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環境感染誌 Vol.27no.2,2012 適切な製品を選択する必要がある. 一方で,2009 年の新型インフルエンザ流行により手指消毒剤市場が拡大 10) したため, その実態を把握することは容易ではないのが現状である. そこで, 本研究では, 手指消毒において主流となっているラビング剤の市場実態

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北海道医療大学薬学部実務薬学教育研究講座 〈報 告〉

速乾性手指消毒剤の市場実態調査

中西 尚大・千葉 薫・野田久美子・唯野 貢司

Marketing Research of Alcohol-based Hand Sanitizer Takahiro NAKANISHI, Kaoru CHIBA, Kumiko NODAand Koji TADANO

Department of Practical Pharmacy, School of Pharmaceutical Sciences, Health Sciences University of Hokkaido (2011 年 7 月 29 日 受付・2011 年 11 月 24 日 受理) 要 旨 手指消毒は医療従事者の手指を介した感染を予防するための最も基本的な手段であり,医療施設 においては手指消毒剤の適切な使用が求められている.現在,手が目に見えて汚れていない場合は 速乾性手指消毒剤(ラビング剤)により手指消毒を行うラビング法が推奨されており,手指消毒の主 流となっている.しかし,2009 年の新型インフルエンザ流行によりラビング剤市場は拡大し,医 療現場において使用されている製品の実態は不明である.そこで,より適切なラビング剤の選択に 役立つ最新の情報を収集し,その評価を行うためにラビング剤市場の実態調査を行った. 調査方法はインターネットを使用した.調査項目は,法的区分,薬効成分,用法・用量,性状と し,今回検索された製品数は 164 製品であった. 市場で流通しているラビング剤は法的区分上,医療用医薬品,一般用医薬品,医薬部外品,雑品 に分けられ,医療現場において雑品は適さないと考えられた.また,ラビング剤の 1 回使用量は 定まっていないものの,約 3 mL を目安に使用する,もしくは乾燥までに 20~30 秒かかる量を使 用する必要があると考えられた.さらに,ラビング剤の性状には,ゲル状,液状,泡状の製品があ った.市場における手指消毒剤の効果・使用感は多岐に渡るため様々なファクターを考慮した製品 を選択することにより,手指消毒の遵守率を向上させることが望まれる. Key words速乾性手指消毒剤,エタノール,ラビング剤,市場調査 は じ め に 医療従事者による衛生的手洗いは,病院感染予防策の ための皮膚通過菌の除去を目的としており,米国 CDC の「医療施設における手指衛生のためのガイドライン」1) および WHO の「医療における手指衛生ガイドライン」2) において,手が目に見えて汚れている場合は非抗菌石け んあるいは抗菌石けんと流水による手洗いであるスクラ ブ法を行うとされている.また,手が目に見えて汚れて いない場合はラビング剤により手指消毒を行うラビング 法が推奨されており,現在手指消毒において主流となっ ている.ラビング法の消毒効果はスクラブ法と比較して 同等あるいはより有効であることが多く報告されてい る1,3~8).ラビング剤は流水やペーパータオルを必要と せず,特別な設備も不要なことから,入院患者や外来患 者に対する医療行為中でも容易に使用できる.現在販売 されているラビング剤は,医薬品や医薬部外品といった 法的区分の有無,エタノールやクロルヘキシジングルコ ン酸(CHG)等の含有薬効成分とその濃度の違い,液状 やゲル状といった性状,臭いやべとつき感などの使用感 および添加物などの違いにより様々な製品が存在する. このため,必要とされる衛生水準に応じた消毒方法およ び医療従事者に受け入れられる実用性などを考慮し,数 多くのラビング剤の中から最適な製品を選択する必要が ある.しかし,上記のガイドライン1,2)や 2003 年の厚生 労働省科学特別研究「医療施設における院内感染(病院 感染)防止について」9)においても,明確なラビング剤選 択のガイドラインは定まっていない.このため,医療従 事者は販売されている多くの製品の情報をよく吟味し,

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表 速乾性手指消毒剤における薬効成分組成の分類 薬 効 成 分 医療用医薬品 一般用医薬品 医薬部外品 雑 品 計 エタノールのみ     () ベンザルコニウム塩化物     () クロルヘキシジングルコン酸塩     () その他     ( ) 合 計 () () () ()  薬効成分とエタノール含有 適切な製品を選択する必要がある.一方で,2009 年の 新 型 イ ン フ ル エ ン ザ 流 行 に よ り手 指 消 毒 剤 市場 が 拡 大10)したため,その実態を把握することは容易ではな いのが現状である.そこで,本研究では,手指消毒にお いて主流となっているラビング剤の市場実態調査を行 い,より適切なラビング剤の選択に役立つ最新の情報を 収集し,その評価を行うことを目的とした. 方 法 調査期間は 2009 年 12 月 9 日から 2011 年 1 月 31 日 とした.対象は本邦で入手可能なエタノール含有のラビ ング剤とし,法的区分により薬事法規制の「医療用医薬 品」,「一般用医薬品」および「医薬部外品に該当する製 品」と薬事法による承認を受けていない「雑品」の 4 製品を対象とした. インターネットによる調査方法は,医薬品はゲノムネ ット医薬品データベース11)および販売メーカーサイト により,医薬部外品は販売メーカーサイトおよび通信販 売サイトより,雑品は通信販売サイトにより検索し,ボ トル容量の違いは区別しないものとした. 調査項目は,法的区分,薬効成分,用法・用量,性状 とし,特に対象製品のエタノール濃度(v/v)は日本薬 局方で定められている消毒用エタノール濃度である◯ 76.9~81.4 v/vに適合する製品と◯76 v/v以下,◯ 濃度不明の 3 製品に分類した.尚,エタノール濃度が 添付文書に記載されている場合はその値を用い,添付文 書に記載されていない場合はパンフレットなど公開され ている情報を使用した. 用法・用量の調査では「3 mL」,「1 プッシュ」ある いは「500 円玉大」で塗擦するなどの使用量の目安を表 示している製品,使用量の目安を記載しておらず「適量」 または「そのまま」塗擦すると表示されている製品およ び記載していない製品に分類した. 結 果 . 製品の法的区分と薬効成分 今回検索された製品数は総数で 164 製品であり,医 療用医薬品が 33 製品(20),一般用医薬品が 27 製品 (17),医薬部外品が最も多く 87 製品(53),雑品が 17 製品(10)であった(表). 全 164 製品について,1 社あたりで取り扱っている製 品数とその法的区分の内訳を表に示した.速乾性手指 消毒製剤は合計 90 企業が取り扱っており,その中で, 3 品目以上取り扱っていた 13 社(3 社が 10 製品以上) は,いずれも雑品以外を取り扱っている製薬関連企業で あった.これに対して,医薬部外品のみを扱っている 49 社,雑品のみを扱っている 16 社の大半は日用雑貨な どを扱う一般企業であった. 薬効成分別に分類するとエタノールのみの製品が最も 多く 77 製品(47),ベンザルコニウム塩化物(BC)含 有エタノール製品(BC 製品)が 55 製品(34),CHG 含 有エタノ ール製品(CHG 製品)が 23 製品(14)であ り,この 3 製品で全体の 95を占めていた.その他の 9 製品は,法的区分の医療用医薬品であるアルキルジア ミノエチルグリシン塩酸塩含有エタノール製品が 1 製 品,ポビドンヨード含有エタノール製品が 1 製品,医 薬部外品であるベンゼトニウム塩化物を含有するエタ ノール製品が 3 製品,イソプロピルメチルフェノール を含有するエタノール製品が 3 製品およびトリクロサ ン を 含有 す る エタ ノ ー ル製 品 が 1 製 品で あ った . ま た,医療用医薬品では全てにおいて BC あるいは CHG などを含有する製品であり,雑品はすべて薬効成分をエ タノールのみとする製品であった(表). . エタノール濃度による分類 全 164 製品におけるエタノール濃度は「76.9~81.4 v/ v」に適合する製品が 77 製品(47),「76 v/v以下」 の製品が 25 製品(15),「濃度不明」の製品が 62 製品 (38)であった.(表). エタノールのみの 77 製品(表)では,76.9~81.4 v/ vに適合する製品が 59 製品(76),76 v/v以下の 製品が 9 製品(12),濃度不明の製品が 9 製品(12) であった(表).法的に区分別すると一般用医薬品のす べて(13 製品)および医薬部外品(47 製品)の 91(43 製 品)が 76.9~81.4 v/vに適合するのに対し,雑品(17 製品)では 76 v/v以下または濃度不明の製品が 82 (14 製品)を占めていた.また,エタノール濃度が最も

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表 社あたりで取り扱っている速乾性手指消毒剤の製品数とその内訳 社あたりで取り 扱っている製品数 (製品) 医療用医薬品 (製品) 一般用医薬品(製品) 医薬部外品(製品) 雑(製品)品 企 業 数(社) 製品数合計(製品)                                                                                                                                        表 エタノール濃度による速乾性手指消毒剤の分類 .~. v/v v/v以下 エタノール濃度不明 合 計 エタノール 単独含有 製剤のみ 製品 () ()製品 ()製品 (製品) 全製品 ()製品 ()製品 ()製品 (製品) 表 速乾性手指消毒剤における用法・用量の分類 「mL」等 の使用量の 目安を表示 「適量」または 「そのまま」塗 擦すると表示 使用料目安 の記載なし 合 計 全製品 (製品) (製品) (製品) (製品) 低い製品は医薬部外品では 50 v/v,雑品では 55 v/ vであった. また,BC 製品は 55 製品あり(表),エタノール濃度 は 76.9~81.4 v/vに適合する製品が 22(12 製品), 76 v/v以下の製品は 22(12 製品)および濃度不明の 製品は 56(31 製品)であった.同様に CHG 製品は 23 製品であり(表),エタノール濃度は 76.9~81.4 v/v に適合する製品が 22(5 製品),76 v/v以下の製品 が 9(2 製品)および濃度不明の製品が 69(16 製品) であった. その他の薬効成分を含有している 9 製品では(表) 76.9~81.4 v/vに適合する製品が 1 製品(11)であり 医療用医薬品であった.76 v/v以下の製品は 2 製品 (22)該当し,医薬部外品であった.濃度不明の製品 は 6 製品(67)であり 1 製品は医療用医薬品,残りの 5 製品は医薬部外品であった. . 用法・用量の表示 全 164 製品のうち使用量の目安を表示している製品 は 20(32 製品),「適量」または「そのまま」塗擦す ると表示している製品は 69(114 製品),用法・用量 を記載していない製品は 11(18 製品)であり,80の 製品が使用量の目安を表示していなかった(表). 全 164 製品のうち医療用医薬品である製品は 33 製品 であり(表),そのうち,使用量の目安を表示していた 製品は 33 製品中 17 製品(52)だった.この 17 製品の 内訳は BC 製品が 16 製品とその他の薬効成分の製品が 1 製品であった.これら以外の医療用医薬品 16 製品 (48)はすべて使用量の目安が表示 されていなかっ た.一方,一般用医薬品では 27 製品中 2 製品(7),

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表 速乾性手指消毒剤の性状による分類 ゲル状 液 状 泡 状 合 計 全製品 (製品) (製品) ( )製品 (製品) エタノール単 独含有製剤 (製品) (製品) ― (製品) 医薬部外品では 87 製品中 11 製品(13)および雑品で は 17 製品中 2 製品(12)のみで使用量の目安が表示さ れていた. また,エタノールのみ含有する製品は 77 製品あり (表),そのうち,使用量の目安を表示している製品は 7 製品(9)のみであった.この 7 製品の内訳は一般用 医薬品が 2 製品,医薬部外品が 3 製品および雑品が 2 製品であった.さらに BC 製品は 55 製品あり,そのう ち,使用量の目安を表示している製品は 23 製品(42) であった.この 23 製品の法的区分別は医療用医薬品 17 製品中 16 製品(94),医薬部外品 28 製品中 7 製品 (25)であった.医療用医薬品に該当する BC 製品の先 発品の用法・用量は「医療従事者の通常の手指消毒の場 合は 3 mL を 1 回」および「手術時手洗いの場合は 3 mL を 3 回」の 2 通りの用法・用量が明確に記載されて いた.また,後発品の用法・用量は先発品と同様の記載 内容であり,泡状の製品においては用量のみ「適量」と 表示されていたがそれ以外は同様の記載内容であった. CHG 製品は 23 製品あり(表),使用量の目安を表示 している製品は 1 製品(5)のみであった.この製品は 医薬部外品であり,その他の製品はすべて「適量」また は「そのまま」塗擦すると表示されていた. その他の薬効成分の製品は 9 製品あり(表),使用量 の目安を表示している製品は 1 製品のみであった.そ の製品はアルキルジアミノエチルグリシン含有エタノー ル製品(医療用医薬品)であった. . 性状 今回検索された製品の性状はゲル状,液状および泡状 の 3 製品であった.全 164 製品ではゲル状が 50(81 製品),液状が 48(80 製品)および泡状が 2(3 製品) であり,ゲル剤と液剤が同程度の割合であった(表). 法的に区分すると医療用医薬品 33 製品中ゲル状が 9 (3 製品),液状が 88(29 製品)および泡状が 3(1 製 品)であり,一般用医薬品 27 製品中ゲル状が 37(10 製品),液状が 63(17 製品)であり,特に医療用医薬 品では液状が 88を占めていた.一方,医薬部外品 87 製品中ゲル状が 59(51 製品),液状が 39(34 製品) および泡状が 2(2 製品)であり,雑品(17 製品)はすべ てゲル状製品であった.医薬部外品と雑品では液状より もゲル状の方が多かった. エタノール単独含有製剤 77 製品(表)のうち,ゲル 状は 61 製品(79),液状は 16 製品(21)であった(表 ).法的区分別では,一般用医薬品 13 製品中ゲル状が 8 製品(62)および液状が 5 製品(38),医薬部外品 47 製品中ゲル状が 36 製品(77)および液状が 11 製品 (23)であり,雑品 17 製品はすべてゲル状製品であっ た.エタノールのみの製品においては液状よりもゲル状 の方が多かった. BC 製 品 は 55 製 品 あ り ( 表) , ゲ ル 状 が 7 製 品 ( 13  ) , 液 状 が 45 製 品 ( 82 ) お よ び 泡 状 が 3 製 品 (5)であり,液状の割合が高く,泡状 3 製品は BC 製 品のみであった.法的区分別では医療用医薬品 17 製品 中液状が 16 製品(94)および泡状が 1 製品(6),一 般用医薬品(10 製品)はすべて液状製品,医薬部外品 28 製品中ゲル状が 7 製品(25),液状が 19 製品(68)お よび泡状が 2 製品(7)であり,医薬部外品のみにゲル 状製品があった. また,CHG 製品は 23 製品あり(表),ゲル状が 6 製 品(26)および液状が 16 製品(74)であり,液状の割 合が高かった.法的区分別では医療用医薬品 14 製品中 ゲル状が 3 製品(21)および液状が 11 製品(79),一 般用医薬品 4 製品中ゲル状が 2 製品(50)および液状 が 2 製品(50),医薬部外品 5 製品中ゲル状が 1 製品 (20)および液状が 4 製品(80)であり,医療用医薬 品と医薬部外品では液状の方が多かった. その他の薬効成分を含有する製品は 9 製品あり,医 療用医薬品(2 製品)はすべて液状であり,医薬部外品(7 製品)はすべてゲル状であった. 考 察 ラビング剤のうちで,医薬品(医療用,一般用)と医薬 部外品は薬事法による承認を受けており,規格および試 験方法が規定され,効能・効果を表示することが許可さ れている.一方,雑品は薬事法の承認を受けておらず, 規格および試験法は製造会社の独自基準によるものであ る.また,効能・効果等の表現があれば薬事法違反で販 売停止等の処分が下されることがあるため,効能を表示 することが許可されておらず,記載されていないかもし くは「洗浄」や「除菌」などと表現されていた.今回検 索された 164 製品のうち,医薬部外品は 87 製品で最も 多かった(表).これは,一般用医薬品は薬剤師または 登録販売者がいる店舗でなければ販売することができ ないのに対し,医薬部外品と雑品は場所を問わず販売で きること,医薬部外品は雑品では許可されていない「殺 菌」や「消毒」といった効能を表示できることなどによ ると考えられるが,詳細については不明である. 薬効成分別ではエタノールのみの製品が 77 製品と最 も多かったが,医療用医薬品に該当するものはなかった (表).医療用医薬品に該当するエタノールのみの製品

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である「消毒用エタノール」の効能・効果は「手指・皮 膚の消毒,手術部位(手術野)の皮膚の消毒,医療機器の 消毒」となっており,医療機器等の消毒にも用いられる ものであったため,今回の対象からは除外した. 医薬品と医薬部外品はどちらも薬事法による規制を受 ける.さらに,今回検索された医薬品はいずれも許可医 薬品(医薬品の製造販売許可を受けている医薬品)であ り,入院が必要な程度の副作用が生じた際は副作用被害 救済制度の対象となっている.特に,医療用医薬品では 生物学的同等性の審査も規定されている12).一方,医 薬部外品は医薬品と比較して承認基準が厳格でないこと および副作用被害救済制度の対象外であることから,医 療処置を目的とした消毒では医薬品を用いるのが望まし いと考えられる.しかし,入手のしやすさや価格の観点 から医薬部外品の有用性も否定できない.なお,今回は 法的区分製品(医療用医薬品,一般用医薬品,医薬部外 品に該当する製品,雑品)の使用目的調査は実施してい ないが,製品の法的区分による適正使用を推進するため には,使用実態調査を調査し,製品毎に使用目的を明確 化することが必要と思われる. 薬効成分がエタノールのみの 77 製品において,一般 用医薬品の全てと医薬部外品の 9 割が日本薬局方で定 められている消毒用エタノール濃度(76.9~81.4 v/v) に適合していた.一方,雑品では「濃度不明」および 「76 v/v以下」の製品が約 8 割を占めていた.エタノー ルは,細菌に対しては約 50の濃度でも効果があると の報告があるが13),「76.9~81.4 v/v」の濃度が一般 細菌に対して最も効果が高いとされ14),ウイルスに対 してはより高濃度の方が不活化効果は高いとの報告15) もある.WHO のガイドライン2)ではエタノール濃度が 75~85 v/vで最も消毒効果が高く,ラビング剤として 消毒用エタノール範囲内の 80 v/v濃度を推奨してい る.BC 及び CHG を含有する製品では,エタノール濃 度が不明なものが BC 製品で 56,CHG 製品 73あ った.これは薬事法で BC や CHG などの薬効成分の分 量記載義務はあるが,薬効成分に加えてエタノールを含 有する製品においてエタノールは添加物扱いのため分量 記載義務がないためであると考えられる.BC や CHG 等の薬効成分を含有していても,エタノール濃度は消毒 効果に大きな影響を与える.そのため添加物扱いでも全 製品で濃度が記載されるべきであり,表示されるよう法 的な整備が必要と考えられる. 表示されている用法・用量の調査では,製品全体で 80の製品が「3 mL」や「1 プッシュ」といった使用 量の目安が表示されていなかった(表).医療用医薬品 (33 製品)では 17 製品(52)で使用量の目安が表示され ているが,このうち 16 製品は BC 製品であった.この BC 製品の先発品の用法・用量は「医療従事者の通常の 手指消毒の場合は 3 mL を 1 回」および「手術時手洗い の場合は 3 mL を 3 回」の 2 通りの方法が明確に表示さ れており,後発品の BC 製品においても用法・用量は先 発品と同様の表示内容であった.一方,CHG 製品では 先発品は「そのまま用いる」との表示のみで用量に関す る表示はなく,後発品においても同様であった.すなわ ち,後発品の用法・用量は先発品に準じて表示されてい た.使用量の目安を表示していない製品が多かったが, 「3 mL」などの用量の表示がされていても,性状や 1 プ ッシュで排出される薬液量が各製品で異なると考えられ る.したがって,各製品で十分な消毒効果が得られる適 切で具体的な用法・用量を表示する必要があると考え る.米国 CDC のガイドライン1)においては「10~15 秒 間擦りあわせた後,手が乾いた感じであれば塗布量が不 十分である可能性がある」との記載がある.WHO のガ イドライン2)にはラビング法の所要時間が 20~30 秒間 と記載されている.また,2003 年の厚生労働省科学特 別研究「医療施設における院内感染(病院感染)防止につ いて」9)では 15 秒以内に乾燥しない程度の十分量(約 3 mL)と報告されている.以上より,約 3 mL を目安に使 用する,もしくは乾燥までに 20~30 秒かかる量を使用 する必要があると考える. 製品の性状に関しては,製品全体ではゲル状と液状が 同程度の割合であったが,エタノールのみの製品(77 製 品)では,ゲル状製品が 61 製品(79)であり多くを占 めていた(表).ゲル状製品は液状と比較し,液ダレし にくい,手に馴染むため塗り拡げやすい,保湿性に優れ ているといった特徴があることから多くを占めているも のと考えられる.また,医療現場において携帯に便利な 小容量製品もゲル状製品で多く販売されている.しか し,ゲル状製品は液状と比べ,べとつくといった欠点も ある.エタノール以外の薬効成分を含有する製品では, ゲル状製品よりも液状の方が多かった.これはゲル化剤 を加えることにより薬効成分が沈澱するといった配合変 化等(例増粘剤カルボキシビニルポリマーと CHG)の 問題が影響しているためと考えられる.消毒効果は液状 製品よりもゲル状製品の方が劣るとの報告16)もあるが, Kampf ら17)や梶浦ら18)は,80 v/vエタノールを含有 するゲル状製剤は,同濃度の液状製剤と同等の菌数減少 効果を発揮すると判断できると報告している.また,白 石ら19)や宮松ら20)も液状およびゲル状手指消毒薬の殺 菌効果には違いがないことを報告している.このため, ゲル状と液状による薬効の違いは現状では明確ではない ため,消毒効果を製品ごとに評価し,さらに医療従事者 の使用感等を考慮して手指消毒の遵守率が向上するよう な製品を選択することが望まれる. 利益相反について利益相反はない.

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文 献

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(7)

Marketing Research of Alcohol-based Hand Sanitizer Takahiro NAKANISHI, Kaoru CHIBA, Kumiko NODAand Koji TADANO

Department of Practical Pharmacy, School of Pharmaceutical Sciences, Health Sciences University of Hokkaido

Abstract

Hand antisepsis is the most basic method to prevent expanding infection transmitted by the hands of medical staŠ. Appropriately use of hand antisepsis is very important. At present, the rub-bing method with alcohol-based hand sanitizer (rubrub-bing detergent) is recommended and is the major clinical practice if medical staŠ hands are not severely contaminated. How products of rub-bing detergent are used remains unknown, because the market for rubrub-bing detergent was expanded when H1N1 ‰u was prevalent in 2009. In this report, we researched the actual situation of market-ing products of rubbmarket-ing detergent by collectmarket-ing the latest information, to evaluate disposition of the products and appropriate selection. We researched the legal division, eŠective ingredients of an-tisepsis, method of use and properties of the products. A total of 164 products were examined. The products were divided to four types by legal classiˆcation as ethical pharmaceuticals, nonproprieta-ry drugs, nonmedical products and miscellaneous types. We thought that miscellaneous types were not appropriate for clinical use. The volume needed for one time hand antisepsis was not decided for almost all rubbing detergent products. We considered that about 3 mL of rubbing detergent was required that took 2030 seconds for dryness. Additionally, properties of rubbing detergent were divided into three types, gel, liquid and bubble. We must select appropriate hand antisepsis con-sidering the factors as e‹cacy of antisepsis and feeling of use. These ˆndings should promote ap-propriate hand hygiene.

参照

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