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会計上の有価証券時価評価論の視点と方向

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(1)

論 説

会 計 上 の 有 価 証 券 時 価 評 価 論 の 視 点 と 方 向

ー我が国とアメリカを中心としてーー1

岡 村 勝 義

目次

問題の所在

有価証券時価評価論﹃意見書等﹄の鉱場

有価証券時価評価論醍醐説および森田説

(一)醍醐説

(..)森田説

(.︑桶)﹃意見書等﹄の立場︑醍醐説および森田説

四有価証券時価評価論ーー財務会計基準書第一︑.号iー

・号

六結びに代えて有価証券時価評価論の動向

問 題 の 所 在

27

近年︑金融の畠化︑国際化の急速な進展等に伴い︑我が国の金融・資本市場は著しく拡大し・企業金融を取り巻

(2)

く環境は大きく変化しつつある︒各種の金融商品が開発され︑また企業の投資機会の増大︑市場変動リスクに対する

対応等から証拳金融先物取引︑オプション取引制度が導入されている︒さりに︑企業金融の国際化︑金利の畠化

を背景に・国際金幣場では醤または金利スワップ取引も広く行われている︒ヲしのよ・つな企業財務.会計羅の変

化は・かつては予想もしなかった新たな現象を引き起こし︑それに対する何.bかの対応を企業会計に埠りないではお

(

かかる状況の下で・企業会計審議会は︑先物牙プション取引に関する会計処理.開示の方法が委制度として確

立されていず・そのために・かかる諸取引の取引実能心が財務襲に適切に反映されていないΨ︑とを認識し(企会審

[一㊤8]1)・一九八九年三月の総Aだおいて︑﹁先物・オプション取引の会計処理問︑題﹂を審議テ←とする}﹂とに決定

するに至った・そして翌年の冗九〇年五月二九日には︑﹃先物・オプシ・ン取引等の会計基準に関する意昊口等につ

いて﹄(以ド・﹃意見導﹄と略称する)と題する報告書が公表された︒そ}﹂では︑先物.オ.フシ.ン取引に関する企業の

経営実態を的確に開示するために︑それらの取引に係る時価情報の開示基準が設定甘りれ︑併せて当該時価情報の有

用性を高める等の観点から・市場性ある有価証券に係る時価情報の開示基準も設定せ・りれている(企会審︒㊤¢︒]2)︒

かかる﹃意見書等﹄を受けて・その後︑当該時価情報の開示を証券取引法上の制度として霧付けるたあに︑一九

九・年三月二吾付で︑﹁傘内容等の開示に関する省A刀﹂(大蔵省A"第四一︑写)およ覇連建の改正が行われ︑当該

時価情報の開示は一九些年三贔またはゴ一月巾間決算会社かb行われる}﹂ととなった︒}しれについては︑蒔価情報

の開示が制度化され・導入されることは︑わが国の企茜容開示制度において︑画期的なものであLると評されても

  

しかしながら・物価変動に関する財務情報の開︑不は︑アメリカにあっては一九八六年一︑耳以降︑またイギリスに

(3)

会計fの 有 価 証 券時 価 評価 論 の視 点 と方 向 29

あ.ては死八八年四月以降︑強制開示から任意開示に移行したものの︑それはすでに行われている(霧bd︒︒髪

2...・.]・."・.8・︒・.]5).り

法とい.つ形をとりつつ時価評禦要求され︑評価損のみならず評価益を含めた時価情報の開示がすでに行われており︑また流動塵として分類される市場性ある有価証券に関する評価損益は是の範囲まで損益計算に算入されてい

る(閃﹀ωしd鶏﹀・︒窯9一N[お刈α]︒山.堕釣三・︒)︒また︑国際会計基準委員会の公開蘂第三二号に目を転じてみれば・流

動資産として分類される投資すなわち短期馨は︑時価評価によって貸借対照表に計上し・これによって生ずる評価

損益は︑損益計算に算入しなければならないとされている(H>︒・臼.・慧.・り冨&b・・駄婁・}︑のよ.つな海外の会計制度あるいは会計制度化の動向からすれば︑我が国における有価証券等に係る時価情報の開

示は︑そ.つした動向に沿つものと言えるであろう︒この点と関係すると思われるが・﹃止思見書等﹄は次のように述べている︒翼米等においては︑市場性ある有価証券に係る時価情報の開示が行われており・我が国においても会計基準の

国際的調和の観点かり時価情報の開示を制度化し︑対外的にも我が国企業の財務情報の透明性を高める必要があるL

(企会審ロ︒8]第一部︑↓3(3))︒

▼しのよ.つに︑我が国においては︑先物.オ.フシ・ン取引ならびに市場性ある有価証券に関する時価情報の開示が要

請される}﹂とになったが︑かかる情報は︑﹁財務襲及び中間財務襲の注記として﹂(企会審毯.﹂第一部・二4:^・4)︑より具体的には有価証券墾口書(半期報告書)中の経理の状況において︑財務襲(中間財務諸表)の項とは別個に

肴価証券等の時価情報Lなる項を新設して︑そこで開示することが求められている(大薯令第四喜)・すなわち・それ︑り時価情報は財務襲の本文においてではなく︑それに対する壇情報として開示することが義務付け撫りれたので

ある︒}︑れはまた︑財務諸表は伝統的に採用されてきた原価嚢会計に依拠して作成し・他方・当該時価纂は財務

(4)

諸表に対する補足情報として開示する︑ということを意味している︒

かかる時価情報の取扱いに対して︑当然のことながら︑それら時価情報を財務襲の本文あるいは本体に組み込む︑

という考えを提唱しうるのであるが︑この場合には︑貸借対照表上での時価の計ヒに伴って生ずる保有損糞評納

益)・とりわけ保有利得(評価蓮の認識可能性が︑分配可能利益あるいは処分可能利益計算との関連において問題と

なってくる・評価益あるいは委現保有利得の排除を金科︑案とする伝統的な.原唖義会計に対して︑それが真..同

から対立してくる問題であるからである︒先に挙げた国際会計基準委員会の公開草案第︒︑...口与のよ.つな動.同は︑かか

る原価義会計に対するひとつの挑戦と見ることもできるが︑有価証券等の時価情報開示問題に係る会計処理問題

は・原価義会計の基盤をなす基騰念に変革を迫るものであり︑その意味では原価義会計の蕪を揺るがす内容

を秘めた問題でもある,

﹃意見導﹄は・かか喬題につながる先物取引に関するヘッ叢引および先物損益の会計について︑次のよ.つに述

べている・禿物取91の会計処理基準については︑現段階において︑損益の認識︑ヘッジ会計の方法等に関する確定的

な基準を設定するには・なお検討を要する多くの問題点が残されている・しとか・りL︑禿物取引の損益認識について会

計基準を設定し・また︑ヘッジ会計を導入することは︑⁝時期尚日朴であるL(企会審︺¢㊤︒﹄2︑第..部︑一‑)︒かかる

引用に明らかなように・﹃意見誹等﹄は有価馨等の時価情報を補足情報として開示する}しとを誘てはいるものの︑

かかる情報を財務諸表の本体に組み込む可能性を全血的に否定しているわけではない︒そ・つであれば︑当該時価情報

を財務諸表の本体に組み込む場合︑それについて生ずる保有損華原価義会計との関連において如何に解釈し.つ.⇔

かを問い︑考えることはいま必要なこととなろう︒

かかる問題は﹃意暴尋﹄の公表前後で何人かの論者によ.て論じりれ︑また冗九〇年九旦二日に行われた︑

(5)

会計Lの 有 緬 証 券 時価 言輻南i論の 視点 と方 向  

31 日本会計研究学会第四九回全国大会での統一論題﹁日本の財務会計制度・監査制度ーー利害調整会計と情報開示会計

の関係i‑﹂についての報告.円卓討論では︑そのような問題が正にホットな問題として取り上げられている(円卓討

論毯ご℃℃﹂.㎝墜︒7しのよ・つな状況かりすれば︑かかる問題の考察に当たっては︑それについてどのような見解があ

り︑そしてそΨ﹂での論点は何か︑を整理してみることが必要であろう︒それが本稿の一つの課題となる・

かかる諸見解の論点の整理において気付くことは︑各論者雫.張は程度の差こそあれ︑アメリカの財務会計基準審

議会(コ§︒一鍛;8§二薦ω謹竃ω・尊8§の財務会計諸概念に関するステイトメントL(︒・§ヨ貫︒栖閃帥§量

・︑.・︒)

'凡

ているのか︑また市場性ある有価証券について財務会計基準鈷臼築︑寝(充荒年)がすでに存在するが・それと当

該ステイトメントとの関連はどのよ・つに考え・りれるか︑を明らかにすることが必要となろう︒というのは・かかる検

討は︑我が国において展開されている有価証券等の時価・保有損益の計上に関する諸見解(かかる見解を便宜的に﹁有価

証券時価評価論﹂と総称する)の視点をより的確にしうるであろうし︑また今後の展開の方向をも明らかにしうるであろ

う︑と考えられるからである︒これが本稿のもう一つの課題である︒

さりには︑原璽義会計の薫を揺るがしつるような︑いわば.原璽義会計理論の;の変則性をなす可能性のあ

るかかる有価証券時価評価論を検討することによって︑会計理論構築に対するひとつの視座を得る乎掛かりとした

(6)

 (‑)金融資本市場の拡大に伴う企業金融の変化︑企業の財務戦略テクニックの概要︑誉りに各種の金融商.叩等の会計処理の概

80]

(2二九九〇年三月二吾付で﹁財務襲等の監査証明に関する省令等の蔀を改正する省令﹂(大薯令第四再)が公布

され・その第二条の﹁企業内容等の開示に関する省令﹂の一部改正により︑市場性ある有価証券および先物.オプシ.ン取引等

の時価情報の開示が義務付けられた︒また同日付で﹁市場性ある有価証券及び先物.オプシ.ン取引等の時価情報の開.歪つい

(.)

(3)国際会計基準委員会の公開草案第一.︑二号の投資の会計処理に関する改訂作業は︑金融商︒叩に関する検討作業の成果が得り

(一︾ω▲Q[O]・・)

(

8P)

二 有 価 証 券 時 価 評 価 論 ﹃ 意 見 書 等 ﹄ の 立 場 i

﹃意見書等﹄においては︑先物取引については﹁決算時における未決済の契約額︑▼︑れに対応する時価及び差損益﹂

が・またオプション取引については﹁決算時におけるオプションの貸借対照表価額︑これに対する時価及び差損益﹂

が開示すべき情報とされ・これがそのまま改正された﹁企業内容等の開示に関する省令﹂に盛り込まれている(企会審

ロ80﹂第一部・二2)︒かかる情報の開示が要請されたのは︑(1)先物.オプション取引がオフ.バランスとなってい

るために︑取引実態が的確に把握できないこと︑(2)それら取引の実態を適時.適切に開示し︑財務諸表の有用性を

高あること・および(3)恣意的な取引による利益操作を抑止するワしと︑とい・つ理由による(企会審ロ§]第蔀︑一

(7)

会計 トの有価証券時価評価論の視点 と方向 33

2)

かかる情報開示と連動して︑市場性ある有価証券に係る時価情報も︑﹁決算時における有価証券の貸借対照表価額・

}﹂れに対応する時価及び評価損益Lに分けて開示されることとなった(企会蜜垂第蔀・三2)・その理由として・

(‑)ヘッジ対象有価証券の時価纂喬時に開示しないと投資家を‑スードするワ﹂と・(2)保暮価証券の含み

損益を開示する}﹂とによ.て財務諸表の有用性堂層高めること︑(3)会計基準の国際的調和化を図ること・および(4)婚法適用企業と原価法適用企業との開示面での均衡を図ること︑の四点が挙げられている(企会董ゆ㊤︒]篁

部︑一3)︒

}﹂れ.りの理由の.つち︑特に前二者が重視されているようである︒この点を補足すれば︑次の如くである(白鳥富80ぴ]

暑.ω早ω①)︒

先物.オプション取引は保有する有価証券の相場変動リスクをヘッジする目的で行われることがある・かかる先

物.オプシ.ン取引の相場変動による差損益を開示する場合には︑保有する有価証券についての時価情報をパラレルに開示しないと︑ヘッジ取引に関する損益情報の開示が偏り︑財務諸表利用者を‑スードするおそれがある・これ

かわすれば︑ヘッジ対象有価証券の時価情報のみが姐上に載ることになるが︑ヘッジ関係の明確な対応を特定化できない状況があるので︑信頼性のある時価を智うる有価証券の全部について時価情報を開示するのが適切である・

また︑保有有価証券の含み損益(評価損益)が株価の形成に大きな影響を与え︑企業もその含み損華担保に資金調達を行.たり︑損失の穴埋めとして含み益のある保有有価証券を士冗却するなど︑といったことを考慮すれば・企業財

務に与える影響の程度とい・つ点では︑先物・オプシ・ン取引それ自体よりも︑これらの取引の主要対象商品である市場性ある有価証券の方がはるかに重要である︒したが.て︑保有有価証券の評価損益を加味した時価纂が開示され

(8)

なければ・企業の現状分析や将来性の判断に役立つ財務情報が充分に得られない︒

ここに重要なのは・市場性ある有価証券に係る時価情報の開示は先物.オプション取引の時価情報開示と連動して

問題とされている・ということである︒市場性ある有価証券の時価情報が補足情報として開示され蚤﹂とになったの

は・先物・オプション取引の時価情報が補足情報として開小される甲﹂とになったかりであろ・つ︒逆言すれば︑もしも

先物.オプション取引の時価情報(そして差損益)が財務襲の本体で開.小される}しとになれば︑市場性ある有価証券

の時価情報(そして評価損益)の財務襲本体での開小が当然隔題とな.て}しよ・つ︒かかる関係を認識するな.りば︑

﹃意見書等﹄における有価証券時価評価論を考えるとき︑先物取引に関する差損益(先物損董の性格解釈は︑瘍性あ

る有価証券の評価損益の解釈に関連することになる︒

それでは・﹃意見馨﹄は先物損益の性格をどのように捉えるのであろうか︒﹃意異口等﹄は︑先物取引の損益認識

に関する会計基準としては︑﹁決済基準﹂から﹁値洗基準二への移行を基本的に考える︒

決済基準は・五八五年の我が国における債券先物取引市場の開設に伴い︑目本公認会計﹂協会の当面の指針︑暫

定措置として公表されたものである(日本公認会埜協会葛・・邑︒これは︑﹁先物相場の変動に基づく値洗差額を︑当

該先物取引の決済時に損益として認識する基準﹂である(企会審墓︒]第..部︑一2)︒差金(差額)決済時は︑[ 体的

には反対売買の行われる時点であるから︑かかる基準は皮対売買亘基準L︑晃金授受(目)基準Lと呼ぶ}︑とも

できるが・これは・﹁売上高計上の具体的基準として出荷基準や引渡し基準が採用されているのと同様﹂の考え方︑す

なわち﹁実現主義﹂に依拠して採用されている(日本公認会計ヒ協会ロ㊤︒︒誓冨ε)︒

しかしながら・決済基準を採用した場合には︑先物取引がオフ・バランスとなり︑決済時まで損益が認識されない

ので・先物取引に関する経営実態が充分に開︑不されなくなる︒また先物相場の変動によ.て損失が発生している時に

(9)

会 計 ヒの 有 備 言正券 時 価 評し価 論 の 視 、叔 と 方 向 35

は︑損失未計上となるたあに財務健全性の観点から好ましくなく︑かかる損失を被っている先物取引を未決済のまま

にし︑利益の発生している先物取引を決済することによって︑恣意的に期間損益を操作することも可能となる︒さら

にヘッジ目的の先物取引について︑ヘッジ対象物の損益が期末までに認識される場合には︑ヘッジ取引における損益

認識のミスマッチが起こり︑ヘッジ対象物の損益がヘッジ取引によってカバーされている︑という経済実態が開示さ

れないことになってしまう(企会審ロΦ8]第一︑部︑.3)︒

このような決済基準の問題点の多くを解決でき︑さらには企業の実態開示を重視する損益計算に︑より適合しうる

基準として︑﹃意見寿等﹄では﹁値洗基準﹂の採用が望ましいとされている︒また値洗基準が米英等の会計実務におい

て一般的なること︑したがって︑かかる基準が採用されることは会計基準の国際的調和化にも資すること︑さらに現

行の外貨建取引等の会計基準との整合性が図られること等も︑値洗基準を採用する理由となっている(企会審[一¢8L第

.一部︑一4)︒

先物取引については︑先物取引の建玉(未決済の売買約定)について︑毎日︑限月別の基準価格(張入値段)をその日

の約定価格(約定値段)とは別に定め︑前日の帳入値段と当日の帳入値段との差額(値洗差金)を毎日清算し︑先物取引

の建玉をすべて新しい基準値段に引き直すという特有な制度がある︒値洗制度と呼ばれるものがこれである(原ー荒井

ロ㊤︒︒刈﹂℃や留・︒鱒)︒先物取引の損益認識に関する﹁値洗基準﹂は︑かかる制度に依拠して︑﹁先物取引は日々完結してい

ると言う見方に立脚して︑日々の柑場変動に基づく値洗差額を(値洗いの都度)損益として認識する﹂基準であるへ企会

審ロ⑩8]第︑.部︑一4括弧・引川者)︒

かかる値洗基準に従って把握される値洗差額は如何に解釈できるか︑が市場性ある保有有価証券の時価評価と関連

して問題となる︒値洗差額の解釈の一つは︑それを先物の評価損益と考える観方であろう︒前日の最終帳入値段を当

(10)

日の最終帳入値段に付け替えて︑建玉を新しい基準値段に引き直すのが﹁値洗い﹂であるので︑もしも先物取引それ

自体をオン.バランス処理するとすれば︑先物取引の建玉は︑かかる値洗いによって時価で評価替されることになる︒

値洗差額はかかる評価替によって生ずると考えて︑その性格は評価差額すなわち評価損益に他ならない︑と観るので

ある(白鳥[お㊤O山冒Pお19)︒

かかる観方からは・先物取引の対象が上場有価証券であるならば︑保有している現物の有価証券も時価評価して︑

その評価損益を認識すべきである︑と主張されることになろう︒先物だけを時価評価して︑手持ちの現物の有価証券

を時価評価しないのは︑損益計算上偏りが生じ︑合理的ではない︑と考えられるからである︒証券会社の商口㎜有価証

券・また一般事業会社の短期的所有の上場有価証券については︑このことが特に当てはまることになろう︒

しかしながら・かかる先物および保有有価証券の評価損益の認識は︑評価益の排除を標楴する実現主義に抵触し︑

かかる﹁実現﹂概念を基礎概念とする原価主義会計(理論)に挑むような問題を提示することになる︒この点を考慮に

置きつつ︑﹃意見書等﹄の値洗差額の基本的な解釈を尋ねてみよう︒

﹃意見書等﹂は︑値洗差額を︑実体を伴う金銭の授受または一種の金銭債権.債務の増減額として解釈しようとする

(白鳥ロ㊤ΦO鉱O邑お"中川ロ㊤㊤O]O﹂㊤"新井h白鳥ロ㊤8三〇〇﹂↓︒︒1︒︒一)︒つまり︑値洗差額は評価損益ではなく︑したがって

その認識は実現主義とも翻齢をきたさない︑と観るのである︒

その根拠は次のようである︒取引所会員(証券会社等)の自己玉に関しては︑毎日の値洗いにより金銭による差金の

授受が行われており︑実際に資金の移動が当事高で起こ.ている︒すなわち︑値洗差額はキャッシュ.フローに裏

付けられていて︑単なる評価上あるいは計算上のものではない︒また︑取引所会員が一般事業会社の先物取引を取り

次ぐ委託玉の場合には︑値洗差金の授受について︑受託者たる取引所会員は委託者たる一般事業会社のために立替え

(11)

会 計 トの 有 価 証 券 時価 評 価 論 の視 点 と方 向 37

たり︑預かったりしているものと考え︑委託者別にそれを債権・債務として日々把握する︒かかる差金について︑委

託者たる一般事業会社との間で実際に金銭の授受が行われていないが︑受託者たる取引所会員の債権・債務としての

処理と対応して︑委託者たる一般事業会社の側でも値洗差額を一種の金銭債権・債務の増減額として捕捉し︑損益認

識するワしとが合理的となろう︒すなわち︑値洗差額は単なる評価損益ではなく︑キャッシュ・フローの確実性を伴っ

た一種の債権・債務として解釈しうるのである︒

値洗差額に関するかかる解釈に関連して︑保有有価証券の﹁評価損益﹂は如何に解釈されるのであろうか︒かかる

問題は︑期末時点における先物取引の建玉および保有有価証券の時価のオン・バランス化に絡んで・実現主義あるい

は実現概念と不可分に関係してくる︒

実現主義あるいは実現概念は︑伝統的には︑法的な販売または同様の過程による現金または現金等価物等の流動資

産への転換︿換価﹀(勺山仲︒コ行ご巳無霧ロ逡o]Pお)︑または﹁市場取引において提供した用役に対する客観的に測定可

能な流動資産の受領﹂(↓冨菊①巴楠鑓紳δコO︒口8bけ[一霧笛],ωεを内包する概念として︑原価主義会計において位置付け

られてきた︒すなわち︑(1)取引契約が存在し︑(2)外部の取引当事者に財貨または用役を提供し︑(3)その対価

として流動性ある資産を受領したときに︑収益(利益)を認識・計上する︑という収益(利益)認識基準として︑それ

は原価主義会計において重要な位置を占めている︒そしてそれは︑これらの要件を充足しない﹁評価益﹂あるいは﹁紙

上利益﹂を特に排除する役割を担ってきた((3白鳥ロ⑩8伽﹂P鳥︒︒"加古ロ¢㊤ごや留))︒

値洗基準に基づく値洗差額を損益として認識する場合には︑それを一種の債権・債務の増減額と考えることによっ

て︑実現概念の要件(3)は充足されうる︒しかし︑他の要件についてはどうか︒先物取引については・契約により

期限(限月)が定められ︑決済までの期間が短期であることからすれば︑要件(3)の他に(1)も充足されうる余地

(12)

がある︒しかしながら︑要件(2)の充足は︑取引が先物たる点からすれば︑望むべくもない︒したがって︑伝統的

な実現概念を墨守するならば︑値洗基準に基づく値洗差額は認識しえないことになる︒

このために・﹃意見書筐は実現概念︑実現主義を広く解釈しようとする(白彗§暑・蔭・.耶川﹁薯﹂二)︒伝統

的な実現概念は・典型的には販売取引が完ゴ完結することによ・て充足され︑それに係る収益が実現収益として認

識される︒ここに広義の実現概念の解釈は︑かかる販売取引の完結を待たずに収益を認識しうる方途を︑伝統的な実

現概念の延長線ヒに見い出そうとする試みである︒広義の実現概念に関して︑以下のような要件が考えられている(白

鳥ロ⑩⑩080P偽︒︒iお)︒

①いつでも自由に取引の履行が可能な組織化された市場が存在すること節座に取引可能な市場の存在)

②取引当事者間の相対の交渉を必要としない客観的な取引所柑場の存在(客観的な市場価格の存在)

③取引が未完了であっても︑ある種の契約または取引制度の存在によって︑取引の完了が確実に見込まれ︑取引

が完了した場合とほぼ同等とみられる程度に確実かつ客観的な財産増減の保証が得られる状態にある▼︑と(取引

完結の確実性の存在)

かかる要件を値洗基準に基づく値洗差額の認識に係わらしめるならば︑先物取引については︑整備された取引所が

設置され︑いつでも自由に反対売買による決済が可能であるので︑①の要件は充足される︒また取引所の相場で売買

され・売買価格を相対で交渉することはないので︑②の要件も充たされる︒さらに︑先物取引は限月取引であるため︑

限月の最終取引日までにそれは決済されねばならない︒すなわち︑先物取引においては︑取引の完了.完結が制度ヒ

保証されているので︑③の要件も充たされる︒かかる③の要件に関係して︑値洗差額を一種の債権.債務の増減とし

て考えることができるので︑キャッシごフ・あ確実性も保証される(白鳥ロ§餌冒・お)︒

(13)

会 計Lの 有価 証 券 時 価 評価 論 の視 点 と方向 39

値洗基準に基づく値洗差額については︑その認識に必要な右掲の三条件すべてが充足されるので︑広義の実現概念

の下では︑値洗差額は販売取引において認識される実現収益と同様に︑﹁実現﹂損益として認識されうることになる︒

したがって︑値洗基準に基づく値洗差額は概念上は分配可能利益を構成するものとして扱われることにな塚焚︒それ

では︑このように値洗差額の性格を解釈したとき︑保有有価証券の﹁評価損益﹂は︑広義の実現概念との関連におい

て︑如何に解釈しうるのであろうか︒

市場性ある有価証券の場合には︑いつでもn由に売却しうる取引所等の公設の市場が存在するので︑広義の実現概

念の①の要件は充たされる︒また︑かかる市場における相場をいつでも知りうることからすれば︑②の要件も充足さ

れうるであろう︒しかし︑﹁保有有価証券が貸借対照表日の市場相場どおりに売却され︑その保有損益相当額を確定・

換金できる可能性は乏し﹂い(加占[お㊤O﹂や幽ごロ$ごo︒お)︒というのは︑﹁当該有価証券が取引所の相場のある株式で

あったとしても︑その相場は︑すでに取引が成航した後のいわば﹃事後的な価格﹂であって︑当該企業が仮にそのと

きの相場を指し値として保有株式を売却しようとしても︑その日のうちに取引所の相場通りの価額で実現するという

保証は何もないのであり︑あえてその日のうちに換金化しようとすれば︑成行き相場に委ねざるをえない﹂からであ

る(加占ロ㊤8]P&賛りり一﹂㍗ω④)︒このことは︑﹁株式市場には実現可能価額の金額を確定するための制度的保証がな

い﹂(加占ロ80]p臨萱㊤⑩ご,ω9ことを明承している︒つまりは︑かかる市場性ある有価証券の場A口には︑③の要件

は充足されえないのである︒

これと同様の︑次のような見解も挙げうる︒すなわち︑市場性あるL場有価証券は﹁先物取引とは異なり︑短期間

のうちに売却取引が必ず行われるという契約関係は存在せず︑その市場価格の変動を会社財産の増減として認識しう

る確かな保証が不11分だとみられる﹂(白鳥[お8包o﹄O)︒この点で︑株式市場は﹁公示レート制度をもつ外為市場や

(14)

値洗制度をもつ先物市場と根本的に異なるのである﹂(加古ロ80U署﹂①ムご[お㊤一]Pω㊤)︒

このように︑値洗差額の性格を解釈するうえで有効に作用した広義の実現概念は︑市場性ある保有有価証券の﹁評

価損益﹂については適用しえず︑かかる﹁評価損益﹂は分配可能利益を構成しない未実現損益として処理されること

に献龍︒﹃意見書等﹄は︑広義の実現概念をテコに値洗基準に基づく先物損益を実現損益とする道を開いたものの︑先

物取引の対象となる現物の有価証券の評価損益を未実現損益のままとする考えを基本的に持つに至っている︒実は︑

この点が争点となるのである︒

()§]日等

一九九〇年八月号(第四.巻第八号)で特集が組まれている︒また︑かかる特集の嚢部分は新井占鳥[お8σ]に再録されて

(2)北村ロ§]は値洗差額の債権債務性に着目して︑翼現義︑原価義を前提とする現行の会計制度の枠内で値洗差金の認

(P)

(3)Φ︒︒

ωΦoσ2]

(4)

(

8]4(2))

(5)上場有価証券は︑短期的所有のものと長期的所有のものとに分類されるが︑短期的所有の有価証券についてのみ評価損益を

(15)

(白$OP8)[8]

(Oα)

三 有 価 証 券 時 価 評 価 論 ‑ 醍 醐 説 お よ び 森 田 説

会 計 トの有 価 証 券 時価 評 価 論 の視 点 と方 向 41

(一)醍醐説

﹃意見書等﹄は︑市場性ある有価証券の評価損益を含む時価情報の開示を求める理由として︑主として︑ヘッジ取引

の損益情報開示との対応と︑財務諸表の有用性の一層の確保とを考える︒財務諸表の有用性という側面は︑保有有価

証券の含み損益が株価形成に大きな影響を与え︑特に含み益を伴う膨人な含み資産が資金調達の担保となり︑将来の

経営上のリスクに対する保険ともなる︑という保有有価証券の企業財務に与える影響の程度に着目する︒しかる後に︑

企業の現状分析や将来性の判断に役立つ︑かかる含み損益を包含した保有有価証券の時価情報の開示が必要であり︑

それによって財務諸表の有用性を一層高めることができる︑とする︒ここに検討する醍醐説は︑かかる観点のみなら

ず︑社会的分配の公正性という観点をも含め︑A63み損益の処理と開示を一層推し進めたものとして考えることができ

よう(醍醐胃$O働冒門一80σゴ[む㊤O︒﹂一篇㊤㊤嵩等)︒

我が国においては︑近年︑資産蓄積(ストック)が年々の所得(フロi)を上回るテンポで増加する︑という﹁経済の

ストック化﹂が急速に進展したが︑とりわけ土地と株式の時価のL昇による含み資産(含み益)の形成が顕著で︑経済

のバブル化現象とさえ言われるほどのものであった︒かかる経済のストック化は︑土地や株式の有無によって資産蓄

積の格差(資産格差)を拡大した︒株式については︑一九八九年末までほぼ一貫して上昇し続けた株価水準も︑九〇年

(16)

初めのいわゆる株式・債拳為替の﹁ト些ル安おなかで大幅にF落し︑その後やや回復したものの︑依礎して

株価は低迷し・いわゆる﹁バブル経済の崩壊鏡象を引き起こし︑今度は含み損が社会問題化するに至.ている︒

醍醐は・かかる経済のストック化に伴う資産格差現象に特に注目し︑とりわけ含み糞保有利得)を未実現利得とい

う理由で分配可能利益に含めない原価霧会計が︑所得分配面および課税面でも不公平を生んでいる▼︑とを問題にす

(bPωO)

彼は言う・﹁価格変動差益の獲得を嚢な︑あるいは唯一の動機として保有されている土地︑株式︑先物商.⁝とい.

た特定の資産の価格が顕著に変動し︑土地︑株式の保有の有無に起因する資産格差が社会問︑題化してきた経済のス

トック化の時代に・これら資産の価格の変動を反映しない会計報告はいったい誰にとって有用なのであろうか︒また︑

保皇体の意思で随時︑換金が可能でありながら︑保皇体の意思でまだ換金されていない状態の評価益を葎に分

配不適状と割り切ることに問題はないであろうか﹂(醍醐[お8げ言・︒︒・︒"[お8鶴冒﹄9︒

かかる前提ないし問題意識から︑醍醐は︑﹁随時確定可能で換金可能な保有利得の計ヒを促すと同時に︑そうした実

現可能な利益をも企業成果に含めることによって︑企業の分配可能利益を実態に近づけ﹂(醍醐[お8鶴﹂℃唱ω凹)︑﹁その処

分を利害関係者の意思に︑あるいは公的な政策判断に付すことこそ︑企業成果の公正な分配に資する会計の姿である﹂

(醍醐ロ㊤8印言﹄o)︑という当為的な命題を導出する︒そしてかかる命題から︑原価評価.実現基準を基礎に成立して

いる現行の原価主義会計が︑﹁土地や株式の保有利得の凍結効果を生み︑それら保有利得を資本として拘束したのと同

じ結果を生む可能性を含んでいる﹂(醍醐ロり㊤O餌]P蒔)点を問題にし︑さらに原価主義会計の酬アウトフット.テータ

(期間損益)の操作可能性﹂(醍醐[一80包℃・α)をも批判の姐上に載せる︒かくて︑彼は︑﹁上場有価証券については会計

開示の面で︑現行の原価評価・実現基準を時価評価・実現可能性基準に改めることが必要であり︑随時の確定可能性

(17)

会 計 トの 有価 証 券時 価 評価 論 の視 点 と方 向 43

と分離可能性の両面を備えた︑企業支配株式以外の上場有価証券には︑分配可能利益算定の面でも時価評価.実現可

能性基準を採用するのが妥当である﹂(醍醐[お8呂薯.︒︒甲器)︑という帰結を得る︒

それでは︑彼の.↓.日う実現可能性基準とはどのようなものであろうか︒

原価評価と表裏の関係で捉えられる実現基準は︑彼によれば︑(1)当の経済宅体を一方の当事者とする市場取引を

介して(市場取引要件)︑(2)財または用役を提供するに応じて(給付要件)︑(3)対価として流動性ある資産を受け入

れる▼﹂と(流動性ある対価要件)を要件として︑収益(利益)を記録することを指・不する会計基準である(醍醐[薯包

"8︒かかる三つの要件を内包する実現基準は︑現行の原璽義会計を伝統的に支えてきたものであり・これによれ

ば︑保有利得の計上につながる時価評価は認むべくもない︒

かかる実現基準に関するアプローチとしては︑意思決定を支援する利益情報の提供という観点から・不確実性を処

理する概念用具として実現概念を捉える﹁測定可能性アプローチ﹂と︑企業成果の分配標準たる利益情報の提供とい

う観点から︑処分可能性をもつ利益をスクリーニングするための概念用目パとして実現概念を捉える﹁処分可能性アプ

ローチ﹂の二つのものが考えられる︒前者は︑将来取り消しを要しないほどの確定性があれば︑実現基準の三︑要件を

厳格に充足しなくても︑収益(利益)を認識しようとするので︑時価評価との結合の可能性が開かれる︒これに対して︑

後者は︑流動性ある対価の受入こそが実現の本質的属性であると捉え︑原価評価との不可分性を要求する(醍醐[お8鉱

(2)薯﹄ω‑卜︒㊤)︒

我が国における実現概念の解釈論や規範論は︑醍醐によれば︑﹁処分可能性アプローチを固持しつつ・測定可能性を

根拠に容認されたいくつかの乍ル(r事進行基準や収穫基準等)を実現基準の例外として解釈してきた﹂(醍醐墓︒餌]

や・.①)︒アメリカの場合には︑業績評価の観点から︑測定可能性アプローチが強く採られてきたが︑彼は︑会計上の利

(18)

益が種々の経済主体への企業成果の分配標準としても用い・りれている現実を考慮すれば︑処分可能性ア.フ.ーチを含

めた解釈の必要なることを主張する(醍醐[一〇8⇔]℃や諺1ωO)︒しかし︑かかる処分可能性の要件の強調は︑彼にあって

は︑先に挙げた実現基準の三要件を絶対要件とすることに回帰することを意味するわけではない︒

彼はむしろさらに進んで︑﹁増価をいつでも流動性ある資産に転換できる客観的状態の存在︑そ︑会計が追求すべき

リアリティであり・利害関係者の関心事のはずだから﹂︑それに着意し︑そしてその結果︑実現基準の利益操作性を排

除するために︑﹁実現基準を実現可能性(希筈N印σ一一一蔓)基準に置き換えることが必要であると考える︒﹂

ここに﹁実現可能性﹂とは︑﹁市場でげんに増価を流動性ある資産に転換したことをもってではなく︑特別な努力な

しに増価を合理的に見積り可能な価格で流動性ある資産に転換できる客観的状態が存在する}︑とをも.て︑実現とみ

なそうというものである﹂(醍醐ロ㊤8餌﹂やωO)︒かかる客観的状態の存在なる要件は︑彼においては﹁確定可能性﹂な

る要件に言い換えられる(醍醐ロ80m︺や︒︒一)︒

かかる要件のほかに・彼は・妻用土地の保有利得を分離不可能な未実現増価とみなす甲︑とが必要な藷に︑﹁企業

の現在の事業活動の継続に支障をおよぼさない範囲で分離しうる増価を実嵜能な利益と捉.凡る﹂︑とい.つ﹁分離可能

性﹂なる要件を追加する(醍醐ロリOO鋤]︒⁝︒)︒したが.て︑醍醐にあ・ては︑実現罷性基準は確定可能性と分讐能

性の二要件からなると構想されるのである︒

かかる実現可能性基準を市場性ある有価証券の評価とそれに係る保有利得の認識に適用したとき︑上場有価証券に

は・随時それを処分し・換金できる組織的な流通市場が存在するので︑市価(時価)でそれを評価する罷性が開け︑

したがって︑その保有利得には︑その金額をいつでも確定でき︑換金できる可能性が備わっている︑と言うべきであ

る・かくて・実現可能性基準に従えば︑(a)宥価証券の保有利得の発生と実現(記録)は時点的にも金額的にも対応

(19)

会計 トの有 価 証 券 時 価 評 価 論 の視 点 と方 向 45

関係が常に保たれ︑保皇体の董が影響する余地はないL︒また︑(b)実現可能性基準は﹁市価の動向を即時に会

計記録に反映させる﹂ワ︑とができるので︑養産選択蓮用の巧拙を適時に報告する占描で会計責任表明の機能も満たし

.つるL︒誉りに︑(c)実現可能性基準に従.て認識される︑随時確定可能で換金可能な保有利得は分配適状性をもつ

皇口い.つるので︑かかる﹁実現可能な利益をも企業成果に含める}しとによって︑企業の分配可能利益を実態に近づけ

る﹂ことができる(醍醐ロ80肥OO﹄一1︒︒悼)︒

以上の如く︑醍醐の規範論はきわめて明快である︒しかし︑ここに注意すべきは︑彼の挙げる実現可能性基準︑そ

れも特に確定可能性要件は︑先に検討した﹃意見書等﹄の広義の実現概念の要件とほぼ同型である・ということであ

る︒にもかかやりず︑﹃意暴臼等﹄では︑市場性ある有価証券の保有利得は分配罷利益を構成しない・単なる評価益

としての米実現利益と観.bれるのに対して︑醍醐にあ.ては︑それは分配適状性をもつ︑分配可能利益を構成する実

現可能利益と観られるので臥魏︒

かかる帰結の差異をもなりす主因は︑取引が未完了であ.ても︑取引の完了を確実に見込むことができ・取引が完

了したとほぼ同様とうりれる程度の確実かつ客観的な財産増減の保証を与えうる取引制度が存在すると観るかどうか

にある︒﹃意見書等﹄は︑市場性ある有価証券については︑そのような取引制度は存在しないと観るのに対して・醍醐は︑低価法によ.てすでに時価計上が行われているので︑時価上昇による保有利得の計上についても・その計上を保

証する取引制度が存在すると観るのであ(罷︒

かかる問題は︑蒐異なる次元の問題を派生させる︒すなわち︑市場性ある有価証券は貨幣資産か・あるいは非貨幣資産であるか︑とい・つ問題がそれである︒﹃意見書等﹄の考えからすれば︑市場性ある有価証券は非貨幣資産として

分類される▼﹂とになり(加古[一〇㊤8Pミ)︑醍醐からすれば︑その点は明確ではないものの・それは幕資産として分類

(20)

されることになろう・かかる問題は︑森田によって詳論されているので︑次にそれを検討す登しとにし︑その後に森

田説と醍醐説︑並びに﹃意見書等﹄の見解との関連を考察したい︒

(二)森田説

森田は・﹁名目資本維持説﹂の典型的な形態としての原価義会計は︑﹁企業に投下された資本の舎を貨幣その

ものとしてとらえ・営業活動を通じて貨幣としての資本がどれだけその名︹賦において増殖されたか許算.確定し

ようとする利益計算体系であり︑それも﹁資産の原価評価を前提とする利益計算体系﹂である︑︒しする(森思塁

p︒︒)

より具体的にかかる利益計算を示すならば︑次のようになる︒取得し葬貨讐産は︑それが企茜にとどまる限

り・たとえ時価の変動があっても・あるいは︑より高い価格で販売できる可能性があっても︑取得原価に相当する貨

瞥里を袋するものとみなし︑貨幣資本の増減を認識しない︒そして︑それ・りが販士冗ないし︑冗却を通じて現金または

その他の貨幣資産と交換されたときに︑初めて当該篠が袋していた貨讐本の消滅.減少と︑受け入れた資産が

袋する貨幣栞の増加が認識され︑その差額として︑貨幣資本の純増減が認識されるL森田・¢司Φ]℃・α・︒)︒貨幣資本

の純増減分として把握され魚益の認識は︑﹁実現義をいわれる考え方あるいは基準に従.て行われるので︑実現

t義が原価宝義会計の資本増減⁝の認識基準となっている︒

﹁原価義会計においては・資本を幕とみる貨讐本概念のもとで︑その資奔る幕を禁的には吊湊性資

金(何にでも投資できる資金)とみる﹂(森田[垂三二で︑これとの関連で原璽義会計の利益計算を捉え直すなり

ば・以ドのようになる・すなわち︑畠選択性資金たる貨幣資本の投ドによ.て︑投下された財にそれは拘束される

(21)

会 計 トの 有価 証 券日寺価 評 価 論 の 視 点 と 方i司 47

(拘束された資本が﹁取得原価﹂と呼ばれる)が︑かかる貨幣資本が消滅し︑その対価として貨幣資産の形でn由選択性資

金たる貨幣資本が流人するとき︑拘束されていた貨幣資本は自由選択性資金に転化し︑流入した自由選択性資金たる

貨幣資本と消滅した貨幣資本の差・亡て︑自由選択性資金たる貨幣資本の増減すなわち損益が認識される(森田蔓㊤L

p

これからすれば︑原価k義会計の資本増減の認識基準たる実現t.義は︑﹁収益へ利益)の稼得が確実になるだけでな

・︑︑その利益を生むためになされた投資が回収され︑新たな資.本の増殖のために自山選択によって次の再投資を行う

ことが可能な状態﹂︑すなわち﹁再投資の準備‑⁝が行われることを実質的に要請する︒換.︑日すれば︑﹁利益認識の前提

としての﹃再投資の準備﹄︑これが実現池義に含まれる最も贋要な意味である隔︒かかる観点からは︑㎜販売基準に代表

される実現セ義は︑G‑W‑Gの過程の完全な完rでないまでも︑流動性ある資産へ短期間中に︑そして特別な困難なし

に貨幣となりうる資産)の取得を認識要件とするものであり︑﹃再投資の準備﹄を壌視した認識基準と解﹂されることに

なる(森田[お8婦Pき)︒

実現セ義をこのように理解したとき︑非貨幣資産に絢∵束されている自由選択性資金が何らかの企業活動等によっ

て︑その拘束が解かれ︑自由選択性資金に転化され︑再投資の準備が行われるならば︑特に販売を待たずとも・非貨

幣資産に拘束されている自由選択性資金がその拘束性を解かれたと観て︑それに係る自由選択性資金の増減額を損益

額として認識しうることとなる︒L事進行基準や︑特定の農産物︑貴金属に関する生産完了基準に基づく損益認識は

この例となる︒それらについては︑請負L事契約や市場相場によ.て︑契約価額に基づく代金請求や相場に基づく確

実な販売が保証されているからである︒すなわち︑これらの特定の農作物︑貴金属などの資産は貨幣と同様に観るこ

とができ︑生産完r基準は実現t義の適用となる(森田[お8﹄薯﹄O幽ご︒

(22)

これとの関連において︑一時所有の市場性ある有価証券はどのように考えられるであろうか︒現行の企業会計原則

においては・一時所有の市場性ある有価証券は商品・製品等と同じく︑原価評価され︑評価益の計上は認められてい

ない︒しかし︑﹁有価証券自体が自由選択性資金の状態にある﹂と考えれば︑有価証券の値上がりは︑それによって表

わされる自由選択性資金それ自体が増加していることを示す︒にもかかわらず︑現行の企業会計原則の如く︑かかる

有価証券について一販売という過程に固執して資本増加(利益)を認識しない﹂のは︑﹁実現主義の誤れる適用という

べきである﹂(森田[お8]噂﹄O)︒

このように︑森田の場合には︑一時所有の市場性ある有価証券は自由選択性資金たる貨幣資産として観ることがで

きるから︑その変動が起こっている時に損益を認識するのが正に実現主義であって︑この場合に販売ないし売却を

待って損益を認識するのは︑実現主義が誤って適用されている︑と主張される︒かかる有価証券が自由選択性資金た

る貨幣資産と解釈されるのは︑特定の崖物や貴金属の場合に似て︑当該有価証券を企業の意思によ.ていつでも販

売ないし売却しうるような市場相場があるからである︒そして︑かかる解釈かりは︑当該有価証券の値上がり益ない

し評価益は︑当該企業の意思でいつでも確定しうる自由選択性資金の増加分と考えうるので︑それは実現利益として

計上されるべきである︑と説かれることになる︒かかる論理はさりに︑先物取引やオ.フシ.ン取引の損益認識につい

ても適用されていく(森田墓︒喜.慧ω旧・㊤・・①喜﹂㌣ε︒それでは︑}とで検討した森田説と︑先に検討した﹃意見

書等﹄の立場並びに醍醐説との関係はいかに考えることができるのであろうか︒

(三)﹃意見書等﹄の立場︑醍醐説および森田説

﹃意見書等﹄では︑先物取引をオン・バランス化するために︑したがってまた値洗基準に基づく先物損益を正式に計

(23)

会計 ヒの有価証券時価評価論の視点と方向 49

上するために︑販売取引の完結を待たずに収益(利益)を認識しうる方途を︑実現概念を拡大することによって求め

た︒拡大化された実現の要件は︑①即座に取引可能な市場の存在︑②客観的な市場価格の存在および③取引完結の確

実性の存在︑というように要約されるものであるが︑特に③に対する取引制度の保証の存否が問題の焦点となる︒先

物取引の値洗差額については︑値洗制度に基づいて値洗差金の授受あるいは一種の金銭債権・債務の増減を認識しう

るので︑③の要件が充足され︑先物取引の時価評価・実現損益としての先物損益の認識ができることになる︒

しかしながら︑市場性ある有価証券については︑先物取引にみられると同様の取引制度は存在せず︑取引所の相場

通りの価額で実現しうるという保証もないので︑当該有価証券の時価評価・実現損益としての評価損益(特に評価益)

の正式な認識はできない︑と﹃意見書等﹄では考えられる︒この場合には︑先物取引と︑その対象となる市場性ある

有価証券との会計基準は対応しないことになる︒

このように﹃意見書等﹄は︑現行の原価主義会計の基礎にある原価評価・実現基準(実現お義)を︑破行的ではある

ものの︑時価評価.広義の実現基準へ変革・指導しようと試みている︒実現基準を実現可能性基準へと拡大して・時

価評価.実現可能性基準を基礎とする会計へ現行の原価主義会計を変革しようと試みる︑醍醐説も発想の揆を一にす

る規範論といえる︒しかし︑﹃意見書等﹂と異なるのは︑醍醐説の場合には︑市場性ある有価証券について︑低価法に

よってすでに時価が認められているのであるから︑時価上昇も計上しうる程の取引制度が存在すると考え︑先の③の

要件も充足される︑と主張されることである︒この結果︑醍醐説においては︑有価証券に係る保有損益は実現損益と

して認識されることになる︒

森田説では︑市場性ある有価証券は非貨幣資産ではなく︑貨幣資産として考えられ︑貨幣資産の変動分は自由選択

性資金のそれとして捉えることによって︑その変動が起こった時点で︑その変動分たる差額は損益として認識される︒

(24)

すなわち・かかる有価証券の自由選択性資金の変動はその時価によって測定され︑そしてその変動分たる保有損益は

企業の意思でいつでも確定しうることをもって︑それは実現損益として計Lすることができる︑とされるのである︒

市場性ある有価証券が自由選択性資金たる貨幣資産として解釈されるのは︑企業の意思によって当該有価証券をいつ

でも販売ないし売却できる市場相場があるからである︒換.﹂口すれば︑森田説では︑取引所の相場通りの価額でかかる

有価証券を販売しうる取引制度が存在する︑という事実認識が先行しているのである︒さすれば︑森田説では︑先に

挙げた③の要件も充足されると考えられていることになるから︑結果的に︑森田説は醍醐説と揆を一にする︑と︑肖う

ことができよう︒

森旧説では︑実現セ義あるいは実現概念の拡張は直接︑︑肖及されてはいないものの︑市場性ある有価証券の貨幣資産

としての分類は・﹁取引完結の確実性一なる要件を実現概念の内包に実質的に追加することになる︒すなわち︑醍醐説

における﹁実現可能性基準﹂と同様の基準が前提となって︑初めて市場性ある有価証券を貨幣資産として分類しうる︑

というべきである︒森田説は醍醐説と揆を一にする︑という所以である︒

以上における有価証券時価評価論の諸説の検討から︑次のことが明らかとなろう︒それは︑原価t義会計の基礎に

ある原価評価.実現基準を︑時価評価・広義の実現基準または実現可能性基準へ変革しようとする考えが一貫して展

開されている・ということである︒またそれら諸説の中心的な論点は︑保有損益(とりわけ保有利得)は実現損益性を有

するか否かということである︒かかる保有損益の実現損益性の存否に係る問題は︑取引所の相場通りの価額で市場性

ある有価証券を売却しうる制度的保証が存在するか否か(の観方)にかかっている︒

このような問題は︑アメーーカではどのように考えられているのか︒次にアメリカの場合について考察し︑もって我

が国の有価証券時価評価論の視点をより明確に把握することにしたい︒

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