第
1
章多変数の関数と偏微分
1.1
多変数の関数独立変数がひとつの関数
y = f(x)
は,1
変数の関数 という.独立関数がふたつ以上の関数を考えることができる.
とくに独立変数が二つの関数,つまり数のペア
(x, y)
に対して,ひとつの数を対応させる規則f : (x, y) 7→ z (1.1)
を
2
変数関数という.これを,z = f (x, y)
ともかく.独立変数が
3
つ,4
つ,一般にはn
個ある関数も考え られる.n
変数の関数はy = f (x 1 , x 2 , . . . , x n )
などとあらわす.
例
1.1.1 (2
変数関数の例)
• f (x, y) = x 2 + y 2
• f (x, y) = ax 2 + 2bxy + cy 2
• f (x, y) = x
13y
23• f (x, y) = exp( − x 2 + y 2 )
• f (x, y) = ln x + ln y
• f (x, y) = x ln y
2
変数の関数のグラフは,(x, y, f (x, y))
というすべて の点の集まりで,図にするとx − y
平面上の点に高さf (x, y)
を対応させて書いた空間内の曲面になると考えてよい.
例
1.1.2 (
グラフ)
f (x, y) = − x 2 − y 2 + 15
のグラフは図1.1
ようになる.1.2
偏微分1.2.1 2
変数の関数を1
変数の関数と見る2
変数関数z = f (x, y)
は,2
つの変数のうち1
つを 固定すると1
変数の関数になる.-2 -1
0 1
2 x
-2 -1
0 1
2 y
8 10 12 14
z
-2 -1
0 x 1 -2
-1 0 y 1
図
1.1 f(x, y) = − x
2− y
2+ 15
のグラフy
をy 0
に固定してx
だけを変数とするとf (x, y 0 )
はx
に関する1
変数の関数になり,x
をx 0
に固定してy
だ けを変数とするとf (x 0 , y)
はy
に関する1
変数の関数 になる.このときのグラフは空間内の曲線になる.例
1.2.1
f (x, y) = − x 2 − y 2 + 15
においてy = − 1
として固定 するとf (x, − 1) = − x 2 − ( − 1) 2 + 15
= − x 2 + 14 x = 0
として固定するとf (0, y) = − y 2 + 15
z = f (x, − 1)
のグラフは図1.2
での曲面上の線分のよう になります.1.2.2
偏微分2
変数関数z = f (x, y)
は,y
をy 0
に固定してx
だけ を変数と考えた関数f (x, y 0 )
がx = x 0
で微分できると き,(x 0 , y 0 )
でx
に関して偏微分可能といいます.その微分係数を関数
f
のx
に関する(x 0 , y 0 )
における2
第1
章 多変数の関数と偏微分-2 -1
0 1
2 x
-2 -1
0 1 y 2
8 10 12 14
z
-2 -1
0 1
2 x
-2 -1
0 1 y 2
図
1.2 1
変数の関数にすると偏微分係数といって
f x (x 0 , y 0 )
,∂f (x 0 , y 0 )
∂x
,∂f
∂x (x 0 , y 0 )
などとかきます.2
変数関数z = f (x, y)
は,x
をx 0
に固定してy
だけ を変数と考えた関数f (x 0 , y)
がy = y 0
で微分できるとき,
(x 0 , y 0 )
でy
に関して偏微分可能と いいます.その微分係数を関数f
のy
に関する(x 0 , y 0 )
における偏微分係数といってf y (x 0 , y 0 ), ∂f(x 0 , y 0 )
∂y
,∂f
∂y (x 0 , y 0 )
などとかきます.ここで
∂
はラウンドD
などと読みます.例
1.2.2 (
偏微分係数)
f (x, y) = − x 2 − y 2 + 15
においてy = − 1
としてf (x, − 1) = − x 2 + 14
である.これは1
変数の関数で導 関数は− 2x
なので,f(x, y)
の(1, − 1)
におけるx
に関 する偏微分係数は− 2
である.f (x, y) = − x 2 − y 2 + 15
においてx = 0
としてf (0, y) = − y 2 + 15
である.これは1
変数の関数で導関 数は− 2y
なので,f (x, y)
の(0, − 1)
におけるy
に関す る偏微分係数は2
である.■グラフ上の意味 うえでの述べたように
2
変数関数の ふたつの独立変数のうちひとつの変数を固定すると曲線 になるのでその曲線のについて接線を変数が変化する方 向にとって,その接線の傾きが考えられる.この接線の 傾きが偏微分係数になる.例
1.2.3
図
1.3
は,f (x, y) = − x 2 − y 2 + 15
において,x = 0
と固定してできる曲線と,その曲線のy = − 1
つまり-2 -1
0 1
2 x
-2 0 y 2
7.5 10 12.5 15 17.5
z
-2 -1
0 1
2 x
-2 0 y 2
図
1.3
曲面上の曲線とその接線(0, − 1)
における接線を示している.この接線の傾きがf (x, y)
の(0, − 1)
におけるy
に関する偏微分係数であ り,2
である.1.2.3
偏微分係数の定義1
変数の関数y = f (x)
については,h → 0
のときf (x 0 + h) − f (x 0 )
h → α
のとき
x = x 0
で微分可能といって,α
を微分係数とよ んだ.2
変数関数の偏微分は,1
変数関数と考えて微分してい るから定義は以下のようになる.定義
1.2.1 (
偏微分係数の定義) h → 0
のときf(x 0 + h, y 0 ) − f (x 0 , y 0 )
h → α
となるならば,
2
変数関数z = f (x, y)
は,(x 0 , y 0 )
でx
に関して偏微分可能であるといい,α
を関数f
のx
に 関する(x 0 , y 0 )
における偏微分係数という.h → 0
のときf (x 0 , y 0 + h) − f (x 0 , y 0 )
h → β
となるならば,
2
変数関数z = f (x, y)
は,(x 0 , y 0 )
でy
に関して偏微分可能であるといい,β
を関数f
のy
に関 する(x 0 , y 0 )
における偏微分係数という.1.3
偏導関数1
変数関数y = f (x)
の導関数とは,任意のx
にたい して,その点での微分係数を対応させる関数f
′: x −→ f
′(x)
のことでした.
2
変数関数z = f (x, y)
に対して,任意の(x, y)
に対 して,その点でのf
のx
に関する偏微分係数を対応さ せる関数f x : (x, y) −→ f x (x, y)
をf
のx
に関する偏導関数といってf x (x, y), ∂f (x, y)
∂x
,∂f
∂x (x, y)
などとかきます.同じように,任意の
(x, y)
に対して,その点でのf
のy
に関する偏微分係数を対応させる関数f y : (x, y) −→ f x (x, y)
をf
のy
に関する偏導関数といってf y (x, y), ∂f (x, y)
∂y
,∂f
∂y (x, y)
などとかきます*1.
1.4
偏導関数の計算具体的な関数で偏導関数は固定している方の変数を定 数とみなして
1
変数の関数の導関数を求める計算すれば もとめられます.1
変数関数の導関数を計算すればよい ので,1
変数関数の導関数の公式はすべて使えます.例
1.4.1 (
偏導関数をもとめる) 1. f (x, y) = 2x − 3y
x
に関する偏導関数をもとめるときはy
を定数と みて,x
だけが変数の関数として微分する.した がって,f x (x, y) = 2
y
に関する偏導関数をもとめるときはx
を定数と みて,y
だけが変数の関数として微分する.した がって,f y (x, y) = − 3
.2. f (x, y) = 2xy 2
x
に関する偏導関数をもとめるときはy
を定数 と み て ,x
だ け が 変 数 の 関 数 と し て 微 分 す る .f (x, y) = (2y 2 )x
であり,2y 2
の部分が定数でx
の 係数となっているのでf x (x, y) = 2y 2
y
に関する偏導関数をもとめるときはx
を定数 と み て ,y
だ け が 変 数 の 関 数 と し て 微 分 す る .*1関数は作用のことですから,変数は書かずに,fyや
∂f
∂y
が導 関数とあらわすとも考えますf (x, y) = (2x)y 2
であり,2x
の部分が定数でy 2
の 係数となっている.
したがって,
f y (x, y) = 4xy
.3. f (x, y) = y 2 e x
x
に関する偏導関数をもとめるときはy
を定数 と み て ,x
だ け が 変 数 の 関 数 と し て 微 分 す る .f (x, y) = (y 2 )e x
であり,y 2
の部分が定数でe x
の係数となっている.
f x (x, y) = y 2 e x
y
に関する偏導関数をもとめるときはx
を定数 と み て ,y
だ け が 変 数 の 関 数 と し て 微 分 す る .f (x, y) = (e x )y 2
であり,e x
の部分が定数でy 2
の係数となっている.
したがって,
f y (x, y) = 2ye x
.4. f (x, y) = xy 2 e x
x
に関する偏導関数をもとめるときは, f (x, y) = (xy 2 )(e x )
とみて積の微分公式を使う.f x (x, y) = (xy 2 )
′e x + xy 2 (e x )
′= y 2 e x + xy 2 e x
= (xy 2 + y 2 )e x
ここで′は
x
で微分していることをあらわす.f (x, y) = xe x y 2
なのでf y (x, y) = 2xye x
.1.5
限界概念と偏微分ふたつの経済変量
x
とy
のあいだにy = f (x)
という関係があるとき,
x
をx 0
から1
単位(あるいは 微少量)増加させたときのy
の増加量∆y = f (x 0 + 1) − f (x 0 )
を限界的増分といって,これは微分では微分係数
f
′(x 0 )
に対応するのでした.例
1.5.1 (
限界費用と限界効用)
1.
生産量q
とコストC
のあいだにC = C(q)
という 関係があるとき,C
′(q 0 )
を生産量q 0
における限界 費用,導関数C
′(q)
を限界費用関数という.2.
財の消費量x
に対して,その消費からえられる効 用をu = u(x)
とするとき,u
′(x 0 )
を消費量x 0
に4
第1
章 多変数の関数と偏微分おける限界効用,導関数
u
′(x)
を限界効用関数と いう.偏微分はひとつの変数を固定して,もう一方の変数を 変化させる微分だったので,偏微分係数についても限界 概念があてはまります.
2
変数関数z = f (x, y)
の場合 には,一般的に∆z = f (x 0 + ∆x, y 0 ) − f (x 0 , y 0 )
≈ f x (x 0 , y 0 )∆x
∆z = f (x 0 , y 0 + ∆y) − f (x 0 , y 0 )
≈ f y (x 0 , y 0 )∆y
です.ここで
≈
は近似的に等しいという記号でした.x
の増分∆x
を1
単位あるいはy
の増分∆y
を1
単位 として,これらが小さな変化量とみなせるときは∆z = f (x 0 + 1, y 0 ) − f (x 0 , y 0 )
≈ f x (x 0 , y 0 )
∆z = f (x 0 , y 0 + 1) − f (x 0 , y 0 )
≈ f y (x 0 , y 0 )
となり,限界概念が偏微分係数であらわせます.
例
1.5.2
1.
ふたつの財の消費を考える.第1
財の消費量x
と 第2
財の消費量y
の組み合わせからえられる効用 をu = u(x, y)
とする. u x (x 0 , y 0 )
を消費量(x 0 , y 0 )
における第1
財の限界効用,偏導関数u x (x, y)
を 第1
財の限界効用関数という.u y (x 0 , y 0 )
を消費 量(x 0 , y 0 )
における第2
財の限界効用,偏導関数u y (x, y)
を第2
財の限界効用関数という.2.
ふたつの生産要素を投入して生産がおこなわれる とする.第1
の生産要素の投入量をx
,第2
の生産 要素の投入量をy
として,生産量はF(x, y)
になる とする.F x (x 0 , y 0 )
を投入量(x 0 , y 0 )
における第1
要素の限界生産力,偏導関数F x (x, y)
を第1
要 素の限界生産力関数という.F y (x 0 , y 0 )
を投入量(x 0 , y 0 )
における第2
要素の限界生産力,偏導関数F y (x, y)
を第2
要素の限界生産力関数という.例
1.5.3 (
数値例)
f (x, y) = x 2 + xy + y 3
とする.f x (x, y) = 2x + y f y (x, y) = x + 3y 2
です.f (201, 100) − f (200, 100) = 501 f x (200, 100) = 500
なので
f (201, 100) − f (200, 100) ≈ f x (200, 100)
です.
f (200, 101) − f (200, 100) = 30501 f y (200, 100) = 30200
となり,絶対的な誤差は大きいのですが,相対的な誤 差は
30501 − 30200
30501 = 0.00986853 = 1%
となっているので,この意味で
f (200, 101) − f (200, 100) ≈ f y (200, 100)
です.1.6
変数が2つより多い関数独立変数が
n
個ある関数をn
変数の関数といいます.これは
n
個の数の組み合わせにたいして1つの数を対 応させる規則です.f : (x 1 , x 2 , . . . , x n ) −→ y
これを
y = f (x 1 , x 2 , . . . , x n )
などとあらわす.
偏微分や偏導関数は2変数のときと同じように考える ことができます.たとえば
x 1
に関する偏導関数は,x 2
から
x n
を定数をみなして,x 1
に関して導関数をもとめ ればえられます.一般にx i
に関する偏導関数は,x i
を 除く変数をすべて定数とみなしてx i
に関する導関数を もとめればえられます.これをf x
i(x 1 , x 2 , . . . , x n ), ∂f
∂x i
(x 1 , x 2 , . . . , x n )
などとかきます.変数の並びの順を意識しておいて
f i (x 1 , x 2 , . . . , x n )
とかくこともあります.例
1.6.1
f (x 1 , x 2 , x 3 ) = x 1 x 2 2 x 3 3
のときf 1 (x 1 , x 2 , x 3 ) = x 2 2 x 3 3
f 2 (x 1 , x 2 , x 3 ) = 2x 1 x 2 x 3 3
f 3 (x 1 , x 2 , x 3 ) = 3x 1 x 2 2 x 2 3
練習問題