公共建築の計画プロセスにおける参加型ワークショップの可能性 「くまもとアートポリス わたしたちのまちづくり事業」の分析をとおして [ PDF
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(2) 場の構成. は、多彩なワークショップ手法が用いられている。そこ. ワークショップの場面. 内容. 説明会. 提案と要望. 「わたしたちのまちづくり事業」 が行われた 6 地区で. アクション. 建築家が参加者住民 に対して、計画案の 具体的な提示を行い、 住民は要望を言う形 で議論を行うもの。. 見学会. 3 6地区の参加型計画プロセスで用いられたワークショップ. 説明では理解できな い空間などの情報を 得るため、計画する 施設と同類の施設を 見学すること。. 区で用いられたワークショップ手法は 8 つに分類された (図 2)。建築家が図面などで計画案を説明し、住人がそ れに対して具体的な修正点の希望を出す場として「計画. これは、 「建築家の提案と住民の要望の調整」を目的とし て行われる。しかし、建築家の作成した具体案の前では、 住民の要望は限定されたものになりがちである。 そこで、住民の持つ関心や意見を引き出すために、そ の他にも様々な手法が用いられた。類似施設を建築家と. 多様な意見のくみ取り. 案の検討」という目的をもったワークショップがある。. ともに訪れ注目すべき点を空間などから学ぶ「見学会」. 宝捜しゲーム. 地域・空間に対する感性の育成. のか)の 2 つの視点から手法を類型化した。すると、6 地. 施設計画をするにあ たって、必要な地域 の情報を発見収集し、 その収集内容を参加 者同士で改めて共有 認識していくもの。. 学生が現実性を伴わ ない施設計画を多様 に考え、その幅広い 提案に対して住民と 施設計画の可能性な どについて検討する もの。. KJ法. ン」(何を媒体にどのようにして建築家と住民が対話する. 個々人の意見を多様 な視点でグルーピン グ化し、意見の方向 性などをまとめてい く作業。. 住民案の作成. 家と住民がいかなる関係にあるのか)と、 「主なアクショ. 学生の提案. で、「場の構成」(ワークショップという場において建築. 数人単位でグループ を組み、そのグルー プ内で話し合いなど を行いながら意見を まとめ、それを具体 的な絵や形にしてい く作業。. また、大学生等による実現性を問わない提案を元に、よ り柔軟に住民の意見を引き出す「学生の提案」、住民数人が グループとなって話し合い、その中から施設のイメージを 文章の形で共同作成する「KJ法」、それを模型や絵を使って 表現する「住民案の作成」という手法で、建築家案の具体. アンケート. に対する感性の育成」が目論まれているといえる。. 質問1:利用したい施設は ありますか? 質問2:現在ある施設で良 いと思う点、悪い 点はありますか?. ホームページ・新聞. クショップでは、実際に見ることで「住民の地域・空間. 全住民への広報. や、地域の魅力を再発見する「宝捜しゲーム」というワー. ワークショップに参 加できなかった人や 地域外の人に情報を 流す手段。. 建築家. 公共建築. KJ法. WSの中での グループ. 住民. 周辺環境. WS新聞. WSの場. 学生. 模型など. 的検討のみでは出てこないような、 「住民の多様な意見の汲 み取り」を目的として行われるワークショップも見られた。. ワークショップに参 加できない人を考慮 して、地域内の全住 戸に施設計画または、 その手がかりとなる ことを聞く手段。. WSの場で共有 したイメージ. 個人の意見 や要望. 図 2 6 地区の計画プロセスで用いられたワークショップの目的と手法. これらの「地域・空間に対する感性の育成」や「住民. 提案と 要望. の多様な意見の汲み取り」を目的とするワークショップ. 多様な意見のくみ取り. 説明会 学生の提案. 砥用町 苓北町 湯前町 小国町 蘇陽町 南小国町. は、いわゆる「楽しさ」を大切にし、イベント的な魅力 を持たせることにより、参加のモチベーションを高める ために様々な工夫がなされているものが多い。 最後に、ワークショップに直接参加していない住民も. 11 1 1 7 4 4. 1 1 1 1 0 0. KJ法. 住民案の作成. 0 1 1 2 1 2. 0 1 1 1 0 0. 地域・空間に対する 感性の育成. 住民への広報. ームページ 見学会 宝捜しゲーム アンケート ホ と新聞. 0 0 0 1 1 1. 0 1 1 0 0 0. 0 0 0 1 1 0. 1 0 1 4 0 0. 計画案検討 イベント 計画案検討 +イベント. 計画プロセスに関わらせるために、 「全住民への広報」と. 表 1 6 地区の計画プロセスで用いられたワークショップの 手法とコーディネートの志向性. して「アンケート」により意見の聞き取りや「ホームペー. 役割が十分に果たされているとは言えない。それに対し. ジの作成」による進行状況の報告も行われた。. て苓北町と湯前町では「多様な意見のくみ取り」と「地. 次に、この類型化したワークショップ手法のうち、ど. 域・空間に対する感性の育成」を目的としたイベント的. れが何回用いられたのかを地区ごとにカウントすること. なワークショップを重点的に開催している。これらは. により、各地区の計画プロセスについて、そのコーディ. 〈イベント〉型のコーディネートと言えよう。最後の小国. ネートの志向性を考察する (表1)。コーディネートの. 町、蘇陽町、南小国町は「説明会」のワークショップを. 志向性は大きく3つに分けることができる。一つは、ワー. 多く開催しながらも、あわせて「地域・空間に対する感. クショップのほとんどを「提案と要望」のための議論で. 性の育成」や「住民の多様な意見の汲み取り」を目的と. 終始している〈計画検討〉型のコーディネートであり、砥. するワークショップも開催している。これは上の 2 つの. 用町がこれにあたる。しかし、建築という専門的な分野. 性格をもっているため〈計画検討〉+〈イベント〉型の. と一般住民との知識の差を補填すべきワークショップの. コーディネートがなされていると言える。. 12-2.
(3) ない状況でコーディネートされた参加型の計画プロセス. 以下では、 〈イベント〉型のコーディネートの事例とし. において、公共建築と参加住民との関係は1対1の対応. て湯前町を、 〈計画検討〉+〈イベント〉型のコーディネー. となる。参加住民は自らの出した意見が計画案に埋め込. トの事例として小国町を取り上げ、その参加型の計画プ. まれていると感じることにより、公共建築に対する自発. ロセスにおけるワークショップの流れを分析する。. 的な考えが育ったと言える。. a)湯前町におけるワークショップの流れ. b)小国町におけるワークショップの流れ . 湯前町では駅舎とその周辺整備計画において参加型の. 小国町においては小学校の体育館の建替えとそれに伴. 計画プロセスが用いられた。対象の駅舎の利用者は多様. う施設の地域開放計画において参加型のワークショップ. なため、駅を通学や通勤に利用する多くの個人がワーク. が行われた。推薦された建築家は一人であり、ファシリ. ショップの参加者となった。. テーターの役割も兼ねることとなった。実際にファシリ. この地区に派遣されたのは建築家と、ワークショップ. テーターとしての活動を見てみると、ワークショップで. の経験の豊富な専門家であった。そこで、ここでは二人. はほとんどの回毎に具体的なテーマを設けている。例え. がそれぞれ建築家、ファシリテーターと役割分担し計画. ば最初の 3 回のワークショップでは、敷地の検討をテー. プロセスを進めた。. マとする計画案の検討が行われた。次の 4 回目から 6 回. 湯前町のファシリテーターはワークショップの殆どを. 目までに行われたワークショップでは、KJ法による意見. 「多様な意見のくみ取り」や「地域・空間に対する感性の. の引出しや、見学会、希望する建築のイメージをもとに. 育成」といったイベント型のワークショップに費やして. 模型をつくるワークショップなど、その計画案に対する. いる(図 3)。それらのワークショップにイベントとして. 認識を向上させることや幅広い意見を引き出すために使. の魅力を持たせ、住民に参加しやすい場を設定してい. われている。7 回目以降は、再び施設の使い方等に関す. る。また、回毎に少しずつテーマをずらして、多様な意. る計画案の検討としてワークショップが行われた。. 見がでてくるように意図されている。. 参加住民は、小学生の他は地域の各種組織や PTA の代. このように関心が拡がっていくような場では多くの意. 表者であった。この地区では古くからの共同社会の階層. 見が出される一方で、それに対する対応は直接的にはな. 構造が幾分残っているため、特に最初の3回と後半の7. く、最終的に最大化された意見の中から、建築家が素材. 回目以降のワークショップでは、参加者が各団体の代表. として意見を取捨選択して計画案に埋め込み、最後に計. 者のみというケースが多かった。彼らの意見の多くは実. 画案を提示する手法がとられた。. 質的に各団体の意見となり、彼らの関わり方によって、. このようにして、もともと参加住民に相互の関係性が. 地域住民の公共建築に対する認識が変わってくる。. □第1回WS (12.7/15∼12.7/16). 〈 イベント〉. 湯前町湯前駅及び 駅前周辺開発事業. 4 湯前町と小国町での参加型の計画プロセス. :まちの宝捜し. 〈 計画検討 〉+〈 イベント〉. 小国町立北里小学校 屋内運動場建設事業. □第1回WS (12.2/1). :対象敷地の可能性 についての検討. □第2回WS (12.2/29). :対象敷地の問題検討 :校舎改築計画の検討. □ホームページ公開 (常時更新). :壁新聞の作成. □第3回WS (12.4/4). :壁新聞の作成. □第4回WS (12.5/21). :対象敷地の絞込み :校舎改築計画の提案. 敷地の検討. :検討内容の公開 :掲示板など. □第2回WS (12.8/1∼12.8/3). :大学生による 案の提示. □第5回WS (12.6/18). :全住民意見の分析 :下山田小学校の見学 :将来像をKJ法でまとめる :まちづくり見学. □アンケート (12.5.上旬). :全住戸に対する アンケート実施. □基本計画の最終説明会 (12.11/5). :3世代駅前遊び場 マップづくり. □第6回WS (12.7/7). :小学生による 模型作り. イベント. □WS新聞 (12.6/10発行). :WS内容の報告. :湯前駅前に欲しい ものを形に表す. □第7回WS (12.7/27). :計画案の説明 :使い方、管理の検討. イベント. □第8回WS (12.9/7∼12.9/10). :大学生による地区 の将来像の提示. 計画案の検討. :基本計画の最終説明. □第9回WS (12.9/21). :計画案第2案の提示 :地域開放施設の検討. □WS新聞 (12.9/10発行). :WS内容の報告. □第10回WS (12.11/3). :基本計画案の 最終提示. □WS新聞 (12.10/10発行). :WS内容の報告. 図 3 小国町と湯前町のワークショップの流れ. 湯前町 「まちづくり探偵団」. 湯前町 「湯前駅前に欲しいもの」 小国町 「小学生による模型づくり」 小国町 「基本計画案の最終提示」. 12-3.
(4) 湯前町ファシリテーター. 5 ファシリテーターの戦略. 関心の拡がりがある場. 以上の 2 事例におけるそれぞれのファシリテーターの. 様々なテーマ. 戦略を、参加の場をいかに生み出すかという「場の戦. 小国町のファシリテーター 焦点を持った場 関心の方向. 具体的なテーマ. 略」、住民の意見をいかに計画に反映させるかという「計 場の戦略. 画進行の戦略」、およびワークショップを通して住民の 公共施設への関心を以下に生み出すかという「住民の愛 着醸成の戦略」という視点から見てみる(図 4)。. ワークショップの場. 参加住民の関心を拡げるためにテーマ を少しずつずらし、どの回においても 途中から参加することができるような ワークショップの場。参加者が不特定 多数のときによい。. 1)場の戦略 湯前町のファシリテーターは、毎回のイベントにおい て少しずつテーマとなる焦点を変え、多彩な催しの中で. メリット:多くの意見を引き出す。 デメリット:計画案との対応が明確で ない. 参加住民の関心が拡がっていくような場を設定している。. 意見の最大化. 小国町では、計画案の検討という基本的な焦点をもっ. 引き出された意見. て場を設定してきた。そのため、参加者は常に各時点で. B-WS. 認識の拡大. 意見の集約. 計画進行の戦略. A-WS. の案を中心に発想を膨らませ意見を出している。 2)計画進行の戦略 湯前町では、ファシリテーターは複数回のイベント的 なワークショップを行う中で、多角的な意見を収集し、 それらを素材として建築家に預けることで計画案を作成 する戦略をとっている。 一方小国町では、ファシリテーターは、建築家として. 最終計画案. D-WS イベント型の ワークショップ. C-WS. それぞれのワークショップの回毎に 焦点をずらして多様な意見を聞き、 その中からいくつかのコメントを素 材として選び計画を行う。 メリット:途中からでも参加しやすい 対立意見を生み出さない。 デメリット:段階の積み重ねが見えに くい。. 各自それぞれ異なる愛着. 何度も計画案を提示し、それに対する住民の反応を毎回. ある程度の意見を聞きそれに対する応 答として案を提示する。その繰り返し でワークショップを行う。 メリット:合意形成が行われたため、 案に対する満足度が得られやすい。 デメリット:ファシリテーター、計画 者、住民すべての主体に労力が必要で ある。また住民は途中参加しにく。. 階層的な集団構造による共同の愛着 公共建築. 住民の愛着醸成の戦略. 公共建築. 吸収していく形で計画プロセスを進める戦略をとった。 ただし、その途中でイベント型のワークショップも開催 し、なるべく多様な住民の意見を引き出すように工夫し ている。 3)住民の愛情醸成の戦略 湯前町では自由公募によって参加した住人が多く、公 共建築に対する参加住人の関係性は個々人によって変 わってくるものであると言える。そこでは,各住民が個. 取捨選択. 参加住民. 参加する住民がある程度特定している 場合に具体的なテーマに対して行うワ ークショップの場。 メリット:参加者集団の合意形成能力 が高まる デメリット:意見が限定されたものと なりがち. 公共建築に対する 共有的な考え. 多数の意見の中から素材として選ばれ たコメントをもとに計画することで個 人と建物という構図をつくる。 メリット:各個人と建物の間に愛着や 自発性が生じる。 デメリット:多く出された意見の中で 拾われなかった意見の消息が不透明。. 意見の集約プロセスを表現することで 参加住民の間で共有された建築という 関係の構図が生成してくる。 メリット:計画について合意形成の上 でできあがっているため、一番使いや すい状態となっている。 デメリット:参加者に組織化されヒエ ラルキーができているので、一般的な 住民の声が届きにくい。. 図 4 ワークショップの流れにおけるファシリテーターの目標と戦略. 人として建物に愛着を覚えることが意図されている。 小国町は、ファシリテーターは地域の階層的な集団構. セスが 3 タイプある。1つは従来の「建築家と施主」と. 造を利用し、代表者の合意形成を図ることで地域の公共. いう関係を超えず、ワークショップの役割が十分果たさ. 建築をつくっている。そこでは、地域の共有財としての. れていないため、公共建築と参加住民との関係性におい. 愛着を育むことが目指されているといえよう。 . て期待できるものは少ない。〈イベント〉型のコーディ. 6 参加型ワークショップの可能性. ネートはワークショップの場の設定や参加型の計画プロ. 計画される公共建築と参加住民との関係において、前. セスで行うワークショップの意見の中から、素材として. 提として、地区の社会構造や対象となる公共建築の違い. 拾っていくという傾向から、今後は市民社会の中で期待. はあるものの、できあがった建築自体の使いやすさや施. がもたれるものであろう。一方、 〈計画検討〉+〈イベン. 設そのものの管理運営に大きく影響するであろう愛着の. ト〉型では参加住民の間で共有された建築という構図を. 形成にも 2 つのタイプがあることが分かった。一方では. つくることから、地域の共有施設としての意識形成の傾. は公共建築とその利用者となる参加者の関係が個人的な. 向があるなど、その潜在的価値は高い。. 関わりによるものであり、他方、それは地域のものであ. このことから、公共建築の計画プロセスにおける参加型の. るという共有的な関係であった。これらの形成にはワー. ワークショップは、第一にそれ自体の効果や場が持つ意味を. クショップのコーディネートの仕方が大きく関わってく. 考え、次にそれらのワークショップを如何なる戦略をもって. る。そのコーディネートの型には全く異なる参加のプロ. コーディネートしていくかが重要となってくるといえる。. 12-4.
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