• 検索結果がありません。

高齢者とフレイル

N/A
N/A
Protected

Academic year: 2021

シェア "高齢者とフレイル"

Copied!
16
0
0

読み込み中.... (全文を見る)

全文

(1)

《論文》

高齢者とフレイル

一超高齢社会におけるフレイルケアに関する一考察一

岩 崎 房 子

(2)

z 鹿 児 島 国 際 大 学 福 祉 社 会 学 部 論 集 第 3 6 巻 第 2 号

論文

高齢者とフレイル

一超高齢社会におけるフレイルケアに関する一考察一

岩 崎 房 子

和文抄録:本稿は、高齢者の療養や生活に携わる専門職である看護師や介護福祉士等にとって、認識 が浸透しているとは言い難い フレイル における、その予防・早期発見・早期介入のために不可欠 な知識と介護予防の視点について、文献研究により明らかにするとともに、高齢者のQOLを支えるた めの示唆を得、健康寿命の延伸に寄与することを目的とする。

フレイルの予防、改善のためには、①フレイル予防への意識向上、②早期に兆候を発見する、③多 角的な視点から対象者を評価することで改善可能な問題の把握、④対象者の能動的な活動を引き出す、

などの点が重要である。また、多職種が協働することにより、疾病や障害への対応だけでなく、フレ イルに関する評価やフレイルからの回復に応じた介入の実施が可能になると同時に、個々の高齢者が どのような回復過程を辿るのかについても見極めることができる。さらに、超高齢社会という新たな 社会システムを構築していくためにも、医療・介護専門職のフレイルヘの意識向上と多職種等との連 携・協働は不可欠である。

キーワード:フレイル、後期高齢者、老年症候群、介護予防

は じ め に

2016(平成28)年の日本人の平均寿命は、男性が80.98歳、女性が87.14歳と、過去最高を更新した(厚生労働 省:2017年7月27日現在)。また、2017(平成29)年4月厚生労働省公表の将来推計人口では、平均寿命の更な る上昇が見込まれており、2065(平成77)年には男性で84.95歳、女性で91.35歳に達する可能性が示されている (時事メディカル:2017年7月28日)。平均寿命延伸の原因について、厚生労働省は、がん、心疾患、脳血管疾 患の三大死因の死亡率低下が寿命の延びに寄与していると分析している。一方、健康寿命については、健康日 本21(第二次)現状値の年次推移(厚生労働省)では、2013(平成25)年で男性が71.19歳、女性が74.21歳とな り、日本は平均寿命、健康寿命ともに世界トップクラスである。しかしながら、寝たきり期間も世界トップク ラスとなっているという現実もある◎健康上の問題がなく、日常生活が送れる状態を健康寿命というが、平均 寿命に比べて健康寿命が低いと介護を必要とする時期が長くなる。その差に着目すると、現在、日本は男性が 9.97歳、女性が12.93歳となる。おおよそ10〜13年間を要介護状態に陥らないよう、いかに老年期を過ごし健康 寿命を延伸するかが、超高齢社会のわが国に求められる喫緊の課題となっているのである。

このように、高齢化に伴う諸問題の一つに要介護状態の高齢者の増加がある。ここ10年間の要介護(要支援)

認定者数の動向をみると、全体としては1.4倍の増加であり、なかでも要支援者が1.6倍に増加している(厚生労

働省:2007,2017)。そして、これらの要支援者、要介護者は、加齢が進むに従い心身の機能や予備能力の低下

(3)

岩崎房子:高齢者とフレイル3

がみられ、ADLや自立度の低下を経て要介護度が高くなっていく。

このような昨今の実情を背景に、2014(平成26)年5月に日本老年医学会が「フレイルに関する日本老年医 学会からのステートメント」を発表した。老年医学の分野では、病態生理だけではなく、診断、介護予防の観 点から、近年 フレイル の重要性がクローズアップされている。大内ら(2014)は、「フレイルに関する日本 老年医学会からのステートメント」のなかで「fiailtyとは、高齢期に生理的予備能力の転帰に陥りやすい状態 で、筋肉の低下により動作の俊敏 性が失われて転倒しやすくなるような身体的問題のみならず、認知機能障害 やうつなどの精神・心理的問題、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む概念である。」とし、さらに「この fifailtyの概念は多くの医療・介護専門職にほとんど認識されておらず、介護予防の大きな障壁であるとともに、

臨床現場での適切な対応を欠く現状となっている。」と述べている。

フレイルについては、その含まれる概念の範曜が広範であり、スクリーニングや介入方法に関して、一定の 見解が得られるまでには至っていない現状があるものの、そのエビデンスが徐々に構築されてきつつある。ま た一方では、一般の医療専門職や介護専門職における認知度が低いため、適切な介入が行われていない。つま り、フレイルに対する専門職の認識の向上とケアアプローチの開発は、わが国の超高齢社会における高齢者の QOLおよび健康寿命の延伸にとって重要な事項であり、喫緊の課題への対応策でもあると言える。

本稿は、高齢者の療養や生活に携わる専門職である看護師や介護福祉士等にとって、認識が浸透していると は言い難い フレイル における、その予防・早期発見・早期介入のために不可欠な知識と介護予防の視点に ついて、文献研究により明らかにするとともに、高齢者のQOLを支えるための示唆を得、健康寿命の延伸に寄

与することを目的とする。

1 . フ レ イ ル と は

内閣府(2016)のデータによると、わが国の65歳以上の高齢者人口は、3,459万人となり、総人口に占める割 合は27.3%と年々増加傾向にある。また、高齢者人口のうち、「65〜74歳人口」の総人口に占める割合は13.9%、

「75歳以上人口」は13.3%となり、今後は、特に75歳以上の後期高齢者の増加が顕著となることが予測されてい

る。

秋山(2010)は、1987(昭和62)年より、全国から無作為に抽出された約6,000人の高齢者の生活を20数年間

にわたって追跡調査を行っている。男性では、80歳、90歳まで自立を維持する人が1割、大多数の7割は75歳

頃までは元気であるが、その頃から徐々に自立度が落ちていった(図表1)。一方、女性では、9割の人たちが

70歳代半ばから緩やかに衰えていっていた(図表2)。男性は疾病によって急速に動けなくなり死亡する人が多

いが、女性では骨や筋肉の衰えによる運動機能の低下により自立度が徐々に落ちていく。男女合わせると、約

8割の人たちが後期高齢期に入る70歳代半ばから徐々に衰え始め、何らかの介助が必要になることを明らかに

している。また、一方では後期高齢者には、介護を受ける側というイメージがあるが、大多数の人たちは、多

少の介助があれば日常生活を続けることができることも明らかにしている。

(4)

4 鹿 児 島 国 際 大 学 福 祉 社 会 学 部 論 集 第 3 6 巻 第 2 号

図表1機能的健康度の変化パターン(男性)

自 立 3

手段的日常生

活動作に援助2

が 必 要

基本的&手段

溺雛に

死 亡 0

0‑1%

63‑6566.6869‑7172‑7475‑7778.8081‑8384‑8687‑89

出典)秋山弘子(2010)「長寿時代の科学と社会の楕想「科学」」岩波書店 図表2機能的健康度の変化パターン(女性)

自 立 3

手段的日常生 活動作に援助2 が必要

基本的&手段 的日常動作に1 援助が必要

死 亡 0

fl針‑%)

( 8 7 . 9 % )

63.6566‑6869‑7172‑7475‑7778.8081‑8384‑8687‑89

出典)秋山弘子(2010)「長寿時代の科学と社会の栂想「科学」」岩波書店

加齢は、心身にさまざまな変化を生じさせる。予備能力の衰えにより、心身のストレスに対する脆弱性が増 し、感染症の催患や転倒等を契機に要介護状態に陥ることが増えてくる。これらの変化は徐々に生じてくるが、

進行することで転倒や日常生活の障害、要介護の発生、死亡の転帰となる危険が増大する。このように、加齢 とともに環境因子に対する脆弱性が高まった状態が フレイル である。この状態は、本来は「虚弱」と訳さ れていた概念であったが、2014(平成26)年5月に日本老年医学会が、海外の老年医学の分野で使用されてい たfiPailty(フレイルテイ)に対する日本語訳として、新たに提唱した。鈴木ら(2015)が行った「後期高齢者の 保健事業のあり方に関する研究」報告書では、「フレイルについては、学術的な定義がまだ確定していない。」

としたうえで、フレイルを「加齢とともに心身の活力(運動機能や認知機能等)が低下し、複数の慢性疾患の 併存などの影響もあり、生活機能が障害され、心身の脆弱性が出現した状態であるが、一方では適切な介入・

支援により、生活機能の維持向上が可能な状態像」と定義している。これは、健康な状態と日常生活でサポー

トが必要な介護状態の中間を意味し、生活機能障害や筋力低下などの身体的な問題、その他にも認知機能障害

やうつなどの精神・心理的問題、また、独居や経済的困窮などの社会的問題を含む包括的な概念である。加え

て、「虚弱」という言葉は、加齢に伴って不可逆的に老い衰えた状態という印象が強いが、フレイルには、適切

な介入により再び健常な状態に戻るという可逆性が包含されている。つまり、フレイルは、早期に発見し早期

(5)

閉じこもり、困爾、

孤食等

に適切に介入することで元に戻る可能性があるとしている。特に高齢者のフレイルは、QOLの低下を招くのみ ならず、合併症を引き起こす可能性がある。このことからも、フレイルの予防、早期発見、早期介入は、超高 齢社会を迎えたわが国にとって、健康寿命を延伸するために欠かせない視点であると言える(図表3)。

図 表 3 フ レ イ ル

岩崎房子:高齢者とフレイルラ

虚弱(FraiIty)→フレイル

①中間の時期

②可逆性(Reversibility)

③多面性

「身体」の虚弱

フ ィ ジ カ ル ・ フ レ イ ル

フレイルのある高齢者では、さまざまな健康問題を生じるリスクが高くなる。このことは、健康寿命の短縮 や介護に要する費用の負担にもつながる。内閣府(2016)が行った調査によれば、要介護者等について、介護 が必要となった主な原因についてみると、「脳血管疾患」が17.2%と最も多く、次いで、「認知症」16.4%、「高 齢による衰弱」13.9%、「関節疾患」11.0%となっている。「高齢による衰弱」は、主にフレイル状態を指してい ると捉えることができるが、介護が必要となった主な原因に占めるこの割合は、年齢が高くなるにつれて増大 してくる。また、今後、後期高齢者が占める割合が多くなることが予測されることから、要介護高齢者の増加 や介護保険費用の増大を招くことになり得る高齢期におけるフレイルの判定や予防は重要な意義を持つと言え

る。

一方、フレイルと判定されてもそのまま悪化への途を辿るわけではなく、適切な介入によって身体機能の向 上、さらにはフレイルからの脱却が可能であることが期待されている。牧迫(2015)は、Fairhallらが2012年に 実施した、フレイルの5つの構成要素(判定基準)のうちで3つ以上に該当し、フレイルと判断された241名 (平均83.3歳)を対象として、フレイルの構成概念を標的とした多面的な在宅での介入効果結果を取り上げ、「フ レイルを有する高齢者であっても、対照群と比べて、フレイルの構成要素を考慮した介入群(歩行や筋力向上、

身体活動量の増大など)では、歩行速度の有意な改善が認められている。」と報告している(フレイルの5つの

構成要素(判定基準)については次項参照)。

2 .

ロ コ モ

サルコベニア等

騨会性」の虚弱

ソ ー シ ャ ル ・ フ レ イ ル

にころ/認知」の 虚弱 〜

メンタル/コグニティ ブ・フレイル うつ、脚知機能低下

フ レ イ ル 判 定 の 意 義

出典)飯島勝矢「より早期からの包括的フレイル予防」健康長寿ネット h t t p s : / / w w w 、 t y o j y u , o r . j p / n e t / t o p i c s / t o k u s h u / c h o k o u r e i s h a k a i /

前 虚 弱 黒黒,

フレイルの多面性

能 力

(6)

6 鹿 児 島 国 際 大 学 福 祉 社 会 学 部 論 集 第 3 6 巻 第 2 号

3 . フ レ イ ル の 判 定 方 法 と 有 病 率

牧迫(2015:8)は、Friedらによるフレイルの操作的定義について、「①体重減少、②筋力低下、③疲労感、

④歩行速度の低下、⑤身体活動の低下といった5項目のうち3項目以上に該当した場合と定義しているとして いる。」と述べている。吉田(2015:9‑10)は、Friedらが米国で実施したCardiovascularHealthStudy(CHS)の 判定評価基準に準拠した方法で実施された諸外国の有病率調査報告文献から、有病率は、男性よりも女性に多 く、高齢になるほどその割合が高いこと、さらに地域差にも着目し、発展途上国は人種の違いだけでなく、教 育水準や世帯収入が先進国より低得点であったことから、社会経済的な要因も影響していると考察している。

一方、わが国におけるフレイルの有病率に目を向けると、吉田(2015:10)らは、65歳以上の地域高齢者 4,745名を対象とした機能検診(theObuStudyofHealthPromotionfbrtheElderly:OSIPE)の結果をもとに、日 本人高齢者におけるフレイルの有病率を算出している。調査では、Friedの5項目の調査方法と該当基準を決定

し、3項目以上に該当する人をフレイル、l〜2項目に該当する人をプレフレイルと判定している(図表4)。

調査の結果、フレイルの有病率は65歳以上の高齢者全体の11.3%、プレフレイルは56.9%で、両者を含めるとそ の有病率は68.2%に上り、高齢になるほど有病率は増加し、80歳以上では男女ともに30%を上回り、男女別では 女性が男性より高い有病率を示す傾向にあったと報告している。

なお、わが国のフレイル判定の修正案は図表5のとおりである。ただし、わが国におけるこれらの基準につ いて牧迫(2015)は、「基準によって判定されたフレイルが将来の疾病発症、施設入所、死亡、生活機能障害、

要介護度の発生などといった健康状態を阻害する要因となり得るかの予測妥当性の検証や、フレイルに対する 介入効果を綿密にデザインされた研究による検証は十分ではない。これらの検証を促進して、フレイルの基準

を明確にすることは今後の課題の一つである。」と述べている。

図表40SHPEにおけるフレイルの調査方法と該当基準(吉田ら米国で実施)

項目 体重減少

筋力低下

疲労感

歩行速度の低下

身体活動の低下

調査方法

問診「この2年間で体重が5%以上減りまし たか」

計測「利き手の最大握力(1回測定)」

問診「自分は活力が満ちあふれていると感じ ますか」

計測「6.5mの歩行路を通常速度で歩き、中間 路(2.5m)の所要時間から歩行速度を算出」

問診「軽い運動・体操をしていますか」、「ス ポーツをしていますか」

該当基準

「はい」と回答

男性:26kg未満、女性:17kg未満

「いいえ」と回答

1.0m/s未満 (男女共通)

「していない」と回答

注)上記5項目のうち、3項目以上に該当する者をフレイル、1〜2項目該当する者をプレフレイルと判定した。

出典)吉田大輔(2015)「フレイルの有病率と危険因子」「フレイルの予防とリハビリテーション」医歯薬出版、P11.

(7)

岩 崎 勝 子 : 高 齢 者 と フ レ イ ル 7

図 表 5 わ が 国 で の フ レ イ ル 判 定 の 修 正 案

体重減少 6か月間で2〜3kg以上の体重減少(基本チェックリスト、厚生労働省)

筋 力 低 下 握力低下(男性26kg未満、女性18kg未満)

疲 労 感 (ここ2週間)わけもなく疲れたような感じがする(基本チェックリスト、厚 生労働省)

歩行速度の低下 通常歩行速度1.0m/s未満

身 体 活 動 の 低 下 「職い運動・体操をしていますか」・「定期的な運動・スポーツをしています 力、」上記のいずれの質問ともに「していない」と回答

出典)牧迫飛雄馬(2015)「フレイルの判定と予防の重要性」『フレイルの予防とリハビリテーション』医

歯薬出版、P11.

4 . フ レ イ ル の あ る 高 齢 者 の 特 徴

フレイルのある高齢者の特徴を理解することは、フレイルのある高齢者を発見し機能低下を予防するために も重要である。吉田(2015:10‑12)によると、「実施したOSHPEの結果、①慢性疾患のなかでも高血圧、糖尿 病、骨粗髭症、心臓病、呼吸器疾患、変形性膝関節症を有する人がフレイル高齢者に多く、それ以外にも②骨 折歴(60歳以降)や転倒歴(過去1年間)、③主観的健康感の低下を認める人が有意に多く、さらに、④体脂肪 率が高くSkeletalmuscleindex(SMI:身長で補正した四肢筋並)や骨量が少ない体型、⑤低学歴(教育年数)や、

⑥認知機能、うつ傾向などを有し、⑦血液検査の結果ではフレイル高齢者のアルブミン値と総コレステロール 値が有意に低値を示した。」と報告している(図表6)。ただし、これらの特徴はフレイルを発症する前の特徴 であるのか、発症後の特徴であるのか特定はできていないとしている。

図 表 6 フ レ イ ル の 発 生 に 関 与 す る 主 な 因 子

〆 圃 蝿 一 . 司 〆

・高血圧

・糖尿病

生 活 習 慣

・身体活動

・喫煙

・ 飲 酒

・冠動脈疾患

・呼吸器疾患

・骨折

・食事(栄養)

ノ L ‑ 選 … ノ

.'性別・人

、 ー

出典)吉田大輔(2015)「フレイルの有病率と危険因子」『フレイルの予防とリハビリテー

ションj医歯薬出版、P13.

75歳以上の後期高齢者の増加は、認知症高齢者や寝たきり商齢者などの要介護商齢者が増大することを意味 している。特に後期高齢者では、老化の兆候が顕著に川現するとともに老年症候群が認められるようになる(図 表7)。老年症候群は加齢とともに出現する身体的、精神的症状・疾患であり、前期・後期を問わず高齢者に起

こる。

(8)

8 鹿 児 島 国 際 大 学 福 祉 社 会 学 部 論 集 第 3 6 巻 第 2 号

図 表 7 老 年 症 候 群 の 主 要 症 候

意識障害 揮癒 転倒・骨折

せ ん 妄 呼吸困難(呼吸器) 発熱、易感染性

うつ症状 手足のしびれ 浮腫

言語、聴覚、視力障害 動脈硬化 低栄養、貧血

骨 粗 溌 症 痛み 瑞鳴、熔痩咳噺

尿 失 禁 ADL低下 呼吸困難(循環器)

誤喋、摂食蝶下障害 認知症 間歌性破行

脱水 不眠 不整脈

低体温 め ま い 出血傾向、吐下血

肥満、るい痩(体重減少) 骨関節変形 サルコペニア(筋量低下)

出典)鈴木みずえ(2015)「老年症候群とフレイル」『フレイルの予防とリハビリテーション」医歯薬 出版、P22.に一部加筆

烏羽ら(2005)は、老年症候群を①主に急性期疾患に付随する症候で、若い人と同じくらいの頻度で起きる が、対処方法は、高齢者では若い人とは違って工夫が必要な症候群、②主に慢性疾患(生活習慣病等)に付随 する症候で、前期高齢者から徐々に増加する症候群、③後期高齢者のADLの低下と関連をもち、介護が重要な 一連の症候群、に分類している。さらに、これらの老年症候群の発現が多いほど、ADL機能が低下しており、

老年症候群の多くはADL機能が失われる過程で老年症候群が増大している傾向にあるとしている。

特にフレイルの状況にある高齢者は転倒を起こしやすく、その後に重要な健康障害を引き起こし、生命予後 にも影響を及ぼす。転倒は加齢に関連したフレイルと筋量が減少し、歩行速度が低下しているような状態で、

フレイルの状態のなかでも筋肉に注目した概念であるサルコペニアを基盤とした歩行・バランス機能の障害と 健康障害が加わって、通常では転ばないような日常生活で起こりやすく、それまでほとんど老年症候群がみら れなかった高齢者にも複数の健康障害や老年症候群を引き起こす徴候でもある(図表8.9)。

図 表 8 フ レ イ ル の 臨 床 像 と 有 害 ア ウ ト カ ム

背景の変化

匡 今

FraiItyの臨床徴候 症状

・元気がない

.疲れやすい

・食欲がない

・低栄養

・体重減少 徴候

.高いリスクを示す 生理的変化

・筋肉風の減少

・骨量の減少

・平衡・歩行障害

・重篤な脱調整

F r a i l t y の 有 害 アウトカム

・転倒

・障害

・急性疾患

・入院

・廃用症候群

・依存

・施設入所

・死

出典)鈴木みずえ(2015)「老年症候群とフレイル」「フレイルの予防とリハビリ

テーション」医歯薬出版、P23.

(9)

等 度 図 表 9 生 活 機 能 の 程 度 と 高 齢 者 の 状 態 像 : 転 倒 と の 関 係

生 活 機 能 の 低 下 が な い 状 態

加 齢 、 疾 病 、 環 境 の 変 化 、 精 神 的 要 因 な ど

/ f 、

= 毒 = − − ‐

一 一 一

− 一 一 一 一 =

言 二 − 一 一

支 援 状 態 に る 高 齢 者 の

生活機能

軽 度 の 生 活 機

i

能の低下 れる状態 能 の 低 下

岩 崎 房 子 : 簡 齢 者 と フ レ イ ル 9

程度

の 低

活 動 的 な 状 態 に あ る 高 齢 者

5 . フ レ イ ル と 生 活 機 能 障 害 の 関 係

生活機能障害は、要介護状態とともに高齢者の健康寿命延伸を目指すうえで重要視されており、QOLへの影 響も大きいことから、その危険因子や予防法の探求が求められている。土井(2015)は、「高齢者において生活 機能障害が発生する要因は多岐にわたり、喫煙などの望ましくない健康習悩、肥満やサルコペニアなどの身体 組成、身体機能や認知機能などの機能低下や身体活動の低下などさまざまな因子が明らかにされている。」と述 べている。生活機能障害とは、ADLと手段的H常生活動作(IADL)における機能障害や自立度の低下を意味 し、ADLは、食事、蒜衣、入浴、移動または移動、整容などの行為項目において、立しているか、IADLは、電 話、買い物、食事の準備、家事、洗濯、移動手段、服薬管理、金銭管理などの項Ijにおける自立度を評価する。

高齢者に生活機能障害が生じた場合には、リハビリテーションなどにより機能状態の同復が望まれる。しか し、土井(2015)は、「フレイルを有する高齢者では、たとえ一過性の機能低下であっても低下の度合いが健常 高齢者に比べて大きく、元の機能に戻る力が減衰していると考えられている。」と述べている。さらに、土井 (2015)は、Gillらのグループの報告を紹介し、「身体的フレイルを有することで生活機能障害の発生自体や持 続的な生活機能障害ならびに施設入所を伴う生活機能隙稗に対するリスクが琳加すると報告されている。」と し、その詳細について「│iilグループの報告によると、入院後のADLにおける生活機能障害の変化に対し、身体 的フレイルを有していると生活機能障害のリスクが上昇し、逆に身体的フレイルがなければ生活機能障害から 回復する割合が有意に商かつたと報告されている。」と述べている。つまり、商齢者に対しては、疾病や障害へ の対応だけでなく、フレイルに関する評価が必須で、個々の高齢者がどのような機能IijI復過程を辿るかについ て見極めることが重要になる。

このように、フレイルであることがADLやIADLにおける生活機能障害の発生リスクとなるだけでなく、フレ イルであることで生活機能障害からの改善が難しくなるため、フレイルに対する理解と評価を行い、必要に応

じた適切な介入が極めて重要になる。

介 護 状 態 に る 高 齢 者

生活機能の維持・

向上の取り組み 生活機能の維持・

向上の取り組み

生活機能の維持・

向上の取り組み

出典)鈴木みずえ(2015)「老年症候群とフレイル」Iフレイルの予防とリハビリテーションl医歯薬出版、P23

(10)

10鹿児島国際大学福祉社会学部議集第36巻第2号

6.多面的なフレイル予防と介入

高齢者に発生しやすいフレイルは、適切に予防すれば日頃の生活に支援が必要な要介護状態に陥らずにすむ 可能性がある。フレイルを予防することの意味は、フレイルに陥らないようにすることとフレイルの進行を防

ぐことである。

原田(2015)は、フレイルの基準を提唱したFriedらが提示したフレイルサイクルについて、身体活動が低下 することはエネルギー消費の低下を引き起こし、このことは食欲の減退から低栄養を引き起こす。その結果、

体重減少、筋量の減少による筋力の低下、疲労を招き、歩行速度の低下や身体活動の低下へとつながる。さら に、それが再び身体活動の低下へとつながると報告している。このように、負のスパイラルに陥ってしまう状 況をフレイルサイクルという(図表10)。

図表10フレイルの発生サイクル

「 撫 棄 養 一 体重減少

基礎代謝量の減少

疲労

歩行速度の低下

出典)原田健次(2015)「身体活動検査とフレイル」「フレイルの予防とリハビリテーション」医歯薬出版、

P57.

フレイルを予防し、フレイルサイクルを断ち切り、負のスパイラルへの進展を阻止するためには、多面的な 介入が必要である。ここでは、主要なフレイル予防法について概説する。

1)慢性疾患のコントロール

高血圧や糖尿病、腎臓病、心臓病、呼吸器疾患、整形外科的疾患などの慢性疾患がある場合には、まず、こ れらの疾患のコントロールをすることが必要である。治療がうまくいっていない場合、フレイルを悪化させて

しまう可能性がある。

2)運動療法

一般的には、フレイルの予防として運動介入の身体機能に対する直接的な効果は有用であると考えられてお り、栄養療法とセットで行う必要がある。

山田(2015:88)が行った筋力トレーニングによる運動介入に関する論文レビューによると、「現時点ではフ

レイルな高齢者に対して筋力トレーニングを行い、筋力増強が得られることで移動能力およびバランス能力は

改善すると言えそうであるが、ADLに関しては必ずしも改善するとは言い切れない結果となった。」と述べて

いる。さらに、「①フレイルな高齢者に対しては、必ずしも高強度でトレーニングを実施する必要はなく、比較

的低負荷な運動でも十分に効果が得られる可能性が示唆されている。②日々の活動量を増加させるといった非

常にシンプルな介入であっても、身体機能低下を認める高齢者やフレイルな高齢者に対しては身体機能向上に

際して有用なプログラムとなる可能性がある。③ウオーキングプログラムのようなシンプルな介入は、教室型

(11)

岩崎房子:高齢者とフレイル11

の運動介入とは異なり、大規模に実施できるという可能性を秘めている。」と報告している◎

永井(2015:93)は、Studenskiらが実施した歩行速度と平均余命の研究について、「筆者らは、歩行速度が生 存予測につながる原因として、歩行がエネルギーや動きのコントロール、体重の支持を要し、さらには心臓・

肺・循環系・神経系・筋骨格系を含む多様な器官系の働きを要するからであり、歩行速度が落ちることは、器 官の損傷とエネルギー負担が大きいことを反映しているからである。」と述べている。さらに、歩行に関する論 文レビューでは、「歩行速度に加え、歩行の際のタイミングやばらつきが増大することも知られており、このバ ラツキの増大は、転倒リスクの増大に関係していることも報告されている。また、歩行途中に話しかけられた り、考え事などの認知課題が加わった際に歩行が遅くなる現象があるが、このような場合、歩行のみに注意を 向けるのではなく、その他の課題にも注意を向けながら動作を遂行する能力(二重課題能力)が求められる。

二重課題能力の低下は、転倒リスクの増大につながることも多くの研究で報告されている。」としている(永 井:2015:95‑96)。このように、高齢者の機能の指標として、まずは歩行機能を評価することが重要視されて いるのである。

次に、原田(2015)は、Savelaらが実施した身体活動に関する研究について、中年期の身体活動量が多いほ ど、高齢期に下肢筋力や歩行速度が低下しにくいため、フレイルになりにくいことを示していたと述べている。

さらに、身体活動に関する論文レビューからは、日常の身体活動が多い人のほうが、除脂肪体重が減少しにく いことや、抑うつ状態になりにくいことが確認されていると報告している。

3)栄養管理

フレイル予防において、たんぱく質摂取の重要性は多くの研究によって報告されている。甲田(2015:108‐

109)は、「たんぱく質の利用効率は、エネルギー摂取量に左右される。これは、エネルギー摂取量が少ないと、

たんぱく質が分解されてエネルギーとして使われることを意味する。そのため、たんぱく質の利用効率を高め るという点からも、炭水化物や脂質を適量摂取して、エネルギー摂取量が少なくならないようにすることも肝 要である。」と述べている。また、海外の研究では、カルシウムの吸収を促し骨形成に重要な役割を果たすビタ ミンDの血中濃度の低下は、フレイル、筋力の減少、転倒や骨折のリスクを高め、同様に日本でも転倒の頻度 が高くなっていることが指摘されていると述べている。なお、高齢者の低栄養の原因は、図表11のとおりであ

る。

図表11高齢者低栄養の要因

社会的要因

精神的心理的要因

疾 病 要 因

貧困 独 居 介護不足 孤独感

栄養に関する知識不足 認知機能障害

ごうつ

窒息の恐怖 臓器不全 炎症・悪性腫傷 薬剤効果

歯科的、岨噌の問題、喋下障害 身体障害

癖痛 加齢の関与 臭覚、味覚

食欲不振(中枢神経系の関与)

出典)甲田道子(2015)「栄養によるフレイル予防」「フレイルの予防とリハビ

リテーション」医歯薬出版、P110

(12)

識拙涛

4)感染予防

高齢者の場合は、免疫力が低下していることが多いため、インフルエンザや肺炎に催患しやすい。感染症を きっかけに重症化して入院、寝たきりになってしまうこともある。日頃から適度な運動やバランスのよい食事 などによって抵抗力を保持しておく必要がある。また、インフルエンザワクチンや肺炎球菌ワクチンを接種す ることもフレイルを予防する一つの方法である。

5)認知機能向上・心理状態改善

フレイルと認知機能障害の有病率は加齢に伴って増加し、その発生率は強く関連すると言われ、フレイルを 有する高齢者では、認知機能障害を有する割合が有意に高く、かつ将来、認知機能低下や認知症を発生するリ スクが高いことが報告されている。また、認知機能の低下はフレイルヘの移行の前兆であるとも考えられてい る◎上村(2015:115)は、Buchmanらの行ったフレイルと認知機能障害の関連性に関する疫学研究について、

「神経原線維変化や老人斑などのアルツハイマー型認知症に特徴的な神経細胞の病理変化が虚弱の発生や重症 化に関連していたと報告している。また、テストステロンやその他の男性ホルモンの減少、低栄養および酸化 ストレス、 慢性炎症、心血管疾患リスク、抑うつなどがフレイルと認知機能低下の発生と関連し、両者の媒介 因子となり得ると考えられている。」と要約している。さらに、フレイルと認知機能の間には密接な関係性があ り、認知機能を改善することで、フレイルの発生を予防する、あるいは、進行のサイクルに歯止めをかけるこ

とができるとしている(図表12)。

図表12フレイルのサイクルと認知機能障害の関連

基礎代酎率の低下

総工

消固

皇 二 雪 隠 識 州 罵

│ 竺 菱 認知機能低下 芸 二

慢性的な栄饗状慰

(たんぱく質やエネルギーの摂取不十分)

iT酸脆…

…| ↓ ↓ 一 竿 一

(たんぱく質やエネルギー 神経内分泌

(テストステ|

コルチゾーノ

神経内分泌鯛整不全

(テストステロン、インスリン、

コルチゾール)

加食加食

加齢に伴う 食欲不振

齢欲

.心血管

疾患の リスク増加

心血

l2鹿児島国際大学福祉社会学部論集第36巻第2号

歩行速度の低下

愚 差 等 f 三 Z −

筋力・パワーの低下

6)知的・社会活動

大久保(2015:124)は、認知症予防への効果が期待できる知的活動を示し(図表13)、「若年期から中年期に かけて、長期間これらの知的活動を継続してきた高齢者には認知症のリスクが低いことが症例対照研究により 報告されている。」と述べている。また、「能動的に手や頭を動かす知的活動がより有効である可能性があると しているものの、特定の知的活動に特別な効果があるか否かはまだ明らかになっていないため、現段階では、

高齢者本人が楽しみながら主体的に取り込むことができる知的活動が認知症やフレイルの予防に有効であると 言える。」と述べている。

社会参加の減少

活動制限

← フ レ イ ル の サ イ ク ル 一 メ ン タ ル ヘ ル ス の サ イ ク ル 一 認 知 機 能 低 下 の サ イ ク ル

出典)上村−貴(2015)「認知機能向上・心理状態改善によるフレイル予防」「フレイルの予防とリハビ リテーション」医歯薬出版、P115

機能障害

自覚的運動強度の増加

生活の非自立

: 蕊 瀞 う筋骨格

(13)

ボ ラ ン テ ィ ア ・ 地 域 活 動

図表13認知症予防への効果が期待される知的活動

満 崎 藤 子 : 尚 齢 若 と フ レ イ ル 1 3

出典)大久保善郎(2015)「知的・社会活動によるフレイル予防」『フレイルの予防とリハビリテーション』医

歯薬出版、P125

図表14高齢者の自立度に合わせた段階的な社会参加の支援

趣 味 , ス ポ ー ツ 組 織 へ 参 加

出典)大久保善郎(2015)「知的・社会活動によるフレイル予防」iフレイルの予防とリ

ハビリテーション」医歯薬出版、P125

就 労

高い小111自立度111←低い

時 間

▲定年退職

要 介 誕 状 鵬

超樹齢社会を迎え、要介護状態の主要囚であった「身体的脆弱」が、 フレイル という新たな概念として提 Iリ{され、その取り組みが期待されているところである。とりわけ、75歳以上の商齢粁人11が急速に増加するわ が国においては、要介護状態を予防し、健康寿命の延伸を戦略的に実施していく必要がある。社会保障審議会 介謹保険部会(2016)は、要介護商齢者の増加や介護保険洲11の増大を招くことになる老年期におけるフレイ ル予防対策の視点から、後期高齢者の健康を守り自立を促進するためには、これまでの現役世代における肥満 対策に重点をおいた生活習慣病対策から、特にフレイル、認知機能低下、筋肉や骨等に由来する運動機能低下、

さらには低栄養や口腔機能低下といった面での後期高齢軒の特性に応じた対策を重要視していく必要があり、

それゆえに医療.介護専門職等のフレイルに対する意識を向上させる必要があるとしている。これらの職種の 意識向上による直接的な効果には、①フレイルのある高齢者の特徴や生活機能障害とのアセスメントカの向 上 に伴うフレイル予防効果、②フレイルの早期発見および早期介入による要介護状態への進展抑制効果、③高齢

考 察

介 護 予 防 砺 業 へ 参 加

一 I 甲 一

フ レ イ ル

分 類 知 的 な ケ ー ム

芸 術

学習 手芸 日 常 生 活

生 産 社会交流

活 動

チェス(囲碁・将棋)、オセロ、麻雀、トランプ、パズル、クロスワードパズル ピアノ、ギター、ハーモニカなどの楽器の演奏、コーラス、カラオケ、コンサー

卜、絵IIIIi

博物館、似l・il棚、読書(本、新聞)、:iIfき物、教室参加、新しい技術の習得、新し い趣味、問題を解く

家具などの修理、編み物、裁縫、織物、クラフト 家事、料理、テレビ、ラジオ、映画鑑賞

ガーデニング、有償労働、ボランティア活動

意見交換、政治討論、知人などの訪問

(14)

l 4 鹿 児 島 国 際 大 学 福 祉 社 会 学 部 論 集 第 3 6 巻 第 2 号

者のQOLと健康寿命の延伸への効果、④高齢者の地域活動や経済活動への参加を促すなどの新たな社会システ ム(地域包括ケアシステム)の構築、などが期待できると言える。

さらに、フレイルの予防および介入を進めて行くための方向性については、①フレイル予防への意識向上、

②早期に兆候を発見する、③多角的な視点から対象者を評価することで改善可能な問題の把握、④対象者の能 動的な活動を引き出す、などの視点が重要であろう。また、フレイルの改善のための具体的な介入には、①身 体、②こころ・認知、③社会性、からの多面的な介入(慢性疾患のコントロール、運動療法、栄養管理、感染 予防、認知機能向上・心理状態改善、知的・社会活動など)が必要となる。ここで言う多面的な介入とは、多 職種連携で取り組む必要があるということを意味する。多職種が協働することにより、疾病や障害への対応だ けでなく、フレイルに関する評価や、フレイルからの回復に応じた介入の実施が可能になると同時に、個々の 高齢者がどのような回復過程を辿るのかについても見極めることができるようになる。多職種が連携・協働で きる体制を構築するためにも、医療・介護専門職等は、フレイルに関する知識とスキルを身に付ける必要があ るとともに、その予防およびケアに関するエビデンスの蓄積に努めていく必要がある。

また、これからの超高齢社会を見据えると、老年期になっても自立した生活を維持するためには、私たち国 民のひとり一人の健康への意識の向上、予防とケアの両面のバランスの取れた環境整備が必要不可欠となる。

つまり、①国民の健康への意識向上と行動の変容のための教育と啓発、②健康支援(保健・医療・福祉サービ ス等)へのアクセスの整備、③地域での健康づくりと社会参加の場の構築、などが不可欠であり、これらの主 軸の一つに、フレイルの概念を組み込んだ包括的な仕組みの構築も必要になってくると考える。

ま と め

長寿大国を誇るわが国は、一方では、平均寿命と健康寿命の飛離が指摘されている。そのため、フレイルと いう概念が提唱され、これからの医療・介護等の新たな概念としての定着が望まれている。しかしながら、フ レイルは新しい概念であるため、医療・介護専門職における認知度が低く、適切な介入面での課題が大きい。

さらに、新しい概念であるがゆえに、フレイルの予防・介入効果に関しては、現在までに運動面と栄養面の検 証効果は明らかになって来ているものの、他の要因についてのエビデンスは十分ではないという課題もある。

今後、フレイルの多面的な検証・研究によるエビデンスの蓄積、理論の構築が求められているところである。

高齢者がその人らしく、生きがいを持った生活を送っていくためにも、また、超高齢社会という新たな社会 システムを構築していくためにも、医療・介護専門職のフレイルヘの意識の向上と多職種等との連携・協働は 必要不可欠である。

文献

秋山弘子(2010)「長寿時代の科学と社会の櫛想「科学」」岩波番店

飯島勝矢健康長寿ネット「より早期からの包括的フレイル予防」https:"wwwwQlyu,orjp/net/topics/tokushu/Chokoureishakai/cyokoureeishakai‐

f a i l t y y

OT‑PT‑STNET「高齢者の虚弱を「フレイル」と日本老年医学会が提唱フレイルとは?」https:"www・pl‑ot‑st、net/indexphp/topics/detaW401/3 大内尉義・荒井秀典「フレイルに関する日本老年医学会からのステートメント」https://wwwjlm‑geriat‑soc,orjp/infb/topics/pdf7201405130101.

pd僻search=%27%E8%8,%92%E4%BA%95%E7%A7%80%E5%85%B8+%E3%83%95%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%AB+%E3%82%B 9%E3%83%86%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%A1%E3%83%B3%E3%83%88%27

大久保善郎(2015)「知的・社会活動検査とフレイル」「フレイルの予防とリハビリテーション」医歯薬出版

葛谷雅文「フレイルテイ:オーバービユーと栄養との関連」h叩s:"wwwjstagejst・gojp/article/geriatrics/51/2/51‑120ノーpdf 上村一貴(2015)「認知機能向上・心理状態改善によるフレイル予防」「フレイルの予防とリハビリテーション」医歯薬出版 川 口 浩 「 ロ コ モ テ イ ブ シ ン ド ロ ー ム 」 h t t p s : " w w w j s t a g e j s t g o j p / a r t i c l e / g e r i a t r i c s / 5 1 / 2 / 5 1 ‑ 1 2 3 ノ ー p d f

健 康 長 寿 ネ ッ ト 「 フ レ イ ル と は 」 h t t p s : " w w w 、 t y q j y u 、 o r j p / n e t / b y o u k y f i a i l t y / a b o u t 、 h t m l

厚生労働省保険局尚齢者医療課「第2回在宅医療及び医療・介護連携に関するWG平成28年9月2日資料2‑3高齢者の低栄養防止・重症化予防 等 の 推 進 に つ い て 平 成 2 8 年 9 月 2 日 」 h t t p : " w w w m h l w g o j p / n l e / O 5 ‑ S h i n g i k a i ‑ l O 8 0 1 0 0 0 ‑ l s e i k y o k u ‑ S o u m u k a / 0 0 0 0 1 3 5 4 6 9 . p d 僻 s e a r c h = % 2 7 %

E3%83%95%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%AB+%E5%8E%9A%E7%94%9F%E5%8A%B4%E5%83%8,%E7%9C%81%27

厚 生 労 働 省 「 要 介 護 度 別 認 定 者 数 の 推 移 」 h t t p : " w w w ・ m h l w ・ g o j p / b u n y a / s h a k a i h o s h o / s e m i n a I / d l / 0 2 9 8 ‑ 0 2 ‑ 2 . p d 僻 s e a 1 ℃ h = % 2 7 % E 8 % A 6 % 8 1 % E 4 % B

(15)

岩崎房子:高齢者とフレイル15

B%8B%E8%AD%B7%E8%AA%8,%E5%AE%9A%E8%80%85%E6%95%B0%E3%81%AE%E6%8E%A8%E7%A7%BB%27

厚 生 労 働 省 「 平 成 2 8 年 簡 易 生 命 表 の 概 況 」 h t t p : " w w w m h I w , g o j p / t o u k e i / S a i k i n / h w / l i f E / l i f b l 6 /

厚生労働省「健康日本21(第二次)現状値の年次推移」別表第一(厚生労働科学研究費補助金「健康寿命における将来予測と生活習慣病対 策 の 費 用 対 効 果 に 関 す る 研 究 」 ) h t t p : " w w w m h I w , g o j p / s e i s a k u n i t s u i t e / b u n y a / k e n k o u ‑ i r y o u / k e n k o u / k e n k o u n i p p o I 1 2 1 / k e n k o u n i p p o n 2 1 / d a t a 0 1 .

h t m l

厚 生 労 働 省 「 平 成 2 8 年 国 民 生 活 基 礎 調 査 の 概 況 介 護 の 状 況 」 h t t p : " w w w m h l w ・ g o j p / t o u k e i / s a i k i n / h w / k ‑ t y o s a / k ‑ 1 y o s a l 6 / d l / 0 5 . p d f

甲田道子(2015)「栄養によるフレイル予防」「フレイルの予防とリハビリテーション」医歯薬出版

佐 竹 昭 介 「 高 齢 期 の フ レ イ ル と そ の 予 防 に つ い て 」 h t t l p s : " w w w 、 k o k u h o 、 o r j p / h o k e n / p u b l i c / l i b / O 2 h u r e i r u l 2 0 1 6 0 2 0 3 ・ p d f W s e a r c h = % 2 7 % E 3 % 8 3 %

95%E3%83%AC%E3%82%A4%E3%83%AB+%E8%80%81%E5%B9%B4%E5%8C%BB%E5%AD%A6%E4%BC%9A%27

時事メディカル「平均寿命、過去最高=男性80.98歳、女性87.14歳一世界2位・6年厚労省」https:"medicaljiji・com/news/8178

鈴木隆雄(2016)「厚生労働省科学研究費補助金(長寿科学総合研究馴業)総括研究報告書後期高齢者の保健事業のあり方に関する研究」

h t l p : " w w w 、 m h l w , g o j p / f i l e / O 5 ‑ S h i n g i k a i ‑ l 2 6 0 1 0 0 0 ‑ S e i s a k u l o u k a t s u k a n ‑ S a n j i k a n s h i t s u S h a k a i h o s h o u t a m o u / 0 0 0 0 1 2 5 4 7 1 . p d f W s e a r c h 土井剛彦(2015)「フレイルと生活機能障害の関係」「フレイルの予防とリハビリテーション」医歯薬出版

鳥羽研二(2005)「老年症候群」「日常診療に活かす老年病ガイドブック」メジカルレビュー

内 閣 府 「 高 齢 社 会 白 瞥 平 成 2 8 年 版 高 齢 社 会 白 書 ( 全 体 版 ) 3 高 齢 者 の 健 康 ・ 福 祉 」 h t t p : / / w w w 8 . C a O ・ g o j p / k o u r e i / w h i t e p a p e r w ‑ 2 0 1 6 / h 1 m l / z e n b u n /

S123.html

内閣府「第1章高齢化の状況(第2節3)」第2節高齢者の姿と取り巻く環境の現状と動向(3)http:"www8.CaO、gojp/kourei/whitepaper/w‑2016/

html/zenbun/s123.html

内閣府「平成29年版高齢社会白書(全体版)(PDF版)」「平成28年度向齢化の状況及び高齢社会対策の実施状況」「高齢化の状況」http:〃

w w w 8 . C a O , g o j p / k o u r e i / w h i t e p a p e I w ‑ 2 0 1 7 / z e n b u n / p d f 7 1 s l s ‑ 0 1 , p d f

永井宏達(2015)「歩行機能向上によるフレイル予防」「フレイルの予防とリハビリテーション」医歯薬出版 原田和弘(2015)「身体活動向上によるフレイル予防」「フレイルの予防とリハビリテーション」医歯薬出版 原田健次(2015)「身体活動検査とフレイル」「フレイルの予防とリハビリテーション」医歯薬出版

日 本 老 年 医 学 会 「 超 高 齢 社 会 に お け る フ レ イ ル の 意 義 」 h t t p s : " w w w j p n ‑ g e r i a l ‑ s o c , o r j p / p r e s s ‑ s e m i n a I r e p o r t / S e m i n a r 0 2 0 1 . h t m l

日経デジタルヘルス「これからの高齢者ケアは「フレイル」に若目すべし」http:"にChon,nikkeibp,cojp/article/FEATURE/20150525/419903/?ST

=health

牧迫飛雄馬(2015)「フレイルの判定と予防の重要性」「フレイルの予防とリハビリテーション」医歯薬出版 山田陽介(2015)「筋伍・筋力検査とフレイル」「フレイルの予防とリハビリテーション」医歯薬出版 ユーチユーブhttps:"www、youtube・com/walch?v=D45MaPIAXok

吉田大輔(2015)「フレイルの有症率と危険因子」「フレイルの予防とリハビリテーション」医歯薬出版

W A M N E T 「 要 介 護 ( 要 支 援 ) 認 定 者 数 全 国 合 計 」 h t l p : " w w w 、 w a m ・ g o j p / w a m a p p I / O O y o u k a i g o . 、 s w v A l l A r e a / 2 0 1 6 1 2 ? O p e n

(16)

l 6 鹿 児 島 国 際 大 学 福 祉 社 会 学 部 論 集 第 3 6 巻 第 2 号

ElderlyPersonandFrailty

‑OneConsiderationaboutFrailty‑CareintheSuperAgedSociety

FusakolWASAKI

Thisreportclarifies,bydocumentsstudyぅtheindispensableknowledgetopreventanddetectandinterveneinearly

"fi「ailty,,oftheelderlyperson,whichishardlyrecognizedbyanurseoracareworkwhoaspecialistengagedinmedical t r e a t m e n t o f t h e e l d e r l y p e r s o n ・ A n d i t i s i n t e n d e d t o c o m r i b u t e t o a s u g g e s t i o n a n d e x t e n s i o n o f t h e h e a l t h y l i f e e x p e c t a n ‑ cytosupporttheQOLoftheelderlyperson・

I n o r d e r t o p r e v e n t a n d i m p r o v e t h e c o n d i t i o n s o f " 丘 a i l t y , ' i t i s i m p o r t a n t ① t o p r e v e n t f i l a i l t y , ② t o d i s c o v e r t h e s y m p ‐ t o m s e a r l y , ③ t o f i n d a i m p r o v a b l e a s p e c t o f t h e s u b j e c t f i D m t h e m u l t i p l e v i e w p o i n t s , ④ t o e n c o u r a g e t h e s u h j e c t t o b e a c t i v e , I n a d d i t i o n , w i t h a c o o p e r a t i o n o f 唾 l a t e d p r o f e s s i o n a l s , i t i s p o s s i b l e n o t o n l y t o t r e a t d i s e a s e s a n d d i s a b i l i t i e s b u t a l s o d i a g n o s e a n d i n t e r v e n e i nf i r a i l t y , , f b r r e c o v e r y , A t t h e s a m e t i m e , t h e p r o c e s s o f h o w a n i n d i v i d u a l e l d e r l y p e r s o n r e ‐ c o v e r s c a n b e f b l l o w e d 、 F u r t h e r m o r e , i t i s e s s e n t i a l f b r t h e r e l a t e d p r o f e s s i o n a l s t o a c k n o w l e d g ef i r a i l t y , , a n d c o o p e r a t e andcollaboratewitheachotherinordertobuildanewsystemfbrthesuperagedsociety,especiallyinthefieldsofmedi‐

c a l s e r v i c e a n d n u r s i n g s e r v i c e .

K e y W o r d s : F r a i l t y b L a t t e 隈 s t a g e e l d e r l y 〉 G e r i a t r i c s y n d r o m e , P r e v e n t i v e c a r e

参照

関連したドキュメント

■詳細については、『環境物品等 の調達に関する基本方針(平成 31年2月)』(P95~96)を参照する こと。

■詳細については、『環境物品等 の調達に関する基本方針(平成 27年2月)』(P90~91)を参照する こと。

■詳細については、『環境物品等 の調達に関する基本方針(平成 30年2月)』(P93~94)を参照する こと。

「新老人運動」 の趣旨を韓国に紹介し, 日本の 「新老人 の会」 会員と, 韓国の高齢者が協力して活動を進めるこ とは, 日韓両国民の友好親善に寄与するところがきわめ

2012年11月、再審査期間(新有効成分では 8 年)を 終了した薬剤については、日本医学会加盟の学会の

・平成29年3月1日以降に行われる医薬品(後発医薬品等)の承認申請

件数 年金額 件数 年金額 件数 年金額 千円..

ここでは 2016 年(平成 28 年)3