日本医工学治療学会 第 34 回学術大会 シンポジウム 8 【カフ型カテーテル徹底検討】
2018 年 3 月 17 日(土) 16 : 40 ~ 18 : 40
第 4 会場(大宮ソニックシティ 4 階 市民ホール 402 )
カフ型カテーテル在宅透析の功罪
医療法人 心信会
池田バスキュラーアクセス・透析・内科
池田 潔
2010 年 9 月 1 日 開院
2017 年 9 月 1 日現在の状況
☆アクセス・腎臓内科外来
☆月: 250 ~ 270 人
維持透析導入: 40 人 /7 年
☆人工透析
通院維持透析; 122 人 在宅透析; 10 人
☆訪問看護ステーション:
医師;3名 看護師;20名 工学技士;8名 検査技師;3名 管理栄養士;1名
メディカルクラーク;2名 看護助手;6名
事務;7名
訪問看護:3人
透析室 1 F: 34 台、 2 F: 15 台
医)心信会 池田バスキュラーアクセス・透析・内科
検査項目 年間平均件数
• OPE:120件
• PTA:380件
• カテーテル関連:40件
•
血液検査•
レントゲン•
心電図•
骨密度測定、ABI、SPP•
体組成分析装置(BCM)•
超音波診断装置– 血管(頸動脈・シャント・下肢)
– 心臓・腹部 – IVC
全カテーテル 患者一覧
性別 年齢 原疾患 透析歴 VA挿入期間 挿入デバイス VA
女 75歳 逆流性腎症 17年 7年2ヶ月 ショーン カフ付カテーテル(右内頸静脈)
女 64歳 慢性糸球体腎炎 39年 3年4ヶ月 テシオ(シングル)カフ付カテーテル(右内頸静脈)
男 75歳 Ⅱ型糖尿病性腎炎2年4ヶ月 2年4ヶ月 テシオ カフ付カテーテル(右内頸静脈)
女 28歳 慢性糸球体腎炎 2年2ヶ月 1年2ヶ月 ショーン カフ付カテーテル(右内頸静脈)
男 46歳 Ⅱ型糖尿病性腎炎3年4ヶ月 7ヶ月 ショーン カフ付カテーテル(右内頸静脈)
男 60歳 多発性嚢胞腎 8年10ヶ月 2年8ヶ月 ショーン カフ付カテーテル(右内頸静脈)
男 55歳 Ⅱ型糖尿病性腎炎5年5ヶ月 2年5ヶ月 ショーン カフ付カテーテル(右内頸静脈)
男 67歳 慢性糸球体腎炎 8年1ヶ月 2年2ヶ月 テシオ カフ付カテーテル(右内頸静脈)
女 60歳 IgA腎炎 17年11ヶ月 1年10ヶ月 テシオ カフ付カテーテル(右内頸静脈)
女 39歳 慢性糸球体腎炎 5年2ヶ月 6ヶ月 テシオ カフ付カテーテル(右内頸静脈)
H H D 施 設
カテーテルトラブル
カテーテルトラブル時の対処法フロー
脱血不良・静脈圧上昇 感染兆候あり
出口部 トンネル カテーテル内
抗生剤の全身投与
(多剤併用)・
カテーテル内投与
カテーテル抜去 経路変更
抗生剤の 全身投与 消毒
抗生剤内服
局所の抗生剤軟膏
カテーテル交換
(血培陰性を確認後)
抗生剤を3週間投与
発赤、腫脹、熱感、発熱、
排膿、 疼痛、CRP↑など
抵抗
(+)
ウロキナーゼ充填
抵抗
(-)
無 効
カテーテルのポンピングにて血栓の 有無を確認し、血栓を除去する。
ポンピング
血栓除去
抵抗
(±)
ヘパリン充填
ウロキナーゼ6万単位を生食5ml にて溶解したものを使用
ヘパリン5千単位を原 液で使用
(入院処置)
(血流感染)
カテーテル感染の部位別対処方法
出口部感染 トンネル感染 カテーテル内感染 無効
①消毒
②抗生剤の内服
③局所の抗生剤軟膏
①アンルーフィング
②抗生剤の全身投与
①抗生剤の全身投与
②抗生剤のカテーテル内投与
無効 カテーテルの抜去
①カテーテルの交換
(血液培養陰性を確認後)
②抗生剤を 3 週間投与
2011年版「慢性血液透析用バスキュラーアクセスの作製および修復に関するガイドライン」より
カフ型カテーテルの問題点
1) 不潔操作による血流感染
2) 出口部ケアの不適切による出口部感染
3) カテーテル先端孔・側孔の閉塞による脱血不良
基本はテープのりを残さないこと。
発赤時は早めに軟膏処置を行うことが外科的処置を減少させる ことにつながる。
出口部感染防止のための処置方法
ドレッシングフィルムを外し クロルヘキシジングルコン酸 塩含有綿
(サンプル①)にて
テープノリを取るように清拭 する
1
カテーテル出口部をクロル ヘキシジングルコンサン塩
(サンプル②③)
にて消毒する
2
滅菌鑷子を使用し
バイオパッチ
®(サンプル④)を 清潔に装着する
3
カテーテルにドレッシング フィルムのテープノリが
付着しないように滅菌ガーゼ
(サンプル⑤)
で保護する
4
ガーゼ
(サンプル⑤)でカテーテル を挟むようにして覆う
5
カテーテルに直接つかないよ うに、ドレッシングフィルム
(サンプル⑥)
を貼る
6
7
ドレシングフィルムの上に テープを貼る
8
カテーテルのルート部分を ガーゼで包む
ガーゼ固定のテープは縦張り にし、フィルムの上に貼った テープに固定する
9
*患者の皮膚状況に応じて保湿
ジェルクリーム(ピュアバリア ® )
を薄く塗布してドレッシングフィ
ルムを貼る
カテーテル出口部炎症 処置工夫
経路変更術
出口部・トンネル感染が生じ、排膿が認められた場合。(発熱がなく、菌血 症がないと判断できる場合のみ)以下の処置を行う。
症例) 68 才・男性 透析歴: 15 年 1 か月 原疾患: PCKD
2017.8.31
(オペ前)2017.8.31 右長期留置カテーテル経路変更術 施行
右内頚カフ型カテーテル トンネルに沿って発赤(+)のため来院。
鎖骨上からカテーテルを引き抜き、イソジン生食で洗浄。
新たに外側に出口部を形成し、経路変更した。
症例) 68 才・男性 透析歴: 15 年 1 か月 原疾患: PCKD
2017.9.16
(経過)2017.8.31 カフ型カテーテル経路変更術後
症例) 68 才・男性 透析歴: 15 年 1 か月 原疾患: PCKD
2017.8.31 カフ型カテーテル経路変更術後 6 ヵ月
2018.2.10
(経過)血栓性
外来でのカテーテル診察
脱血不良・静脈圧上昇
抵抗
(+)
ウロキナーゼ充填
抵抗
(-)
カテーテルのポンピング にて血栓の有無を確認し、
血栓を除去する。
ポンピング
血栓除去
抵抗
(±)
ヘパリン充填
ウロキナーゼ6万単位を生食5ml にて溶解したものを使用
ヘパリン5千単位を原 液で使用
カテーテル内血栓除去術の実際
術野にて
透視下で
0.035ガイドワイヤー3本
外来管理の現状
カテーテル挿入術件数
4
9 8 9
6
15
9
5
0 2 4 6 8 10 12 14 16
H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29
当院での留置:
65
本外来管理の現状
カテーテル挿入理由
シャント閉塞
47%
シャント 機能不全
16%
在宅
12%
緊急導入
9%
短期
→
長期4%
心機能不全
4%
その他10%
その他:過剰血流 静脈高血圧症 点滴目的
トラブル内容を年別にすると、閉塞が
H26
以 降は0
件となっている。静脈圧上昇や脱血不 良など見られた場合に早期に対処したことで、閉塞は防ぐことができた。また感染に対して は
H26
頃より管理マニュアルの確立・他院へ の情報提供を行っていることにより、H27
には 減少した。静脈圧上昇・脱血不良に対しては血栓除 去術を施行している。
H25
頃まではトンネ ル感染に対してもカテーテル交換を行っ ていたが、H26
頃より経路変更術で対応 するようになった。トラブルと処置 平成 23 年~ 27 年
外来管理の現状
受診総件数のうちトラブル件数
1 11 13 23 18 19
49 38 4
17 20
54
75
144
89
55
0 20 40 60 80 100 120 140 160 180
H 22 H 23 H 24 H 25 H 26 H 27 H 28 H 29
なし あり
外来管理の現状
トラブル内容 内訳
脱血不良
27%
出口部感染 閉塞
20%
19%
血栓
7%
ブリッジ
6%
その他周囲感染
3%
出血
1%
感染
1%
その他16%
その他:コネクタ破損 位置異常 キンク
外来管理の現状
トラブル内容(年別)
0 10 20 30 40 50 60
H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29
その他周囲感染 その他
感染 出血 ブリッジ 血栓 閉塞
出口部感染 脱血不良
外来管理の現状
トラブルに対する処置内容(年別)
0 10 20 30 40 50 60
H22 H23 H24 H25 H26 H27 H28 H29
その他 経路変更 薬物療法 アクセス変更 カテーテル交換 血栓除去
在宅透析の問題点=在宅透析が増加しない理由(
2012
年に初参加して感 じた問題点)1) 連日透析における自己穿刺の習得と自己血管穿刺部位の劣化 2) 自己穿刺習得期間が個人差があり不安定
3) 見守りまたは介助する人が必要である。
4)
PD
で在宅透析を経験した患者からの移行が多い。5) 研究会は、わずか
500
人の患者を対象としており増加しないことが ひとつの問題であった。当院の HHD 患者一覧
性別 年齢 原疾患 透析歴 HHD歴 平均HDP 透析回数月平均 挿入デバイス・方法 VA
カ テ ー テ ル
男 60 多発性のう胞腎 9年3か月 2年11か月 144 27回 ショーン 右TCC 男 55 糖尿病性腎症 5年5か月 2年6か月 122.5 30回 ショーン 右TCC 男 68 慢性糸球体腎炎 7年2か月 2年3か月 100 22回 テシオ 右TCC 女 60 IgA腎症 18年4か月 1年10か月 96 18回 テシオ 右TCC 女 39 慢性糸球体腎炎 7年6か月 3か月 147 31回 テシオ 右TCC
自 己 穿 刺
女 50 糖尿病性腎症 5年8か月 1年5か月 108 24回 鋭利針 左AVF 男 58 慢性糸球体腎炎 5年6か月 1年1か月 125 21回 BH 左AVF 男 52 糖尿病性腎症 7年4か月 1年10か月 196 30回 BH 左AVF 女 62 慢性糸球体腎炎 15年3か月 9か月 108 23回 鋭利針 左AVF 女 51 糖尿病性腎症 10年8か月 6か月 252 28回 鋭利針 左AVF
再指導中 2018.1.31現在
0 1 2 3 4 5 6 7 8
9 トラブル件数
HHD患者カテーテルトラブル
挿入月から最長1年8ヶ月まで
n=5カテーテル挿入月から10ヶ月間は、
全ての患者でトラブルなし
トラブル
A:
出口部周囲の血腫B
:脱血不良による血栓除去在宅透析開始前後の比較
80 100 120 140 160 180 200
開始前 現在
透析前収縮期血圧
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000
開始前 現在
エポ
-4 -3 -2 -1 0 1 2
開始前 現在
DW-NH
在宅透析開始前後の比較
80 100 120 140 160 180 200 220
開始前 開始後
透析前収縮期血圧
0 2000 4000 6000 8000 10000 12000 14000
開始前 開始後
エポ
-5 -4 -3 -2 -1 0 1 2 3
開始前 開始後
DW-NH
0 50 100 150 200 250
透析前収縮期血圧
p<0.05
在宅透析開始前後の比較
開始前 現在 0
1000 2000 3000 4000 5000 6000 7000 8000 9000
エポ
n.s.
開始前 現在
-2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5
DW-NH
n.s.
開始前 現在
在宅透析開始前後の比較
0 50 100 150 200
透析前収縮期血圧
開始前 開始後
p<0.01
0 2000 4000 6000 8000 10000
エポ
開始前 開始後
n.s.
-2.5 -2 -1.5 -1 -0.5 0 0.5 1 1.5 2
DW-OH
開始前 開始後
n.s.
検査値の比較
HHD 開始前
心胸比 透析前
収縮期血圧
透析前
拡張期血圧 TP ALB
カテーテル群 49.3±5.1
n.s.
158±26
n.s.
88±15
n.s.
6.5±0.6 n.s.
3.7±0.1
p<0.05 自己穿刺群 49.4±3.7 176±13 91±15 6.9±0.6 4.2±0.5
Hb K P Ca PTH
カテーテル群 10.9±1.6
n.s.
4.4±0.8
n.s.
4.8±1.8
n.s.
9.4±0.6 n.s.
212±146
n.s.
自己穿刺群 11.6±2.0 5.1±1.1 5±2.2 9.0±0.5 179±118
フェリチン Fe エポ投与量
カテーテル群 42.9±25.3
n.s.
74.8±29.4 n.s.
7100±3715
p<0.05 自己穿刺群 202.1±221.9 73.8±37.5 4000±1717
*数値は平均±SD
検査値の比較
2018 年 1 月現在
心胸比 透析前
収縮期血圧
透析前
拡張期血圧 TP ALB
カテーテル群 45.5±2.6
n.s.
134±32
n.s.
73±21
n.s.
7.4±0.6
n.s.
4.1±0.0
n.s.
自己穿刺群 47.4±2.6 144±23 76±9 7.4±0.5 4.3±0.5
Hb K P Ca PTH
カテーテル群 10.8±1.2
n.s.
4.2±0.9
n.s.
3.4±0.7
n.s.
9.5±0.4
n.s.
174±92
n.s.
自己穿刺群 11.1±2.5 5.1±0.2 5±1.3 9.5±0.5 250±83
フェリチン Fe エポ投与量
カテーテル群 85±65.7
n.s.
106.5±31.8
n.s.
2937±2105
n.s.
自己穿刺群 39.9±37.8 109.6±94.2 1500±3500
*数値は平均±SD
検査値の比較
カテーテル群
心胸比 透析前
収縮期血圧
透析前
拡張期血圧 TP ALB
HHD開始前 49.9±5.7
p<0.05
158±30
n.s.
86±17
n.s.
6.6±0.6
p<0.05
3.7±0.1
p<0.01
2018年1月 45.5±2.6 134±32 73±21 7.4±0.6 4.1±0.0
Hb K P Ca PTH
HHD開始前 11±1.8
n.s.
4.1±.5
n.s.
4.2±1.3
n.s.
9.4±0.7
n.s.
251±151
n.s.
2018年1月 10.8±1.2 4.2±0.9 3.4±0.7 9.5±0.4 145±85
フェリチン Fe エポ投与量
HHD開始前 42.9±25.3
n.s.
77.2±33.4 n.s.
6625±4110
n.s.
2018年1月 89.8±113.3 106.5±1.8 3700±2105
*数値は平均±SD
検査値の比較
自己穿刺群
心胸比 透析前
収縮期血圧
透析前
拡張期血圧 TP ALB
HHD開始前 49.4±3.7
n.s.
176±13
n.s.
91±15
n.s.
6.9±0.6
p<0.05
4.2±0.5
n.s.
2018年1月 47.4±2.6 144±23 76±9 7.4±0.5 4.3±0.5
Hb K P Ca PTH
HHD開始前 11.6±2.0
n.s.
5.1±1.1
n.s.
5±2.2
n.s.
9.0±0.5
n.s.
179±118
n.s.
2018年1月 11.1±.5 5.1±2 5±1.3 9.6±.5 250±83
フェリチン Fe エポ投与量
HHD開始前 202.1±221.9
n.s.
73.8±37.5
n.s.
4000±1717
n.s.
2018年1月 39.9±37.8 109.6±94.2 1500±3500
*数値は平均±SD
考察
カフ型カテーテル全体
#1 パンフレットによる啓蒙により手技の統一化を行い出口部感染は、当院 通院患者のみならず感染率は低下した。カテーテル管理の方法によって は、出口部感染と血流感染を減らすことが可能であった。
#2 カテーテル孔の閉塞に対する早期の掃除法を確立した。
在宅透析
#3 在宅透析患者においてカテーテルからの頻回透析は造血剤を必要とする。
#4 在宅透析でのカフ型カテーテルは教育機関の短縮につながり自己穿刺 訓練期間より3ヶ月が2か月短縮された。
まとめ
カフ型カテーテル透析は、在宅透析への応用に限らず
管理方法によって、透析アクセスの選択肢となりえる。
#1 カフ型カテーテルの成果
管理方法が確立されれば、在宅透析への応用が可能である。
#2 カフ型カテーテルの改善すべき点
出口部感染、トンネル感染の防止のためカフの改良が必要である。
カテーテル先端の血栓付着防止
#3 カフ型カテーテルの適応指針