当院における大腿骨近位部骨折患者の現状
北尾康介1) 出口裕道1) 竹内幸子1) 田島正稔2) 高北久嗣2) 奥野一真2)
1)三重県立志摩病院 理学療法室
2)三重県立志摩病院 整形外科
目的:平成23年、志摩市の高齢化率は31.15%
と全国平均 23.1%を上回り、今後更なる高齢 化率の上昇が予想されている。そこで、高齢 者に頻発し、臥床生活の誘因となる大腿骨近 位部骨折(頸部・転子部骨折)の患者数は今後 増加することが予測される。今回、当院にお ける大腿骨近位部骨折患者の現状を退院先別 に調査し、その特徴を考察したのでここに報 告する。
方法:対象は当院にて2009年4月から2011 年8月までに大腿骨近位部骨折の観血的治療 を受けた65歳以上の女性であり、当院クリテ ィカルパス適応となった者を選択した。方法 は対象を自宅に退院した者(以下、自宅群)と 施設または転院した者(以下、施設群)の 2 群 に分類し、年齢、BMI、骨折型・側、術前期 間、リハ実施日数、発症前・退院時移動機能 (FIM にて点数化)、既往歴(整形、脳血管、
心臓・呼吸器疾患、糖尿病の各疾患の有無)
の各項目について差の検定を行った。
結果:対象は全89例であり、自宅群45例、
施設群44例であり、年齢、骨折型、リハ実施 日数、発症前・退院時移動機能の項目で有意 差を認め、その他項目は有意差を認めなかっ た。自宅群の平均年齢は 83.48 8.55 歳 (p=0.66)、施設群87.11 5.53歳(p=0.39)であっ た。自宅群の骨折型は頸部19 例、転子部26 例、施設群頸部9 例、転子部35 例であった (P<0.05)。自宅群のリハ実施日数は平均25.26
8.76(p=0.33) 、 施 設 群 平 均 16.75
7.90(p=0.36)であった。自宅群の発症前移動機 能は平均6.31 0.46(p=2.22E-19)、施設群平均 3.88 2.85(p=1.21E-10)であった。自宅群の退 院時移動機能は平均 5.51 1.72(p=1.52E-11)、 施設群平均2.09 2.54(p=2.23E-12)であった。
考察:年齢において、自宅群の年齢幅は65~99 歳、施設群は75~99歳と自宅群の年齢幅が広 い状態にあり、60~70 歳代の比較的若い方は 在宅復帰の可能性が高くなると考えた。骨折 型においては自宅群の頸部骨折の割合が高い 傾向にあり、先行研究にある加齢に伴う骨折 型比率の変化を示唆しているものと考えた。
発症前の移動機能は自宅群で全例歩行自立、
内独歩14例、補助具使用31例、施設群は59%
が自立、内独歩6例、補助具使用19例であっ た。退院時、自宅群は 86.6%が歩行自立、内 独歩5例、補助具使用33例、施設群は25%
が自立、内補助具使用11例となった。自宅群 は発症前から独歩など移動機能が高く、発症 後の移動機能の低下は自立歩行レベルに留ま るケースが多いが、対して施設群は発症前か ら補助具使用例が多く、発症後の移動機能は 一段階落ち込み、介助歩行に至ったと考えた。
リハ実施日数については、発症前移動機能の 高い自宅群では自立歩行といった比較的高い goalや在宅復帰に向けた環境調整などに時間 を要したと推測する。
まとめ:年齢および自立歩行は転帰に影響を 及ぼす可能性があり、今後は社会的環境も視 野に含め検討していきたい。
大腿部近位悪性骨軟部腫瘍における腫瘍用人工関節置換術後の歩行獲得 状況
坂本妙子1)直江祐樹1)山口和輝1)谷有紀子1)岡嶋正幸1)野首清矢1)南端翔多1) 松原孝夫2)(MD)
1)三重大学医学部附属病院 リハビリテーション部
2)三重大学大学院医学系研究科運動器外科学 まつばら演題名と小本文は10行目から
目的:四肢悪性骨軟部腫瘍に対する治療は,
再建方法の発達等により患肢温存手術が主流 となっているが,一般的な人工関節に比べ患 肢機能の低下は著しい.中でも大腿部近位悪 性骨軟部腫瘍に対する広範切術は,腫瘍と隣 接する股・膝関節周囲筋や,大腿骨頭・大転 子を一塊として摘出する必要があり,患肢機 能のさらなる低下が予想される.今回当院に て,大腿骨近位腫瘍用人工関節による患肢温 存手術を行った悪性骨軟部腫瘍3例に対し,
術後歩行獲得状況を検討したので報告する.
対象:対象は大腿部悪性骨軟部腫瘍により大 腿骨近位腫瘍用人工関節置換術を行った3例 で,骨腫瘍2例,軟部腫瘍1例であった.
症例1:40歳代男性.左大腿近位骨幹部Ewing 肉腫.大腿骨周囲筋を切離,大転子頂部から 16cmを骨切り,腫瘍を一塊として切除し,腫 瘍用人工骨頭による再建を行った.術後 12 日目に歩行開始し,MMT は股関節屈曲・外 転1,膝伸展2であった.術後18日目に両松 葉杖歩行を獲得,MMT は股関節屈曲・外転 1~2,膝伸展 3 であった.術後化学療法を行 いながら理学療法を継続し,術後137日目に T字杖獲得,MMTは股関節屈曲 3,外転2, 膝伸展3,ISOLS患肢機能は43%であった.
症例2:60歳代男性.右大腿骨転子部骨肉腫.
股関節周囲筋を切離,大転子頂部から 17cm を骨切り,臼蓋の一部と腫瘍を一塊として切 除,腫瘍用人工股関節による再建を行った.
術後 13 日目に歩行開始,MMT は股関節屈
曲・外転1,膝伸展1~2であった.術後19日 目に両松葉杖歩行獲得,MMT は股関節屈 曲・外転2,膝伸展2であった.術後化学療 法を行いながら理学療法を継続,術後95日目 にT字杖獲得,MMTは股関節屈曲・外転2,
膝伸展2で,ISOLS患肢機能は50%であった。
症例3:70歳代男性.左大腿部軟部肉腫.原発 巣である中間広筋を全切除,大腿直筋・外側 広筋・内側広筋を一部切除,大転子頂部から 20cmを骨切り切除し,腫瘍用人工骨頭による 再建を行った.術後8日目より歩行開始し,
MMTは股関節屈曲・外転1,膝伸展1であっ た.術後26日目に両松葉杖歩行獲得,MMT は股関節屈曲1・外転2,膝伸展1であった.
術後化学療法は行わず,術後 53日目にT字 杖獲得,MMTは股関節屈曲2,外転3,膝伸 展2,ISOLS患肢機能は56%であった.
考察:大腿骨近位腫瘍用人工関節置換術では,
両松葉杖歩行獲得までに平均21日を要し,切 除骨及び切除筋肉量に比例し,時間を要する 傾向がみられた.またT字杖歩行獲得までの 期間は平均95日であったが,術後化学療法を 行った2例では時間を要する傾向がみられた.
全例の最終患肢機能評価は平均 49.6%で,大 腿骨近位腫瘍用人工関節置換術は,患肢機能 が低下する傾向があった.また,術後化学療 法による安静や体調不良等により,理学療法 期間が遷延することがあるため,機能予後を 的確に捉えて目標設定を行い理学療法を行う ことが必要であると考えられた.
肩鎖関節脱臼症例の挙上における小経験
松村昭彦1) 森統子2) 山本紘之2) 1)岡波総合病院 2)いまむら整形外科
【はじめに】 肩鎖関節脱臼に対する整復固 定術を施行し、抜釘直後に肩鎖関節に亜脱臼 を認めた症例を経験した。肩関節挙上時の肩 甲骨上方回旋と筋活動に着目した。先行研究
(肩鎖関節脱臼Tossy分類Ⅲ型)では、肩関 節屈曲・外転時の患側肩甲骨の上方回旋は運 動初期で低値を示すが、後期で改善されたと 報告がある。しかし今回、先行研究と若干の 異なる結果を得たので、考察を加え報告する。
【症例紹介】 70歳男性。交通事故にて、右 肩を強打し受傷。肩鎖関節脱臼(Tossy 分類
Ⅲ型)、肩甲骨関節窩骨折(Ideberg 分類
Type3)と診断された。手術にて肩鎖関節を
k-wire で固定し、肩峰骨折部は k-wire と tension band wiringで固定、烏口突起基 部・関節窩に対してはscrewで固定した。手 術所見より円錐靭帯は正常であったが、菱形 靭帯の不全断裂を認めた。5 週後、肩鎖関節 のk-wireのみ抜釘し、抜釘直後の脱臼程度は Tossy分類Ⅱ型であった。
【理学療法経過】靭帯や軟部組織の修復を考 慮して、7週までは、屈曲90 までのstooping exを施行した。7週目より肩関節運動を全可 動域にわたって行い、10週後ROM・筋力共 に改善し、PT終了とした。
【対象と方法】 肩鎖関節脱臼Tossy分類Ⅱ 型である。肩甲骨上方回旋角度は肩甲棘の傾 斜角度とし、肩関節屈曲・外転時での40 ・ 90 ・140 の肩甲骨上方回旋角度を測定し た。また、肩関節屈曲・外転での筋収縮も触
診にて評価した。
【結果】 肩関節屈曲40 ・90 ・140 で の肩甲骨上方回旋角度は、健側11 ・20 ・ 36 、患側8 ・16 ・37 で先行研究同様 90 までは低値を示したが、140 以降は改 善された。肩関節外転40 ・90 ・140 で の肩甲骨上方回旋角度は、健側16 ・31 ・ 44 、患側 15 ・30 ・47 で先行研究と 異なり、健側・患側間誤差は少なかった。触 診より、屈曲・外転共に140 以降に僧帽筋 上部線維の過剰な収縮を認めた。さらに外転 では、運動早期から僧帽筋中部線維の過剰な 収縮を認めた。
【考察】 先行研究は菱形靭帯・円錐靭帯共 に断裂があるが、本症例は円錐靭帯は正常で ある。屈曲初期では肩甲骨上方回旋角度に健 側・患側間で差を認めたが、外転初期では先 行研究とは異なり差は認めなかった。これに は、円錐靭帯や僧帽筋が関与していると思わ れる。
右膝蓋骨開放骨折の一症例
服部司1) 見田忠幸2) 奥山智啓2) 清水恒良3) 奥山あずみ4)
1)岡波総合病院 リハビリテーション科
2)秋山整形外科クリニック リハビリテーション科
3)平成記念病院 リハビリテーション科
4)ひぐち整形外科クリニック リハビリテーション科
は じ め に : 右膝蓋骨開放骨折に対し、Self locking pin and circumferential wiring(以下ひま わり法)が施行された症例の理学療法を経験 した。ひまわり法は様々な骨折型に対応し、
早期から可動域訓練が行え、治療成績が良い とされている。今回の症例に対しても早期か ら可動域訓練を実施していたが外側軟部組織 の開放創による大きな損傷があり、外側構成 体組織には早期から十分なアプローチを行う ことができなかったため、可動域・筋力の改 善ができなかった。開放創沈静と同時に皮切、
外側軟部組織を徹底的にアプローチした結果、
良好な成績が得られたので考察を踏まえ報告 する。
症例紹介:症例は交通事故にて受傷した 60 歳代女性である。当院救急搬送され、右膝蓋 骨開放骨折(Gustilo 分類:ⅢA)と診断され た。デブリドマンおよび抗生剤投与、ニーブ レースを装着した。受傷10日後にひまわり法 が施行され、翌日より理学療法処方、術後 1 週より可動域(以下Rom)訓練開始となった。
初診時評価:右膝関節周囲に熱感を認め、
右膝関節周囲から足背にかけて浮腫が認めら れた。Romは膝関節屈曲40 伸展0 であっ た。屈曲時に膝蓋骨外上方偏位が見られた。
徒手筋力検査は屈曲3レベル、伸展2レベル であった。また、中間広筋、外側広筋、内側 広筋、腸脛靭帯、外側膝蓋支帯に圧痛が認め られた。
経過および理学療法:術後より浮腫管理、
膝蓋上嚢・中間広筋持ち上げ操作、皮膚・皮 下組織の癒着予防を実施した。また、二関節 筋の特徴を利用し、スリングによる股関節の 自動介助運動を実施することにより間接的に 膝周囲筋の滑走性を引き出した。術後1週よ りRomの許可が処方され、積極的に膝蓋骨モ ビライゼーション、大腿四頭筋の選択的筋収 縮、筋力向上訓練を行った。しかし、術後 6
週よりRom・筋力ともに停滞したため、更な
る改善を踏まえ開放創であり大きな癒着が考 えられた外側広筋、外側膝蓋支帯への剥離操 作を繰り返した結果、術後10週で膝関節屈曲 150 、伸展0 を獲得した。筋力は屈曲5レ ベル、伸展4+レベル、lag0 となった。
考察:直達牽引による強い外力が加わり粉砕 骨折と同時に軟部組織にも大きな損傷が生じ ていた。ひまわり法の発案者である田中らは 術直後から強固な固定で、早期からのRom・ 筋力訓練が可能であると述べており、実際に 症例は早期から積極的に訓練を実施できた。
しかし、外側部に開放創があり閉塞後も化膿 し、その部分だけには十分なアプローチが出 来なかったため、術後6週よりRom・筋力と もに治療と結果が結び付かなく停滞した。皮 切部だけではなく、外側膝蓋支帯の一部も縫 合してあり、癒着による皮下での滑走性の低 下が残存していると考え、外側広筋・大腿筋 膜張筋も含め集中的に剥離操作・筋力向上訓 練を繰り返した結果、良好な成績が得られた と考えた。
陳旧性前十字靱帯損傷を呈した症例に対する理学療法の経験
榎下綾乃、野呂吉則、山口尚子、大熊晶、川口尚英、梶間康之 医療法人MSMCみどりクリニック
はじめに:
今回、左陳旧性前十字靱帯損傷と両膝蓋骨 亜脱臼を合併している症例を担当した。不良 なアライメントと筋力低下による歩行動作を 改善するため、筋力強化を主に取り入れた理 学療法を実施したので結果と考察を報告する。
症例紹介:
30代女性、平成23年10月に浴室のマット で滑り、左下肢で踏ん張った際に左膝痛を発 症。受傷3日後に当院を受診し、左陳旧性前 十字靭帯損傷、両膝蓋骨亜脱臼と診断。保存 療法が選択され、理学療法開始となった。主 訴は歩くときに膝に力が入らない。既往歴と して、18歳の時にキックベースで受傷、他院 にて左膝前十字靱帯損傷と診断。保存療法を 約1年実施していた。その他は子宮筋腫摘出 術実施、自律神経障害、うつ病がある。
評価:
左膝関節の整形外科的テストは
Mcmurray’s test、Anterior drawer test、Lachman’s test、すべて陽性。両側のPatella
apprehension testは陰性。両側FTA170 。 関節可動域測定(以下ROM)は両膝屈曲 145 、伸展においては左10 、右5 の過 伸展がある。両足関節背屈、膝屈曲位25 、 伸展位10 。両側Leg-heel angleは内反10 。 徒手筋力検査(以下MMT)は膝屈曲・伸展3、
股関節外転・外旋4であった。
動作観察では歩行動作と片脚立位を行った。
歩行動作ははさみ脚様歩行である。踵接地で
は両足関節の背屈が少なく、左足関節回外が 右に比べ大きい。左立脚期に Duchenne 様現 象がみられた。左下肢には外側ホイップがみ られる。左片脚立位では、過度に股関節内旋 がみられ体幹が右側屈し保持困難である。右 片脚立位は安定している。
結果と考察:
歩行動作を各評価から考察した。はさみ脚 様歩行・Duchenne様現象は中殿筋・外旋筋群 の筋力低下が原因と考えた。主訴は大腿四頭 筋・ハムストリングスの筋力低下が原因と考 える。これに対し約10週間、中殿筋・外旋筋 群に対し筋力訓練、大腿四頭筋・ハムストリ ングスに対し、squatなどを行った。歩行指導 は現在の歩行動作をフィードバックし膝関節 と足尖を進行方向に向けるよう指示をした。
結果、MMT膝関節屈曲・伸展 4に向上。
歩行動作ははさみ脚様歩行の改善がみられた
が、Duchenne様現象は残存した。また膝に力
が入るようになってきたと患者の訴えも変化
した。Duchenne様現象の残存は中殿筋の筋力
改善が不十分であったと考える。
まとめ:
陳旧性前十字靱帯損傷を呈し歩行時の不安 定性を訴えた症例に対し筋力訓練・歩行指導 を行った。その結果、主訴は改善したが歩行 動作の改善は不十分であった。今後は股関 節・足部に焦点をあてアプローチし、さらに 改善するよう理学療法を行いたい。
フローチャート式 FIM 質問紙 (Flow-FIM) の改訂と検者間信頼性の検討
伴野千尋1) 松森美致世1) 川上健司1) 田中和加奈1) 柴田奈津紀1)
岡本美波1) 小西美緒1) 園田茂1, 2)
1)藤田保健衛生大学七栗サナトリウム 2)藤田保健衛生大学藤田記念七栗研究所
目的:我々は患者や家族でも簡便に FIM を 評価できる評価法としてFlow-FIMを作成し,
2010年度にFIM学習者とFIM未学習者で検 者間信頼性を検討した.その結果,一致率の 低い項目が存在し,改善の余地があった.そ こで,表現方法の見直しとフローチャートの 追加を行い,改訂したFlow-FIM(以下改訂版 Flow-FIM)における検者間信頼性を検討した.
方法:当院入院中の脳卒中患者45 名を対象 とし,当院に勤務する療法士(FIM 学習者)と 学生(FIM未学習者)が改訂版Flow-FIMを 使用し,FIMを採点した.Flow-FIMの改訂は,
食事の項目で経管栄養の患者,社会的交流の 項目で意識障害の患者も採点できるよう,新 しいルートを作成した.浴槽移乗の項目は浴 槽だけでなく,シャワーチェアーへの移乗も 含む表現とした.認知項目は解釈に迷う表現 は簡易にした.
改訂版Flow-FIM の運動項目合計点,認知項
目合計点,総合計点は級内相関係数(intraclass correlation coefficient:ICC)を算出し比較した.
各項目点は,偶然の一致を除いた一致率κと,
一段違いも加味するweightedκにより比較し た.算出したICC,κ,weighted κは改訂前 のFlow-FIMの結果と比較した.
結果:改訂版Flow-FIMの運動項目合計点,
認知項目合計点,総合計点のICCは0.97~0.99 と高い相関を認めた.各項目の一致率κは運
動項目で0.47~0.78と中等度から高い一致率
を示した.改訂前と比較すると,食事の項目
で0.55から0.76へ,浴槽移乗の項目で0.56 から0.72へ,一致率が向上した.認知項目は
0.45~0.63と,全項目で改訂前より向上した.
各項目のWeightedκは運動項目で0.85~0.98,
認知項目で0.79~0.91と高い一致率を示した.
考察:本研究では,Flow-FIM の改訂の有効 性が明らかにされた.食事の項目は,経管栄 養患者の採点において,新しく作成したルー トを辿ったため,一致率が向上したと考えら れる.浴槽移乗の項目は,シャワーチェアー のみ使用している患者の採点もできるように なり,一致率が向上したと推測する.認知項 目は全項目で一致率が向上し,認知項目全般 で表現方法を簡易にしたことに効果があった と考える.各項目で Weighted κは高い一致 率を示したことから,1 点差を加味すれば,
各項目での比較が可能であることが示された.
まとめ:改訂版Flow-FIMの検者間信頼性を FIM学習者と未学習者間で検討した.改訂に より,改訂前の Flow-FIMで一致率の低かっ た項目を中心に一致率の改善を認め,Flow- FIMの改訂が有効であったことが示された.
また,FIM未学習者がFIMを採点する際,改
訂版 Flow-FIMの使用は有用性が高いと考え
られた.
松阪・多気地区訪問リハビリ連絡協議会 H23 年実態調査 ‐実態調査からみた今後の課題‐
中田早織1) 角谷孝2) 木村圭佑3) 上村恵子4) 岡崎洋一1)
1)介護老人保健施設 嘉祥苑 2)大台厚生病院
3)花の丘病院 4)済生会明和病院
目的:松阪・多気地区訪問リハビリテーショ ン連絡協議会(以下、当協議会)は、利用者 様の在宅復帰と自立支援ができるよう、定期 的に研修会等を実施し意見交換できる場を設 けることで、知識の向上や各事業者間との連 携を図りやすくする事を目的としている。今 回は、当該地域における訪問リハの現状を把 握し、問題点を抽出する事で、当協議会の今 後の活動方針を定め、問題解決に貢献する目 的で実態調査を実施した。
方法:平成 23 年度 6 月時点における松阪市、
明和町、多気町、大台町、大紀町の 5 市町村 に所在する訪問リハ 10 事業所、および訪問看 護 5 事業所(療法士による訪問を実施してい る事業所)に直接配布または郵送し、同月内 に回収した。記入に不備がある場合は電話に て確認を行なった。
結果:スタッフは全事業所合計 H22 年度 20.5 名→H23 年度 22.9 名と昨年度より増加傾向に あるが、STを配置している事業所はなかっ た。1 年間で短期集中リハ加算の条件を満た した利用者数は全事業所合わせて 60 名、そ の内実際に算定したのは 43 名であった。算 定が出来なかった理由としては週2日以上の 訪問が困難であったことが最も多く、療法士 の不足が原因に挙げられた。依頼内容として は介護負担の増加に伴い依頼を受けること が多かった。訪問リハを行なうにあたり困っ
ていることとして、介護保険制度に対する困 惑を示す内容が多かった。その他、他職種と の連携や新人教育の難しさも挙げられた。
考察:今回の実態調査において、1番の問題 点として挙げられたのは、介護保険制度に対 する困惑であった。情報提供書、いわゆる訪 問リハ指示書に関するものが多かった。制度 の問題については現在、医師の指示頻度を、
利用者の状態像にあわせ、現行の 1 月毎から 3 月に 1 度以上と検討されている。次の問題 点として、退院・退所後の利用率の低さが挙 げられた。訪問リハを導入する理由として、
『在宅生活を送る中で介護負担が増加した 為』など、身体機能が低下してからの依頼が 最も多かった。訪問リハの存在や事業所の周 知を、仲介役であるケアマネージャーへ進め ていき、身体機能が低下する前に、訪問リハ を早期導入できるように働きかけることが重 要である。また、依頼に対応していく為には 人員の確保、療法士の教育にも力を入れてい く必要性を感じた。
まとめ:今回の調査で把握できた問題に対し、
当協議会では今後も他職種との合同研修会な どを通じて連携を図り、訪問リハの周知拡大 を図りたい。療法士の質と量を向上させ、需 要に応えられるよう教育にも力を入れ、当該 地域における訪問リハの活性化に繋げていく 事が、当協議会の課題であると思われる。
上肢におけるパフォーマンストレーニングの効果
舩木麻衣1)今堀和代1)成田誠2)
1)特別医療法人暲純会 榊原温泉病院 2)鈴鹿医療科学大学 理学療法学科
目的:種々の瞬発的運動には,同種のトレー ニング運動が効果的であると云われており,
上肢の瞬発力の指標としてチェストパスを設 定した.金子らの下肢の瞬発力における垂直 跳運動の研究によると,運動負荷の高いトレ ーニングよりも,自重のみで垂直跳を行う方 が,記録が向上したと報告している.そこで 本研究では,目的とする動作であるバスケッ トボールを用いたトレーニングがパフォーマ ンスを向上させるのではないかと考えた.
対象と方法:対象は,平均年齢21.0歳の健 常若年者24名(男性12名,女性12名),平 均身長164.1cm,体重56.5kg,BMI20.8で ある.対象者をトレーニング群としてバスケ ットボール (Gb)群と,運動負荷の高いメディ シンボール (Gm) 群に分け,比較対象として コントロール (Gc) 群も設定した(各n=8, 男女比=1:1).トレーニング群は週 2回の 頻度で 4 週間,それぞれバスケットボール
(525g),メディシンボール(2kg)を用いた チェストパスを行った.トレーニング方法は,
背もたれの動かない固定された椅子(高さ 42cm)から座位姿勢でのチェストパスを行い,
1 回のトレーニングにおける運動回数は 10 投を1セットとし,3分間の休憩を入れ計3 セット行った.測定は運動期間前後にチェス トパス・ハンドボール投げ・アームカール・
BIODEXで測定した.
結果:運動期間前後の実測記録から各個人別 に変化率を求めた.チェストパスにおいて,
3群ともに有意(p<0.05)な変化は認められ なかった.ハンドボール投げではGb群,Gm 群 に 増 加 が み ら れ ,Gb 群 に の み 有 意 差
(p<0.05)が認められた.アームカールにお いては3群ともに増加がみられ,Gb群,Gm 群に有意差(p<0.05)が認められた.前腕回 内120deg/sec加速時間においては,3群とも に短縮し,Gb 群にのみ有意差(p<0.05)が 認められた.前腕回内180deg/sec加速時間に おいては3群ともに短縮し,Gb群,Gm群 に有意差(p<0.05)が認められた.肘伸展 120deg/sec 加速時間においては,Gb群のみ 有意(p<0.05)な短縮が認められた.
考察:前腕回内180deg/sec加速時間において Gb群,Gm群の両群に短縮がみられた.そこ で群間比較を行ったところ Gb群のほうが有 意(p<0.05)な向上であった.さらに,Gb群 は前腕回内120deg/sec,肘伸展120deg/secに おいても加速時間の短縮が認められ,これは 瞬発力の向上をうかがわせ,結果パフォーマ ンス向上につながったということが出来る.
まとめ:バスケットボール群において前腕回 内 120deg/sec 加速時間,180deg/sec 加速時 間,肘伸展120deg/sec加速時間の短縮が認め られた.
鈴鹿病院における物理療法の取り組みについて
伊藤博紹
国立病院機構鈴鹿病院 リハビリテーション科
はじめに:
当院では、筋ジストロフィー、や重症心身 障害児(者)、神経難病等の疾患に対する機能 訓練を行っている。特にこれら疾患に共通す る筋の伸張性低下に対して、あまり用いられ ていない物理療法を積極的に利用しているこ とが特徴的といえる。
当院において物理療法を用いるようになっ たきっかけは、転勤・退職・新規採用等によ るスタッフの総入れ替えであった。専門性が 必要とされる疾患に対して、経験の浅い新ス タッフでも行える治療法はないかと模索し、
物理療法機器を用いた訓練を開始した。
当 院 で 使 用 し て い る 物 理 療 法 機 器 の 概 要:
当院では、超音波治療器(4 台)、極超短波
(マイクロ波)治療器(2 台)、超短波治療器
(1 台)、を使用している。いずれも温熱効果 により疲労の回復、筋の伸張性拡大を目的と して、ストレッチを行いながら使用している。
当 院 で 物 理 療 法 の 対 象 と し て い る 疾 患 例:
筋ジストロフィー:筋肉を構成するタンパ ク質(ジストロフィン)の欠如により筋萎縮 と筋力低下が進行する遺伝性疾患である。筋 萎縮・筋力低下による四肢の関節拘縮や変形 に加え、胸郭・脊柱関節拘縮による拘束性換 気障害といった二次的な症状も呈する。
筋ジストロフィーに対する物理療法を実施 することで、筋緊張の軽減、それによる関節 可動域拡大、胸郭可動域拡大による呼吸機能 の維持向上を目指している。これは、進行性 筋ジストロフィー患者の胸郭可動域障害に対 して超音波治療器や極超短波治療器を用いる ことで、照射前後の肺活量、一秒量、1 秒率、
PeakCoughFlow に有意な増加につながった報 告を行っている。
考察:
当院において物理療法をリハビリテーショ ンに用いた理由は、スタッフの技量の差によ らず均一な効果が期待できることであった。
現在、筋ジストロフィー等の難病のリハビリ テーションを行う医療機関は少なく、十分な リハビリテーションを受けられない患者が存 在する。物理療法を用いることで難病のリハ ビリテーションが行いやすくなれば、難病患 者がリハビリを受ける機会が増えると考える。
また、新規採用や退職、転勤等により生じ るスタッフ間の技量の差は、どの医療機関で も問題となると考えられる。均一な効果が期 待できる物理療法は、この問題を解決する方 策と成りうると考える。
そのためには、さらにデータを集め、誰も が納得しうる治療法へと発展させていくこと が今後の課題と考えている。
当院における転倒因子の検討
白石麻衣1)、村野万伊加1)、堀田貴弘1)、吉田真二1)、伊藤直樹2)
1)医療法人(社団)大和会 日下病院 リハビリテーション部 2)藤田保健衛生大学 医療科学部 リハビリテーション学科
目的:高齢者の転倒は頻度が高く、骨折など の重度の外傷を引き起こし、寝たきりの主要 原因といわれている。当院では転倒による骨 折や外傷患者が多く、転倒経験者が再転倒す ることもあり転倒因子を把握する必要性があ ると思われた。そこで、当院にてリハビリを 施行している患者に「転倒スコア」を用いた アンケート調査を実施し、転倒に関わる因子 の抽出を行った。
方法:65 歳以上で歩行が自立している入院 患者と外来患者合計 55 名に対し、鳥羽らの
「転倒スコア」を用いたアンケート調査を実 施した。「転倒スコア」は22項目から構成さ れ、すべて「はい」「いいえ」の2択で回答す る。対象者には調査の目的、個人情報の取り 扱いについて説明し了承を得た。統計は、過 去の転倒歴を従属変数とし、その他の項目を 独立変数として重回帰分析を行った。さらに ロジスティック回帰分析によりオッズ比を算 出した。p<0.05を統計学的有意とした。
結果:回答者55名のうち過去1年の転倒者 は30 名で、転倒率は54.5%であった。転倒 の有無による各項目の頻度の有意差を検定す ると、「つまずくことがありますか(以下、つ まずく)」、「1kmぐらい続けて歩けますか(以 下、1km 歩ける)」、「生活上家の近くの急な 坂道を歩きますか(以下、坂道を歩く)」とい う3つの項目が過去の転倒歴と相関があった。
重回帰分析の結果、独立した優位な危険因子 として、「つまずく」(p<0.008)、「1km歩け
る」(p<0.02)、「坂道を歩く」(p<0.027)が 抽出された。ロジスティック回帰分析による オッズ比は、「つまずく」4.95倍、「坂道を歩 く」4.71倍であり転倒率を増加させ、「1km 歩ける」は0.24倍で転倒率を減少させる因子 であると分かった。
考察:今回の調査では「つまずく」、「坂道を 歩く」、「1㎞歩ける」が転倒に影響を及ぼす 因子であった。齋藤らは「つまずく」は加齢 に伴う身体諸機能の低下および歩行能力の変 化や障害物および身体能力の誤認識が考えら れると述べている。今回の対象者においても 上記の要因が当てはまる可能性は高いと言え る。「坂道を歩く」に関して、坂道歩行は平地 歩行と比較してエネルギー消費量が大きいと 報告されており、坂道利用者は比較的活動量 が高いと考えられる。そのため活動範囲が広 く転倒リスクも高くなる可能性があると考え られる。「1km 歩ける」については、耐久性 は転倒の危険因子ではないという報告もみら れる。しかし、歩行距離や耐久性と転倒につ いて検討している研究は少なく、今後の課題 である。
まとめ:当院における転倒因子を把握するた め、「転倒スコア」を用いたアンケート調査を 行った。結果より「つまずく」、「坂道を歩く」
「1km歩ける」が転倒に影響を及ぼす因子で あった。今後は、身体機能との関係性を評価 し、より客観的な指標を提示できるよう検討 していきたい。
立位姿勢のアライメント調節にて歩行能力が向上した片麻痺患者の一例
武村裕之
医療法人慈心会 介護老人保健施設菖蒲園
【はじめに】
一般的に老健施設における理学療法は発症か らの経過が長いことや、介入頻度の問題によ り治療に難渋するケースを多く経験する。そ のような中で、今回立位アライメントの調節 により短期間で歩行能力が向上した症例を経 験したので報告する。
【症例紹介】
50代女性。平成19年に脳梗塞発症し、急 性期・回復期を経て平成 20 年から近隣の慢 性期病院に入院。加療中に歩行以外の基本動 作が自立となり、平成 22 年末に当施設入所 となる。
【初期評価】
BRS:上下肢Ⅱ 手指Ⅰ
MMT:上下肢5 (非麻痺側) 体幹4 表在感覚:上肢3/10 下肢1/10
深部感覚:上下肢2/5(位置・運動覚共に) 歩容:3動作後ろ型(監視〜一部介助) 10m最速歩行:速度=9.26m/min 歩数=34歩 cadence=31.48step/min 立位姿勢:アライメント不整(2分間保持可能)
【理学療法】
人は運動によって得られた感覚情報を中枢 系にフィードバックすることで外部環境と身 体の相互関係を維持し運動制御を行っている とされている。つまり、中枢系への適切な感 覚入力が得られなければ不適切な運動制御が 完成してしまうのではないかと考えた。
理学療法ではまず、立位アライメントのズ
レを視覚と聴覚からフィードバックしセラピ ストが徒手的に修正し、その姿勢を2分間保 持する。これを3セット施行し、その後麻痺 側荷重訓練として非麻痺側のステッピング動 作を20回、1セット行った。そしてアライメ ントを維持しながら、平行棒内歩行を2往復 行ない、訓練時間 20分を週3回の頻度で施 行した。
【3カ月後の中間評価】
BRS:上下肢Ⅱ 手指Ⅰ 表在感覚:上肢8/10 下肢2/10
深部感覚:上下肢5/5(位置・運動覚共に) 10m最速歩行:速度=15.15m/min 歩数=28歩
cadence=42.4step/min 歩容:3動作前型(四点杖室内自立)
立位姿勢:アライメントの良姿位保持可能 FBS :37/56点
【考察】
高草木はヒトと脳の運動制御において、立 位・歩行姿勢の運動制御には脳幹網様体への 適切な感覚入力が重要であると報告している。
さらに高橋は前額面のアライメントに注意を 向けた荷重・歩行訓練により歩行パラメータ ーの改善を得たと報告している。
今回、立位アライメントを調節したことで 脳幹網様体への適切な入力が得られ、環境に 応じた運動制御が可能となった。運動制御が 得られたことでアライメントに注意を向けた 荷重・歩行訓練が可能となり、歩行の改善に 繋がったのではないかと考えた。
多発性硬化症により対麻痺を呈した一症例
〜実用歩行での在宅復帰への取り組み〜
新堂翔平1) 南谷静香1) 泉健太郎1) 上村謙一郎1) 濱口吉克(MD)2)
1)済生会明和病院 リハビリテーション課 2)済生会明和病院 神経内科
はじめに:今回,当院回復期病棟へ転院され,
当初は車椅子 ADL 自立を目指した多発性硬 化症に対し,多方面からの取り組みにより,
屋内 ADL は固定型歩行器歩行で自立となり 在宅復帰できた一症例を報告する。
症例:70代女性。6年前,横断性脊髄炎を初 発しこれまで3度の再発がみられ,再発の度 に身体機能の回復は不良という臨床経過を示 していた。今回,4 度目の横断性脊髄炎症状 がみられたことで多発性硬化症と診断された。
発症より 53 日後,炎症症状改善し当院へ転 院となる。本人・家族は,歩行自立での在宅 復帰を強く期待していた。夫とは二人暮らし で,夫は家事・自動車運転も可能だが腰痛あ り介護困難。自宅は段差があり廊下が狭い住 環境であった。
初期評価:不完全対麻痺(Th6以下),膀胱直 腸障害(+)
ADL:FIM69点(運動34点・認知35点) MMT:両上肢4,体幹屈曲2,下肢(右/左)Hip F1/1,E2/2,Knee F2/3,E3/3,Ankle T.A.2/2 感覚:表在軽度鈍麻(Th4~L5),しびれ(L4,5) 拡 張 総 合 障 害 度(以 下 EDSS:Expanded Disability Status Scale in MS) :7.5/10
経過:まず障害受容のため,Dr,Nrs,MSW, OT で意見を統一し,本人・家族に病態の説 明,現状と期待を説明し,理解に努めた。
まず車イス ADL 向上を目標に開始し,両 プラスチック短下肢装具を作成した。本人のリハ意 欲も高く1ヶ月後には,車椅子ADL自立し
たため、立位・歩行での訓練を増やしていっ た。歩行訓練は平行棒内歩行→固定型歩行器 歩行→ロフストランド杖・松葉杖歩行と進めていっ たが,監視レベルになるも短距離で強い疲労 感を訴え,実用的ではなかった。その後病棟 スタッフによる歩行訓練も取り入れて歩行機会を 増やし,3 ヶ月後,歩行持久性向上により日 中移動は固定型歩行器歩行見守りとなった。
そして実用歩行での在宅復帰も考えられ,家 屋訪問調査を実施。固定型歩行器歩行での生 活自立を想定した住環境整備を行い,在宅復 帰に向けた動作反復訓練を行っていった。
最終評価:退院時(4 ヶ月半後)には,固定型 歩行器歩行で屋内ADL自立し,在宅復帰。
ADL:FIM105点(運動70点・認知35点) MMT:両上肢5,体幹屈曲4,下肢(右 /左)Hip F2/3,E2/3,KneeF2/4,E4/4,AnkleT.A.3+/4 感覚:著変なし。
歩行:固定型歩行器100m連続歩行(約15分)
10m歩行:歩行速度8.2m/分,歩幅27.7cm EDSS:6.5/10
考察:移動形態は身体機能向上と装具作成に 合わせて選択し,また本人の意欲,病棟スタッフ の協力もあり,病院生活での活動量を増やす ことができた。結果,筋力・筋持久力向上し、
適切な住環境整備を行ったことで,固定型歩 行器での在宅復帰ができたと考える。
さいごに:リハビリ訓練だけでなく,病院生活 と家族・住環境すべてにアプローチしていくこと が重要だと再認識させられる一症例であった。
右遊脚終期から立脚中期での右股関節周囲筋群の筋緊張異常により右後 方へ不安定性を呈した右片麻痺の一症例
奥村 亮1)塚本 枝里1)鈴木 裕介1)山本 吉則1)嘉戸 直樹2)鈴木 俊明3)
1)榊原白鳳病院
2)神戸リハビリテーション専門学校 3)関西医療大学
はじめに:今回、右遊脚終期から立脚中期で の右股関節周囲筋群の筋緊張異常により歩行 の安定性低下を認めた右片麻痺患者を経験し た。本症例は右大内転筋、大殿筋下部線維の 筋緊張低下と右股関節屈筋群、大腿筋膜張筋 の筋緊張亢進により右立脚初期から中期に右 後方へ不安定であった。正常歩行の筋活動パ ターンに配慮した理学療法にて歩行の安定性 が向上したため、表面筋電図の結果を踏まえ 報告する。なお、発表に際し症例に主旨を説 明し同意を得た。
理学療法評価:症例は8 年前に左脳梗塞を 発症し右片麻痺となった70代の女性である。
ニードは歩行の安定性向上であった。歩行は 近接監視で、入浴以外の日常生活活動は自立 していた。歩行では右立脚初期から立脚中期 に右股関節の屈曲・外転、体幹下部の左回旋 をともなう骨盤の右回旋が生じ、右後方へ不 安定であった。表面筋電図では右遊脚終期か ら立脚初期にて右大内転筋、大殿筋下部線維 の筋活動がみられなかった。筋緊張検査では 右股関節屈筋群、大腿筋膜張筋が亢進し、右 大内転筋、大殿筋下部線維が低下していた。
関節可動域測定では右股関節伸展が0 であ った。問題点は右遊脚終期から立脚初期での 右大殿筋下部線維、大内転筋の筋緊張の低下 により右股関節の伸展・内転が乏しかった。
さらに右股関節屈筋群、大腿筋膜張筋の筋緊 張の亢進により右立脚初期から立脚中期に右 股関節の屈曲・外転、骨盤の右回旋により右
後方へ不安定であった。
理学療法・結果:理学療法は右遊脚終期か ら立脚中期での右股関節屈筋群、大腿筋膜張 筋と、右大内転筋、大殿筋下部線維の筋緊張 の改善を促す目的で実施した。まず背臥位で 右股関節の屈曲・外転から伸展・内転を自動 介助運動にて実施した。その後、右立脚初期 から立脚中期を想定した立位にて重心移動練 習を実施した。その結果、歩行では右立脚初 期から立脚中期に右股関節の屈曲・外転、骨 盤の右回旋が軽減し、歩行の定性が向上した。
筋緊張検査では右股関節屈筋群、大腿筋膜張 筋の筋緊張は亢進(理学療法前より減弱)、右 大内転筋、大殿筋下部線維の筋緊張は低下(理 学療法前より改善)であった。表面筋電図で は右遊脚終期から立脚初期にて右大内転筋、
大殿筋下部線維の筋活動がみられた。
考察:Neumannは大殿筋の活動は遊脚終期
に遠心性に始まり、股関節屈曲の減速と立脚 初期の体重を受ける準備を行い、大内転筋は 股関節伸筋や外転筋との共同活動により、踵 接地時に股関節を安定させ、股関節伸展を補 助すると述べている。本症例においても、右 股関節屈筋群、大腿筋膜張筋の筋緊張の減弱 と右遊脚終期から立脚初期での右大殿筋下部 線維と大内転筋の筋緊張の改善により、右立 脚初期から立脚中期で右股関節の屈曲・外転 が軽減し、歩行の安定性が向上したと考えた。
正常歩行の筋活動パターンに配慮したことが、
歩行の実用性改善に繋がったと考えた。
トイレ動作の不安定性により呼吸困難感が生じた COPD を合併した 脊髄小脳変性症患者の一症例
山本 晃三1) 塚本 枝里1) 鈴木 裕介1) 山本 吉則1) 嘉戸 直樹2) 鈴木 俊明3)
1) 榊原白鳳病院
2) 神戸リハビリテーション福祉専門学校 3) 関西医療大学
はじめに:トイレ動作時に呼吸困難感を訴え る慢性閉塞性肺疾患(COPD)を合併した脊髄 小脳変性症患者の一症例を経験した。呼吸困 難感は呼吸筋の運動強度が増加するにつれて 増強するといわれている。本症例はトイレ動 作時に呼吸補助筋の筋緊張が亢進し、呼吸困 難感が生じていた。トイレ動作と呼吸補助筋 の筋活動に着目した理学療法により、トイレ 動作と呼吸困難感に改善を認めたので報告す る。なお、発表に際し症例に趣旨を説明し同 意を得た。
理学療法評価:症例は平成 X 年 12 月に COPD、翌年3月に脊髄小脳変性症を発症し た60歳代の男性である。COPDは混合性換 気障害を呈し、病期分類はⅢ期であった。ト イレ動作は中腰位で前方の車椅子のシートに 左上肢を支持して右上肢でお尻を拭く動作で あった。拭く動作は右肩関節の伸展・内転に ともない体幹が右側屈、骨盤が左回旋、左股 関節が内転・内旋して左股関節から体幹への 動揺が生じて左上肢の支持を強めた。拭く動 作時に呼吸困難感があり、SpOは 97%から 94%、修正ボルグスケールは2から5となっ た。胸郭拡張差は第10肋骨高で2.5cmであ った。筋緊張は両僧帽筋上部線維、斜角筋、
左棘上筋、大円筋、大胸筋、右腹斜筋が亢進 し、両殿筋群が低下していた。失調検査では 躯幹失調試験がステージⅡ、指鼻指試験・足 指手指試験は陽性で、振戦・測定過大がみら れた。問題点は左殿筋群の筋緊張低下による
左股関節の内転・内旋に加え、失調症状によ り左股関節周囲筋群の筋緊張の調節が困難と なり左股関節にて前後方向へ動揺が生じるこ とで左後方へ不安定となった。さらに右殿筋 群の筋緊張低下により右下肢の支持性も乏し かった。左後方への不安定に対して体幹の右 側屈と左上肢での支持を強めることで胸郭の 関節可動性低下と両僧帽筋上部線維、斜角筋、
左大胸筋の筋緊張亢進により換気効率が低下 し、呼吸困難感が生じると考えた。
理学療法・結果:理学療法は、胸郭の関節 可動域練習を実施した後、座位・中腰位で固 有感覚を入力しながら前後・左右への重心移 動練習を実施し、両殿筋群の筋活動を促した。
その結果、左股関節の内転・内旋と左股関節 の動揺が軽減し、トイレ動作の安定性が向上 した。また体幹の右側屈と左上肢支持の軽減 により呼吸補助筋の筋緊張が減弱した。胸郭 拡張差は3.0cmとなり、拭く動作時ではSpO
は95%、修正ボルグスケールは3となった。
考察:高橋は、呼吸補助筋群は肩甲帯の固定 や上肢保持に働くと、呼吸筋としての働きが 阻害されると述べている。本症例において、
トイレ動作の安定性が向上し呼吸補助筋の筋 緊張が改善したことに加えて、胸郭の関節可 動性が増大したことで換気効率が向上し、呼 吸困難感が改善したと考えた。
他職種との連携で通院条件を整えた脳障害症例
小川紗代子1)井出宏1)
1)津生協病院 リハビリテーション科
目的:若年者や、介護保険の利用を拒否した 場合などに、医療保険から介護保険に繋げら れない症例を経験する。今回、社会的問題が 複雑化した症例に対して、在宅生活を維持さ せながら、外来理学療法を提供できる環境を 他職種と連携しながら整えた結果、ADLを改 善できた症例を経験したので報告する。
症例紹介:高血圧、アルコール依存症が併存 する69歳男性。診断名は視床出血。左片麻痺、
感覚鈍麻、不随意運動を呈して入院となる。
介護度要支援1。
経過:発症2日目、Br.stage上肢-手指-下肢=
Ⅴ-Ⅴ-Ⅳ 。ADL は 軽 介 助 〜 監 視 レ ベ ル
(FIM85)。転倒リスクは高い。しかし、院内 にて喫煙、飲酒、無断外泊を繰り返す。
16日目、理学療法開始。依然、行動が改まら ず退院を求められた。そのため、病院までの 交通手段確保のために経済面の調査を MSW に依頼した。MSW からは、経済面に問題が なく、通院手段としてはタクシー利用での知 人送迎が可能ということで退院調整を行った。
21日目、退院。(FIM85点)。しかし退院後、
知人買出しにより更に飲酒。喫煙。
29日目、外来理学療法を開始。飲酒状態での 来院や、転倒頻回による外傷疼痛、投薬管理 不十分による高血圧(安静時 BP180/75)、活 動量著減によるADL低下(FIM67点)、歩行 不可が認められた。この間、外来理学療法も 継続しながら、医師やMSWと密に連絡を取 り合い、飲酒、喫煙量の確認、指導、精神科
受診や、外傷部の整形外科受診の手配、地域 包括支援センターに協力依頼、調整会議等を 行った。
42日目、住宅調査を行い独居困難の確認。外 来理学療法の頻度を週1回より3回へ増加し たが、転倒による外傷疼痛が絶えず、効果み られなかった。
54日目、タバコの不始末等の問題により、ケ アマネージャー、地域包括支援センター担当 者らの説得により高齢者専用賃貸住宅へ入居 となった。その後、禁酒・禁煙・投薬管理の 徹底により、血圧安定、転倒防止が可能とな る。また、高齢者専用賃貸住宅オーナーによ る送迎も開始。同時期よりBr.stage上肢-手指
-下肢=Ⅴ-Ⅵ-Ⅵへと改善し、ADLは監視〜修
正自立レベル(FIM116点)へと改善。
考察:社会的問題が複雑化、困難化する症例 の場合、医学的リハビリテーションを一専門 職では遂行できないため、他職種との連携の 必要性が指摘されている。今回、飲酒、喫煙、
無断外泊等を繰り返し、入院管理が困難とな り、退院を求められた症例に対して、他職種、
他施設と連携し、生活の基盤となる住環境の 提供を行うことができた。その上で、外来で の病態管理、リハビリ頻度の増加が行えたこ とで、ADLの向上が図れたと考える。
まとめ:他職種、他施設と連携し、社会資源 を有効に取り入れることで、在宅生活にて効
果的に理学療法を提供できる可能性がある。
筋ジストロフィー患者の呼吸機能障害に対する マイクロ波治療の検討
森内さとみ1) 白石弘樹1) 酒井素子2) 小長谷正明2)
1)国立病院機構鈴鹿病院 リハビリテーション科 2)国立病院機構鈴鹿病院 神経内科
諸言:当院では以前より、筋ジストロフィー 患者の胸郭可動域制限に対し超音波治療を行 っている。今回、超音波治療より簡易的で、
温熱により筋肉の伸張性を増大するマイクロ 波治療により呼吸機能が改善したので報告す る。
方法:デュシャンヌ型筋ジストロフィー患者 4名(機能障害度は厚生省班研究新ステージ
Ⅲ〜Ⅷ、福山型筋ジストロフィー患者1名(同 ステージⅦ)の平均年齢12.6 3.9歳 の計5名で、いずれも外来患者の男性を対象 として行った。
マイクロ波治療器ME̺8150(オージー 技研製)を肋間筋に出力90Wで10分間照 射した。スパイロメーターAS407(ミナ ト医科学製)での肺活量(以下VC)・努力性 肺活量(以下FVC)・一秒量・一秒率の他、
咳の最大流量(以下CPF)・最大強制吸気量
(以下MIC)を照射前後で計測した。
結果:VCは平均1728 739.48m lから1590 430.90mlと低下し た(p<0.05)。FVCは1510 3 65.82mlから1546 371.21 ml、一秒量は1278 195.44ml から1312 214.61ml、一秒率は 84.33 71.35%から85.08 72.65%、MICは1478 244.
83mlから1574 332.39ml、
CPFは196 96.80l/minから 202 103.10l/minとそれぞれ
改善した(p<0.05)。
考察:今回、マイクロ波治療によりVCを除 く呼吸機能が改善した。これは、マイクロ波 治療により肋間筋の伸張性が増大し、胸郭可 動域制限が改善したためだと考える。VCの 低下は、マイクロ波照射を受けている間仰臥 位になっている為、横隔膜が内臓重量により 圧迫され、換気量が減少したものと考える。
まとめ:マイクロ波治療は超音波治療と同様 に、筋ジストロフィー患者の呼吸障害に対し 有用な治療と考える。
脳卒中片麻痺患者の Functional Reach Test における動作戦略の検討
○舘友基1) 岩田研二1) 倉田昌幸1) 海野智史1) 山崎年弘1) 白井瑞樹1) 小林優夏1) 中井貴大1)木村圭佑1) 坂本己津恵(MD)1) 松本隆史(MD)1) 櫻井宏明2)金田嘉清2)
1)医療法人松徳会 花の丘病院 リハビリテーション科
2)藤田保健衛生大学 医療科学部 リハビリテーション学科
目的:Functional Reach Test(以下,FRT)は
Duncanらによって開発された立位バランス
能力の評価指標である.脳卒中片麻痺者(以下, 片麻痺者)においても,脳卒中理学療法診療ガ イドライン(2011)では,推奨グレード A と強 く推奨されており,臨床場面で多用されてい る.その一方で,FRTは様々な動作戦略が存在 し, 経時的観察の中でリーチ距離に変化がな くても動作戦略に変化が生じる場合があるこ とが報告されている.しかし,これまでに片麻 痺者における FRT の動作戦略に着目した報 告は少ない.そこで今回我々は片麻痺者にお けるFRTの動作戦略について検討を行った. 方法:対象は当院の通所リハビリテーション を利用している片麻痺者19名(平均年齢71.5 7.6 歳)とした.対象者に FRTを Duncan らの方法に準じ,重心動揺計(アニマ社製 G-620)上にて計測を行った.また FRT の動 作戦略を①従来の方法(以下フリー),②股戦 略(足関節底屈位),③足戦略(体幹屈曲20 以 下)の3条件に設定し,各条件を2回ずつ計測 した.方法は,最大リーチにて10秒間の姿勢保 持を行い,その際のFunctional Reach距離(以 下,FR 距離),重心動揺面積(以下,動揺面積),重 心の前後移動距離(以下,前後距離)を計測した. またFRT施行の際,ビデオカメラにて動画撮 影し,パソコンに取り込んだ後,3 名の理学療 法士が肉眼で観察し動作戦略を分類した.統 計処理は3条件の動作戦略の違いを多重比較 検定(Tukey-kramer法)を用い、また各FRT
での FR 距離,動揺面積,前後距離の関係につ いてを Spearman の順位相関係数を用い,有 意水準は 5%未満とした.尚本研究は,当院の 倫理委員会の承認を得て行われている. 結果:各戦略の FR 距離の平均値はフリー 15.82cm,股戦略14.95cm,足戦略8.78cmであ り ,足 戦 略 と フ リ ー(p=0.003),股 戦 略 (p=0.002)との間に有意差を認めた.またフリ ーのFR距離と股戦略のFR距離に強い正の 相関(r=0.807,p≦0.01)を認めた.さらにフ リーの動作戦略を分類すると 10 名が股関節 屈曲・足関節中間位,5名が股関節屈曲・足関 節底屈位,4名が股関節屈曲・足関節背屈位で の動作戦略であった.
考察:先行研究においてFRTは股,足戦略の 順にFR距離が大きいと報告しており,片麻痺 者対象の本研究においても同様の結果を認め た.またフリーでの動作戦略を検討したとこ ろ,19名全員が足戦略ではなく,股関節優位で の動作戦略を行っていたことから片麻痺者の FRTは股戦略優位であることが示唆された. まとめ:今回片麻痺者のFRTにおける動作 戦略を検討した.本研究より片麻痺者の FRT における動作戦略によってFR距離に差が生 じることが示唆された.このことから片麻痺 者のFRTでもFR距離だけでなく,動作戦略 にも着目し,FR距離の経過を観察していく必 要性があることが推察された.今後はさらに 症例数を増やし,検討を行っていく.
脳卒中片麻痺患者における
三次元動作解析装置を用いた麻痺側膝伸展機能の経時変化
栗田紗江1)大橋綾乃1)高橋亮吾1)土山和大1)谷野元一1)尾崎幸恵1)2)富田豊3)園田茂1)2)3)
1)藤田保健衛生大学七栗サナトリウム
2)藤田保健衛生大学医学部リハビリテーション医学Ⅱ講座
3)藤田保健衛生大学藤田記念七栗研究所リハビリテーション研究部門
目 的 : 片麻痺の運動機能評価には Stroke ImpairmentAssessmentSet(以下 SIAS)や BrunnstromStage など、順序尺度で質的な面 を捉えたものが多い。しかし、適切な治療の 効果判定には、客観的かつ間隔尺度の評価が 重要である。そこで我々は、三次元動作解析 装置を用い、麻痺側運動機能の経過を追った。
今回、立位・歩行と関係性が高い膝関節伸展 機能について SIAS と比較検討したので報告 する。
方法:対象は当院に入院している指示理解良 好な初発脳卒中片麻痺患者 14 名である。対象 者の内訳は、平均年齢 54.6 16.3 歳、発症 後日数 32.0 15.4 日、男性 9 名、女性 5 名 であった。対象者には大腿骨外側上顆と外果 にマーカを取り付け、SIAS の knee-extension test(以下 SIAS-K)を連続で 5 回行うよう指 示した。指標には、5 回のうち最大値と最小 値を除いた 3 回の最大移動距離の平均値(㎝)、
最大速度の平均値(㎝/sec.)を算出した。評価 は入院時、入院から 2 週時、4 週時、6 週時、
8 週時の計 5 回行った。評価には、三次元動 作解析装置 KinemaTracer(株式会社キッセイ コムテック社製)を使用した。また、対象者 の中から SIAS-K に変化を認めなかった 5 名の 経時変化を追った。5 名の対象者の内訳は、
平均年齢 56.2 25.4 歳、発症後日数 42.8 18.5 日、男性 4 名、女性 1 名であった。SIAS と今回の指標との比較は Friedman 検定を用
いて検討した。
結果:以下に結果を入院時-2 週時-4 週 時-6 週時-8 週時と羅列して記載する。対 象 者 全 体 に お い て 、 SIAS-K の 中 央 値 は 2-3-3-3-3 であり、p 値は 0.13 10-4であっ た。外果マーカの最大移動距離の平均値(cm) は、12.1-17.1-20.5-21.0-21.2 であり、p 値 は 0.57 10-6であった。最大速度の平均値 (cm/sec.)は、55.6-73.8-90.5-96.6-107.3 で あり、p 値は 0.31 10-5であった。また、SIAS-K に変化を認めなかった 5 名において、SIAS-K の中央値は 3、最大移動距離の平均値(cm)は 14.9-16.8-19.7-18.6-19.4 であり、p 値は 0.01 であった。最大速度の平均値(cm/sec.) は 82.7-85.0-103.5-105.7-116.8 であり、p 値は 0.13 であった。
考察:対象者全体の結果から、三次元動作解 析装置での評価は、p 値が SIAS より小さく、
高い検出力で変化を捉えることができた。
SIAS に変化を認めなかった 5 名に関しては、
距離において有意差を認め、SIAS では捉えき れない変化を捉えることができた。
まとめ:三次元動作解析装置を用いた片麻痺 評価は、脳卒中片麻痺患者の膝伸展機能の変 化を経時的に詳細に捉えることができた。今 後は、臨床場面において治療効果の判定に活 用できるよう、研究を進めていきたい。
脳卒中片麻痺患者における動的立位バランスと歩行速度との関係
河合佑季1)、谷野元一1)、寺西利生2)、上野芳也1)、矢箆原隆造1)、進藤竜太1)、 園田 茂1)
1)藤田保健衛生大学七栗サナトリウム
2)藤田保健衛生大学医療科学部リハビリテーション学科
目的:脳卒中片麻痺患者において左右方向、
特に麻痺側方向への重心移動能力と歩行速度 との関係は数多く報告されている。しかし、
前後左右4方向への重心移動能力と歩行速度 との関係について報告しているものは少ない。
そこで今回、我々は重心移動方向を前後左右 の4方向に分け、歩行速度との関係を検討し たので報告する。
方法:対象は当院回復期リハビリテーション 病棟に入院した指示理解が良好な初発脳卒中 片麻痺患者18名とした。年齢は60.3 13.7 歳、疾患の内訳は脳梗塞8名、脳出血10名、
麻痺側は左7名、右11名、発症から計測ま での期間は90.3 30.0日であった。退院時の 下肢Brunnstrom stageはⅡが2名、Ⅲが1 名、Ⅳが9名、Ⅴが5名、Ⅵが1名、退院時 のFIM歩行項目は5点が2名、6点が14名、
7点が2名であった。動的立位バランスの計 測は、退院時にアニマ社製ツイングラビコー ダー G-6100 を使用しCross testを行った。
Cross testの計測肢位は両足部内側間距離を 10㎝とし、開眼立位にて前後および左右方向 へ重心を随意に最大限移動させた。評価指標 には、静的立位における足圧中心の座標を予 め計測し、前後および左右方向への重心の最 大到達点との距離を計算した最大重心移動距 離を使用した。装具を使用している対象には その使用を認めた。歩行速度は速歩での10m 歩行時間を計測し、算出した。なお、対象に は事前に研究内容について説明し、同意を得
て実施した。統計処理はspearmanの順位相 関係数を使用し、前後左右の各方向における 最大重心移動距離と歩行速度との関係を検討 した。
結果:各方向における最大重心移動距離は前 方が5.22 1.42㎝、後方が4.59 1.53㎝、
非麻痺側方向が6.65 2.30㎝、麻痺側方向が 6.60 1.94 ㎝であった。歩行速度は 3.06
1.31km/h であった。各方向における最大重
心移動距離と歩行速度との相関は、前方で相 関係数(以下,rs)が 0.52(p<0.05)、後方 でrs =0.31(p=0.22)、非麻痺側方向でrs =0.22
(p=0.37)、麻痺側方向でrs =0.54(p<0.05) であった。前方と麻痺側方向において有意な 相関関係が見られた。
考察:前方および麻痺側方向への最大重心移 動距離と歩行速度との相関関係を認めた。麻 痺側方向への最大重心移動距離に関しては過 去の報告と同様であったが、今回の検討にお いては前方への最大重心移動距離も歩行速度 と関係するという知見が得られた。歩行には 支持基底面を変化させながら重心を前方へ移 動させる動的立位バランスが必要であり、こ の点において前方への最大重心移動能力が反 映されていたと考えられた。
まとめ:前後左右4方向への最大重心移動距 離と歩行速度との関係について検討した。前 方および麻痺側方向への最大重心移動距離と 歩行速度に相関関係を認めた。今後は症例数 を増やして再検討を行っていく。