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e ユニバーシティにおける経済学部教育システムの提案

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(1)

1 は じ め に

 ICT(Information and Communication Technology)の発展とともに,近年さまざ まなサービス分野で「e化」への取り組みが進んでいる.教育の分野では職 業訓練や社員研修などで普及したいわゆる「eラーニング」をはじめ,ここ 数年は大学教育においても,ICTを活用した教育サービスが急速に拡充され てきている.大学における教育サービスの「e化」は,少子化や高等教育ニー ズの多様化にともなう競争の激化に対応する有力な施策のひとつとしても注 目されている.

 大学における教育サービスの「e化」の取り組みの中で,とりわけ積極的 にICTを活用しようとするものに「eユニバーシティ」の取り組みがある.

eユニバーシティとは,大学が提供するあらゆるサービスを「e化」しようと するものであり,授業サービスを「e化」する「eエデュケーションサービス」,

事務サービスを「e化」する「eアドミニストレーションサービス」,図書館サー ビスを「e化」する「eライブラリサービス」などが含まれる.

 これらの主要サービスのうち,eアドミニストレーションサービスとeラ イブラリサービスについては,ここ数年,多くの大学などで急速に整備され てきているのに対して,教育サービスの中核をなすeエデュケーションサー ビスについては,一部の大学を除いてほとんど進捗していない.その原因の

【論 説】 

e ユニバーシティにおける経済学部教育システムの提案

  北 室 康 一  

(2)

ひとつは,「個々の科目の特性」と「種々のe化の形態」のマッチングが不明 快であることだと考えられる.

 本稿は,このような状況を改善するために,eエデュケーション,eアドミ ニストレーション,eライブラリの各サービスを概観したのち,経済学部の カリキュラムを例として科目特性の分析を行い,科目と各種eエデュケーショ ン形態との最適な組み合わせを具体的に提示しようとするものである.1)

2 e

エデュケーションサービス

2. 1 eエデュケーションのコンテンツ

 eエデュケーションにおける教材のe化,すなわち電子化やネットワーク 化には,大きく2つのタイプがある.

 ひとつは,授業で使用する教材の電子化,マルチメディア化である.この 具体的な例として,語学教育における音声テープやCD,テレビ放送の教養番 組などを録画したビデオ教材などに始まり,パソコンの普及に伴うワープロ 文書のプリントやプレゼンテーションソフトによるスライドなどが挙げられ る.

 もうひとつは,授業そのものの電子化,マルチメディア化,そしてネット ワーク化である.ネットワークインフラの整備により,離れたキャンパス内 の教室間を専用線や衛星通信,ブロードバンドで接続し,授業を同時中継す る遠隔授業が実施できる.また通信制大学などで使用されている講義ビデオ は,インターネットを通じてオンデマンドで見ることができる.同時に,配 信される授業自身もマルチメディア化し,例えばビデオ講義では教員の動画 と板書画像や解説アニメーションなどをパソコン上で同時に映し出すことが できる.このような教材の作成は多大な労力を必要とするが,最近のオーサ リングソフトの発展と充実により,負担は以前より軽減されている.

1 )この章は,北室他(2001a,2001c),細井(2004),経済産業省(2004,2005),先進学習基盤協 議会(2003),吉田他編著(2005a,2005b)を参照した.

(3)

2. 2 eエデュケーションの提供システム

 eエデュケーションは,LMS(Learning Management System)をベースに提供 されている.LMSを利用することによって,学生は教材の提示,小テストの 実施などのeラーニングサービスを,教員は教材や小テストの作成や登録な どのeエデュケーションサービスや,学生の学習履歴や小テストの自動採点 といった成績管理などの授業におけるアドミニストレーションサービスを利 用することができる(第 1 図).また,LMSには学生間,あるいは学生−教 員間のコミュニケーションツールとして,科目,教材ごとに掲示板やグルー プチャットなどの機能が備わっている.

第 1 図 LMS(HIPLUS)のログイン直後の画面(星城大学の例)

2. 3 eエデュケーションの形態

 LMSを通じて利用できるeエデュケーションはその形態から大きく5つに 分類することができる.これら5つの形態について,以下に詳しく説明する.

2. 3. 1 教材配布型eエデュケーション

 教材配布型eエデュケーションは,授業教材をいつでもどこででも受け取 ることができる学習形態である.この場合の教材とは,授業において配布する,

あるいは配布したプリントや資料,授業で用いたスライド,授業では配布し

(4)

ないが学生に参照してもらいたい参考資料や参考ウェブサイトのリンク集な どのことである.

2. 3. 2 ドリル型eエデュケーション

 ドリル型eエデュケーションは,授業で学んだことをドリル教材で復習す る学習形態である.ドリル教材とは,あらかじめ登録された選択式の問題が 順に,あるいはランダムに出題されるという反復型の自習用教材である.学 生はいつでも何度でもドリル教材にチャレンジすることができる.

2. 3. 3 コースウェア型eエデュケーション

 コースウェア型eエデュケーションとは,授業なしにシナリオ教材で自習 する学習形態である.シナリオ教材とは,定められたシナリオに沿ってハイ パーテキストを読み進めることによって学習を進める自習用教材である.学 生は,途中で前に戻ることもできるし,シナリオの途中にある選択式の理解 度調査クイズを受けることで自身の理解度を確認することもできる.

2. 3. 4 講義配信型eエデュケーション

 講義配信型eエデュケーションとは,電子メールや電子掲示板などを用い て教員との双方向性を維持しつつ,授業の動画像を見ることによって授業を 受けるという学習形態である.学生は配信される講義を聴き,レポートを提 出し,教室やオンラインで試験を受けて単位を取得することができる.また,

必要に応じて,電子メールやチャットなどを用いて教員と質疑応答を行うこ ともできる.

 講義配信型eエデュケーションの教材の動画部分の作成には,従来型の対 面授業の様子を録画する方法と,スタジオで授業と別に録画する方法がある.

その動画を講義で用いたMicrosoft社のPowerPointなどのプレゼンテーショ ンソフトや別に作成した講義ノートなどと組み合わせて,教材を作成する.

 ところで,学生アンケートの結果によれば,時間割に縛られずに自由な時 間に受講できる,聞き逃した箇所や理解の難しい箇所を巻き戻して見直すこ とができる,授業中の他学生の無駄なおしゃべりに邪魔されず授業に集中で

(5)

きるといった点が学生に評価されており,講義配信型eエデュケーションは 非常に学習しやすいとの意見が多い.また,対面授業の受講生と比べて,講 義配信型eエデュケーションの受講生の方がテストの成績が良いことから,

講義配信型eエデュケーションの方が対面授業より教育効果が高いのではな いかとの報告もある.

2. 3. 5 ブレンド型eエデュケーション

 ブレンド型eエデュケーションは,あるときは対面授業,またあるときは 講義配信型eエデュケーションというように両方を混合させた学習形態であ り,一般にブレンディッドラーニングと呼ばれている.学生は,学生同士の 意見交換やディベート,実習形式の授業のときは従来型の対面授業で受講し,

講義形式の授業のときは講義配信型eエデュケーションで受講する.ブレン ド型eエデュケーションでは,学生間の啓発や学生と教員間のコミュニケー ションのとりやすさ,また教員による学生の管理などの対面授業の利点と先 述した講義配信型eエデュケーションの利点の両方を包含している.

2. 4  eエデュケーションの形態別特徴

 これらeエデュケーションの5つの形態と対面授業の特徴を,個別学習,

画一学習,ドリル学習,予習,復習,連続性の維持について5段階で評価す ると第 1 表のようになる.

 個別学習とは学生の受講する形態がどれだけ個別に対応しているか,画一 学習とは学生の受講する形態がどれだけ画一的か,ドリル学習とは学生がど れだけ何度でも学習しやすいか,予習とは学生がどれだけ予習しやすいか,

復習とは学生がどれだけ復習しやすいか,連続性の維持とは学生が欠席した 場合に前回の授業内容のフォローがどれだけできるか,をそれぞれ評価した ものである.

(6)

学習形態 個別学習 画一学習 ドリル学習 予 習 復 習 連続性の 維持 教材配布型

eエデュケーション 1 4 2 4 3 4

ドリル型

eエデュケーション 2 4 5 1 5 1

コースウェア型

eエデュケーション 2 4 4 5 4 5

講義配信型

eエデュケーション 1 5 3 1 4 5

ブレンド型

eエデュケーション 3 3 2 1 3 3

対面授業 5 2 1 1 1 1

第 1 表 eエデュケーション5形態と対面授業の特徴

2. 5 eエデュケーションの具体例

2. 5. 1 星城大学におけるeエデュケーションの取り組み

 2002年4月に開学した星城大学は,当初からeユニバーシティを志向した 大学であり,今までにない多くの取り組みを行ってきた.ここでは,情報基 盤とeエデュケーションの取り組みについて紹介する.

2. 5. 2 情報基盤の取り組み

 学内におけるネットワークのバックボーンはギガビットイーサとし,建物 内の各教室や事務室,研究室には有線LAN100Mbpsを引いた.キャンパス内は,

グラウンドの中心付近を除き,すべて無線LANで網羅した.無線LANには 通信速度11MbpsのIEEE(Institute of Electrical and Electronics Engineers)802.11b を採用した.

 全学生にB5型無線LAN内臓モバイルPCを携帯させ,全教員にはA4型無 線LAN内臓オールインワンノートPCを配布している.それに伴い,学内か らパソコン教室を一掃した.学生は配布されたPCを自分で管理しているが,

自分で手に負えない問題が生じた場合には有志学生による相談室に持ち込む ことができる.相談室でも対処しきれない問題であれば,事務室経由で業者

(7)

に修理を依頼することができる.印刷は,プリンタステーションにて行う.

2. 5. 3 eエデュケーションの取り組み

 星城大学では,eエデュケーションの取り組みとして,ディスタンスラー ニングシステムとeラーニングシステムを導入した.

 ディスタンスラーニングシステムは,講義室の授業をライブ放送し,授業 教室以外の場所で受講できるシステムである.2講義室に遠隔講義発信設備 を設け,6講義室に遠隔講義受信設備を設けた.遠隔講義教室では,カメラ映 像をMPEG2(Moving Picture Experts Group phase 2),MPEG4(MPEG phase 4)で エンコードしながら,動画配信サーバからライブ放送を行っている.MPEG4 の映像はVOD(Video On Demand)サーバに保存され,学生が授業を欠席した 場合や試験前に復習する場合に閲覧することができる.録画・発信ソースは 教師卓の操作盤で選択でき,カメラ映像,PC画面,OHP,ビデオなど映像機 器画面を選ぶことができる.MPEG2による配信は有線LANを通じて遠隔講 義受信教室や研究室で,MPEG4による配信は無線LANを通じてPCで受信 できるようになっている.ディスタンスラーニングシステムの構成を以下に 示す(第 2 図).

第 2 図 星城大学におけるディスタンスラーニングシステム構成図

(8)

 eラーニングシステムには,日立電子サービス社のHIPLUSonWeb(その後 のバージョンアップによって現在の名称はHIPLUS for CAMPUSになっている)を採 用した.HIPLUSonWebでは,シナリオ型教材を扱うことができ,他に成績の 管理,各種テスト教材の実行および採点,アンケートの実施と集計,学生の 自習用教材の提供,レポートの受付,コミュニケーションツールなどの機能 が備わっている.シナリオ型教材やテスト教材などの作成,アップロードに

はHIPLUSonWeb専用の作成ソフトを用いる.

 星城大学では,教員に講義形式のすべての授業でPowerPointを使用するこ とを義務付けており,学生は予習復習のために授業で用いたPowerPointを

HIPLUSonWebから取得することができる(第 3 図).

第 3 図 HIPLUSの教材選択画面(星城大学の例)

 テスト教材では,選択式と穴埋め式の2種類の教材を作成することができ る.テスト教材の作成には,問題,正解,選択肢などのコンテンツの入力と,

テストの実施期間(年月日時分秒までの設定が可能),制限時間,再提出の可否,

合格点,ヒントの有無,解答提出後の採点結果や正解の表示非表示などのテ スト実行時の設定が必要である(第 4 図).また,50問の中からランダムに 20問抽出して出題するようなテスティング機能も備えている.テストは解答

(9)

提出後直ちに採点されるので,学生はテスト期間終了後に自分の試験結果を 直ちに参照することができる.

第 4 図 テスティング教材の作成画面(星城大学の例)

 アンケート機能は正解の設定がない以外はテスト教材とほぼ同じである.

授業中のあるタイミングで学生がアンケートに回答すると,学生の回答履歴 が保存され,アンケートは自動的に集計される.つまり,アンケート機能は,

学生の理解度調査だけでなく,学生の出欠調査としても活用できる.

 自習用教材は,テスト教材とほぼ同じ作成手順で,実施期間なし,再提出 可能で設定することで作成できる.学生の学習回数,最高点,平均点などが LMSに記録され,教員はそれらを参照することができる.

 レポートの受付においては,教員は,提出受付期間,再提出の可否などの 条件を設定して,レポート課題を作成する.作成後,教材登録を行った時点で,

当該科目の受講生全員にレポート課題が出されたことを通達するメールが自 動的に送信される.レポート提出状況は提出日時などとともに一覧表示する ことができる.教員は,一覧からワンクリックで提出されたレポートの内容 を閲覧することができ,その場でレポートを評価することもできる(第 5 図).

その際に,評価結果を学生に知らせるかどうかの設定もできる.また,未提

(10)

出の学生に督促メールを送信することもできる.

第 5 図 レポート課題一覧画面(星城大学の例)

 コミュニケーションツールには,チャットや掲示板,FAQがある.これら は科目ごとに設置されており,当該科目の受講生と担当教員のみ利用できる.2)

3 e

アドミニストレーションサービス

3. 1 eアドミニストレーションとは

 教育や事務手続きの管理・運営であるeアドミニストレーションは,学生 が学習以外の用事で大学に出向かなければならないという時間的,空間的制 約を解消するものである.eアドミニストレーションは,主として教員がか かわる教育的eアドミニストレーションと主として職員がかかわる事務的e アドミニストレーションの2つに大別することができる.

3. 2 教育的eアドミニストレーション

 教育的eアドミニストレーションには,eエデュケーションと対面授業の 両方における出欠管理や成績管理,レポート受付などがある.学生はLMSで

2 )この章は,北室(1999b,2002),北室他(2001b,2003a,2003b,2003c,2004),天野(2003,

2004),星城大学ホームページを参照した.

(11)

これらの機能を利用することができる.出欠管理については,LMSで学生の アクセスログを保存しており,教員は,学生の出欠確認や配信型の授業参加 状況,自習型教材の利用状況などを参照できる.成績管理においては,小テ ストやアンケート,オンラインクイズは自動的に採点され,教員はその結果 を参照することができる.レポート受付,提出については,従来のように学 生は事務室や教員の研究室まで行かなくても提出できる.教員は提出状況を 成績管理のようにまとめて確認でき,オンラインで採点することができる.

これらの機能により,教員はより細やかな学生個別の教育プログラムを提供 することができる.

3. 3 事務的eアドミニストレーション

 事務的eアドミニストレーションには,学生連絡,休講連絡,教室変更,

各種証明書の申請,履修登録などがある.

 学生は,学生連絡,休講連絡,教室変更,各種証明書の申請用紙の配布な どのサービスを学内向けのイントラネットサービスで受けることができる.

学生がモバイル端末や携帯電話から利用できるように,モバイル対応の学内 向けイントラネットサービスを提供する大学もある.さらに,休講情報や教 室変更といった即時性の高い情報を登録されたメールアドレスに自動的に配 信する学生向けのプッシュ型サービスもある.

 履修登録とはオンライン履修登録のことであり,学生はパソコンから受講 科目を登録することができる.オンライン履修登録システムは,大学が以前 から利用している科目登録データベースを元に各大学が独自で構築している 場合が多い.これは,eキャンパスシステムが市販される前から大学がオン ライン履修登録に取り組んでいたことによる.オンライン履修登録システム に大学独自の履修ルールを設定することができ,昨年度までの単位取得状況 から,卒業に必要な科目を自動的に選択する機能や,どの系列の科目をあと 何単位取得すべきかを自動計算する機能を付加することができる.これによ

(12)

り,卒業要件や卒業必要単位数などの見落としや勘違いによる登録ミスを減 らすことができる.

3. 4 eアドミニストレーションの具体例

 星城大学では,eアドミニストレーションの取り組みとして,eキャンパス システムを導入した.eキャンパスシステムには,日立システム&サービス 社のCampusVision(その後のバージョンアップによって現在の名称はStarVisionに なっている)を採用した.CampusVisionには,学生呼び出し,大学からのお知 らせ,時間割表示,休講情報,教室変更,各種申請,オンライン履修登録な どの機能がある(第 6 図).教育サービスにおけるeアドミニストレーション である出欠確認や小テストなどは,先述したようにeラーニングシステムを 使用した.

第 6 図 eキャンパスシステム(StarVision)の画面(星城大学の例)

 オンライン履修登録では,時間割表をメイン画面とし,サブ画面の科目名 をクリックすることによってシラバスを表示させることができる.学生は,

時間割表のそれぞれのコマの中から科目名を選択するだけで科目登録ができ

(13)

る.二重登録防止のため,同じコマから複数科目を選択することができない ようになっている.星城大学では,履修ルールの登録によって,履修登録時 に年次配当の必修科目を自動的に選択するようにした.また,再履修が必要 な必修科目を目立つように表示させ,それら科目以外を選択した場合には,

アラートウィンドウを開き,学生に再履修が必要な必修科目を選択しなくて いいか確認を取るようにしている.3)

4 e

ライブラリサービス

4. 1 電子化図書館サービス

 大学図書館の電子化の取り組みには,蔵書としてあるかないか,および貸 し出し中か否かを調べる蔵書検索システムや図書館内の図書が置かれている 書架の位置も検索できる蔵書位置検索システムなどがあった.はじめは,書 名, 編 著 者 名, 出 版 社, 分 類,ISBN(International Standard Book Number) や ISSN(International Standard Serial Number)による検索だったが,その後,図書の キーワード(件名)や本文検索ができるようになった(第 7 図).当初,これ らのシステムを利用するには図書館まで行かねばならなかったが,その後の OPAC(On-line Public Access Catalog)化により,学内ネットワーク経由,そし てインターネット経由で利用することができるようになった.しかしながら,

OPAC化した図書館は電子化図書館であり,eライブラリとは本質的に異なる.

4. 2 eライブラリサービス

 eライブラリとは,一般にディジタルライブラリと呼ばれる概念である.

電子化図書館ではオンラインでの閲覧ができないため,学生は自宅でeラー ニングの授業を受け,課題をメールで受け取り,レポートをオンラインで提 出できるようになっているにもかかわらず,レポート作成用の参考図書を閲 覧するためだけに,開館時間内に大学図書館まで出向かなければならない.

3 )この章は,北室他(1998,2003b,2003c),北室(2002,2003),星城大学ホームページを参照した.

(14)

つまり,電子化図書館では学生は図書館サービスにおいて時間的,空間的制 約を受けることになる.

 一方,eライブラリでは,電子化された蔵書をオンラインで閲覧でき,図 書館サービスの時間的,空間的制約を解消することができる.現在では,大 学の論叢や紀要などの逐次刊行物をeジャーナルとして保存し,本文を含め て公開されている(第 8 図,第 9 図).4)

第 7 図 インターネット経由による蔵書検索(同志社大学DOORSの例)

4 )この章は,北室(1999a,2001),同志社大学DOORSを参照した.

(15)

第 8 図 eジャーナルの公開(同志社大学DOORSの例)

第 9 図 eジャーナルの閲覧(同志社大学経済学部の例)

(16)

5 経済学部における教育カリキュラム

5. 1 標準カリキュラム

 東京大学,京都大学,早稲田大学,慶應義塾大学,同志社大学,立命館大 学の主要6大学を参考にしたところ,経済学部の専門科目のカリキュラムは,

入門編,基礎編,専門編と段階的に進んでいく.また,専門科目とは別に外 国語科目,一般教養科目,免許資格科目などがあるが,ここでは省略する.

 入門編は,大学において今後経済学を学ぶのに必要となる基礎知識の習得 を目的としている.入門編の科目を導入科目や基本科目と呼ぶ大学もある.

入門編には,経済学概論,一般経済史,現代経済などの科目がある.パソコ ンやインターネットの使い方だけでなく,情報ポリシーやメールの設定方法 など,大学によって異なる情報環境も授業に取り入れた情報リテラシーなど の科目を設置し,必修としている大学もある.さらに入門編では,大学の授 業や生活に慣れない学生のサポートやコミュニケーション能力やプレゼン テーション能力の向上などを目的とした基礎演習を開講している.

 入門編の科目は,1年次の配当の必修である場合が多い.入門編の科目では,

以後の専門科目を学修する上で基礎となる知識を学ぶため,学生は授業内容 をきちんと理解しなければならない.そのために学生が復習できる環境が必 要である.また,学生が授業を欠席した場合のサポートも必要である.情報 リテラシーでは実習形式の授業が多い.情報リテラシーには,受講している 学生の習熟度の差が他の科目より非常に大きいという特徴があり,課題の提 出が重要視される傾向が強い.そのため,学生は欠席した授業の課題も作成 して提出しなければならない.また,前回の授業で学んだことを前提として 今回の課題を作成しなければならないので,情報リテラシーは継続性が高い 科目である.基礎演習では,大学に通学する習慣をつけるという特殊な目的 があるため,対面授業で行われている.また,コミュニケーションやプレゼ ンテーションを重要視していることも,対面授業である理由のひとつである.

(17)

 基礎編は,経済学の専門分野をより高度に学修するために必要な総合知識 の習得を目的としている.基礎編の科目を総合科目と呼ぶ大学もある.基礎 編には,初級ミクロ経済学,初級マクロ経済学,経済学史,経済政策,金融論,

財政学,公共経済などの科目がある.この段階より,学生は経済学のどの分 野を専攻するかを決め,基礎編の科目の中から,その専攻分野に該当する科 目を選択し履修する.また,多くの大学では,基礎編に専門演習の基礎段階 に相当するプレ演習を設けている.

 基礎編の科目は2年次配当の選択必修である場合が多い.基礎編において も学生の理解度の向上は重要である.プレ演習は,演習形式の授業であるが,

専門演習に向けての知識の習得という側面が強い.

 専門編は,基礎編で選んだ専攻分野を元に,より高度な知識の習得を目的 としている.専門編の科目を基幹科目や展開科目,応用科目と呼ぶ大学もある.

専門編には,日本経済,地域経済,アメリカ経済,ヨーロッパ経済,計量経済,

経済変動(経済予測),日本経済史,アジア経済史,アメリカ経済史,ヨーロッ パ経済史,農業経済,交通経済,環境経済,開発経済,労働経済,経済地理,

経済法などの科目がある.また,専門編には卒業研究や卒業論文に向けた専 門演習がある.

 専門編の科目は,3年次以降配当の自由選択である場合が多い.専門編の 授業内容は非常に高度である.専門演習では,就職活動や卒業後の進路に関 するサポート,および4年次の卒業研究や卒業論文の指導が教員の主たる役 割になる.それゆえ,授業への出席より,教員と学生および学生間のコミュ ニケーションが非常に重要である.

5. 2 各科目の特性

 経済学部の教育カリキュラムにおける科目の特性を,個別学習,画一学習,

ドリル学習,予習,復習,連続性の維持について5段階で評価すると第 2 表 のようになる.

(18)

 個別学習とは学生の受講する形態がどれだけ個別に対応すべきか,画一学 習とは学生の受講する形態がどれだけ画一的であるべきか,ドリル学習とは 学生がどれだけ自習すべきか,予習とは学生がどれだけ予習すべきか,復習 とは学生がどれだけ復習すべきか,連続性の維持とは学生が欠席した場合に 前回の授業内容のフォローをどれだけしておくべきか,をそれぞれ評価した ものである.5)

カリキュラム分類

個別学習 画一学習 ドリル学習 予習 復習 連続性の維持

科  目  例

入 門 編

専 門 科 目A 3 4 4 3 5 5 経済学概論

  B 2 4 3 2 3 3 一般経済史,現代経済 情報リテラシー 4 3 3 3 4 4 情報リテラシー 基 礎 演 習 5 2 1 1 3 1 基礎演習 基

礎 編

専 門 科 目A 2 4 3 2 4 4 初級ミクロ経済学,初級マクロ経済学   B 1 5 2 2 3 2 経済学史,経済政策,公共経済,金融論,

財政学 プ レ 演 習 4 3 3 1 3 3 プレ演習

専 門 編

専 門 科 目A 1 5 2 1 3 3 中級ミクロ経済学,中級マクロ経済学,

計量経済,経済変動(経済予測)

  B 1 5 1 1 2 2

日本経済,地域経済,アメリカ経済,ヨー ロッパ経済,日本経済史,アジア経済史,

アメリカ経済史,ヨーロッパ経済史,農 業経済,交通経済,環境経済,開発経済,

労働経済,経済地理,経済法 専 門 演 習 5 1 1 1 2 1 専門演習

第 2 表 経済学部カリキュラムにおける科目特性

6 お わ り に

 2章の第1表をもとに,eエデュケーションの形態の特徴をレーダーチャー トにまとめると第 10 図のようになる.

5 )この章は,同志社大学経済学部,慶應義塾大学経済学部,京都大学経済学部,東京大学経済学部,

立命館大学経済学部,早稲田大学政治経済学術院のホームページを参照した.

(19)

 教材配布型eエデュケーションは比較的小さな逆三角形になり,画一学習,

予習,連続性の維持のポイントが比較的高い.ドリル型eエデュケーション は左下と右に強い四角形になり,画一学習,ドリル学習,復習のポイントが 高い.コースウェア型eエデュケーションは下向きの大きな五角形になり,

個別学習以外のポイントが高い.講義配信型eエデュケーションは,左と右 上に強い四角形になり,個別学習,予習のポイントが低く,画一学習,復習,

連続性の維持のポイントが高い.ブレンド型eエデュケーションは上向きの 第 10 図 eエデュケーションの形態別特徴(レーダーチャート)

(20)

五角形になり,いずれのポイントも中くらいで予習のポイントが低い.対面 授業は上方向に極めて強い形になり,個別学習以外のポイントが非常に低い.

 さらに,5章の第2表をもとに,経済学部のカリキュラムにおける科目特 性をレーダーチャートにまとめると第 11 図のようになる.

第 11 図 経済学部カリキュラムにおける科目特性(レーダーチャート)

 入門編の専門科目Aは,左に強い四角形になり,ドリル型eエデュケーショ ン,コースウェア型eエデュケーション,講義配信型eエデュケーションに 近い形である.入門編の専門科目Bは,右上に強い小さな四角形になり,教 材配布型eエデュケーション,講義配信型eエデュケーションに近い形である.

情報リテラシーは,上向の五角形になり,ブレンド型eエデュケーションの 形に合致しており,教材配布型eエデュケーション,コースウェア型eエデュ ケーション,対面授業にも近い形である.基礎演習は,上に強い四角形になり,

対面授業に近い形である.

 基礎編の専門科目Aは,左と右上に強い四角形になり,講義配信型eエデュ

(21)

ケーションに近い形である.基礎編の専門科目Bは,右上に強い四角形にな り,教材配布型eエデュケーション,講義配信型eエデュケーションに近い 形である.プレ演習は,上向きの五角形になり,ブレンド型eエデュケーショ ンの形に合致している.

 専門編の専門科目Aは,右上に強い四角形になり,教材配布型eエデュケー ション,講義配信型eエデュケーションに近い形である.専門編の専門科目 Bは,右上に強い四角形になり,教材配布型eエデュケーション,講義配信 型eエデュケーションに近い形である.専門演習は,上方向に異常に強い形 になり,対面授業の形に合致している.

 以上の考察をふまえて,授業の諸形態と標準的な経済学部のカリキュラム の組み合わせを考えると第 3 表のようになる.

 入門編の専門科目Aにはドリル型,コースウェア型,講義配信型が,専門 科目Bには教材配布型,講義配信型が適している.情報リテラシーはブレン ド型で授業すべきであり,他にも教材配布型,コースウェア型が適している.

基礎演習はやはり対面授業で授業すべきである.基礎編の専門科目Aには講 義配信型が,専門科目Bには教材配布型,講義配信型が適している.プレ演

第 3 表 経済学部カリキュラムにおける科目特性とeエデュケーションの組み合わせ カリキュラム分類 教材配布型 ドリル型 コースウェア型 講義配信型 ブレンド型 対面授業

入 門 編

専 門 科 目A △ ○ ○ ○ △ △

  B ○ × △ ○ △ △

情報リテラシー ○ △ ○ △ ◎ ○

基 礎 演 習 × × × × △ ◎

基礎編

専 門 科 目A △ △ △ ○ △ ×

  B ○ × △ ○ × ×

プ レ 演 習 × × △ △ ◎ ○

専門編

専 門 科 目A ○ × × ○ △ ×

  B ○ × × ○ × ×

専 門 演 習 × × × × × ◎

(22)

習はブレンド型で授業すべきであり,他にも対面授業が適している.専門編 の専門科目A,専門科目Bには教材配布型,講義配信型が適している.専門 演習はやはり対面授業で授業すべきである.

 このようにeエデュケーションの導入にあたっては,科目の特性から最適 なeエデュケーション形態を選択することが肝要である.

(23)

【参考文献・資料】

天野 圭二,(2003)「オンラインクイズによる理解度調査・出欠管理」『平成15年度情 報処理教育研究集会講演論文集』pp.477-480.

   ,(2004)「電子問題集によるドリル学習とその効果」『平成16年度情報処理教育 研究集会講演論文集』pp.50-53.

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The Doshisha University Economic Review Vol.57 No.3

Abstract

Koichi KITAMURO, How to Make the Best Use of e-Education in the Department of Economics

  There is a new project named e-university which makes efficient use of ICT(Information and Communication Technology). But this project is very slow in progress because it is hard to reach agreement about the problems lying between curriculum and e-education. This paper makes a survey of the three major services in e-university ― e-education, e-administration and e-library, and poses a question how we should break down the present situation and presents the best programming of combining the standard education curriculum of the department of economics with e-education.

参照

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