コーシーの積分定理・コーシーの積分公式 (2020 年 7 月 7 日 )
作成日: July 6, 2020 Updated : July 12, 2020 Version : 1.0 実施日: July 7, 2020
準備とウォーミングアップ
例題
1. (
実積分の極限評価) t > 0
とする.
以下を示せ. (1) lim
t→∞
∫
π2
0
e
−tsinxdx = 0 (2) lim
t→∞
∫
ππ 2
e
−tsinxdx = 0
【解答】
(1) 0 ≤ x ≤ π
2
においてsin x ≥ 2
π x
より0 < e
−tsinx≤ e
−t2πx.
よって, 0 <
∫
π2
0
e
−tsinxdx ≤
∫
π2
0
e
−tπ2xdx = − π
2t (e
−t− 1).
はさみうちの原理より
, lim
t→∞
∫
π2
0
e
−tsinxdx = lim
t→∞
− π
2t (e
−t− 1) = 0
(2) f (x) = e
−tsinxとおく.f (π − x) = f (x)
であるから,f (x)
のグラフはx = π
2
に関して対称である
.
よって,
∫
ππ 2
e
−tsinxdx =
∫
π2
0
e
−tsinxdx
t−→
→∞0.
複素線積分
(
以下すべて, z = x + iy (x, y ∈ R )
とする.)
定義
1. (複素線積分) C
をなめらかな有向曲線とし,C : z = z(t) (a ≤ t ≤ b)
のパ ラメータ表示を持つとする. (
向きはt : a → b.)
複素関数f(z)
のC
に沿った線積分 を以下で定義する. ∫
C
f (z)dz :=
∫
b af (z(t)) dz dt dt
C
1 i
O
例題
2.
単位円C (
右図)
のパラメータ表示がC = {
z ∈ C | z = e
iθ, 0 ≤ θ < 2π }
であることを利用して
,
次の複素線積分を求めよ. (n ∈ Z .
積分路の向きは「反時計まわり」とする):
I =
∫
C
z
ndz.
【解答】 単位円上の点を
z = e
iθ(0 ≤ θ < 2π)
とおくと,dz = ie
iθdθ
より,I =
∫
C
z
ndz =
∫
2π 0e
i(n+1)θidθ =
∫
2π 0(i cos(n + 1)θ − sin(n + 1)θ) dθ = {
2πi n = − 1 0 n ̸ = − 1
問題1. (
円周積分路での複素線積分) n ∈ Z , a ∈ C , R > 0
とする.
積分路をC = { z ∈ C | | z − a | = R } .
としたとき,
次の複素線積分を(
コーシーの積分定理・積分公式を 用いずに)
求めよ. (
積分路の向きは「反時計まわり」とする.)
(1) I =
∫
C
(z − a)
ndz (2) I =
∫
C
e
zz − a dz (e
zをz = a
のまわりでテイラー展開)
コーシーの積分定理・積分公式
定理
1. D
を複素平面内の領域とし,
その境界をC = ∂D
とする. (C
は区分的にな めらかな有向曲線とし, その向きはD
の内部が進行方向の左手となるように定めら れているとする.) f (z)
がD ∪ ∂D
を含む領域で正則な関数のとき,
以下が成り立つ.
• [
コーシーの積分定理]
I
C
f (z)dz = 0
• [コーシーの積分公式] 1
2πi I
C
f (z)
z − a dz = f (a) a ∈ D
例題
3. (
コーシーの積分定理の実積分への応用)
下図
(2)
に与えられた周回積分路C =AB+C
ε+CD+C
Rに沿った複素関数f(z) = e
izz
の線積分を利用して実積分の値I =
∫
∞0
sin x
x dx
を求めよ.
ただしC
ε, C
Rはそれぞ れ半径ε, R
の半円弧.
例題1の結果は既知としてよい. (
ヒント:それぞれの区間の 線積分を評価し,R → ∞ , ε → 0
の極限をとる. 曲線の向きに注意.)【解答】
f(z)
を図(2)
に与えられた積分路C
で積分する. f(z)
はC
の内部で正則だから,
コーシーの積分定理より∫
C
f (z)dz = 0.
半円弧
C
ε上では, z = εe
iθ, 0 < θ < π
とおくと,
∫
Cε
f (z)dz =
∫
0π
e
iεeiθεe
iθiεe
iθdθ = − i
∫
π0
e
iεeiθdθ −→ −
ε→0iπ.
半円弧
C
R上では, z = Re
iθ, 0 < θ < π
とおくと, ∫
CR
f(z)dz =
∫
π 0e
iReiθRe
iθiRe
iθdθ ≤
∫
π 0e
iR(cosθ+isinθ)Re
iθiRe
iθdθ =
∫
π 0e
−Rsinθdθ
R→∞−→
(例題1)0.
以上の結果より,
ε → 0, R → ∞
の極限で∫
0−∞
e
ixx dx − iπ+
∫
∞0
e
ixx dx+0 = 2i
∫
∞0
sin x x dx − iπ = 0.
よってI =
∫
∞0
sin x
x dx = π 2 .
(1)
A B
C D
O ik
R -R
(2)
C
C
A B C D
ε R
R -R
(3)
O A
B
4 π
R
問題
2. (
コーシーの積分定理の実積分への応用)
前ページ図
(1)
に与えられた周回積分路C =AB+BC+CD+DA
に沿った複素関数f (z) = e
−z2 の線積分を利用して実積分の値I =
∫
∞0
e
−x2cos 2kxdx (k > 0)
を求めよ.
例題1の 結果および,
ガウス積分の値∫
∞−∞
e
−x2dx = √
π
は既知としてよい.
(
ヒント:それぞれの区間の線積分を評価し, R → ∞
の極限をとる.
曲線の向きに注意.)
問題
3. (コーシーの積分公式の応用:部分分数化) 1
の3
乗根のうち虚部が正のものをω
と表す
.
積分路をC = { z ∈ C | | z | = 7 } .
としたとき,
次の複素線積分の値をコーシーの 積分公式を用いて求めよう(
積分路の向きは反時計まわりとする):
I =
∫
C
z
2z
3− 1 dz.
(1)
以下の部分分数展開を考える. 展開係数A, B, C
を求めよ.1
z
3− 1 = A
z − 1 + B
z − ω + C
z − ω
2· · · ( ∗ ).
(2)
これを利用して,積分値I
を求めよ.
今週の課題・宿題
(提出期限は 7
月13
日(月)24
時です)問題
4. (課題)
例題2
の線積分の直感的理解のため,積分I
の中の被積分関数(θ
の関数) の実部か虚部を,
横軸がθ
のグラフとしてn ̸ = − 1
の場合とn = − 1
の場合について描き,
積分値I
がn = − 1
のときだけ0
以外の値をとることを観察せよ.
そのノートをスキャン して提出すること. (そのグラフは積分路に沿って問題用紙に垂直に立てた紙(例題 2
では 円筒)
の上に描かれたグラフである.)
本問の趣旨がよく分からない場合は例題1
〜3
ある いは問題1
〜3
のうちどれか小問1
つの答案をスキャンしても構わない.
問題
5. (
宿題;大問2
問分の配点とする)
前ページ図
(3)
に与えられた周回積分路C =OA+AB+BO
に沿った複素関数f (z) = e
−z2 の線積分を利用して実積分(
フレネル積分)
の値J =
∫
∞0
cos x
2dx
を求めたい. (
ただしAB
は半径R
の円弧の一部である.)(1) I
C:=
∫
C
f (z)dz
の値はいくらか?(答えのみでもよい)(2) I
OA:= lim
R→∞
∫
OA
f(z)dz
の値を求めよ.
ガウス積分の値は既知としてよい.
(3) I
AB:= lim
R→∞
∫
AB
f(z)dz
の値がゼロになることを示せ.
(4) I
BO:= lim
R→∞
∫
BO
f (z)dz
を計算し,
以上の結果と合わせて与えられた実積分J
を求めよ.
今週のボーナス問題
(
提出期限は7
月13
日(
月)24
時です)
ローラン展開と留数定理
2. (
ローラン展開)
f(z)
をD = { z ∈ C | 0 < | z − a | < R }
で正則な関数と する.
このとき, f (z)
は 閉部分領域r
1≤ | z − a | ≤ r
2(0 < r
1< r
2≤ R)
で以下の(一様収束する)
級数に展開できる.f (z) =
∑
∞ n=0a
n(z − a)
n+
∑
∞ n=1a
−n(z − a)
−n(
a
n= 1 2πi
I
|w−a|=ρ
f(w) (w − a)
n+1dw
)
係数
a
nは一意に定まり, 括弧内の式で与えられる. これをf(z)
のz = a
における ローラン展開 という.
右辺の第2
項(
負べきの項)
をf (z)
のz = a
における主要部 と言い,
主要部が有限個の項からなるとき,
a
−k̸ = 0, a
n= 0 ( ∀ n ≤ − k − 1)
となる
k
をf (z)
のz = a
における極の位数とよぶ(
または,
関数f(z)
はz = a
において位数k
の極を持つとも言う).
ローラン展開における係数a
−1 をf(z)
のz = a
における留数といい, Res
z=af (z)
と書く.
例題
4.
次の関数f (z)
の 与えられた点[z = a]
での極の位数と留数を求めよ.
(1) 1
z
2(z + 1) [z = 0] (2) 1
(z − α)(z − β) [z = α ( ̸ = β)] (3) sin z
1 − cos z [z = 0]
【解答】 等比級数の関係式
1/(1 − Z) = 1 + Z + Z
2+ Z
3+ · · ·
を念頭におく. (1) f(z) = 1
z
2(1 − z + z
2− z
3+ · · · ) = 1 z
2− 1
z + 1 − z + · · · .
極の位数は2,
留数は− 1.
(2) α ̸ = β
のとき(
与式) = 1 α − β
( 1
z − α − 1 z − β
)
.
極の位数は1,
留数は(α − β)
−1. (3) 1 − cos z = z
2/2! − z
4/4! + · · · = (z
2/2!) (1 − z
2/4! + · · · ).
よってsin z
1 − cos z = ( 2!
z
2) (
1 + ( z
24! − · · · )
+ ( z
24! − · · · )
2+ · · · )
sin z = 2
z + (z
に関して0
次以上).
よって極の位数は
1,
留数は2.
留数定理を使った実積分の計算
定理
3. (
留数定理)
D
を単連結な領域とし, f (z)
をD \ { a
1, . . . , a
n}
で正則な関 数とする.C
をD
内の 区分的になめらかな閉曲線で内部に{ a
1, . . . , a
n}
を含むも のとする.
このとき以下が成り立つ:I
C
f (z) dz = 2πi
∑
n i=1Res
z=aif (z).
A B O
CR
R -R
例題
5.
次の実積分の値を求めよ(a > b > 0):
I =
∫
∞0
cos bx x
2+ a
2dx.
(ヒント: f (z) = e
ibz/(z
2+ a
2)
を右図の積分路で積分せよ.)【解答】
f (z) = e
ibzz
2+ a
2 とおき,図に与えられた周回積分路C
でf(z)
を積分する.C
の内 部においてf (z)
はz = ai
で一位の極を持つ(例題 4 (2)).
その点における留数は1
2ai e
−ab と計算される.
線分AB
に沿った線積分はz = x + iy (x, y ∈ R )
として∫
AB
f(z)dz =
∫
∞−∞
e
ibxx
2+ a
2dx =
∫
∞−∞
cos bx + i sin bx
x
2+ a
2dx = 2
∫
∞0
cos bx x
2+ a
2dx C
Rに沿った線積分は, (0 ≤ θ ≤ π
の範囲でe
−bRsinθ≤ 1
に注意すると)
∫
CR
f (z)dz ≤
∫
π 0Re
−bRsinθR
2− a
2dθ ≤
∫
π 0R
R
2− a
2dθ = πR R
2− a
2.
以上の結果に留数定理を適用しR → ∞
とすると,
∫
∞0
cos bx
x
2+ a
2dx = π
2a e
−abが得られる.
例題6. I =
∫
2π 01
a + b cos θ dθ
の値を求めよ(a > b > 0). (
ヒント:z = e
iθと変数 変換し,
問題の積分を単位円周上の複素積分として表すと留数定理が適用できる)
【解答】
z = e
iθとおくとdz = ie
iθdθ
よりdθ = − iz
−1dz.
一方, cos θ = (z + z
−1)/2
であ るので,∫
2π0
1
a + b cos θ dθ = − 2i
∫
|z|=1
1
bz
2+ 2az + b dz.
2
次方程式bz
2+ 2az + b = 0
の2
つの実数解α = − a − √
a
2− b
2b , β = − a + √
a
2− b
2b
のうち単位円内部に含まれるのは
β
のみである.
したがって留数定理より, I =
− 2i
∫
|z|=1
1
bz
2+ 2az + b dz = − 2i · 2πi Res
z=β1
b(z − α)(z − β) = 4π b · 1
β − α = 2π
√ a
2− b
2.
問題
6. (ボーナス問題:ゼータ関数の特殊値再訪) ζ(s) :=
∑
∞ n=11
n
s をリーマンのゼータ関 数という.
複素平面上の4
点(N + 1/2)( ± 1 ± i)
を頂点とする正方形を考え,
その周C
に 沿って反時計周りにf (z) = 1
z
2tan πz
を線積分することでζ(2) =
∑
∞ n=11 n
2= π
26
を証明したい.