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密教文化 Vol. 1981 No. 137 002上田 霊城「新安流成立過程の研究 (下) P15-36」

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(下

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五、 関 東 時 代 の 浄 厳 厳 密 に は 元 禄 四 年 ( 一 六 九 一 ) 霊 雲 寺 を 開 創 し て 住 持 と な っ た 以 後 を 関 東 時 代 と す べ き で、 そ れ 以 前 の 根 本 道 場 は 河 内 教 興 寺 で あ る が、 貞 享 二 年 ( 一 六 八 五 ) 江 戸 に 巡 錫 し て 以 来、 貞 享 四 年 十 月 か ら 元 禄 二 年 正 月 ま で の 一 年 四 ケ 月 ば か り 帰 阪 し て い た 期 間 を 除 い て は、 す べ て 江 戸 を 中 心 に 摂 化 が な さ れ て い る の で、 貞 享 二 年 以 降 を 関 東 時 代 と し て よ い と 考 え る。 こ の 時 期 に 浄 厳 は、 新 安 の 軌 則 を 確 立 し 聖 教 を 整 備 す る の で あ る。 (1) 新 安 の 四 度 軌 則 広 沢 諸 流、 中 院 流 は、 十 八 道 に は 大 師 作 ﹁ 十 入 道 念 諦 次 第 ﹂ を 用 い、 大 日 を 本 尊 と し て 行 ず る。 小 野 三 流 は 石 山 淳 祐 作 ﹁ 聖 如 意 輪 観 自 在 菩 薩 念 諦 次 第 ﹂ を 用 い、 醍 醐 三 流 は 延 命 院 元 呆 作 ﹁ 聖 如 意 輪 念 諦 次 第 ﹂ を 用 い、 共 に 如 意 輪 を 本 尊 と し て 修 す る。 西 院 流 入 結 の 内、 宏 教 ( 二 入 四-一 二 五 五 ) の ﹁ 続 行 法 用 心 ム ﹂ に ﹁ 十 入 道 ト 云 ハ 蘇 悉 地 ノ 行 法 ナ リ。 蘇 悉 地 ノ 行 法 ハ 両 部 ノ 教 理 ヲ 兼 タ リ。 金 界 ノ 九 会 ト 胎 蔵 ノ 九 尊 ト 此 二 九 ヲ ス ヘ タ レ ハ 十 八 道 ト 名 タ ル ナ リ。 ( 朱 註 ) カ ク バ ン 上 人 モ 如 レ 此 令 レ 存 二 彼 御 説 一 也 云 云 但 又 法 浄 院 ハ 此 外 二 有 二 別 義 殉 十 入 会 ( 1 ) 諭 伽 惣 行 ノ 略 法 也 云 云 ﹂ と 口 訣 す る。 宥 快 記 興 雅 細 註 ﹁ 十 入 道 次 第 安 ﹂ に ﹁ 十 入 道 ト ハ 金 界 九 会 ノ 胎 蔵 九 尊 ヲ 集 メ タ ル 二 九 十 入 ノ 法 也。 是 レ 両 部 不 二 ノ 義 也。 或 ハ 十 八 道 ト ハ 十 入 会 ノ 総 行 也。 十 八 会 ハ 金 界 ノ 説 会 ナ レ ト 新 安 流 成 立 過 程 の 研 究 (下 )

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密 教 文 化 モ 総 メ 十 入 会 二 大 日 経 ヲ モ 摂 ス ル 義 ア ル 故 二 両 部 不 二 ノ 総 行 (2) 也 云 云 ﹂ と 述 べ る の も 西 院 の 相 伝 と 全 同 で あ る。 頼 玲 ( 一 二 二 六-一 三 〇 四 ) の ﹁ 十 八 道 口 決 ﹂ に ﹁ 問 十 八 (3) 道 名 示 二 何 義 一乎。 答 御 口 云 有 二 十 入 契 印 一故 也 ﹂ と 述 べ、 動 潮 ( 一 七 〇 九-︼ 七 九 五 ) の ﹁ 十 入 道 次 第 手 鑑 ﹂ に は、 上 の 頼 愉 の 口 決 を 引 い た 後 に ﹁ 播 抄 云 御 口 決 云 儀 軌 説 二 十 八 契 印 ﹁ ( 中 ニ ハ ト ニ ハ ス ル ノ ヲ ニ タ リ ニ 略 ) 但 儀 軌 錐 レ 説 二 十 入 一次 第 加 二 用 別 印 明 等 一故 数 過 二 十 八 一錐 ト ノ ハ テ ノ ニ (4) レ 然 今 十 入 道 名 字 付 二 儀 軌 説 一名 レ 之 也 ﹂ と、 教 舜 ( 十 三 世 紀 ) の 播 抄 を 引 い て い る。 共 に 三 宝 院 流 の 口 伝 で あ る。 即 ち 東 密 諸 流 に は、 十 入 道 と は 十 入 契 印 を 骨 子 と す る 行 軌 で あ り、 そ れ は 金 胎 何 れ の 尊 に も 通 用 で き る 不 二 の 行 軌 だ と 相 伝 し て い る の で あ る。 十 八 契 印 の 儀 軌 ( 大 正 蔵 No. 九 〇 〇 ) は、 大 正 蔵 経 で は 恵 果 造 と な っ て い る が、 古 来、 恵 果 作、 大 師 作、 或 は 恵 果 口 大 師 (5) 記 な ど 諸 説 が あ る。 既 に 先 学 の ご 指 摘 通 り、 こ の 軌 が 金 剛 智 訳 如 意 輪 諭 伽 法 要 ( 大 正 蔵 No. 一 〇 入 七 ) と 不 空 訳 如 意 輪 念 諦 儀 軌 ( 大 正 蔵 No. 一 ○ 入 五 ) を 合 繰 し て 作 ら れ た こ と は 明 白 で あ る。 即 ち 十 八 契 印 の 冒 頭 よ り 浄 三 業 の 密 言 ま で は 諭 伽 法 要 (6) と 全 く 同 文、 浄 三 業 の 次 よ り 終 り の 普 供 養 の 真 言 ま で は 念 諦 (7) 儀 軌 と 全 文 同 じ で あ る。 つ ま り 十 八 契 印 の 軌 は、 右 二 軌 よ り 借 用 の 文 以 外 は 一 言 も 加 え て い な い。 大 師 作 ﹁ 十 入 道 念 諦 次 第 ﹂ ( 大 師 全 集 和 本 第 七 ) は 不 空 訳 無 量 寿 軌 ( 大 正 蔵 No. 九 三 〇 ) に 依 っ て 編 せ ら れ て い る と 東 密 で は 相 伝 す る。 唯 し 印 明 に 少 異 が あ る。 軌 は 大 虚 空 蔵 印 明 の 次 に 如 来 拳 印 を 置 く が、 次 第 は 先 づ 拳 印 次 に 虚 空 蔵 で あ る。 こ れ は 十 入 契 印 の 順 序 に ょ つ た も の で あ る。 但 し 契 印 に は 如 来 拳 印 は 説 か な い。 又、 辟 除 は、 軌 に は 馬 頭 を 用 い る が 次 第 は 降 三 世 を 用 い る。 こ れ は、 軌 は 無 量 寿 を 本 尊 と す る 行 軌 で あ る か ら 蓮 華 部 の 馬 頭 を 用 い る が、 次 第 は 金 界 大 日 を 本 尊 と す る 行 軌 で あ る か ら、 金 界 の 行 軌 で あ る 蓮 花 部 心 軌 に 依 っ て 降 三 世 を 用 い る の で あ る。 又、 軌 と 次 第 で は 閥 伽 の 真 言 が 異 (8) な る。 次 第 に 用 い ら れ て い る ﹁ 庵 摩 折 路 螂 識 畔 ﹂ は 仁 王 軌 に 出 て い る。 こ の よ う な 少 異 は あ っ て も、 大 師 の 次 第 が 無 量 寿 軌 に 依 っ て 編 せ ら れ た こ と は 間 違 い な い。 石 山 の 十 入 道 次 第 は、 ﹁ 十 入 契 印 ﹂ 及 不 空 の ﹁ 如 意 輪 念 諦 儀 軌 ﹂ に 依 っ て 編 さ れ、 行 法 の 便 宜 の た め に、 表 宮 神 分 そ の 他 が 後 に 加 用 さ れ た。 延 命 院 の 十 入 道 次 第 は ﹁ 十 八 契 印 ﹂ ﹁無量寿軌﹂ ﹁軍茶利軌﹂ に 依 っ て 編 ま れ て い る。

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こ の よ う に、 十 入 道 の 骨 子 を な す 十 八 の 印 言 は、 十 八 契 印、 如 意 輪 軌、 無 量 寿 軌、 不 空 訳 軍 茶 利 軌 ( 大 正 蔵 No. 一 二 一 一 ) を 始 め、 不 空 訳 阿 閤 軌 ( 大 正 蔵No. 九 二 一 ) に 説 か れ て い る。 (9) こ れ ら の 諸 軌 は、 宝 冊 砂 第 三 に 指 摘 す る 如 く、 大 師 の 三 学 録 で は 金 剛 頂 部 に 収 録 さ れ て い る。 従 っ て も し こ の ま ま な ら、 十 入 道 は 金 剛 頂 系 の 行 軌 だ と 云 え る か も し れ な い の だ が、 善 無 畏 訳 蘇 悉 地 供 養 法 ( 大 正 蔵No. 入 九 四 ) も 十 入 契 印 を 骨 子 と し た 構 成 を 持 っ て い る の で、 十 入 道 の 摂 属 に つ い て 古 来 異 説 が 出 て く る。 台 密 で は 円 仁 以 来、 胎 金 蘇 三 部 の 大 経 を 立 て、 一 切 の 密 軌 を 三 部 に 摂 属 せ し め、 蘇 悉 地 経 を 以 て 両 部 不 二 の 秘 経 と 重 視 す る。 善 無 畏 訳 の 蘇 悉 地 経 ( 大 正 蔵No. 八 九 三 ) は 修 行 者 の 悉 地 成 就 の 法 則 を 説 い た 経 典 で、 三 種 法 と 三 部 各 別 の 印 言 を 挙 げ 三 品 の 悉 地 を 説 く。 蘇 悉 地 供 養 法 は、 こ の 経 に 基 い て 供 養 持 謂 の 次 第 を 述 べ た も の で あ る。 台 密 で は 胎 金 蘇 三 部 の 大 法 を 立 て、 本 軌 が 胎 に 摂 属 す る 諸 尊 は 胎 蔵 の 行 軌 に よ り、 金 界 に 摂 属 す る 尊 は 金 軌 に よ り、 蘇 悉 地 に 属 す る 尊 は 蘇 の 軌 則 に よ っ て 修 す る。 阿 娑 縛 抄 第 三 十 四 に 出 す ﹁ 蘇 悉 地 大 法 ﹂ は、 右 の 無 畏 訳 ・ 蘇 悉 地 供 養 法 を 本 軌 と し て 編 せ ら れ て い る。 長 宴 ( 一 〇 一 六-一 〇 八 一 ) の ﹁ 四 ノ ニ ニ ハ ニ ハ 十 帖 決 ﹂ に ﹁ 師 日。 三 部 大 法 各 有 二 別 法 殉 台 随 行。 金 三 摩 地。 ニ ハ (10 ) 蘇 十 入 契 也。 是 則 三 部 別 法 也 云 云 ﹂ と 云 い、 蘇 悉 地 大 法 の 別 法 と し て 十 入 道 を 立 て る。 阿 娑 縛 抄 第 三 十 七 に 出 す ﹁ 十 八 道 次 第 ﹂ は、 東 密 の 十 入 道 と 同 じ く 十 入 契 印 が 骨 子 と な り、 そ の 前 後 に 前 方 便、 加 持 香 水 乃 至 解 界、 奉 送 等 の 印 明 が 付 加 さ れ て 行 軌 を 構 成 し て い る。 そ の 付 加 の 印 明 は す べ て 蘇 悉 地 大 法 よ り 抄 出 さ れ て い る の で、 こ の 点 で 東 密 の 行 軌 と 違 っ て く ハ ノ (11 ) る が ﹁ 十 八 道 是 蘇 悉 地 略 行 也 ﹂ と 云 わ れ る ゆ え ん で あ る。 十 八 道 は 蘇 悉 地 不 二 の 略 行 だ と い う の は、 台 密 の 三 部 所 立 か ら 出 て き た 帰 結 で あ る。 そ こ で 最 初 に 考 察 し た 西 院 流 の 口 決 で あ る ﹁ 十 入 道 ト 云 ハ 蘇 悉 地 ノ 行 法 ナ リ、 蘇 悉 地 ノ 行 法 ハ 両 部 ノ 教 理 ヲ 兼 ネ タ リ ﹂ と い う の は、 台 密 が 三 部 を 所 立 し て 以 後、 そ の 影 響 が 東 密 に 及 ん だ 結 果 で は な い か と 思 わ れ る。 東 密 は 元 来 両 部 二 而 不 二 と 立 て、 蘇 悉 地 経 は 大 師 の 三 学 録 で は 律 部 の 摂 で あ る。 東 密 は 蘇 悉 地 を 別 立 は し な い が、 両 部 不 二 の 境 を 妙 成 就 (蘇 悉 地 ) だ と し、 こ れ を 金 剛 拳 菩 薩 の 印 明 で 標 幟 す る。 従 っ て 宥 快 が、 十 入 道 は 両 部 不 二 の 義 だ と 口 決 す る の も や は り 西 院 ひ い 新 安 流 成 立 過 程 の 研 究 ( 下 )

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密 教 文 化 て は 台 密 の 影 響 下 の 発 言 で あ る。 こ の よ う な 相 伝 に 対 し て、 東 寺 の 呆 宝 ( 一 三 〇 六-一 三 六 二 ) は、 十 入 道 は 金 界 の 別 行 法 則 だ と 主 張 す る。 宝 冊 砂 第 三 に は ﹁ 十 入 道 の 印 明 は 多 く 蘇 悉 地 経 軌 に 雑 る 故 に、 十 八 契 印 を 以 て 蘇 悉 地 の 略 行 と 云 う は 謂 な き に あ ら ざ る か。 但 し 自 門 の 所 伝 は 必 ず し も 蘇 悉 地 の 略 行 と 定 む べ か ら ず。 金 剛 頂 の 別 (12) 行 と 称 す べ き か。 其 の 故 は ﹂ ( 原 漢 文 ) 以 下、 十 入 道 印 言 所 載 の 無 量 寿 軌 等 の 諸 軌 は 何 れ も 大 師 三 学 録 に は 金 剛 頂 部 に 録 す る こ と を 述 べ、 更 に、 浄 三 業 と 摩 尼 供 養 の 印 言 は 蘇 悉 地 軌 に は 説 か な い が、 無 量 寿 軌 と 大 輪 金 剛 修 行 悉 地 成 就 法 に 説 か れ て い る。 こ れ ら の 軌 は 皆 金 剛 頂 部 で あ る と 論 証 す る。 し か し、 蘇 悉 地 供 養 法 に は、 大 虚 空 蔵 ( 果 宝 の 云 う 摩 尼 供 養 ) を 除 く 十 八 契 印 軌 所 説 の 印 言 が 骨 子 と な っ て い る こ と は (13) 事 実 で あ る。 又、 東 密 で は 蘇 悉 地 を 別 立 し な い か ら、 両 部 の 中 に は 胎 蔵 部 の 摂 と す る。 果 宝 の 宝 冊 砂 第 三 に は ﹁ 蘇 悉 地 経 為 胎 蔵 部 摂 事 ﹂ の 一 条 を も う け ﹁ 此 経 は 五 供 の 印 明 を 説 き 三 部 の 配 立 を 作 す 故 也 ( 割 註・ 胎 蔵 は 五 供 を 説 き 金 界 は 八 供 を 説 く。 胎 蔵 (14) は 三 部 を 説 き 金 界 は 五 部 を 説 く。 ) ﹂ ( 原 漢 文 ) と 述 べ、 更 に 安 然 の 教 時 義、 長 宴 の 四 十 帖 決 な ど を 引 い て 論 証 し て い る。 従 っ て 蘇 悉 地 の 略 行 で あ る 十 入 道 は、 胎 蔵 部 の 摂 で は な い か と い う 疑 問 が 早 く よ り 起 っ て い る。 即 ち、 栄 海 ( 一 二 七 入-一 三 四 七 ) の 撮 避 羅 砂 巻 十 六 に は ﹁ 問 う。 天 台 の 安 然 は 蘇 悉 地 を 以 て 胎 蔵 の 細 行 と 云 う、 東 寺 一 流 は 之 を 用 う べ き か。 答 う。 一 義 に 云 う、 偏 に 胎 蔵 の 細 行 に あ ら ず 両 部 の 軌 則 に 通 ず べ き 也 ( 中 略 ) 疑 て 云 う。 三 部 五 部 は 両 部 配 立 の 異 也。 五 供 ( 供 力 ) 入 供 は 又 両 部 の 行 義 也。 而 も 蘇 悉 地 経 は 尊 ら 三 部 五 部 等 を 説 ノ く 事、 更 に 金 界 軌 則 に あ ら ざ る か。 何 ぞ 両 部 に 通 ず と 云 わ ん ( 15 ) や ﹂ ( 原 漢 文 ) と 問 い、 三 部 は 又、 金 界 の 配 立 で も あ る こ と、 十 入 道 は 蘇 悉 地 の 略 行 で あ る が、 そ の 十 入 印 言 所 説 の 諸 軌 を 大 師 の 三 学 録 は 金 界 に 摂 し て い る 故 に、 偏 え に 胎 蔵 の 摂 と も 云 え な い と い う 問 答 を し て い る。 栄 海 は、 十 入 道 を 胎 と も 金 と も 決 し か ね て、 両 部 通 用 の 軌 則 だ と 結 論 し た よ う で あ る。 十 入 道 は、 不 空 以 後 の 密 教 に お け る 胎 金 合 繰 の 傾 向 の 一 つ (16) の 表 わ れ で は な い か と い う 推 論 が あ る が、 不 空 以 後 と 云 う よ り は む し ろ、 善 無 畏 が 蘇 悉 地 経 を 訳 出 す る 以 前 か ら、 賓 客 送 迎 の イ ン ド の 俗 法 を 模 し た 諸 尊 供 養 の 通 用 軌 則 が 用 い ら れ て い た の で は あ る ま い か。 蘇 悉 地 経 巻 中 に ﹁ 諸 部 の 諸 事 に 障 を

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(17) 為 す 者 有 ら ば、 甘 露 軍 茶 利 の 法 に 依 て 之 を 遣 除 す べ し ﹂ と あ り、 軍 茶 利 軌 の 既 存 を 推 測 で き る と す れ ば、 そ の 軌 中 に も 先 述 の 如 く 十 八 契 印 が 説 か れ て い る。 又、 蘇 悉 地 軌 の 骨 子 と な っ て い る 十 八 印 言 は、 実 は 蘇 悉 地 経 に は、 三 部 三 昧 耶 と 金 剛 (18) 楓、 金 剛 矯 の 印 言 以 外 は 出 て こ な い。 密 教 大 辞 典 に は、 蘇 悉 地 軌 に つ い て ﹁ 古 来 善 無 畏 訳 と 称 す れ ど も 開 元 貞 元 二 録 に こ れ を 載 せ ず、 恐 ら く は 本 経 の 意 に よ り て 無 畏 自 ら こ れ を 撰 し て 弟 子 に 授 け し も の な ら ん ﹂ と 解 説 し て い る。 そ こ で、 善 無 畏 が 経 翻 訳 の 後 に、 経 の 三 部 各 別 の 意 趣 に 基 き な が ら、 当 時 既 に 用 い ら れ て い た 十 八 印 言 を 骨 子 と し た 諸 尊 通 用 の 軌 則 を 使 っ て、 蘇 悉 地 供 養 法 三 巻 を 撰 出 し た の で は な か ろ う か。 慧 果 作 と 云 わ れ る 十 八 契 印 軌 も 又、 諸 尊 通 用 の 軌 則 と し て 先 例 に 習 っ た も の で あ ろ う し、 大 師 が 両 界 の 通 用 軌 則 と し て 十 八 道 を 用 い ら れ た の も、 中 国 の 先 例 に 随 わ れ た も の で あ る。 こ う 考 え る と、 十 八 道 を 蘇 悉 地 の 略 行 と し 或 は 金 界 の 別 行 だ と し 或 は 両 部 不 二 の 軌 則 だ と す る 東 台 両 密 の 相 承 説 は 何 れ も 首 肯 で き な い が、 し か し、 諸 尊 通 用 の 軌 則 と し て 金 胎 両 曼 茶 羅 の 別 尊 を 供 養 す る の に 用 い る こ と は 当 を 得 て い る の で あ る。 所 が、 浄 厳 は 元 禄 四 年 に ﹁ 大 日 経 随 行 一 尊 供 養 念 諦 儀 ﹂ 一 ノ ス ル ニ ノ 帖 を 撰 し そ の 奥 識 に 次 の 如 く 述 べ た。 ﹁ 倭 国 古 風 行 二 用 一 尊 諭 ヲ ォ ホ ム ネ ル ヒ ノ ニ ニ ニ ハ ニ リ ノ 伽 一率 由 二 十 八 契 印 及 金 剛 界 広 法 一。然 支 那 天 竺 別 有 二 胎 蔵 一 尊 ノ シ ニ ル カ ニ ハ マ レ ナ リ ル コ ト ニ ス シ ム ト テ ニ ソ ニ 随 行 経 軌 一如 二 上 所 ワ 挙。 吾 朝 少 レ 用 誠 為 レ 可 レ 惜。 餅 レ 栴 為 二 二 ノ ス ノ ヲ カ ノ ラ シ ノ ニ ン 三 子 一抽 二 出 其 要 一。 他 日 吾 門 弟 子 等 若 於 二 大 悲 胎 蔵 都 会 壇 一得 二 持 ヲ ノ セ ン ニ ハ ノ ヲ ス レ ノ ニ ラ ハ チ ノ ヘ テ ク ヅ ハ ミ ヲ 明 潅 頂 一 之 者 行 二 其 一 尊 一 必 依 二 此 軌 一。 然 乃 二 界 略 軌 並 レ 鑛 而 ハ セ ノ テ チ マ タ ヲ ラ ン ニ ン ヤ ニ ノ ヘ テ ヲ リ ニ 馳 別 尊 行 儀 分 レ 岐 而 興。 量 非 二 護 法 之 一 助 一耶。 故 矢 二 鄙 意 一狼 ス ひ ノ リ ニ フ コ ト ナ リ ニ ホ シ ヤ チ ル ニ ノ 書 二 其 尾 一云 爾。 岩 元 禄 第 四 龍 集 二 辛 未 一中 冬 之 吉。 武 都 湯 嶋 霊 ノ ノ ス ノ ニ(19) 雲 草 創 沙 門 釈 浄 厳 書 二 宝 林 之 妙 極 堂 こ 爾 来 新 安 で は、 受 明 胎 蔵 壇 に 得 仏 し た 一 尊 に 就 て 玲 伽 を 修 す る に は 此 の 次 第 を 用 い、 金 界 壇 に 得 仏 の 一 尊 に 就 て 十 八 道 を 修 す る に は、 元 禄 二 年 浄 厳 作 ﹁ 随 行 一 尊 供 養 念 諦 要 記 ﹂ ( 諸 流 の 十 八 道 と 同 じ 構 成 の 軌 則 で あ る ) を 用 い る こ と と 定 め て 両 界 を 別 立 し、 十 八 道 の 称 を 用 い な い で、 胎 蔵 一 尊 法 ( 或 は 胎 蔵 略 行 法 ・ 胎 蔵 随 行 法 )、 金 界 一 尊 法 と 称 す る。 こ の よ う な 浄 厳 の 発 想 は、 明 ら か に 果 宝 の 宝 冊 砂 や 台 密 の 軌 則 に あ る と 思 わ れ る。 宝 冊 砂 に は 先 述 の 如 く、 十 八 道 は 金 界 の 別 行 法 則 だ と 断 じ て い る。 そ こ で 浄 厳 は 十 八 道 立 の 構 成 を 持 つ 一 尊 法 を 金 界 諸 尊 用 に 当 て た。 す る と 胎 蔵 諸 尊 用 の 軌 則 が 別 に 要 請 さ れ る。 台 密 で は、 金 界 大 法 の 別 法 と し て 三 摩 新 安 流 成 立 過 程 の 研 究 ( 下 )

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密 教 文 化 地 法 を 用 い、 胎 蔵 大 法 の 別 法 と し て 随 行 法 を 用 い る。 ﹁ 随 行 法 と は 此 題 は 大 日 経 第 七 巻 に 名 く べ し。 謂 く 大 目 文 殊 観 音 等 (20) 何 の 尊 を も 随 て 行 ず る 儀 式 也 ﹂ ( 原 漢 文 ) と 云 う。 阿 娑 縛 抄 第 二 十 四 に は、 随 行 法 所 依 の 経 軌 と し て、 大 目 経 巻 七、 大 毘 盧 遮 那 要 略 念 諦 経、 大 目 経 持 諦 次 第 儀、 大 砒 盧 遮 那 経 随 行 儀 軌、 七 支 念 踊 随 行 法、 五 支 念 諦 法 等 を 列 す る が、 こ れ ら は 何 れ も 浄 厳 が 胎 蔵 随 行 法 作 製 の 所 依 と し た 経 軌 で あ る。 浄 厳 の 胎 蔵 随 行 法 は、 大 日 経 巻 第 七 供 養 次 第 法 の 中 の 一 ( 21 ) 二 三 品 に 依 て 構 成 さ れ、 大 日 経 持 諦 次 第 儀 軌 ( 大 正 蔵 No. 入 六 〇 ) の 文 を 以 て 補 い、 五 供 養 の 観 想 文 は、 軍 茶 利 軌、 時 処 軌、 観 智 軌 の 文 を 用 い て い る。 又、 加 持 香 水、 表 白 等、 本 軌 に 説 か な い 多 く の 作 法 は 金 界 次 第 に 順 じ て 補 わ れ て い る。 台 密 所 伝 の ﹁ 随 行 私 記 ﹂ ( 阿 娑 縛 抄 第 二 十 五 ) は 所 依 の 本 軌 が 浄 厳 と 同 じ で あ る か ら、 骨 子 の 印 明 は 同 じ で あ る が、 蘇 悉 地 軌 に よ っ て 印 言 を 補 な い 和 会 し て い る か ら、 そ の 部 分 で 大 き く 違 っ て く る。 金 界 一 尊 法 と し て 用 い る ﹁ 随 行 一 尊 供 養 念 諦 要 記 ﹂ は、 十 入 印 言 を 骨 子 と す る か ら、 東 密 諸 流 の 十 入 道 次 第 と 構 成 は 全 く 同 じ で あ る。 唯、 儀 軌 の 要 文 を 引 い て 入 我 々 入 観、 字 輪 観 等 の 観 想 文 を 整 備 し、 所 出 の 真 言 に は 梵 文 と 音 写 漢 字 と 振 り 仮 名 を 併 用 し 句 義 を 割 註 し、 各 項 目 に つ い て 印、 真 言、 観 想 を 必 ず 具 備 し て 三 密 相 応 の 主 旨 を 貫 き、 引 用 文 に は 必 ず 本 軌 を 示 し て い る 点 に、 こ の 次 第 の 特 色 が 見 ら れ る。 こ の よ う な 特 色 を 具 え た、 ﹁ 胎 蔵 界 念 諦 次 第 ﹂ 三 帖 ﹁ 金 剛 界 供 養 念 踊 要 法 ﹂ 三 帖 ﹁ 息 災 護 摩 私 記 ﹂ 一 帖 の 両 部 大 法、 護 摩 次 第 を 始 め、 礼 拝 加 行 の 代 り に 用 い る ﹁ 要 略 念 諦 法 ﹂ ︼ 帖 (22) ﹁ 七 支 念 諦 随行法﹂一帖が、貞享四 年 か ら 元 禄 十 年 の 問 に 作 ら れ て い る。 諸 流 で 加 行 折 紙 に 当 る も の に ﹁ 真 言 行 者 初 心 修 行 作 法 ﹂ 一 帖 が あ り、 元 禄 七 年 に 作 ら れ て い る。 新 安 の 徒 の 受 法 の 階 梯、 加 行 日 数、 受 法 心 得 な ど が 述 べ ら れ て い る。 受 法 の 階 梯 の 特 色 は、 受 明 潅 頂 を 四 度 の 前 に 置 い た こ と、 一 尊 法 に 金 胎 を 別 立 し た こ と は 既 に 述 べ た が、 更 に 今 } つ、 加 行 と 正 行 を 同 種 に し、 加 行 に は 念 諦 を 用 い、 正 行 に は 供 養 法 を 用 い る の 違 い の み と し た こ と で あ る。 諸 流 の 軌 則 は、 如 意 輪 法 を 以 て 不 動 法 の 加 行 と し、 不 動 法 を 以 て 金 界 大 法 の 加 行 と し、 金 界 大 法 を 以 て 胎 蔵 大 法 の 加 行 と す る な ど、 加 行 と 正 行 が 種 類 を 異 に し て い る。 浄 厳 の 法 則

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で は、 七 支 念 調 法 を 以 て 胎 蔵 随 行 法 の 加 行 と し、 略 念 諦 法 を 以 て 金 界 一 尊 法 の 加 行 と し、 金 界 一 尊 法 を 以 て 金 界 大 法 の 加 行 と し、 胎 蔵 随 行 法 を 以 て 胎 蔵 大 法 の 加 行 と す る。 そ の 理 由 ノ ハ ト タ リ ノ ヨ リ ル ニ ニ を 浄 厳 は ﹁ 加 行 名 目 源 出 二 倶 舎 玲 伽 等 論 蔵 一也。 而 如 レ 就 二 悪 業 一 ノ ハ ト タ リ ノ ヨ リ ル ニ ニ を 浄 厳 は ﹁ 加 行 名 目 源 出 二 倶 舎 玲 伽 等 論 蔵 一也。 而 如 レ 就 二 悪 業 一 ヲ シ テ ト ク シ ク ス ル ヲ テ ト 未 レ 見 下 殺 之 方 便 為 二 加 行 一 正 盗 正 婬 等 以 為 申 根 本 上 正 行 ハ 是 レ 根 本 也 也。 ヲ マ 皆 於 二 同 一 業 上 一而 論 二 加 行 前 根 本 中 後 得 後 之 三 種 一也。 故 知 不 ス ネ ヤ タ レ 可 三 以 レ 異 レ 品 而 為 二 加 行 正 行 一突。 況 復 如 二 上 言 7 之 加 行 如 二 意 支 レ ノ ヲ テ ノ ノ 先 承 二 種 一正 行 如 二 具 支 一故、 是 亦 不 レ 応 三 別 尊 法 而 為 二 此 尊 加 ネ (23 ) 行 一也 ﹂ と 述 べ て い る。 こ の 初 心 修 行 作 法 を 元 禄 九 年 に 再 治 し 問 弁 二 十 三 則 を 追 加 し た が、 そ の 第 七 則 に 道 場 荘 厳 に つ い て 記 し、 そ の 中 で 大 壇 の 門 標 に 言 及 し て い る。 ﹁ 前 竪 二 門 標 輔標 頭 半 月 半 月 上 置 二 於 宝 (24 ) (25 ) 形 一﹂ と 云 う の は、 大 疏 第 六 に 曼 茶 羅 の 四 方 に 門 標 幟 を 建 て る こ と を 明 か す が、 そ の 内 の 三 門 を 略 し て 東 方 大 勤 勇 の 門 を 門 標 と し て 行 者 の 前 に 建 て る。 諸 流 の 護 摩 壇 と 同 じ に な る。 (26 ) 又、 問 弁 第 十 五 則 に は、 諸 流 通 用 の 礼 盤 を 用 い な い で、 庫 (8 ) 脚 の 殊 子 を 用 い よ と 云 い、 不 空 訳 の 尊 勝 軌、 無 量 寿 軌、 菩 提 (29 ) 場 所 説 経 の 本 文 を 文 証 と し て い る が、 こ の こ と は 既 に 天 和 三 (30 ) 年 作 の 別 行 秘 記 巻 一 に 述 べ ら れ て い る。 元 禄 七 年 作 ﹁ 随 行 一 尊 供 養 念 諦 要 記 私 砂 ﹂ 第 三 に は ﹁ 今 時 ヲ ニ ク ハ ( 31 ) ノ 灯 壇 外 置 唯 便 二 随 フ ノ ミ 本 式 ト ナ ス ニ ハ 非 ズ 観 智 軌 不 空 日 壇 ニ 四 隅 置 二 銅 灯 台 一﹂ と 口 決 す る。 こ れ に ょ り、 新 安 で は 大 壇 の 上 の 四 隅 に 四 薇 の 内 に 四 灯 を 建 て る。 (32 ) 元 禄 四 年 作 ﹁ 行 法 軌 則 ﹂ に は ﹁ 巳 後 関 予 門 流 之 者 以 之 為 定 準 耳 ﹂ と 奥 書 き さ れ て い て、 霊 雲 寺 創 建 の 元 禄 四 年 を 機 に、 一 門 の 定 準 を 打 ち 建 て る こ と を 意 図 し た こ と が 窺 え る。 こ の 軌 則 に は、 表 白、 神 分、 祈 願、 発 願、 勧 請、 結 願 作 法 が 示 さ れ て い る。 四 度 次 第 に 之 を 挿 入 し て 用 い る の で あ る。 野 沢 諸 流 に は、 神 分 の 中 の ﹁ 仰 乞 ﹂ 以 下 を 祈 願 分 と し て 念 珠 を 摺 っ て 唱 え る 習 い と な っ て い る。 古 安 も こ の 例 に 漏 れ な い。 唯、 中 院 流 の み は ﹁ 仰 乞 ﹂ の 句 が な く、 ﹁ 金 輪 聖 王 ﹂ 以 下 を 祈 願 分 と す る。 新 安 の 軌 則 は こ の 点 は 全 く 中 院 の 作 法 に 随 っ て い る。 そ の 理 由 を 浄 厳 は 述 べ て い な い。 (2) 初 授 初 心 の 修 行 者 に 授 け る 諸 尊 法 を 安 流 で は 初 授 と 名 け る。 初 授 尊 法 は、 古 安 で は 七 結 百 一 紙 を 一 秩 に し て 相 伝 す る が、 新 安 で は 七 結 九 十 紙 を 一 鉄 と し て 伝 え、 外 に 天 部 に 浄 厳 作 の 九 新 安 流 成 立 過 程 の 研 究 ( 下 )

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-21-密 隔 教 文 化 紙 を 加 え る。 先 徳 作 の 九 十 紙 に つ い て は、 内 容 は 古 安 と 全 同 で あ る。 但 し ﹁ 准 砥 法 ﹂ 一 紙 を 古 安 は 小 野 方 の 習 に 任 せ て 観 音 部 (菩 薩 部 一 結 の 内 ) に 摂 す る の に 対 し、 新 安 は 仏 部 に 摂 す る。 こ れ は 広 沢 方 に 準 じ た も の で あ る。 准 砥 を 仏 部 に 摂 属 さ せ る 理 由 を 浄 厳 は ﹁ 準 提 法 要 砂 ﹂ の 中 で 述 べ て い る が、 こ の 一 帖 の 作 年 代 は 不 詳 で あ る。 ﹁ 準 提 仏 母 法 ﹂ が 元 禄 四 年 作 で あ る か ら、 こ の 頃 の 作 と 思 わ れ る。 ﹁ 金 剛 随 心 菩 薩 法 ﹂ 一 紙 を 古 安 は 菩 薩 部 に 摂 す る が、 新 安 は 明 王 部 に 摂 す る。 ﹁ 金 剛 童 子 法 ﹂ 一 紙 を 古 安 は 天 部、 新 安 は 明 王 部 に 摂 す る 点 が 異 な る。 天 和 三 年 浄 厳 が、 讃 岐 現 証 庵 に て 初 授 牒 葉 の 伝 授 を し た 時 は、 ﹁ 金 剛 随 心 菩 薩 法 ﹂ は 古 安 に 準 じ て 菩 薩 部 に 入 れ た が、 そ の 時 の 口 説 に、 明 王 部 に 摂 す る の が よ い と 述 べ ら れ た ( 33 ) と 瑞 宝 が 書 い て い る。 よ っ て 摂 属 が 変 る の は そ の 次 の 伝 授 か ら に な る。 初 授 の 写 校 は す べ て 寛 文 十 一 年 に 終 っ て い た が、 天 部 に 九 ( 34 ) 紙 を 新 加 し た の は 元 禄 十 一 年 で あ る。 九 紙 の 内、 日 天 子、 月 天 子、 正 了 知 大 将、 最 勝 太 子 の 四 紙 は 古 安 に 含 ま な い 尊 法 で あ る。 砒 沙 門、 吉 祥 天、 摩 利 支 天、 詞 利 帝 母、 氷 掲 曜 天 の 五 紙 は 既 に 古 安 に 含 ま れ て い る の に 更 に 新 作 し た 理 由 は 次 の 通 り で あ る。 諸 流 の 習 と し て、 天 部 に は 振 鈴、 入 我 々 入、 字 輪 観、 結 界 (用 い る 時 は 不 動 又 は 四 天 結 界 ) を 除 き、 三 宝 院 流 で は 正 念 諦 も 用 い ず、 北 斗 の 外 に は 天 部 に 護 摩 な し と も 習 う。 浄 厳 新 加 の 右 の 五 紙 に は 何 れ も 字 輪 観 を 加 え、 本 尊 加 持 に も 古 安 不 説 の 印 明 を 儀 軌 に よ っ て 付 加 し て い る。 天 部 に 権 実 二 類 が あ り、 毘 沙 門 天 の よ う な 権 類 の 天 に は、 振 鈴 以 下 を 用 い よ と 云 い、 又、 実 類 と 錐 も 即 大 目 に 等 同 で あ る と い う 立 場 か ら、 浄 厳 作 の 天 部 の 次 第 に は 入 我 々 入 や 字 輪 観 を 用 い る も の が 多 い。 (3) 諸 尊 法 諸 尊 法 の こ と を 安 流 で は 牒 葉 ( 牒 丁 ・ 牒 張 ) と 云 う が、 ﹁ 帖 張 ﹂ に 作 る の は 新 安 も 慧 光 に 始 ま る。 古 安 の 牒 葉 は 九 結 で あ る。 新 安 は 諸 文 殊 部 を 菩 薩 部 に 摂 し て 八 結 と す る が、 内 容 は 新 古 全 同 で あ る。 但 し 古 安 の 牒 葉 の 上 に 更 に 浄 厳 新 撰 の 帖 張 百 三 十 二 帖 を 加 え て 相 伝 す る の が 新 安 の 特 色 で あ る。 こ れ ら 新 加 の 尊 法 は 何 れ も 元 禄 四 年 以 降 に 作 ら れ て い る。 新 安 の 諸 尊 法 は 諸 流 の 軌 則 と 立 脚 点 に 於 て 異 な っ て い る。 諸 流 に 諸 尊 法 を 修 す る に は、 大 法 立 (金 胎 あ り ) 別 行 立、

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十 八 道 立 の 軌 則 が あ り、 醍 醐 方 だ け は 十 入 道 即 別 行 と す る か ら 所 詮 は 大 法 と 別 行 立 と の 三 種 に な る。 別 行 立 と は、 十 入 道 立 の 次 第 に 金 剛 頂 系 の 印 明 を 摂 取 し た も の で、 四 無 量 観、 勝 願、 大 金 剛 輪、 地 結、 四 方 結、 金 剛 眼、 召 罪、 擢 罪、 業 障 除、 成 菩 提 心 の 十 種 印 明 を、 十 八 道 次 第 の 普 供 三 力 と 道 場 観 と の 間 に 加 用 し た の が 十 種 別 行 と 云 わ れ 安 流 に 常 用 す る。 こ の 内、 勝 願 を 除 い た 九 種 別 行 は 醍 醐 に 多 く 用 い、 更 に 印 言 を 減 じ て 八 種、 五 種 を 数 え、 中 院 で は 何 れ の 別 行 立 も 用 い る。 醍 醐 に は 二 種 三 種 四 種 の 別 行 立 も 用 い る。 大 師 作 十 入 道 念 諦 次 第 は 地 結 四 方 結 を 置 く か ら 醍 醐 流 に 云 え ば 二 種 別 行 で あ り、 元 果 の 如 意 輪 次 第 は こ れ に 大 金 剛 輪 を 加 え る か ら 三 種 別 行 だ と も 云 え る。 十 入 道 即 別 行 と は こ の 意 味 で あ る。 (35) こ れ ら 加 用 の 印 明 の 内、 大 金 剛 輪 は 既 に 軍 茶 利 軌 に 出 て い (36) る。 勝 心 以 下 の 印 明 は 金 界 大 法 の 本 軌 で あ る 蓮 華 部 心 軌 に 説 (37) か れ、 四 無 量 心 観 は 千 手 軌 に あ る。 従 っ て 果 宝 の よ う に、 十 八 道 は 金 界 の 別 法 だ と 断 ず れ ば、 別 行 立 も 又、 全 く 金 界 大 法 の 略 行 だ と 云 え る。 三 宝 院 流 所 用 の 諸 尊 法 で あ る 成 賢 作 ﹁ 薄 讐 紙 ﹂ ( 大 正 蔵 七 入 巻 ) は す べ て 別 行 立 ( 十 入 道 ) で あ る。 頼 玲 作 ﹁ 秘 砂 問 答 第 二 ﹂ に は ﹁ 御 記 云 報 恩 院 の 記 也 財 下 之 に 准 ず 諸 尊 の 行 儀 は 三 種 を 出 で ず。 大 法 金 胎 別 行 蘇 悉 地 也 な り。 小 野 流 の 習、 縦 い 胎 よ り 出 つ る の 法 と 錐 も 必 ず 金 及 び 別 行 に 就 て 之 を 行 ず る な り。 傍 て 今 の 法 ( 阿 閤 法 ) 金 に 就 く 時 は 入 供 を 用 い 別 行 に 就 く 時 は 五 供 を 用 い る 也。 又、 金 と 別 行 に は 五 悔 を 用 う る な り。 傍 て 何 の 法 な り と も 小 野 は 五 悔 を 用 い る 也。 天 台 は 何 法 も 九 方 便 細 用 い (38) る な り ﹂ ( 原 漢 文 ) と 述 べ て い る。 中 院 流 の 諸 尊 法 で あ る 三 十 三 尊 法 は、 聞 書 に よ れ ば、 三 宝 院 所 伝 の 秘 砂 を 依 用 し て 道 範 が 撰 出 し た も の で あ る。 従 っ て 三 十 三 尊 に 不 足 す る 尊 法 は、 石 山 の 道 場 観 を 本 と し て、 秘 砂 (39) 所 説 の 本 尊 加 持 等 を 引 き 入 れ て 行 ぜ よ と 云 い、 或 は 小 野 醍 醐 (40) の 尊 法 を 応 に 随 て 少 々 用 う べ し と 云 わ れ る。 中 院 相 承 の 軌 則 の 中 に、(1) 別 行 次 第 中-(2) 暑 金 中-(3) 別 行 頸 次 第 中 院 が あ る。(1) は 十 入 道 立 で 標 目 の み 列 挙 す る。(2) は 五 種 別 行 立 で 標 目 の み 列 す る。(3) は 入 種 別 行 立 で 標 目 の み 列 (41) す る。 ﹁ 中 院 流 聖 教 目 録 ﹂ に は ﹁ 別 行 次 第 中 院 略 金 中 -普 通 行 法 頸 次 第 中 院 ((3) に 同 ・ 安 流 で は こ の 名 目 で 相 伝 す る ) 石 山 道 場 観 集 二 冊 石 山 字 輪 観 集 右 五 通 ト 四 度 法 則 ト ヲ 以 テ 経 軌 等 加 入 シ テ 諸 尊 法 ヲ 行 ス ル ハ 当 流 ノ 軌 則 也 ﹂ と あ る。 新 安 流 成 立 過 程 の 研 究 ( 下 )

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密 教 文 化 安 流 に は ﹁ 諸 尊 通 用 念 諦 次 第 ﹂ と ﹁ 別 行 次 第 安 ﹂ が あ る。 前 者 は 十 入 道 立 で あ り、 後 者 は 十 種 別 行 の 軌 則 で あ る。 又、 普 通 折 紙 の 雑 部 に ﹁ 行 法 用 心 等 ﹂ 一 結 十 九 紙 が あ り、 こ の 中 に 諸 尊 通 用 法 則 が あ る。 宥 智 の 伝 受 記 に ﹁ 諸 尊 皆 可 レ 依 二 金 界 一 レ ノ ナ リ ス ル ヨ に カ ニ ハ 是 大 師 定 規 代 く 祖 師 錐 レ 無 レ 違 然 金 界 法 則 広 博 故 或 就 二 十 八 ノ ノ 道 一或 就 二 別 行 次 第 一而 行 レ 之 也 ﹂ と あ り、 永 遍 云 ﹁ 就 二 金 界 一束 ノ ナ リ ハ ノ ナ リ 寺 一 家 定 就 二 胎 蔵 一 三 井 山 門 定 ﹂ と い う こ と が、 瑞 宝 の 安 流 伝 (42) 授 紀 要 に 引 用 さ れ て い る。 西 院 流 で も 諸 尊 通 用 次 第 と し て は、 十 入 道、 金 界 略 行 法、 (43) 大 法 立 が あ る。 金 界 略 行 法 と し て は、 入 結 第 五 の 一 に(1) 略 金、 (2) 略 行、 (3) 諸 尊 通 用 行 法 略 次 第 遍 照 寺 が 出 て い る。 何 れ も 金 界 大 法 の 略 行 で あ り、 小 野 方 に 用 い る 別 行 次 第 と 略 同 で あ る。 (3) は 遍 照 寺 寛 朝 作 で 一 番 印 言 が 多 く、 甲 冑、 結 冑、 成 仏 な ど の 印 明 を 加 用 す る が 金 界 略 行 に 変 り は な い。 大 法 の 構 成 を 用 い て 別 尊 を 本 尊 と す る 行 法 を 編 成 し た の が 大 法 立 の 別 尊 法 で あ り、 こ れ に 金 界 大 法 立 と 胎 蔵 大 法 立 が あ る。 諸 流 の 相 伝 に 多 少 の 相 違 が 見 ら れ る が、 道 場 観、 入 我 々 入 観、 本 尊 加 持、 正 念 諦 等 に 於 て、 普 門 大 日 に 一 門 の 本 尊 を 引 き 入 れ て 行 ず る。 (44 ) 西 院 入 結 第 五 之 五 に ﹁ 付 大 法 修 別 尊 用 心 ﹂ 一 帖 が あ り、 先 づ 金 界 大 法 立 に 就 て 別 尊 法 を 行 ず る 用 心 を 述 べ、 次 に 胎 蔵 大 法 立 の 用 心 を 述 べ る。 こ の 一 帖 は、 胎 蔵 曼 茶 羅 の 諸 尊 を 供 養 す る 時 に は、 金 界 で は な く、 胎 蔵 大 法 立 に 当 尊 を 引 き 入 れ て 行 ず る こ と を 理 論 上 は 認 め て い る の で あ る。 し か し ﹁ 口 云、 広 沢 流 仏 菩 薩 明 王 皆 依 二 金 剛 界 一可 レ 令 二 勤 修 一也。 於 二 天 等 一者 若 用 二 別 行 若 十 八 道 こ と 記 す。 こ の 口 伝 は、 成 就 院 寛 助 の 伝 を 信 証 が 口 決 し、 任 覚 が 書 き 記 し た も の と 云 う。 こ れ に よ っ て、 広 沢 流 の 諸 尊 法 は す べ て 金 界 立 の 軌 則 を 用 い る こ と が わ か る。 小 野 方 に 於 て も、 先 引 の 秘 砂 問 答 第 一 の 口 決 の 如 く、 胎 蔵 大 法 立 に 諸 尊 を 行 ず る こ と は な い。 三 宝 院 所 用 の 理 趣 経 法 に 胎 蔵 立 が あ る が、 五 悔 の 代 り に 九 方 便 を 用 い、 普 供 の 代 り に 転 明 妃 を 用 い、 胎 蔵 の 三 部 三 昧 耶 と 地 神 持、 作 壇、 漉 浄 の 印 明 を 加 用 し て 胎 蔵 立 の 趣 き を 出 し て は い る が、 全 体 の 構 成 は 金 界 立 で あ る。 又、 中 院 流 の 理 趣 法 と し て ﹁ 五 秘 密 法 中 -﹂ 一 帖 と ﹁ 一 法 界 ソ リ ヤ 法 中 -﹂ 一 帖 を 伝 え、 中 院 流 院 家 相 承 (45 ) 伝 授 録 に は、 前 者 は 金 堂 東 壇 台 蔵 界 立 作 法 で あ り、 後 者 は 金 堂 西 壇 作 法 に し て 金 剛 界 立 の 次 第 だ と 述 べ ら れ て い る が、 前

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者 も 実 に は 大 楽 軌 ( 大 正 蔵 No. 一 一 一 九 ) を 所 依 と し て 編 ま れ た 金 界 略 行 の 次 第 で あ る。 即 ち、 金 剛 拳、 金 剛 縛、 開 心、 入 智、 合 智 等 金 剛 頂 系 の 印 明 ば か り で 構 成 さ れ て い る。 寂 照 ( 一 入 三 三-一 九 一 三 ) の 乳 味 砂 巻 十 九 に ﹁ 付 二 両 界 一 ノ 行 二 別 尊 一事 ﹂ を 口 伝 し て ﹁ 此 伝 表 ハ 則 金 界 所 居 ノ 尊 ハ 金 界 二 就 テ 行 シ、 胎 蔵 所 居 ノ 尊 ハ 胎 蔵 二 依 テ 修 ス ル 規 則 ナ リ、 而 ル ニ 近 代 ハ 両 部 ノ 諸 尊 悉 皆 金 界 二 就 テ 行 ス、 是 レ 野 沢 両 流 ノ 習 (46 ) ヒ ナ リ ﹂ と 述 べ る。 諸 尊 法 を す べ て 金 界 立 に 行 ず る こ と は 近 代 に 至 る ま で 変 ら な い の で あ る。 又、 曼 茶 羅 供、 或 は 一 壇 の 許 可 を 授 く る 時 に は 両 部 合 行 の 次 第 を 用 い る。 こ れ も 理 論 的 に は 金 界 を 修 し て 胎 を 合 行 す る 場 合 と、 胎 を 修 し て 金 を 合 行 す る 揚 合 が あ っ て よ い わ け で あ る が、 諸 流 共 に 実 に は 必 ず 金 界 立 に 行 じ て 胎 を 合 行 す る 次 第 が 用 い ら れ て い る。 動 潮 記 ( 一 七 〇 九-一 七 九 五 ) ﹁ 三 宝 院 ニ ノ ノ 流 洞 泉 相 承 口 決 ﹂ に は、 両 部 合 行 作 法 は ﹁ 野 沢 土 ハ印 可 曼 供 時 ハ ノ ヲ ノ 所 用 也。 行 法 修 二金 界 大 法 一有 二両 界 供 養 事 ↓若 拠 胎 蔵 者 ー 野 ニ ノ モ テ カ ノ 沢 倶 胎 蔵 無 二 合 行 作 法 一。 而 准 二 金 界 一有 二 道 理 一 故 挙 レ 之 示 二 其 軌 (47 ) 轍 一也 ﹂ と 述 べ ら れ て い る。 こ の よ う に 東 密 に 於 て は、 諸 尊 法 の 法 則 は も と よ り 合 行 軌 に 至 る ま で 金 界 立 の 行 軌 を 固 執 す る の は、 深 く 伝 統 教 学 に 根 ざ し て い る と 思 わ れ る。 東 密 は 両 部 不 二 を 立 前 と し な が ら も、 金 剛 頂 系 を 正 系 と し、 大 日 経 系 を 傍 流 と し て い る と い う の が 今 日 の 通 説 で あ る。 こ の 通 説 の 先 鞭 を つ け た の は 果 宝 あ た り で は な い か と 思 う。 呆 宝 私 抄 第 九 ﹁ 大 日 経 疏 用 否 事 ﹂ の 条 に、 東 密 の 付 法 の 八 祖 に は 善 無 畏、 一 行 の 二 人 は 除 か れ、 秘 教 の 正 嫡 と 認 め ら れ て い な い。 ﹁ 正 嫡 に 列 せ ざ る 所 以 は。 両 祖 動 も す れ ば 天 台 の 義 に 依 て 秘 教 の 正 旨 を 失 す る 故 か。 謂 く 無 畏 の 相 伝 は 空 輪 を 以 て 中 台 に 配 し、 不 空 の 教 相 は 地 輪 を 以 て 中 台 に 配 す。 是 則 ち 無 相 の 真 諦 を 以 て 本 地 と 為 す と 有 相 の 俗 諦 を 賞 し て 本 地 と 為 す と の 両 門 也。 傍 て 無 畏 は 猶 お 常 途 (48 ) の 教 義 に 共 し、 不 空 は 独 り 不 共 の 正 伝 を 得 た り ﹂ ( 原 漢 文 ) と 述 べ、 大 日 経 疏 に は 天 台 義 に よ る 解 釈 が 多 い と 云 う。 大 日 経 を 流 伝 し 疏 を 作 り 胎 蔵 法 を 弘 行 し た の は 専 ら 無 畏 一 行 の 功 績 で あ る か ら、 当 然、 胎 蔵 相 承 の 血 脈 に は、 無 畏 一 行 を 正 嫡 の 列 祖 と し な け れ ば な ら な い の に、 東 密 で は、 金 界 は 勿 論 胎 蔵 ま で も 金 智 不 空 を 正 嫡 と す る 両 部 等 葉 の 血 脈 を 用 い る。 ﹁ 両 部 同 く 金 智 不 空 を 以 て 相 承 の 正 嫡 と な す。 良 に 其 の 意 あ (49 ) る 者 か ﹂ ( 原 漢 文 ) と 呆 宝 が 述 べ る の は、 東 密 で は、 胎 蔵 も 新 安 流 成 立 過 程 の 研 究 ( 下 )

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-25-密 教 文 化 無 畏 一 行 の 無 相 の 立 場 で 解 さ な い で、 金 智 不 空 の 有 の 立 場 で 見 て 行 く の だ と い う 意 味 で あ る。 こ の よ う な 東 密 の 伝 統 教 学 と、 金 界 立 の 軌 則 を 行 法 実 践 の 表 と す る 立 場 と は 全 く 同 根 で あ る。 こ れ に 対 し 浄 厳 は、 先 に 四 度 の 項 に 見 た よ う に、 一 尊 法 に 両 界 の 軌 則 を 別 立 し た そ の ま ま を 諸 尊 法 に も 用 い る。 従 っ て 新 安 の 諸 尊 法 に は、 大 法 立 ( 金 胎 ) 別 行 立 ( 十 種 別 行 ) 胎 蔵 随 行 法、 金 界 随 行 法 の 五 種 の 法 則 を 用 い る。 (50 ) ﹁ 五 字 文 殊 法 ﹂ は 金 界 曼 茶 羅 の 西 方 弥 陀 の 四 親 近 の 一 で あ る 利 菩 薩 ( 文 殊 と 同 体 ) を 本 尊 と し 入 供 四 摂 を 春 属 と し て 修 す る 行 軌 で あ る か ら、 金 界 随 行 法 或 は 金 界 成 身 会 に 依 っ て 修 (51 ) す る 行 軌 を 示 す。 ﹁ 文 殊 法 就 胎 八 葉 ﹂ は 胎 曼 八 葉 院 の 西 南 の 文 殊 尊 を 本 尊 と す る 行 軌 で あ る か ら 胎 蔵 随 行 立 に な っ て い (52 ) る。 ﹁ 阿 弥 陀 供 養 法 ﹂ は 金 界 四 仏 の 一 た る 阿 弥 陀 を 本 尊 と す (53 ) る か ら 金 界 随 行 法 立 で あ る。 ﹁ 阿 弥 陀 法 胎 ﹂ は 胎 蔵 入 葉 院 西 方 の 弥 陀 を 本 尊 と す る 行 軌 で あ る か ら 胎 蔵 随 行 法 立 に 修 せ と 云 わ れ る。 観 音 法 に 三 種 が あ り、 金 界 の 法 菩 薩 ( 聖 観 音 と 同 体 ) を 本 尊 と す る 軌 則 は 金 界 随 行 法 に よ り、 胎 蔵 蓮 花 部 主 の 観 音 を 本 尊 と す る 行 軌 は 胎 蔵 随 行 法 に ょ り、 胎 蔵 八 葉 院 西 北 の 観 音 を 本 尊 と す る 時 も 胎 蔵 随 行 立 に 修 す る。 し か し、 胎 蔵 地 蔵 院 の 中 尊 を 本 尊 と す る ﹁ 聖 地 蔵 菩 薩 法 要 (54 ) 砂 安 雲 ﹂ は ﹁ 随 行 一 尊 法 或 胎 蔵 随 行 ﹂ に 修 せ と 指 示 さ れ て い て、 金 胎 何 れ の 一 尊 法 で も よ い こ と と さ れ る。 ﹁ 天 鼓 音 仏 (55 ) ハ ハ 法 ﹂ も 胎 蔵 の 尊 で あ る が、 ﹁ 行 軌 胎 蔵 随 行 法 或 随 行 一 尊 法 ﹂ と 記 さ れ て い る。 こ れ ら の 例 よ り み る と、 必 ず し も 金 曼 上 の 尊 は 金 軌 で、 胎 曼 上 の 尊 は 胎 軌 に よ っ て 行 ず る 意 で は な い。 浄 厳 は 本 軌 の 摂 属 も 考 え て い た よ う で あ る。 例 え ば、 千 手 観 音 は 胎 曼 虚 空 蔵 院 の 北 端 に 住 す る。 し か し そ の 本 軌 で あ る 千 手 軌 ( 大 正 蔵 漁 一 〇 五 六 ) は 金 界 立 で あ る か ら、 浄 厳 作 ﹁ 千 (56 ) 手 千 眼 行 軌 安 雲 ﹂ は 金 界 大 法 の 略 行 に 編 せ ら れ て い る。 浄 厳 の 金 胎 両 軌 則 の 別 立 に は 台 密 の 影 響 が 考 え ら れ る。 四 十 帖 決 ソ バ (57 ) 巻 十 五 に ﹁ 凡 別 尊 法 多 依 二 悉 地 一可 レ 修 レ 之 ﹂ と 云 う 如 く、 台 密 の 諸 尊 法 は 十 八 道 立 の 行 軌 が 多 い が、 本 来 は、 本 軌 を 三 部 の 何 れ か に 摂 属 さ せ、 そ の 部 の 軌 則 に よ っ て 修 す る 立 前 で あ る。 阿 娑 縛 抄 第 百 入 十 二 に は ﹁ 凡 行 法 本 軌 依 二 其 部 一見。 即 依 二 ト モ (58 ) 其 法 一修 レ 之。 若 何 部 不 レ 見 通 用 二 悉 地 こ と 述 べ る 如 き で あ る。 四 十 帖 決 に は、 一 字 金 輪 法 は 金 界 立 に、 請 観 音 経 法 は 蘇 悉 地

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法 で、 六 字 法 は 胎 蔵 立 又 は 蘇 悉 地 の 行 軌 で 修 せ な ど と 述 べ て い る。 大 師 の 軌 則 は ど の よ う な 構 成 を 持 っ て い た の か 考 え て み る 必 要 が あ る。 大 師 真 撰 と さ れ る 諸 尊 法 を 弘 法 大 師 全 集 か ら 拾 う と、 無 量 寿 次 第 (全 集 第 六 ・ 十 八 道 立 )、 千 手 観 音 行 法 次 第 ( 全 集 第 七 ・ 金 界 暑 行 )、 持 宝 金 剛 念 諦 次 第 (全 集 第 七 ・ 金 暑 略 行 )、 大 勝 金 剛 次 第 ( 全 集 第 七 ・ 金 界 略 行 ) 不 動 次 第 依 大 日 経 ( 全 集 第 七 ・ 胎 蔵 随 行 立 )、 納 涼 房 次 第、 ( 全 集 第 七 ・ 十 入 道 立 ) で あ る。 無 量 寿、 千 手、 如 意 輪、 大 勝 金 剛 ( 玲 祇 経 所 説 ) を 本 尊 と す る 夫 々 の 次 第 が 十 入 道 立 或 は 金 界 略 行 立 で あ る こ と は、 本 軌 に 随 え ば 当 然 と 云 え よ う。 不 動 次 第 二 本 の 内、 一 本 は ﹁ 依 大 日 経 ﹂ と 割 註 の あ る 如 く、 大 日 経 巻 七 供 養 次 第 法 に 準 じ て、 胎 蔵 随 行 法 立 に 編 せ ら れ て い る。 今 一 本 の 納 涼 房 次 第 は、 十 八 道 立 に 編 せ ら れ、 そ れ に 入 仏 三 昧 耶、 法 界 生、 転 法 輪、 大 精 進 慧 劒、 大 法 螺、 成 身 観 の 六 印 明 を 道 場 観 の 前 に 加 え、 普 供 養 の 代 り に 虚 空 蔵 転 明 妃 を 用 い て い (59 ) る。 入 仏 三 昧 耶 乃 至 大 法 螺 の 五 印 明 は、 不 動 立 印 軌 所 説 の 印 明 で あ る。 成 身 観 は 不 動 独 古 印 に 五 大 成 身 観 を 用 い て い る が、 胎 蔵 大 法 か ら の 応 用 で あ ろ う か。 不 動 法 の 本 軌 で あ る 立 印 軌 は 胎 蔵 略 行 の 軌 則 を 持 ち、 底 哩 三 昧 耶 経 ( 大 正 蔵No. 一 二 〇 〇 ) は 十 八 道 立 で あ る。 不 動 使 者 法 (大 正 蔵 恥 一 二 〇 二 ) 及 び 安 鎮 家 国 等 法 ( 大 正 蔵No. 一 二 〇 三 ) に は 行 軌 を 説 か な い。 従 っ て 不 動 法 の 本 軌 に は 金 界 の 軌 則 が な い わ け で あ る。 大 師 は、 本 軌 が 胎 蔵 に 摂 属 す る 尊 に は、 胎 蔵 立 或 は 諸 尊 通 用 の 十 入 道 立 の 軌 則 を 用 い る こ と を 考 え て お ら れ た の で は な か ろ う か。 古 安 の ﹁ 大 聖 不 動 明 王 念 諦 私 記 大 谷 ﹂ は 十 八 道 立 の 次 第 で、 立 印 軌 所 説 の 入 仏 三 昧 耶 等 の 五 印 明 を 付 加 し て い る。 こ の 軌 則 は 大 師 の 納 涼 房 次 第 の 系 列 に 属 す る。 薄 讐 紙 初 重 第 七 結 の 不 動 法 は 十 入 道 立 で、 胎 蔵 印 明 は 一 切 用 い な い。 中 院 の 三 十 三 尊 法 中 の 不 動 法 も 之 に 同 じ で あ る。 薄 第 二 重 第 七 結 の 不 動 法 は 別 行 立 で、 大 精 進 慧 劒 の 一 印 明 を 付 加 す る。 古 安 の 、 不 動 明 王 護 摩 凱 千 枚 ﹂ は 金 界 大 法 立 の 不 動 入 千 枚 作 法 で あ る。 (60 ) こ れ ら に 対 し、 浄 厳 の ﹁ 不 動 明 王 念 諦 供 養 法 祥 雲 ﹂ は ﹁ 今 依 立 印 儀 軌 故 行 軌 依 干 胎 蔵 ﹂ と あ り、 胎 蔵 随 行 法 立 に 編 ま れ (61 ) て い る。 ﹁ 底 哩 三 昧 耶 不 動 法 安 ﹂ は、 底 哩 三 昧 耶 経 一 巻 本 と 三 巻 本 と に よ っ て 編 ま れ 十 種 別 行 立 で あ る。 従 っ て 浄 厳 の 不 新 安 流 成 立 過 程 の 研 究 ( 下 )

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-27-密 教 文 化 動 法 の 法 則 は そ の 意 図 に 於 て 大 師 に 近 い の で は な か ろ う か。 経 疏 重 視 の 思 想 が 浄 厳 を し て 胎 蔵 立 の 行 軌 を 併 用 さ せ た の で あ る。 し か し 東 密 諸 流 の 習 は 先 述 の 如 く 今 日 に 至 る ま で、 諸 尊 の 行 軌 は 金 界 ( 十 八 道 立 も 含 め ) に 限 る。 こ の 流 例 か ら み れ ば 浄 厳 の 行 軌 は 異 端 で あ る。 そ こ で 江 戸 中 期、 通 彦 妙 観 両 師 の 口 伝 を 到 岸 が 記 し た と 云 わ れ る ﹁ 西 院 八 結 胎 涛 ﹂ の 第 五 結 の ノ ノ テ ル ニ ニ ル マ テ ノ ニ ル 口 決 に ﹁ 観 師 云 東 寺 一 家 行 軌 凡 依 二 金 剛 頂 一っ故 至 二 別 尊 暑 行 一依 二 ノ ニ ル ヲ テ シ テ ヲ ラ ノ ニ 金 行 軌 一 ( 中 略 ) 大 師 立 二 宗 義 一亦 以 二 金 剛 頂 一而 不 レ 依 二 疏 家 釈 一。 テ ノ リ ノ ヲ ハ ル ノ ヲ ハ 近 代 有 下 就 二 胎 行 軌 一作 二 諸 尊 行 軌 一或 用 頃 五 支 七 支 等 念 諦 軌 上。 恐 ノ ニ 非 二 相 承 本 意 こ と、 妙 観 が 難 じ た 相 手 は、 明 ら か に 浄 厳 及 び そ の 門 下 を 指 し て い る の で あ る。 新 安 所 用 の 諸 尊 法 の 第 二 の 特 色 は、 本 軌 に 行 法 を 説 く 場 合 は、 可 成 り 忠 実 に そ の 軌 則 の ま ま を 採 用 す る こ と で あ る。 従 っ て 古 来 類 型 化 さ れ て き た 軌 則 に は 当 て は ま ら な い。 } 例 と し て 千 手 法 を 取 る と、 新 古 両 安 と も 不 空 訳 千 手 軌 と 大 師 作 ﹁ 千 手 観 音 行 法 次 第 ﹂ を 所 依 と し て 行 軌 が 編 ま れ た と 伝 え る。 し か し、 古 安 に 常 用 す る ﹁ 千 手 祥 ﹂ 一 帖 は、 諸 尊 通 用 に 類 型 化 さ れ た 十 種 別 行 立 に 編 ま れ、 道 場 観 に 千 手 の 種 三 尊 を 用 い、 本 尊 加 持 に 千 手 軌 所 説 の 九 峯 の 印 明 と 千 光 眼 経 ( 大 正 蔵No. 一 〇 六 五 ) 所 説 の 八 葉 印 を 用 い、 正 念 諦 に 千 手 の 明 を 用 い る 以 外 は、 語 句 を 替 え 用 い る 程 度 で 他 の 行 軌 と 共 通 で あ る。 ﹁ 千 手 法 安 ﹂ に は 本 尊 印 明 と し て、 降 三 世 大 儀 軌 ( 大 正 蔵No. 一 〇 四 〇 ) 所 説 の 嬢 奪 諸 罪 印 が 加 わ る 程 度 で あ る。 所 が (63 ) 浄 厳 作 ﹁ 千 手 千 眼 行 軌 安 雲 ﹂ 一 帖 は、 本 軌 通 り に 金 界 略 行 立 に 作 ら れ、 五 相 成 身 観、 蓮 華 加 持、 宝 冠 潅 頂、 蓮 華 量、 金 剛 甲 冑、 普 請 警 覚 一 切 聖 衆 印、 普 召 集 仏 菩 薩 印 等 を 始 め、 蓮 華 部 の 四 摂 八 供 百 字 真 言 等 が 本 軌 の 名 目 の ま ま に 用 い ら れ、 本 尊 加 持 に は 千 手 関 係 の 諸 儀 軌 所 説 の 三 十 五 種 の 印 明 と、 金 剛 智 訳 大 悲 心 陀 羅 尼 ( 大 正 蔵No. 一 〇 六 一 ) 同 訳 千 手 千 眼 観 世 音 菩 薩 大 身 究 本 ( 大 正 蔵No. 一 〇 六 二 ) の 二 陀 羅 尼 全 文 を 載 せ る。 第 三 に、 常 に は 通 用 の 類 型 化 さ れ た 軌 則 を 用 い る が、 こ の 場 合 に も、 本 尊 加 持 の 印 明 や、 道 場 観 の 観 想 文 を 本 軌 所 説 に (64 ) で き る だ け 忠 実 に 引 用 す る こ と が 多 い。 ﹁ 般 若 菩 薩 法 ﹂ は 陀 羅 尼 集 経 第 三 の 所 説 に 従 い、 召 請 に は 般 若 来 の 印 明 を 用 い、 本 尊 加 持 に は 般 若 身 印 以 下 九 印 言 を 引 く。 諸 流 に は、 梵 簾 印 明 ( 千 手 軌 ・ 玄 法 軌 所 説 ) 或 は 金 剛 護 菩 薩 印 明 ( 般 若 と 護 菩 薩 と 同 体 の 義 ) 或 は 大 慧 刀 印 言 ( 修 習 般 若 軌 所 説 ) を 用 い る

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(65 ) に 止 ま る。 浄 厳 は こ れ ら の 印 明 を 用 い な い。 ﹁ 十 一 面 観 音 法 ﹂ に は 本 尊 加 持 の 印 明 と し て、 諸 流 通 用 の 十 一 面 根 本 印 言 ( 十 一 面 軌 所 説 ) 及 入 葉 印 ( 又 は 十 葉 蓮 花 印 ) の 外 に 十 入 種 の 印 (66 ) 明 を 挙 げ る。 ﹁ 軍 茶 利 法 ﹂ に は、 陀 羅 尼 集 経 第 入 所 説 に 従 い、 本 尊 加 持 に 軍 茶 利 大 護 身 印 以 下 八 印 言 を 出 す。 諸 流 に は、 軍 茶 利 軌 所 説 の 掲 磨 印 と 三 昧 耶 印 と を 用 い る だ け で あ る。 こ の よ う に、 浄 厳 新 撰 の 諸 尊 法 の 法 則 は、 行 軌 を 両 部 各 別 に し た こ と や、 本 軌 の 軌 則 を そ の ま ま 用 い た り、 儀 軌 の 要 文 を 忠 実 に 引 用 す る こ と に ょ り、 本 朝 の 先 徳 た ち が 修 行 者 実 践 の 便 を 考 え て、 軌 則 の 類 型 化 を 進 め て き た 趣 旨 に 逆 行 す る 結 果 を も た ら し た。 従 っ て 浄 厳 の 法 則 は 研 究 者 に は 便 で あ る が、 初 心 者 の 実 践 用 に は 不 向 で あ る。 (4) 潅 頂 真 言 宗 全 書 二 七 巻 所 収 の 水 尾 潅 頂 式 六 巻 は 玄 静 の 作 で あ る。 同 解 題 に 依 る と、 玄 静 は 丹 波 国 水 尾 禅 門 寺 の 名 匠 で、 初 め は 東 密 の 宗 叡、 禅 念 に 受 法 し、 後 に 台 密 の 安 然、 最 円 に 受 法 し た 人 と 云 わ れ る。 そ れ 故、 こ の 潅 頂 式 に は し ば し ば 台 密 系 の 大 日 経 義 釈、 円 仁 の 戒 儀、 華 山 本、 山 王 院 伝 等 を 引 用 す る。 従 っ て 東 密 で は 小 島 流 が 之 を 本 式 と し て 依 用 す る 外 は 諸 流 に は 用 い な い。 古 安 で は 六 巻 の 内 ﹁ 受 明 潅 頂 作 法 次 第 ﹂ 胎 金 二 巻 を 相 伝 す る。 本 願 律 師 実 厳 が 東 山 住 居 の 時、 之 を 相 伝 し た と 伝 え る が 古 安 で は 実 用 し な い。 浄 厳 は 元 禄 五 年 に 玄 静 本 を 再 治 し て ﹁ 受 明 潅 頂 私 記 ﹂ 胎 金 二 帖 を 作 り、 初 入 門 徒 の 受 明 潅 頂 に 用 い た。 玄 静 の 胎 蔵 作 法 を、 大 日 経 疏 入 ・ 九 及 び 阿 闊 梨 潅 頂 儀 軌 ( 大 正 蔵No. 入 六 二 ) に よ っ て 再 治 し て 胎 蔵 の 私 記 を 撰 し、 同 じ く 玄 静 の 金 界 作 法 を、 大 疏、 暑 出 経 巻 四、 (67 ) 潅 頂 儀 軌 に 依 っ て 再 治 し て 金 界 の 私 記 を 撰 し た と 云 わ れ る。 受 明 潅 頂 の 作 法 は 伝 法 の 作 法 に 殆 ん ど 変 ら な い。 但 し 伝 法 は 受 者 に 五 瓶 の 水 を 注 い で 五 仏 の 印 明 を 授 く る に 対 し、 受 明 は 所 得 の 尊 の 部 の 瓶 水 を 注 い で そ の 部 の 印 言 を 授 け る 違 い が あ る。 又、 伝 法 に は 印 可 を 授 け る 作 法 が あ る が 受 明 に は 之 を 除 く。 新 安 で は、 潅 頂 の 作 法 は す べ て、 元 禄 五 年 以 降 浄 厳 が 新 撰 し た 次 第 を 用 い て 行 じ、 古 安 の 次 第 は 箱 伝 授 す る に 止 め る が、 そ の 新 撰 次 第 は 古 安 と 大 同 で あ り、 文 言 に 前 後 出 没 が あ る 程 度 で あ る。 た だ、 浄 厳 が 潅 頂 作 法 で 発 明 し た 点 は、 受 明、 結 縁 二 潅 頂 の 胎 蔵 壇 に 限 り 蓮 金 二 部 の 瓶 を 加 用 す る こ と 新 安 流 成 立 過 程 の 研 究 ( 下 )

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-29-密 教 文 化 で あ る。 即 ち、 常 の 五 瓶 の 外 に 蓮 花 部 主 の 瓶 ( 黄 色 の 練 吊 を 付 す ) と 金 剛 部 主 の 瓶 ( 赤 色 の 繰 畠 ) と を 左 右 に 加 え て 七 瓶 を 置 く。 従 っ て 正 覚 壇 に も 七 瓶 を 移 す が、 瓶 行 道 ( 受 明 の 時 ) 及 び 瓶 加 持 は 仏 蓮 金 三 部 の 瓶 に つ い て の み 行 い、 受 者 に は 三 部 の 内 の 何 れ か 一 瓶 の 水 を 注 ぎ 他 の 四 瓶 は 用 い な い。 こ れ に つ い て 巖 は ﹁結 縁 潅 頂 諸 尊 印 言 幾 ﹂ の 中 で 言 及 し、 近 来 は 胎 曼 中 院 の 四 方 四 仏 及 び 中 台 大 日 を 以 て 五 部 と な し て 五 瓶 を 置 く が、 胎 蔵 は 元 来 三 部 で あ り 五 部 を 分 つ 証 は な い。 元 果 (69 ) の 三 部 秘 釈 に は 胎 蔵 の 諸 院 を 三 部 に 配 当 摂 属 さ せ て い る。 (70 ) 又、 大 疏 所 説 は 最 少 限 六 瓶 よ り 十 八 瓶、 百 瓶 等 を 説 く 故 に、 所 用 に 従 っ て 七 瓶 を 用 い て も 疏 意 に 違 わ な い。 所 用 の み を 云 え ば 三 部 で よ い わ け で あ る が、 四 隅 の 四 瓶 は 四 仏 供 養 の た め に 置 く の だ と 述 べ て い る。 新 安 所 用 の 曼 茶 羅 に 関 し て は、 第 四 章 (6) に 於 て 既 に 述 べ た 通 り で あ る。 (5) 秘 部 折 紙 古 安 摂 属 の 秘 部 折 紙 は、 諸 観 音 秘 要 訣 以 下 六 十 七 結 四 百 二 十 九 紙 を 伝 え る。 こ れ を 浄 厳 は 寛 文 十 年 か ら 貞 享 四 年 の 間 に 写 校 し て い る。 古 安 に 習 っ て 浄 厳 が 新 し く 類 集 し た 秘 部 折 紙 は、 諸 観 音 部 一 帖 ( 元 禄 六 年 集 ) 諸 菩 薩 部 一 帖 ( 年 代 不 明 ) 諸 明 王 部 二 帖 ( 元 禄 十 年 集 ・ 但 し 下 帖 未 集 ) 諸 天 部 二 帖 ( 元 禄 六 年 集 ) の 計 六 帖 五 十 二 件 二 百 四 十 二 条 で あ る が、 諸 明 王 部 の 残 と 仏 部、 経 部、 大 法 部、 秘 法 部、 潅 頂 部 の 折 紙 は 類 集 さ れ て い な い。 浄 厳 は 古 来 の 折 紙 を 類 集 し て 間 々 私 案 を 加 え 添 削 し て い る の で、 大 都 古 安 と 同 じ で あ っ て も 細 部 に つ い て は 一 致 し な い。 従 っ て 新 安 で は、 浄 厳 類 集 の 六 帖 を 先 づ 用 い、 未 類 集 の 部 に つ い て は す べ て 古 安 の 折 紙 を 用 い る。 (6) 最 秘 部 折 紙 古 安 で は 最 秘 部 折 紙 と し て 六 結 四 十 入 紙 を 一 裏 と し て 相 承 す る。 こ の 相 伝 は、 宝 性 院 任 遍 が、 宥 快、 宥 信 よ り 相 承 し た 折 紙 を 数 度 校 合 し た 結 果、 決 定 し た 目 録 に 従 っ て い る。 こ の 相 承 は、 後 に 南 院 宥 智 が 宝 性 院 快 曼 よ り 相 伝 し た 目 録 と 一 致 す る。 こ の 外 に、 最 秘 部 に 属 す る 折 紙 と し て 二 結 四 十 一 紙 を 一 裏 と し て 相 伝 す る。 こ れ を ﹁ 任 遍 目 外 ﹂ と 称 す る。 最 秘 部 折 紙 と し て は 右 の 二 包 を 一 鉄 に 納 め て 相 伝 す る。 こ れ ら を 浄 厳 は、 寛 文 十 一 年 よ り 元 禄 三 年 の 問 に 書 写 し て い る が、 私 案 も 添 削 も 全 く 加 え ず 古 来 の 相 伝 通 り に 転 写 し て い る。

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浄 厳 に 元 禄 十 二 年 作 ﹁ 最 秘 部 類 集 ﹂ 二 帖 が あ る。 標 題 よ り み て、 任 遍 目 録 と 同 種 の 折 紙 の 類 集 か と 思 う と 実 は そ う で は な い。 二 帖 の 内、 甲 一 帖 と 乙 帖 の 半 ま で は、 元 禄 十 二 年 閏 九 月、 高 野 山 宝 性 院 本 を 以 て 写 得 し た も の で、 ﹁ 阿 閤 ﹂ よ り ﹁ 後 七 日 ﹂ に 至 る 四 十 一 件 が 収 録 さ れ て い る が、 秘 部 の 口 決 に 相 当 し、 最 秘 部 折 紙 と は 関 係 が な い。 そ こ で 新 安 で は、 こ の 部 分 に つ い て は 秘 部 折 紙 の 口 決 と し て 援 用 す る に 止 め る。 又、 乙 帖 の 残 り 半 分 に 類 集 さ れ て い る ﹁ 通 用 最 秘 ﹂ 以 下 ﹁ 塔 印 義 ﹂ に 至 る 十 件 は、 任 遍 目 外 の 十 件 と 一 致 す る。 ﹁ 合 掌 印 義 ﹂ と ﹁ 諸 印 通 相 ﹂ の 二 件 は 任 遍 目 外 に は な い。 又、 仔 遍 目 外 収 録 の ﹁ 御 即 位 ﹂ 以 下 十 七 件 を 浄 厳 は 未 類 集 で あ る。 従 っ て 最 秘 部 折 紙 に つ い て は、 新 安 は 全 く 古 安 相 承 の 折 紙 を 用 い、 新 類 集 は 参 照 す る 程 度 で あ る。 (7) 印 信 安 流 本 伝 の 印 信 は 入 通 十 三 紙 あ り、 そ れ に 夢 想、 天 慶 等、 本 伝 に 添 え 物 の 印 信 が 六 通 二 十 五 紙 あ る。 此 の 外 に 安 流 に (71 ) は、 諸 流 の 印 信 と し て 十 入 通 を 伝 え る。 興 雅 記 ﹁ 秘 密 大 事 極 伝 ﹂ に は、 当 流 に は 山 門 寺 門 の 大 事、 小 野 広 沢 一 切 諸 流 の 大 事 を 皆 相 伝 す る と 心 得 え よ と 述 べ て い る が、 安 流 に は、 大 師 の 嫡 流 と い う 自 覚 に 立 っ て 諸 流 を 一 統 み す し よ う と い う 思 想 が あ り、 御 簾 流 と 自 称 す る の も こ の 意 味 で あ る。 諸 流 の 印 信 は、 こ の よ う な 思 想 の 下 に 相 承 さ れ た も の で あ る。 浄 厳 も こ の 諸 流 一 統 の 思 想 に 立 っ て、 古 来 相 伝 の 諸 流 印 信 十 八 通 の 上 に 更 に、 自 ら が 諸 師 よ り 相 伝 し た 印 信 二 十 二 通 を 加 え て 四 十 通 と し た こ と を、 元 禄 十 一 年 作 ﹁ 安 祥 寺 相 伝 諸 (72 ) 流 大 事 秘 訣 青 ﹂ の 奥 書 で 述 べ て い る。 従 っ て 新 安 で は、 本 伝 及 び 添 え 物 の 印 信 相 承 は 全 く 古 安 と 同 じ で、 諸 流 に 於 て 増 加 し て い る の み で あ る。 今、 浄 厳 増 加 の 分 を 検 す る と、 小 島 流 四 通、 明 算 流 四 通、 持 明 院 流 二 通、 寛 平 法 皇 御 伝 二 通、 西 院 流 三 通、 醍 醐 三 通、 勧 修 寺 一 通、 伝 法 院 流 二 通、 華 蔵 院 流 一 通 の 計 二 十 二 通 で あ る。 (8) 小 皮 子、 香 袋、 黒 箱 こ の こ と に 関 し て は、 高 見 寛 恭 先 生 が ﹁ 伝 灯 ﹂ 第 一 号 ( 昭 和 四 十 九 年 刊 ) で 詳 細 に 論 及 さ れ、 新 安 と 古 安 と で は 黒 箱 に 対 す る 認 識 に 相 違 の あ る こ と、 そ の 原 因、 新 安 の 相 承 に も ] 新 安 流 成 立 過 程 の 研 究 (下 )

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-31-密 教 文 化 理 あ る こ と 等 を 述 べ て お ら れ る。 新 安 で は、 小 皮 子 を 黒 箱 と も 称 し て い る。 天 明 二 年 龍 慧 記 ﹁最 極 秘 密 随 聞 記 一安 祥 寺 青 ﹂ 一 帖 ( 河 内 延 命 寺 蔵 ) に は ﹁ 小 皮 籠 或 ハ 小 野 ノ 黒 箱 ト モ 云 フ 也。 高 野 山 宝 亀 院 二 有 レ 之、 道 具 モ 入 テ 有 レ 之 由 ⋮ ⋮ ﹂ ( 取 意 文 ) と あ り、 宝 暦 十 一 年 勝 慧 口 ・ 神 雅 記 ・ 蓮 剛 校 ﹁ 最 秘 部 小 皮 子 随 受 記 ﹂ 一 帖 ( 延 命 寺 蔵 ) に 押 紙 し て ﹁ 又 ハ 小 皮 古 小 皮 子 黒 箱 ト 云 ﹂ と 書 か れ て い る。 小 皮 子 の 聖 教 は 甲 乙 二 裏 に 分 れ、 甲 は 十 九 結 五 十 四 紙、 乙 は 九 結 四 十 四 紙、 外 に 一 結 一 紙 が あ る。 瑞 宝 の 安 流 伝 授 紀 要 は 乙 裏 を 九 結 四 十 二 紙 と な す。 松 永 昇 道 ﹁ 安 流 伝 授 録 ﹂ に は 上 二 農 は 十 九 結 五 十 二 紙 ( イ 本 に よ れ ば 五 十 四 紙 ) 下 一 裏 は 九 結 四 十 紙 を 挙 ぐ。 密 教 大 辞 典 に は 一 伝 と し て 甲 鉄 二 十 結 五 十 四 紙、 乙 鉄 九 結 四 十 二 紙 を 挙 ぐ。 僅 少 の 出 没 は あ る が 先 づ は 全 同 と 見 て よ い。 浄 厳 は 小 皮 子 に 関 し て も 古 安 相 承 分 に 全 く 手 を 加 え て い な い の で あ る。 香 袋 に は、 元 来、 閉 眼 の 大 事 で 唯 授 一 人 の 印 信 と 云 わ れ る 頓 証 菩 提 法 と そ の 口 訣 を 入 れ て い た が、 そ の 後 変 遷 し て 現 在 で は、 本 伝 の 印 信 や 添 え 物 の 印 信 ま で も 入 れ て あ る。 但 し 新 古 両 安 の 相 違 は、 古 安 に は 必 ず 小 島 流 の 印 信 三 巻 を 入 れ 添 え て 他 流 と 紛 ら か し、 頓 証 の 印 信 が 安 流 の 最 極 大 事 で あ る こ と を、 唯 嫡 以 外 に は 秘 す る こ と が 古 来 行 わ れ て き た。 新 安 の 香 袋 に は こ の 小 島 三 本 を 入 れ な い。 そ の 代 り 頓 証 印 信 の 包 紙 の 帯 封 に ﹁ 小 島 ﹂ と 書 い て、 こ れ が 本 流 の 印 信 で あ る こ と を 秘 し て い る。 結 局 同 趣 旨 で あ る。 又、 新 安 で は 必 ず、 浄 厳 作 ﹁ 頓 証 菩 提 法 ﹂ 一 帖 を 入 れ 添 え る。 し か し こ の 秘 訣 は、 興 雅 口 決 一 紙、 宥 快 の 頓 証 口 決 一 紙 ( 共 に 香 袋 に 入 れ 添 え て あ る ) に 依 っ て 書 か れ た も の で 何 ら 新 味 は な い。 な く と も よ い 口 訣 で あ る。 古 安 に い わ ゆ る 黒 箱 聖 教 の こ と を、 新 安 で は ﹁ 最 極 ﹂ ( 真 常 筆 目 録 ) ﹁ 最 秘 ﹂ ﹁ 秘 訣 ﹂ ( 照 遍 目 録 ) と 呼 ん で い る。 黒 箱 と い う 名 目 は 使 っ て い な い。 相 伝 の 内 容 を 検 す る に、 真 言 宗 伝 灯 会 昭 和 十 六 年 刊 の 黒 箱 聖 教 は、 二 秩 十 二 冊 三 十 八 件 を 収 録 し て い る。 新 安 は 三 十 四 件 が 相 承 さ れ る。 秘 口 訣 は 古 安 と 大 概 同 じ も の が 相 伝 さ れ て い る が、 興 雅 の 附 法 状 や 消 息、 置 文、 曼 茶 羅 寺 相 論 申 文 の よ う な 聖 教 の 外 と 思 わ れ る も の は 一 切 含 ま れ て い な い。 大 体 黒 箱 聖 教 の 中 心 は、 先 述 の 小 皮 子 と、 本 流 印 信 の 口 訣 で あ る。 従 っ て 浄 厳 は、 黒 箱 の 中 か ら 故 (73 ) 意 に 重 要 と 思 わ れ る 秘 口 訣 ば か り を 抜 き 取 り 書 写 し た の か、

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そ れ と も、 黒 箱 は 当 時 宝 亀 院 に 移 さ れ、 浄 厳 は 之 を 見 る 機 会 に 恵 ま れ な か っ た 故 に ( 高 見 先 生 説 ・ 前 掲 論 文 ) 南 院 良 意 相 伝 の 分 の み を 転 写 し た の か し ば ら く 決 し か ね る。 新 安 相 伝 の 秘 訣 聖 教 は 何 れ も、 早 い も の は 万 治 四 年、 主 と し て 寛 文 十 年 に、 浄 厳 が 南 院 本 を 以 て 転 写 し た も の で あ る。 中 に 元 禄 に 入 (74 ) り 再 度 謄 写 し て い る も の も あ る。 従 っ て、 も し 浄 厳 が 宝 亀 院 移 転 の 黒 箱 を 相 伝 し て い な い の な ら、 師 良 意 も 又、 こ れ を 相 伝 し て い な か っ た と 云 わ ざ る を 得 な い し、 浄 厳 は 只、 良 意 相 伝 の 秘 訣 を 忠 実 に 伝 え、 こ れ に 自 撰 の 口 訣 を 入 れ 添 え た と 思 わ れ る。 付 加 し た 秘 訣 は 四 帖 あ り、 一 は ﹁ 無 尽 所 伝 相 承 秘 訣 ﹂ ( 天 和 二 年 ) 二、 ﹁ 安 祥 寺 相 伝 諸 流 大 事 秘 訣 ﹂ ( 元 禄 十 一 年 ) 三、 ﹁ 遮 那 心 要 諸 流 一 貫 ﹂ ( 元 禄 七 年 ) 四、 ﹁ 諸 流 潅 頂 契 明 統 要 ﹂ ( 元 禄 十 四 年 ) で あ る。 一 は 伝 法 印 信 の 口 決 で 先 徳 の 口 決 の 踏 襲 で あ る。 二 は 自 ら 追 加 し た 諸 流 印 信 を 含 め て 計 四 十 通 の 印 信 口 決 で あ る。 三 は 諸 流 潅 頂 の 印 明 四 百 六 十 入 件 (補 遺 八 件 ) を 集 め て、 之 を 経 緯 の 図 表 に 示 し、 諸 流 相 承 の 印 明 を 網 羅 せ ん と 企 図 し た 書 で あ る が、 こ の 先 躍 と し て は 栄 海 の 償 避 羅 砂 の 中 に 入 十 入 件 が 集 録 さ れ て お り、 浄 厳 は こ の 砂 に 啓 発 さ れ て 更 に 件 数 を 拡 大 し た も の で あ る。 四 は 三 と 一 具 の 書 で、 諸 流 相 承 の 潅 頂 印 明 に つ い て 概 轄 し 分 類 し 或 は 印 明 の 出 典 を 示 し た も の で、 こ れ も 撮 避 羅 砂 の 踏 襲 で あ る。 何 れ に し て も 後 の 三 帖 は、 古 安 の 諸 流 一 統 の 思 想 を 発 展 さ せ た も の で あ る。 従 っ て 黒 箱 の 中 心 を な す 安 流 本 伝 の 印 信 秘 口 訣 に 於 て は、 新 古 両 安 の 相 承 は 全 く 一 致 し て い る。 こ の よ う に、 最 秘 部 折 紙、 小 皮 子、 印 信、 最 極 秘 訣 と い う 安 流 の 最 奥 の 相 伝 に 関 し て は、 浄 厳 は 一 切 の 私 案 添 削 を 加 え ず、 古 来 師 資 相 承 の ま ま に 忠 実 に 伝 え、 之 を 門 弟 に 付 法 し た の で あ る。 性 寂 (-一 七 一 七 ) 口 ・ 神 雅 記 ﹁ 小 ・喧 子 ﹂ ( 河 内 延 命 寺 蔵 ) に ﹁ 最 秘 部 以 下 ハ 自 宗 ノ 骨 目 ナ ル カ 故 二 故 和 尚 ( 浄 厳 を さ す ) モ 添 削 シ 玉 ハ ズ。 況 ヤ 此 小 皮 子 ハ 古 来 ア リ ノ マ マ ナ リ ﹂ と 記 し て い る 通 り で あ る。 こ れ は、 諸 流 共 に 最 極 の 大 事 に 至 っ て は、 相 承 の 深 義 が 述 べ ら れ、 唯 仏 与 仏 の 内 証 の 境 界 を 以 心 伝 心 に 師 資 相 伝 し て 行 く も の で あ る。 儀 軌 と 対 校 し、 諸 流 の 軌 則、 抄 物 を 比 較 し て、 批 判 添 削 す る 合 理 的 思 考 は、 こ の 部 門 で は 排 除 さ れ な け れ ば な ら な い こ と を 浄 厳 は 心 得 て い た の で あ る。 合 理 的 批 判 精 神 を 駆 使 し え た の は 四 度 と 諸 尊 法 と、 せ い ぜ い 秘 部 折 紙 ま で で あ る。 新 安 流 の 新 と は こ の 部 分 に 就 て 云 え る の で あ る。 新 安 流 成 立 過 程 の 研 究 ( 下 )

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密 教 文 化 以 上 私 は、 新 安 成 立 の 過 程 を、 高 野 山 時 代、 関 西、 関 東 の 時 代 に 分 け、 相 伝 す る 聖 教 全 般 を ご く 大 ざ っ ぱ に 夫 々 の 年 代 に 位 置 づ け る 作 業 を 試 み た。 浄 厳 没 後、 霊 雲 寺 慧 光 は 新 安 を 本 と し て 古 安 を 伝 え、 延 命 寺 蓮 体 は 古 安 を 本 と し て 新 安 を 伝 う と 称 せ ら れ る。 こ れ は、 慧 光 記 ﹁ 霊 雲 寺 相 承 安 流 聖 教 目 録 ﹂ に 表 わ れ て い る 聖 教 伝 授 の 姿 勢 と、 瑞 宝 記 ﹁ 安 流 伝 授 紀 要 ﹂ の 態 度 と の 比 較 か ら 出 た 通 説 で あ る と 思 わ れ る が、 当 を ノ ニ ハ リ ノ 得 て い る の で あ る。 慧 光 の 目 録 に は ﹁ 四 度 行 軌 皆 有 二 新 旧 二 ハ レ セ リ ヲ チ ク メ ノ ヲ ミ ニ ス ノ ノ 本 一新 撰 是 先 師 広 二 旧 製 一然 乃 宜 下 講 二 授 其 新 本 一 而 因 示 申 其 旧 本 ヒ ノ ヲ 作 者 及 自 余 砂 記 等 上 し と 云 い、 帖 張、 潅 頂 等、 新 本 の あ る も の は 皆、 こ れ を 優 先 し て 講 授 し 古 本 は 箱 伝 授 に 止 め る 態 度 を ニ テ ノ 示 し て い る。 こ れ に 対 し 瑞 宝 の 紀 要 に は ﹁ 新 本 巳 成 而 門 弟 之 ラ ス ヲ ニ ノ ヲ ヘ リ ノ ヲ 四 度 加 行 専 行 二 新 本 一偏 写 二 得 新 本 一不 レ 知 二 旧 本 一末 弟 失 二 其 源 一 テ ラ ル テ ヲ ヲ 焉。 是 以 予 専 依 二 古 本 一知 二 古 本 一而 不 レ 知 二 新 本 一者 無 レ 過。 今 云 ニ タ ナ ル 講 授 新 本 一者 対 二 先 徳 一則 太 借 喩 耳 ( 中 略 ) 褒 二 浄 厳 闊 梨 一而 不 レ ミ ヲ ( 75 ) 顧 レ 既 二 宥 快 成 雄 寛 海 一乎 ﹂ と、 慧 光 と は 全 く 反 対 の 伝 授 姿 勢 が 表 明 さ れ、 霊 雲 寺 一 派 の 新 安 偏 重 へ の 嫌 悪 感 さ え 露 骨 に 示 し て い る。 瑞 宝 は 河 内 地 蔵 寺 開 基 蓮 体 の 付 法 で 讃 岐 大 護 寺 二 世 で あ り、 後 に 地 蔵 寺 三 世 と な っ た 人 で あ る。 従 っ て こ の 口 吻 は 蓮 体 の 口 移 し と 考 え て よ く、 蓮 体 門 下 に こ の よ う な 態 度 が 出 て き た の で あ る。 蓮 体 は 壮 年 時 代 の 浄 厳 の 膝 下 に あ っ て 関 西 地 方 の 諸 寺 院 の 経 営 に 参 画 し、 浄 厳 没 後 は 関 西 に 於 け る 浄 厳 の 教 線 を 継 承 し た。 そ の 付 法 血 脈 も 関 西 に 蔓 延 し て い る。 霊 雲 寺 門 下 と 蓮 体 門 下 と の 安 流 相 伝 上 の 微 妙 な 相 違 は、 そ の ま ま、 関 西 時 代 の 浄 厳 か ら 関 東 時 代 の 浄 厳 へ と 進 展 し た 新 安 流 成 立 の 過 程 を 示 し て い る の で あ る。 註 ( 1 ) 東 寺 内 弘 法 大 師 一 千 百 年 御 忌 事 務 局 刊 本 ・ 第 五 結 一 四 丁 ( 2 ) 真 言 全 ・ 二 三 巻 五 頁 ( 3 ) 大 正 蔵 七 九 巻 七 一 頁 中-下 ( 4 ) 真 言 全 ・ 三 三 巻 二 一 頁 ( 5 ) 呆 宝 記 ・ 宝 冊 紗 第 三 ・ 大 正 蔵 七 七 巻 八 〇 三 頁 上、 栂 尾 祥 雲 著 ・ 秘 密 事 相 の 研 究 四 四 頁、 高 井 観 海 著 ・ 密 教 事 相 大 系 一 一 六-七 頁 ( 6 ) 大 正 蔵 二 〇 巻 二 一 一 頁 下、 大 正 蔵 漁 一 〇 八 六 ・ 不 空 訳 如 意 輪 喩 伽 も 同 文 ( 7 ) 大 正 蔵 二 〇 巻 二 〇 四 頁 上-二 〇 六 頁 上 ( 8 ) 大 正 蔵 一 九 巻 五 一 七 頁 上 ( 9 ) 大 正 蔵 七 七 巻 八 〇 三 頁 上 ( 10 ) 大 正 蔵 七 五 巻 九 四 五 頁 上 ( 11 ) 阿 娑 縛 抄 第 三 十 八 ・ 大 仏 全 三 六 巻 五 九 四 頁

参照

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