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介護者の移動要因に関する実証的考察

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(1)

著者 松井 佐和

雑誌名 經濟學論叢

巻 63

号 1

ページ 135‑179

発行年 2011‑07‑20

権利 同志社大學經濟學會

URL http://doi.org/10.14988/pa.2017.0000013628

(2)

介護者の移動要因に関する実証的考察(松井佐和)

【研究ノート】

介護者の移動要因に関する実証的考察

松 井 佐 和  

1 は じ め に

 介護保険制度導入以降,高齢者(親)の移動面からデータ分析されることは あっても,介護者(子)側の移動面からデータ分析されることはほとんどな かった.そのため本論文では,子の側からみた介護移動の要因に焦点を当てて,

分析1)を行う.また,この分析では,子側の心理的負担感・就労抑制効果(満 足度)等も含めた総合的分析により,家族による介護の現況を明らかにし,こ れからの介護政策のあり方を考察することを試みる.

 先行研究においては,高齢者(親)側の介護移動要因として,中澤・川瀬

(2011)で,①家庭内扶養機能の強さや,②地域の介護福祉水準の高さが,指 摘されている.すなわち,家庭内扶養機能の強い地域(平均世帯人員が多い地域)

では,高齢者の流出は相対的に少ない.これに対して,家庭内扶養機能の弱 い地域からは,高齢者の流出が多い.また,介護老人福祉施設定員水準の高 低も,後期高齢者の重要な移動要因となっている.「平成11年度江戸川区高 齢者・子育て世代の移動実態調査報告」でも,高齢者の転入理由として,福 祉サービスの充実があげられ,この点を裏付けている.

* 本稿は,日本財政学会第67回大会(20101024日)で発表した内容を修正したものです.

発表時には,討論者の関西学院大学の高林喜久生教授をはじめ,同志社大学の伊多波良雄教授,

佐竹光彦教授,ほか参加者の方々から貴重なコメントをいただきました.感謝申し上げます.

いうまでもなく,ありうべき誤解や誤りは,すべて筆者の責任に属します.

1) 介護移住とは,高齢者が介護サービスの充実した地方に移動することをいう.中澤・川瀬(2011)

3頁参照.

(135) 135

(3)

 しかし,高齢者の子供が親の介護のため親元へ移動する介護移住者(子)側 の属性は,どのようなものなのか,あるいはどのような要因で移動するのか については,ほとんど研究がなされていない.また,介護が階層間格差の原 因とならないのか,介護移動が介護サービス水準等の地域間格差の拡大につ ながりはしないのか,についてもあまり文献は見当たらない.本稿ではこの 点について,実証的に明らかにすることを目的とする.すなわち,この分析 の意義は,今まであまり焦点をあてられてこなかった,介護移住者(子)側の 移動要因に関する分析を行うことにより,どのような属性を持つ者が,どう いった問題に直面しているかを認識し,親だけでなく子側の効用も考慮した,

階層間格差のない持続的な介護政策を提案することにある.

 本稿の構成は,以下のとおりである.第2節ではデータ,第3節では実証 分析結果を報告する.最後にまとめる.

2 デ ー タ

 介護問題を扱う場合,高齢者(親)側の効用にばかり,焦点があたりがちで あるが,介護がかなり長期にわたることを考えると,親だけでなく,介護者(子)

側の効用もあわせて考えるべきである.そこで,介護移住者側のデータに焦 点をあてて分析を行う.

 ここでは,2008年2月に実施された,独自のアンケート調査個票データ を用いる.データの調査期間は,2008年2月24日(日)〜3月2日(日)

で,調査データの名称は,「地域移動と生活環境に関するアンケート調査」

(科学研究費補助金(基盤研究A)による研究における「地域間格差生成の要因分析 と格差縮小政策」(研究代表・橘木俊詔)の下で実施されたアンケート調査)の個 票データである.調査対象は,満20歳以上の調査会社提携モニターであ り,調査票配信数は19,158件,調査方法・配布・回収方法は,三菱総研と NTTレゾナントが運営するインターネットアンケート「gooリサーチ」に よる,インターネット調査である.調査票回収数は8,890件で,回収率は

(4)

介護者の移動要因に関する実証的考察(松井佐和)

約46.4%2)であった .この全データのサンプル数8,890のうち,介護のため

移動した者のサンプル数は54であった.

 データの特色としては,本アンケート調査では,インターネットアンケー トの特性により,30代・40代の回答が多い.したがって,本調査では,男性・

女性とも60代・70代の捕捉率が弱い可能性があるが,本分析では,子の介 護移住についてみるので,介護する子世代をおおむね網羅しているといえ,

あまり問題はないものと考える.

 データ上の介護移住者の特色としては,第 1 表のとおり,介護移住者の現 住居住地域は,北海道,甲信越・北陸,中国・四国,九州・沖縄が,データ サンプル上少なくなっており,関東,東海,近畿中心のデータサンプルで構 成されていることに留意しなければならない.また,介護移住者の家族人数は,

第 2 表より,2人までで50%を超えており,少ないことも特色である.なお,

本調査の介護移住者には,親の介護をする子の介護移住だけでなく,配偶者 や兄弟等の介護をする者も含まれるものと考えられる.しかし,配偶者介護 をみると,第 3 表の同居家族の構成から,「夫婦だけ」の13名のうち3),「親 が他界している」と回答した者は,わずか4名である4).サンプル数的にも

2) インターネットアンケートのバイアスについては,プレ調査と性別の違う回答,回答時間の 異常に速い回答は,除外されている.

3) この中には,「親との近居」3名がいる.

4) 男性602名,男性70代以上1名,女性601名である.

総数 北海道・東北 甲信越・北陸 関東 東海 近畿 中国・四国 九州・沖縄 不詳

54 3 2 11 5 5 2 3 0

100.0 5.6 3.7 20.4 9.3 9.3 3.7 5.6 0.0 第 1 表 介護移住者の居住地域(上段:実数,下段:%)

総数 1人 2人 3人 4人 5人 6人 不詳

54 6 22 14 8 2 2 0

100.0 11.1 40.7 25.9 14.8 3.7 3.7 0.0 第 2 表 介護移住者の家族人数(上段:実数,下段:%)

(137) 137

(5)

さほど多くないし「親」を自分の親とのみとらえ,配偶者の親を除外してい る可能性もぬぐいきれない.したがって,本データによって,子の側からみ た介護移動分析ができるものと考える5)

 第 4 表では,第5回・第6回人口移動調査と本アンケート調査(介護移動者 及びデータ全体)の移動理由の分布の比較を行った6).第4表から,人口移動 調査の移動理由の構成に対して,本アンケート調査の移動理由の構成は,「入 学・進学(就学のため)」7),「就職(求職(仕事を求めて))(新規就業・新規開業)」,

「転職(転職・転業)」,「転勤(転勤・出向)」「親と同居(家族と同居するため)」,「親 と近居(家族の近くに住むため)」,「子育て環境上の理由(子どもの育児,教育の ため)」の理由がやや多く,「定年退職(引退・療養のため)」,「住宅事情(住宅 事情を改善するため)」の理由がやや少なくなっている.これは,人口移動調査 では,年齢分布が60代以上の割合が高く,それ以下の比較的若い世代の捕捉 率がやや低いのに対して,本アンケート調査では,30代・40代が多いためで あるためと思われる.しかし,それらの差はわずかであり,したがって,移 動理由の構成はおおむね変わりがなく,アンケート調査の偏りはないものと いえる.

 また,第4表は,多重回答グループである移住理由のうち,「家族の介護の

5) 介護移住者データで,「親が他界している」と回答した者は,この4名のほかに5名おり,性

別・年齢は,男性40代・50代が各2名,男性70代以上に1名おり,配偶者・兄弟等の介護の 可能性が高い.

6) 公表データの都合上,第5回人口移動調査では,世帯全員の「移動理由(現住居への移動者

について)」6回人口移動調査では,世帯全員の「移動理由(過去5年間の移動者について)」

を使用した.014歳の子供の移動には,随伴行動が多く含まれるため,データからは除いた 割合でみている.

7) 第6回人口移動調査では,本アンケート調査と同じ20代以上にデータをしぼったら,「入学・

進学」は2.6%になり,本アンケート調査とあまり変わりない結果となった.

総数 夫婦だけ(一世代) 親と子(二世代)親と子と孫(三世代) その他 不詳

54 13 25 8 2 6

100.0 24.1 46.3 14.8 3.7 11.1

第 3 表 介護移住者の同居家族の構成(上段:実数,下段:%)

(6)

介護者の移動要因に関する実証的考察(松井佐和)

ため」と回答した者が,他にどのような複数同時回答をしたのかを示したも のである(各項目回答数/複数同時総回答数).第4表から,「家族と同居するため」,

「家族の近くに住むため」,「住宅事情を改善するため」,「生活環境を改善する ため」の各項目で,複数同時回答が多いことが分かる.したがって,介護移 住者は,同居や近居,住環境改善の目的もあわせて,介護移住の行動に出て 理由 第5回 第6回 介護移住者 データ全体 入学・進学(就学のため) 1.2% 4.9% 1.4% 2.1%

就職(求職(仕事を求めて))(新規就業・新規開業) 2.4% 3.8% 0.7% 4.8%

転職(転職・転業) 2.8% 3.4% 4.3% 5.1%

転勤(転勤・出向) 2.8% 7.0% 2.1% 9.9%

家業継承(家業を継ぐため) 0.6% 0.1% - 0.5%

定年退職(引退・療養のため) 0.6% 0.7% 0.7% 0.4%

住宅事情(住宅事情を改善するため) 28.8% 25.7% 10.7% 18.8%

生活環境上の理由(生活環境を改善するため) 5.1% 7.3% 10.0% 9.9%

通勤通学の便 1.4% 2.8% - -

親と同居(家族と同居するため)※ 4.4% 3.9% 14.3% 6.0%

親と近居(家族の近くに住むため)※ 1.0% 1.6% 10.0% 4.9%

子と同居 1.2% 1.4% - -

子と近居 0.1% 0.4% - -

親や子や配偶者の移動に伴って 5.9% 7.4% - - 結婚・離婚(結婚・出産のため) 19.2% 14.9% 2.9% 17.3%

子育て環境上の理由(子どもの育児、教育のため) 1.5% 2.9% 3.6% 6.8%

健康上の理由 - 1.2% - -

(家族と別居するため) - - 0.7% 2.9%

(家族の介護のため) - - 38.6% 0.6%

その他 4.8% 7.4% - 4.3%

不詳(特に理由はない・わからない) 16.7% 3.3% - 5.7%

第 4 表 移動理由の分布(人口移動調査と本アンケート調査の比較)(随伴移動除く)

( )内は,本データ回答理由

データ全体の分は,介護移住者分と異なり,「親と同居」「親と近居」だけでなく,「子と同居」「子 と近居」理由分が多く含まれる.

(139) 139

(7)

いることが分かる.

 以下,介護移住の具体的要因等に関しては,各選択肢と介護移住の有無に 違いがみられるか,クロス集計図を作成し,その結果が統計上有意かどうか を判断するため独立性の検定を行い,順次検討していくこととする.

3 分  析

3. 1 移住先の都市規模,移住希望理由及び移住制約理由

 親の介護移住先として,中澤・川瀬(2011)は,東京圏・大阪圏・名古屋圏 において,退職年齢・前期高齢者層では流出超過,後期高齢者は流入超過と なるとする8).子側の介護移住についても同じことが言えるか,介護移住者の 移動先の都市規模について,クロス集計図を作成した.しかし,「同じ都道府 県内」の子側の介護移住についてのサンプル数は,4と極めて少なかった9). そこで,先行研究と同じことが言えるか,データ全体でみるのも,意義ある ことと思われるため,以下分析した.データの都合上,今後3年間で別の地 域に住まいを移す予定の介護移住予定(見込み)者についてみる.第 1 図は,

その結果を図示したものである.第1図は,各年代別における「同じ都道府 県内で移動する予定の都市規模」の割合をあらわす.第1図から,「同じ都道 府県内」では,退職年齢では確かに大都市から流出(町村へ流入)しているが,

70代以上では,中都市へ移動する予定者が増加していることが分かる10).  同じく「違う都道府県・海外」の子側の介護移住についてのサンプル数は,

3と極めて少なかったため11),全国データで分析する.第 2 図は,各年代別に おける「違う都道府県間で移動する予定の都市規模」の割合をクロス集計した ものである.第2図より,「違う都道府県・海外」では,50代から60代にかけて,

町村へ移動する予定のものが減少している以外は,「同じ都道府県」の場合と

8) 中澤・川瀬(2011)7頁.

9) 中都市へ移動予定が401名,その他都市へ移動予定が401名,502名であった.

10) サンプル数は,983である.

11) 30代・40代で,大都市へ移動予定各1名,その他都市へ移動予定が,301名であった.

(8)

介護者の移動要因に関する実証的考察(松井佐和)

同じであることが分かる12).すなわち,大都市への移動は,50代から60代に かけて,減少するが,70代以上では,中都市への移動予定者は増加している.

いずれも退職年齢・前期高齢者世代(60代)での,大都市・中都市からの流出,

後期高齢者(70代)での,中都市への流入を示唆している.先行研究において 指摘されている,施設介護を求めての移動を裏付けるものといえる13)

12) サンプル数は,527である.

13) 前期高齢者は,65歳以上75歳未満,後期高齢者は,75歳以上である.しかし,データの都

合上及び移動予定のデータであることを考慮して,前期を60代に,後期を70代以上に,あて はめることとする.

0 10 20

20代 30代 40代 50代 60代 70代以上

大都市(東京23区,政令指定 都市,100万以上の都市)

中都市(100万人未満の県庁所 在都市)

その他の都市 町・村 30

40 50 60% 0 10 20

20代 30代 40代 50代 60代 70代以上

大都市(東京23区,政令指定 都市,100万以上の都市)

中都市(100万人未満の県庁所 在都市)

その他の都市 町・村 30

40 50 60 70%

第 1 図 「年代」と「移る予定の都市の都市規模(同じ都道府県内)」の関係(データ全体)

0 10 20

20代 30代 40代 50代 60代 70代以上

大都市(東京23区,政令指定 都市,100万以上の都市)

中都市(100万人未満の県庁所 在都市)

その他の都市 町・村 30

40 50 60% 0 10 20

20代 30代 40代 50代 60代 70代以上

大都市(東京23区,政令指定 都市,100万以上の都市)

中都市(100万人未満の県庁所 在都市)

その他の都市 町・村 30

40 50 60 70%

第 2 図 「年代」と「移る予定の都市の都市規模(違う都道府県・海外)」の関係(データ全体)

第 5 表 介護移住者の現住都市規模(上段:実数,下段:%)

総数 大都市 中都市 その他の都市 町村 不詳

54 15 9 20 10 0

100.0 27.8 16.7 37.0 18.5 0.0

(141) 141

(9)

 第 5 表は,介護移住者が家族のため移住後の現在住んでいる都市規模を表 す.中都市の割合が,16.7%と低いので,上記中都市への流入の結果を考え 合わせると,今後介護サービスを受ける都合上等のため,さらに中都市へ移 住する者があらわれると思われる.このことは,都市規模に関して中都市へ の負担増の可能性をはらみ,他規模の都市との地域格差を生じさせるおそれ がある.とりわけ,第2図から,地域間での介護投資のスピルオーバーの可 能性をあらわす,違う都道府県への移住の傾向をみると,費用のかかる後期 高齢者にあたる70代以上の中都市流入が多いので,中都市での財源不足のお それが生じ,囚人のジレンマのような状態で,介護への過小投資へとつなが

応答数 サンプル数 パーセント

移住希望理由 通勤・通学の便がよい 4 4.30

買い物の便がよい 6 6.50

治安がよい 1 1.10

医療へのアクセスがよい 5 5.40

ビジネス・商売の便がよい 7 7.50

地域の所得水準が高い 3 3.20

様々な仕事がある 6 6.50

文化的な社会風土がある 4 4.30

自然環境にめぐまれている 12 12.90 公害(騒音・大気汚染など)が少ない 7 7.50 景観・静かさなどの住環境がよい 9 9.70

行政のサービスがよい 5 5.40

近くに育児施設(託児所,幼稚園,保育園など)がある 3 3.20 近くに文化施設・娯楽施設がある 4 4.30 近くに優れた学校(大学も含む)がある 3 3.20 近くに家族,親戚がいる(同居も含む) 4 4.30

近くに知り合いがいる 5 5.40

その他 5 5.40

合計 93 100.00

第 6 表 介護移住者の介護移住希望理由

(10)

介護者の移動要因に関する実証的考察(松井佐和)

ることもあり得る.ましてや,介護投資の費用と利得の関係は,通常よりも 費用が大きいケースと考えられるので,ナッシュ均衡である介護投資しない インセンティヴがより大きく働いてしまうものと考える14)

 ところで,介護移住者の移住に先立つ希望理由には,どのようなものがあ るのか,第 6 表にまとめた.第6表からは,介護移住に先立つ希望理由とし て,「自然環境にめぐまれている」,「景観・静かさなどの住環境がよい」の住 環境項目をはじめ,「ビジネス・商売の便がよい」や「様々な仕事がある」の 就職項目や,「買い物の便がよい」,「医療へのアクセスがよい」,「行政のサー ビスがよい」の社会的扶養機能に関わる項目,及び,「近くに知り合いがいる」,

「近くに家族,親戚がいる(同居を含む)」の家庭内扶養機能に関わるものがあ ることが分かる.

 では,反対に,具体的にどのようなものが,上記介護移住者の将来の移住 希望を妨げているのであろうか,第 7 表にまとめた.

 第7表からは,「住居費など移動に必要な資金がない」の移動費用項目,「現

14) 人口移動がある場合の投資が地域に与える効果に関して,橘木・松浦(2009)116-121頁参照.

応答数 サンプル数 パーセント 介護移住制約

理由 現在,自分あるいは家族が仕事を持っており,

自由な移動は難しい 4 12.10

現在,自分あるいは家族が就学しており,自由

な移動は難しい 2 6.10

住居費など移動に必要な資金がない 7 21.20 移動先で仕事を得ることが難しい 6 18.20 子どもや家族を連れて移動することが難しい 2 6.10 これまで住んできた地域と生活環境が違う 3 9.10

介護する家族がいる 5 15.20

自身や家族の健康に問題がある 2 6.10

その他 2 6.10

合計 33 100.00

第 7 表 介護移住制約理由

(143) 143

(11)

在,自分あるいは家族が仕事を持っており,自由な移動は難しい」や「移動 先で仕事を得ることが難しい」の就業項目,「介護する家族がいる」の介護項 目を,介護移住者が移住したくてもできない理由として,挙げているものが 多いことが分かる.

 この介護移住者の移住制約要因の「介護する家族がいるため将来移住困難」

の割合を,「家族介護のため移住した」か否か(以下,介護移住の有無)によって,

クロス集計したものが第 3 図である.

 第3図からは,介護移住しなかった者と介護移住した者を比べて,介護移 住制約要因として「介護する家族がいる」をあげている者が,介護移住した 者で相対的に多いことが分かる.第3図のグラフは,介護移住した者とそう 第 3 図 「家族の介護のため移住した」と「介護する家族がいるため将来移住困難」 の関係

0 20 40 60 80 100

家族の介護 のため移住  はい

家族の介護 のため移住  いいえ 移住困難である

介護する家族がいるため

移住困難でない

帰 無 仮 説 有意確率

年代と,移住予定の都市規模(同じ都道府県)(全データ)の間に関連性はない15) 0.033 年代と,移住予定の都市規模(違う都道府県)(全データ)の間に関連性はない16) 0.007

「介護する家族いるため将来移住できない」と,介護移住の有無の間に関連性はない 0.000 第 8 表 移住都市規模・移住制約理由の独立性の検定の要約

注)+p<0.10, p<0.05, p<0.01, p<0.001.

15) 但し,期待度数が5未満のセルの占める割合が20.8%,最小期待度数が0.35のため,有意

でない.

16) 但し,期待度数が5未満のセルの占める割合が33.3%,最小期待度数が0.30のため,有意

でない.

(12)

介護者の移動要因に関する実証的考察(松井佐和)

でない者とで比べた,「介護する家族がいるため移住困難である」と回答した 者の割合をあらわす.

 「介護する家族がいるため将来移住できない」項目,及び,「移る予定の都 市規模」等については,離散変数のため,独立性の検定を実施する.第 8 表は,

移住都市規模及び介護移住者の移住制約理由に関する,独立性の検定の結果 を表す.第8表では,有意確率は,「介護する家族がいる」ため将来移住でき ない項目については,Fisherの直接有意確率を,その他は,Pearsonの漸近有 意確率を表す.

 第8表からは,(将来他の地域への移住希望していても)家族介護のため移住を あきらめるという理由が,1%水準で有意であった.このことは,介護移住者 が,住環境や就業,行政サービス等を求めて,他地域への移住を希望しても,

介護によって制約されていることを示唆する.これは,介護移住者の介護負 担感・就労制約の一端を示したものといえよう.小原(2008)でも,「親を介 護するかどうか」が,子の労働継続に負の影響を与えることが,1%水準で有 意となっており,子の介護負担感の一端や就労制約を示唆している.したがっ て,親の介護のため親元へ移住した介護移住者は,住環境改善,就職,社会・

家庭内扶養機能を求めて,(おそらく中都市への)移住への希望があるものの,

移動費用や就業・介護を理由に,移住をあきらめる傾向にあるといえる.

40 35 30 25 20 15 10 5 0

家族の介護 のため移住  はい

家族の介護 のため移住  いいえ 70代以上

20代 30代 40代 50代 60代 年代

% 第 4 図 「家族の介護のため移住」と「年代」の関係

(145) 145

(13)

3. 2 介護移住者(子)の属性

 ここでは,どういった属性の変数選択肢と,介護移住の有無が関係するの かを分析する.変数名と定義,記述統計は,以下のとおりである.介護移住 者の属性について,第 4 図は介護移住の有無による「年代」の割合を,第 5 図は介護移住の有無による「性別・年代」の割合をクロス集計したものである.

第4図からは,介護移住は50代で多く,男女別にみると,第5図から,男性,

女性とも50代以上で,介護移住が相対的に多い様子が窺える.

 金子・山田(2002)でも,自身の親との関係について,「介護の世話」と回 答した者が,50代男性で3.39%,30–40代女性で1.15%,50代女性で4.25%

となっており,50代で介護する者が多い結果となっている(ここでは,「介護 の世話」の回答割合が少ないように思われるが,それは「親の施設費負担」「親の面倒」

など,他の類似質問項目に,吸収されているものがあるためと思われる.なお,親に 対して医療費・施設費負担,仕送り,世話など,支援をしている者は,30–40代男性で

48%,50代男性で91%,30–40代女性で39%,50代女性で75%となっており,やは

り50代が多く,親に対する支援者は,男性が多い結果となっている.)17)

 2003年に実施された「第3回全国家庭動向調査」でも,「親の介護時に経 30

25 20

15 10

5 0

家族の介護 のため移住  はい

家族の介護 のため移住  いいえ 女性*70代以上

女性*60代 女性*50代 女性*40代 女性*30代 女性*20代 男性*70代以上 男性*60代 男性*50代 男性*40代 男性*30代 男性*20代 性別・年代

% 第 5 図 「家族の介護のため移住」と「性別・年代」の関係

17) 金子・山田(2002)7-8頁.なお,データは,「少子・高齢化社会における家族と暮らしに

関するインターネット調査」(高山他,2002)が使用されている.

(14)

介護者の移動要因に関する実証的考察(松井佐和)

験した出来事」で,「親の家へ同居した」と回答した者の「妻の年齢」は,

45–49歳で21.2%,5054歳で30.3%と相対的に多くなっており,本論文調査 と整合的な結果が出ている18)

 これに対して,2006年に実施された「第6回人口移動調査」では,過去5 年間における現住地への移動理由において,「親と同居」と回答した者が,男 性30代で36.3%,男性40代で21.8%,男性50代で23.6%であった(女性で

「親と同居」を理由に移動した者は,少なかった19)).同居のデータに限定されては いるが,本論文独自アンケート調査よりも,若い世代の男性30代及び40代 で,多い結果となっている.女性が少なかったのは,調査対象が原則「世帯主」

であることから,若い世代が多かったのは,同居未婚世帯が増えてきている 可能性から,きているものと思われる.

 介護移住者の属性の変数としては,性別,婚姻状況,年代,最も下の子供年代,

同居している子供,現在の健康状態,を選んだ.なぜなら,男性より女性が 親の面倒を見ると考えられるし,また,他に世話する対象がいない者や健康 な者ほど,介護移住の可能性があると考えられるからである.

 第 6 図は介護移住の有無による「最も下の子供の年代(末子ステージ)」の 35

30 25 20 15 5 10

0

家族の介護 のため移住  はい

家族の介護 のため移住  いいえ 既婚の社会人その他

未婚の社会人 大学・短大・専門学生大学院生 高校生・予備校生 中学生小学生 3歳以上幼児 3歳未満

最も下の子供の世代(末子ステージ)

% 第 6 図 「家族の介護のため移住」と「最も下の子供の年代 (末子ステージ)」の関係

18) 但し,サンプル数が33と少ないことに,注意しなければならない.

19) 女性はサンプル数が少なく,40–441名,50–542名,60–641名であった.

(147) 147

(15)

割合を,第 7 図は介護移住の有無による「現在の健康状態」の割合をクロス 集計したものである.

 第 9 表の介護移住者の属性における記述統計の平均値,及び第6図,第7 図からは,最も下の子供の年代が高く,現在の健康状態が,普通よりも健康 であることが分かる.第4表の移動理由では,育児のための移住もみられたが,

第6図では,最も下の子供の年代(末子ステージ)が,高校生・予備校生,大学・

50 45 40 35 30 25 20 15 10 5 0

家族の介護 のため移住  はい 家族の介護 のため移住  いいえ 全く健康でない

あまり健康でない 普通 かなり健康 全く健康 現在の健康状態

% 第 7 図 「家族の介護のため移住」と「現在の健康状態」の関係

度 数 最小値 最大値 平均値 標準偏差 性別(1=男性,2=女性) 54 1 2 1.44 0.502 年代(1=20代,2=30代,3=40代,

   4=50代,5=60代,6=70代以上) 54 1 6 3.30 1.253 婚姻状況(1=未婚,2=既婚,

     3=その他(離婚・死別) 54 1 3 1.78 0.604 同居している子供(1=いる,2=いない) 48 1 2 1.60 0.494 最も下の子供の年代

(1=3歳未満,2=3歳以上幼児,3=小学生,

4=中学生,5=高校生・予備校生,

6=大学・短大・専門学生,7=大学院生,

8=未婚の社会人,9=既婚の社会人,

10=その他)

19 2 9 5.16 2.218

現在の健康状態

(1=全く健康,2=かなり健康,3=普通,

4=あまり健康でない,5=全く健康でない) 54 1 5 2.78 0.984

第 9 表 介護移住者の属性の記述統計量

(16)

介護者の移動要因に関する実証的考察(松井佐和)

短大・専門学生,既婚の社会人で相対的に多くなっており,それらは3歳以 上幼児や小学生と比べても多い.したがって,育児世代よりも,育児の終わっ た世代の方が,介護移住者で,はるかに多いといえる.これは,健康で育児 状況にないものでなければ負えない,介護負担の重さを間接的にあらわした ものといえる.ただ,第7図の健康状態からは,「あまり健康でない」〜「全 く健康でない」者も,介護移住者と比べて相対的に多く,介護負担から体調 を崩している者が多い様子もうかがえる.

 また,第 8 図は介護移住の有無による「同居している子供の有無」の割合を,

第 9 図は介護移住の有無による「性別」の割合を,第 10 図は介護移住の有 無による「婚姻状況」の割合をクロス集計したものである.

 同居している子供については,第8図よりいない方が多い.育児する必要 60

50 40

30 20

10 0

家族の介護 のため移住  はい 家族の介護 のため移住  いいえ 女性

男性 性別

% 70 60 50 40 30 20 10 0

家族の介護 のため移住  はい 家族の介護 のため移住  いいえ いない

いる

同居している子供

第 9 図 「家族の介護のため移住」と「性別」の関係

60 50

40 30

20 10

0

家族の介護 のため移住  はい 家族の介護 のため移住  いいえ 女性

男性 性別

% 70 60 50 40 30 20 10 0

家族の介護 のため移住  はい 家族の介護 のため移住  いいえ いない

いる

同居している子供

% 第 8 図 「家族の介護のため移住」と「同居している子供の有無」の関係

(149) 149

(17)

のない世帯もしくは年代で,介護移住していることが,予想される.

 性別は,第9図より,介護移住者の方が,男性がやや多く,婚姻状況は,

第10図より,未婚が,相対的に多いことが分かる.大石(2004)では,1990 年以降の失業率上昇により,若年層(とりわけ男性)の非正規雇用者や無業者 が増加し,それが,未婚者の親との同居率を有意に高めていることが,示唆 された.後節で,これら未婚者と親の同居と最終学歴等の関係についても,

みていくこととする.

 介護移住者の属性の各項目については,離散変数のため,独立性の検定を 実施する.第 10 表は,介護移住者の属性に関する独立性の検定の結果を表す.

第10表では,性別,同居している子供,婚姻状況,及び最も下の子供年代に 第 10 図 「家族の介護のため移住」と「婚姻状況 」の関係

80 70 60 50 40 30 20 10 0

家族の介護 のため移住  はい 家族の介護 のため移住  いいえ その他(離婚・死別)

既婚 未婚 婚姻状況

帰 無 仮 説 有意確率

性別と,介護移住の有無の間に関連性はない 0.134 年代と,介護移住の有無の間に関連性はない20) 0.004 婚姻状況(未婚既婚)と,介護移住の有無の間に関連性はない 0.042 最も下の子供年代と,介護移住の有無の間に関連性はない 0.010 同居している子供と,介護移住の有無の間に関連性はない 0.030 現在の健康状態と,介護移住の有無の間に関連性はない 0.027

第 10 表 介護移住者の属性の独立性の検定の要約

注)+p<0.10, p<0.05, p<0.01, p<0.001.

20) 但し,60代及び70代以上をカテゴリー結合した値である.

(18)

介護者の移動要因に関する実証的考察(松井佐和)

ついては,Fisherの直接有意確率を,その他は,Pearsonの漸近有意確率を表す.

 その結果,第10表より,1%水準で「年代」,「最も下の子供年代」で有意に,

5%水準で「婚姻状況」,「同居している子供」,「現在の健康状態」で有意となっ

た.このことは,介護移住が,特定の年代,特定の婚姻状況,特定の末子ステー ジ,及び同居している子供なし,特定の現在の健康状態,で多いことを意味 する.第6図からも明らかなように,介護移住は,最も下の子供の年代が高 校生以上で相対的に多く,また第4図・第8図より,年齢は「50代」で,「同 居している子供がいない」が多く,第10図より,「未婚」な者に多いことが 分かる.第7図からは,現在の健康状態が,「かなり健康」な者が介護移住者 に多いが,逆に「あまり健康でない」〜「全く健康でない」者も相対的に多く,

体調を崩している者もかなりいる.以上の健康状態より,また,介護移住者は,

他に世話する者のいない,子育て負担の軽くなった世代,もしくは,子供の いない未婚者で多いことから,介護移住者の介護負担の重さを示していると いえよう.

 しかし,第10表より,性別では,有意とならなかった.ただ,性別は,第 9図から,介護移住なしの場合と異なり,男性の方が多くなっている.後述 するように,介護移住の同居は,大半が,自分の親との同居であることから,

自分の親の面倒をみる,とりわけ未婚の男性が,増えつつあるのではないか と予想される.これに関しては,次節で分析するが,親と同居,未婚男性の 密接な関係が示唆される結果となった.

3. 3 同居と所得

 介護移住者は,第4表の度数分布表から,多重回答である介護移住回答グ ループのうち,「家族と同居するため」の項目も,同時回答した者が37%,「家 族と近居するため」の項目も同時回答した者が25.9%おり,介護移住者のう ち,同居・近居を同時回答した者が,実に62.9%にものぼった.第 11 図は,

介護移住の有無による「家族と同居するため移動した」者の割合をクロス集

(151) 151

(19)

63巻 第1

計したものである.第11図からも,介護移住しない者と比べて,介護移住者 は,同居・近居のため移住する者が多いことが分かる21).第 12 図は,介護 移住者のうち,家族と同居した者の内訳である.第12図からは,この介護移 住者の同居は,介護移住者自身の親のためのものが多いことが分かる.

 先行研究においては,同居する子側の所得要因に関して,西岡(2000)が,

子供世代から見た場合,世帯収入が少ないほど,親と同居する確率が高く,

親世帯の支出水準が上昇することによって,同居する可能性が低下すること を示唆した.子供夫婦の所得水準が高いほど,親との同居確率は低いという 点は,八代(1993)でも指摘されている.岩本・福井(2000)でも,親が夫婦 の場合は,子の所得が高いほど,別居が選択される傾向にあるとし,子の所 得が同居・別居に与える影響に関しての結論は,ほぼ一致しているといえる.

本アンケート調査のデータ全体でみても,「親と同居・未婚・30代以上・男性」

16

10 12 14

0 2 4 6 8

配偶者の親と同居している

自分の親と同居している

人 80 90 100

70 60 50 40 30 20 10 0

家族の介護 のため移住  はい 家族の介護 のため移住  いいえ 移住していない

移住した 家族と同居するため

% 第 11 図 「家族の介護のため移住」と「家族と同居するため移住」の関係

16

10 12 14

0 2 4 6 8

配偶者の親と同居している

自分の親と同居している

人 80 90 100

70 60 50 40 30 20 10 0

家族の介護 のため移住  はい 家族の介護 のため移住  いいえ 移住していない

移住した

第 12 図 「家族の介護のため移住」した者のうち「家族( 親)と同居」している者 の内訳度数

21) 内訳は,「親との同居」20名,「親との近居」14名である.

152 (152)

(20)

介護者の移動要因に関する実証的考察(松井佐和)

グループにおいて,自身の年収が250万円未満の者がなんと,46.0%にものぼっ ており,子の低所得と同居の関係が肯定され得る結果が出ている22).しかも,

30代・40代の働き盛りの者が92.1%にものぼり,就業形態は「無業」14.2%

と「パート・アルバイト」,「契約社員・嘱託社員」,「派遣社員」20.3%とで

22) 家計全体の年収が250万円未満の者は14.7%である.サンプル数は661である.これは「親

と同居・未婚・30代以上」サンプル数1,047のうちの63.1%である.この女性を含めたサン プル数でみると,30代・40代の者は92.8%に,自身の年収250万円未満は52.2%に,就業形

態は無業14.8%,パート・アルバイト,契約・嘱託社員,派遣社員28.9%と,これらが全体の

43.7%になり,さらにもう少し増える.

度 数 最小値 最大値 平均値 標準偏差 家族と同居するため(0=いいえ,1=はい) 54 0 1 0.37 0.487 現在の住居の所有関係

(1=持ち家一戸建て,2=持ち家マンション,

3=民間の賃貸住宅,4=公営・公団・公社 等の賃貸住宅,5=社宅・寮,6=その他)

54 1 6 1.69 1.096

( 1=中学校・高等学校,2=短大・高専・専最終学歴

門学校,3=大学・大学院,4=答えたくない) 54 1 3 1.80 0.898 現在の従業上の地位(または就業形態)

( 1=経営者・役員,2=正規雇用の正社員・

正職員,3=契約社員・嘱託社員,4=派遣 社員,5=パート・アルバイト(フリーター を含む),6=自営業主,7=(自営業の)家 業の手伝い,8=内職・在宅ワーク,9=学生,

10=無業(専業主婦・主夫含む))

54 1 10 5.74 3.354

全体として現在の生活に関する満足度

( 1=満足している,2=どちらかといえば満足 している,3=どちらともいえない,4=どち らかといえば不満である,5=不満である)

54 1 5 3.11 1.110

家計全体の年収

( 1=なし,2=50万円未満,3=50〜100万 円未満,4=100〜150万円未満,5=150〜 250万円未満,6=250〜350万円未満,7=

350〜450万円未満,8=450〜550万円未満,

9=550〜650万 円 未 満,10=650〜750万 円未満,11=750〜850万円未満,12=850

〜1000万円未満,13=1000〜1200万円未満,

14=1200〜1500万 円 未 満,15=1500万 円 以上,16=わからない)

54 2 16 8.72 3.621

第 11 表 介護移住者の同居と所得の記述統計量

(153) 153

(21)

全体の34.5%にものぼっており,このグループの低所得層固定化が懸念され る.生活満足度が低い者(「どちらかといえば不満」〜「不満」)が42.0%と高い のも,このグループの特徴である.

 同居と所得に関する変数名と定義,記述統計は,第 11 表にあらわした.

同居と所得に関する変数としては,「家族と同居」,「現在の住居の所有関係」,

「最終学歴」,「現在の就業形態」,「全体として現在の生活に対する満足度」,「生 活の程度」,「家計全体の年収」を選んだ.なぜなら,現在の住居が持ち家で ある者ほど介護移住可能な者であると,考えられるからである.また,最終 学歴や現在の就業形態は所得に関係し,満足度や生活の程度は所得に関する

25 20

15 10

5 0

家族の介護 のため移住  はい

家族の介護 のため移住  いいえ 1,000〜1,200万円未満

850〜1,000万円未満 750〜850万円未満 650〜750万円未満 550〜650万円未満 450〜550万円未満 350〜450万円未満 250〜350万円未満 150〜250万円未満 100〜150万円未満 50〜100万円未満 50万円未満 なし 1,200〜1,500万円未満1,500万円以上わからない 家計全体の年収

% 第 14 図 「家族の介護のため移住」と「家計全体の年収」の関係

50 45 35 40 30

25 20 15 10 5 0

家族の介護 のため移住  はい 家族の介護 のため移住  いいえ どちらともいえない

やや不満だ

満足している まあ満足している 不満だ

全体として現在の生活に対する満足度

第 13 図 「家族の介護のため移住」と「全体として現在の生活に関する満足度」の関係

(22)

介護者の移動要因に関する実証的考察(松井佐和)

主観的側面を,家計全体の年収は所得の客観的側面をあらわして,それぞれ 介護移住に影響を与えると考えられるからである.

 第 13 図は,介護移住の有無による「全体として現在の生活に対する満足度」

の割合を,第 14 図は,介護移住の有無による「家計全体の年収」の割合を クロス集計したものである.

 第11表の介護移住者の同居と所得に関する記述統計の平均値,及び第13 図から,所得の主観的側面である「生活に関する満足度」が,少し不満であ ることが分かる.

 また,第11表の介護移住者の家計全体年収の平均値は,第 12 表の全デー タの平均値よりも低く,相対的に低所得が予想される.しかし,第 13 表の 介護移住者の同居グループの記述統計の家計全体の平均値は,全データの平 均値に近いほど高い.これは最小値と最大値の値からも明らかなように,低 所得層と高所得層が混じっているためである.さらなる分析が必要である.

そこで,親と同居の未婚者23)の自身の年収についてみてみると,150万円未 満で全体の40%,250万円未満で60%,350万円未満では,なんと90%とい う結果となった.しかし,親と同居未婚者の家計全体年収では,150万円未 満は全体の10%,250万円未満は20%,350万円未満は40%にすぎず,同居 している子供の低所得を親がカバーしている様子がうかがえる.

 第14図からは,介護移住者の家計全体の年収が,350〜450万円未満の 層が多く,100万円未満の者も相対的に多い.金融広報中央委員会(2009)

によれば,年収300〜500万円の世帯の20.3%が,貯蓄を保有しておらず,

貯蓄面を加味しても,介護移住者が低所得であることが推測される.また,

2000年に実施された「第1回世帯内単身者に関する実態調査」24)では,18 歳以上の未婚親族が同居している世帯は,世帯員一人あたり平均所得で,全

23) 年齢性別内訳は,男性201名,男性304名,男性503名,女性301名,女性 401名である.

24) 全国の18歳以上の未婚親族が,同居する世帯とその本人を調査対象とする.したがって,

この調査は,該当世帯が,世帯主が50歳代に集中するという,ライフステージにおける偏り がある.

(155) 155

(23)

度 数 最小値 最大値 平均値 標準偏差 家計全体の年収(全データ) 8,890 1 16 9.49 3.451

第 12 表 全データの所得の記述統計量

度 数 最小値 最大値 平均値 標準偏差 最終学歴( 1=中学校・高等学校,2=短大・

高専・専門学校,3=大学・大学院) 20 1 3 2.15 0.933 性別(1=男性,2=女性) 20 1 2 1.45 0.510 年代( 1=20代,2=30代,3=40代,

   4=50代,5=60代,6=70代以上) 20 1 6 3.25 1.251 現在の住居の所有関係

( 1=持ち家一戸建て,2=持ち家マンション,

3=民間の賃貸住宅,4=公営・公団・公社 等の賃貸住宅,5=社宅・寮,6=その他)

20 1 3 1.45 0.826

(1=未婚,2=既婚,3=その他(離婚・死別))婚姻状況 20 1 3 1.60 0.681

全体として現在の生活に関する満足度

( 1=満足している,2=どちらかといえば満足 している,3=どちらともいえない,4=どち らかといえば不満である,5=不満である)

20 2 5 3.05 0.945

家計全体の年収

( 1=なし,2=50万円未満,3=50〜100万 円未満,4=100〜150万円未満,5=150〜 250万円未満,6=250〜350万円未満,7=

350〜450万円未満,8=450〜550万円未満,

9=550〜650万 円 未 満,10=650〜750万 円未満,11=750〜850万円未満,12=850

〜1000万円未満,13=1000〜1200万円未満,

14=1200〜1500万 円 未 満,15=1500万 円 以上,16=わからない)

20 3 16 9.25 3.477

第 13 表 介護移住者(同居)の所得の記述統計量

(24)

介護者の移動要因に関する実証的考察(松井佐和)

体平均25)よりも低くなっている.

 第 15 図は介護移住の有無による「現在の住居の所有関係」の割合を,第 16 図は介護移住の有無による「最終学歴」の割合をクロス集計したものである.

 住居の所有関係は,第15図より,持ち家一戸建てが多い.これは,親との 同居が多いことからきている可能性がある.2000年に実施された「第1回世 帯内単身者に関する実態調査」では,18歳以上の未婚親族が同居する世帯は,

持ち家一戸建てで76.1%であり,介護移住グループの本結果とも整合的であ る.低所得との関係においては,鈴木(2009)では,持ち家があると,無貯蓄

第 15 図 「家族の介護のため移住」と「現在の住居の所有関係」の関係

60

20 30 40 50

10 0

家族の介護 のため移住  はい

家族の介護 のため移住  いいえ 大学,大学院

中学校,高等学校 短大,高専,専門学校 最終学歴

% 70

20 30 40 50 60

10 0

家族の介護 のため移住  はい

家族の介護 のため移住  いいえ 持ち家一戸建て

持ち家マンション 民間の賃貸住宅

社宅・寮 その他 公営・公団・公社等の賃貸住宅 現在の住居の所有関係

60

20 30 40 50

10 0

家族の介護 のため移住  はい

家族の介護 のため移住  いいえ 大学,大学院

中学校,高等学校 短大,高専,専門学校 最終学歴

% 70

20 30 40 50 60

10 0

家族の介護 のため移住  はい

家族の介護 のため移住  いいえ 持ち家一戸建て

持ち家マンション 民間の賃貸住宅

社宅・寮 その他 公営・公団・公社等の賃貸住宅 現在の住居の所有関係

第 16 図 「家族の介護のため移住」と「最終学歴」の関係

25) 「平成12年国民生活基礎調査の概要」結果より算出された.

(157) 157

(25)

化しにくいことが,実証分析されている.しかし,第14図の家計全体年収が 100万円未満の世帯では,たとえ,持ち家があっても,低所得は深刻なもの であり,無貯蓄化につながりやすいものと考えられる.

 最終学歴は,第16図より,予想どおり,「中学校・高等学校」で多い.こ のことからは,低所得が予想される.しかし,より詳しく見るため,最終学 歴と所得等の関係について後述することとする.

 第 17 図は,介護移住の有無による「現在の就業形態」の割合をクロス集 計したものである.

 就業形態は,第17図より,「契約社員・嘱託社員」,「パート・アルバイト(フリー ターを含む)」,「無業(専業主婦・主夫を含む)」で多く,低所得が推測される.介護 移住者の同居グループの就業形態は,サンプル数が少ない点に留意しなければな らないが,介護移住者全体のグループと比較して,さらに「正規職員」の割合が 低くなり,「契約・嘱託社員」「自営業主」「無業」の割合が高くなっている26).  2005年の「第13回出生動向基本調査」27)では,未婚男性の親との同居率は,

40

25 30 35

20 15 10 5 0

家族の介護 のため移住  はい

家族の介護 のため移住  いいえ パート・アルバイト(フリーターを含む)

無業(専業主婦・主夫を含む)

学生 内職・在宅ワーク

(自営業の)家事の手伝い 自営業主 派遣社員 契約社員,嘱託社員 正規雇用の正社員・正職員 経営者・役員

現在の従業上の地位(または就業形態)

% 第 17 図 「家族の介護のため移住」と「現在の従業上の地位(または就業形態)」の関係

26) 介護移住者の同居グループにおける就業形態の具体的割合は,「正規職員」20%,「契約・嘱

託社員」「パートアルバイト」「自営業主」各15%,「無業」35%である.

27) 調査対象は,全国の18歳以上50歳未満のすべての独身者である.

(26)

介護者の移動要因に関する実証的考察(松井佐和)

「パート・アルバイト」,「自営・家族従業等」,「無職・家事」で高く(80%台), 未婚女性では,「無職・家事」,「パート・アルバイト」で相対的に高くなって いる.このことは,子供の低所得と同居が結び付きやすいことを示唆してい る.鈴木(2009)によれば,「自営業・商工・サービス業」も無貯蓄化しやす いことが実証分析されており,自営業もまた低所得と結び付きやすいことが,

指摘されている.このことから,介護移住者,とりわけ介護移住者の同居に おける低所得が推測される.しかし,これに関しても,最終学歴との関係で 見る必要があり,後節で述べることとする.

 これら同居と所得の項目については,離散変数のため,独立性の検定を実 施する.第 14 表は,同居と所得に関する独立性の検定の結果をあらわす.

第14表では,「家族と同居」,「最終学歴」については,Fisherの直接有意確 率を,その他は,Pearsonの漸近有意確率を表す.

 その結果,第14表より,1%水準で「家族と同居」,「最終学歴」で有意に,5%

水準で「現在の住居の所有関係(持ち家)」,「生活満足度(全体)」で有意となっ た.このことは,介護移住の有無が,家族と同居や特定の住居の所有関係,特 定の最終学歴,特定の生活満足度,に多いことを意味する.第15図からも明 らかなように,介護移住者は,同居・持ち家一戸建てが多いが,これは,先行

帰 無 仮 説 有意確率

「家族と同居」と,介護移住の有無の間に関連性はない 0.000 現在の住居の所有関係(持ち家)と,介護移住の有無の間に関連性はない28) 0.032 最終学歴と,介護移住の有無の間に関連性はない 0.010 現在の就業形態と,介護移住の有無の間に関連性はない29) 0.035 生活満足度(全体)と,介護移住の有無の間に関連性はない 0.044 家計全体年収と,介護移住の有無の間に関連性はない 0.144

第 14 表 介護移住者の同居と所得の独立性の検定の要約

注)+p<0.10, p<0.05, p<0.01, p<0.001.

28) 但し,公営・公団・公社等の賃貸住宅,社宅・寮及びその他をカテゴリー結合した値である.

29) 但し,期待度数が5未満のセルの占める割合が35%,最小期待度数が0.57なので,有意で

はない.

(159) 159

(27)

研究にもあるとおり,持ち家は同居と結び付きやすい変数であるためと推測さ れる.また,介護移住者は,最終学歴が,「中学校・高等学校」で多いが,こ れは,最終学歴「中学校・高等学校」では相対的に低所得が予想され,同居と 低所得が結び付いている可能性がある.さらに,第13図から,介護移住者は,

相対的に不満度が高いことが分かるが,これには介護負担感からきているもの も含まれると考える.「現在の就業形態」では,有意の値を出すことはできなかっ たが,第17図から,「契約社員,嘱託社員」,「パート・アルバイト(フリーター を含む)」,「無業(専業主婦・主夫を含む)」が相対的に多いことがわかる.正規職 員が少ないのは,介護移住から来る就労抑制の一端を表している可能性がある.

 しかし,「家計全体の年収」の違いによる介護移住の有無の差は,確認でき なかった.家計全体年収は,第14図から,相対的に低所得が多いが,1500 万円以上や750〜850万円の高所得層が相対的に多くなっているため,それ が影響して,有意の値がでなかったものと思われる.これに関しては,最終 学歴との関係を見る必要があるため,次節で述べることとする.しかし,第 14図より,家計全体年収が,100万円未満の者が相対的に多いのをはじめ,

第11表の家計全体年収の平均値が,第12表の全データの平均値よりも低い ので,介護移住者の方が,低所得であることが推測される.

3. 4 最終学歴と所得等の関係

 最終学歴は,独立性の検定で有意の結果がでたので,最終学歴のグループ 別に,どの項目で介護移住により差があるのか分析する.

 ここでは,介護移住者のサンプル数の関係及び岳(1995)より,最終学歴「短 大・高専・専門学校」と「大学・大学院」をデータ結合し30),最終学歴「中 学校・高等学校」のグループと比較することとする31).最終学歴と所得等に 関する変数名と定義,記述統計は,第 15 表,第 16 表にまとめた.第 18 図

30) 短大・高専以上の学歴をもつ者の割合で,教育水準の測定基準をみている.岳(1995)148頁.

31) サンプル数が少ないことには,注意が必要である.

(28)

介護者の移動要因に関する実証的考察(松井佐和)

度 数 最小値 最大値 平均値 標準偏差 性別(1=男性,2=女性) 28 1 2 1.39 0.497 年代( 1=20代,2=30代,3=40代,4=50代,

5=60代,6=70代以上) 28 1 6 3.21 1.315 婚姻状況( 1=未婚,2=既婚,3=その他(離

婚・死別) 28 1 3 1.82 0.670 全体として現在の生活に関する満足度

( 1=満足している,2=どちらかといえば満足 している,3=どちらともいえない,4=どち らかといえば不満である,5=不満である)

28 1 5 3.21 1.258

家計全体の年収

( 1=なし,2=50万円未満,3=50〜100万 円未満,4=100〜150万円未満,5=150〜 250万円未満,6=250〜350万円未満,7=

350〜450万円未満,8=450〜550万円未満,

9=550〜650万 円 未 満,10=650〜750万 円未満,11=750〜850万円未満,12=850

〜1000万円未満,13=1000〜1200万円未満,

14=1200〜1500万 円 未 満,15=1500万 円 以上,16=わからない)

28 2 16 7.64 3.561

第 15 表 介護移住者の最終学歴(中学校・高等学校)と所得等の記述統計量

度 数 最小値 最大値 平均値 標準偏差 性別(1=男性,2=女性) 26 1 2 1.50 0.510 年代( 1=20代,2=30代,3=40代,4=50代,

5=60代,6=70代以上) 26 1 6 3.38 1.203 婚姻状況( 1=未婚,2=既婚,3=その他(離

婚・死別) 26 1 3 1.73 0.533 全体として現在の生活に関する満足度

( 1=満足している,2=どちらかといえば満足 している,3=どちらともいえない,4=どち らかといえば不満である,5=不満である)

26 1 5 3.00 0.938

家計全体の年収

( 1=なし,2=50万円未満,3=50〜100万 円未満,4=100〜150万円未満,5=150〜 250万円未満,6=250〜350万円未満,7=

350〜450万円未満,8=450〜550万円未満,

9=550〜650万 円 未 満,10=650〜750万 円未満,11=750〜850万円未満,12=850

〜1000万円未満,13=1000〜1200万円未満,

14=1200〜1500万 円 未 満,15=1500万 円 以上,16=わからない)

26 4 16 9.88 3.374

第 16 表 介護移住者の最終学歴(専門学校〜大学院)と所得等の記述統計量

(161) 161

(29)

63巻 第1

は,介護移住者のうち,最終学歴「中学校・高等学校」の者における「全体 として現在の生活に対する満足度」の割合を,第 19 図は,介護移住者のうち,

最終学歴「短大・高専・専門学校」〜「大学・大学院」の者における「全体 として現在の生活に対する満足度」の割合をクロス集計したものである.

 生活満足度全体については,第18図・第19図より,両方の最終学歴グルー プとも,介護移住しない者と比べて,相対的に不満度が高い.しかし,第18 図より,最終学歴「中学校・高等学校」では,低所得からくる不満も加わっ てか「やや不満」〜「不満」も多いが,同じ学歴の中でも,介護移住しない 者と比べて,「満足している」も相対的に多い.これは,同居等により,親か らの援助があるためかもしれない.さらなる分析が必要である.

第 18 図  「家族の介護のため移住」と「全体として現在の生活に関する満足度」(最終 学歴「中学校・高等学校」)の関係

60 50

40 30

20 10

0

家族の介護 のため移住  はい 家族の介護 のため移住  いいえ どちらともいえない

まあ満足している 満足している やや不満だ 不満だ 生活に関する満足度

% 45 40

25 30 35

20 15 10 5 0

家族の介護 のため移住  はい 家族の介護 のため移住  いいえ どちらともいえない

まあ満足している 満足している やや不満だ 不満だ 生活に関する満足度

60 50

40 30

20 10

0

家族の介護 のため移住  はい 家族の介護 のため移住  いいえ どちらともいえない

まあ満足している 満足している やや不満だ 不満だ 生活に関する満足度

% 45 40

25 30 35

20 15 10 5 0

家族の介護 のため移住  はい 家族の介護 のため移住  いいえ どちらともいえない

まあ満足している 満足している やや不満だ 不満だ

第 19 図  「家族の介護のため移住」と「全体として現在の生活に関する満足度」(最終 学歴「短大・高専・専門学校」〜「大学・大学院」)の関係

162 (162)

参照

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