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学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 地 球 環 境 科 学 ) 石 井 悠 輔

     学位論文題名

    Recognition Properties of

    Calixarene ― Polyoxometalate Porous Crystals

(ポーラスなカリックスアレン/ヘテロポリ酸複合結晶の分子認識作用)

学位論文内容の要旨

   多孔性材料を利用した特定分子の選択的分離および吸着は、有害物質の除去や工業的な 生産効率の向上など、環境に調和した社会発展の基幹となるグリ―ンサステイナブルケミ ストリ―の観点から注目を集めている。中でも、有機物と無機物からなる複合型多孔性材 料は、それそれに固有の特性を合わせ持つのみならず、両者の間にはたらく協同効果によ る 新 し い 機 能 の 発 現 が 期 待 出 来 る こ と か ら 、 近 年 注 目 さ れ て い る 。    申請者は、ヘテロポリ酸化合物を無機ユニットに、カリックスアレン誘導体を有機ユニ ッ トにして構 築された分子性複合結晶が、 4x8A の断面を持つ―次元のマイクロ細孔を 有することを見いだした。この多孔性結晶について、様々な有機物蒸気の吸着挙動を調ぺ たところ、炭化水素、ハロメタン、ケトン、アルデヒドをはじめとする広範な有機物(ゲ スト)が、効率的に細孔内部に吸着されることが明らかになった。ここで、この吸着活性 は、カリックスアレン末端部位の構造を設計することでチュ―ニング可能であり、それを 通じて高度な選択性が発現する。例えば、炭化水素類についてはわずかな形状の違いや分 子の大きさを認識し、直鎖アルカンは効率的にそのポア内部に吸着される一方で、枝分か れアルカンに対しては、吸着活性をほとんど示さなかった。また、ほぼ同じ分子構造を持 つべンゼンとシク口ヘキサン、アルケンのシス/トランス異性体、アルカンとアルケンの 認識も可能である。吸着ポテンシャルエネルギーの検討から、上記の形状・立体特異的吸 着においては、ゲストあるいは細孔壁内のベンゼン環部分が関与する兀相互作用が重要な 役割を果たしていることが示唆された。

   また、本多孔性複合結晶は、熱的に不安定な物質をそのゲストの大きさに適した細孔径 を有する複合体に収納させることで、安定化し長期間保持できることがわかった。さらに、

二トリル、ケトン、工ステル基を有する有機ゲストの吸着においては、結晶構造の変化に ともなう色の変化が観測されたことから、センシング材料等への展開の可能性も示唆され た。

   この様に本研究では本多孔性複合結晶が、様々な有機ゲストの蒸気を効率的にその細孔 内部にとりこむことが明らかにし、揮発性有機化合物(VOC )の除去や物質生産における 精製過程などに応用できる可能性を示した。このような分離および保存機能はこれまでに な い 特 異 な も の で あ り 、 次 世 代 の 材 料 素 材 と し て 有 用 で あ る と 考 え ら れ る 。

‑ 1341

(2)

学位論文 審査の要旨 主査

副査 副査 副査

助教授 教授 教授 教授

小 西 克 明 松 田 冬 彦 嶋 津 克 明 古 月 文 志

    学 位 論 文 題 名

    Recognition Properties of

    Calixarene−Polyoxometalate Porous Crystals

( ポ ー ラ ス な カ リ ッ ク ス ア レ ン / ヘ テ ロ ポ リ 酸 複 合 結 晶 の 分 子 認 識 作 用 )

  多 孔 性 材 料 を 利 用 し た 特 定 分 子 の 選 択 的 分 離 お よ ぴ 吸 着 は 、 グ リ ー ン ケ ミ ス ト リ ー の 観 点 と 関 連 し た 工 業 的 な 生 産 効 率 の 向 上 や 有 害 物 質 の 除 去 と 関 連 し た 重 要 な 技 術 で あ る 。   申 請 者 が 見 い だ し た ヘ テ ロ ポ リ 酸(Na3PW12040 [PW] ) と カ リ ッ ク ス ア レ ン(C2)か ら な る 有 機 / 無 機 複 合 結 晶C2‑PWは 、X線 結 晶 構 造 解 析 よ り 一 次 元 の マ イ ク ロ ポ ア 構 造(4x8 A)を 有 し て い る こ と が 明 ら か に な っ た 。 様 々 な 有 機 物 蒸 気 を 用 い て 、 複 合 体 の ポ ア に 対 す る 吸 着 活 性 を 測 定 し た と こ ろ 、 炭 化 水 素 、 ハ ロ ア ル カ ン 、 カ ル ボ ニ ル 化 合 物 、 ア ル コ ー ル な ど の 広 範 な 有 機 ゲ ス ト に 対 し て 高 い 吸 着 活 性 を 示 す 一 方 で 、 親 油 性 基 を 持 た な い 水 、 お よ び ア ル ゴ ン 、 窒 素 に 対 し て は 、 吸 着 活 性 が 著 し く 低い こ とを 見い だし た。 従っ て、C2‑PW 複 合 体 の ポ ア は 、 親 油 部 と のvan der Waals的 な 相 互 作 用 を 駆 動 カ と し て 、 ゲ ス ト を 内 部 に 取 り 込 む も の と 考 え ら れ た 。 さ ら に 無 極 性 炭 化 水 素 の 吸 着 を 詳 細 に 検 討 し た と こ ろ 、 わ ず か な 形 状 の 差 異 や 分 子 の 大 き さ を 高 度 に 識 別 で き る こ と が わ か っ た 。 例 え ば 、 直 鎖 状 の へ プ タ ン お よ び2− ヘ プ テ ン に 対 す る 吸 着 活 性 は 非 常 に 大 き か っ た も の の 、 枝 分 か れ のあ る2. メ チ ル ヘ キ サ ン に 対 す る 吸 着 活 性 は ほ と ん ど 示 さ な か っ た 。 さ ら に 、 ヘ プ タ ン と2‐ ヘ プ テ ン に っ い て そ の 吸 着 ポ テ ン シ ヤ ル エ ネ ル ギ ー を 算 出 し た と こ ろ 、2ー ヘ プ テ ン の 吸 着 ポ テ ン シ ヤ ル エ ネ ル ギ ー が 大 き か っ た こ と か ら 、 ゲ ス ト の 兀 電 子 も 吸 着 活 性 に 影 響 を 与 え る こ と が 示 唆 さ れ た 。 ま た 、 鎖 状 炭 化 水 素 の み な ら ず 、 環 状 炭 化 水 素 に 対 し て も 高 い 選 択 性 を 示 し 、 例 え ば べ ン ゼ ン と シ ク ロ ヘ キ サ ン 、 お よ び キ シ レ ン 異 性 体 の 分 離 も 可 能 で あ る こ と が 明 ら か に な っ た 。

  申 請 者 は ま た 、C2‑PWの 内 壁 に カ リ ッ ク ス ア レ ン 末 端 の エ チ ル エ ス テ ル 部 位 が 配 置 さ れ て い る 点 に 着 目 し 、 エ ス テ ル 置 換 基 の 設 計 に 基 づ い た 吸 着 特 性 の 制 御 を 試 み た 。 その 結 果、

(3)

エチル基をイソプロピル基(IC3) 、ブチル基(C4) などに変換した一連の類似の複合体の 吸着活性を調べたところ、有機ユニットの構造に大きく依存することがわかった。すなわ ち、これら複合体の有機ユニット側の微細チューニングを通じて、ゲスト選択性、取込み 量を大きく変化させることが可能であることを示した。また、本複合体は不安定物質の安 定化にも効果的であり、一般的に2 量化が起こりやすいシクロペンタジエンをポア内部で 長期間安定に保存できた。申請者はまた、C2‑PW 複合体に対するケトン、ニトリル、エス テル基を有するゲストの吸着が、結晶構造の変化を誘起し、結果として複合体が色変化を 示すことを見いだした。その一方で、炭化水素、及びアルコールはそのような変化は観察 されず、官能基選択的な応答であることが明らかになった。このことは、センシング材料 へのポテンシャルを示唆するものである。

   以上申請者は、自らが見いだした複合体を用いて、有機部位のチューニングを通じた

種カのゲストに対する吸着活性の制御を実現することで、高機能な分離・保持材料として

のポテンシャルを明示した。このような材料は世界で初めてであり、申請者の業績は高く

評価される。審査員一同は、これらの成果を高く評価し、また、研究者として誠実かつ熱

心であり、大学院博士課程における研鑽や修得単位等もあわせ、申請者が博士(地球環境

科 学 ) の 学 位 を 受 け る の に 十 分 な 資 格 を 有 す る も の と 判 定 し た 。

参照

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