよい。しか. . . . . し、省エネルギー手法は約 150 種類あるといわれてお. 9 . 4 . り、様々な状況に応じて、モデル化を行う必要がある。. VAV . 5 . 4. 省エネルギー効果の予測事例 図-1 の空調システムシミュレーションの方法およ び表-3 の省エネルギー手法を用いて、実際に省エネル. 0 V W V . . . 6 . ギー効果の予測を行う。表-4、表-5、表-6、表-7、表-8、. . . 図-3、図-4、図-5 に計算対象建物概要、空調機器仕様、 熱源機器仕様、各ゾーンにおける空調機、計算条件、 計算対象建物平面図(空調ゾーニング)、計算対象建物. 2 . Z7 Z6. Z13 Z11. Z12. 率面図および、計算対象建物空調システムを示す。. 300. 5800. 計算対象建物平面図 300. 5800. 5800. 300. 300. 5800. 300 300. 1600. 800 800. 1600. 1600. 1600. 800 800. 1600. 1600. 1600. 800 800. 1600. 1600. 1600. 800 800. 1600. 1600. 1600. 800 800. 1600. 1700 1200. (b) 西側立面図(mm) 2234. 15802. 2234. 810. 10400. 300. 1900. 6560. 300. ― 45,800 24.0 10.36. 1700 1200. 70,200 ― 31.8 ―. (c) 南側立面図(mm) 図-4 CHS. 冷温水往管. CHR. (d) 北側立面図(mm). 計算対象建物立面図. 冷温水還管. AHU-2. 水用熱交換 CHR. ブライン用熱交換. バイパス. FCU-8. CHR. 計算条件. AHU-1. ・・・. ZONE 番号 Z1 , Z3 , Z4 , Z6 , Z7 Z8 , Z10 , Z11 , Z12 , Z13 Z2 (4 台), Z5 (1 台), Z9 (3 台). FCU-1. 標準気象データ(福岡). 計算期間. 夏期(6 月∼9 月). 計算時間間隔. 1 分間隔. 空調時間帯. 8∼20 時. 蓄熱時間帯. 22:00∼翌 7:58. 空調時設定温度 計算対象ゾーン空調面積. 26.0℃ 658.0m2. 2700. 1500. 庇↓. 200. 製氷 ― ―. 1700. 4000. 1500. 4300. 2700. 冷房 360,480 1,062,480. 1200. 200. 2700. 1500. 300. (a) 東側立面図(mm). FCU 2.4 2.4 0.02 680 10 8. バイパス. 空調機器 AHU-1(1 階インテリア系統) AHU-2(2 階インテリア系統) FCU (ペリメータ系統). 5800. 300. 300. 2700. AHU-2 6836 41.9 5.5 12400 170 1. 各 ZONE における空調機器. 表-8. 300. 300. 1500. 300. 熱源機器仕様. チラー冷却能力[kcal/h] ブライン能力[kcal/h] 消費電力[kW] 水張量[m3]. 気象データ. 5800. 2 階平面図. (b). 1500. AHU-1 37.2 31.4 3.7 7400 107 1. 蓄熱容量[kcal] 日量冷却能力[kcal/d]. 表-7. 図-3 1510 300. N. 1 階平面図. 200. 表-6. (a). 空調機器仕様. 冷房定格能力[kW] 暖房定格能力[kW] 送風機定格入力[kW] 送風量[m3/h] 流量[L/min] 台数[台]. Z9 N. 200. 表-5. Z8. Z10. Z4 Z5. Z2. 熊本県玉名市亀甲字前田 事務所ビル 2783m2 822m2 2057m2 地上 3 階 4.2m RC 造. : : : : : : : :. CHS. 所在地 主要用途 敷地面積 建築面積 延床面積 階数 階高 構造. Z3. Z1. 計算対象建物概要. CHS. 表-4. 2次側 冷温水ポンプ CHS. (a). 氷蓄熱チラー. CHR. システム系統図 図-4. 37-3. 氷蓄熱槽. ブラインポンプ. (b). 冷温水ポンプ. 三方弁. 氷蓄熱チラー. 計算対象建物空調システム概要.
(4) 10. IPF(×10)[%] 蓄熱槽内温度[℃]. 4. 40. 2. 20. 0 0. 省エネルギー手法. 6. 12. 18. 0. 6. 12. 8月1日. case8. case7. case6. case5. case4. case3. case2. 0. 各ケースにおける一次エネルギー消費量. 560 540 520 500. も低い 6 月及び 9 月の 8 時∼9 時においては有効な手. 図-7. case8. 460. case7. 480. case6. いことが分かる。例えば、case3 は外気温度が室温より. . 100. case4. てその手法が必ずしも省エネルギーになるわけではな. . 200. case3. は省エネルギー手法と考えられているが、各月におい. 0 24. 300. case2. ランニングコスト[千円]. 図-6、図-7、図-8 より、各ケースともに、一般的に. 18. 8月3日. . 図-6. ランニングコストを示す。. 12. 400. case におけるランニングコスト、各月における一次エ ネルギー消費量を、表-10 に一次エネルギー消費量と. 6. 熱源機器系時変化. 500. case1. 変化、各ケースにおける一次エネルギー消費量、各. 0. 8月2日. 図-5. 図-5、図-6、図-7、図-8、に熱源機器(氷蓄熱槽)系時. 18. case5. 従来システム 室設定温度変更(26℃→28℃) 予冷・予熱時の新鮮外気導入のカット 新鮮外気導入量の二酸化炭素制御 case2+case3+case4 冷水送水温度変更(7℃→5℃) 冷水送水温度変更(7℃→9℃) case2+case6 case2+case7 case2+case3+cacse4+case6. case1. 検討ケース case1 case2 case3 case4 case5 case6 case7 case8 case9 case10. 省エネルギー効果検討ケース. 一次エネルギー消費量 [GJ]. 表-9. 60. case10. ステムにおいて検討し易い手法とした。. 80. 6. case10. てよく用いられている手法の中で、対象建物の空調シ. 8. case9. 検討ケースは、比較的に省エネルギー改修工事におい. 100. case9. 表-9 に省エネルギー効果検討ケースを示す。今回の. 蓄熱槽内水温度 熱源生産熱量. 熱源消費電力[kW] 熱源生産熱量[kW]. IPF 熱源消費電力. 5.計算結果と考察. 各 case におけるランニングコスト. 上げることによって省エネルギーとなることが多いが、 この事例の場合は熱源(氷蓄熱)の特性上、下げたほう が省エネルギーとなる。以上のことを考慮すると、今 回の事例において最も省エネルギーとなる手法は、6 月及び 9 月に case8 を、7 月及び 8 月には case10 を用 いる手法で、従来システムと比較して、約 12%の省エ ネルギー効果が、ランニングコストとしては約 10%の 省コストが期待できる。. 一次エネルギー消費量 [GJ]. 法とはならない。また、通常夏期には冷水送水温度を case1 case6. 際の事務所ビルに対して省エネルギー効果予測シミュ レーションを行い、エネルギー面・経済面で評価をし た。今後の課題として、その他のサブシステムのモデ ル化及び、実測値とシミュレーションの精度確認が挙 げられる。 【参考文献】 1) 建築設備技術者協会:HASP/ACLD/8501 解説,1986 年,2 月 2) 建築設備技術者協会:HASP/ACSS/8502 解説,1986 年,2 月 3) 空気調和・衛生工学会コミッショニング委員会 WG:HVACSIM+(J)利用者マニュアル, 1998.4 4) 井崎智伸他 4 名:制御系・搬送系を考慮した建物の空調システムシミュレーション, 九州大学大学院人間環境学研究院紀要 第 5 号. 37-4. case5 case10. 110 100 90 80 70 60 6. 表-10. 本となるサブシステムのモデル化を行った。また、実. case4 case9. 120. 図-8. 方を示し、今後の省エネルギー効果予測を行う際の基. case3 case8. 130. 6.おわりに 本研究では、空調システムシミュレーションの考え. case2 case7. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10. case8 case2 case9 case10 case5 case6 case1 case7 case3 case4. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10. case10 case5 case8 case2 case9 case6 case4 case1 case3 case7. 7. 8. 9. 各月における一次エネルギー消費量 一次エネルギー消費量とランニングコスト 6 77553 77611 77702 79645 79692 88939 89202 89528 89836 90030 8 110936 111901 111863 112685 113825 121104 120639 122608 122363 124165. 108.2 108.3 108.4 110.8 110.9 119.7 119.7 119.8 120.6 120.8. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10. case10 case8 case5 case2 case9 case4 case6 case1 case3 case7. 141.8 141.6 142.9 142.5 142.7 155.3 152.2 155.0 154.6 155.1. 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10. case8 case2 case9 case10 case5 case6 case4 case1 case3 case7. 7 103107 103163 103808 103885 104613 114711 115669 116813 116546 118012 9 89435 89816 90142 90765 91181 99061 99539 99742 100171 100553. 134.4 134.6 134.1 134.3 134.4 146.7 149.4 149.3 148.9 149.5 119.2 119.2 119.2 121.0 121.0 130.1 129.8 130.0 130.5 130.2. 左:一次エネルギー消費量[GJ] ,右:ランニングコスト[千円].
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