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後発医薬品の普及に関する経済学的視点からの検討

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Academic year: 2022

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(1)

著者 堀田 真里

雑誌名 経営論集

号 80

ページ 119‑135

発行年 2012‑11

URL http://id.nii.ac.jp/1060/00004508/

Creative Commons : 表示 ‑ 非営利 ‑ 改変禁止 http://creativecommons.org/licenses/by‑nc‑nd/3.0/deed.ja

(2)

後発医薬品の普及に関する経済学的視点からの検討

The Spread of Generic Drugs From an Economic Viewpoint

堀 田 真 理

1.

はじめに

日本の薬剤費は、増え続ける総医療費の約

2

割を占めるといわれており(日本経済 新聞

2011

年7月

31

日)、これに対する政策として、

1990

年代には医薬分業が、さら に

2000

年代に入ってからは、とりわけ「後発医薬品(ジェネリック医薬品)」の使用 促進を急速に拡大していく方向が打ち出されてきた。医療機関等で保険診療に用いる 医療用医薬品のうち、新しい効能や効果があり、いわゆる治験等の臨床試験によって その有効性や安全性が確認され承認されており、多くの医療機関において商品名とし て処方されている医薬品を「先発医薬品」と呼ぶのに対し、こうした先発医薬品の特 許が切れた後に、先発医薬品と成分や規格等が同一であるとして、臨床試験などを省 略して承認される医薬品がいわゆる「後発医薬品」である(1)

もともと国際的に見ても、わが国の後発医薬品普及率が格段に低いこと(2)は指摘さ れる点であるが、とりわけ最近になって後発医薬品の使用促進が問題とされている理 由としては、

2007

年当時、政府が後発医薬品の市場シェアを数量ベースで

2012

年度 までに

30%以上へ引き上げることを目標として掲げたことにある。今年度がその期限

にあたる

2012

年であるが、

2011

年の普及率は

23%にとどまり、この目標は未達に

終わるもの、との見方が強いとされている(日経産業新聞

2012

6

29

日)。この ような状況下においては、今後に向けてこの問題をとりわけ経済学的な視点から改め て検討してみる必要があると思われる。

後発医薬品の使用促進については、近年、

2

年ごとに改正される診療報酬改定にお いても、少しずつではあるが、その内容を強化させる方向で変化させつつ、必ず盛り 込まれてきている。とりわけ、今年度

4

月の診療報酬改定においては、医師が処方箋 を発行する際に、後発医薬品の一般名処方で処方を行なった場合に加点されることに なり、診療所や病院など、多くの医療機関において後発医薬品の採用を意識せざるを 得ない状況ともなった。

実は筆者が以前より利用している診療所でも、

4

月以降、従来の「院外処方」から、

多くの医薬品に関し積極的な後発医薬品採用による「院内処方」へと変わったことで、

いわゆるジェネリック医薬品を自然と意識するようになった。実際の服用については、

指摘されることも多いように、効果や副作用などの面で異なるのではないか、という 疑問を感じる側面がないわけでもないが、院内処方により、薬に対する説明を直接受 けて、信頼できる医師から薬を処方してもらえることに伴う安心感は大きい。服用後 に気にかかる点があれば、直接質問もしやすいし、何よりも、やはり投薬にともなう 自己負担分を減少させることができるという利点がある。

後発医薬品の使用促進が政策として勧められてきた背景には、わが国の医療用医薬 品に関する独特の流通体制とともに、わが国における国民医療保険制度、診療報酬制

(3)

度のもとで必然的に生じる医療機関の薬価差益に関する問題、さらに医薬分業制度な どがさまざまに複雑化して絡み合っているとされている。とりわけ薬価差益の存在は、

従来から長く問題視されてきた点でもあり、以前は患者への過剰投薬につながるとし て社会問題化した点でもあった。本稿においては、そうした医薬品流通の仕組みや薬 価差益に関して問題とされてきたこれまでの背景について概観した上で、後発医薬品 の普及に関する現状について整理するとともに、先行研究として宮本(

2004

)のモデ ルを紹介することによって、理論的な観点から、今後の後発医薬品普及に向けて得ら れるインプリケーションを明らかにしたい。宮本(

2004

)では、薬価差益の存在と患 者の服薬に関するコンプライアンスの問題を取り上げており、後発薬普及に関する直 接の理論モデルとは異なるものの、経済学的な視点から、今後の後発医薬品普及促進 策を検討していく上では興味深い結論を示している。

本稿における構成は以下の通りである。まず、2節において医療用医薬品流通の仕 組みと薬価差益の問題について取り上げ、3節において、薬価差益の存在を前提に宮 本(

2004)の分析の概要を説明して紹介する。 4

節では、厚生労働省の後発医薬品使 用状況に関する調査結果(平成

23

年度)を概観し、後発医薬品普及に関する現状に ついて整理する。最後に

5

節において本稿全体をまとめる。

2.

医療用医薬品流通の仕組みと薬価差益

わが国における医療用医薬品の流通体制、取引慣行は、薬価差益の存在が大きくか かわっており、独特な仕組みであるとされ、

1992

年の流通改革を機に見直されたもの の、その後も問題とされてきた。薬価そのものは、薬価基準をもとに公定価格によっ て決められているものの、流通段階において価格設定は自由競争に委ねられている。

医療機関は医薬品卸から納入するが、その納入価格は医薬品卸との交渉にかかってお り、なるべく低い価格で納入し患者に薬を処方することで、最終的に保険者に請求で きる公定価格との差額分が医療機関の収入となる。これがいわゆる「薬価差益」とよ ばれるものであり、薬価基準による薬価そのものは改定ごとに引き下げられているも のの、値下げの要求も強く、井上他(

1998)は、

「薬価差益を稼ぐ」という動機を持 つことになると指摘する。投薬量を増やすことで最終的に請求できる報酬分も増える という、出来高制とよばれる診療報酬制度のもとでは、患者への過剰投薬として薬価 差益の存在が問題視されてきた側面も確かにある。しかしながら井上他(

1998

)は、

「医師が薬を処方することで利益を得ることが許されないことなのかどうか。許され るとしてどの程度なら良いのか。これに対して現行の診療報酬制度を前提にしてすべ ての関係者が納得のいく答えを出すことは極めて難しい」(

P85

)として、薬価差益そ のものの存在を問うことは避けている。こうした問題の背景にある主な要因として井 上他(

1998

)が指摘するのは、公的規制と自由競争の併存、医薬品メーカーも医薬品 卸も供給に対する責任を担っているという医薬品の特性、そして医薬分業の未整備で ある。

しかしながら井上他(

1998

)は、

1992

年の「新仕切価制」の導入による流通改革 が医療機関の薬価差益収入の減少に貢献し、その点で、この流通改革が有効な方策で あったことを、理論モデルを用いることによって理論的に結論づけている。井上(

1998

(4)

の提示するモデルによれば、医療用医薬品の流通過程は、(図

1

)で示されるような垂 直的取引関係で成立しているとする。

(図1)「医療用医薬品の流通モデル」

製薬メーカー

M

↓ 出荷価格(

P

m)・限界生産費(

C

m) 医薬品卸業者

W

↓ 納入価格(

P

w)・限界流通費(

C

w) 医療機関

H

↓ 薬価(

P

0)・投薬関数

D = α − β P

w

患者

(出所)井上他(1998P87より引用

流通改革以前は、製薬メーカーがまずは自社の利潤を最大化するように出荷価格と 納入価格を決定していた。しかしながら、流通改革により、医薬品卸業者自身が、医 療機関への納入価格を自社の利潤最大化に基づいて決定できるようになった点が、大 きな相違であるという。井上他(

1998

)では、これをもとに利潤最大化行動によって 最終的に決まる医療機関への納入価格は、流通改革前と比較して上昇することになり、

結果として薬価差益にあたる医療機関の利潤を減少させたことを理論的に明らかにし ている。

その後、井上他(

2002)では、この理論モデルによる結果の妥当性について実証研

究を通じて再検討している。その結果について、とりわけ医療機関に関しては、「流通 改革による新たな取引方法が不利になる医療機関の対抗的な行動を引き起こし、価格 決定のバーゲニングが複雑化し、行動の変化をもたらしたため、一時的なものであっ た」(

P19)と結論づけており、残念ながら薬価差益の問題は、簡単に解決できるもの

ではないことを示唆している。

林他(

2012)は、実際には現在、こうした薬価差益の問題はある程度解消されつつ

ある(3)とし、むしろ、「こうした薬価差益の縮小によって医療機関の経営状況は深刻化 している可能性もある」と指摘する(

P19)

。そうならば、診療報酬制度で安定的な医 業経営を促しつつ、薬価基準制度はあくまでも医薬品に対する規制として独立した制 度を設計すべきであると提言している。しかしながら、近年、後発医薬品の使用促進 策が後述するように、ここまで強化されて診療報酬制度にかかわる重要な位置づけと なってきている現実は、本来の診療報酬制度のみでは限界ともいえるべき状況をむか えていると考える必要があるように思われる。

3.

薬価差益の存在と患者のコンプライアンス(宮本

(2004)

このように薬価差益が問題視されてきたことを示したが、薬価差益の存在を前提と した上で、患者がそれを知って、医師の指示に従った投薬量を守るかどうかについて、

理論的な観点から興味深い分析をした先行研究に宮本(

2004)がある。以下では、 Bose

(1995)

のモデルをベースに、宮本(

2004

)で分析されているモデルの概要について取

(5)

り上げて紹介する。

3.1 患者の効用関数

まず、患者の効用関数として、以下のような効用関数を仮定する。宮本(

2004

)で は、患者には投薬にともなう自己負担分が発生しない、としている点で現実の制度と は異なるが、ここでは宮本(

2004

)のモデルに従って説明する。

患者が医師の処方(指示)通りに薬を服用する確率(「コンプライアンスの確率」) をθ

( 0 ≤ θ ≤ 1 )

とし、この確率の決定が患者にとっての意思決定の上では中心とな る。ここでのモデルの特徴は、

axbx

2

, ( a > 0 , b > 0 )

で示される「健康関数」が 導入されている点にある。これは、医療サービス(すなわちこのモデルでは投薬量)

x

から得られる患者の便益である。病院と患者側とに情報の非対称性はないものと仮定 すると、健康関数は(図

2)のように示される。

(図2)投薬量と患者の健康関数

(出所)宮本(2004)より一部加筆の上で掲載

治療に必要な投薬量には患者にとっての最適投薬量が存在し、その範囲内であれば 治療効果は上昇するものの、それを超えると次第に健康関数で示される患者の便益は 低下し、過剰な投薬量

( )

b

x > a

になると、副作用の発現などにより治療効果は減少し、

患者の便益はマイナスになるものと仮定する。ただし、あくまでも投薬量を決定する のは病院であり、ここでは、患者の便益を最大にする最適量よりは多く処方されるも のと仮定している

)

( 2 b

xa

。また患者側も自分の健康関数を知っており、たとえ医

師の指示通りに服用しない場合でも、最適量である

b a

2

は服用するものとしている。

以上のもとで、この健康関数と「コンプライアンスの確率」θを用いて、患者の効用 関数を以下のように仮定する(4)

( ) )

)( 4 1 ( ) (

2 2

m x F

b bx a

ax

U = θ − + − θ − (1)

患者の便益

投薬量

b a

2 b

a b

a 4

3

副作用の発生など

bx

2

ax     −

   

x

(6)

ここで

m(x)

は、血液検査などによって、患者が医師の処方通りに服用しているかど うかをチェックする「病院のモニター確率」であり、以下では簡略化して

m ( x ) = kx , ( 0 ≤ k ≤ 1 )

と特定化している(5)。さらに

F (≥ 0 )

は、患者が指示を守っていないことが判明した ときに、通院の回数が増えたり、医師から説得をされたりすることなどによる、一種 の患者にとってのペナルティーと考えている。

3.2 病院の目的関数

次に病院側の目的関数

V

は、以下のように仮定されている。宮本(2004)モデルの 特徴は、医師があくまでも患者の代理人として、最適な薬剤の選択をするものとし、

「代理人の程度」を示すパラメータα

( 0 ≤ α ≤ 1 )

を取り込んでいる点にある。もし、

病院が患者のためを優先に、「患者の完全な代理人」として行動するのであればα= 1 である。しかしながら逆に、病院としての利益を優先するのであればα

= 0

となる。

このとき、病院の目的関数

V

は、次のように示される。

V = α ( axbx

2

) + ( 1 − α )( D + sxgx ) (2) D

は投薬以外から得られる病院の固定利潤を示し、

sx

は投薬量に伴って発生する、

いわば最終的には保険者から償還される公定価格による利益(6)

gx

は、患者の効用関 数においてすでに提示されたようにモニタリングに要する検査コストや薬剤の購入コ ストなど、医療サービスの提供にともなって発生する病院側のコストである。コスト の大部分が薬剤の購入に充てられていると考えれば、

(s - g) > 0

を仮定し、

(s - g)x

が、

いわゆる「薬価差益」に相当するものを示していると考えることができる。このもと で、病院は患者への投薬量

x

と「代理人としての程度」αを決定することになる。た だし、すでに仮定したように、病院が選択する投薬量の下限は

b a

2

であり、上限を

x

x =

として(7)、投薬量については

x x b

a ≤ ≤

2

を仮定している。

以上のもとで、まず、患者にとって最適な「コンプライアンス」の確率

θ

*は、

max

θ

)

)( 4 1 ( ) (

2 2

kxF

b bx a

ax

U = θ − + − θ − (3)

であり、限界条件

= 0

∂ θ

U

を満たす。ここで、

U = Z (x )

θ

とおくとき、

(3)

式より、

b x a kF a bx x

Z ( ) = −

2

+ ( + ) − 4

2

(4)

である。この最適条件

Z ( x ) = 0

を満たす

x

を、

x

1,

x

2とすると、

b X kF x a

1

2

= + ,

b X kF x a

2

2

+

= +

(ただし、

X = kF ( 2 a + kF ) > 0

) となり、

Z (x )

は以下のような(図

3

)で表わされることがわかる。

(7)

(図3)投薬量と患者によっての限界条件Z(x)

(出所)宮本(2004)より一部加筆の上で掲載

ここで、

Z ( x ) = U

θ=1

U

θ=0となっていることから、

Z ( x ) > 0

の領域では

0

1 =

=

>

θ

θ

U

U

が成立するため医師の指示通りに従う方が患者の効用水準は高く、一方、

0 ) ( x <

Z

の領域では逆に従わない方が効用水準は高くなることがわかる。

医師が処方する投薬の上限値

x

x

2との位置関係により、以下の(図

4)

、(図

5)

に示すような2つの場合が考えられ、患者の決定する最適な「コンプライアンス確率」

θ

*は、次のようになることが示されている。

患者の最適なコンプライアンスの確率と投薬量

(出所)宮本(2004)をもとに一部加筆

すなわち、投薬量

x

が多いほど患者が指示を守らなくなる可能性は高いが、患者に とっての最適量である

b x a

= 2

を超える投薬量を処方された場合でも、ある程度の範 囲内であれば、その指示に従う場合も存在するということである。

投薬量

b a 2

x2

b kFa

2

) (x Z

b kF a

2

1 +

x x

ケース1(図4)

x b x x < a < <

< 1 2 2

0 の場合

θ

*

x1 x2 x

b a 2

ケース2(図5)

2

1 2

0 x x

b x < a < <

< の場合

θ

*

x1 x x2

b a 2

投薬の可能性がある範囲 投薬の可能性がある範囲

(8)

3.3 最適投薬量と病院の「代理人としての態度α」の決定

病院が決定する最適投薬量はどのようになるのであろうか。再び、病院側の目的関 数である

(3)

式に戻ると、病院が選択する最適投薬量

x

*は、次の式を満たす。

= ( − 2 ) + ( 1 − )( − ) = 0

a bx s g

x

V α α

よって、選ばれる最適投薬量

x

*

( α )

は、

b g s x a

α α α α

2

) )(

1 ) (

*

( = + − − (5)

と表わされる。したがって、

s - g > 0

(薬価差益あり)ならば、αにかかわらず

b a

2

超える投薬量が処方され、

s - g = 0

(薬価差益なし)ならば、

b a

2

となって、患者にと

っての健康関数から得られる便益を最大にする患者にとって最適な投薬量と一致する ことになる。

(5)

式より、

0

2 ) (

2

*

= − − <

b g s x

α α α

かつ、

b

x a ) 2 1

*

( =

となることから、病院にとっての「代理人の程度」αと、この最 適投薬量

x

*

( α )

との関係を図に示すと(図

6)のようになることが分かる。

(図6)病院が選択する最適投薬量と「代理人の程度」αとの関係

(出所)宮本(2004)の分析をもとに作成

よって、以上の結果から、宮本(

2004

)は、薬価差益の存在により、必ず患者にと っての最適投薬量、

b a

2

よりも多い投薬量が処方されることになる一方、病院が患者 の立場を理解して患者のための医療サービスを提供するほど(α

=1

に近づくほど)、

0 )

*(

α

x

b

a

b a 2

x

α

α

(9)

病院が選択する投薬量はx=

b a

2

に近づき、患者側も医師の指示を守るインセンティ ブが働くと結論づけている。

最後に宮本(

2004

)は、病院の「代理人としての程度」αと、患者の「コンプライ アンス」確率

θ

*との関係について検討している。

θ ≠ 0

となる、

θ

*の分岐点は

x

2で あるが、これをみたすαを

α=

α

(閾値)とすると、

(5)

式において、

x

*

( α ) = x

2を満たすαとなるので、

b g s x a

α α α

2

) )(

1 (

2

= +

よって、

) ( s g X

rF

g s

− + +

= −

α (6)

となることが分かる。すなわち、現実のαが

α > α

になるほど高い時に、患者は医師 の指示に従うのであり、病院はより患者の立場に立った医療サービスの提供に努める べきであることになる。

現実の問題との関係でいえば、後述の後発医薬品処方などを行なう際には、投薬の 必要性や情報提供など、病院側からのきめ細かな説明が必要とされるともいえるであ ろう。

また薬価差益(

s - g)との関係については、 0 ) ( >

g s

α

が成り立つことから、患

者のコンプライアンスを決めるαの閾値は薬価差益の増加関数となる。これにより、

宮本(2004)は、大きな薬価差益が存在している状況下では、病院はより一層の高い αが求められ、そうでない場合には、患者が医師の指示に従う「コンプライアンス」

は低下してしまうとも結論づけている。

実際に、患者にとっての実質的な負担は、投薬に伴う自己負担分に限られるため、

薬価差益の存在まで意識しているのかどうかは明らかではないが、宮本(

2004)が提

示しているように、患者の「コンプライアンスの程度」が必ずしも「薬価差益を前提 としたときの出来高払い制」の問題に関係しているとは限らないことが理論的に明ら かにされている。病院側の患者に対する態度αがより重要な要因であるのならば、よ り一層、患者にとっては医師への信頼度が大きな影響を与えているのではないだろう か。そうした観点からいえば、医薬分業下といえども、後発医薬品の普及のためにも、

院内処方による、直接の医師や医療機関との関わりが見直されても良いように思われ る。

4.

後発医薬品の普及に関する現状

4.1 普及促進に向けたこれまでの取り組み

政府は

2002

年以降、とりわけ「ジェネリック使用の促進策」を重要な改革のひと つとして位置づけて進めてきた(表

1

)。これ以来、診療報酬改定のたびにも、後発医

(10)

薬品使用促進策を内容として改正しつつ、盛り込み続けてきている(表

2

)。

2010

年 以降は、従来の保険薬局における調剤に加えて、医療機関における後発医薬品使用に 対しても経済的インセンティブを与えていることが分かる。

しかしながら、ジェネリック医薬品の市場シェアの推移は、数量ベースでも

2005

年(

16.8%

)、

2007

年(

18.7%

)、

2009

年(

20.2%

)、

2011

年(

22.8%

)と思うように は伸びていないのが現実であり、金額ベースでは

2011

年で

8.8%

にすぎない(「社会 保険旬報」

No.2488

P9

のグラフより)。

(表1)後発医薬品の使用促進に関するこれまでの主な対策 1992 医薬品流通改革(新仕切値制、新薬価格算定方式導入)

1994 医薬分業のスタート、薬価引き下げ

2002 国のジェネリック使用促進策、GEルールの廃止(8)、診療報酬改定で後発医薬品処方調剤 加算(ジェネリックインセンティブの導入)

2004 薬価改定により、後発医薬品の価格を先発品の8割から7割へ変更

2006 後発医薬品の価格反映に新薬価方式(9)を導入、代替調剤の容認、診療報酬改定において、

後発医薬品使用促進のため処方箋様式を変更(医師による「変更可」の署名欄ができる)

2007 後発医薬品の薬価収載を年2回に変更、経済財政諮問会議で「後発医薬品の市場シェアを 2012年度までに30%以上へ引き上げること」を盛り込んだ効率化計画が示される、経済 財政改革の基本方針2007(骨太の方針)に「後発医薬品使用促進」が盛り込まれる、「後 発医薬品の安心使用促進アクションプログラム」を策定

(出所)筆者作成

(表2)後発医薬品の使用促進に関する診療報酬改定の内容

2002 医師が後発薬を処方した場合の処方箋料(2点)、調剤薬局で後発薬を調剤した場合の調 剤料「後発医薬品調剤加算」(1点)、後発医薬品情報提供書による患者への説明「医薬品 品質情報提供料」10点)

2006 「処方箋様式の変更」(備考欄に医師による「後発医薬品への変更可」の署名欄が設けら れる)

2008 「後発医薬品調剤体制加算」4点)、処方箋様式の再変更(「変更不可」欄への医師の署 名がない場合に後発医薬品に変更できる)

2010 「後発医薬品調剤体制加算」(数量ベースによる3段階評価へ)

(調剤数量割合が20%以上:6点、25%以上:13点、30%以上:17点)「後発医薬品使 用体制加算」(入院初日:30点)(ただし後発薬の採用品目数が2割以上であることが条 件) ※従来の「後発医薬品情報提供料」10点)および「後発医薬品調剤加算」4点)

は廃止。

2012 「後発医薬品調剤体制加算」(調剤数量割合が22%以上:5点、30%以上:15点、35%以 上:19点)「薬剤服用歴管理指導料」(後発医薬品の情報提供を薬剤提供文書中で行った 場合:41点)「後発医薬品使用体制加算1(入院初日:35点)(ただし後発薬の採用品 目数が3割以上であること)「後発医薬品使用体制加算2(入院初日:28点)(ただし 後発薬の採用品目数が2割以上であること)「一般名処方による処方箋加算(院外処方の 場合)2点)「処方箋様式の再変更」(処方薬ごとに「変更不可」かどうかのチェック欄 を設ける)

(出所)「診療点数早見表(医科)2010年・2012年版をもとに筆者作成

4.2 厚生労働省のアンケート結果から明らかになった現状

2011

年度に厚生労働省でおこなわれた「

2010

年度診療報酬改定の結果検証に係る 特別調査」(調査時期は

2011

8

9

日~

9

22

日)において、保険薬局、医療機 関、患者のそれぞれにおいて、後発医薬品の使用状況に関する調査結果が明らかにさ

(11)

れた(表

3

)。

(表3)厚生労働省のアンケート結果より(一部のみ抜粋)

(出所)調査結果より抜粋して筆者作成

いずれも全体的には少しずつ、後発医薬品の採用率が高まってきている実態はうか がえるものの、やはり品質や効果面で疑問を感じている医師は多い(10)。一方、医療機 関においては、診療所ほど後発医薬品の採用割合が高いことが分かる。この点は以前 からも指摘されていた。たとえば川渕(

2007

)によれば、矢野経済研究所における

2006

年度の調査において、診療所では後発医薬品の採用率が

73.8%

にのぼっており、

しかも診療所ほど、その採用理由として患者負担軽減を考慮(11)しての採用が最多であ ったという。また

2007

12

11

日の日本経済新聞の記事でも、飯塚氏が病院規模 と後発医薬品採用との関係では、大病院に比べて、診療所に多いことを指摘している

(表

4)

(表4)後発医薬品の処方率(%

病床数 院内処方 院外処方

ゼロ(診療所) 43.9% 16.4%

199床未満 10.1% 9.9%

500床未満 6.0% 4.7%

500床以上 1.4% 2.2%

(出所)日本経済新聞20071211日、飯塚敏晃「後発薬、本格普及へ誘因を」より、一部抜粋

この表からも分かるように、同氏は医薬分業との関係についても、院外処方である ほど後発医薬品の採用率が低くなると指摘しており、院内処方の診療所ほど、後発医

保険薬局 処方箋の取扱状況

「変更不可」に署名がない処方箋 69.0%

すべて「変更不可」であった処方箋 31.0%

1 品目でも後発薬を調剤した処方箋 32.3%

1 品目でも後発薬に変更できた処方箋 5.7%

後発薬の調剤に対する考え方

積極的に取り組んでいる 68%

積極的に取り組んでいない理由

・近隣の医療機関が 使用に消極的

・在庫管理の負担大

・患者が希望しない

医療機関 医薬品の備蓄状況(全品目数に占める後発薬の割合)

診療所 20.8%

DPC対象病院 9.3% ~12.0%

その他の病院 14.9%

今後の予定について

診療所 (「現状維持の予定」) 62.6%

病院 (「増やす予定」) 61.0%

採用の重視内容

・治療効果の同等性

・適応症の同一性

・経営的視点の影響

・信頼できる医薬品メーカー

・十分な在庫確保

患者 名前などを知っている 92.2%

後発薬に関心がある 48.3%

医師に処方を依頼したことがある 14.3%

(12)

薬品を積極的に処方している背景には、薬価差益が直接、医療機関の収入になること をその理由のひとつとして指摘する(12)

このように院外処方であるほど後発医薬品の採用率が低くなるという傾向は実際に も見られており(13)

1998

年の日経ヘルスケアの記事によれば、そもそも医薬分業が スタートした当初から、患者側にとっても院外処方に疑問を投げかける声が強かった という。たとえば、石川県の「よしだ小児科クリニック」では、

95

年に完全分業へ移 行したが、来院した患者

2000

人にアンケート調査を実施したところ、今までは医院 で薬がもらえていたのに、なぜわざわざ薬局へ行かなければならないのか、分業によ りかえって医療費が高くなるのではないか、信頼している先生から直接、薬をもらっ た方が安心であるし、その方が効くような気がする、などの質問が多く見られたとい う。

さきほどのアンケート結果からも、患者側では、最近は患者からの積極的な意思表 示も多くなってきている実態がうかがわれる。中村(2009)は、結局のところ、患者 が最も信頼をおいているのは医師であり、医師の積極性によるところも大きく影響し ていると指摘する。また、患者は医師や薬剤師から後発医薬品を勧められれば使う、

という傾向も鮮明になっているという(日本経済新聞

2011

5

30

日)。その一方 で、中村(2009)や大木他(

2009

)は、なかなか実際に後発医薬品に変えないことの 背景としては、現在の日本の保険制度では、患者の医薬品への自己負担率に差がない ことから、全体としての差も相対的に小さく、後発医薬品に変えるインセンティブが 弱いことを指摘している。

4.3 後発医薬品普及策に関しての背景と今後

後発医薬品の普及は、もともと医薬分業に伴う保険薬局側と病院の事情がその先が けであったとされている。「月刊ジェネリック」(2005年

9

月号)によると、患者が 先発薬と後発薬とを調剤薬局で選択できるシステムとして、院外処方箋の場合のみを 前提に、一般名処方と代替調剤(14)という

2

つの方法が検討されたのが始まりであった という。患者が後発医薬品を選択できることを最優先に考えられたものではなく、後 発医薬品を処方されると薬局側がそれに沿った調剤をすることになるが、在庫がない ために患者が薬局をあちこち回されるなど、応需薬局の混乱を避けたい必要性があっ た。また、病院側としても、在庫が薬局にないために、薬局からの疑義照会が多くな り、そうした問い合わせが診療中の医師の負担増加にもつながっていた。

そこでまずは、聖マリアンナ医科大学病院が一般名処方による院外処方箋を発行で きるシステムに変更することで、

2002

年度には年間約

1.5

億円のコスト削減に成功し たという。一方で、こうしたシステム変更にはコストがかかるが、代替調剤ができる ようになったことで、横浜市立みなと赤十字病院や都立大塚病院などが、その先がけ としてこの方法を導入した。この方法であれば、手書きで処方箋に医師が「同一成分 ならば代替可」と記入することで、簡単に始められるという利点があったという。こ れが結局は、診療報酬改定における処方箋様式の変更による後発医薬品普及策へとつ ながっていったのであろうし、結果として、患者から後発医薬品の処方を希望するケ ースも増えていった。わが国でも、代替調剤が容認されたものの、

2012

年度の診療報

(13)

酬改定によれば、結局のところ、一般名処方を推進する方向で収まったことになった といえるであろう。

宮本(

2010

)は、最近になって急速に進みつつある後発医薬品の使用促進策が、果 たして今後のシェア拡大と薬剤費減少につながるかどうかについて、理論的な観点か らの分析を行っている。分析の内容について、本稿では省略するが、すでに紹介した 宮本(

2004

)と同様に、「病院の患者に対する代理人としての程度」をモデルの中に 組み入れている。結論として、後発医薬品のシェアは低下することはあっても高まる ことはないこと、それがどの程度低下するのかは、「患者に対する代理人としての程度」

に関係していること、薬剤費総額は確実に減少するが、その削減効果も同様に、「患者 に対する代理人としての程度」が大きいかどうかに依存する、と提言している。要す るに、やはり医師が患者に対して、副作用や効果の同一性など適切な情報提供や、あ るいは病院内の薬剤師が適切な説明を怠らないなど、病院側の患者に対する態度がジ ェネリック使用促進には欠かせないということになるのではないだろうか。

5.

おわりに

本稿においては、薬価差益の問題について取り上げつつ、そうした状況が生じた背 景について概観した上で、宮本(

2004)の分析を紹介することにより、後発医薬品普

及の現状について整理し、より経済学的な視点から後発医薬品普及の今後について検 討した。

薬価差益の存在は、完全には解決できず、それが問題とされつつ、これまで医療機 関に対しても度重なる診療報酬引き下げがなされてきたわけであるが、三村(2011)

は、「現在の薬価差益は、むしろ医薬品卸と医療機関、薬局との市場競争原理に基づく 現行薬価制度の必然の結果である」(

P141)としている。新たな流通改革が行なわれ

て以降、当時

23.1%あった薬価差益は確実に減少し、 2003

年には

6.3%まで低下した

ものの、2005年には

8.9%

に再び上昇し、2009年においても

8.4%であるという。こ

うした現実からすると、三村(2011)は、「連続的な薬価改定によって進められた薬 価差益縮小も

1

つの限界点に達したとの見方もある」(

P154)と指摘している。薬価

差益の存在については、これまでの出来高制を前提とする診療報酬制度下においては、

患者への過剰投薬につながるとして社会問題化されていた時期もあったのかもしれな い。しかしながら、宮本(

2004

)が理論的にも明らかにしていたように、「薬価差益 を前提としたときの出来高払い制」ゆえに、患者が医師からの過剰投薬を意識して医 師の指示通りに投薬量を守らないわけではなく、患者のそうしたコンプライアンスの 程度には、病院側の患者に対する態度(「代理人としての程度」)が大きく影響してい た。すなわち、患者からすれば、医療機関の患者の立場に立った医療サービス提供と いったことが最も重視されており、情報提供や医師からの丁寧な説明など、とりわけ 医師への信頼度が大きいのではないだろうか。実際に、後発医薬品使用状況に関する 厚生労働省のアンケート結果でも、患者は医師や薬剤師から後発医薬品を勧められれ ば使用する、という傾向も明らかになっていた。一方で、日経調査によれば、「医師か ら後発医薬品の説明を受けたことのない人」は

80%

、「薬剤師から説明を受けたこと がない人」は

63%

にも達していたという(日本経済新聞

2011

5

30

日)。こうし

(14)

た現状下では、制度面からの改革のみでは後発医薬品の使用促進は難しいのかもしれ ない。

日本経済新聞

2007

12

11

日の記事において、飯塚氏は、薬価差益に関し、「医 療費高騰抑制のためには、経済的インセンティブ重視の制度設計が必要であり、現在 の薬価改定ルールの下では、後発薬の薬価差益が安定的に確保できることが望ましい」

として、むしろ後発医薬品の普及には「後発薬の薬価差益の急激な低下を防ぐことが 大切である」と指摘している。すでに述べたように、同氏は同記事において、医師の 処方にかかわる経済的なインセンティブが医療機関の規模や医薬分業の有無によって 異なることから、後発医薬品の採用が、院内処方の診療所において積極的であること を明らかにしていた。従来のような過剰な薬価差益の存在は問題視されるべきである としても、後発医薬品の採用が、とりわけ診療所に多く見られることの指摘が多い点 は、すでに本稿でも述べた通りであるが、ある程度の薬価差益確保は医療機関の安定 的な経営にとって必要なのではないだろうか。後発医薬品の普及により、納入価格に 関する価格競争がより激化していけば、薬価差益の問題は今後も焦点をあてられ続け るかもしれないが、今後は経営原資を薬価差益に求めざるを得ないようにも思われる。

「ばんぶう」(

2002

年2月号)では、かなり以前から、後発医薬品のメリットは、薬 価差益と、包括制を採用している医療機関のもとでの薬剤コスト圧縮にあることを指 摘しており、また川口(2011)も、「昨今の医療機関がもつ薬価差益獲得動機は、薬 剤の最適選択の阻害要因としてよりも、むしろ厳しい経営環境におかれている医療機 関の経営を支える存在に変化している」(P28)と指摘している。

本稿において、すでに述べたように、結果として後発医薬品使用促進にかかわる政 策となった代替調剤や一般名処方といった方法は、もともとは医薬分業政策の中で、

薬局や医療機関側の事情から生じたものであった。川渕(2007)は、そもそも医療費 削減の先がけとして導入した医薬分業政策であるが、ここ数年は入院も外来も薬剤費 のシェアは

20%台でほぼ変わらずに推移しており、ほとんど経済効果はなかった、と

指摘する。今後、医薬分業のもとで後発医薬品の普及を促進していくのであれば、調 剤側にもさらなる経済的インセンティブが必要であろう。

2010

年以降、診療報酬改定によって、医療機関に対しても、後発医薬品採用による 経済的なメリットが初めて付与されることになった。処方箋様式の変更についても、

医師の負担が増えたことで、あえて「変更不可」とする例が減少したという(日本経 済新聞

2012

4

13

日)。しかしながら、後発医薬品採用に関しては、品質や効果 の面で不安を持つ医師が多いことも確かな中で、そうした形式上の政策だけを導入す ることが、患者にとって果たして良いことなのかどうかにも疑問が残る。

後発医薬品の普及について、直接、理論的に分析を試みた宮本(

2010

)からは、後 発医薬品使用のシェアは、厚生労働省の意図に反して、今後低下することはあっても、

さらに高まることはない点、また明らかに今後、薬剤費総額の減少は見込めるものの、

シェア低下の程度については、やはり医療機関側、とりわけ医師の患者に対する態度 に依存することが結論として示されていた。患者にとって、医師への信頼度は大きい ものであり、後発医薬品の普及に向けて、改めて医薬分業のあり方を見直すとともに、

とりわけ診療所の多くで見られるように、院内処方によって患者が納得できる形で後

(15)

発医薬品を使用することが求められていくように感じる。

これまで後発医薬品の使用促進に向けて、診療報酬の改定が重ねられてきたが、現 行下において、院内処方の場合に、後発医薬品を積極的に採用することへのインセン ティブ付与は行なわれてきていない。それはある面では、医薬分業という制度を前提 としての結果であったかもしれない。しかしながら、今後は地域医療の根幹を担う診 療所の役割が一層重視されていく中で、「かかりつけ医」として患者が信頼を寄せる診 療所において、院内処方による後発医薬品の使用促進を積極的に進めていっても良い ように思う。「月刊ジェネリック」(

2005

2

月号)において、ジェネリック大手医 薬品メーカーの東和薬品社長(吉田氏)は、沢井製薬社長(澤井氏)との対談の中で、

「制度が変わらないとすれば、今後、どのようなジェネリック促進策があるか、それ はやはりインセンティブの点数を上げ、院内処方にも適用させるということである」

P14)と語っている。

今後も後発医薬品の普及に向けて、メーカーでも再編や外資参入など、市場が拡大 していくことは確かであろうが、最終的に使用する患者の立場を重視した上で、情報 提供面なども含めて、先発医薬品と後発医薬品それぞれの利点が活かされる形で共存 していくことを期待したい。

なお、最後に、宮本(

2004)においては、とりわけ患者の投薬に関する自己負担率

に関してはモデルにおいて考慮されていない。現在のところ、先発医薬品と後発医薬 品の両者ともに、自己負担率に差が生じていないものの、すでに本文中においても述 べたように、そうした観点から、患者にとっての負担額減少があまり意識されず、後 発医薬品の使用が進んでいかない点についての指摘も見られた。今後の課題として、

自己負担率に関するパラメータを考慮することで、この理論分析の拡張を検討してみ たいと考えている。

【注】

(1) 「診療点数早見表(医科)2012年4月版、380頁の説明に基づく定義。

(2) 厚生労働省HP「ジェネリック医薬品の使用促進について」の資料によると、数量ベースでは、

アメリカ(72%)、ドイツ(63%)、イギリス(55%)であるのに対し、わが国のみ22.8%と極め て低い水準にあるという。(日本については2011年9月の調査、その他は2009年の調査結果に よる。

(3) 林他(2012)によれば、実際にも薬価差益を示す「推定乖離率」は1994年の時点では20%

弱であったものが、2007年には7%弱と大幅に減少しているという。林他(2012)の分析では、

医療用医薬品流通構造に関する硬直的な取引慣行の実態として、製薬メーカーと医薬品卸の間で の割戻しやアローアンスの問題、医薬品卸と医療機関の間での未妥結(仮納入)や総価取引の問 題などについても検討し、問題点を提示している。

(4) 宮本(2004)では、所得Y-保険料P(1) 式に加えたものを効用関数と仮定しているが、投 薬にともなう患者の自己負担分を考慮していないので、ここでは簡略化のために省略した。

(5) より多くの投薬を処方されている患者ほど、血液検査などモニターの確率も高くなると考えら

れる。

(6) 最近、急速に拡大しているDPC制度のもとでは、薬剤分も包括化されるためs = 0となるが、

(16)

ここではそうしたDPC制度の場合については考慮していない。

(7) 宮本(2004)の指摘にもあるように、実際に診療報酬制度のもとで決められている投薬量に

は、薬剤の種類によって、14日分、30日分、90日分と処方できる量には上限が設けられている。

詳細は「診療報酬点数表(医科)」投薬の部を参照のこと。

(8) 後発医薬品の価格を、先発品の40%を下限とするというルール。

(9) 後発医薬品の販売が始まると、それに連動して先発薬の公定価格も下がる新方式を導入したと

いう。たとえば、薬価100円で市場シェア70%の先発薬と、薬価50円でシェア30%の後発薬 が存在する場合、市場シェアを加味した加重平均値により、新方式では100 × 0.7 + 50 × 0.3 = 85 円が先発薬の新価格とされる(日本経済新聞20071023日)

(10) メドピアの調査によると、85%の医師が「ジェネリックの処方に疑問・不安がある」と回答し

ていたという。また、とりわけ品質に対する不安が66.3%で最多であったという。(日経産業新聞 2011715日)

さらに、中村(2009)の指摘によると、すでに2006年におこなわれた公正取引委員会の調査 でも後発医薬品の安全性等に不安を感じている医師は84.6%にも上っていたという。日本医師会 の報告など、その他にもそうした点を指摘する声は多い。

(11) 以前から積極的に後発医薬品を採用している「たかもと共立診療所」(大阪府)の高本医師は、

「患者負担が引き上げられる中で同じ薬なら患者のために安いほうが良い」と利点を語っている という。(日本経済新聞200642日)しかしながら、その一方で、メドピアの調査による と、薬価を知って処方を考慮している医師は50%にとどまり、ほとんど知らない、知っていても 考慮しない、とする医師は43%にも上るという。(日経産業新聞201268日)

(12) 田中他(2002)によると、実際に20005月から6月にかけて栃木県内の開業医を対象に した調査によれば、後発医薬品採用条件について、「薬価差益がとれれば」とする回答がすでに 導入しているところでは26%(導入していないところでは16%)見られたという。また阪倉2002)

は、これまで後発医薬品は薬価差益を追求する開業医が主な市場だったと指摘する。現行制度下 の診療報酬制度のもとでは、たとえば、7種類以下の内服薬の投薬について一般名による後発医 薬品の処方をおこなっても院外処方での処方せん料は70点のみである。

(13) 厚生労働省医政局経済課の委託事業として、「ジェネリック医薬品使用促進の先進事例等に関

する調査」(平成23年度)がまとめられているが、この報告によると、都道府県レベルで後発医 薬品採用には格差が見られており、たとえば秋田県の場合には、医薬分業率が最も高いが、後発 医薬品の使用割合は最も低いという。

(14) 海外では代替調剤や一般名処方などがすでに進められている国が多かったという。

・ジェネリック処方を積極的に進めている国(イタリア、スペイン、イギリス、フランス、スウ ェーデンなど)

・一般名処方を推進している国(イギリス、フランス、エストニア、ロシアなど)

・代替調剤が認められている国(イタリア、イギリス、スウェーデン、オランダ、スペイン、デ ンマークなど)

「月刊ジェネリック」20059月号P10「欧州各国のジェネリック医薬品推進策」より)

【参考文献】

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月刊ジェネリック(2005「特集 霧中の代替調剤的処方」『月刊ジェネリック』 20059月号, 式会社アズクルー, pp.4-20

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(18)

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http://www.mhlw.go.jp/seisaku/2012/03/01.html201297日アクセス)

2012

年9月

12

日受理)

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