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JNET Vol.2 No.1 May 2008 Tsumoto T■はじめに
今回,!""#年$月より!""%年&月までニューヨークの Roosevelt病院血管内治療センターに留学する経験を得 たので報告する.
■Dr. Alejandro Berenstein,ルーズベルト病院
ルーズベルト病院は,ニューヨークマンハッタン'"番 街通りの(%丁目と()丁目の間にあり,central parkの南 端から*ブロック西側に位置している.midtown west, uptown westというマンハッタン北西地区をカバーして いる大病院であり(Fig. 1),ジョンレノンが暴漢に狙 撃され,運ばれた病院としても有名である.ここにDr.
Berensteinを始めとする血管内治療センターの全員が
!""+年,月に引っ越してきたそうである.
Dr. Berensteinで あ る が, フ ル ネ ー ム はAlejandro Berenstein,')+-年メキシコ生まれ,現在#"歳である
(Fig. 2).')-"年後半より脳血管内治療を始め,."歳ご ろより脳血管内治療の最前線で活躍されている.有名な Surgical Neuroangiographyが出版されたのが')%-年,
つまり彼が+"歳のときということで,いかに早くから活 躍されていたかがわかる.
■臨 床
臨床に関しては,研究のないときに見学をさせてもら い勉強した.ハードとしてはSIEMENSのbiplane flat panel detectorの血管撮影装置が.台設置されており,同 時に&症例の血管内治療が行われている.手技はDr.
Alejandro Berenstein, Yasunari Niimi, Joon K. Song の attending doctor &人が主に行っており,その下で*〜
&人のclinical fellowが指導を受けている(Fig. 3).ま た当施設がcenter for endovascular surgeryと名乗って いるように,脳・脊髄・頭頸部だけでなく,四肢末梢の 血管奇形も扱っており,著名なDr. Patricia E. Burrows
がその分野を担当している.
私自身は脳神経外科医でもあるため,脳神経外科との 関係には大変興味があったが,血管内治療センターと脳 神経外科の関係は密接で,脳動静脈奇形,脳動脈瘤症例 では常に連絡をとりながら治療に当たっている.また脳 血管障害に関しては,Dr. David Langerによるバイパス 手術が盛んで,最近では,ELANA techniqueを用いた 母血管の一時遮断を必要としないバイパス手術が積極的 に 行 わ れ て い る. こ れ に よ り, 一 例 を あ げ る とBA thrombosed giant aneurysmに対し,M*からP*へのア クロバティックなバイパスを行った直後に,血管内治療 で母血管を閉塞するといった治療が行われている.
血管内治療の特徴として,診断血管撮影,頸動脈ステ ントを除いたほぼすべてが全身麻酔下に行われている.
また日本では血管内治療時には見ることのない,術中脳 神経モニタリングが盛んに行われている.MEPの大家 と し て 有 名 な Dr. Vedran Deletis を は じ め と す る neurophysiology groupが,顔面血管奇形や脊髄疾患の際 に,ほぼ全例でfacial nerve monitoringや, MEP, SEPを モニタリングしている.
海外留学レポート
ルーズベルト病院 血管内治療センター留学記
津本智幸1)
Tomoyuki TSUMOTO
(Received December '), !""-:Accepted January %, !""%)
')ルーズベルト病院 血管内治療センター
<連絡先:'""" Tenth Ave., New York, NY'""') E-mail:tsumoto'"!)@gmail.com>
JNET 2:68-71, 2008
Fig. 1 Roosevelt Hospital
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Tsumoto T
日常臨床としては,毎日&,$例の血管内治療を行っ ており,!""#年の血管内治療総数は+-#症例,内訳は Fig. 4の通りである.顔面・頸部血管奇形,脳動静脈奇 形,ガレン大静脈瘤を含めた小児脳血管奇形,脊髄血管 奇形など「マニアックな症例」が多いのが特徴であろう.
こんなにガレン大静脈瘤の患者がいるものなのかと驚か された.
一方,動脈硬化性病変などの「開く」血管内治療は比 較的少なく,いわゆる「詰める」血管内治療が大半を占 めている.これは,和歌山で「開く」世界に育ったもの としては新鮮でよい経験であった.また脊髄血管奇形に 関して,個人的には脊髄硬膜動静脈瘻の/症例を経験し た程度だったので血管撮影の基礎に始まり,実際の血管 内治療までいろいろなことを学ぶことができた.また,
カンファレンスも盛んに行われており,週/回,翌週に 行う症例に関する検討会,月/回,術後症例に関する脳 神経外科との検討会,また顔面・頸部血管奇形について の形成外科との検討会が行われている.
さて,アメリカの脳血管内治療の現状であるが,脳動 静 脈 奇 形 に 対 し て はOnyx, 脳 動 脈 瘤 に は 種 々 の bioactive coilとそれをサポートするstentといったところ が旬であろう.しかしdeviceに関しては,FDAの認可が 必要なため,南米やヨーロッパに比べるとやや遅れてい る感がある.
Onyxに関しては,marathon catheterを誘導し,長時 間かけて注入していくわけであるが,gradeが低く,血 管構築が単純なものには一回で根治可能で大変有用であ ると思われる.ただ,gradeの高いものに関しては,や はりmultiple procedureが必要であるし,「逆流しては止
め,ちょっと待ってまた打つ」という繰り返しの注入方 法をマスターするにはある程度のまとまった症例が必要 と思われた.また静脈流出路へOnyxが流出し,静脈閉 塞を起こしたときなどは,術後にcatastrophicな出血を 起こすことがあり,要注意である.
動脈瘤に関しては,当施設の特徴として主として hydrocoilをみることが多かった.このコイルに関して は,やはり「膨らむ=tight packing=再開通が少ない」
という単純な発想がアメリカ人には支持されていると思 われる.ただ水頭症を始めとしたhydrogelに伴う副作用 があるのも事実であり,使用には注意が必要であると思 われる.
それ以外の疾患に関しては,Dr. Berensteinを有名に している/つであるNBCA glue injectionをみる機会が 多く,巨大脳動脈瘤などを始めとしてこんな症例でも glueを使えるのかと感心することが多かった.また筆者 にとって,ある症例でDr. Berensteinが,「NBCA glue はparticleよりも安全である」と言っていたことがとて も印象的であった.glueの経験が豊富であるからこそ言 えるのであろうが,長年使い慣れているものを使うのが 一番患者さんの治療には安全と考えているのであろう.
■研 究
和歌山にいた当時は,ウサギのエラスターゼ動脈瘤を 用いて実験を行っていたが,ルーズベルト病院では canineのbufurcation aneurysm modelを動脈瘤モデルに 採用していた.このモデルは,左総頸動脈と右総頸動脈 でbifurcationを作成し,そこにvein graft pouchを縫合し,
動脈瘤を作成するというもので,血管吻合の良い練習に Fig. 2 Dr. Berenstein (front), and author (back) Fig. 3 Dr. Niimi
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JNET Vol.2 No.1 May 2008 Tsumoto Tなった.動脈瘤作成をマスターしたのち,まずこのモデ ルの長期の自然経過について調べることにした.この実 験からcanine bufurcation aneurysm modelは,ほとんど 自然閉塞することはなく,逆にhemodynamic stressが強 いため,動脈瘤が経過中に大きくなることがわかり,こ のモデルが塞栓物質の評価において有用なモデルである ことが確認できた.
その後,Dr. Berensteinが考案したembolic containing deviceを用いた動脈瘤の治療に関する実験を行った.こ のdeviceは,trispanに似た傘のような形をしており,ま ず動脈瘤内に留置し,同軸の管腔より液体塞栓物質を注 入したのち,電気で傘をdetachするというものである.
現時点でneuroformと同じprofile,同程度の柔らさがあ り,十分臨床応用可能,特にBA tip aneurysmなどで大 きな動脈瘤に有用で,「&分で完治」の時代が来るあろ うと期待している.
またmicrovention terumoとの共同研究でhydrocoil,
特にfinishing用のhydrosoftの評価を行った.これは,
HEAL studyでhydrocoilを全体の-(%以上使うか,final coilをhydrocoilにした方が,再開通が減少するとの報告 から次世代のhydrocoilとして開発されたものである.
他施設で行われた研究では,ウサギのエラスターゼ動脈 瘤において塞栓術!週間後に著明な新生内膜の形成が見 られたとのことである.われわれの実験では,hydrogel
が普通のhydrocoilに比べてそれほど膨張しないのでコ イルの挿入に際し,時間に制限されることなく,塞栓術 を行うことができ有用であった.ただ再開通予防に関し ては,hydrosoftといえども,膨らみが少ない分,やは りtight packingが必要との印象を持った.
以上,動脈瘤に関する研究が,私の仕事の中心であっ たが,それ以外としてswineのrete mirabileを用いた新 しいAVMモデルの開発に関する研究も現在進行中であ る.また現在,新しいanimal laboratoryを建設中で,最 先端の血管撮影装置が設置される予定であり,今後いろ いろな研究が可能になると期待している.
■ニューヨーク生活
!""#年$月,家族$人でニューヨークにやって来た.
日常生活の拠点は,マンハッタンという島の中,それも 病院,アパート(病院官舎),子供の学校,これらすべ てが半径(""m以内にあるという狭い環境にあった.こ のため車を所有することもなく,もっぱら地下鉄やバス を利用しながらの快適な生活であった.平日は,子供と 一緒にアパートを出て,学校に送ってから病院に行くと いう毎日であった.
仕事が終わってからの娯楽といえば,夏場は,もっぱ ら野球観戦,特にNew York Yankeesの応援であった.
家族全員熱狂的なヤンキースファンであり,レギュラー 200
150 100 50
0
cases
cerebral aneurysm brain AVM
intracranial dural AVF
epistaxis
other lesions (including extremities) facial, neck vascular lesion acute cerebral artery occlusion VOG aneurysmal malformation spinal vascular lesion intra, extracranial artery stenosis intra, extracranial tumor
70 69 33 25 20 18 17 12 6
171 105
Fig. 4 Case summary in 2006
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シーズン中は,テレビで試合を観戦し,月に/度ほど球 場に足を運んだ.忘れられない思い出の/つとして,グ ランドで松井選手と対面することもできた.あの顔と体 の大きさ,紳士的な振る舞いは今でも忘れられない.一 方,冬場はブロードウェイミュージカル,タイムズスク エアのカウントダウンを楽しんだ.
さて初めての海外生活,いろいろな困難に出会ったが,
やはり「英語が聞き取れない,通じない」ことを痛感し た.social security numberの申請に始まり,仕事の段取 りまで,当たり前だが,すべてに英語が必要であった.
各場面でちょっとした質問を電話で済ませれば良いのだ が,当初はそんな勇気もなく,何回も足を運ぶ必要があ った.つくづく勉強不足を痛感し,こちらに来てから少 しは勉強したが,なかなか上達はしなかった.一生かか りそうである.
最後に家族であるが,子供に関しては,上の娘が,歳,
下の息子が0歳と学童期であった.子供には子供の苦労 が多々あったであろうが,数週間後には周りに溶け込み,
'年後ぐらいから急激に英語を喋るようになった.子供
の適応力には目を見張るものがあり,native speakerの ように聞こえる発音は羨ましく思った.一方,妻は片言 の英語を駆使し,持ち前のパワーでアメリカ人の友達を 作っていった.多くの友人,そのご家族にも本当に親切 にしていただいた.そのおかげでthanks givingなどアメ リカ特有の行事にも招いていただき,アメリカ文化を知 ることができ,楽しい生活を送ることができた.
■まとめ
医師として'"年以上が経ち,仕事にも慣れていたとこ ろであったが,海外へ留学して,日本ではできないいろ いろな勉強,経験ができた.うまくいかないことも多か ったが,貴重な*年間であった.
■おわりに
今回の留学に際し,大変お世話になりました三重大学 脳神経外科・滝和郎教授,和歌山県立医科大学脳神経外 科・板倉徹教授,そして寺田友昭先生,新見康成先生に 感謝申し上げます.