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症例報告 Managing Subdural Hematomas associated with Intracranial Hypotension with Intra subdural Hematoma Cavity Pressure Monitoring A Case Report Nobusu

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Academic year: 2021

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はじめに

 低髄液圧症候群(intracranial hypotension:IH)の重要 な合併症として硬膜下水腫・血腫等の硬膜下病変が挙げ ら れ, そ の 頻 度 は 1 0∼8 0% と 報 告 さ れ て い る2)3)7)9)12)14)17)18)23).硬膜下血腫を合併した IH の治療に 関しては,血腫ドレナージの必要性やそのタイミング, さらに血腫ドレナージと硬膜外自家血注入療法(epidural

blood patch:EBP)の治療優先順位等に関してさまざま

な報告があり2)10)18)27),いまだ統一された見解は得られ

連絡先:都築伸介,〒 346 8530 久喜市上早見 418 1 一般社団法人巨樹の会新久喜総合病院脳神経外科

Address reprint requests to:Nobusuke Tsuzuki, M.D., Department of Neurosurgery, Shin Kuki General Hospital, 418 1 Kamihayami, Kuki shi, Saitama 346 8530, Japan

血腫腔内圧モニタリングを行って治療した両側慢性硬膜下血腫合併特発性

低髄液圧症候群の 1 例

―複雑な病態の考察,およびその可視化による最適な治療を目指して―

都築 伸介

1)

,豊岡 輝繁

2)

,景山 寛志

1)

1)一般社団法人巨樹の会新久喜総合病院脳神経外科,2)防衛医科大学校脳神経外科

Managing Subdural Hematomas associated with Intracranial

Hypoten-sion with Intra subdural Hematoma Cavity Pressure Monitoring

:A Case

Report

Nobusuke Tsuzuki, M.D.1, Terushige Toyooka, M.D.2, and Hiroshi Kageyama, M.D.1

1)Department of Neurosurgery, Shin Kuki General Hospital, 2)Department of Neurosurgery, National Defense Medical College

  Subdural hematomas(SDHs)are common radiographic findings in patients with intracranial hypoten-sion(IH). The pathophysiological features of this condition are complicated, and are quite different in each case. In some cases, only treatment for an underlying cerebrospinal fluid leak is needed. However, some SDHs have an obvious mass effect, and hematoma evacuation is required before or after treatment for the underlying IH. Thus, the optimal management technique for this condition remains challenging. We hypothesize that by measuring the intra SDH cavity pressure we can discern the pathophysiological fea-tures of this condition, which is the key to optimal management of these SDHs. We herein report a novel management technique for a case of bilateral SDHs associated with IH in which an intracranial pressure sensor and drainage tube were simultaneously inserted into the hematoma cavity. As a result, the intra SDH cavity pressure accurately revealed the pathophysiological condition of this case and therefore an appropriate treatment could be performed. We postulate that the management technique described in this report can be applied in cases of bilateral SDHs associated with IH when conservative therapies have failed.

(Received February 2, 2016;accepted March 7, 2016)

Key words:intracranial hypotension, subdural hematoma, epidural blood patch, pressure monitoring

Jpn J Neurosurg(Tokyo)25:765 771, 2016

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ていない.これはこの硬膜下血腫の病態が複雑であり, しかもその病態を客観的に把握することが困難なためと 考えられる26)27).われわれは硬膜下血腫腔内圧をモニタ リングすることによりその病態を可視化し,正確に把握 できるのではないかと考えた.今回,硬膜下血腫を合併 した特発性 IH に対してこの方法を試み,良好な治療結 果と興味深い知見を得たので報告する.

症例提示

患 者:60 代,男性.  主 訴:起立時の頭痛,めまい.  現病歴:頭部外傷,その他特に誘因なく,起立時の頭 痛およびめまいを自覚した.症状が改善しないため,症 状出現から約 1 カ月後に当科受診.同日の頭蓋単純 CT scan上,両側硬膜下血腫を認めた(Fig. 1).  入院後経過:入院後に施行した MRI(T1 強調,造影) 冠状断では,小脳テントを含む硬膜に両側対称性,びま ん性かつ連続性に造影効果を認め,その造影程度は大脳 皮質よりも高信号を呈していた.さらに矢状断では,静 脈洞拡張,脳幹の下方偏位による腹側の 平化等の所見 を認めた(Fig. 2).MR myelography では脳脊髄液漏出部

位は明らかではなかったが(data not shown),臨床症状 と造影 MRI の結果から両側硬膜下血腫を合併した特発 性 IH と診断した. 治療経過  第 1 病日(入院初日):安静臥床および補液(2,000 ml/ day)による保存的治療を開始した.2 週間が経過した時 点で,頭痛の軽減が認められたため,さらに 1 週間,保 1

Fig. 1  Head CT on admission showing bilateral subdural hematomas(SDHs)and partial effacement of the basal cisterns.

R

Fig. 2  Gadolinium enhanced brain magnetic resonance imaging show-ing flattenshow-ing of the pons, engorgement of the venous sinuses (A), and diffuse meningeal enhancement with bilateral SDHs (B).

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存的治療を追加継続することとした.  第 20 病日:しかしこの追加保存的治療後,頭痛は臥床 時にも自覚されるようになり,また意識障害(昏迷,見 当識障害)も出現した.第 20 病日の CT scan 上,血腫の 増大および脳底槽の消失等,画像上の増悪所見も認めた (Fig. 3).  第 21 病日(穿頭術施行):IH による症状に加えて硬膜下 血腫の mass effect による症状も否定しきれないため,全 身麻酔下に穿頭術を施行した.術前,患者の家族に頭蓋 内圧センサーを用いて血腫腔内圧を測定する意義・必要 性を説明し,承諾を得た.両側血腫腔内にドレナージ チューブを留置するとともに,右側血腫腔内に頭蓋内圧 センサー(Codman MicroSensor ICP Transducer, Codman & Shurtleff)を挿入し,血腫腔内圧をモニタリングする こととした.術中所見として,血腫は通常の慢性硬膜下 血腫と同様の被膜を有していた.しかし被膜穿刺時,血 腫内容液の噴出は認められず,血腫腔内圧は高くはな かった.ドレーンをクランプした状態で閉創,手術を終 了した.帰室後,ドレーンはクランプしたまま安静臥床 および補液による治療を継続,持続的血腫腔内圧モニタ リングを開始した.以後の血腫腔内圧の推移をFig. 4に 示す.測定開始直後,血腫腔内圧は 12 mmHg であった が,2 時間後には 10 mmHg 台に下降した.  第 22 病日(穿頭術翌日):CT scan 上,脳底槽は一部描 出され,改善を認めた.また意識レベルも昏迷状態から ほぼ清明に改善,頭痛の程度も軽減した.その後,血腫 腔内圧は徐々に低下し,術後 4 日目には 2 mmHg まで低 下した.  第 24 病日(穿頭術後 4 日目,EBP 施行):穿頭術後の血 腫腔内圧の推移から,IH の状態が継続していると判断さ れた.また頭痛が増悪し,意識レベルは再び昏迷状態と なった.CT scan 上,血腫の増大および脳底槽の消失等, 画像上の再増悪所見も認めたため(data not shown),EBP を行うこととした.EBP は Franzini らの theory に基づ

き,第 1∼2 腰椎間から施行した4).EBP 後,頭痛および 意識障害は速やかに改善した.また血腫腔内圧は EBP 後 急速に上昇,4 時間には 20 mmHg を超えたため,この時 点でドレーンを開放した.ドレーンを開放すると,通常 の慢性硬膜下血腫と同様の暗赤色の血腫流出が認められ た.  第 25 病日:EBP 翌日には頭痛は消失し,意識清明と なった.CT scan 上,脳底槽の描出はきわめて良好とな り,硬膜下血腫も 90%以上消失した(data not shown). 血腫腔内圧はいったん 25 mmHg まで上昇した後,徐々 に下降し,測定終了前には 14 mmHg となった.  第 29 病日:症状は完全に回復し,CT scan 上,血腫も 消失した(Fig. 5).ドレーンをクランプして血腫腔内圧 を観察したが著変なく,また CT scan 上も異常を認めな かったため,ドレーンおよびセンサーを抜去した.その 後再発は認められていない.

考 察

 通常,IH の治療は安静臥床および補液を主体とした保 存的治療が第 1 選択とされ,症状の改善が得られない症 例においては EBP が行われる.いずれも場合もその予後 はおおむね良好とされる11)20)21).しかし硬膜下血腫合併 症例については,意識障害を呈したり6)27),死に至る重 症例も報告され25)26),その死亡率は 10%を超えるとの報 告もある1).したがって硬膜下血腫を合併した IH にはよ

Fig. 3  Head CT 20 days after admission showing enlarge-ment of the bilateral SDHs and complete effaceenlarge-ment of the basal cisterns.

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り慎重な対応が求められるが,その治療法・治療経過に は以下のごとくさまざまな報告があり,臨床の現場で困 惑することも多い.  Schievink ら18)は IH に対する治療を行うことによって 経過中に硬膜下血腫は消失し,血腫に対するドレナージ 術は不要であると報告している.一方で,IH に関連して 生じた硬膜下血腫が明らかな mass effect を有し,IH の 治療に先行して血腫ドレナージが必要であった症例 や2),IH に対して EBP 治療を行った後に,硬膜下血腫の ドレナージが必要となった症例の報告がある2)6)10).さ らには血腫ドレナージを先行させた症例で,術後に意識 レベルの低下等,臨床症状の悪化をきたす場合もあ る8)16).このように本疾患における治療法および治療経 過が一定しない理由は,硬膜下血腫の病態が単一ではな く,また同一症例であっても治療を行う時期によって血 腫の病態が異なるためではないかと推察される.した がって適切な治療を行うためには,「治療を開始する時 点での血腫の病態」を正確に把握することが肝要である. この複雑な血腫の病態を理解するために,われわれは硬 膜下血腫を合併した IH に関して,①IH の治療のみで血 腫ドレナージは不要な症例と,②IH の治療とともに血腫 ドレナージも必要な症例,の 2 者に分けて整理し,文献

Fig. 4  Intra SDH cavity pressure(ISCP)trend throughout the therapeutic period. The patient's ISCP dropped to 2 mmHg 2 days after burr hole surgery(arrow)despite bed rest and intravenous hydration. A few hours after the application of EBP(arrowhead), the ISCP rapidly increased to more than 20 mmHg at which point hematoma drainage was begun(arrow). The ISCP rose slightly to 23 to 25 mmHg, and then decreased to the normal range during the next few days.

Burr hole surgery

EBP

Drainage tube declamp Hematoma cavity pressure(mmHg)

12 : 00 12 : 00 14 : 00 14 : 00 14 : 00 14 : 00 18 : 00 18 : 00 18 : 00 22 : 00 2: 00 2: 00 2: 00 8: 00 8: 00 16 : 00 16 : 00 16 : 00 16 : 00 6: 00 6: 00 6: 00 20 : 00 20 : 00 10 : 00

Burr hole surgery,

Day 1 Day 2 Day 3 Day 4,EBP Day 5 Day 6 Day 7 Day 9

Hematoma cavity pressure(mmHg) 30 25 20 15 10 0 5

Fig. 5  Head CT 5 days after the application of EBP showing complete remission of the bilateral SDHs and the reappearance of the basal cisterns.

(5)

報告を踏まえておのおのの病態を以下のごとく考察した.  ①IH の治療のみで血腫ドレナージは不要な症例:IH の治療を行い,その後の経過で血腫が消失するタイプで ある(absorbable type).IH に伴って硬膜下血腫が形成さ れる機序としては,脳脊髄液の減少に伴い頭蓋内圧が低 下し,代償性に拡張した硬膜静脈や静脈洞から血漿成分 が硬膜下に漏出,そこへ架橋静脈の破綻が起こりやすく なるため,と説明される13)15).架橋静脈の破綻がないか, ごくわずかであれば,血漿成分を主体とするこの病変は 低髄液圧の代償として存在するのみであり,したがって mass effectを有することはない.この時点で IH が治療 されて低髄液圧が是正されれば,血腫は再び硬膜静脈や 静脈洞に吸収され,消失する.IH の治療のみ必要で,血 腫ドレナージは不要とされる症例はこの病態に該当する のであろう18)19).逆にこの病態において IH の治療を行 わずに血腫ドレナージを先行させてしまうと,硬膜下腔 に空気が引き込まれて脳の下垂が助長され,臨床症状の さらなる悪化を惹起する8)16)  ②IH の治療とともに血腫ドレナージも必要な症例:こ れは急性型と慢性型に分けて考えられる.急性型(acute type)は上記①の病態において架橋静脈の破綻が急激か つ重篤に生じた症例で,出血量が多いために mass effect が生じ,当然のことながら IH の治療に先行して緊急血 腫ドレナージが必要となる.これは急性硬膜下血腫ある いは慢性硬膜下血腫の急性増悪(acute on chronic)に近 い病態といえよう8).これに対して慢性型(chronic type) は 血 腫 が 慢 性 硬 膜 下 血 腫 に 移 行 し た 症 例 で あ る. Amorimら1)は,起立性頭痛が 1 週間以上継続する症例に おいては,血腫が慢性硬膜下血腫に移行した可能性を考 えるべきであると報告している.また De Noronha ら2) は,IH に合併した血腫が慢性硬膜下血腫に移行し,血腫 ドレナージを要した 4 症例について治療期間および治療 経過を詳細に記載しているが,いずれの症例も病悩期間 は 1 カ月以上と長期にわたっている.このように比較的 経過の長い症例においては,血腫が慢性硬膜下血腫と なっている可能性を考慮すべきであろう.そして IH に よる脳脊髄液減少の容積分を上回ってこの慢性硬膜下血 腫の容積が増大した症例では,慢性硬膜下血腫として

mass effectを呈することとなり,IH の治療とともに通常

の慢性硬膜下血腫の治療,すなわち血腫ドレナージが必 要となる.この病態においては,血腫ドレナージをまず 行うべきで,IH の治療,特に EBP を先行させると,脳 脊髄液の漏出が停止した直後から慢性硬膜下血腫の mass effectが著明となり,急性頭蓋内圧亢進症状や脳ヘ ルニアを起こす危険性がある.また慢性硬膜下血腫に移 行したものの,その容積が脳脊髄液減少分を代償する程 度に留まっている症例では,その時点で慢性硬膜下血腫 自体の mass effect は生じていない.しかし,EBP 治療を 行って脳脊髄液の漏出が停止した時点で,その mass effectが顕性化することが予測される.したがってやは りあらかじめ血腫ドレナージを行ってから EBP を行う か,あるいは EBP に引き続き血腫ドレナージを行うこと を念頭に置かねばならない2)5)6)10)22)24)  以上,要約すれば血腫の病態は,①IH の治療のみで血 腫は消失するタイプ(absorbable type),②急性硬膜下血 腫タイプあるいは慢性硬膜下血腫の急性増悪タイプ (acute type),③慢性硬膜下血腫タイプ(chronic type), の 3 つのタイプに大別される(厳密には①→③への移行 過程にあるタイプも存在するであろう).したがって治 療開始の時点において,血腫が上記のどのタイプに相当 するのかを判断することが適切な治療への第 1 歩と考え られる.ただしこのうち②のタイプは臨床症状や画像所 見から比較的鑑別が容易と思われ,結局上記①と③の鑑 別が重要となる8)24)26)27)  渉猟し得た文献上,これらの病態の鑑別に関して,そ れぞれの対処方法も含めていくつかの報告がある.Loya ら8)は意識障害を呈する硬膜下血腫合併IH症例に対する 治療アルゴリズムを提唱した.アルゴリズムには Tren-delenburg体位による病態の鑑別が示され,体位により 意識障害が改善した場合には IH そのものが症状の主原 因であり,したがって IH の治療をまず行うべきである としている.逆に意識障害が改善しない場合には硬膜下 血腫がその原因であり,直ちに血腫除去を行うべきであ ると述べている.また血腫の厚さを病態の指標として捉 え,血腫の厚い症例にまず血腫ドレナージの先行治療を 推奨する報告がある23)27).さらに,起立性頭痛が 1 週間 以上継続した症例,EBP を含めた IH の治療にもかかわ らず頭痛が改善しない症例,仰臥位にても頭痛が自覚さ れる症例,および頭痛以外の新たな神経症状が出現した 症例は,血腫が慢性硬膜下血腫に移行している可能性が あるという1).これらの報告は病態の判断に有用と思わ れるが,いずれも十分な客観性を有するとは言い難い. 臨床の現場では症例ごとに,症状,画像所見等を鑑み, 上記の諸報告に照らし合わせてその病態を判断せざるを 得ないのが現状であろう.  自験例においては,安静臥床および補液による 20 日 間の治療でも治癒が得られず,頭痛は臥床時にも自覚さ れるようになったことから,血腫は慢性硬膜下血腫に移 行し,ある程度の mass effect を有するに至ったと推察さ れた.われわれは治療戦略として,血腫の病態を客観的

(6)

に把握し,またいつでも必要時に血腫ドレナージを行え るよう,血腫腔内に頭蓋内圧センサーとドレナージ チューブを留置することとした.結果として自験例の病 態は,①血腫は慢性硬膜下血腫であり,②EBP により脳 脊髄液の漏出が停止,③慢性硬膜下血腫としての mass effectが顕性化,の 3 点に要約された.血腫腔内圧は, EBP施行前の病態や,EBP の治療効果,および血腫ドレ ナージを行うべきタイミングを適切に反映したと考えら れた.  本法においては穿頭術を要するという点で侵襲性に問 題がある.しかし硬膜下血腫合併 IH 症例の病態がリア ルタイムに可視化され,客観的評価が可能であることか ら,血腫ドレナージや EBP の適切な治療のタイミング や,その治療効果が明確に把握され得る.安静臥床・補 液による保存的治療が無効な場合,治療の選択肢の 1 つ として考慮されてもよいと思われる.  治療のタイミングとしては,2 週間程度の安静臥床・ 臥床による保存的治療が無効と判断された時期以降が妥 当と考えている.自験例の場合,約 3 週間の保存的治療 が経過した時点で本法を行ったが,遅きに失した感があ り,反省すべき点である.また,IH は正確な診断に至る までしばしば時間を要することがあり,治療開始の時点 ですでに相当期間を経過している症例がある.最重症の 場合は死亡例も報告されていることから25)26),問診等か ら相応の病悩期間を経過していると判断された症例に対 しては,本法の速やかなる適用も検討に値する.今後症 例を蓄積し,治療の strategy としての妥当性や,治療の 対象として選択すべき症例に関して検証したい.

結 語

 1. IH に合併した硬膜下血腫の複雑な病態に関し,過 去の文献を踏まえて整理を試みた.硬膜下血腫は① absorbable type,②acute type,③chronic type の 3 つのタ イプに大別されると考えられた.  2. Chronic type の両側硬膜下血腫を合併した特発性 IH症例に対し,血腫腔内圧モニタリングを試みた.結 果,血腫の病態が可視化され,これをつぶさに把握する ことが可能となり,適切な治療を行い得た.  3. 本法は,保存的治療が無効な硬膜下血腫合併 IH 症 例に対する治療の選択肢の 1 つとなり得る.  著者全員は日本脳神経外科学会へ COI 自己申告の登録を完 了しています.本論文に関して開示すべきCOIはありません.  本論文の要旨は第 127 回日本脳神経外科学会関東支部学術 集会(2015 年 9 月 12 日,東京)で発表した. 文 献

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Editorial Comment Editorial Comment  頭蓋内圧亢進とその原因疾患の治療を主な生業と する脳神経外科医にとって,日常臨床で低髄液圧症 候群に遭遇する機会は少なく,低髄液圧とそれに よって引き起こされる二次的病態を的確に把握・診 断することは必ずしも容易ではない.  低髄液圧症候群は,脳脊髄液の漏出により頭痛や めまい等を起こす疾患で,その疾患概念は古くから 知られている.近年においては,脳脊髄液減少症, 脳脊髄液漏出症などの名称が提唱され,疾病の定義 に混乱が生じているが,用語・病態概念・画像診断 基準・解釈などについては,本誌掲載の総説に詳し い1).低髄液圧症候群にはしばしば慢性硬膜下血腫 が合併することが知られており,原疾患や合併する 血腫の程度によりさまざまな頭蓋内圧を呈し得る. 治療優先順位に関してはさまざまな報告があり,著 者らが指摘するように,必ずしも統一された見解が 得られていない.その最も大きな要因は,治療選択 を目的とした頭蓋内圧の客観的評価が行われていな かったことにある.  著者らは,低髄液圧症候群に慢性硬膜下血腫を合 併した症例に対し,穿頭術下に頭蓋内圧モニタリン グを行い,頭蓋内圧が低い時点でまず硬膜外ブラッ ドパッチを,続いて頭蓋内圧が上昇した時点で硬膜 下血腫ドレナージを行っている.複雑な病態を頭蓋 内圧の観点から客観的に評価し治療に反映させた点 において,現状では理論的に最良な病態評価方法と 思われる.  低侵襲の画像診断が発達した現代では,外科的侵 襲を伴う頭蓋内圧モニタリングは敬遠されがちだ が,本報告のようにさまざまな頭蓋内圧を呈し得る 疾患・病態においては,頭蓋内圧モニタリングを考 慮することが重要である.また同時に,頭蓋内圧を 低侵襲かつ簡便に測定する方法の開発が望まれる. 文 献 1) 佐藤慎哉,嘉山孝正:低髄液圧症候群,脳脊髄液減 少症,脳脊髄液漏出症.脳外誌 22:443 451,2013.

慢性硬膜下血腫を合併した低髄液圧症候群の診断と治療

仙台市立病院脳神経外科 

刈部 博

Fig.  2   Gadolinium enhanced brain magnetic resonance imaging show- show-ing flattenshow-ing of the pons, engorgement of the venous sinuses (A), and diffuse meningeal enhancement with bilateral SDHs (B).
Fig.  3   Head CT 20 days after admission showing enlarge- enlarge-ment of the bilateral SDHs and complete effaceenlarge-ment of  the basal cisterns.
Fig.  4   Intra SDH cavity pressure(ISCP)trend throughout the therapeutic period. The patient's ISCP dropped  to 2 mmHg 2 days after burr hole surgery(arrow)despite bed rest and intravenous hydration

参照

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