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:ドロシー・レナード(Dorothy A. Leonard)『「経験知」を伝える技術:ディープスマートの本質』を巡って

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Academic year: 2021

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図書館運営委員からの寄稿

 皆さんの学習支援の為に、図書館サービスの 有用な活用方策についての近接領域を毎回紹介 しています。前回は、これまでの言及内容を トレースする形態に従いながらも、ドナルド・

ショーン(Donald A. Schön)が提唱する「行為 の中の省察」の観点から学習支援に於ける「対話」

の重要性に関する捉え方を下敷きにして図書館 でのサービスを念頭に置いて利用者に提供され るサービスの質的な側面に着眼しました。

 このことは、「対話」そのものを学習経験とし て位置づけて、その経験が生成する「行為の中 の省察」を支援する図書館サービスの在り方を 提示しました。このような「対話」の捉え方を 巡っては、ブルーナー(Bruner)の『可能世界の 心理』にて著された「論理実証モード」と「ス トーリーモード」を下敷きにした「内面行為と しての省察」や、バフチン(Bakhtin)の云う「対 話」を通した学びへの経験、そして、ペスタロッ チ(Pestalozzi)が云う生活の中の経験を通した 学びなどにも共通する部分があります。

 古代ギリシャの哲学者ソクラテスは、教え子 たちに質問をして答えさせる対話型の教育方法 の方が一方的に知識を伝えるよりはるかに効果 的であることに気づきました。このソクラテス メソッドと呼ばれる教育方法は、産婆術とも呼 称されていますが、アメリカの小学校の教育課 程をはじめとして、その後のロースクールやビ ジネススクールで学生の思考力を磨く狙いで取 り入れられているメジャーな教授方法です。こ のソクラテスメソッドの特徴は、積極的に聞く 以上のことを生徒に要求することにあります。

第一に、曖昧な言葉や思考を明確化・精緻化す ることが求められます。第二に、自分自身の固 定観念に疑問を投げかけ、根底にある現象につ いてもっと深く考えることが求められる。この ように、ソクラテスメソッドは充実した積極的 な経験になります。

 この意味に於いて、図書館で展開される学習 支援のスタンスと類似していると云うことが出

来ます。このソクラテスメソッドが極めて効果 的なのは、学習者が積極的に学習過程に関わり、

自分の思考を明確化させ、固定観念に疑問を投 げかけるからだと云うことが出来ます。

 しかし、これら一連の研究は個人をその対象 としていると云う側面が強く滲み出てしまって います。そこで前回予告したように、これらの 内面的且つ質的、換言すると、人々の日常生活 の中に存在する経験を通した活動、謂わば、学 びへの実践活動と云う可視化できない内実がど のように他者に伝播、或いは、継承されていく のかと云う個人的、若しくは個人の成長をター ゲットとする側面が強調されている傾向が現状 であり、集団的且つ組織的な成長にアプローチ しようとする試みは脆弱であると云うことを指 摘することができます。

 ここに着眼したのが、マイケル・ポランニー

(Michael Polanyi)の『暗黙知の次元』で言及 されたことに類似した知の側面を捉えた概念を 提唱した、ドロシー・レナード(Dorothy A.

Leonard)であると云うことが出来ます。彼は その著書『「経験知」を伝える技術:ディープス マートの本質』に於いて、職業も含んだ生活経 験で展開される実践活動から生成する「経験知」

に着眼しています。これは「暗黙知」と同様に、

可視化された「形式知」と対照されることで浮 かび上がる知の在り方として措定されていま す。そしてこの「経験知」が他者へ伝承される プロセスに関して言及しているのですが、その 際に重要になるのが、ディープスマート(Deep Smarts)として人間の内面に根ざした「匠の技」

のようにミメーシスとして身体化され会得され た知の在り方に焦点を当てています。

  次 回 は、 こ のDorothy A. LeonardのDeep Smartsを周辺の経験学習と関連させて更に考察 を加えていきます。

えだもと ますひろ(准教授・図書館学・教育学)

図書館の徹底活用術○

枝元 益祐

利用者にとって有益な学習支援者としての図書館サービスの質的側面が伝承されるプロセスへの着眼

:ドロシー・レナード(Dorothy A. Leonard)『「経験知」を伝える技術:ディープスマートの本質』を巡って 利用者にとって有益な学習支援者としての図書館サービスの質的側面が伝承されるプロセスへの着眼

:ドロシー・レナード(Dorothy A. Leonard)『「経験知」を伝える技術:ディープスマートの本質』を巡って

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