裁 49 判例 が、 裁量 収縮 論を 採ら ず、 裁量 権消 極的 濫用 論を 採っ てい るの は、
︽あ る機 関が 一定 の行 為を す・ べ・ き・ であ った か︾ とい う行 政統 制的 なア プロ ーチ とい うよ りも むし ろ、
︽あ る公 務員 が一 定の 行為 をし・ な・ か・ っ・ た・ こと は、 法が 許容 する とこ ろで ある か︾ とい う損 害賠 償法 的な アプ ロー チを 採る もの であ ると いえ よう
。す なわ ちそ こで は、
﹁違 法﹂ 判断 の下 で、 さま ざま な行 政側 の免 責的 な事 情︵ 例え ば、 処分 を行 わな かっ たが
、 その 代わ りに 行政 指導 を行 って 最低 限の 対処 は行 って いた
、な ど
︱
︱
最︵二 小︶ 判平 成元 年一 一月 二四 日民 集四 三巻 一〇 号一 一六 九頁
︹宅 建業 法事 件︺
︶を 考慮 する こと にな るわ けで ある が、 そこ には
、本 文で 述べ たよ うな 民法 の不 法行 為法 的な 違法 性観 に近 いも のが ある とい えよ う
︵さ らに 第三 節注
︵
︶参 照︶
。こ れら の点 も含 め、 規制 権限 の不 行使 につ いて は、 今後 の課 題と した い︵ 野呂 充﹁ 不作 為に 対す る救 済﹂ 公法 研 50 究七 一号
︵平 成二 一年
︶一 七四 頁以 下、 及び
﹁野 呂充 会員 部会 報告 に対 する 青井 未帆 会員 のコ メン ト﹂ 同二
〇八 頁以 下、 青井 未帆
﹁立 法行 為の 国家 賠償 請求 訴訟 対象 性・ 再論
﹂信 州大 学法 学論 集一 二号
︵平 成二 一年
︶一 頁以 下参 照︶
。
第三 節 職務 行為 基準 説と 過失 一 一般 に指 摘さ れて いる よう に、
︽職 務行 為基 準説
︾を 採っ た場 合、 従来 は﹁ 過失
﹂要 件に おい て扱 われ てき た職 務上 の注 意義 務違 反が
﹁違 法﹂ 要件 にお いて 扱わ れる こと にな るが
、と りわ け本 稿に おけ る以 上の 考察 から 注 目さ れる のは
、﹁ 過失
﹂に おい ては 組織 過失 の問 題と して 論じ られ てき た問 題が
、︽ 職務 行為 基準 説︾ にお いて は、 行政 決定 に至 るま での プロ セス の分 節化 の程 度に よっ ては
、限 りな く個 人過 失を 論じ るの に近 づく こと があ りう る ので はな いか
、と いう 点で
( )
ある
。こ の点 は、 既に 第一 節に おい て取 り上 げた 平成 元年 東京 地判 にお いて 顕著 に見 ら
50
れる 点で ある
。も っと もこ の点 は、 仮に
︽結 果違 法︾ の考 え方 をと って
、職 務上 の注 意義 務違 反の 問題 を過 失要 件 にお いて 論じ たと して も、 同じ 問題 は生 じう るで あろ う。 従っ て、
︽職 務行 為基 準説
︾を 採っ たか らと いっ て当 然に
、決 定プ ロセ スの 分節 化が 詳細 にな り、 特定 の公 務員 個人 の注 意義 務違 反︵ 実質 的に は﹁ 過失
﹂と 同じ を︶ 問う 方向 にな ると は限 らな い。 また
、実 際の 判例 をみ ても
、従 来、
︽職 務行 為基 準説
︾を 採る 判例 は、
︽結 果違 法︾ を認 めな がら も、 その プロ セス に関 与す る公 務員 の職 務上 の義 務違 反を 否定 する とい う形 で、 いわ ば﹁ 違法
﹂判 断を 制限 する もの が多 かっ たが
、近 時は
、︽ 結果 違法
︾を 認め た うえ で、 さら に違 法要 件の 中で 公務 員の 職務 上の 注意 義務 違反 も認 め、 国賠 請求 を認 容す る判 例も 出て いる
。前 稿 にお いて も取 り上 げた 最︵ 一小 判︶ 平成 一九 年一 一月 一日 民集 六一 巻八 号二 七三 三頁
︵四
〇二 号通 達事 件上 告審 判 決︶ がそ れで
、同 判決 は、
︽職 務行 為基 準説
︾を とり なが らも
、通 達の 作成
、発 出及 びそ れに 基づ く取 扱い の継 続 につ いて
﹁公 務員 の職 務上 の注 意義 務に 違反 する
﹂も のと して
、こ れを 国家 賠償 法一 条一 項の 適用 上違 法な もの と して いる
。結 論の みを 引用 する と、 次の よう にな って いる
。
﹁以 上に よれ ば、 四〇 二号 通達 を作 成、 発出 し、 また
、こ れに 従っ た失 権取 扱い を継 続し た上 告人 の担 当者 の行 為は
、公 務員 の職 務上 の注 意義 務に 違反 する もの とし て、 国家 賠償 法一 条一 項の 適用 上違 法な もの であ り、 当該 担当 者に 過失 があ るこ とも 明ら かで あっ て、 上告 人に は、 上記 行為 によ って 原告 らが 被っ た損 害を 賠償 すべ き責 任が ある とい うべ きで あ る。
﹂ ここ
では
、通 達を
﹁作 成、 発出 し、 また
、こ れに 従っ た失 権取 扱い を継 続し た﹂ 国の 担当 者の 行為
、す なわ ち通 達 とい う一 般的 規範 の定 立︵ とそ の後 の取 扱い が︶
、加 害行 為と して 取り 上げ られ
、そ れに つい て﹁ 違法
﹂が 判断 さ れて いる
︵す なわ ち、 個別 の対 応が 問題 とな って いる わけ では ない
︶。 正確 にい うな らば
、通 達そ のも のが 違法 であ る とい う︽ 結果 違法
︾を 前提 とし て、
︽通 達の 発出 に至 るま での 行為
︾に かか わる 公務 員の 職務 上の 義務 違反 と、
︽そ の後 の通 達改 正︵ 改善 の検 討も 含む
︶の 不作 為︾ にか かわ る公 務員 の職 務上 の義 務違 反に 分け られ るこ とに なる と おも わ
( )
れる
。そ して
﹁当 該担 当者 に過 失が ある こと も明 らか であ って
﹂と
﹁過 失﹂ にも 言及 して いる が、
﹁職 務上
51
通常 尽く すべ き注 意義 務﹂ のほ かに
﹁過 失﹂ 要件 で別 個論 じる こと があ りう るか は不 明で ある
。こ のよ うな 例は
、 他に もみ られ ると ころ であ るが
、判 決文 にお いて よく みら れる
﹁特 段の 事情 がな い限 り…
…﹂ とい った 留保 と同 様、
﹁職 務上 通常 尽く すべ き注 意義 務﹂ に違 反し
、国 家賠 償法 上違 法で ある こと につ いて 念押 し程 度の 意味 かも し れ
( )
ない
。い ずれ にし ても
、担 当者 が誰 であ った とか
、具 体的 にど のよ うな 関与 をし たか はこ とさ らに 問わ れて はい
52
ない 二 。 しか し事 例に よっ ては
、か なり 詳細 なと ころ まで
、担 当公 務員 の特 定が 問題 とな る場 合が ない では ない
。 最近 の判 例を 一つ 挙げ ると
、情 報公 開条 例に 基づ いて
、特 定の 食料 費支 出に 係る 公文 書の 開示 を求 めた とこ ろ、
﹁交 際的 な懇 談﹂ にか かる 食料 費支 出に つい ては
、そ の相 手方 名称 を開 示す るこ とに よっ て、 当該 相手 方と の円 滑
な関 係が 損な われ るお それ があ るか ら条 例の 非開 示理 由︵ 事務 事業 に関 する 情報 で、 開示 する こと によ って
、関 係当 事 者間 の信 頼関 係が 損な われ ると 認め られ るも の又 は県 の行 政の 公正 もし くは 円滑 な運 営に 著し い支 障が 生ず るこ とが 明ら か なも の︶ に該 当す ると の審 査会 答申 を受 けて
、実 施機 関︵ 知事
︶が 一部 非開 示決 定を 行っ たが
、後 に取 消訴 訟に お いて
、同 決定 は違 法で ある とし て取 消さ れた 事案 につ いて
、国 家賠 償請 求訴 訟が 提起 され てい る。 最︵ 一小 判︶ 平 成一 八年 四月 二〇 日裁 判所 時報 一四 一〇 号八 頁の 事案 がこ れで ある が、 同判 決は
、ま ず一 般論 とし て﹁ 条例 に基 づ く公 文書 の非 開示 決定 に取 消し 得べ き瑕 疵が ある とし ても
、そ のこ とか ら直 ちに 国家 賠償 法一 条一 項に いう 違法 が あっ たと の評 価を 受け るも ので はな く、 公務 員が 職務 上通 常尽 くす べき 注意 義務 を尽 くす こと なく 漫然 と上 記決 定 をし たと 認め 得る よう な事 情が ある 場合 に限 り、 上記 評価 を受 ける もの と解 する のが 相当 であ る﹂ とし て︽ 職務 行 為基 準説
︾を 採る
。そ の上 で、
﹁本 件答 申は
、そ の当 時に おい ては 相応 の理 由を 有し てい たも のと いう べき であ る し、 本件 答申 の趣 旨に 沿っ て、 開示 請求 の対 象と なっ た文 書の うち
﹃交 際的 な懇 談﹄ に係 る懇 談の 相手 方に 関す る 情報 を非 開示 とし
、本 件各 文書 につ いて も、 その 記載 内容 から
﹃交 際的 な懇 談﹄ に係 るも ので ある とし た県 財政 課 職員 の判 断も
、必 ずし も不 合理 なも のと はい えな いと いう べき であ って
、本 件各 決定 に係 る判 断に 関与 した 職員 が 職務 上通 常尽 くす べき 注意 義務 を尽 くす こと なく 漫然 と上 記判 断を した と認 め得 るよ うな 事情 があ った とは 認め ら れな い﹂ とし てい る。 ただ 問題 とな った のは
、本 件対 象公 文書 が一 部非 開示 決定 の後 に、 対象 公文 書に 記載 され た相 手方 との 行事 は実 際に は行 われ てお らず
、実 態は
、情 報収 集の ため 県職 員が 国の 幹部 職員 との ゴル フを 伴う 懇談 を実 施す るた めの 費 用捻 出で あっ て、 本件 対象 公文 書自 体が 虚偽 文書 であ った こと が判 明し た点 をど のよ うに 捉え るか とい う点 であ っ た。 実際 に本 件対 象公 文書 が公 開さ れた のは
、虚 偽が 判明 し、 さら にそ の後 に、 一部 非開 示決 定に 対す る取 消判 決 が出 た後 であ るが
、こ の点 につ いて
、法 廷意 見は
、﹁ 一般 的に
、担 当職 員に おい て請 求に 係る 全文 書の 内容 の真 否
の調 査を する こと は義 務付 けら れて おら ず、 文書 の記 載内 容に 基づ いて 迅速 に開 示等 の決 定を 行う こと が予 定さ れ てい るも の﹂ とし
、﹁ 本件 条例 の規 定等 から
、県 財政 課の 職員 が、 請求 に係 る多 数の 文書 の記 載内 容の 真否 の調 査 を行 わず に上 記判 断を した こと が、 職務 上通 常尽 くす べき 注意 義務 を怠 った もの とい うこ とは でき ない
﹂と する
。 この 事案 では
、虚 偽と され た本 件対 象公 文書 は財 政課 の職 員に よっ て作 成さ れた もの であ り、 結果 的に 取消 され た 一部 非開 示決 定の 判断 を実 際に 行っ たの も同 じ財 政課 の職 員で ある が、 文書 作成 時と 非開 示決 定時 とで は職 員の 異 動も あり うる とこ ろで ある
。法 廷意 見は
、そ もそ も職 員に は対 象公 文書 の真 実に 関す る審 査義 務は ない
、と して 違 法性 を否 定し てい るの であ るが
、こ れに つい ては
、泉 徳治 裁判 官反 対意 見が 注目 され る。 泉裁 判官 反対 意見 は、 最
︵一 小︶ 判昭 和五 七年 四月 一日 民集 三六 巻四 号五 一九 頁を 引用 しつ つ、
﹁行 政処 分は
、知 事等 の独 任機 関た る行 政庁 の名 義で 行わ れる 場合 であ って も、 実際 には
、行 政庁 を支 える 行政 組織 体の 組織 的決 定と して 行わ れる もの であ っ て、 国家 賠償 法一 条一 項の
﹃公 務員
﹄の 故意 又は 過失 の存 否も
、行 政組 織体 を構 成す る公 務員 を全 体的 一体 的に と らえ て、 組織 体と して 手落 ち手 抜か りが 存し たか どう かと いう 観点 から 検討 すべ きで ある
。す なわ ち、 当該 行政 処 分を 実際 に担 当し た個 別具 体的 な職 員の 故意 過失 のみ を問 題と する ので はな く、 行政 庁を 支え る行 政組 織体 の構 成 員た る公 務員 を全 体的 一体 的に とら えて 故意 過失 が存 する か否 かを 判断 すべ きで ある
﹂と した 上で
、﹁ 国家 賠償 法 一条 一項 の規 定に 基づ く損 害の 賠償 を請 求す る上 にお いて
、上 記﹃ 公務 員﹄ を具 体的 に特 定す る必 要が ない こと は、 いう まで もな い﹂ とし てい る。 すな わち
、﹁ 公文 書の 管理 から 開示 まで の一 連の 行為 に関 与し た公 務員 を全 体 的一 体的 にと らえ て、 故意 又は 過失 の有 無を 検討 すべ きで ある
﹂と いう わけ であ る。 この 泉裁 判官 反対 意見 には
、 横尾 和子 裁判 官が 同調 して おり
、判 決自 体が 際ど い意 見の 差で 出さ れた こと が窺 える が、 改め て、 組織 的決 定と 職 務行 為基 準説 の適 用と の関 係の 問題 点を 浮き 彫り にす るも ので あろ う。 三 既に 述べ たこ との 繰り 返し にな るが
、﹁ 職務 上の 注意 義務 違反
﹂を 違法 の問 題と して 扱う か、 それ とも 過失