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国際機構における労働の人間化政策 : ILOの場合

著者 嶺 学

出版者 法政大学社会学部学会

雑誌名 社会労働研究

巻 30

号 1・2

ページ 43‑68

発行年 1983‑12‑20

URL http://doi.org/10.15002/00007426

(2)

ILOは、現在、労働の人間化ないし労働生活の質の向上に関する政策を、「国際作業条件・労働環境改善計画」(号の冒斤の目昌・目一句8m日日白の命・円昌の旨ご『・ぐのョのロ庁・【三。『穴ご埴○・己屋・ロのロ己同曰く】『・ロ日の目〆国シn円)として推進している。この計画については、さきに、別の著作において、労働の人間化の概念を明確化する作業と関(1) (2) 連して概要を紹介した。また、沿革と内容については後藤光祥による解説がある。さらに、ILO事務局による作業(3) 条件・労働環境に関する労働者教育用一テキストは、その政策について知るのに便利である。拙著の関連箇所と若干の重複は免れないが、著書とは別に、計画策定後の主要な公式文書を中心に、特に、PIACTで新たに登場した職務内容と作業組織の改善に留意しつつ、発展の経過と特徴について述べることとしたい。PIACTは当初から評価を行なうことを予定しており、一九八一一年一一月に、その第一のステップとして、PIACT評価のための一一一者構成諮問委員会(昏のBHS閏〔岸のシロく一m。ご富の①言い目昏の向く巳巨昌目・〔国シOB)が開

国際機構における労働の人間化政策四三

国際機構における労働の人間化政策

国際作業条件・労働環境改善計画の展開 llLoの場合I

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国際機構における労働の人間化政策四四

かれている。本節ではこの会議のための報告書(司甸ミミミ」昌已ミ風(ご『ロー田)§&、員冨冨○蔦ミミ(§》』①巴)と、そこにおける討議を主として利用することとしよう。PIACTは、直接的には、一九七四年のILO総会決議に基いて発足しているが、この決議は、作業条件・労働環境を総合的に把握すべきものとしていた。この総合的なアプローチがPIACTの基本的性格のひとつであった。実際の展開の中でこれはどうなったであろうか。七四年決議においては、政策対象領域としてILOがそれまで重点的に取り上げたことのない、職務内容や作業組織も含めることになっていた。すなわち、この分野を含めることにより、より総合性が高まるとみなした。前記の報告書は、労働者個人を中心として見た場合、担当する職務内容、これに付随する危険、作業速度、労働環境、持続期間などが、職務に伴う総括的な労働負担であり、これらの諸要素は相互に関連しているとしている(四五七項)。この説明は、例えば安全・健康と職務満足の境界を取り去って政策を樹てるという考え方に連るものである。もっとも、「総合性」は個別政策の総合や手段の総合的活用その他の意味でも用いられている。ところで、右の説明においても、それぞれの要素が相対的に独自な「サブ・システム」をなすと述.へられている。この「サブ・システム」のうち、政策課題として取り上げられたのは、一九七五年の事務局長報告「労働をより人間的に』(豈奇尊磑。s碁二s『色邑冨ミ§》ご『、)において、①仕事において労働者の生命と健康が尊重されるべきであり、②仕事は休息と余暇のための自由時間を残すべきであり、③仕事は、労働者が社会に奉仕するとともに能力の発達を通じて自己実現させるものであるべきである、ということにあった。すなわち、安全と健康、労働時間、作業組織が政策の対象分野であった。PIACTの形成およびその展開の過程で、この分野はやや拡大し、報告書では、上記の三項目に、人間工学の利用、技術移転に伴う作業条件・労働環境問題、労働に関連する生活条件

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つぎに、前掲の事務局長報告を討議した一九七五年総会における決議において、計画が、たんにILOの活動計画にとどまらず、加盟国政府が、作業条件・労働環境改善の目標を追求することを求め、ILO自体には、各国の目標設定を支援したり、各種のガイドラインを設けたり、援助活動をしたりする役割を期待した。これは、PIACTが、ILO自体の計画を含む全世界的な計画であることを意図したものである。ところで報告書によると、PIACT発足後の失業状勢の深刻化や、発展途上国の経済的背景から、各国政府が、作業条件・労働環境改善に政策上の優先順位を必ずしも置かないという問題があった(四六六~七項)。PIACT形成過程の論議でも、発展途上国のうちには、作業条件・労働環境よりは経済発展と雇用拡大を優先する態度を表明したものがあり、一応この立場は克服されたものの、それはPIACTの形成に関して一応支持することであり、加盟国独自の政策としては、雇用の量と質

国際機構における労働の人間化政策四五 後の論争が予想される。 の改善、児童労働、特定層の問題、労働行政および労働監督制が加えられている。もっとも、これらの項目の一部分は、前記三項目の中にすでに含まれていたとみなすこともできる。従って、あまり大幅ということではないが政策の対象分野が当初の構想より若干拡大したことになる。このことにより、総合性が高まったとも言えようが、他面、政策のための資源の有効配分などの観点からすれば、総花的であるという批判を招きかねないこととなった。三者構成諮問委員会においても、使用者代表は、重点を安全と健康におくべきであると強く主張した。もしも使用者代表の主張を受け入れれば、PIACTの総合性という基本性格は変質せざるを得ない。報告書も認めているように、PIACTのこれまでの実際の展開も、安全と健康が先行してきた(五○二項)。しかし、報告書および会議における労働代表および一部の政府の主張は、PIACTが職務内容を含む総合性を保って継続されるべきであるとしており、今

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国際機構における労働の人間化政策四六

を併せて追求しようとする考え方は、最近時点でも、必ずしも追求されていないこととなる。なお、作業条件・労働環境の改善政策に優先度をおかないと言っても、社会的。政治的圧力などによって緊急性が高い安全と健康の問題は故極できないため、政策の重点をここに置く国も現われており、これは前述の傾向と符合する。以上のように、PIACT成立当初は、総合的アプローチで、その中に職務内容と作業組織の改善を含めて、新しい傾城にILOの政策領域を拡大する意欲が窺われたが、その後の世界的経済不況の進展などによって、必ずしも当初の意図のように展開せず、やや安全と健康に重心が傾いたものとなった。それでは主要分野においてPIACTの当初五カ年間にどのような進展があったであろうか。主な傾向をみよう。報告書によると、世界全体として、労働に関わる安全と健康の状況は、改善したとは言えない。それは、伝統的な労働災害と職業病の発生に加えて新しい技術の導入や産業の複雑化により新しい問題を生じたこと、発展途上国および市場経済工業国の小企業における構造的不十分性が持続していることなどによるものである。しかし、ILOレベルの政策では、PIACTと関連して、次のような進展があった。第一に、一九八一年、職業上の安全・健康および労働環境に関する条約(一五五号)および勧告(一六四号)が成立した。条約は、各国が、統合性ある政策を作成、実施し、定期的に再評価すべきものとしており、PIACTの政策的発想に見合った内容である。そのほか、この条約は最近の立法傾向を参照して、安全と健康の予防と保護をめぐる国および企業レベルの基本的事項や関係者の責任

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などを定めている。このほか、安全と健康に関わる一般的国際基準として、七七年、労働環境(空気汚染、騒幸ロおよび振動)に関する条約と勧告が成立した。また七九年、港湾労働における安全と健康に関する条約と勧告が成立した。そのほか新規成立の基準でも安全と健康を取扱っているものや、報告書の時点で立案準備中のものがある。地域会議、

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産業別または類似の委員会は、地域または産業の条件に応じ、ILO全体の政策と関連しつつ、政策の方向などを示してきたが、これらの会議でも、安全と健康はほとんど例外なく取扱われてきた。PIACTで掲げられた安全と健

康に関する個別的課題には、最近顕在化した諸問題についての技術的対応の基準のほか、労働者参加を含む企業内に おける安全・健康保護組織、精神的ストレスおよび精神身体医学的異常、発展途上国への技術移転に伴う安全・健康 問題、人間工学の利用普及など、人間中心的な新たなアプローチを要するものが掲げられていたが、報告書によれば、

これらについては、調査研究、諸会議などが開かれ、若干の展開があった。以上要するに、ILOレベルでは職場における安全と健康に関して従来のアプローチとやや異った政策を含めて、ある程度の前進があったと言えよう。労働時間は、PIACTの第二の主要課題であった。このうち、労働時間の長さについては、第三回ヨーロッパ地域会議の決議で、労働時間の漸進的短縮が、引き続き、労働生活の質の改善のために重要な国の政策および団体交渉

の課題であることを確認した。しかし、この際、各国経済の、競争力の維持と完全雇用に配慮すべきであるとの限定

を付している。この決議は、時間短縮が、政策宣言としては合意があっても実現が容易でないことを暗示する。ILOとしては、右のほかは、この期間に、発展途上国、市場経済工業国別に背景の分析を行なうにとどまった。勤務制度に関しては、交替勤務および深夜業について、一九七八年、三者構成諮問委員会が開かれたが、深夜業の

規制についてILOのとるべき方向について意見の一致が得られなかった。一方、勤務の時間的側面を労働者の必要 に適合させて伸縮化する試みが発展したが、これについては、調査報告書が七七年に公表された。しかし、その後の 経済事情の変化や、労使それぞれの立場からの批判があり、特定層への適用を除いては政策的進展はなかった。特定

層に関しては、高齢労働者に関する勧告(一六一一号、一九八○年)が時間的次元における伸縮性を包括的に打ち出し

国際機構における労働の人間化政策四七

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国際機憐における労働の人間化政策四八

た。同様に家庭責任をもつ労働者に関する勧告(一六五号、一九八一年)は、勤務制度の弾力化をはじめ、その特別な必要に対応する勤務のあり方についての方針を示した。なお、路面運送の労働時間と休憩について総ハンドル時間の規制を含む条約(一五三号)および勧告(一六一号)が成立した。以上のように、労働時間について、ILOの政策に若干の進展はあったものの、一般的、基本的な分野においては、実質的前進はみられなかった。『労働をより人間的に』で新たに取り上げられることとなった職務内容と作業組織については、調査研究と、その

成果の公表、若干の産業別または類似委員会、第三回ヨーロッパ地域会議(一九七九年)における討議がおもなもの である。これまでに刊行された調査報告のまとまったものとしては、z§専罠ミ②(『二s静○偲冨員吻菖§》ぐ○一・】》

ごC].、》』⑪己がある。これは、東西の工業国数カ国について、発展経過、特徴および事例紹介を行なうとともに、費

用便益の分析を付加している。なお、この問題に関するILO関係の著書、論文としては、国際労働研究所の労働生 活の質に関するシリーズ、与鳥冒息S負い9.ミ丙⑤昌農に逐次掲載された十数篇の論文、および、経営開発シリ ーズの一冊である、の①。温の尻目菖四ご巴・》ミミミ腎婿。ミロ8負(冒侭z譽尊ミ②ミヨS募○碕冨員§(s『》』⑪【

(|①) ①9..」垣⑭P図皀。(吋①aの①。)の。.》乞臼・をあげることができる。

職務内容および作業組織そのものを主題とする国際的基準は形成されていないが、高齢労働者に関する勧告一六二 号二九八○年)で一定の場合に作業組織を修正するなどの措置を勧めている。また、職業上の安全・健康および労 働環境に関する勧告(一六四号)にも、作業組織についての言及があるが、特に、労働者参加の具体的内容として、 作業行程、仕事の内容および作業組織が、安全と健康に影響する場合、労働者代表が協議をうけるべきことを規定し

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1「人間的価値」とその実現PIACTの理念や、その必要性については『労働をより人間的に』に表明されているが、これは発展途上国を含む全世界を対象としていた。労働の人間化が社会的に必要とされたのは、繁栄を経験した先進社会においてであった。

国際機構における労働の人間化政策四九 ている。現時点では、第三回ヨーロッパ地域会議の決議および若干の産業別委員会の結論が、この主題に関する政策の方向についてまとめていると考えられる。職務内容と作業組織の改善は、もともと総合的な政策の一環として新たに登場してきたために、これら諾会議におけるガイドラインの形成も、作業条件・労働環境の討議全般のなかで進められて来た。以下、節を改めて、職務内容等について討議した会議の展開について検討する。

(1)『労働の人間化と労使関係』日本労働協会、昭和五八年、三八~六○ページ。本誌第二九巻第三・四号掲載のOECDおよびEC部分は、拙著に収録した。(2)後藤光祥「ILoと『労働の人間化』l『鳳際労働条件・作業環境改善計画』の成立についてのノ「卜」『レファレンス』第三七九号、昭和五七年八月号(3)ミミ(侭C・ミミミ②§負曾ミミミ肩ミー色ミミ寿;・国ミミ(§ミミミミ》」⑪忠(4)拙著二九○ページ以下。(5)⑪・目鳥の恩:①『・色一・》ご》こさ馬冒翁ミ②ご貝意C虞ミミミミC墨曾困ト鳶冒筥.吾§{§冒屈ミミ扇ミ2.s届は、労使の理解による労働生活の質の全般を扱っており、その一項目に作業組織の改善が含まれている。 -、

二新しいガイドラインの形成 、‐〆

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国際機構における労働の人間化政策五○

石油危機の影響が未だ完全に現われていない一九七四年一月に開催された第二回ヨーロッパ地域会議に提出された、ILO事務局簔告(電…「…鳶m・§一:l曇ミ8曇…言同霞…」:)は、いっそう明確に、新しい理念と社会政策の方向を打ち出した文献として、注目に値する。後に展開された作業条件・労働環境の改善とその中での作業組織の変更の政策についても、どのような問題意識に基くものか、示唆している。この後、世界の経済状勢は一変するが、政策の発想は引き継がれ、PIACTの成立を促した。この報告によれば、ヨーロッパ(東欧を含む)社会において、経済の成長と構造変化と並行して、高度の人間的欲求(盲目目pmp3〔一・口の根源的希求)が顕在化し、具体的要求となるとともに、それが実現されない場合、紛争や不満となって出現したとみなす。すなわち、①平等主義が普通化し、例えば、ブルーカラー労働者に対する身分差別の撤廃や労働における男女平等化の要求が起こったこと、②職場において自己に影響を与える事項の決定への参加を求めるようになったこと、③有意味な仕事を求めるようになったこと、以上はヨーロッパ社会に共通な社会的変化である。また、高い教育を受ける権利主張が起こっている一方、高い教育を受けた者に相応しい仕事が見出せないことに

報告は、このような人間的欲求の実現を社会政策の課題とすることに意欲を示している。これは、経済成長と社会保障を基本とする福祉国家に共通な経済・社会政策には含童れない、新たな目標である。これによって「人間的価値にもとづく新しいヨーロッパ」の建設に貢献できるとみなす。この新しい政策の内容としては、所得分配の公正、労働生活の人間化(盲目ロ日切目目。扁冨・『丙旨、]鳥)、労働環境の改善、より人間的な能力開発、人間的欲求を実現しうるような安定的労使関係などである。このうち、労働生活の人間化では、ヨーロッパ労働者の欲求として産業社会 よる不満も起こっている。

報告は、このような人頭

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、n℃E

における諸制約からの自由、人間としての尊厳、日常生活を白円ら形成する責任を最小限の規律と秩序のもとで実現す ることを目標とする。そこでまず第一に、組立ラインに代表される作業組織の改善を新しい課題として取り上げる。 報告は、批判的意見に言及し公平に論述しつつjb、積極的にこれに取り組もうとしている。このほか、賃金制度の改 革、ブルーカラーとホワイトカラーの均等待遇、労働時間の短縮と伸縮的な勤務制度も同じ目標に沿った措置であっ て、これらは個別的実験、試行から社会政策に高めらるべきではないかと言う。より人間的な能力開発としては、。ハ ーソナリテイの全面的発達を目指し、教育と訓練、一般教育と職業教育の硬直的区分を廃止すること、教育訓練方法 に伸縮性を与えること、学校教育---職業I‐-引退生活の関係の弾力化(生涯教育と教育休暇)などを提唱している が、ここでも、固定化された制度に人びとが適応するのではなく、人間的欲求(とくに平等主義、。ハーソナリティの

発達、選択の自由)の実現に重点がおかれている。

労働環境の改善については、伝統的な作業条件対策と異り、新しい政策態度をとっている。まず、この課題は、一 般環境政策の一部として取扱われ、より健康な環境で生活する人間的必要と欲求の実現として位置づけられる。つぎ に、労働環境について生命と健康を優先する主張が強まっている一方、新技術、新物質の生産過程への導入が急激で あり、両者の均衡を見出すのは困難であるが、その際には、労働者とその代表との協議が不可欠である。環境対策の 具体化、立法・行政措置の立案などについても、各レベルの労使と当局との協議によって、労働者の欲求と必要をい っそう実現するようにしなければならないとする。要するに、新しい諸事態に関し、労働者と代表の参加を強調して

いる。

この報告はまた、労使が、伝統的な自己の直接的利益追求のみでなく、社会的責任を担うべきだとしている。まず

国際機構における労働の人間化政策五一

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国際機構における労働の人間化政策五二鵜告は、経薯警の繼甕’1社会的關心のもとにl提囑する.これば、蝋業としての専門経営者の地位がヨーロッパでも確立しつつあること、経営者は、効率の追求のほか、消費者、従業員、地域社会についても責任を負い、公害の防止や労働者の欲求と必要を配慮した管理を行なうべきであると期待するためである。一方、労働組合についても、組合員の直接的利益を追求するのみでなく、団体交渉の直接的範囲外の、価格安定、平等な機会、弱者の保護、環境保護などの経済・社会政策について責任を担うべきだとしている。報告は広範な新しい課題について政府、労働

組合および使用者団体間の対話、交渉、協議が必要であるとする。人間的欲求を実現する際の行為主体は、政府、労働者とその代表、経営者と使用者団体などであり、現状に適合した団体交渉は、かなりに弾力的で有効であるが、これとともに、各種の参加手続もまた不可欠であるとみなす。理想主義的で格調の高いこの報告は、第一に、人間的欲求ないし人間的価値の実現を、福祉国家後の新しい政策理念として掲げ、その一環として労働生活の人間化を位置づけた。これは、パーソナリティの発展、好ましい環境の実現等々の政策分野と相互に関連している。また、第二に、作業組織の改善は労働生活の人間化のため優先度の高い課題で、諸制約からの自由、尊厳、責任という倫理的ニュアンスのある基準を実現すべきものとした。第三に、企業、経営者、環境について新しい観点を示し、そこから、各レベルにおける労使の社会的責任と参加を位置づけた。報告は、以上のような主張をもっていたと言えよう。

2ヨーロッパにおける作業条件等の改善第三回ヨーロッパ地域会議は、一九七九年十月に開催され、作業条件・労働環境改善の政策と慣行を議題のひとつ

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とした。この議題は、PIACTをこの地域で実質化する目的で選ばれた。この議題のために事務局が用意した報告 書(刃)(冒鴎ミミ、ミミ§弓)『へ胃帛ミCご烏ミ同ミミミ・幕ミ岨、ミミミミ局ミミミミ尊偏同ミミミミミ》ご己) は、ヨーロッパ地域での、この問題と対策について概観している。また、この議題について、会議は包括的な決議を 行なったが、その中には、作業組織に関する基本的考え方が示されている。作業組織についてILOの公的見解で、 産業一般を対象とするのは、これだけである。この会議では、このほか、他の議題であった若年層と失業の問題に関 して、教育訓練のレベルの向上に伴い、その欲求に見合った職務の改善を必要としていることに言及しているほか、 作業組織等に関する国際的経験の交換に関連した決議と、新技術の導入に伴う腫用への悪影響の防止に関連した決議 を行なっている。最後の決議は作業条件の悪化についても一一一一口及している。以下、作業条件。労働環境改善の政策と慣

行についての報告と決議について、特徴点を見ておく。

第一に、報告書は、作業条件と労働環境の範囲について論じている。これは、労働生活の包括的諸条件で、労働生 活の質と同義である。なお、職場における安全・健康と他の一般的諸条件を統合的に取扱う傾向が見られると指摘し ている。もっとも、報告書は、包括的な領域のうち、主要な問題として、①噸場における安全と健康、②労働時間と 勤務制度、③作業組織、④作業条件等の改善についての職場レベルの参加、⑤特定層の保護、および、これらに対す

勤務制度、③作業組織、〔る政策を対象としている。

①職場における安全と健康については、後に一五五号条約とニハ四号勧告に結実することとなった、政策上のいく つかの考え方が報告書に紹介されている。すなわち、企業・事業所レベルでの労働者の参加が実現されつつあること、 計画その他の初期の段階から安全について考慮する必要性が認められていること(労働者が既成の生産条件に適応す

国際機構における労働の人間化政策 五三

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国際機構における労働の人間化政策五四るのではないとの見地)、政府が作業条件等の改善について、統一的政策をもつべきであり、その際、労使の参加が必要であること、職業保健サービスの重要性などである。決議においても、これらは支持されている。②報告書においては、労働時間と勤務制度(言。民営館ご日のmq目、の目の貝⑰)の傾向、問題点、対策の近況について、興味深い概観を行なっている。しかし、決議では、標準時間の短縮が労働生活の質の改善として重要であること、過長な労働時間の制限が必要であること、欲する者にパートタイムの機会を与えること、通勤時間を短縮すべきことなどを簡単に述べるにとどまった。労働時間については、労使の対立が大きく、先行的変化があるが一般化は困難であった最近の状況を反映していると言えよう。③作業組織については、これと対照的に、報告書で控え目に論述しているのに対して、決議は、作業条件・労働環境改善の全領域のうちで薙幹的役割をもつものとして重要視すると述べ、秋極的である。作業組織の改善には唯一最善のものはないとしつつも、細分化され、繰返される、単調な仕事、過重な負荷と危険な仕事は次第に少なくし、労働者が創造性を発揮したり、その能力を全面的に活用できる仕事を増加させることを望ましいとし、職務設計の基準というべき考え方を示している。また、その応用として、新技術導入により仕事に好ましくない結果が起こらないようにすることなどにも言及している。マイクロエレクトロニクスの導入による諸影響への関心が当時から強かったことの反映である。作業組織の改善は、労働者、使用者にそれぞれ利益をもたらし得るが、とくに労働者にとっては、賃金、身分、雇用などで不利な影響を生じないようにし、このこともあって新作業組織の導入には労働者またはその代表の参加が必要であるとしている。政府は、作業組織改善のため、職場諸条件決定について労働者の参加を可能ならしめるとともに、調査、情報交換、補助などの措置をとりうるとしている。また雇用政策との結合の必要性を説い

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以上、討議と結論をみると、ヨーロッパ全体としては、経済的諸困難にもかかわらず、PIACTの提起した方向に沿って政策を前進させ、また、それを持続しようとしていたと言えよう。詳細に見れば、労働時間については困難が大きかったが、作業組織については意欲的であった。前回会議後一変した経済情勢のもとで、会議の雰囲気も前回の人間的価値の実現という、理想主義的なものから現実的なものに変った。この会議は、ヨーロッパ経済が停滞するなかでも、作業条件・労働環境の改善を推進する方針をとっているのであるがその理由づけとして、改善が労働者の生命、健康、福祉や職務満足のみでなく、効率的生産システムに寄与し、社会全体にも利益をもたらすという見解(決議前文)を示している。また、決議は、作業条件等に関する国の政策が、統合的政策(経済・労働。教育。社会および公衆衛生政策)の一部であるべきだとしている。さらに、労使団体の政策決定への参加が唱えられているが、これも作業条件等の改善が経済政策と調和すべきものと考えていることと関連している。人間的価値の実現は放棄されていないが、政策の主目的の位置から、競合的目的のひとつに格下げされたように見受けられる。この会議ではまた、断片的ながら新技術の導入による作業条件・労働環境の悪化への懸念が表明されるようになっ ④職場レベルの参加に関して報告書は、安全と健康に関し、安全委員会、安全代表などの制度化やその役割の強化があったことを紹介するとともに、他の分野では団体交渉の貢献も大きいとしている。また、⑤特定層としては、高齢者、外国人労働者、婦人、青少年などが、報告書で取り上げられ、決議では、各国においてこれらの特定層の平等

この会議ではまた、たことも注目される。 な権利を確保することを記っている。 ている。

国際機構における労働の人間化政策五五

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3高齢労働者に関する勧告ILOの基本的な活動は、国際労働基準の設定である。PIACTのなかでも、政策手段として、条約・勧告の制定があげられている。既述のように、職務内容および作業組織に関する基準としては、高齢労働者に関する勧告二六一一号、一九八○年)が、重要である。この勧告は、高齢労働者に関する包括的な政策を提起しているが、その中で労働人間化の諸方法を高齢者対策として採用すべきことを説いている。この勧告の本体は、①平等な機会と取扱、②保護、③引退をめぐる問題の三部から成っている。平等については、労働者の年齢にかかわらず平等な機会と取扱を促進し、高齢者に対する雇用および職業上の差別をなくすことを原則としている。平等と保護の関係は婦人労働者の場合におけるように、論理的には調和が困難と思われるが、この勧告では、労働生涯のすべての段階に対して作業条件と労働環境を改善する国家的政策のもとで、高齢労働者が満足すべき条件下で雇用を継続できるようにすること、手続的には、労使団体の代表による参加により政策を立案することを駆っている二一項)。これが保護についての原則的規定と考えられる。引退をめぐる問題については、労働生活から引退生活への漸次的移行、そのための年金受給資格の弾力化、引退は自由意志による原則を駆っている。労働人間化的な方法は@で述べられているが、年齢に関して平等待遇が現実的であるためには、高齢者が継続して働き得る作業条件・労働環境が必要であり、また、引退が漸次的・任意的であるためには、勤務時間の弾力化が必要であろう。このように、労働人間化の諸方法は①③と不可分である。労働人間化の諸方法としては、加齢によって適応が困難を生じる場合に、可能な限り作業組織や勤務時間を高齢者 国際機構における労働の人間化政策

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4繊維産業における交替制と作業組織の改善繊維産業は伝統的に交替制が広く行なわれて来たが、最近の技術革新によって産業が資本集約的となるとともに、交替制とくに深夜業が増加する傾向が現われた。これは産業全体の傾向と一致している。また、この産業でも少数ながら作業組織の改善を試みた企業がある。一九七八年四月開催された第一○回繊維産業委員会は、作業組織を含む労働条件(8且量目m・命尋o烏)を議題としたが、ここでは、交替制労働をめぐって立入った討議がなされ、また、作業組織についても、積極的に改善する方向で結論が出され、職務の基準も示された。この会議について見よう。この議題のため事務局の準備した報告書では、①労働時間の編成、②報酬、③作業組織が分析され、安全と健康は第九回会議で討議されたため省略された。①の労働時間の編成では、主として交替勤務の問題が扱われた。この産業は、生成の当初から、各国とも交替労働が広く行なわれ、代表的な「交替制産業」であるが、近年さらに交替労働が増加し、特に、深夜勤務が増加してきた。交替制の普及は、報告書によれば、設備投資の効率を高める必要によるものである。一方、先進工業国の若年労働者

国際機構における労働の人間化政策五七 に過度の負担をもたらさないようなものに改めること(咀仙)、人間エ学的原則の適用により、職務とその内容を労働者に適合させること(珀何)、賃金制度を労使代表の参加を得て、高齢労働者の必要に適するよう改めること(例えば、出来高払の仕事から時間賃金の仕事○などである。追仙の具体化として、高齢者に適合した弾力的な勤務制度を具体的に示している口)。また、高齢化の過程を速めるような諸条件をなくす措置が必要であるとみなしている(追い)。以上のように、作業組織等について言及しているが、その詳しい内容についてはふれられていない。

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国際機構における労働の人間化政策五八

が、この産業の作業条件、特に交替労働を好まず、労働者の採用難と高齢化、外国人労働者の増大などが起こっている。また、近年の動向として、労働組合の一部に、交替労働の有害性または、賃金による補償を否定する運動が興り、専門家で支持する者も現われた。このような背景のもとで、交替制に関して新しい試みも行なわれるようになった。これは、交替班の追加、週当り労働時間の短縮、深夜勤務時間の短縮などである。また、交替労働の一定部分につき代償的休息を与え、休暇を追加し、あるいは交替勤務者に早期引退を認める試みもなされた。議題のため準備された報告書は、国別差異の大きさに留意しつつ、これらの新しい発展に注目している。多岐にわたる委員会決議のうち顕著なものとしては、第一に、交替労働の必要性を一般原則として認めたことである。その上で、交替労働で労働者と家族に不便をもたらすものにつき、その不便をなくす措極をとるべきだとしている。深夜勤についても、有害性が顕著な場合、企業の存続と両立し得る限りにおいて、従事者を減らすべきであるとしている。報告書においては、繊維産業における厳しい国際競争から、先進国の労働組合が、雇用機会の確保のため交替制の必要を認めているとの紹介を行なったが、これに見合う結論である。第一一に、伝統的な労働者保護政策を維持・強化する一方、新しい事態への配慮がみられる。交替制に伴う、社会的サービス(食事、休憩室、保育所、幼稚園、医療)の充実、医学的不適格者の配転などの政策は保護の強化である。青少年、婦人の深夜業については、保護の立場を維持しつつ、従来の政策の修正を含意しているようである。特に、婦人の深夜業については、家庭および社会における役割を考慮して十分に規制すべきだとしている。また、交替労働に伴う不便を補償するため金銭的その他の利益が、団体交渉により与えらるべきだとしている。交替制の新しい試みや代償的休息に関しても、人間化の観点から、関係者が考慮したり研究したりすることができ

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るとし、新しい政策選択の可能性を認めた。第三に、交替労働に関して企業内における、使用者と労働者とその代表者間の協議を勧めている。報告書によれば、交替制に関する技術的諸問題については、一概に良否の評価ができない。決議はこれらの決定は労働組合と使用者間の協約によるべきだとしている。②報酬については、先進工業国では技術変化に伴い、機械設備の稼働率を高めることなどを目指して、伝統的業績絵の変更が必要となっていること、雇用不安により短時間就業の際の所得保障が問題となっていることを報告書は指摘して、これらについて取扱っている。討議の中では、西ドイツの労働組合代表が、単純出来高給制は労働者の健康に有害であることなどを主張しているが、報告書、決議とも人間的価値の実現という問題意識は現われていない。③作業組織についてILOの三者構成の会議で討議されるのは初めてであったが、報告書は、繊維産業の大規模な生産単位では、職務の細分化と、計画と実施の分離という、テイラー主義の原則が支配しているとし、一方、少数の新しい作業組織の実験があるとして、これを紹介している。実験例は、職務を充実し、労働者を多技能化し、集団に自律性を与えるもので、労働者の自発性と参加がみられ、また、生産性が向上するなどの成果をあげている。しかし、報告書は、繊維産業で実験が少なかった理由について考察し、騒音、ほこりなど労働環境の問題についての関心が優越したこと、先進国では雇用不安の状況にあったこと、ある種の熟練の必要性を含む繊維産業の永続的な特性をあげている。また、報告書は、先進工業国を中心として繊維産業は、資本集約的となり、オートメーション化が進んで、技術革新が著しいと述べるとともに、これによって熟練にどのような変化が起こっているか、検討している。これによれば、職務は肉体的努力ベ身体的熟練を要するものから、知識や精神的能力を要し、責任が高まるなど、高度化す

国際機構における労働の人間化政策五九

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国際機構における労働の人間化政策六○

る傾向が強いが、一部、単純化するものもみられる。報告書は、オートメーション化が、おのずから職務の改善をも たらすものではないことを指摘しているが、技術革新の支配的影響と、前述のように産業に作業組織改善の意欲がな

いことと併せて考えると繊維産業において、作業組織を改善する必要性に疑問が生じなくはない。しかし、委員会の決議は、全く積極的であった。

決議は、職務内容が、労働者の必要を最大限に満たすとともに、作業組織は、企業が生産能力を有効に利用し得る

ものであるべきだとの基本的考え方を示した。労働者の必要としては、現在の熟練を活用し、新しい熟練を発達させること、望ましい職歴、有意味な課業、適切な社会的雰囲気がある。他方、単調な、孤立した、または過度に努力を要する課業をなくす必要がある。人間的必要と生産性を両立させる作業組織を求めるという考え方から、決議には、

政府の政策として、調査、情報、訓練の促進、また労使それぞれの努力と協力を要求する項目がある。さらに、新技 術や設備を設計または導入する際に(すなわち、事後的にでなく)、作業組織の改善や機械類の人間工学的性格を考 慮し、またそのため労働者と協議すべきであるとしている。以上のほか、特に繊維産業の特殊事情を反映して、つぎ

の点が注目される。第一に、技術移転の際、テイラー主義的な作業組織は発展途上国の労働者の職場における社会的

関係に有害であると判断が報告書で示され、決議もこれを認めている。第二に、激しい国際競争のもとで、生産の集

中とともに、下請関係や家内工業が発展していることが報告書に指摘されている。この際、イタリアの例では、高能率の専門化した下請小企業が繊維中心地に発生し、その労働条件は必ずしも悪くないと述べている。一方、家内工業には、伝統的な低労働条件の問題があり、決議は、関連法令を家内労働者へも適用すべきであるとしている。以上、交替制の支配的産業として、これについて人間化の観点から政策の基本を示したこと、産業の成熟、南北間

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この会議(房の]()旨[富の①(冒晦opOoa三・コ⑭。、ミ。鳥四目同日ご一C百]の貝冒瑁○叩巨四目目の一の8日白色昌○目・ロ⑩、の。旨の印》の①皀のぐ色》冨貝:ごゴ〉は、一九七一年の公務合同委員会の決議をうけて招集された臨時の会議で、この

国際機構における労働の人間化政策一〈’ 成された。 5新技術の導入と作業条件・労働環境マイクロエレクトロニクスによる新技術が工場や事務所に導入され始めると、欧米諸国では日本に先立って、社会的影響が問題となってきた。既述のように、第三回ヨーロッパ地域会議でもこれを反映する決議があった。ILOで

は、技術革新の労働者に及ぼす影響については、従来から関心が深く、一九六九年の雇用政策に関する条約と勧告、 協議協力、雇用保障、安全等について方針を示した七一一年総会における決議などがあった。技術革新の労働者に対す

る影響としては、一般に雇用の量と質(とくに熟練の性格と程度)および労働条件に関するものがある。ILOとしては、PIACTで追及してきた作業条件・労働環境の改善を新技術の採用に当っても、実質化する必要があった。

このうち職務内容と作業組織についても、これまでの経験や知識を活かす必要があった。最近時点では、以下に掲げ る二つの委員会が開かれ、新技術導入の手続きや、作業組織の選択と有害な影響の除去について、ガイドラインが作 競争と雇用不安、技術革新という条件のもとで作業組織をめぐる問題を広く考察した上、積極的な態度を確定した

ことが注目される。

川郵便および電気通信合同会議

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作業条件・労働環境については、技術変化によって全体として改善がみられたが、適切に管理されないと、視覚障

害や、心理的緊張をもたらす可能性があるとしている。

第二に、以上に対応して提起された政策としては、技術革新の導入は是認するが、その際、職務の変化、安全、余 剰人員などの事情や、職務を有意味なものとすることを考慮しつつ、漸次的、計画的に実施する基本方針を示してい

る。このための手続は、労働者への情報の提供、協議である。

第三に、労働人間化の政策については、会議の結論おいて、作業組織と職務満足という項目を設けている・技術変 化と不可分な労働環境について、行動科学、人間工学を応用して対策を識ずるべきこと、仕事を単調でなく、自己実

箸でなかった。

第一に、技術革新によって、労働生産性の上昇、コスト低下、サービスの向上などがあったが、需要増大もあって、 雇用総量への影響は少なかった。しかし、仕事の質に多様な影響を及ぼし、再訓練、配置転換などの調整が必要であ った。職務内容の変化については、必要とされる熟練の単純化と複雑化の両方向があり、単調性、課業の多様性、自 律性について顕著な変化はなかった。ただ責任の増大する傾向はみられた。以上のように仕事の質に関する変化は顕

国際機構における労働の人間化政策一ハーー

産業における技術変化の影響について検討することを課題とした。この二業種における技術変化としては、郵便サー ビスにおける郵便物の分類の機械化・オートメーション化、金融的業務へのコンピュータ導入、電話通信における交

換の自動化やコンピュータの応用などが世界的に進展していた。

会議のため準備された資料、会議における討議と結論から、作業条件、労働環境等に関する判断の主なものをあげ

ると以下の通りである。

(22)

一九八一年一月開催された第八回俸給被用者・専門職労働者諮問委員会は、標記の議題をとりあげた。会議のための報告書(ご冨陶ご胃冴旦弓§覺凋§{・量②ミミミ(爵S喝⑯:ミ意向ミミミ③員。ミヨC藍愚OC員予言冨旦zg‐言冒憲ミヨ◎尋:。gg)は、氏原正治郎監訳『OA革命とホワイトカラー』日本生産性本部、昭和五八年として翻訳されている。この報告書では、商業、銀行・保険・金融業および事務所における技術変化および榊造変化の影響を分析している。商業・金融部門においては、業務の拡大、集中化、多様化、国際化があったが、これを支えたのが、コンピュータを基礎とする技術であった。商業における電子キャッシュ・レジスタを用いたシステム、銀行における電気通信網による業務自動化システム、事務所における文書処理装置などが代表的であり、これらは、マイクロ・プロセッサが出現して以来、急激な発展を示してきたものである。もっとも報告書は、各種の障害が存在し、これら新技術の今後の発展は漸進的なものであろうと予測する。報告書は、技術変化のマクロ的な雇用量に及ぽ

国際機楠における労働の人間化政策一ハ一一一 この会議の結論は、技術革新に対するILOの従来からの対応策を継承しており、最近時点での関連政策体系のモデルとみなすことができよう。作業組織や勤務制度もその中で明確な位置を与えられていることが注目される。 現可能な有意味なものとすべきこと、効率と矛盾しない限りにおいて使用者が労働者の態度、関心、動機づけを尊重すべきことを説いている。勤務制度で法令の規制によらないものについては労使交渉により決することとしている。そのほか、高度化する仕事を担い得るような職業訓練、安全・健康の確保とそのための労使合同委員会設置が望ましそのほか、一局』いとしている。

②技術変化・構造変化がホワイトカラー労働者の雇用・作業条件に及ぼす影響

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第一に、この分野における技術変化は、長期的に世界的に普及すると予想するとともに、適切な革新を行なわない企業は存続できないであろうと判断している。また、報告書同様、新技術は関係者に利益をもたらし得るが、有害な 国際機構における労働の人間化政策六四

す影響については、瞥戒的ながら判断を避けているものの、質的な面では、これまでの傾向について、消極的な評価を打ち出している。すなわち、技術変化の直接的影響としては、単調な繰返し作業がなくなる一方、新しく熟練を必要としない職務が出現するとみなしている。また少数の高度の熟練を要する職務が出現するが、一般の労働者はこれにつくことが困難で、企業内における職業的発展の余地がなくなると判断している。技術変化と作業組織の関係についても、上記と並行した職務内容の低下傾向が現われる。すなわち、技術変化の積極的な影響もある代り、消極的な影響として、仕事における自律と責任の低下、職務内容の貧困化の一方で作業量の増大と密度の増加、従業員間および顧客とのコミュニケーションの悪化などが起こる。ところで報告書は、技術によってこれらの傾向が必然的に生じるのではなく、職務再編成の実験例が示すように、職務を豊富化することもできるとしている。報告書は労働時間、労働環境についても、同様に、新技術が改善をもたらすとともに、新しい問題をもたらすとみなしている。結論の一部において、新技術のもとにおける危険は、仕事による感覚的。神経的・心理的ストレスによるものであって、これは技術の性格によるものではなく、作業組織、職務内容およびその結果としての人間的、社会的関係によるものであると述べている。作業組織の選択可能性を問題解決の鍵とみなしているもののようである。会議の討論の状況は、前掲邦訳の「解題」に紹介されている。雇用の量・質の見通しについて、労働側は悲観的であったのに対し、使用者側は楽観的であるなど、見解の対立が著しかったが、到達した結論の顕著なものをみると以あったのに対し、下の通りである。

(24)

第四に、作業組織については、報告書の基本的考え方が認められたといってよい。すなわち、技術変化によって、職務内容の改善と悪化が起こり得るが、有害な影響を避け、職務満足と熟練の高度化を目指すべきであるとし、そのため、政労使が研究に協力することを提唱する。作業システムの形成には、当該労働者およびサービス利用者の参加が必要であるとし、また、作業組織の内容的基準も具体的に示している。これらは、①一定の自律と責任②作業の全行程の理解可能性、③過度のリズム(サイクル)と常時的な監督の回避、④課業の多様性、⑤人間的接触の機会、

国際機構における労働の人間化政策六五 ものである。 影響もあり得るので、これを避けまたは緩和する必要があるとみなしている。第二に、技術変化の導入については、労使、政府さらに消費者間の対話や協議の必要を認めている。この手続は、’九七二年ILO総会の決議などによって推進されてきたものの発展であるが、関係者の果たすべき役割が示されているところに若干の特徴がある。経済的・社会的な政策課題をもつ政府は、調査と情報提供、労使問の対話の促進などについて責任があるとみなしている。企業レベルでは、使用者が技術の導入に決定の権限があるとした上で、労働者とその代表が各国の法令と慣行に従い、その決定に事前に影響力を及ぼし得るようにすべきであるとする。この協議を有効ならしめるため.密接な協力1報告警腱よれば、重体が自らの鶉の決定肴であるべきであるとの霧え墓くlとコミュニケーシ:關係労響が変化蓬に参加できるような訓繍使用者による壼な嘉襲の提供などが必要であると述べているc第三に、雇用の壁・質に対する技術変化の影響について見通しは行なっていないが、生じ得る雇用問題について対策を譜ずべきであるとしている。その内容は、個別企業レベルの雇用保障と公共的雇用政策で、従来の方針に沿った

(25)

国際機構における労働の人間化政策一ハーハ

⑥技能水準、キャリアおよび俸給の改善の見通し、⑦(業績についての)個人データの保護である。これらでは、作

業組織の専門家が提示する基準に比較して、物的・経済的要素が、積極的に考慮されていると言える。

作業条件に関しては、深夜業および交替労働は可能な限り避けるべきであり、職務評価の基準が新技術に適合する よう規則的に再検討すべきであり、技術変化に伴って導入される刺激絵はなるべく避けるべきであるとする。労働時

間についての積極的言及はない。第五に、労働環境と安全・健康についての基本的考え方は、報告書と同じく、技術変化の積極的、消極的影響のうち、後者を除去しようとするものである。そのため、政府が人間工学的研究を促進し、その成果を提供すべきこと、労使協議の必要性などについて述べている。この分野の技術変化を代表する一般的職務の代表である、視覚ディスプレイ装置とキャッシ・レジスタの取扱者について、人間工学的その他の保護を証っている。

ILOにおける労働の人間化政策の理念は、一九七四年初めの『社会政策における人間的価値』に鮮明にみられる。完全雇用と社会保障という福祉国家の政策目標に人間的欲求の実現を加えようとするもので、この欲求は経済的繁栄

と成熟を経験した七○年代初期のヨーロッパで顕在化していた。その後、この理念は『労働をより人間的に』に一応 引き継がれ、PIACTとして具体化されるが、計画はその名称の示すように、実務的色彩の濃いものとなった。 PIACTの決定は、石油危機後の一九七六年であり、同年のILO総会では、作業条件・労働環境の改善は、経 済不況下でも追求する必要があるとの決議がなされたが、人間的価値の実現を高らかに証い上げた時期とは、経済的

三総括

(26)

職務内容および作業組織については、これを取扱った諸委員会の結論から、斉合的なガイドラインを読み取ること

ができるが、これを従来の経営の指針としての職務設計論との対比で見ると若干の特色がある。職務内容あるいは作

業組織の備えるべき(備えてはならない)内容的基準に新しいものはなく、これはむしろ簡単であって、手続を含む 関連事項をより周到に取扱っている。そのひとつは、作業自体(作業速度、作業サイクルおよび何によって規制され るか)を問題としていることである。また職業的能力や。ハーソナリティの発展、昇進や賃金の保障についても考慮し、

関係労働者の参加を重視している。これらは、労働者代表と政府の意見が反映されているためであろう。

国際機構における労働の人間化政策六七 背景が異っていた。作業条件・労働環境の改善は、効率の向上に貢献するとの理解や、改善政策と経済政策等の調和が唱えられるようになった。このような事情のもとで、PIACTの当初五年間の実績をみると、安全と健康については、国際労働基準の制定などの前進があったものの、労働時間の長さと勤務制度については政策の進展は困難であった。職務内容と作業組織については、三者構成の会議のいくつかで取扱われ、ガイドラインが浮び上ってきた。PIACT発足以降の他の条件の変化としては、マイクロエレクトロニクスによる技術革新があげられよう。ILOは、

新技術の労働条件に対する有害な影響を、従来から展開してきた労使協議を通じて、また、職務設計の経験や人間工

学の知識を用いて、防除しようとしており、ホワイトカラーの諮問委員会報告書は、技術が作業組織を自動的に決定

するのではなく、組織と職務の編成に選択があり得ると論じた。他方、ILOの産業別委員会等においては、新技術 の導入自体に反対することはかえって雇用問題を起こすとみなし、また、これと関連して、繊維産業委員会が、深夜 勤などの交替制についても、容認している。ここでも、人間的価値の実現の理念を基準とすれば、後退、修正ないし

は現実化が認められる。

(27)

国際機構における労働の人間化政策六八 PIACTの計画文書には、作業条件・労働環境の改善のため、団結権の行使と使用者・労働者の参加を保障する強固なメカニズムが不可欠であると誰われ、各レベル、各分野での参加が推奨された。作業組織の改善は個人の仕事における直接参加であるが、その改善のためにも参加が必要とされた。『社会政策における人間的価値』が論じたところによれば、労働生活の人間化は、政策と経営の意思決定への参加一般と同じく、人間的欲求に由来する。ILOは、参加のうちに、団体交渉による対抗的関係をも含めているが、PIACTの進展および新技術導入の過程では、労使間の団体交渉よりは、意思決定に先立つ協議、完全な情報の提供、協力が強調されている。また、公共政策の決定・運用について、労使団体のソシアル・パートナーとしての参加が予定される。この協力的関係の性格が問題であるが、七六年のILO総会決議では、作業条件・労働環境の改善には、団結権を含む人権の自由な行使と、使用者・労働者のすぺてのレベルにおける可能な限りの密接な協力、したがって産業民主主義の拡大が、不可欠な条件であると述べていることが注目されよう。協力の基礎には個人および団体としての労使の自律が前提とされている。そのうえで合意による統合が課題とされる。この点は見落しては癒らないである.しかし、l当事者の自律性にと’癒ってl実際の政策形成にあたっては、関係主体の問題認識の緊急度、企業、国民経済にとっての効率やコストの観点等から合意到達に難易の程度があったようである。このようにして、作業条件・労働環境の改善のみについてそうなのではないが、ILOレベルにおける合意と加盟各国における政策決定のずれも少なくないという問題が残された(完結)ないが、ILOしべ

(一九八三年九月稿)

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