39
〔論文〕
日本企業の予算管理(Ⅲ)
一実態調査と問題点一
佐藤康男
はじめに
(1)日本企業の予算管理に関する実態調査 (2)アンケート調査の基本的内容
1.アンケート調査の方法 2.事業組織の内容 (3)日本企業の総合予算
1.予算体系と編成方法
(以上,第32巻第1号に掲戦)
2.予算報告
3.事業部別鬼と事業部別%
4.社内資本金制度 5.社内金利制度
(以上,第32巻第2号に掲載)
6.本社費の内容と配賦実態 7.その他
8.業紙評価システム おわりに
〈付録〉
アンケート回答企業一覧表
(以上,本号に掲載)
し、長い不況のなかで,リストラと呼ばれる経費削 減を実行してきた。このような大規模なコスト削 減はこれまでなかったので,いわゆる日本的経営 の崩壊などと呼ばれている。これまでも不況が押 し寄せてきたことはあったが,人員整理がこれほ ど広範囲に行われたことはなかった。
不況の期間が今回のように長くなったという事 情もあったが,人員整理というドラマチックな治 療法で会社内部に危機感を生み出し,活性化をも たらそうとしたのである。他方では,新規従業員 の採用減と自然退職によって調整を行い,景気の 回復をじっと待つという方法もとられてきたので ある。
また,日本企業は中高年層の早期退職や関連会 社への出向をかなり厳しく実行しながらも,新卒 者の採用も行う-人数は削減しているが-
という一見矛盾した政策もとっている。メーカー の場合,このような政策は技術の継承という名目 でなされているが,人件費の削減が目的となって いることも明白である。このような政策は,経済 発展の右上り傾向が期待できない今後,ますます 顕著になってゆくであろう。バブル期に大量採用
したつけが回ってくるからである。
さて,現在リストラという名目のもとで行われ ている経費削減の対象となっているのは企業のど の領域であろうかc円高による生産拠点の海外移 転によって,工場労働者が国内の他の工場に移住 できない場合,早期退職を余儀なくされるので,
結果として人件費の削減になっている。もちろん,
特定部門の生産中止あるいは生産の縮少によって,
工場の余剰労働者が指名解雇されたり,出向させ られたりするケースもある。
しかし,リストラという名目でもっとも厳しい 対象となっているのは本社部門のホワイトカラー であろう。それゆえに,現在は卿ホワイトカラー 6.本社費の内容と配賦実態
本社費の内容
1990年から91年にかけてのバブル崩壊後,日本 企業は現在でも長い不況のトンネルを脱け出せな いでいる。本稿の第1部を執筆していた昨年末頃 には,95年3月期に日本企業は本格的な景気の上 向きを示すような決算内容を示すだろうというよ うな新聞報道がまことしやかになされていた。
しかし,その後の急激な円高によって,そのよ うな期待は無残にも打ちひしがれ,半灘体などの 一部産業を除いては将来の展望もないのが現状で ある。それに加えて,不良債権,株式市場の低迷 なども先行不安の材料となっている。
日本企業はこのようなかって経験したことのな
40
受難の時代"と呼ばれているが,その内容はさま ざまであるが,その特徴をあげるならば,つぎの ようになる。
まず,ここでいう噸ホワイトカラー"とは二つ の意味で使用される。当初,この用語が使用さ れた頃は,いわゆる工場労働者を指す蝋ブルーカ ラー"と対置するものであった。したがって,本 社の管理部門などで働く大卒の人間が典型的な対 象であった。しかし,その後情報産業などの発展 にともなって,工場労働者はもはやブルーカラー ではなく高学歴の知識労働者となり,従来の区分 はなくなった。
現在,ホワイトカラーという場合,管理者を意 味することが多くなっている。しかも,その場合い 技術系の管理者よりも文系,社会系の人達を指す ことが多い。したがって,ホワイトカラーの生産
`性の低さなどが問題とされるときは,本社の管理 部門が対象となっている。総務部,経理部,財務 部などが典型的である。
たとえば,経理部門や総務部門のリストラとい う場合,人員削減がひとつの手段となる。中小企 業ならば,その仕事を外部に委託し,極端な場合 には経理部や総務部がなくてもよい。また,大企 業でも,法律・訴訟業務や備品管理,伝票整理な どをアウトソーシングすれば人員の削減は可能と なる(1)。
しかし,日本企業の規模が拡大し,グローバル 化してくると経理・財務部門などの仕事内容も拡 大し,より専門化してくる。たとえば,転換社債・
ワラント債などのエクィテイ・ファイナンスによ る資金調達などは80年代に生じたものであり,そ れに相応した専門的知識が必要となる。
また,現在では多くの企業が反省しているが,
バブルの時代には特金およびファントラ,あるい は財テクによって本業を上回るような利益をあげ ていた企業も多かったので,経理・財務部門の会 社における重要性も増大した。
それに加えて,企業のグローバル化は国際税務 会計,連結財務諸表,移転価格,ダンピングなど に対応する専門的知識の必要性を生み出している。
したがって,単なる人員削減だけでは,将来の戦 略を実行できない面が出てきているのである(2)。
最近,ホワイトカラーの人事管理制度として注
目を浴びているものに「目標管理制」というもの がある。この制度自体は目新しいものではなく,
工場や営業部門などでは比較的なじみのある方法 である。しかし,この制度をホワイトカラーに導 入しようというのである。
たとえば,富士通では1993年4月から導入した が,その内容はつぎのように報道された。「新た に導入する目標管理評価制度は4月から課長以上 の管理職約6千人を対象に実施する。年度初めの 4月までに各社員が直属の上司と相談しながら年 間の仕事の目標を3-6項目程度設定。9月の中 間面接による軌道修正を経て翌年3月に上司と面 談,成果について本人の自己評価と上司の評価と を突き合わせる。
評価はほかの社員との比較ではなく,目標の達 成度に応じて4段階の絶対評価とする。本人と上 司の評価が食い違って調整がつかない場合は,営 業,通信機器など八つの部門に分けて設ける評価 委員会で調停する」(日本経済新聞,1993年2月 6日付)
また,富士通の同業社であるNECも90年11月 から部長以下の社員に対して目標管理を実施して いたが,93年からそれを部長以下と役員の間の管 理者層にも拡大した。
「NECは事業部長待遇以上の経営幹部1,200 人に目標管理制度を導入する。半期に一度,向こ う半年間の定逓的な目標を担当役員に提出させ,
期末にその成果を本人と役員がチェックし,好成 績の場合はボーナスに加算する。部長以下の社員 にすでに同様の制度を実施しており,その管理者 である経営幹部自身にも目標管理を課すことで,
公平を期す。事業部長クラス対象の目標管理制度 は産業界でも珍しい。
新たに対象となるのは,ラインの事業部長と事 業部長代理,専任職の統括部長ら。全員が「業績 レビューシート」に半年ごとの業務目標を記入し,
担当役員に提出。役員は提出者の能力などから目 標が妥当かどうかをチェックし,必要があれば目 標を修正する。半年後,本人と上司が目標の達成 度を相互に評価する仕組み」(日本経済新聞,1993 年10月13日付)
このように本社費の大部分を占める管理部門の 人件費が削減の対象となっており,それは管理部
41
〈かによって異なるので,厳密には企業によって さまざまである。しかし,その企業の業種と規模 が同じであるならば,セクションの名称こそ違う が,その基本的な内容は同じであると考えてよい。
いま,メーカーの場合をとりあげると,本社費は つぎの三つに区分できる。
(1)どの企業にも共通する会社全体の管理部門 費;
人事部・総務部・広報部・勤労部・経理部・
財務部・企画部・特許部・社長室・監査室な どで発生する費用
(2)それぞれの事業部の業務を行っているが,
効率という点から本社で一括している部門費;
資材部・生産技術部・商品検査本部・国際調 達(推進)部・海外事業本部・業務部・物流 本部などで発生する費用
(3)それぞれの事業部に対して技術やサービス などを提供する部門費;
情報システム部・中央研究所・開発本部・宣 伝広告部などで発生する費用
これらの費用は財務会計の表示では「販売費&
一般管理費」と呼ばれているが,研究開発費など はその内容が基礎研究か応用研究かによって売上 原価に算入すべきかどうかの議論もあり,複雑で ある。もちろん,(2)のような費用は.それぞ れの事業部が受けるサービスの比率によって配賦 きれることになるが,(1)と(3)の費用は受 益者負担の原則だけでは業績評価がむずかしい面
もある。
門の肥大化という問題もあるが,なによりもわが 国のホワイトカラーの生産性の低さが問題視され,
見直されつつあるといえよう。
事業部制を採用している企業で,本社費を事業 部にどのように配賦するかという問題はかなり重 要である。すでに前稿でみてきたように,事業部 別%とFLは事業部(長)の業績評価のベースと なるものである。本社費の配賦は当然に事業部の 兇に関連し,利益にも関連してくることになる。
したがって,当該事業部は本社費の配賦方法に重 大な関心をもつことになる。
その理由の第1は,本社費はもともと事業部 (長)の権限の範囲外にあり,管理不能費である のに配賦きれるという不満がある。第2は,しば しば配賦方法は本社側の恐意によってなされ,事 業部側の意向が尊重されない傾向があり,事業部 業繊がゆがめられることがあるので,やはり不満 がくすぶっている。
これらの理由は,原価計算における製造間接費 の配賦とちょうど似たケースである。ある製品の 市場競争力を高めようと,その製品の設計および 雄産担当者はいろいろな角度から,コストダウン に結びつくような努力をする。たとえば,原材料 の歩留率をあげたり,工数を削減したりする。し かし,原価計算担当者から示される製品原価は以 前とほとんど変わらないときがある。そして,そ の原因が製造間接費の配賦にあるような場合,技 術者は経理部門の原価計算方法に疑念をもつよう になり,そのような配賦方法を信頼しないばかり でなく,コストダウンの意欲も失いがちになる。
今日の大企業は事業部制を採用しているで,本 社費とは製造費用あるいは工場費用と対置させら れるだけでなく,事業部個別費とも対称的となっ ている。典型的な事業部制のもとでは,事業部個 別費は事業部製造費用と事業部販売費&一般管理 費に区分される。したがって,本社費はこれら以 外の費用を指すのであるから,広い意味では事業 部共通費用といってもよい。もちろん,中小規模 の企業では事業部制を採用しているといっても,
販売部門は全社一本になっているケースが多いの で,その場合には事業部個別費は工場費用だけで ある。
本社費の内容は本社部門にどのような組織を糧
本社費の配賦
さて,このような内容をもつ「本社費」に関す る質問は,問27から問30までであるが,その結果 を示すことにしよう。なお,質問内容は前稿一 第32巻第2号一の最後に掲げられているので それを参照されたい。問27は本社費を事業部に配 賦しているかどうかについて質問したが,結果は つぎのようになっている。もちろん,ここでの回 答企業は事業部制を採用している。
l配賦していない18社(13.1%)
2配賦している116社(84.7%)
3その他3社(2.2%)
137社(100.0%)
42
ここでの「その他」は無回答の企業であるが,
本社費を事業部に配賦している企業が85%に近い という数字は,当初の予測をかなり上回るもので ある。この数値と比較できるものとしては西澤の 調査がある(3lb
これは昭和63年に第1部・第2部上場会社の上 位200社に対してアンケート調査を実施し,その うちの回答企業数122社についてまとめたもので ある。それによると,本社費を現場部門に配賦し ている企業が75%,していない企業が25%となっ ている。ここでの質問は「業績評価のため本社費 を現場部門に配賦している」か,していないかと なっている。したがって,事業部制を採用してい ない企業-この調査では回答企業の45%-
も含んでいるので,今回の調査とはいくぶん内容 が異なる。しかし,調査年度のタイムラグを考慮 すると,ほぼ妥当な数値ではないかと考えられる。
もちろん,ここでいう現場部門とは事業部以外に,
工場あるいは部門などを指している。
問28では本社費を事業部に配賦していない企業 に対して,その理由を尋ねている。配賦していな い企業は18社であったが,その理由一前稿の 質問調査票を参照のこと-は表(15)のよう になっている。これをみるとわかるように,本社 費は事業部長の管理不能費なので業績評価に含め るのは混乱するので,配賦しなさいというのが10 社でもっとも多くなっている。
ある。
一方,企業のトップからすれば,本社費を事業 部に配賦してこそ会社全体の費用を回収できるの であり,事業部の価格決定には本社費を考慮しな ければならないと考えているので,配賦には肯定 的となる。
しかし,問27の結果からもわかるように,事業 部制を採用しているわが国の企業の大部分が本社 費を事業部に配賦しているという現状をみれば,
問題点があるとはいえ本社費を含めた事業部の業 績評価にメリットを見い出していると考えられる。
なお,表(15)の「その他」は本社費を配賦して はいないが,事業部に対して本社費の負担額に相 当する参考数字を提示しているというものであり,
2社がそれで行っている。
問29は本社費を事業部に配賦するさいの基準に ついての質問である。これはもちろん,複数回答 する企業が多いので,配賦している企業137社を 上回っている。
表00本社費の配賦基準
*回答なしが15社 表㈹本社費を配賦しない理由
本社費を事業部に配賦するための基準は,おお まかに区分して負担能力主義と受益者主義の二つ になる。前者は売上高や利益などであり,後者は 従業員数や人件費-これは一概にいえないが-
などである。本来,配賦基準は負担能力主義にも とづいて行うのが原則であるが,それだけでは事 業部間に不公平感が生じるので,日本企業はこれ
ら二つの基準で行っている場合が多い。
ここで掲げた五つの基準のほかに,どのような 基準が採11]されているのかを明らかにするために,
「その他」の内容を示すことにする。ここで具体 的に記入された基準は,生産高・一般管理費・総 資産・固定資産・受注高などであるが,固定資産 は8社で使用されている。また,用役基準を用い 本社費を事業部に配賦するメリットおよびデメ
リットについては,すでに述べたようにいろいろ 考えられる。事業部からすれば,本社費を配賦き れるのはデメリットのほうが多い。すでに述べた 管理不能費であるという点と,本社費のコスト
ダウンはなされているのかという疑問である。事 業部ではコストの削減に努力しているのに,盗意 的な基準で配賦きれてはたまらないという考えが
企業数 比率
1 68 (34.9%)
2 10 (5 1)
3 56 (28 7)
4 20 (10 3)
5 10 (5 1)
6 31 (15 9)
計 195 (100 0%)
企業数
1 1 (5.6リh)
2 10 (55 5)
3 4 (22 2)
4 1 (5 6)
5 2 (11 1)
計 18 (100 0%)
43
ている企業もかなり多いが,その内容はさまざま である。「その他」の項目で具体的に記入された
ものを以下に列挙しよう。
・給与格差を平準化したポイント従業員数
.できるだけ用役基準を使う
・総管理費を人員比,設備比,売上高比の三つ に分割する
・本社費をコーポレートと専門職に分け,専門 職(人事,総務,財務,システム等)の経費 は人員比で行う
・営業部門へは従業員数,生産部門へは生産高
・各事業部の売上原価プラス販売費の比率
・情報システムの費用は処理件数
・社内資本金の比例按分
・利益で50%,帰属割合で50%
・総資産比で%,発生原価比で%,人員比で%
・粗付加価値(労務費十租税公課等十利益)比 で行う
・各事業部の総資産の比率
・社内で一定の公式を考案している
.一部分は各事業部のスペース比で配賦して いる
表(16)からもわかるように,売上高と従業員 数がもっとも多く使用されている。そして,売上 高だけによって本社澱を配賦している企業が28社 もあり,従業員数でも9社ある。もちろん,複数 基準で配賦している企業のほうが多いが,その場 合(1)と(3)の組み合わせがもっとも多く,
つぎに(1),(3),(4)となっている。投下資 本を考慮するということは,やはり資産効率を事 業部の業績評llliに反映させるということであろう。
問30は本社iMiのうち,研究開発費をどのような 基準で事業部に配賦するかを尋ねたものである。
すでに述べたように,企業がもっている中央研究 所や開発本部の費用は金額が大きいので,本社費 のかなりの部分を占める。
もちろん,このような研究開発費も原則的には 受益者負担によって配賦きれるべきである。しか し,これらのMII用は複合費であり,それぞれの事 業部と直接に関連づけることはむずかしい場合が 多い。
一般に,研究開発費は基礎研究と応用研究に区 分される。前者は現在の製品ラインとは関連がな
〈,将来の新技術開発に結びつくものである。そ れに対して,後者は既存製品の改良や中期計画の 新製品開発と関連しているので,当該事業部の売 上高に結びつけることが可能である。
しかし,研究開発費の配賦もやはり,負担能力 主義も採用されている。問30の結果をまとめると,
表(17)のようになる。
表(1力研究開発費の配賦
*回答なしが19社
これからわかるように,売上高で研究開発の帰 属割合の二つが多い。これらは負担能力主義と受 益者負担の代表的な指標にほかならない。
しかし,アンケート結果の内容をいくぶん詳し く分析すると,研究開発の帰属割合一つまり,
どの事業部の成果になるか-だけで配賦する という回答がもっとも多く,ついで前問の本社費 と同じ方法で行うと回答している。なお,売上高 のみによって配賦している企業が5社ある。アン ケートの「その他」に回答し,具体的に記入され たものを以下に列挙しよう。
.できるだけ111役基準で行う
・本部負担研究費は事業部に配賦していない
・各事業部の総資産の比率
・売上高比で%,従業員数比で%,帰属割合比 で%
・基礎研究費は利益比で配賦する
・製品販売数量
・研究開発費は事業部には配賦しないで,技術 本部で一括して管理
・支出比割合
ここで本社費配賦のひとつの実例を掲げること にしよう('1.金児によると,本社費は販売間接費 と一般管理費の二つに区分され,前者は事業部で 発生する人件費,活動経費なので事業部に直課す る。そして,後者は本社の人事部,総務部,経理
企業数 比率
1 28 (20.0%)
2 1 (0 7)
3 20 (14 3)
4 18 (12 9)
’0 56 (40 0)
6 17 (12 1)
計 140 (100 0%)
44
新規事業の立ち上がりを支援するために助成金 を与えるかどうかは,前述したように事業部の事 業評価を厳密に行うかどうかがベースとなってい る。したがって,支援しているという企業は業績 評価を秋極的に導入している企業といえるだろう。
今回の調査ではおよそ68%の企業は支援してい ないと回答しているが,これらの企業すべてが業 績評価を厳密に行っていないということはできな い。一般に,新規事業の立ち上がりへの援助はメー カーで典型的にみられるものである。したがって,
今回の調査対象となった水産・鉱業,建設業,商社,
陸運.海運などおよそ35社のうち,事業部制を採 用している企業にとっては,このようなアンケー ト項目には当初から無縁であるといってもよい。
それでは,このような助成金は予算編成におい てどのようになされるのであろうか。(株)ニコ ンの例を紹介しよう。この会社の事業部ELは図
(2)のようになっている(5)。これからわかるよ うに,「新規事業助成金」は予算編成の段階で事 業部の収入として計上される。
図(2)ニコンの事業部,L 部,購買部,研究開発部などの費用であり,事業
部長が直接コントロールできない費用なので,い くつかの基準によって事業部や製品に配賦される が,計算方法が簡単で,公平感があるのが重要で あるという。
そして,一般管理費の配賦基準の主な例として 掲げられているので,ここでもそれを示してお
こう。
・コンピュータ関連費用;コンピュータの使用 時間
・事務所賃借料;面積
・技術部費;修繕費
・人事部費,福利厚生費,生命保険料;人員
・特許部費;特許直接費
・総務部費,経理部費,研究開発費;売上高
・固定資産税,火災保険料;資産
ここでも負担能力主義と受益者負担の二つの指 標が採用されているが,原則はもちろん後者であ る。しかし,その企業の事業部制の,性格によって 本社費の配賦も異なってくるであろう。
7その他
問31は新規事業部に助成金のような名目で援助 しているかどうかを質問したものである。これは 事業部の業紙評価とも関連しているが,もし,事 業部長あるいは事業部に所属する一定の管理者が 業績評価によって昇進やボーナスなどに影響があ る場合,業績評価は公平になされなければなら ない。
たとえば,売上高や利益などが評価基準となる ならば,成熟製品をもつ事業部が有利となり,開 発製品や新製品などをもつ事業部は不利となる。
このような不公平をなくすために,会社によって 新規事業部が立ち上がるために一定の助成金を行 う。しかし.これも業績評価に困難な問題をもち 込むことになる。つまり,助成することは問題な いにしても,どれだけの金額を,どのくらいの期 間助成するのかということになる。問31の結果を つぎに示してあるが,この施策をとっている企業 はあまり多くない。
l支援している44(32.1%)
2支援していない93(67.9%)
⑧本部納入賓
⑭税金負担締
ニコンがこのような制度を導入したのは,これ までも述べてきたように,研究開発本部などで事 業化の可能性をもつ成果を得たとしても,当初は 計137(100.0%)
①売上高
②売上原価
③=①-② (売上総利益)
④事業部営業費
⑤開発研究費
⑥共通営業費
⑦=③-①-⑤一⑥ (本部費納入前利益)
③本部納入費
⑨=⑦一③ (営業利益)
⑩営業外損益
⑪社内金利
⑫新規事業助成金
⑬=⑨+⑩-⑪-⑫ (事業部利益)
⑭税金負担額
⑮=⑬-⑭ (留保利益)
45
採算の面から事業部が積極的にそれらを引き受け にくい状況にある。そこでニコンでは,本部が調 整役となって当面の赤字を補てんし,新規事業の 芽をつまないようにしているという。
本部が負担するこうした助成金は,それぞれの 事業部が負担する本部納入費,社内金利,税金負 担額などから支出することになるので-もち ろん,実際に事業部に支払うわけではなく,あく までも計算上-,これらの助成金は事業部全 体で負担していることになる。
問32は事業部間の振替価格の設定基準に関する ものである。この項目は今回のテーマである予算 編成には直接の関連はないが,企業の管理会計の 実態を知るうえでは重要なので質問項目に加えた ものである。この結果を示したものが表(18)で あるが,事業部制を採用しているにもかかわらず,
回答のない企業が7社あった。
%とかなり多いが,業績評価という観点からすれ ば,これがもっともすぐれていることは周知の通 りである。ただ,この基準が採用可能な条件は,
同種の製品および部品が市場に存在することであ る。また,「その他」では市価マイナス販売費,
社内統一価格などがあげられており,複数基準を 用いている企業もかなり多い。
ここでの結果を他の調査と比較してみよう。
1980年に実施した谷武幸の調査では事業部制を 採用している企業で,事業部間の振替価の設定基 準はつぎのようになっている171。
原価基準39社(35.596)
原価プラス基準23社(20.9%)
市価基準40社(36.4%)
交渉価格8社(7.2%)
計110社(100.1%)
これをみると,市価基準の比率以外はあまり大 差はない。谷の調査では市価マイナス基準を市価 基準に含めているが,ここでの調査ではそれを明 示していないので「その他」の項目に3社一 市価マイナス販売費一入っているので,全体 的にはほぼ同じ結果となっているといえよう。
問33は事業部の予算編成のさい,どのような指 標を重要視するかを質問したものである。これは
「企業の目標」についての論議と同じようにみえ るが,ときどき報道される経済同友会や経団連な どのアンケート調査の結果とは本質的に異なって いる。企業目標についてのトップの回答は,とき には社会的責任とか顧客の満足,人類への貢献と いうような抽象的なものが含まれる。
しかし,ここでの回答者は予算編成に直接たず さわっている担当者であり,内容は具体的なもの である。その結果をまとめたものが表(19)である。
表(19リ事業部予算の目標 表00事業部間の振替価格基準
4【
*回答なしが7社
もちろん,事業部制を採用していなくても,部 門間,あるいは工場と部門間で振替価格は使用さ れる。しかし,ここでは事業部制をとっている企 業に限定しており,企業数と回答数が異なるのは 複数回答があったからである。
表(18)からわかるように,原価基準の採用が もっとも多いが,原価プラス基準と市価基準はあ まり大差ない。ところで,事業部制を採用してい る日本企業で内部振替制度を採用している企業は どのくらいあるだろうか。今回の調査結果からみ ると,事業部制を採用している企業が137社であ り,回答なしが7社,事業部間取引なしと回答し た企業が2社であるから,およそ94%の企業で内 部振替制度が採用されていることになる(6)。とく に事業部制を採用しているメーカーに限定すれば,
ほとんど100%近くになるであろう。
ここでの結果からは市価基準の採用がおよそ27
=睾鴎
牢而■
--F”■
 ̄■■■■■■ ̄
企業数 比率
、1 53 (35.6%)
2 34 (22 8)
3 40 (26 8)
4 17 (11 4)
5 5 (3 4)
計 149 (100 0%)
企業数 比率
1 66 (23.7%)
2 124 (44 4)
3 8 (2 9)
4 16 (5 7)
5 27 (9 7)
6 31 (11 1)
7 6 (2 2)
8 1 (0 3)
計 279 (100 0%)
46
この結果をみると,事業部の予算編成でもっと も重視するのは,利益が断トツで1位であり,つ いで売上高となっており,これら二つの合体指標 である(売上高・資本)利益率が3位となってい る。もちろん,複数回答であるので,企業によっ て選択される基準は異なる。しかし,利益をもっ とも重視するという企業マインドは,現在,日本 経済がおかれている状況と企業経営の苦しい状況
を表わしているといえよう。
問19から問33までは事業部制を採用している企 業のみを対象としていたが,以下は事業部制を採 用していない企業も含まれる。問34も予算編成と は直接の関連はないが,管理会計では重要な関心 事であるのでアンケート調査の項目に含めたもの である。投資決定モデルあるいは設備投資の経済 J性判定モデルは,管理会計のテキストなどで説明 されている方法そのものではなく,いくぶん企業 によってアレンジされている。しかし,基本的な モデルは明確に識別できるので,ここでも一般に テキストで述べられているモデルを掲げている。
表(20採用されている投資決定モデル
英国日本 会計的投資利益率法(11.4%)(24.9%)
回収期間法(41.7%)(51.4%)
現在価値法(18.9%)(9.6%)
現在価値指数法(2.3%)(0.0%)
内部利益率法(24.2%)(9.0%)
その他(1.5%)(5.1%)
計(100.0%)(100.0%)
なお,吉川の調査はイギリス,日本とも1989年 に実施されたものである-吉川の調査対象企 業と箪者のそれとの比較については,このテーマ についての論文(1)と(Ⅲ)を参照されたい-
これらの結果をみると,それぞれのモデルの採 用比率の数値は異なっているが,しかし,イギリ スと日本とを比較するとかなり違っている。回収 期間法がもっとも多く採用されているのはイギリ スでも同じであるが,イギリスでは内部利益率法 と現在価値法がかなり使用されている。
周知のように,内部利益率法とは投資対象から 得られる予想利益率と,社内の資本コストあるい は内部利子率とを比較する方法であるが,日本で は資本コストの変動が激しく,かつその計算が複 雑なのであまり使用されていないようである。
問35は販売費の分類について尋ねたものである が,これは販売費の管理をどのように行っている かをみるものである。一般に,販売費は費目別計 算されるので,それによって損益計算書に表示さ れる。しかし,ある製品の単位当たり販売費をど のように計算するかという問題は,原価計算のテ キストでは扱われていない。したがって,製造 (品)原価に販売費および一般管理費を加えたも のが総原価であり,それに利益をプラスして売価 を決定するといういわゆるマーク・アップ方式の 説明がなされるが,それは製品別販売費の把握が 前提になっているにもかかわらず,それについて は触れていない。
販売費の管理が今日とくに重要となっているの は,流通業界の生産性の低さにともなう物流費の 増大である。製造原価のコストダウンはもはや限 界に近いところまで進んでいるにもかかわらず,
販売費および一般管理費は長い間コストダウンの 対象とならない、聖域"であった。それが前述し たようにホワイトカラーの削減として注目を浴び
*回答なしが15社
今回のアンケート調査の有効回答企業数は176 社であり,問34では回答なしの企業が15社となっ ているので,少なくとも35社の企業が複数回答し ていることになる。当初から予測されたように,
回収期間法が47%と1位になっているが,その比 率は期待されたよりもかなり低くなっている。第 2位は会計的投資利益率法の34%となっており,
現在価値法と内部利益率法はともにあまり使用さ れていない。
吉川のイギリスと日本の調査結果と比較してみ よう。吉川の質問項目には現在価値指数法が含ま れているが,その結果はつぎのようになってい る(8)。
企業数
1 67 (34.2%)
2 92 (46 9)
3 14 (7 1)
4 15 (7 7)
5 8 (4 1)
計 196 (100 0%)
47
てきている。それに加えて,販売費をどのように 管理するのかも現実の企業にとって重要性が増し ている。
販売費の管理は,販売費をどのように分類して いるかを知ることによって,その状況がわかる。
つまり,単位当たり販売費をどの程度把握してい るかが問題である。問39の結果の結果を示したも のが表(21)であるが,もちろん複数回答となっ ている。
表(21)販売費の分類
欧米の財務諸表でも費目別に表示されるのである から,当然にそれはなされているはずである。こ のような結果になったのは質問で「販売費を管理 する目的から」となっているので,イギリスの回 答者はとくにそれに注意を払い,管理会計的な観 点からの分類を挙げたのかもしれない。
製品別分類を行っている企業がかなり多いが,
それをどのような計算方法で求めているかに興味 がある。日本企業で行われているもっとも一般的 な方法はつぎの二つであろう。第1の方法はそれ ぞれの製品の製造原価をベースとする方法である。
たとえば,3種類の製品A,B,Cのそれぞれの 製造原価が2万円,3万円,5万円であり,販売 (予定)量が2000個,1000個,600個で販売費の合 計額が3000万円と仮定すると,単位当たり販売費 の計算はつぎのようになる。
それぞれの総製造原価を求めると A;2万円×2,000=4.000万円 B;3万円×1,000=3,000万円 C;5万円×600=3,000万円
となるから,合計額は1億円となる。そして,こ れらの構成比は40%,30%,30%となるから,こ の比率で販売費を負担することになる。たとえば,
製品Aは1200万円(=3,000万円×0.4)となるか ら,単位当たり販売費は6千円となる。
もうひとつの方法は,製造原価ではなく販売価 格(定価)をベースとして上と同じような方法で 単位当たり販売価格を求めるものである。これら 二つの方法はいずれも製造原価あるいは販売価格 の高い製品が販売費を多く負担するという考えに もとづいている。その点では負担能力主義に依っ ているといえる。
しかし,単位当たり販売費も本来ならば,受益 者負担一用役提供ベースーの原則によって 計算されることが望ましい。そのためには販売組 織が製品別ある製品群別に形成されていれば,か なり正確に単位当たり販売費を計算することが可 能である。しかし,一般にはひとつの販売部門で 多種類の製品を扱っている場合が多い。
このようなとき,原価計算のテキストではみら れないひとつの方法を提案しよう。これは筆者が 企業で営業経理を担当していたときに考案したも のである。
*回答なしが2社
最初から予測されたことであるが費目別分類が もっとも多い。しかし,調査対象企業の有効回答 数は176社であったので,23社は販売費の費目別 分類は行っていないことになる。前述したように
販売費および一般管理費は公表財務諸表(殆)
では費目別分類で示される。したがって,費目別 分類はすべての企業で行われているはずであり,
こうした結果をみると回答者に誤解があったと考 えられる。つまり,費目別分類という意味が理解 できなかったと思われる。例示すべきだったと思 うが,アンケート調査のむずかしさがこれでもわ かる。
ここで吉川の調査と比較してみる(9)。そこでも 日本企業では費目別分類が1位で45.1%-こ こでも前述したような問題点がみられる-
つぎに製品別で21.8%,販売地域別が15.1%となっ ており,比率こそ異なるが筆者の調査と同じ結果 を示している。
また,イギリス企業では販売地域別分類が1位 で30.8%,ついで製品別が29.7%,顧客別が13.2
%,流通チャネル別が121%となっており,かな り日本企業とは異なっている。
とくに目立つのは費目別分類がイギリス企業で はほとんどなされていないことである。しかし,
企業数 比率
1 76 (27.1%)
2 151 (53 9)
3 10 (3 6)
4 33 (11 8)
5 7 (2 5)
6 3 (1 1)
計 280 (100 0%)
48
一般に,営業部員は自分の1日の営業活動を上 司に報告することになっている。その日の朝に予 定を提出する場合もあるし,帰社後その日の活動 結果を報告する会社もある。これらは営業日報と か,販売日報などと呼ばれている。これを分析す れば,ひとりの営業マンのlか月の営業活動の内 容は把握できるし,その営業マンの製品別売上高
と比較することができる。
これらの分析をすべての営業マンに対して行う 必要はない。いゆゆる売上高や営業活動の点から 平均的と思われる人間をサンプリングし,それら の営業マンの活動を半年あるいは1年ぐらい分析 するのである。もちろん,彼等の活動を最終的に 製品別に跡づけるのが目的であるから,営業日報 ではわからない点があったならば本人へ直接に確 かめることが必要であるので,あらかじめその目 的を話しておかなければならない。
基本的な方法はこのようなものであるが,分析 のやり方は企業によっていろいろ工夫する必要が あるだろう。筆者の経験からすると,この手法は かなりの時間と熟練を必要とするが,いわゆる受 益者負担の原則にもとづいた製品別販売費の計算 が可能となる。
しかし,一般管理費は受益者負担の原則を貫き 通すのは無理があると思われるので,いわゆる負 担能力主義を採用することになろう。この費用は,
やはり政策費(policycosts)の性格をもってい るからである。
ができないセクションが中心であるが,よりきめ の細かい評価方法をめざしている点に特徴がある。
第2は予算管理と結びついた業績評価システム であり,事業部長や部門長などの管理者が中心で,
その結果はボーナスやプロモーションに結びつい ているかなり厳密なものである。管理者以外の従 業員の場合には,グループ別評価方法がとられる ことが多い。つまり,一定のグループーたと えば,販売部門のひとつのセクションーごと に予算の割り当てがなされ,その達成度に応じて ボーナスなどに反映させるシステムである。わが 国では,銀行や建設業などにこのような業績評価 システムが採用されているようである。
第3の方法は第2のそれと基本的には同じであ るが,業績評価の結果はボーナスや昇進とは結び つかない穏やかなものである。この場合,評価対 象は事業部長などの管理者が中心となるが,自己 評価などもなされているのが特徴である。この業 績評価システムは,前述したように日本企業では このような方法がなされてこなかったので,即座 に厳しいシステムを導入するのではなく,過度的 に採用されているのと考えられる。
問36では事業部あるいは部門予算に対してその 達成度をみる業級評価一定量評価一システ ムをもっているか,もし,もっている場合には誰 が,誰に対して行うかを尋ねている。その結果は 表(22)に示されている。
表(2]定量評価システム 8業績評価システム
企業の予算管理とは,本来,予算編成と業絞評 価の二本柱からなっているものである。しかし,
日本企業ではこれまで業績評価は,経営トップを はじめとしてあまり積極的ではなく,いわゆる日 本的経営にはなじまないものとしてみなされてき た。しかし,この数年の間に日本企業でも業紙評 価システムをもつようになり,それによって管理 者の選別がなされようになっている。
業績評価システムといっても多様であるが,日 本企業ではつぎの三つに区分できる。第1は予算
とは関連のない業績評価であり,既述したホワイ トカラーの「目標管理制度」などはその典型的な ものである。これは予算管理では個人の業績評価
*回答なしが7社
回答数と一致しないのは4社が複数回答してい るためである。業績評価システムをもっていない 企業が25%あるということは,筆者の予想からす れば,かなり低い。つまり,日本企業の75%が業 績評価システムをもっているという現状は,相当
に予算管理が発展していることを示している。
その内容をみると,「業績評価は社長が事業部
企業数 比率
1 43 (24.8%)
2 51 (29 5)
3 23 (13 3)
4 47 (27 2)
5 9 (5 2)
計 173 (100 0%)
49
ている企業が33%あり,「その他」が6%となっ ている。その内容を列挙するとつぎのようになる。
・中期経営計画の重点目標の達成度
・課題目標,、改善目標を決め,自己評価をする
・課員に対する人事考課制度をもっている
・支店表彰制度のなかに組み込まれている 問38は業績評価の結果がボーナスおよび給料に 反映されているかどうかを尋ねたものてあるが,
ここでは事業部長や部門長は除外している。
表⑭業綱評価と査定 あるいは部門に対して行う」というのがもっとも
多く29.5%となっている。ついで「業績評価は社 長のほかに事業部あるいは部門が自己評価も行う」
というのが27.296となっている。また,「業績評 価は社長が事業部長あるいは部門長に対して行う」
というのが13.3%となっている。
これをみてもわかるように,日本企業は事業部 や部門の業績評価は行うが,それを個人一事 業部長・部長一のそれに結びつけてボーナス やプロモーションの査定に使用するのは少ない。
さて,「その他」で具体的に記入された内容を 以下に列挙することにしよう。
・業績評価は取締役会が行う
・営業所単位の業績評価を行う
・経営企画部がデータにもとづいて原案を作成 し,常務会で審議し,部門別の賞与水準を決 定する参考資料とする
・予算課で作成し,事業部長,社長へ報告する
・部課別に業績評価する
・年度予算をベースに経理部が定量評価を行い,
トップに報告する
・支店,グループ,営業所などの拠点別に業繊 評価を行い,重役会で決定する
・収益目標の達成度で行う
以上のように,それぞれの企業の事情に応じて 定量評価を行っている。しかし,どのような評価 方法で行っているかはアンケート調査では明らか にできないので,訪問調査によらなければなら ない。
問37は定量評価に加えて定性評価をもっている かどうかを尋ねたものであるが,その結果はつぎ のようになっている。令b
表(23定性評価システム
--■面祠■
--- 1■■■■ ̄■函、■
101
*回答なしが10社
全く反映されていない企業がおよそ半分あるが,
半分の企業で反映されているという数字はかなり 高いという印象を与える。とくに,ボーナスに反 映されているというのが31%,ボーナスと給料の 両方に反映されているというのが21%となってい るが,日本企業も欧米に近づいているといえよう。
この数字と比較できるものが過去にないので,い つ頃から業績評価が給料・やボーナスに反映させる
ようになったのかは不明である。
問39は事業部長あるいは部門長のプロモーショ ンに業繊評価の結果が反映されているかどうかを 尋ねたものである。その結果は全く反映されてい ないというのは33社(20.4%),いくぶん反映さ れているというのは129社(79.6%)であり,回 答なしの企業が14社であった。しかし,このアン ケートに回答する予算担当者がこれらの内容を知っ ているかどうかは疑問の残るところである。あく までも,社内の実態から推測して回答したと考え るべきなのかもしれない。
表鯛査定方法
■■■■ ̄■面面因■
--■■届■
--■■■
*回答なしが10社
定性評価をもっていない企業が61%あるのは筆 者の予想よりも低い。定性評価をもっている企業 のうち,個別の重要施策(たとえば,不採算部門 の処理・改善)の達成度をみる評価方法などをもつ
企業数 比率
1 77 (46.4%)
2 51 (30 7)
3 3 (1 8)
4 35 (21 1)
計 166 (100 0%)
企業数 比率
1 101 (60.9%)
2 55 (33.1)
3 10 (6.0)
計 166 (100.0%) 企業数 比率
1 12 (6.0%)
2 60 (30 O)
3 30 (15 O)
4 19 (9 5)
回答なし 79 (39 5)
計 200 (100 0%)
50
アンケートの最終項目である問40では,業紋評 価の結果が給料やボーナスに反映されている場合,
どのように査定がなされているかを尋ねたもので ある。
もっとも多いのは「事業部長あるいは部門長の ほかに,直属の上司も行う」であって30%,自己 評価を採用しているのが15%ある。ただ,回答な しの企業が多いのは,問38で全く反映されていな いという企業77社が含まれているからである。
「その他」の例として具体的に記入されたものを 列挙するとつぎのようになる。
、査定は社長が行う
、主管は経営企画室にある
・各事業部別に業績に応じてプラスαがでる
、社内評価基準が設定されている
、年俸制が採用されており,その決定に含ま れる
、本社人事部にて事業部のボーナスに反映さ せる
.常務会で事業部の業績評価をして,事業部単 位でボーナスに反映させる
、事業部単位で定斌評価を行い,一定基準をク リアした部門に対して一律に与える
、人事部で人事考課制度で行う
これらの結果からみると,企業におる個々人の 業績評価は予算だけでなく,さまざまな要素と絡 み合っているので「どのように査定して給料.およ びボーナスに反映されているか」というような質 問には正確に答えることはむずかしいかもしれな い。このアンケートの回答者は予算担当者である が,給与やボナスの査定は人事部でなされること が多いからである。
企業目標を実現しようとする。
この予算管理は管理会計の手法であるが,経営 管理そのものであって区分はむずかしい。われわ れはテキストなどを通じて,アメリカの予算管理 システムを知ることはできるが,最近の詳しい実 態は知ることができない。それほど,このテーマ についての具体的な実態調査は少ないのである。
日本についても同じことがいえる。いくつかの 調査はあるが,日本企業の実態を知るには不十分 である。そこで,今回の調査では,(1)予算管理 の実態を知るために,できるだけ具体的な質問項 目を作成すること(2)予算管理のような管理会 計手法はやはり大企業が先進的なので,できるだ け大企業を対象にすること(3)企業名をアンケー ト調査用紙に記入できないような会社は,あまり にも秘密的で,回答内容にも信頼がおけないので 除外すること,の三つの基本方針をおいた。
幸いにも有効回答率が60%近くと,この種の調 査では考えられないような成果が得られた。しか も,回答企業は東証第1部上場の大企業であるの で,わが国の予算編成の実態を知るためには申し 分ないものとなった。多忙にもかかわらず,この ような調査に協力をいただいた企業の方々には深 く感謝する次第である。いつの日か,本稿がまと まった書物となって出版されるとき,わが国企業 の実態が明らかになり,予算担当者の方々の参考 になればと思っている。
このアンケート調査の結果についての解釈はさ まざまであり,筆者の見解に異論のある方も多い と思われる。それについては,今後も検討を続け るつもりてある。最後に,本稿で参照させていた だいた著書,論文などの執筆者に感謝の意を表し たい。
完(終戦記念日の8月15日)
おわトノに
日本企業の予算管理についての実態調査を行お うと思ったのは,筆者が主宰する「産学協同管理 会計研究会」で,この数年間にわたって日本を代 表する企業の管理会計システムの発表を聞いたの が契機であった。管理会計のもっとも中心的なテー マは予算管理であり,経営者はこのシステムを通 じて企業方針を従業貝に伝達し,目標を与え,そ れを達成させるための動機づけを行い,最終的に
(1)Cf.「日経ビジネス」(3-20.1995)日 経BP社,pp22-36
(2)このような経理部門のリストラの内容につ いては,以下に掲げる論文を参照されたい。
そこでは,リストラやリエンジニアリングの 概念と誕生の背景,経理部門のビジネス・プ ロセス・リエンジニアリングなどについて述 べられている。とくに,リストラとか,リエ
51
ンジニアリングという用語がアメリカのビジ ネス界から入ってくるのは,コンピュータ・
メーカー・コンサルタント会社のビジネスと 密接に結びついていることが示されている。
Cf・佐藤康男「リストラ/リエンジニアリ ングと管理会計一管理会計のカレント・
トピックスとして-」経営志林(法政大 学経営学会),第31巻第3号(1994年10月)
(3)西澤脩「本社費・金利の会計と管理」白 桃替房,1989年,pp.,107-132.
なお,ここではアメリカとイギリスにおける 本社費配賦の実態についても述べられている。
前者の調査は1963年の0G.バームス「本 社費の配賦」(C、G・Baumes,“Allocating CorporateExpenses',)に示されており,後 者は1974年のJE・メルロス・ウットマン
「利益中心点会計一本社費の配賦」(』.,E、,
Melrose-Woodman,“Profit-centreAccount‐
ing-theabsorptionofcentraloverhead costs,,)の調査報告書の紹介である。
これによるとアメリカでは本社費を配賦し ているのが89%,していない企業が11%となっ ており,イギリスではそれぞれ81%,19%と なっている。調査時点を考えると,わが国と 比較して配賦している企業の比率はかなり高 いことがわかる。
本社費配賦に関するもうひとつの実態調査 としては1984年に実施された谷武幸のものが ある。それによると,調査対象企業215社の うち,本社費を事業部に配賦している企業は 183社(85.1%)となっており,ここでの調 査結果とほぼ同じとなっている。
Cf谷武幸「事業部業績の測定と管理」
税務経理協会,1987年.
(4)ここでの記述はつぎの文献に依っている。
Cf金児昭編「やさしい月次決算」日本経 済新聞社,1993年,pp、120-121.
この本の著者達はいずれも企業の実務家であ るので,現在の実務内容を知るのに便利であ る。本社費の事業部への配賦については,
「会社全体の利益は,一般管理費を負担した 後の利益であるあることを会社の中のすべて の人が理解することが必要」なので配賦すべ
きであるとしている。
(5)佐藤康男編著「ケース・スタディ日本企 業の管理会計システム」白桃書房,1993年,
pplOO-lO4
(6)谷の調査では対象企業155社のうち,124社
(80.0%)が振替価格制度を採用していると いう結果が報告されている。しかし,これは 1980年の調査であり,その後ほとんどの企業 で採用されるようになったと考えられる。
Cf、谷武幸「日本企業の振替価格設定と本 社費配賦の実態」企業会計,1989年2月号,
p、58.
(7)谷武幸,上掲論文,p60.
(8)Cf・吉川武男「日米両国における予算管理 システムの実態調査」横浜経営研究,第Ⅲ巻 第1号(1991年)p、102.
なお,ここで示したそれぞれのモデルの採用 比率は吉川のそれとは一致していない。筆者 の調査結果には無回答の企業は比率計算から 除外してあるが,吉川の結果にはそれを無回 答として合計数に含めている。それで比較可 能にするために,吉川の比率計算から無回答 分を除外した-吉川の論文には各モデル の採用企業数は示されている-
(9)Cf、吉川武男,上掲論文,p、92.
なお,吉川のアンケートでは費目別分類は
「販売費の費用内容別に分析する」となって
いる。
(loI日本企業の業績評価の具体例を述べたもの としては,つぎの文献を参照されたい。
Cf・佐藤康男「日本企業の予算管理~そ の現状と問題点一」経営志林(法政大学 経営学会),第30巻第1号(1993年)
〈付録〉
今回の調査で回答をいただいた企業名はつぎ の通りである。
・水産・鉱業(3社)
㈱ニチロ日本水産㈱
マルハ(槻
・建設(10社)
㈱フジタ不動建設㈱
52
太平工業㈱
三井建設㈱
東急建設㈱
㈱青木建設
・食品(13社)
日本製粉㈱
協同飼料㈱
江崎グリコ㈱
ヤクルト本社㈱
キリンビール㈱
宝酒造㈱
味の素㈱
・繊維(9社)
グンゼ㈱
日清紡㈱
倉敷紡績㈱
東レ㈱
㈱ワコール
・紙・パルプ(3社)
日本製紙㈱
レンゴー㈱
・化学(15社)
昭和電工㈱
東ソー㈱
信越化学工業㈱
鐘渕化学工業㈱
西松建設㈱
大日本土木㈱
日本舗道㈱
鉄建建設㈱
・非鉄金属(13社)
三井金属鉱業㈱三菱マテリアル㈱
住友金属鉱山㈱昭和アルミニウム㈱
古河電気工業㈱三菱電線工業㈱
日立電線㈱新日軽㈱
三和シャッターエ業㈱
三協アルミニウム工業㈱
トステム㈱不二サッシ㈱
日本発条㈱
・機械(18社)
㈱新潟鉄工所東芝機械㈱
㈱アマダ
㈱豊田自動織機製作所
豊田工機㈱住友重機械工業㈱
日立建機㈱㈱クポタ
㈱荏原製作所ダイキンエ業㈱
栗田工業㈱㈱椿本チェイン
㈱ダイフクブラザー工業㈱
日本精工㈱光洋精工㈱
㈱不二越ミネベア㈱
・圏機(24社)
三菱電機㈱日立工機㈱
松下冷機㈱東京電気㈱
オムロン㈱富士通㈱
沖電気工業㈱サンケン電気㈱
日本無線㈱シャープ㈱
㈱富士通ゼネラルソニー㈱
TDK㈱㈱ケンウッド アルプス電気㈱日本ビクター㈱
横河電機㈱山武ハネウエル㈱
住友電装㈱ファナック㈱
ローム㈱日東電工㈱
松下電工㈱日本電装㈱
・造船・自動車(18社)
三井造船㈱石川島播磨重工業㈱
いす欝自動車㈱トヨタ自動車㈱
日産ディーゼル工業㈱
トピーエ業㈱フタバ産業㈱
市光工業㈱プレス工業㈱
カルソニック㈱アイシン精機㈱
マツダ㈱ダイハツ工業㈱
愛知機械工業㈱スズキ㈱
富士重工業㈱ヤマハ発動機㈱
昭和産業㈱
明治製菓㈱
雪印乳業㈱
九大食品㈱
サッポロビール㈱
カルピス食品工業㈱
東洋紡績(槻 ユニチカ㈱
帝人㈱
三菱レイヨン㈱
三菱製紙㈱
三菱化成㈱
徳山曹達㈱
㈱日本触媒 三菱ガス化学(槻 三井石油化学工業㈱
三菱油化㈱ダイセル化学工業㈱
三菱樹脂㈱ライオン㈱
セントラル硝子㈱日本合成ゴム㈱
・薬品(7社)
三共㈱武田薬品工業㈱
第一製薬㈱山之内製薬㈱
萬有製薬㈱中外製薬㈱
エーザイ㈱
・窯業(2社)
日本板硝子㈱日本電気硝子㈱
・鉄鋼(7社)
日新製鋼㈱㈱中山製鋼所 東京製鉄㈱大同特殊鋼㈱
愛知製鋼㈱日立金属㈱
㈱栗本鉄工所
53
㈱シマノ
・糀密機器(4社)
オリンパス光学工業㈱
HOYA㈱㈱リコー
㈱三協精機製作所
・印刷・事務機器(8社)
凸版印刷㈱大日本印刷㈱
共同印刷㈱㈱アシックス ヤマハ㈱
㈱セガ・エンタープライゼス 任天堂㈱コクヨ㈱
・商社(9社)
ニチメン㈱㈱オンワード樫山
㈱レナウンミズノ㈱
東京エレクトン㈱㈱服部セイコー
㈱内田洋行三菱商事㈱
岩谷産業㈱
・陸迎・海運(13社)
東武鉄道㈱西武鉄道㈱
京王帝都電鉄㈱西日本鉄道㈱
近畿日本鉄道㈱阪急電鉄㈱
ヤマト運輸(獺山九㈱
センコー㈱トナミ運輸㈱
㈱日立物流日本郵船㈱
大阪商船三井船舶㈱
*なお,本論文の第1稿の表(1)とはいくぶ ん異なっている。ここでは東京証券取引所の 1部銘柄の上場区分にしたがっている。
「本稿は前々稿(第32巻第1号),前稿(第32巻 第2号)とともに1993年度法政大学特別研究助 成金によるものである」