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殺虫剤ジノテフランの創出 学位論文内容の要旨

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 脇 田 健 夫

学 位 論 文 題 名

殺虫剤ジノテフランの創出 学位論文内容の要旨

  Imidac10pridを 代 表 化 合 物と す るネ オニ コチ ノイ ド は, ニコ チン 性 アセ チル コリ ンレ セ プタ ー (I仏ChR) に ア ゴ ニ ス ト とし て 作用 する 新規 殺虫 剤 系統 であ る, 殺 虫剤 とし ての 構造 , 作用 新 規 性 及 び 優 れ た 性 能 に よ り, 世 界中 で研 究が 行わ れ ,短 期間 で大 き く発 展し た. 構造 に おい て は , 全 て の ネ オ ニ コ チ ノ イド が ,ニ コチ ンと 同じ く 含窒 素ヘ テロ 環 を有 する とい う共 通 点が 存 在 し , そ れ を 必 須 構 造 と する 認 識が 一般 的と なっ て いた .こ のよ う な状 況下 ,本 研究 に 加わ っ た 筆 者 は ,11AChRに 対 す る内 因 性ア ゴニ スト であ り ,構 造が 大き く 異な るア セチ ルコ リ ンに 着 目 し た . そ し て 構 造 の 比 較解 析 によ り, アセ チル コ リン の構 造特 性 を基 にし た新 規ネ オ ニコ チ ノ イド 創出 の可 能性 を 見出 し,1992年よ り 探索 研究 を開 始 した .

  hlidaclopI哇d,ニ コチ ン及 び アセ チル コリ ンの 間 には ,1)分 子内 にハ イドロジェンアクセプ タ ー サ イト (RAサイ ト) 及 びカ チオ ンサ イ トを 有す る,2) その 両サ イ トの 間隔 が等 しい , とい う 構 造 上 の 共 通 点 が 存 在 す る. こ れら を基 に,HAサ イ トを 酸素 原子 に 定め ,そ の最 適位 置 をカ チ オ ン サ イ ト よ ル メ チ レ ン ユ ニ ッ ト2(n 2) 及 び3(n 3) を挟 んだ 所と 推定 し ,化 合物1を デ ザ イン した (図1) .

プロト ン化 ニ コ チ ン

C

アセチ ッ災ハ牽→ゆり

Imidacloprid

H    1  R = H, alkyl, acyl        n  2,3

´ ′宀 ` ハイ ド ロジ ェン

` 一 (HAj‑イ駕ーサイト

□ カチ オ ンサ イ ト

図1ア セ チ ル コ リ ン 及 びimidaclopridの 構 造 特 性 の 解 析 と 化 合 物1の デ ザ イ ン

  合 成 し た1の 殺 虫 活 性 は , 何 れ もimidaclopridの1/100以 下 で あ っ た . し か し酸 素原 子位 置 に よ る 活 性 比 較 を 行 っ た 結 果 ,n=3の 化 合 物 群 の 活 性 が ,n=2の も の の 活 性 を 上 回 る こ と が 判 明 した .こ の結 果を 基 に,3‑methoxypropyl体2を選抜した(図2),次に酸 素原子位置の固定,

酸 素 孤 立 電 子 対 ベ ク ト ル の 変 化 な ど を 目 的 と し た 環 化 体へ の変 換を 実 施し ,2の10倍の 活性 を     ―308―

(2)

有 する(tetrah,ydro―3‐furyl)methyl体3を 得た.次にこの置換基を固 定し,既存ネオニコチノ イ ド 骨 格 を 参 考 に イ ミ ダ ゾ リ ジ ン 環 の 変 換 を 実施 する こと に より ,更 に3の10倍以 上の 活 性を 有 する 化合 物( 垂7)を 得た , この 中か ら, 圃 場に おい て安 定し て 高い 殺虫 効果 を示 し たジノテ フ ラン (4,d血otefuran) を開 発化 合 物に 選抜 した .

    O  I .   /ー1

cInNlNH ヤ人リ、ーノO ‥

ImidaclopridN 丶 N02 アセ チ ′ レ コ リ ン   2X ト 〔      |

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40 く一・ ℃   ¨←叺ヤ¨

    3   心`N02

5mH ・   ;&為 x 丶N02

図2 アセチルコリンからdinote ん ran (4 )に至る経緯

  次 に 合 成 展 開 で 得 た4‑7の 類 縁 化 合 物 に 関 し て , 構 造及 び殺 虫活 性 の関 連性 をま とめ た (図 3).エ ー テ ル 環 上 置 換 基 の 位 置 に よ り 極 端 な 活 性 差 が 観ら れた が, 計 算に よる とコ ンホ メ ーシ ヨ ン に 与 え る 影 響 は な く , レセ プ ター への 立体 反 発が 活性 低下 の要 因 と推 定し た, グア ニ ジン 窒 素 上 の 置 換 基 に 関 し て は ,ア シ ル基 導入 によ る 活性 変化 は小 さく , 虫体 内で 脱離 して 作 用を 示 す も の と 推 測 さ れ た .

R1: H, Ac, Bz, COOMe > Me >Et >Pr R2: H, Ac, Bz, COOMe > Me > Et R3: Me > Et> H

置換基(R, R1R2及ぴR3)の組み合わせにより約60種の化合物を調製し,活性を検定した

  作 用 性 に 関 し て は , 幾 っ か の 大 学 で行 われ た 研究 より ,dinotefur anのnAChRsに対 す るア ゴ ニ ス ト 作 用 が 確 認 さ れ た . し か し 他 のネ オニ コ チノ イド と比 べ, 殺 虫活 性及 び電 気生 理 学的 試 験 は 同 等 の 活 性 を 示 し た が , バ イ ン ディ ング 試 験で は極 めて 低い 活 性を 示し た. この 結 果を 基 に ,d:inotefuranは , 他 の ネ オ ニ コ チノ イド と は異 なる 結合 部位 を 有す るこ とが 示唆 さ れた .   ア セ チ ル コ リ ン を り ー ド と し た 合 成展 開に よ り, 含窒 素ヘ テロ 環 を環 状エ ーテ ル基 に 変換 し た 新 規 ネ オ ニ コチ ノ イド ,dinotefuran (4)を 見 出し た. 作用 的に も 異な った 性質 を示 し た本 剤 は , 構 造 , 作 用 性 に お い て ネ オ ニ コ チ ノ イ ド 系 殺 虫 剤 の 幅 を 広 げ る 役 割 を 果 た し た . 本剤 は 2002年 の 日本 にお ける 登録 を 皮切 りに ,米 国 及び アジ ァ諸 国と , 海外 での 登録 を拡 大している.

日 本 で は , 長 期 残 効 型 育 苗 箱 処 理 剤 ,カ メム シ 用粒 剤な どの 種々 の 製剤 が開 発さ れて お り. 農 業 の省 力 化に 貢献 する とこ ろ も大 きく ,出 荷 量は 急増 して いる ,

    ー309―

O N       l k       /

     

   E    D       u    Oo    R   

(3)

学位論文審査の要旨

主査   教授   田原哲士

副査   教授   尾添嘉久(島根大学生物資源科学部)

副査   教授   生方   信 副査   講師   福士幸治

学 位 論 文 題 名

殺虫剤ジノテフランの創出

  本 論 文 は 、127頁 の 和 文 論 文 で49図 、22表 を 含 み 、6章 か ら な る 。 他 に 参 考 論 文3編 が 付 さ れ て い る 。

  Imidaclopridを 代 表 化 合 物 と す る ネ オ ニ コ チ ノ イ ド は 、 こ コ チ ン 陸 ア セ チ ル コ ル ン レ セ プ タ ー(nAChR)に ア ゴ ニ ス ト と し て 作 用 す る 一 連 の 化 合 物 で あ る 。 殺 虫 剤 と し て の 構 造 な ら び に 作 用 の 新 規 性 お よ び 優 れ た 性 能 の 故 に 、 世 界 中 で 研 究 が 行 わ れ 短 期 間 で 大 き く 発 展 し た 。 構 造 に お い て は 、 全 て の ネ オ ニ コ チ ノ イ ド が 、 二 コ チ ン と 同 じ く 含 窒 素 ヘ テ 口 環 を 有 し 、 そ れ を 必 須 構 造 と す る 認 識 が 一 般 的 と な っ て い た 。 こ の よ う な 状 況 下 に 、 本 研 究 に 参 画 し た 著 者 は 、nAChRに 対 す る 内 因 性 ア ゴ ニ ス ト で あ り 、 構 造 が 大 き く 異 な る ア セ チ ル コ リ ン に 着 目 し た 。 構 造 の 比 較 解 析 に よ り 、 ア セ チ ル コ リ ン の 構 造 特 性 を 基 に し た 新 規 ネ オ ニ コ チ ノ イ ド 創 出 の 可 能 性 を 見 出 し 、1992年 よ り 探 索 研 究 を 開 始 し て い る 。   Imidacloprid、 二 コ チ ン お よ び ア セ チ ル コ リ ン に は 、1) 分 子 内 に ハ イ ド 口 ジ ェ ン ア ク セ プ タ ー サ イ ト(HAサ イ ト ) お よ び カ チ オ ン サ イ ト が 有 り 、2) そ の 両 サ イ ト の 間 隔 が 等 し い 、 と い う 構 造 上 の 共 通 点 が 存 在 す る 。 こ れ ら を 基 に 、 著 者 はHAサ イ ト を 酸 素 原 子 に 定 め 、 そ の 最 適 位 置 を カ チ オ ン サ イ ト よ ル メ チ レ ン ユ ニ ッ ト2(n=2) お よ び3(n=3) を 挟 ん だ と こ ろ と 推 定 し 、 化 合 物1を デ ザ イ ン し た ( 図1) °

プロ トン化 ニ コ チ ン

    1← 一一

ア セチ ノレコ ッ曳ハ魍

C

Im i da cl op ri d   fロ       ′       ′

      丶       丶

→R(0lO{CH2)圧  1R〓H,al|くyI.acyl  匚コカチオンサイト     n―2.3

  `礎:

図1アセチルコリン及びimidaclopridの構造特性の解析と化合物1のデザイン

合 成 し た1の 殺 虫 活 性 は 、 何 れ もimidaclopridの1/100以 下 で あ っ た が 、 酸 素 原 子 位 置 に     ェ

よ る 活 性 比 較 を 行 っ た 結 果 、n=3の 化 合 物 群 の 活 性 が 、n=2の も の の 活 性 を 上 回 る こ と を 見 い だ し た 。 こ の 結 果 を 基 に 、3‑methoxypropyl体2を 選 抜 し た ( 図2) 。 次 に 酸 素 原 子

310

(4)

の位置の固定、酸素孤立電子対ベクトルの変化などを目的とした環化体への変換を実施し、

2 の10 倍の活性を有する(tetrahydro‑3 ーfuryl)methyl 体3 を得た。次にこの置換基を固定し、

既 存 ネ オ ニ コ チ ノ イ ド骨 格を 参考に イミ ダゾ リジ ン環 の変 換を 実施 し、 3 の10 倍以 上の 活性 を有 する 化合 物(4‑7) を 得た 。こ の中 から 、圃 場において安定して高い殺虫効果を示 したジノテフラン(4 ,dinotefuran) を開発化合物に選抜した。

    O   |.

CInNH +ルoM \   ーノ o

'Jb:nidaclopddN 丶N02   アセチルコリン

― 竣 : ←

4 ・ o く 一 N ) o : 慧   5 ( XICH )    : CH )

図2ア セ チ ル コ リ ン か らdinotefuran (4)に 至 る 経 緯

   次に 合成 展開 で得 た4‑7 の類 縁化 合物 に関して、構造および殺虫活性の関連性をまとめ た (図 3 )。 エー テル 環上 置換 基の 位置 により極端な活性差が見られたが、計算によると コ ンホ メー ションに与える影響はなく、レセプターへの立体反発が活性低下の要因と推定 している。グアニジン窒素上の置換基に関しては、アシル基導入による活性変化は小さく、

虫体内で脱離して作用を示すものと推測した。

R1: H, Ac, Bz, COOMe > Me >Et >Pr R2: H, Ac, Bz, COOMe > Me > Et R3: Me > Et > H    .

置換基弧Rl,R2およびR3)の組み舗コせにより約60種aヒ合物を調製し、活性を検定した。

作用 性に 関し ては 、公 表さ れた 研究 報告 の内容 を総 合的 に考 察し てい る。殺虫性および 電 気 生 理 学 的 試 験に おい て他の ネオ ニコ チノ イド と同 等の 活性 を示 すdinotefuran は、

nAChR に 対 す る ア ゴニ スト 作用 を有 する が、 バイ ンデ ィング 試験 では 極め て低 い活 性し か 示 さ な い こ と から 、本 化合物 に対 する nAChR の 結合 部位は 、他 のネ オニ コチ ノイ ドに 対す る部 位と は異 なる もの であ ると 推察 してい る。

   以上のように、内因性アゴニストであるアセチルコリンをりードとした合成展開により、

優 れた 殺虫 活性を有するネオニコチノイド殺虫剤ジノテフランの創成に成功している。し か も、 本化 合物は、従来のネオニコチノイドの構造上の特徴であると同時に構造変換の制 約 とも 考え られていた含窒素ヘテ口環の部分構造をもはや有していないという点で、特筆 に 値す るも のである。構造および作用性において、ネオニコチノイド系殺虫剤に新機軸を 導 入す るこ ととなった本研究は、基礎および応用面でも極めて高く評価されている。本剤 は 、2002 年 の日′本における登録を皮切りに、米国及びアジア諸国でも登録を拡大してい る 。さ らに 、日本では、長期残効型育苗箱処理剤、カメムシ用粒剤などの種々の製剤が開

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(5)

発され てお り、 農業の省力化に貢献するところも大きく,生産量は急増している。

   よって、審査員一同は、脇田健夫が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有す

るものと認めた。

参照

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