﹁現代企業社会﹂の法構造
i八0年代企業・資本の法社会学1
池 島 宏 幸
はじめに一 共同報告の経過
二 視点
(5) (4) (3) (2) (1>
そのイメージ
物の見方と方法論
八○年代とは?
具体例戦後四〇年とIMF体制下の﹁企業社
会し三 一九三〇年代と一九八○年代との対比
ω 一九八○年総合安保体制
② 一九三〇年戦前体制
㈲ 現代の法体制は?
四 立法の推移︵図表︶
ω 社債一株式 ② 大小︵公開・非公開︶会社区分・合併 の追加改正への作業の進展 ①総会不要論? ②合併の簡易化の意味 ㈲資本救済の法メカニズム ω 公企業の民営化 ㈲ 企業情報の統一管理法五 八○年代企業をめぐる法意識と法状況 ω ﹁株式会社らしい株式会社﹂法論構想 の点検 ② 大小会社区分立法等は必要か?六 資金調達法の改正−企業金融法制の現 代化 ω 各株式の段階的法認 ② 各社債の段階的法認
㈲ 株式・社債の変質の提案へ
七 国策巨大企業法制の浮上?
ω今日的状況
② 大小会社区分立法等は必要か?
はじめに ㈲ 巨大株式会社立法八 経済社会と企業立法︵会社立法︶と法社 会学一経済的実態と法の枠組みの正確な 把握の必要
本稿は︑一九八五年五月一〇日︑日本大学会館に於いて開催された日本法社会学会での共同報告﹁企業の法社会学﹂
の冒頭に︑その総論的報告﹁池島宏幸︵早大︶﹃序一1八○年代企業法・資本法をめぐる法現象1その法構造と機
能−﹄﹂として︑報告したものを中心に︑学会報告では時間の都合で省略した部分を付け加えて︑若干の肉付けをし
たものである︒︵当日のプログラム等については︑商事法務一〇四〇号︑その主な内容については︑商事法務一〇四二
号︑その詳細は︑日本法社会学会機関誌﹃法社会学﹄三八号を参照されたい︒なお︑本報告についての参考文献は︑
学会プログラムでは︑次の主なものをあげておいた︒中村・北野編﹃企業と現代法﹄︵章草書房︶︑丹宗・厚谷編﹃現
代経済法入門﹄︵法律文化社︶︑松岡他﹁特集/大小会社区分立法﹂法律時報五六巻一一号︑池島宏幸﹃商法学の現代
的課題﹄︵敬文堂︶︑同﹃大企業支配体制の法構造﹄︵日本評論社︶︑同﹁現代商法とはいかなる法か﹂早稲田社会科学
研究二九号︶︒
一 共同報告の経過
﹁企業の法社会学﹂という大きなテ一々で︑共同報告を担当することになった経過を簡単に述べる︒
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「現代企業社会」の法構造
いわゆる﹁企業社会﹂といわれる現代において︑﹁人権﹂とか﹁国民ナイド﹂のアプローチをめざして︑約一〇年前
の一九七六年春につくられた﹁現代商法理論研究会﹂で関東および関西の事務局レベルでの討議を重ね︑打ち合わせ
をしながら︑詰めてきて︑﹁現代法現象としての企業法﹂を企業と資本と労働の側面で︑また中小企業との関係で︑大
企業の支配体制と一連の商法h会社法大改正と並行して︑巨大企業法制の新展開などの諸点を少しでも開示できたら
と考えて︑当面︑当日の五人による報告となった︒
まず①本稿の池島報告についで︑②藤原俊雄︵専大︶﹁地方都市における会社法の機能の状況と経営者の意識−静
岡市における小規模株式会社の調査結果から﹂は︑企業法の国内的側面からのアプローチで︑とくに地方の時代にお
ける地方での中小企業法の展開の実態を取り上げた実態調査報告であり︑中小企業法の機能状況をとりあげる︒③西
尾幸夫︵龍谷大︶﹁多国籍企業の資本構造と法一増大する企業内取引と法的規制﹂は︑国際的な側面からのアプロー
チ︑④市川兼三︵香川大︶﹁従業員持株制度の実態とその法的問題点﹂は︑企業構成者としての従業員の側面からのア
ブ戸ーチ︑⑤北野弘久︵日大︶﹁﹃企業主権﹄の法構造﹂は︑憲法・行政法的あるいは税財政法的側面からのアプロー
チとの関連で︑現代企業主権の現状につき︑①巨大企業の隠れた補助金の実態−法制と事実︑②中小企業の会計監
査︑政治献金︑中小企業事業承継税制等︑企業会計よりのデータで︑その実態を明らかにしょうとする︒
二 視点
Dそのイメージ
共同報告のイメージ作りとして︑ 77いろいろの視点が考えられるが︑大企業支配体制のもとにおける︑たとえば大企
業規制と中小企業保護助成等︑その実態の法的分析−現代法の一端の法分析・解明をめざす︒
本研究のいわゆる法源とされうるものは︑ひろく直接・間接の調査文献資料によっている︒また︑単に実態調査の
みならず︑広く入手可能な資料を使った多様な取り組みを駆使して︑法状況を分析し︑その法論理を解明しようとし
ている︒ また大企業問題は中小企業問題︑中小企業問題すなわち大企業問題の側面をもつという︑一方は他方を規定し︑他
方も同じように︑一方を規定するという相互規定の問題ともなるような現代社会のパラダイムが存在することも無視
できない︒
したがって︑まず八○年代の特徴的な問題性の開示ないし開陳による問題提起でもいささかなりともできないであ
ろうか︒ そして︑企業・資本に対する多様な取り組みの諸側面としては︑たとえば︑ω国内サイドの法状況︑②国際サイド
の法状況︑㈲企業・資本組織の法的構成サイドの法状況︵従業員組織等を含む︶︑ω国民サイドの法意識状況等を求め
て︑問題にアプローチしよう︒
② 物の見方と方法論
﹁物の見方﹂は多様であろう︒またそうありうると思う︒ところが従来から︑商法学・会社法学・企業法学という
学問・科学の領域では︑反論・反対説などが比較的少ない学問領域であると思われがちである︒
しかし︑そこにこそは根本的な思い違いがあり︑たとえば︑会社法学に対する﹁物の見方﹂は︑知らず知らずのう
ちに大企業サイド︑資本サイド︑国家サイドにかたよっていたこと︑またそのような教育を受けてきていたことに気
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「現代企業社会」の法構造
つく必要がある︒
従来のドグマ的な解説的な解釈法学としての会社法学で万事事足り︑それで事終われりという考え方が︑多かった
ようにも思われる︒
現実の会社法学・企業法学を学ぶには︑例えば常に新聞や雑誌等の企業・経済記事にも目を移して行かなければな
らない︒いかなる経済の変動が会社法・企業法にどのような影響を与えているかということ抜きに︑正確に事の判断
がしにくい状況にあるといえまいか? つまり︑一つには︑問題の把握の背後にある現代の資本主義経済をどのよう
に見ているかにも︑係わる問題でもある︒
会社法・企業法は︑概説書を読んでも判りにくい法分野であるといわれる︒その実態をつねに体験していないから
であろう︵例えば家族法︑借地・借家法︑財産法等と異なる︶︒
一例としては︑私は︑ゼミの学生等には︑経済小説︵たとえば︑株式会社の最高意思決定機関としての株主総会の
現状については︑1城山三郎﹁総会屋錦城﹂︑株式をめぐる企業買収−同﹁乗っ取り﹂︑現代商品流通のメカニズ
ムー同﹁価格破壊﹂︑現代手形・小切手法−和久峻三﹁沈め屋と引ぎ揚げ屋﹂︑日本経済の中枢・奥の院−日本
財界論−松本清張﹁深層海流﹂等々︶よりの経済社会の実態へのアプローチの一方法の必要をも説いている︒
また︑国家試験用の概論的な学習は︑個々人でも一応可能であろう︒しかし現実に即した問題の学習・研究による
法的価値判断は︑将来の問題に関する一応の予測とその解決をも前提としているものとなるであろうから︑より正確
な現状認識が必要であって︑これこそ広汎な文献・資料によるいわゆる法社会学的かつ社会科学的な方法論を必要と
しているといえよう︒
そこで︑本稿での一つの視点としては︑法状況の歴史的展開とその世界的背景に整理して分析を試みる︒これはと
くにけっして新しい手法をあえて提案するものではなく︑あくまで伝統的な従来の方法を︑少しぽかり整理し︑時間
的︑空間的に単純化してみる? のである︒そのようにして︑現代の法問題の状況に少しでも光をあて︑その全体の
法構造を浮かびあがらせることがでぎたらと考える︒このような意図で現状の法分析を︑まず試みるものである︒
八○年代の現代企業・資本をめぐる多様な法制度へ多角的にアプローチすることによって︑その現代的実態と諸機
能の分析のために︑より正確なる現状の把握をめざす︒
現代企業の法の中心を占め︑その基本構造を定め︑﹁企業に関する法﹂といわれる現代商法︵現代商法企業法︶お
よび︑より広義の﹁現代企業をめぐる法﹂︵現代企業関連法︶ の歴史的位置づけをめざして︑その現代的実態の分析
を︑まず共同報告によって試みようとするものである︒
㈹ 八O年代とは?
そこで︑本稿における八○年代の意味は?
︵1︶戦後︑①復興期一占領につぐ︑六〇年まで︑②高度成長期一六〇年代︑③石油危機以降一七三年第一
次オイル・クライシス︑以後に登場する現在と︑かなり広い幅を考える︒
︵2︶選択ないし分別的経済政策の登場へ︒①経済構造の高度化←重化学工業化による欧米へのキャッチ・アップ
政策から︑②長期不況←構造不況業種対策の本格的展開へ︑そして七八年五月平安法から︑八三年五月産構法へ︑今
日の③貿易摩擦の現状へという歴史の展開過程を踏まえての多面的検討を目指しながら︑本稿では︑まず当面は一部︐
分的なアプローチ? に止まったかもしれない︒その意図を少しでも評価されるよう︑今後︑前進する予定である︒
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「現代企業社会」の法構造
働 具体例
ここで︑一つ具体例を︑会社法改正と時代との関連であげておく︒
①会社法全面改正の提案であった七五年﹁意見照会﹂は︑七九年の前半切り離し︑緊急改正の提案へ変容し︑八○
年代を見越して︑八一年大改正を生みだした︒
②八四年大小会社区分立法等の問題点︵八四年﹁意見照会﹂︶の登場へ︑という改正問題の過程を一つの太い流れ
として︑おさえておきたい︒
これら派生する諸問題が規定する今後の状況への問題性の指摘︵いわゆる﹁戦後法制﹂との異同?︶︑ヤルタ体制の
下︑戦後四〇年間の戦後法制の内での五〇年体制︵自民党という保守政党一党独走体制︶による今後の動向︑とくに
戦後法制における解釈的改正から︑新立法へのコンバート︵例えば比較的に−解釈改憲から立法・明文改憲へ︶の
展開が予測されるような状況が察知されるような情勢を︑どのように位置づけるべぎであろうか?
戦後四〇年その産業企業の立地政策にも見られるように︑戦後再建から大都市集中へ︑そして地方分散へ︵例えば︑
その時代を先導する業種−石炭・繊維︵戦直後︶←鉄鋼・化学・造船︵50年代︶←電機・自動車︵60年代︶←マイクロ
エレクトロニクス︵70年代︶←バイオ・新素材︵80年代︶︶と︑ヤルタ体制五〇年あるいは昭和還暦の一九八五年︑八
○年代日本の状況分析による有事ないし﹁危機管理国家﹂化の問題状況下では︑今日の現代商法11企業法現象の把握
は︑総合的・全体的でなけれぽならない︒法現象の多様化・技術法化の下でのトータルで総合的な法現象の把握にお
いて︑その全体としての法現象における企業法の現代的役割の位置づけが︑今日ほど︑求められることはない︒
⑤ 戦後四〇年とIMF体制下の﹁企業社会﹂
﹁企業社会﹂といわれる今日では︑さらに全般的に巨大企業・大企業の支配・管理の体制を︑国家が推進する方向
に浮上させつつあることを指摘しておきたい︒
それらによって︑とくに戦後四〇年間には︑一九六〇年代から七〇年代前半まで︵六一年〜七五年ベトナム戦争と
同時併行的な日本の高度成長政策の展開と︑これにつぐオイル・ショックによる低成長への時期︶が︑結節点の一つ
として︑それは西側IMF体制のもと︑戦後日本の自由化の諸展開過程の一環でもある︒
これにつぐ今後の展望としても︑八○年代後半︑一方では金融開国・円の国際化・経済協力i貿易摩擦など︑ま
た他方では一九八八年ソウル・オリンピックをめざすロソ︵米︶・ヤス︵日︶・チョソ︵韓︶体制︵いわゆる太平洋体
制の基幹的一環一例えばシンガポール︑香港︑台湾︑韓国の四つの虎とか︑日本を加えて五つの虎とか等々といわ
れてもいる︶の展開に起因する企業法および企業関連の法的現象・法意識などが︑大きな歴史の流れのなかに︑現代
的問題諸点として提示されうるとも思われる︒
例えば︑日韓関係については︑①企業・資本レベルの問題としては︑韓国の鉄鋼・自動車・石化業は︑ブーメラン
現象を恐れて消極的だった日本財界を尻目に︑西独から鉄鋼技術を導入し︑まず日本をキャッチ・アップする政策が
展開し︑近時カナダでは︑輸入自動車で日本を抜ぎ第一位となっている︒②日本経済界は︑名古屋オリンピックのた
めの経済力を︑ソウル・オリンピック目指して︑多様に現地進出しつつある︒③韓国会社法は︑日本に先駆けて︑昨
八四年春の改正により最低資本金制度︵日本円で一千五百万円以上︶を導入している︒④懸案のNHKラジオ・TV
語学講座名も︑昨八四年四月から︑﹁アソニョソハシムニカ〜ハングル講座﹂という苦心の作? で︑急拠開講され︑
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「現代企業社会」の法構造
企業人の受講者が特に多いといわれる等々︒
このような︑あるレベルでの日韓一体化の動向をどのように位置づけないし評価すべきか︑
識をも正確に探ることも必修と思われる︒
三 一九三〇年代と一九八○年代との対比 そしてその背後の法意
八○年代体制における企業をめぐる法の状況を正確に観察するために︑①前世紀末︵一八九九年−明治三二年︶体
制からの法的枠組みの存続︑それが②戦前の一九三〇年代体制へと︑また③戦後一九五〇年代体制との連続性・類似
点と変容性ないし相違点とを対比しつつ︑﹁現代企業に関する法﹂︵現代企業法︶および︑より広義の﹁現代企業をめ
ぐる法﹂︵現代企業関連法︶に対する法社会学的分析による︑その現代的に多様・多角的な側面への一つの試みを︑こ
こに模索しようとする︒
ここに︑最近の具体例をあげる︒
㎝ 一九八O年安保体制
一九七四年︵昭四九︶改正では︑監査制度の強化のため︑監査特例法という商法特例法が制定され︑商法典とこの
特別法との﹁二重構造の商法体制﹂ができあがる︒ここに大小会社の二区分立法の方向が顕在化する︒
最新の一九八一・年︵昭五六︶大改正は︑総合安保体制期での資金調達の多様化と中小企業をも巻き込む企業の国際
化・経済の高度化への対応としての大改正として︑動きだしている︒そして①独占的大辛菜本位体制の強化︑②資本
輸入型から資本輸出−国際分配投資型の会社法へと向かって︑③巨大企業法制の新領域が形成されつつある現状で
ある︒ しかも︑さらに近時︑問題である大小会社区分立法・合併等の立法作業へと︑会社法改正が進展中である︒
ここに総合安保体制期への移行の法的指標の一つとしての一九八四年﹁大小会社区分立法等の問題点による意見照
会﹂︵法務省民事局参事官室︶が登場したといえよう︒
八一年大改正の成立した時期は︑日本の新しい経済の展開の時期で︑それは︑いわゆる総合安保体制期という新し
い画期へ突入しつつある︒八○年代には︑日米関係は︑より一体化の時期へと向かう︒
先進国サミットに加えて︑南北サミットの開催︑大企業に中堅・中小企業を含めて企業・金融の国際化の進展の状
況となってきている︒
ここに︑商法大改正と関連して︑一つの重要な法的指標の例示をあげてみよう︒
それは︑経済法関連の問題点でもあるが︑同じ八一年の新銀行法の制定に注目する必要があろう︒
② 一九三〇年戦前体制
戦前の歴史を振り返れば︑旧銀行法は今から五〇余年前の準戦時体制の前夜である一九二七年︵昭二︶に制定され
たもので︑経済法史的には︑戦前の日本資本主義経済の高度化ないし︑いわゆる国家独占資本主義の成立の第一の法
的指標として位置づけられているものであり︑その後︑第二の法的指標として一九三一年︵昭六︶重要産業統制法︑
これに次ぐ三三年日鉄株式会社法︑さらに︑第三の法的指標として三八年︵昭=二︶国家総動員法があげられるが︑
これらの法的指標と前後して︑商法の大改正と有限会社法の新制定が︑同三八年になされている︒
しかも︑この大改正では︑英米会社法とくにアメリカ法に由来する制度を︑ドイツ株式法の改正を媒介して継受し
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「現代企業社会」の法構造
ているが︑時あたかも戦時統制立法の時代であったため︑一般私法としてのその展開は一時停止され︑その法的機能
は四五年敗戦後に持ち越されることとなったことは︑周知の歴史的事実である︒これを時の流れを予測しつつ︑時代
の訪れを立法的に準備していた大改正でもあったとも位置づけしうるであろうか︒
㈹ 現代の法体制は?
このような考察によれば︑七九年外為法大改正︑八︸年新銀行法制定︑同年商法大改正︑その後の連続改正作業に
よって︑現在は︑法的にも︑さらに新しい時期に︑これこそまさに総合安保体制期に突入しているのである︒
それは︑金融制度を相対的に再編成し︑﹁金融開国﹂︑金融の国際化をひかえての大企業支配体制の再編・強化によ
る︑より日米一体化の体制の時期への誘導ともなつ.ている︒
また︑その他経済法上の現れとしては︑新たな産業調整として︑基礎素材産業一読鉱業︵電炉業︶︑石油化学工
業︑アルミ製錬業などの不況大企業︵企業集団︶の救済をめざして制定された八三年︵昭五八︶産構法︵特定産業構
改造善臨時措置法︶があり︑また八四年割賦販売法改正による﹁サラ金﹂の連続倒産での銀行金融の責任問題等︑さ
らにはNTT法︑国鉄民営化立法の胎動等のマスコミ・マスメディアのサービス・情報をめぐる巨大株式会社法の新
展開へと結びついていくことが︑その後を暗示してはいないか?
例えば︑前掲新銀行法では︑一五条︵休日及び営業時間︶一項﹁銀行の休日は日曜日その他政令で定める日に限
る︒﹂とされている点でも︑戦前の旧銀行法︵一八条一項︶は︑祭日︑祝日︑日曜日︑その他銀行の営業所所在地に行
われる一般の休日に限定して法定︵つまり国会承認︶されていたのに比べて︑行政府−内閣にその権限が集中せし
められている︒
また旧三条では最低資本金は法律上明定されていたが︑新法五条では︑政令事項に改められたり︑さらに旧法中に
は権限委任の規定は存在しなかったが︑第二次大戦中︑行政簡素化のため許認可等の特別扱いを認める﹁許認可等臨
時措置法﹂︵一九四四年︵昭一九︶法七六︶と同勅令・省令による権限委任の構造の整備として︑新法五九条に権限
委任の根拠規定が設けられ︑委任すべき権限︑委任の方法を政令事項としたこと等︑政令委任事項の増加が気になる
点ともいえる︒
これらも︑国民の立法府−国会から︑行政機関−内閣等へと︑その諸権限が移行・集中されつつ管理機能が強
められつつある有事立法体制の一環なのであろうか?
四 立法の推移−戦後の企業関係法改正経過図表︵参照︶とその後の背景
ω 社債−株式をめぐる企業資金調達法の連続的改正と全面改正一﹁社債法の整備﹂作業が進展しつつある︵池
島宏幸﹁会社法は今一社債法の整備﹂税務弘報三三巻一〇号︶︒
② 大小︵公開・非公開︶会社区分・合併の追加改正への作業の進展
①総会不要論?
例えばi会社の社団性︵商法五二条︶︑法人性︵五四条︶の基礎的規定を中心として︑株式会社の基本構造︵一六
五条以下︶ができあがっているが︑それを修正する方向としての八四年意見照会一︑1設立に関して二人会社﹂の
発想が登場してきているが︑もともと判例では固まった見解ではあるが︑これを非公開会社に一般的に追認的に立法
化すれば︑モデルとしては︑株主一人︑形式的にも株主総会の不存在︑取締役一人︑監査役不要? という一人会社
86
「現代企業社会」の法構造
〔図一1〕 戦前の企業関係法改正経過図表
商 法 改 正 経済法(統制法)改正 経済社会的背景
形成期 i869(明2)通商会社・為 西欧法制継受へ
1868 替会社 特許主義 資本の本源的蓄
1871(明4)会社弁 72国立銀行条例 積の典型的強行 5
1882(明15)為替手形約束 82 日本銀行条例 経済の近代化一
1889 手形条例 個別立法期
近 成立期 1890(明23>1日商法 免許主義一法八格と有限責 …般法形成
1890 任
代 5 1899(明32)新商法(現行 準則主義へ 三二体制へ
1910 法)
商 整備期 ユ911(明44)手直し改正 商事法主義から商入法主義 04〜5日露戦争
1911 へ 一泡沫会社
法 15染料医薬品製造奨励法 14〜18第一次
17製鉄業奨励法 大戦一債
の 18軍需工業動員法・軍用 権国へ
自動車補助法
時 19物価統制令
5 20(大9) 銀行条例改正一 重要物産一軽工
期 合併規定の特例 業
20戦後恐慌
22破産法 第二次反動
恐慌 25 輸出組合法・重要輸出
1926 品工業組合法
戦前期一 27銀行法 金融恐慌
成立期 ロンバートSt.か
1927 らウォールSt.へ
現 世界恐慌
金本位廃止
代 31重要産業統制法・一連 管理通貨制度
商
〜
1932(昭7)手形法 の事業法も各種の組合 経済統制法
法 33(昭8)小切手法
法
R3 日鉄株式会社法
独占助長策 驪ニ自体の思想
の 1937 英米会社法に由
〔図一2〕戦後の企業関係法改正経過図表
商法(会社編)改正 経済法(独禁法)改正 「企業社会」の背景
前期 45財閥解体・農地改革
占 1945
〜
1947原始独禁法制定:
1948 1948(昭23)改正 48事業者団体法 領
後期 1949第一次改正 49ドッジ・ライン
1949 1950(昭25)大改正 50朝鮮戦争・特需景気
期 〜 1951
一.・ 521MF体制へ
1952 1953第二次大助正一良い
安 1955(昭30)改正 カルテル 55丁度成長へ
事業者団体法廃止
5 不公正な取引方法一
保 般指定告示
T61h請法
1958 58第三次改正案一法運
二期 用の変化へ
期 1959〜 60所得倍増計画
1962(昭37)改正 62景表法 61ベトナム戦争(〜75)
1963 下請法強化改正 63貿易自由化92%
三期 641MF 8条国移行
1964〜
1966(昭41)改正 65下請法強化改正
新 1967 67資本自由化
四期 68案
1968 1969大型合併承認
安 〜 72案 72景表法改1E
1973 73第一次石油危機
五期 1974(昭49)改正
保 1974〜 75会社法全面改正ヘー 75案
会社法改正問題点意 76案 76特例国債(赤字国債)
1978 見照会 ユ977強化改正(1978ガイ
期 六期 ドライン〉
1979〜 79前半切り離し・緊急 1979外為法大改正 79第二次石油危機 1980 改正へ
総 .L期 1981(昭56)大改正 1981新銀行法 81企業の国際化
合 1981 82不公正な取引方法改 南北サミット
安 5 83大小会社区分立法へ 正 保 84大小会社区分・合併 83産構法*
期 等意見照会 84割賦販売法改正
*産構法(正式名一特定産業構造改善臨時措置法一83年5月施行、88年6月末迄5年間)
は、78年5月制定の四国法(特定不況産業安定臨時措置法一83年6月末迄5年間)を受け 継ぐ形で、内容的には更に進展したものである。
もともと同法は、78年6月のOECDで採択された「積極的調整政策(Positive Adlustnlent Policies, PAP)に関する一般指針」の考え方に則し.ているといわれる。
70年代の重化学工業の経済問題は、その後拡大再生産の一途をたどり、80年中の日本経 済の不況構造へとつながってぐ特安法→産構法=「企業集団救済法」という経済規制法を結 果してゆく。とくに80年代の状況については、石油業法(=エネルギー国家管理法の中心)
体制のもとでの産構法の成立、これをてこにした資本の撒退による資本救済の法メカニズ ムが問題とされる。通産省産業政策局編「産構法の解説一新たな産業調整へ向けて」。
88
「現代企業社会」の法構造
の立法的法認ないし追認は︑論理的に枕言葉としての﹁外部簡易︵限定︶監査﹂の導入のための立法政策を体現する
ものとなってはいないか?
総会の不存在︑したがって︑自治としての総会の不要論の台頭へと︑これに代わるチェック機構? としての外部
的強制ともなりうる外部簡易監査という管理の体制へ? つまり換言すれば︑もともと中小企業には自主.自律を期
待しない方式? へとの法的展開が進展してきてはいないか?
②合併の簡略化の意味
総会不要論による合併の簡略化ともとれるような八四年意見照会二〇 合併に関する問題点L.2以下は︑業界
再編成のねらいの受け皿の準備? ではないかという点を八四年秋に指摘しておいた︵池島宏幸﹁経済の変動と大小
会社区分立法等の問題点−大小会社区分立法・合併に関する問題点をめぐって一﹂法と民主主義一九〇号三七頁
以下︶︒ここでも︑それを要約・転載しておきたい︒
︵1︶ 意見照会の真のねらいは何か?
意見照会のタイトル﹁大小︵公開・非公開︶会社区分立法及び合併に関する問題点﹂︵いわゆる大小会社区分立法等
の問題点︶の﹁等﹂11合併にあるのではないか?
すなわち積年の懸案である七五年意見照会の問題点第七 最低資本金制度及び大小会社区分立法の実現は︑経済的
実質としての業界の再編・統合の受け皿をめざすものとして︑これが政治的次元の問題をも惹起してきている現実の
立法作業過程を充分ふまえたうえでの提案であるからして︑このような推測も可能である︒
したがって︑むしろ大小会社区分立法がこのままの形で成立しなくても︑この実質・実際的効果をもちうる合併の
簡略化をもあわせて緊急の提案としているところに注目しなければならない︒
合併は︑企業結合法・企業合同法の中心部分を担う項目であり︑固い結合としていわゆる責任・責務の棚上げない
し合併当事会社への責任の分散・肩代わり・雲散霧消の経済的効果をももたらし︑その責任転嫁の方向は︑川上産業
から川下産業へと生産・流通・分配の経済過程を下方へ向かい︑下請・子会社への無限責任化論として展開してきて
いる︒その背後には︑下方の中小企業から会社法人格による有限責任制を剥奪して︑実際界での運営では無限責任化
せしめられている中小企業・閉鎖会社を区分立法によって法的にも無限責任化を追認して︑その問題性をすり替えよ
うとする論理のねらいが伏在していないだろうか?
これらのことに注目すれば︑意見照会の真のねらいはむしろ合併にあるといっても過言ではない︒
固い結合の最たる合併は︑現代企業法の三大側面︑
すなわち︑現代企業問題が典型的に現れる①資本の側面11商法・経済法的局面i例えば︑商法二四五条所定のゆ
るい結合である営業の譲渡をはじめ︑いわゆる企業結合関連の懸案の項目は︑ほとんど問題解決・解消の方向へ誘導
されることとなるからである︒
のみならず︑②労働の側面一1労働法関連問題−会社役員の処遇のみならず たとえば二つの会社の合併による
効果としては︑社長や人事部長は二人はいらず一人になり︑ある場合には他の一人は下方の関係企業等へ転属︑出
向︑配転等の役員・従業員処遇・営業項目等取り扱い条件︑組合の分断・統合・再編によるスト規制の側面等に大き
な変動・影響・ショックを与える効果をもつ︒
と同時に︑③土地の側面11企業立地・産業用土地問題隠民法・行政法・財政投融資法関連の問題の整理・統合の効
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「現代企業社会」の法構造
果をもたらすといわれている︒
このような合併の現代的効果に加えて︑さらに簡易合併等による合併承認手続の簡略が提案されているのは︑何を
意味するか?
従来からの立法作業により︑会社法の全面改正による現代企業組織法と現代企業行為法の整備に加えて︑さらに一
九七五年意見照会の問題点第六の﹁企業結合・合併・分割﹂の項目として提案されている現代企業合同法の形成.展
開へ向けて︑それを実質的に先き取りしつつあるともいえよう︒
現代企業合同法の典型筆法カテゴリーである合併を法的に簡略化することによって︑個別資本の諸矛盾を︑国民経
済の再編と称して︑総資本の意思のもとへ再編・統合するねらいが企図されているともいえるのではなかろうか?
これにより︑大小会社区分立法の実質の問題は︑たとえば最低資本金基準はインフレ化され︑中小企業の中小資本
家化の一環としての一部の中小企業︵ベンチャー・ビジネスないしベンチャー・キャピタルーVB.VC︶の資本金
のスケイル・アップを可能としつつ︑たとえば︑今日的課題とされつつある中小企業基本法第二条の﹁中小企業者の
範囲﹂を︑資本金一億円以下から三億円以下等に拡大しようとする動きと連動されつつ︑中小企業の多層化による区
分・分別がなされていく︒これらによって形式的にも大小会社区分立法を成立せしめる素地が準備されることにもな
る︒ これらは今後の総合安保体制の確立を目指す日本経済の大型化をも企業法的側面でも準備するものとなるであろう
︵前掲図表参照︒詳しくは︑池島宏幸﹃大企業支配体制の法構造﹄︵日本評論社︶参照︶︒
︵2︶ 意見照会の合併等の個別的問題性
そこで︑意見照会の問題点の﹁一〇 合併に関する問題点﹂を︑点検してみよう︒
法務省の提案の趣旨によれば︵稲葉威雄﹁大小会社区分立法等の問題点公表について 大小︵公開・非公開︶会
社区分立法及び合併に関する問題点t﹂商事法務一〇〇七号一二頁︶︑﹁合併に関する問題点は︑公開会社︵大会社︶
にも共通の独立の点検項目である︒技術的な問題点が多く︑政策的な要素はあまりふくまない︒﹂といわれる︒あまり
含まないどころか︑むしろ大企業支配体制の優先の経済・産業政策の法的スムーズ化に繋がるという企図を背後に秘
めうる内容ともなっている︒
それは戦後の一連の株式会社立法における重要意思決定事項に関する株主総会承認の回避・廃止という総会不要論
の台頭の動向と論理に︑まさに符節するものといえる︒まさに国家における国会にも比して︑株主総会は︑企業情報
の公開︵ディスクロージャー︶の重要な﹁場﹂と考えられる観点からは︑とくに﹁株式会社の民主主義﹂的手続の統
廃合を目指すものともいえる点が︑目立っている︒
それは︑つぎの諸点である︒
合併手続の簡素・合理化としてあげられている︑報告総会の廃止︵一〇2︶︑債権者保護手続の簡素化︵一〇13︶︑
簡易合併︵一〇15︶︑設立委員の廃止︵一〇16︶︑創立総会の廃止︵一〇18︶等が指摘できよう︒
合併こそは︑ゴーイング・コソサーソとしての企業の存続・法人格に重大な変動をもたらす契約であるからこそ︑
総会によるチェック・ディスクロージャーが重要かつ必須の要件である︒
その合理化・簡素化の大義名分の名のもとに︑大衆民主主義による株式会社の株主総会のチェック・ディスクロー
ジャー機能の軽視につながり︑今後さらに総会機能を減殺・死滅せしめることにならないだろうか?
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「現代企業社会」の法構造
今後の株式会社法におけるチェック・ディスクロージャーのあり方を憂う︒株式会社という自主自治団体から︑総
会による自らのその自主監視機能を剥奪して︑極めて安易と思われる﹁簡易監査﹂とか﹁簡易合併﹂とかの略式的な法
制度の導入によろうとする発想こそは︑株式会社法自体の法規定に︑私的自治とは異質と思われる行政機関への﹁中
央集権的・強権的となりやすい行政的チェック・ディスクロージャー立法﹂を一般化させる道をゆるすものといえよ
う︵﹁お上み﹂依存とか﹁縦社会﹂とか評される日本的発想の一環といえようか? 園Q爵Φ団Ω胃ぎ日犀①冨O劇評ΦのΦ
60目冨口ざ一ミρb緊卜◎b︒一象の8.︶︒
③ 資本救済の法メカニズムi特安法一産構法11企業集団救済法の登場︵前掲図表︶︒
㈲ 公企業の民営化−株式会社化の実現へ?
八四・八・一〇日本たぼこ産業株式会社法や同・=丁二五電気通信改革三法一NTT法︵一二・二〇衆院逓信
委員会︑附帯決議︶−附帯決議という注文が付けられ︑つまり不十分なる立法ではあるが国会で一応の条件を付け
て承認する形式が採られているのが︑最近の傾向である︒これらは︑それほど状況は単純ではないことの現れであろ
う︒将来の国鉄の民営化の問題も︑かなり表面化しつつある昨今である︒
⑤ 企業情報の統一管理法−企業の地方分散化と企業情報の再中央集権化という政策のもとでの﹁情報産業﹂の
育成へ︒ 例えば︑①八三・四テクノポリス法︵﹁高度技術工業集積地域開発促進法﹂︶新産・工特︵新産業都市←工業整備特
別地域︶からテクノポリスへの一連の工業再配置政策によって︑戦後︑大都市から地方へと工場移転が進展せしめら
れてきている︒
そこへ︑②テクノマート法案︵﹁技術取引市場法﹂︶一技術情報の統一市場化管理へと地方のハイテク︵高度先端
技術︶化が企図されている︒それは︑地方の企業に最新の技術情報をあっせんする財団法人﹁日本テクノマート﹂︵会
員五〇〇社から一五〇〇社を目指して︶で︑八五年一〇月一日から全国オンラインサービスを開始している︵東京︑
大阪の正副本部︑名古屋︑富山︑浜松︑熊本の支部︑札幌︑仙台などの主要都市一日経新聞八五.九.一六︶︒これ
らは︑通産省立地公害局工業再配置課によれぽ︑ゆくゆくは﹁技術の売買等に係わる全国的︑世界的ネットワークの
構築と高度情報化社会の形成に対する大きなインパクト﹂を期待する︒
そしてさらに︑これらを統括する③テクノ法︵通産・建設・農水・自治の四省の縦割・横割の結合による︶体制が
めざされている︒いわゆる︑INS︑VANのネット・ワーク作りが進みつつある︒
現代企業を大きく前述の経済過程におけるメーカーとディーラ:とに分ければ︑メーカーという企業サイドでの︑
現代企業結合の促進化の基盤作りの一方向を示すものではなかろうか?
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五 八○年代の企業をめぐる法意識と法状況
ω ﹁株式会社らしい株式会社﹂法論構想の点検
現代企業法をめぐる法意識については︑とくにまず︑﹁株式会社らしい株式会社﹂法論構想の点検の必要である︒そ
れは︑もともと大企業の中小零細株式会社との区別論ではないのか?
その一つの論拠として︑いくつかの特徴をあげて︑法意識関係の問題性を指摘しておきたい︒
大企業対中小企業区別論としては︑鯨と鰯の水槽区別論とか︑大人の背広を着た駄々っ子等々︵池島宏幸﹁会社法
「現代企業社会」の法構造
は今−背広の新調から水槽の分離へL税務弘報三三巻四号︶の法意識論の登場を︑どう位置づけてみるかが重要と
思われる︒あるいはまた︑大企業本位体制へと向かってはいないかを問いたい︵池島宏幸﹁会社法は今−企業臼会
社の規模と法規定﹂税務弘報三三巻九号︶︒
六 資金調達法の改正一企業金融法制の現代化一
社債法制から株式法制へ資金調達の多様化を箇条書きにしてみる︒
ω 各株式の段階的法認
①額面株式−一八九九年︵明三二︶
②無額面株式一一九五〇年︵昭二五︶
③単位株一一九八一年︵昭五六︶
② 各社債の段階的法認
①普通社債︵SB︶−一八九九年︵明三二︶︑担保付社債i︸九〇五年︵明三八︶同信託法−特別法
②転換社債︵CB︶i一九三八年︵昭=二︶
③新株引受権付社債︵ワラント債一WB︑WT︶i一九八一年︵昭五六︶
㈹ 資金調達の多様化と株式・社債の変質の提案へ
例えば︑一九八四年経団連追加改正項目︵池島宏幸﹁会社法は今−経団連の商法改正追加要望事項﹂税務弘報三
三巻五号︑同﹁社債法の整備﹂税務弘報三三巻一〇号︶︒
①株式と議決権の喪失t−例えば︑金銭によるその剥奪一無議決権株−総会の実質的無機能化へ︑
i実質的支配株主の地位の強化へ
②社債発行限度枠の緩和から撤廃へ1社債の無担保化と格付けへ 優先株等1 96
七 国策巨大企業法制の浮上?
しかし︑前述の基本法としての一般会社法の改正の側面とともに︑特別会社法が︑その全容を巨大企業法制化とし
て︑徐々に姿を現して浮上中であることである︒
戦後IMF体制への編入を予定する一九五〇年代改正から︑貿易・資本の自由化︑そしてさらに完全自由化をめざ
すIMF・GATT体制下での八一年大改正が︑﹁資本の国際化﹂と﹁企業活動の国際化﹂を背景として︑日本の企業
の多国籍︵超国家︶企業化の状況下︑八一年改正は︑大企業のための株式会社法の改正であった︒もっとも︑注目す
べき点は︑その背後には︑ブランパークのいう大企業中の巨大企業︵ヨΦσq卑OOHOO﹁Pけ一〇口︶のための巨大企業法制の新
たな領域が︑確実に着々と形成・拡大されつつある︒
従来からの市民法たる商法の改正によってなされてぎている規制法領域は︑メガコーポレイションとはランク・レ
ベルの異なる大企業・中堅企業と小企業群を直接の対象とするにとどめたものとなってぎているのが現状である︒
商法の一般規定の直接的規制は︑一ランク下の企業を基本的に規制するに止まるものとなりつつあり︑ある意味で
は︑﹁一種の脱殻︵ぬけがら︶的骨組み・骨格﹂としてのみ存続することとなり︑NTT品等は︑その規制範囲を超え
た存在として出現してきている︒いわゆる市民法の規制を超える存在一特別法として︑ノー.・コントロール化へ向
「現代企業社会」の法構造
かってはいないか?
ω 今日的状況
まず︑前述のような現代日本の商法11企業法の連続的改正および新立法をめぐる今日的状況に関連づけて見てみよ
う︒ ①大小会社区分立法等の提案が登場し︑これと相前後して︑②巨大株式会社法に関する特別法が成立したり︑ある
いは今後連続的に企図されたりしている︒しかもこれらに︑戦後四〇年にわたる日本の自由化という経済変動と︑こ
れにともなう内外要因のうねりに対応する政府・与党による一定の産業・企業政策という一国の政策︑いわゆる国策
化の方向が︑体現されつつある動向にある︵池島宏幸﹁経済の変動と大小会社区分立法等の問題点﹂法と民主主義一
九〇号︑同﹁大小会社区分・合併立法等の問題性﹂法律時報六九巻=口ε︒この点にとくに︑国民は注視しなくては
ならない︒
前者は︑一九八一年︵昭五六︶会社法大改正につぐ︑昨八四年︵昭五九︶五月九日の法務省民事局参事官室﹁︵大小
︵公開・非公開︶会社区分立法及び合併に関する問題点﹂︵以下︑八四年意見照会︶であり︑また後者こそ︑前掲のよ
うに︑やはり昨八四年八月一〇日成立の﹁日本たばこ産業株式会社法﹂であり︑同年一二月二五日﹁電気通信改革三
法﹂による﹁日本電信電話株式会社法﹂︵いわゆるNTT法︶であるとともに︑さらに旧年来︑政府緊急提案とされ︑
臨調路線である﹁国鉄分割・民営株式会社化法案﹂である︒
② 大小会社区分立法等は必要か?
八○年代大小会社区分論の一つの論拠として︑﹁株式会社らしい株式会社﹂法論の構想がある︒
それは︑﹁公開︵本質的︶株式会社は︑一億円又は五︑○○○万円以上の株式会社﹂︵八四年意見照会一三A案1︶
であるとか︑﹁株式会社の最低資本金二︑○○○万円︑有限会社一︑○○○万円﹂︵同一15︶という基準概念で︑交通
整理して︑あるいはその基準に達しない中小企業は︑切り捨てるという方向性が示されている︵池島宏幸﹁会社法は
今一最低資本金二千万円のハードルは?﹂税務弘報三三巻二号九九頁︶︒
また小規模会社に対しても︑﹁簡易﹂ないし﹁限定﹂外部監査制度の強制が︑いわゆる中小企業への法規制の緩和
化︑その手続・機構の簡素化・簡略化という﹁アメ﹂との引ぎ替えとしての﹁ムチ﹂として︑一律かつ強制的に導入
されようとしている︵日本私法学会シンポジウム資料・大小会社区分立法のあり方−商事法務一〇一七号三頁一
法務省法制審議会商法部会長鈴木竹雄東大名誉教授の表現︶︒
これも︑本来自主的な株式会社自治の運営の原則を大きく制約するものとならないという保証はない︒
かくして︑一九七五年︵昭五〇︶の会社法全面改正の法務省意見照会での提案﹁背広の新調﹂から︑八四年意見照
会の大小会社区分立法という﹁水槽の分離﹂へと︑会社法改正の方向は︑大小会社区分という二重構造の法的是認へ
と進展しつつあるといえよう︵竹内昭夫東大教授の発言﹁クジラとイワシとを同じ水槽の中で泳がせるようなことを
いつまでもやっていてよいのですか﹂商事法務一〇三〇号一五頁︑池島宏幸﹁会社法は今−背広の新調から水槽の
分離へ﹂税務弘報三三巻四号九八頁︶︒
③ 巨大株式会社立法
前述の基本法としての一般会社法改正の側面とともに︑忘れられてはならない巨大株式会社立法という特別新立法
の進行の側面には︑これらにも増して著しいものがある︵池島宏幸﹃大企業支配体制の法構造﹄二二七頁︑同﹁会社
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「現代企業社会」の法構造
法は今一会社法の政策化現象と巨大会社法制の浮上L税務弘報三三巻七号一一四頁︶︒
とくに︑前述の大小会社区分論の中心的課題である﹁株式会社らしい株式会社﹂の構想︑すなわち﹁行儀の良い株
式会社﹂の発想は︑NTT法にも︑労働者・従業員サイドに︑端的に三年間の労働者の基本権であるスト権の停止と
しても現れている︒
それは︑NTT法及び電気通信事業法の施行に伴う関係法律整備法の五四条に﹁三年後に見直す﹂という一条を加
えてはいる︵労調法付則四条追加︶が︑株式会社・民営化したNTTにスト権行使を留保させるべくスト規制を明白
に追加規定している︵同法三条追加改正︶点である︒
これら一連の巨大株式会社法という特別法によるいわゆる﹁国策立法化﹂の強硬的な実施によって︑たとえば︑公
企業の民営・株式会社化︑つまり公社←株式会社化とか︑国有←分割・民営株式会社化によって︑本質的な矛盾をカ
バーして︑それを国民の目からそらすものとなってはいないか?
いまこそ国民は︑これらの提案の企図を再点検すべきときではないだろうか︒
八○年代後半における企業の経済的実態とこれを規制する法的枠組︵法改正と新立法︶の正確な把握とその実態分
析をできるかぎり正しく国民に開示し︑その判断は︑国民サイドでなさるべきであろう︒
このようにして︑実質的には︑それが国民の手の届かない存在になりつつありはしないか? と警鐘を打ち鳴らす
必要があると思われる︒
八 経済社会と企業立法︵会社立法︶と法社会学一経済的実態と法の枠組みの正確な把握の必要i
100
法社会学がアプローチする経済社会に対して経済的な実態とその法的枠組みをなるべく正確に把握する︒そういう
方向の糸口となればと︑共同報告で取り組んでみた︒
早急な結論よりは︑これによって得られる実態分析をできるだけ正しく開示して︑その判断は︑国民サイドでなさ
るべきであろうからである︒
企業と法の問題は︑管理よりも自主・自律の助成の方向の模索が必要ではなかろうかと思われる︒
あるべぎ会社・資本の﹁基本を規定する基礎立法﹂である会社法・商法改正と︑大企業サイドの規制を主眼とする
基幹立法である独占禁止法を中心とすべき経済規制立法とその改正という問題は︑国民の企業経済生活に直結する問
題である︒つまり日本の経済の在り方にも直接関係する問題である︒
一見は︑単なる企業・資本に関する実務上︑の技術的な規定の立法・改正だけの集積のように見えても︑何が全体と
して結果されてゆくかが問題であると思われるからである︒
︹附記−本稿の共同報告に対しては︑日本法社会学会より昭和六〇年度研究奨励基金が附与されているので附記したい︒︺