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﹁職務行為基準説﹂に関する理論的考察︱︱

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(1)

︿論 説﹀

﹁ 職 務 行 為 基 準 説

﹂ に 関 す る 理 論 的 考 察

︱ ︱

行政 救済 法に おけ る違 法性

・再 論

神 橋 一 彦

は じ め に 第一 節

職務 行為 基準 説と 行為 不法 説と の関 係 第二 節

職務 行為 基準 説に おけ る﹁ 違法

﹂の 捉え 方 第三 節

職務 行為 基準 説と 過失 お わ り に は

じ め に 一 本稿 筆者 は、 先に

、磯 部 力・ 小早 川光 郎・ 芝池 義一 編﹃ 行政 法の 新構 想Ⅲ

平成 二〇 年︶ にお いて

、﹁ 行政 救済 法に おけ る違 法性

﹂の 項を 担

( )

当し

、そ の中 で国 家賠 償法 一条 一項 にい う﹁ 違法

﹂の 概念

︵以 下、

︽国 賠違 法︾ と

いう

。︶ につ いて 若干 の考 察を 行っ た。 この 問題 をめ ぐっ ては

、既 に別 に﹁ 違法 な法 令の 執行 行為 に対 する 国家 賠 償請 求訴 訟に つい て﹂ 平成 二〇 年︶ とい う論 文を 公に して い

( )

るが

、問 題自 体、 奥の 深い 問題 を内 包し てい るた め、

(2)

この 両論 稿︵ 以下

、﹁ 前稿

﹂と いう

。︶ にお いて は、 問題 を十 分に 論じ 尽く すこ とは でき なか った

。ま た、 これ らの 論稿 で展 開し た見 解に つい て、 その 後再 検討 の要 を感 じた 部分 もあ る。 その よう な事 情か ら、 前二 稿を 一部 敷衍 す る形 でこ こに 三た び稿 を起 こし

、論 究の さら なる 掘り 下げ を試 みる こと とし

、併 せて

、磯 部先 生に 献呈 する こと と した 次第 であ る。 二 問題 の所 在に つい て、 簡単 に整 理し てお くこ とに しよ う。 国家 賠償 法一 条一 項は

、文 言上

、故 意・ 過失 と並 んで

、﹁ 違法

﹂を 責任 成立 要件 とし てい る。 同条 がそ のよ うな 文言 にな った のは

、周 知の よう に、 国賠 法制 定当 時に おけ る民 法七

〇九 条︵﹁ 故意 又ハ 過失 ニ因 リテ 他人 ノ権 利ヲ 侵害 シタ ル者 ハ之 ニ因 リテ 生シ タル 損害 ヲ賠 償ス ル責 ニ任 ス﹂

︶を めぐ る民 法学 説の 影響 を受 けた もの であ ると され る。 す なわ ち、 民法 七〇 九条 にい う﹁ 権利 侵害

﹂は

、法 規違 反行 為や 公序 良俗 違反 行為 など と並 んで

﹁法 律秩 序﹂ を破 る がゆ えに 違法 とさ れる べき 行為 の﹁ 徴表

﹂と して 挙げ られ てい るに 過ぎ ず、

﹁権 利侵 害﹂ は、

﹁違 法性

﹂に 置き 換え られ るべ きだ

、と 主張 され たわ けで ある

。い わゆ る︽ 権利 侵害 から 違法 性へ

︾と いう 一連 の学 説の 動き で

( )

ある

。そ

して 国賠 法一 条が

、民 法七

〇九 条に 基づ く公 務員 の不 法行 為責 任を 国が 代位 する

︽代 位責 任説

︾を 前提 にし つつ も、 文言 上こ のよ うに

﹁権 利侵 害﹂ では なく

﹁違 法﹂ とい う語 が用 いら れた のは

、こ のよ うな 民法 学説 の影 響を 受 けた ため であ って

、そ こに

、民 法七

〇九 条と 国賠 法一 条と を別 異に 扱う 姿勢 はみ られ ない

、と いわ れて いる ので

( )

ある

。 確

かに 国賠 法一 条は

、違 法な

﹁公 権力 の行 使﹂ に対 する 損害 賠償 制度 につ いて 定め たも ので ある が、 他方 にお い て、 国家 賠償 制度 自体 が、 裁判 によ る行 政統 制と して の一 面を もっ てい る。 その こと を反 映し て、 同じ く国 賠違 法 を論 じる とし ても

、行 政法

︵学

︶と 民法

︵学

︶と では

、分 析の 基本 的な スタ ンス が微 妙に 異な るよ うに も見 受け ら れる

。す なわ ち、 行政 法の 側か らは

、国 賠違 法を 論じ るに あた って は﹁ 民事 不法 行為 法の 違法 概念 をス トレ ート に

(3)

採用 する こと には 慎重 でな けれ ばな ら

( )

ない

﹂、 ある いは

﹁国 家賠 償法 一条 にお いて

、﹃ 違法

﹄の 概念 は、 民法 不法 行

為理 論に おい て同 じ言 葉が 持っ た意 味、 ある いは 持た せら れた 機能 とは 異な るも のを もっ てい ると いう べき で

( )

ある

﹂と され る。 これ に対 して

、民 法の 側か らす れば

、国 賠法 一条 の文 言自 体、 民法 七〇 九条 との 違い を強 調す る ため に、

﹁違 法﹂ とい う表 現を 使っ たの では なく

、立 法当 時の 民法 七〇 九条 の一 般的 理解 を前 提と した もの であ る こと に照 らせ ば、

﹁民 法七

〇九 条と 国賠 法一 条に おい て、 その 文言 のみ に引 きず られ て違 法性 や過 失と いっ た概 念 につ いて 異な る理 解を する こと は適 当で はな い﹂ との 指摘 もな され て

( )

いる

この よう に国 賠違 法を めぐ って は、 行政 法学 と民 法学 との 間の 共通 理解 は未 だ十 分に 成立 して いな いと いう べき であ

( )

るが

、さ らに 問題 なの は、 学説 その もの と判 例と の間 の乖 離が 存在 して いる 点で ある

。す なわ ち、 改め て指 摘

する まで もな く、 判例 の採 る︽ 職務 行為 基準 説︾ につ いて どの よう に考 える か、 とい う問 題が それ であ る。 この

︽職 務行 為基 準説

︾を めぐ って は、 最高 裁判 例が

、そ の適 用を 行政 活動 をめ ぐる 国賠 事件 に拡 大し てい るこ とが 指摘 され るも のの

、そ れで 一貫 して いる かと いえ ば、 違法 と過 失を 二元 的に 判断 して いる 判例 もあ り、 その 点 疑わ しい

。ま た、 かよ うな 判例 の考 え方 自体

、国 家賠 償請 求訴 訟の 法治 主義 維持 機能 ない し適 法性 維持 機能 を減 殺 する もの であ る、 とい う学 説の 批判 も、 もち ろん 傾聴 すべ きも のを もっ てい る。 三 ただ 本稿 筆者 は、 右の よう な批 判・ 問題 点と は別 に、 この よう な︽ 職務 行為 基準 説︾ がど のよ うな 思考 の上 に成 り立 って いる のか

、と いう 問題 は、 それ 自体 考察 に値 する ので はな いか

、と 考え てい る。 すな わち

、︽ 職務 行 為基 準説

︾が 前提 とす る﹁ 違法

﹂概 念と は何 か

確 かに それ は、 行政 法学 が通 常前 提と する

﹁違 法﹂ 概念 とは 必 ずし も親 和性 がな いか もし れな いが

、そ れで は、 民法 の不 法行 為理 論と 何ら かの 親和 性が ある とい える もの なの で あろ うか

。ま た、 そこ に国 賠法 一条 が採 って きた 代位 責任 的構 成に かか わる 理論 的な 問題 が関 係し てい るの では な いか

︱ ︱

その よう な諸 々の 問題 につ いて

、前 稿に おい て行 った 考察 を踏 まえ て、 改め て整 理し てみ たい とい うの

(4)

が、 本稿 の問 題意 識で ある

。 四 以下 本稿 では

、ま ず、 国賠 違法 は基 本的 に行 為不 法説 に立 って 考え ると して も、 処分 が客 観的 に法 規に 照ら して 違法 とさ れ、 その 効力 が否 定さ れる いわ ゆる

︽結 果違 法︾ をど のよ うに 考え るか につ いて 論じ

︵第 一節

︶、

︽職 務行 為基 準説

︾に おけ る﹁ 違法

﹂の 捉え 方に つい て、 理論 的な 検討 を加 える

︵第 二節

。︶ その 上で

、︽ 職務 行為 基準 説︾ と、 違法 とな らん で国 賠法 一条 の責 任要 件で ある

﹁過 失﹂ との 関係 につ いて

、若 干の 考察 を行 って みた い︵ 第 三節

︶。

︿

西

(5)

第一 節 職務 行為 基準 説と 行為 不法 説と の関 係 一

︽職 務行 為基 準説

︾が 判例 に登 場し たの は、 個々 の判 例の 解釈 や位 置づ けに つい て議 論が ある もの の、 さし あた り、 司法 作用 や立 法作 用の 分野 にお ける 国家 賠償 請求 訴訟 にお いて であ った

。す なわ ち司 法作 用に つい ては

、 刑事 訴訟 にお いて 無罪 とさ れた 者が 国家 賠償 請求 訴訟 を提 起し た最

︵二 小︶ 判昭 和五 三年 一〇 月二

〇日 民集 三二 巻 七号 一三 六七 頁︵ いわ ゆる 芦別 国賠 事件 上告 審判 決︶ が、 この 種の リー ディ ング

・ケ ース とさ れる が、 その 他、 立法 作用 につ いて は、 立法 不作 為の 違憲 が問 題と なっ た最

︵一 小︶ 判昭 和六

〇年 一一 月二 一日 民集 三九 巻七 号一 五一 二 頁︵ 在宅 投票 廃止 違憲 訴訟 上告 審判 決︶ など が挙 げら れる

。 これ らの 判決 で採 られ た︽ 職務 行為 基準 説︾ のポ イン トと して は、

①こ れら の場 合に おけ る国 賠違 法は

、行 為の 結 に対 する 違法 の評 価と 国賠 違法 とは 区別 され るこ と︵ 結果 違法 説の 否定

︶、

②﹁ 国家 機関 に対 する 行為 規範 と自 然人 たる 公務 員に 課さ れた 職務 義務 とは 異な ると いう 手法

﹂が みら れる

( )

こと が挙 げら れる

。そ して

、昭 和六

〇年 の

在宅 投票 廃止 違憲 訴訟 上告 審判 決が

、国 家賠 償法 一条 にか かわ る一 般論 の如 き説 示と して

、﹁ 国家 賠償 法一 条一 項 は、 国又 は公 共団 体の 公権 力の 行使 に当 たる 公 に違 背し て当 該国 民に 損害 を加 えた とき に、 国又 は公 共団 体が これ を賠 償す る責 に任 ずる こと を規 定す るも ので ある

﹂と した の は、 立法 作用 に対 する 国家 賠償 請求 訴訟 とい う特 殊な 事案 にお いて 国賠 違法 一般 を定 式化 する こと が妥 当か どう か、 当然 問題 視さ れる とこ ろで はあ るが

、行 政作 用を 含む 国賠 違法 一般 につ いて

、公 務員 に課 され た職 務義 務違 反

︵行 為規 範違 反︶ を基 本に 判断 する こと

︵す なわ ち、 結果 の違 法と は切 り離 され た形 で国 賠違 法が 判断 され うる こと

︶を 明ら かに した とも 考え られ る。 そし て、 この よう な︽ 職務 行為 基準 説︾ を行 政作 用に 関す る国 賠事 件に 適用 した 最高 裁判 例が

、著 名な 最︵ 一

(6)

小︶ 判平 成五 年三 月一 一日 民集 四七 巻四 号二 八六 三頁 であ って

、同 判決 は、

﹁税 務署 長の する 所得 税の 更正 は、 所 得金 額を 過大 に認 定し てい たと して も、 その こと から 直ち に国 家賠 償法 一条 一項 にい う違 法が あっ たと の評 価を 受 ける もの では なく

、税 務署 長が 資料 を収 集し

、こ れに 基づ き課 税要 件事 実を 認定

、判 断す る上 にお いて

、職 を尽 くす こと なく 漫然 と更 正を した と認 め得 るよ うな 事情 があ る場 合に 限り

、右 の評 価を 受 ける もの と解 する のが 相当 であ る﹂ とし て、 取消 違法 が認 めら れる とし ても

、そ れが 直ち に国 賠違 法に は直 結し な いこ とを 示し てい る。 そし て、 行政 作用 につ いて この よう な︽ 職務 行為 基準 説︾ を採 る判 例は

、周 知の よう に、 こ こ数 年徐 々に 増加 する 傾向 にあ る。 二 この よう に︽ 職務 行為 基準 説︾ は、 国賠 違法 を︽ 公務 員の 職務 上の 義務 違反

︾、 言い 換え れば 公務 員の

︽職 務上 の行 為規 範︾ に対 する 違反 とし て捉 える とこ ろに 特徴 があ る。 その 意味 で、

︽職 務行 為基 準説

︾は

、︽ 行為 不法 説︾ の一 つと して 位置 づけ られ るの であ る。 本稿 筆者 は、 前稿 にお いて

、︽ 権限 規範

・行 為規 範の 峻別

︾を 手が かり に、 取消 違法 と国 賠違 法で は、 行為 の主 体と 適用 され る規 範に つい て少 なく とも 理論 的に は区 別さ れる べき もの があ るこ とを 説い た。 すな わち

、こ こで 要 旨を 繰り 返し て述 べる なら ば、 行政 事件 訴訟 法三 条一 項は

、抗 告訴 訟を

﹁行 の公 権力 の行 使に 関す る不 服の 訴 訟﹂ と定 義し てい るの に対 して

、国 家賠 償法 一条 一項 は、

﹁国 又は 公共 団体 の公 権力 の行 使に 当た る公 が、 そ の職 務を 行う につ いて

、故 意又 は過 失に よっ て違 法に 損害 を加 えた とき は、 国又 は公 共団 体が

、こ れを 賠償 する 責 に任 ずる

。﹂ とし てい る。 取消 違法 の場 合、 問題 とな るの は﹁ 行政 庁﹂ とい う﹁ 行

﹂の であ り、 そこ に いう

﹁違 法﹂ は、 当該 行政 庁に 権限 を与 える 授権 規範

︵権 限規 範︶ に照 らし た違 法で あり

、そ の帰 結は

、当 該行 為 の﹁ 無効

﹂︵ 取消

・無 効確 認︶ とい うこ とに なる

。こ れに 対し て、 国賠 違法 の場 合は

、そ こで 問題 とな るの は﹁ 公

﹂と であ って

、違 法判 断は

、当 該公 務員 の職 務上 の行 為規 範で あり

、そ の帰 結は

国 家賠

(7)

償請 求権 の成 立要 件で ある

︱ ︱

当該 行為 の﹁ 不法

﹂な いし

﹁違 法﹂ とい うこ とに

( )

なる

10

しか しこ のよ うな 整理 を行 った とし て、 果た して 国賠 違法 は、 公務 員の 職務 上の

︽行 為規 範︾ 違反 とい う観 点の みで 説明 でき るか

、換 言す れば

、職 務上 の﹁ 行為 規範

﹂違 反に す 説明 する こと がで きる か、 とい う問 題が ある

。も し、 国賠 違法 が、 かよ うに 公務 員の 職務 上の 行為 規範 違反 に還 元し て説 明で きる とす るな ら ば、 むし ろ︽ 職務 行為 基準 説︾ のほ うが

、国 賠違 法の 本質 を表 現し てい るよ うに もみ える

。し かし なが ら、 それ で 国賠 違法 が一 貫し た形 で説 明で きる かど うか につ いて は、 検討 を要 する

。 行政 活動 の中 でも 国賠 法一 条が 適用 され るも のに は多 様な もの があ るの で、 ここ では さし あた り、 行政 作用 の中 で中 心的 地位 をし める 典型 的な 行政 処分 に限 定し て考 える こと にす るが

、あ る公 務員 が﹁ 行政 機関

﹂︵ 行政 庁︶ と して の立 場で 行政 処分 を行 った 場合

、当 該公 務員 は具 体的 にど のよ うな

﹁法 的義 務﹂ を負 うこ とに なる ので あろ う か。 もし 公務 員が 行政 庁と して の立 場で 行政 処分 を行 い、 それ が後 に取 消訴 訟に おい て違 法と され

、取 消さ れた 場 合、 違法 性同 一説 の立 場か らい えば

、そ れは 国賠 法一 条の 適用 にお いて も違 法と され るこ とに なる

。こ の場 合、 当 該公 務員 は、 どの よう な職 務上 の法 的義 務に 違反 した とい える ので あろ うか

。す なわ ち、 右に 挙げ た権 限規 範・ 行 為規 範の 峻別 に即 して いう なら ば、 権限 規範 違反 の行 為︵ 取消 違法

︶が なぜ

、公 務員 の行 為規 範違 反︵ 国賠 違法

︶ とな るの か、 とい う問 題で

( )

ある

。ま た、 仮に 違法 性相 対説 に立 つと して も、 取消 違法 の部 分は 違法 性の 判断 要素 と

11

して 残る とす れば

、こ れを どの よう に位 置づ ける かは

、や はり 同様 に問 題に なる はず であ る。 この 問題 につ き、 本稿 筆者 は、 前稿 にお いて

、こ れを 行為 不法 説の 立場 から

、公 務員 の︽ 行為 規範

︾に すべ て翻 訳す るこ とを 試み た。

﹁す なわ ち一 般に

、行 政機 関の ポス トに 就い てい る公 務員 が、 根拠 法令 等の

﹃権 限規 範﹄ に 違反 して 処分 を行 なっ た場 合、 当該 公務 員は

、公 務員 の職 務上 の﹃ 行為 規範

﹄に 違反 した と評 価さ れる こと にな る が、 それ はさ しあ たり

、公 務員 は一 般的 に法 令遵 守義 務と いう 職務 上の

﹃行 為規 範﹄ 国家 公務 員法 九八 条一 項、 地

(8)

方公 務員 法三 二条

︶が ある から であ って

、当 該行 政機 関が 行な った 処分 は無 効で ある とと もに

、当 該公 務員 の職 務 上の 行為 も違 法︵ 不法 と︶ 評価 され るこ とに なる とい うべ きで ある

。従 って

、こ こに

﹃権 限規 範﹄ が法 令遵 守義 務 とい う職 務上 の﹃ 行為 規範

﹄を 媒介 とし て、 内容 的に 職務 上の

﹃行 為規 範﹄ と連 動す るこ とに なる わけ であ る。

︱ ︱

その よう な説 明を かつ て行

( )

った

12

しか しな がら

、こ のよ うな 説明 は、 厳密 に考 えた とき に一 種、 理論 的な 違和 感を 拭う こと がで きな いも ので

( )

ある

。 す 13

なわ ち、 確か に公 務員 は法 令を 遵守 し職 務を 行う 義務 は負 って いる とし ても

、そ のこ とが

、取 消訴 訟に おい て ある 処分 が違 法と され たこ とか ら、 それ は国 家賠 償法 上も 違法 であ ると いう 評価 を導 く際 の媒 介と なり うる ので あ ろう か。 換言 すれ ば、 ある 公務 員が 行っ た行 政処 分が

、取 消訴 訟に おい て違 法と され た場 合、 それ はス トレ ート に 当該 公務 員は

︽法 令遵 守義 務︾ に反 した とい う結 論を 導く ので あろ

( )

うか

。若 干、 誤解 を招 く表 現か も知 れな いが

14

︽お よそ 公務 員は

、違 法な 行政 処分 を行 って はな らな い︾ とい う行 為規 範が あり うる のだ ろう か。 例え ば、 在留 資格 を有 しな い外 国人 が国 民健 康保 険法 に基 づく 国民 健康 保険 の被 保険 者証 の交 付を 申請 した 事例 につ いて 考え ると

、処 分庁

︵及 びそ の補 助機 関︶ の職 にあ る公 務員 は、 通達 や裁 判例 など を参 照し つつ 関係 法令 を 解釈 する こと にな るで あろ うが

、そ の結 果、 通達 に従 って

、申 請者 には 被保 険者 に該 当し ない とし て拒 否処 分を 行 った 場合

、そ の後 の取 消訴 訟に おい て、 国民 健康 保険 法な ど法 令の 解釈 によ り、 申請 者は 被保 険者 に該 当す ると し て、 拒否 処分 が取 消さ れた とす る。 しか し、 処分 庁の 職に ある 公務 員ほ か処 分に 関与 した 公務 員は

、結 果と して 違 法な 処分 を行 った とし ても

、そ のこ とか ら当 法令 遵守 義務 に違 反し たこ とに はな らな いで あろ う。 結局 は、 処 分当 時、 通達 によ って 示さ れた 法解 釈を 否定 する 裁判 例も ない ので

、既 存の 通達 に従 った 法解 釈を して

、結 果と し て後 の取 消訴 訟に おい て違 法と 判断 され る処 分を 行っ たと して も、 当該 公務 員に は過 失は ない とさ れる こと があ ろ

(9)

う。 すな わち 最高 裁判 例は

、こ のよ うな 場合

、﹁ ある 事項 に関 する 法律 解釈 につ き異 なる 見解 が対 立し

、実 務上 の 取扱 いも 分か れて いて

、そ のい ずれ につ いて も相 当の 根拠 が認 めら れる 場合 に、 公務 員が その 一方 の見 解を 正当 と 解し これ に立 脚し て公 務を 遂行 した とき は、 後に その 執行 が違 法と 判断 され たか らと いっ て、 直ち に上 記公 務員 に 過失 があ った もの とす るこ とは 相当 では ない

﹂と して いる ので ある

︵最

︵一 小︶ 判平 成一 六年 一月 一五 日民 集五 八巻 一号 二二

( )

六頁

。︶

15

すな わち

、公 務員 が違 法処 分を 行っ た場 合、 確か に法 令解 釈や 事実 認定

︵そ れに 必要 な調 査な ども 含む

︶に つい て の過 失が 問題 とな るこ とは あろ うが

、そ もそ も行 った 処分 が違 法か どう かは

、事 後の 争訟

︵す なわ ち抗 告訴 訟や 場 合に よっ ては

、国 家賠 償請 求訴 訟︶ の段 階に おい て最 終的 に確 定さ れる こと もあ るか ら、

︽お よそ 公務 員は

、違 法な 行政 処分 を行 って はな らな い︾ とい う行 為規 範が ある とま では いい えな いの では な

( )

いか

。そ うだ とす ると

、違 法性

16

同一 説に おけ る︽ 取消 違法

=国 賠違 法︾ とい う図 式は

、正 確に いう なら ば、 公務 員の 行為 規範 を前 提と した

︽行 為 不法 説︾ とい うよ りも

、︽ 処分 の違 法と いう 結

︾そ のも のに 着目 した

、換 言す れば 違法 処分 を一 と して 取り 扱う 一種 の︽ 結果 違法 説︾ では ない か、 とい うこ とが

( )( )

でき る。 すな わち

、違 法と いっ ても

、公

17 18

︵法

︶違 とい うこ とが でき よう

。 また

、判 例に おけ る︽ 職務 行為 基準 説︾ も本 節一 にお いて みた よう に、 もと もと は司 法作 用、 立法 作用 にお ける

︽結 果違 法説

︾を 否定 する 中で 出て きた もの であ るか ら、 その よう な流 れと も、 その 限り で平 仄が あう し、

︽職 務行 為基 準説

結果 違法 説︾ とい う図 式自 体も かな り一 般的 に採 られ てい るも ので ある

。そ うな ると 問題 は、 司法 作用 vs や立 法作 用な どの 特殊 な国 家賠 償請 求訴 訟に おい ては 否定 され た︽ 結果 違法 説︾ 的な 見方 が、 行政 処分 にお いて は、 むし ろ原 則的 な見 方と なる のか

、と いう こと であ る。 仮に

、違 法性 同一 説を 採ら ず、 違法 性相 対説 とし ての

︽職 務行 為基 準説

︾を 採っ たと して も、 行政 処分 が取 消訴 訟に おい て違 法と され た場 合、 国賠 法一 条の 適用 上も 違

(10)

法と なる ケー ス自 体を 一般 に否 定す るわ けで はな いか ら、 いず れに して もこ のよ うな 視点 は不 可欠 であ る。 三 この 問題 を、 行政 処分 につ いて

︽職 務行 為基 準説

︾を 採っ た判 例に 即し て、 さら に検 討す るこ とに しよ う。 東京 地判 平成 元年 三月 二九 日判 例時 報一 三一 五号 四二 頁は

、昭 和六

〇年 の在 宅投 票廃 止違 憲訴 訟上 告審 判決 にお いて 国賠 違法 につ いて の一 般的 説示 がな され たあ と、 そこ で示 され た︽ 義務 違反 的構 成︾ ない し︽ 職務 行為 基準 説︾ をい ち早 く行 政処 分に 適用 した 著名 な判 例で ある が、 この 事例 では

、原 告が

﹁精 神病 者﹂ とい う要 件︵ 道路 交 通法 八八 条一 項二 号︶ に該 当す ると の理 由で 行わ れた 自動 車運 転免 許取 消処 分に つい て、

﹁精 神病 者﹂ の認 定に あた って 行わ れた 医師 の診 断は 誤っ たも ので あり

、そ れに 基づ いて なさ れた 違法 な処 分で ある とし て、 同処 分の 取消 訴 訟に おい て、 当該 処分 その もの は取 消さ れた が、 国家 賠償 請求 訴訟 にお いて は、

﹁国 家賠 償法 上の 違法 性は

、公 に違 反し たか どう かと いう 観点 から 判断 すべ きも ので あ り、 した がっ て、 行政 処分 がそ の根 拠と なる 行政 法規 に定 める 実体 的又 は手 続的 な要 件を 客観 的に 欠缺 して いる か どう かと いう 瑕疵 判断 とは

、そ の判 断基 準を 異に して いる

﹂と の理 由に より

、請 求が 棄却 され てい る。 この 判決 につ いて は、 そこ にい う公 務員 の﹁ 職務 上尽 くす べき 法的 義務

﹂と は何 かが 明ら かで はな い、 換言 すれ ばそ こに は﹁ 適法 に︹ 免許

︺取 消︹ 処分

︺を 行な う義 務以 外の 義務 があ るの であ ろう か﹂ とい う疑 問が 呈さ

( )

れる

19

そこ で問 題は

、そ こに いう

︽適 法に 免許 取消 処分 を行 う義 務︾ とは 何か

、よ り一 般化 して いえ ば︽ 適法 に 処分 を行 う義 務︾ とは 何か

、で ある

。 本稿 の立 場か らす れば

、確 かに

、何 らか の︽ 適法 に 処分 を行 う義 務︾ はあ ると して も、 処分 が結 果と して 違法 と され たこ とそ のも のは

、公 務員 の職 務上 の義 務違 反に 還元 でき ない 違法 であ る。 従っ て、

︽適 法に 処分 を行 う義 務︾ とい うの は、 処分 の適 法・ 違法 自体 とは さし あた り区 別さ れた

、処 分を 行う にあ たっ て公 務員 に課 され る何 らか の 法的 義務 とい うこ とに なる

(11)

この 点に つい て右 の東 京地 裁判 決に かか る事 案を みて みる と、 そこ で問 題と なっ てい る公 務員 は、 運転 免許 取消 処分 をす るに あた って 医学 上の 鑑定 を行 った 指定 医︵ 道路 交通 法一

〇四 条四 項︶ と取 消処 分を 行っ た公 安委 員会

︵委 員︶ の二 者で ある

。 まず

、指 定医 につ いて は、 臨時 適性 検査 の﹁ 検査 の方 法に つい ては

、︹ 道路 交通

︺法 に特 別の 定め はな く、 その 方法 は専 ら指 定医 の裁 量に 委ね られ てい る﹂ とし た上 で、

﹁精 神病 者の 運転 免許 取消 処分 に係 る臨 時適 性検 査の 実 施は

、迅 速性 を旨 とし

、あ る程 度の 大量 的な 処理 にな ると 考え られ る行 政処 分に 関わ るも ので ある から

、限 られ た 時間 で限 られ た資 料に 基づ いて 行わ れる べき もの

﹂で あり

、﹁ その 検査 に当 たっ ては

、被 検査 者に 面接 し、 問診 す るこ とは 欠か すこ とが でき ない が、 その 他の 資料 につ いて は、 一般 的に は、 指定 医が 比較 的迅 速か つ容 易に 収集 す るこ とが でき る範 囲内 のも ので

、診 断に 必要 なも のを 収集 すれ ば足 りる もの

﹂と した

。そ して 取消 訴訟 にお いて は、 同医 師が 採用 した 資料 が客 観的 に見 ると 正確 性を 欠く など の点 から

、原 告が

﹁精 神分 裂病

﹂で ある との 同医 師 の診 断を 支え るに は十 分で ない とさ れた が、 国家 賠償 請求 訴訟 にお いて は、 右の よう な同 医師 の診 断を 不相 当と は いえ ない とし てい る。 次に

、公 安委 員会

︵委 員︶ につ いて は、

①複 数の 医師 に診 断さ せな かっ たこ と、

②指 定医 の診 断の 経緯

、根 拠を 調査 する など の検 診結 果の 正否 の検 討を 怠っ たこ と、

③聴 聞手 続を 経な かっ たこ とに つい て﹁ 職務 上の 法的 義務 に 反し たも のと はい え﹂ ない とし てい る。 すな わち この 判決 は、 処分 に関 与し たそ れぞ れの 公務 員の 職務 行為 を、 その プロ セス に応 じて 複数 の段 階に 分解 した 上で

、結 果と して 当該 運転 免許 取消 処分 は違 法で ある が、 決定 に至 るプ ロセ スに おい ては

、関 与し たい ずれ の 公務 員に つい ても 職務 上の 義務 違反 はな かっ た、 とす るも ので ある

。換 言す れば

、︽ 結 たる 決定

=処 分︾ は違 法 であ って も、 そこ に至 るま での プロ セス に関 与し た個 々の 公務 員の 行為 には 職務 上の 義務 違反 はな かっ た、 とい う

(12)

わけ であ るが

、こ のよ うな 構成 は、 確か に、 司法 作用 や立 法作 用に おけ る︵ 結果 違法 説を 否定 した

︶︽ 職務 行為 基準 説︾ を適 用し た判 例の 判断 方法 に近 似す るも ので ある とい え

( )

よう

20

もち ろん この よう な場 合、 取消 訴訟 にお いて

、処 分は 違法 とさ れた わけ であ るか ら、 国賠 法一 条の 適用 上も 違法 では ある が、 当該 処分 に関 与し た公 務員 には 過失 がな い、 とい う処 理の 仕方 もあ りう ると ころ で

( )

ある

。た だし

、そ

21

の場 合の 違法 とは

、さ しあ たり 公務 員の 職務 上の 行為 規範 を前 提と しな い違 法と いう こと にな るで あろ う。 すな わち

、こ のよ うに みて くる と、 国賠 違法 にお いて 問題 とな る違 法に は、

︽公 務員 の職 務上 の行 為規 範違 反に 還元 でき る違 法︾ と︽ 還元 でき ない 違法

︾が ある こと が明 らか にな るで あろ う。 昭和 六一 年の 在宅 投票 廃止 違憲 訴 訟上 告審 判決 にお いて 示さ れた 国賠 違法 の定 義が 一般 論と して 妥当 する か否 かに かか わら ず、 国家 賠償 法一 条を 代 位責 任説 に立 って 理解 する 以上

、︽ 公務 員の 職務 上の 行為 規範

︾と の関 わり につ いて は、 理論 的に も留 意す べき で ある とお もわ

( )

れる

22

四 さら に、 国賠 法一 条の 違法 にお いて

︽義 務違 反的 構成

︾を 採る とし ても

、こ れを 徹底 させ るこ と、 換言 すれ ば﹁ 違法

﹂判 断を すべ て︽ 公務 員の 行為 規範

︵法 的義 務︶ 違反

︾に 還元 しつ くす こと はで きな い、 とい うべ きで あ

( )

ろう

。そ して

、右 に述 べた よう な︽ 結果 違法

︾は

、行 為不 法・ 結果 不 のい ずれ とも 次元 を異 にす る、 その 意味 で 国 23

賠違 法に 特有 のも ので ある

。ま た、

︽職 務行 為基 準説

︾に つい て︽ 国賠 違法

=取 消違 法+ 職務 上の 注意 義務 違反

︾ とい うわ かり やす い

( )

図式 によ った 場合

、︽ 取消 違法

︾の 部分 は、 公務 員の 職務 上の 行為 規範 を前 提と した

︽行 為不

24

法︾ では 説明 でき ない とい うこ とに

( )

なる

25

もっ とも いう まで もな いこ とな がら

、右 のよ うな 理論 的な 整理 をし たと して も、 行政 処分 を中 心と する 行政 活動 に関 して いえ ば、 その 根拠 法規 が明 らか であ る場 合、 根拠 規範

( )

違反 の︽ 結果 違法

︾を 国賠 違法

=違 法性 の中 心に 据

26

えな けれ ばな らな いこ とに は変 わり がな い。 これ は、 国家 賠償 と損 失補 償を 区別 して いる 現行 国家 補償 制度 の下 に

参照

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