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農研機構畜産草地研究所シンポジウム|肉用牛における最適な微量元素補給による繁殖・育成・肥育の成績向上

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全文

(1)

肉用牛における

最適な微量元素補給による

繁殖・育成・肥育の成績向上

2014年11月 鳥居伸一郎 博士(農学) ノーバス・インターナショナル日本支店 Author:

(2)

本日の内容

 粗飼料の銅と亜鉛の含量は、以前よりも減っている  日本飼養標準要求量を満たしていても、分娩前後の繁殖牛に 銅を、育成期の子牛にコバルト・銅・亜鉛を補給すると、繁殖・ 育成成績が向上した。したがって、一般農場の上記ステージ における銅や亜鉛の要求量は、日本飼養標準よりも高い。  肥育期の亜鉛要求量は育成期と同じと考えてよい  繁殖牛への鉄補給が有効である可能性

(3)

3

なぜ微量元素を補給する必要が

あるのか?

(4)

必須微量元素

 亜鉛、マンガン、銅、鉄、コバルト、ヨウ素、セレン、(クロム)  一日の必要摂取量がmg単位  特定の生体物質、酵素、ホルモンの構成要素  例: ヘモグロビン(鉄)、セルロプラスミン(銅)、ビタミンB12(コ バルト)、甲状腺ホルモン(ヨウ素)  不足すると、タンパク質/酵素/ホルモンの量・機能・活性が 低下し、家畜の生産性や健康に悪影響を及ぼす

(5)

5

必須微量元素が関わる生体機能

 組織形成  ケラチン、表皮、粘膜 Zn,Cu血管 Cu軟骨 Mn  抗酸化システム Zn,Cu,Mn,Fe,Se  免疫  細胞性免疫 Zn,Mn  体液性免疫(抗体) Cu  ホルモン Mn,I  エネルギー代謝 Fe,Co  食欲 Zn

(6)

飼料原料に含まれる微量元素だけでは不足

 家畜の育種改良により、増体・生殖・産卵・産乳の 遺伝的能力が高まっており、それに見合う栄養素の 供給が必要  飼養環境のストレスの増大や、健康状態の悪化も、 栄養素の要求量を増加させている  飼料の微量元素含量が以前よりも減っている

(7)

7 n 平 均 ±SD 成分表 アルファルファヘイキューブ 41 9.3±3.8 9.2 イタリアンサイレージ 71 5.3±2.0 10.0 イタリアン乾 草 (輸 入 ) 38 2.5±1.5 イナワラ(国 内 ) 168 2.5±1.3 4.1 イナワラ(輸 入 ) 11 3.9±1.3 稲 発 酵 粗 飼 料 WCS 69 4.7±1.9 オーツヘイ(輸 入 ) 89 2.6±1.2 スーダン(輸 入 ) 36 5.4±1.2 チモシーラップ/乾 草 (国 内 ) 241 4.9±2.1 8.7 チモシー乾 草 (輸 入 ) 94 4.4±1.6 トールフェスク乾 草 (輸 入 ) 20 2.6±1.7 トウモロコシサイレージ 38 4.9±1.7 ビートパルプ 20 6.9±1.6 6.9 野 草 生 草 /サイレージ/乾 草 30 5.9±4.1

粗飼料の銅含量 (mg/kg乾物)

2009-2011年

要求量 日本飼養標準肉牛=8mg/kg 京都大学、2012

(8)

粗飼料の亜鉛含量 (mg/kg乾物)

2009-2011年

要求量 日本飼養標準肉牛=30mg/kg N 平均±SD 成分表2009 アルファルファヘイキューブ 41 26± 8 27 イタリアンサイレージ 71 32±14 57 イタリアン乾草(輸入) 38 20± 8 - イナワラ(国産) 168 35±12 47 稲WCS 69 45±36 - オーツヘイ(輸入) 89 11± 4 - スーダングラス乾草(輸入) 36 29± 9 - チモシーラップサイレージ 241 26±10 27 チモシー乾草(輸入) 94 26±11 - フェスク乾草(輸入) 20 13± 6 - トウモロコシサイレージ 38 22± 7 - ビートパルプ(国内・輸入) 20 17± 6 16

(9)

9

微量元素補給の実態と

飼育成績向上に関する

(10)

研究の背景

 日本飼養標準の微量元素要求量は、飼育ステージに関係な く一律だが、それは正しいのか?  微量元素の要求量や業界推奨量は、ほとんどが北米の知 見に基づくが、日本とは品種、子牛生産体系、粗飼料、飼養環 境が大きく異なる。微量元素栄養も異なるのではないか?  成績の良い農場は、どのくらい給与しているのか?  日本独自のデータを得ることで、農場成績を高めるための 最適な微量元素補給方法を明らかにしたい。

(11)

11 123 16 8 12 25 1 8 10 27 13 29 44 35 39 13 1 6 1 4 1 8 4 5 4 17

東北,

85

九州,

136

北海道,

123

10 2

飼料収集した農場

466戸

(12)

分娩間隔と周産期の飼料

有意な(P<0.05)回帰が得られた元素

傾き P 全国301戸 マンガン -0.0269 0.04-0.0101 0.03 銅/モリブデン比 -0.223 0.04 統計モデル: 目的変数は分娩間隔(日)、説明変数は飼料中元素含量(mg/kg) 地域(4水準)・哺育方法(母乳/人工哺育/半々か不明の3水準)も要因に加えた。(いずれも有意、P<0.01) 傾きの意味: マンガンが100 mg/kg増加 = 分娩間隔が2.69日短い 鉄が100 mg/kg増加 = 分娩間隔が1.01日短い 銅が10 mg/kg増加 = 分娩間隔が4.46日短い(モリブデンが0.5 mg/kgの時)

(13)

13

飼料の銅含量と分娩間隔

飼料中銅含量 mg/kg 戸数 分娩間隔 日 九州沖縄 - 5.9 21 394.6±5.3 6.0- 9.9(要求量) 37 399.3±4.0 10.0-13.9 25 395.8±4.9 14.0-17.9 13 381.9±6.7 18.0- 12 375.5±7.0* *6.0-9.9mg/kg(要求量)の群に対して有意

(P<0.05, Tukey’s Studentized range test)

(14)

飼料の銅含量と分娩間隔

飼料中銅含量 mg/kg 戸数 分娩間隔 日 九州沖縄 - 5.9 21 394.6±5.3 6.0- 9.9(要求量) 37 399.3±4.0 10.0-13.9 25 395.8±4.9 14.0-17.9 13 381.9±6.7 18.0- 12 375.5±7.0* *6.0-9.9mg/kg(要求量)の群に対して有意

(P<0.05, Tukey’s Studentized range test)

一般農場で良好な繁殖成績を得るための

要求量は、

(15)

15

市場体重÷日齢と育成期の飼料

有意な(P<0.05)回帰が得られた元素

傾き

P

全国151戸

亜鉛

0.000754

0.04

統計モデル: 目的変数は子牛の出荷時体重÷日齢(kg/日) 説明変数は飼料中元素含量(mg/kg) 地域(4水準)・哺育方法(母乳/人工哺育/半々か不明の3水準)も要因に加えた。(地域のみ有意、P<0.01) 傾きの意味: 亜鉛が40 mg/kg増加 = 体重÷日齢が0.030kg/日増加 = 270日齢出荷で8.1kgの体重増 京都大学、2012

(16)

成績上位と下位の農場の飼料比較

(九州、育成期飼料、mg/kg乾物)

♂体重÷日齢 上位10% ♂体重÷日齢下位10% 日本飼養標準 成績平均 1.22kg/日 0.96kg/日 マンガン 134 100 40406 603 50 コバルト

0.96

*

0.50

0.10

13.6

*

8.2

8 亜鉛

70

*

46

30 *, P<0.05

(17)

17

成績上位と下位の農場の飼料比較

(九州、育成期飼料、mg/kg乾物)

♂体重÷日齢 上位10% ♂体重÷日齢下位10% 日本飼養標準 成績平均 1.22kg/日 0.96kg/日 マンガン 134 100 40406 603 50 コバルト

0.96

*

0.50

0.10

13.6

*

8.2

8 亜鉛

70

*

46

30 *, P<0.05

本来持っている増体能力を

一般農場で100%発揮する

亜鉛要求量は、

日本飼養標準30mg/kgよりも高い70以上?

京都大学、2012

(18)

繁殖・育成の新しい推奨量

(粗飼料+濃厚飼料+添加材)

補給試験により成績改善を実証

繁殖牛

分娩前1ヶ月 分娩後種付け まで 現状 上:全国 下:九州

育成牛

3ヶ月齢以降 上:全国現状 下:九州 日本飼 養標準 適正値 コバルト 0.10 0.66±0.660.76±0.64 1.0 0.65±0.610.68±0.43 0.10 銅 18 9.9±6.5 10.8±7.0 14 9.8±4.4 10.3±4.0 8 亜鉛 30 59±40 65±49 70 55±21 55±20 30

(19)

19

補給試験の方法

 繁殖雌牛(29戸)  特注プレミックス: ペプチド銅(銅として2,000 mg/kg)  50g/日給与、分娩予定日1ヶ月前~初回種付 ※一部農場は80g/日  銅100mg/日 → 給与飼料でおよそ+12.5mg/kg上昇  育成子牛(33戸)  特注プレミックス: 硫酸コバルト(コバルトとして200mg/kg)、ペプチド銅(銅 として2,000 mg/kg)、ペプチド亜鉛(亜鉛として7,000 mg/kg)  25g/日給与、概ね3ヶ月齢~素牛出荷 ※一部農場は40g/日  コバルト5mg/日、銅50mg/日、亜鉛175mg/日 → 亜鉛は給与飼料でおよそ+35mg/kg上昇  粗飼料、配合飼料、添加材、固形塩は、農場によって様々  補給牛と非補給牛(全頭給与の場合、試験前1年間)を比較

(20)

結果: 繁殖雌牛の分娩間隔(CI)

•基礎飼料の銅: 9.6±4.4 mg/kg わが国の平均レベル、日本飼養標準充足 投与量 g/日 0 50 80 銅 mg/日 0 100 160 頭数 911 197 101 分娩間隔、日 406.8 ±2.8a 387.5 ±5.2b 382.0 ±7.6b 最小自乗平均値±SE 分散分析 要因 農場 処理 季節 農場×処理 P値 <0.0001 <0.0001 0.04 0.01 a,b: P<0.01 平均的な農場は、銅不足で分娩間隔が約19日延長した状態 → 現状よりもさらに補給すべき 統計モデル : CI = 農場(29) + 処理(3) + 季節(4) + 農場×処理

(21)

21

結果:育成子牛の市場DG

•基礎飼料のコバルト 0.42±0.26 mg/kg、 銅 7.4±1.9 mg/kg、 亜鉛 45±11 mg/kg 投与量、 g/日 0 25 40 頭数 605 245 131 市場DG、kg/日 0.987 ±0.005a 1.018 ±0.008b 0.990 ±0.010a 最小自乗平均値±SE 分散分析 要因 農場 処理 性 農場×処理 性×処理 P値 <0.0001 0.01 <0.0001 0.18 0.11 a,b: P<0.05 現状の摂取量では、本来持っている発育能力が引き出せていない → 子牛のコバルト・銅・亜鉛要求量は、現状の摂取量よりも高い 統計モデル : 市場DG = 農場(33) + 処理(3) + 性(2) + 農場×処理 + 性×処理 京都大学、2012

(22)

農場主のコメント

戸数

繁殖雌牛

29戸中

子牛の下痢が減った

10

毛色が茶

→黒

4

育成子牛

33戸中

風邪が減った

11

肺炎治療の注射本数が減った

4

獣医師の治療が減った

7

上の3つのいずれか

17

毛色が茶

→黒

3

飼養標準レベルの銅や亜鉛では、抗病性が低下した状態 → 母牛と子牛に、銅や亜鉛をもっと与えるべき

(23)

23

なぜ銅を補給すると

繁殖成績が良くなったのか?

銅を含有する酵素 抗酸化酵素SOD: 酸化ストレスは卵巣機能や胚の生存率を低下させる リジルオキシダーゼ: コラーゲン/エラスチン架橋 子宮組織の回復 分娩前後1~2ヶ月の母体は銅不足 (胎児の成長に奪われる) → 要求量が高い時期と考えられる

(24)

母牛への銅補給は

子牛の健康にも有効(1)

母乳は、鉄と銅が欠乏している → 貧血になりやすい状況 母乳 NRC推奨量 代用乳 マンガン 0.2-0.4 40 鉄 3.0 100 コバルト 0.004-0.008 0.11 銅 0.1-1.1 10 亜鉛 15-38 40 ヨウ素 0.1-0.2 0.50 セレン 0.02-0.15 0.30 mg/kg乾物、NRC乳牛2001

(25)

25

母牛への銅補給は

子牛の健康にも有効(2)

分娩前の銅補給により、  生時の子牛体内の銅蓄積量が増え、母乳哺育でも 銅欠乏になりにくくなる  初乳中免疫グロブリンIgGが増える(乳牛での研究)

(26)

なぜ育成牛にコバルト・銅・亜鉛を

補給すると増体が向上したのか?

コバルト: ルーメン微生物の活性を高める プロピオン酸を増やす(=飼料効率↑) 銅: 骨成長、鉄の運搬、免疫(抗体産生) 亜鉛: 筋肉のタンパク質蓄積 増体↑ 飼料中CPの充足+亜鉛の充足 粘膜上皮、免疫 肺炎・風邪↓

(27)

27

新しい推奨値と現状のギャップ

推奨値

繁殖牛

分娩前1ヶ月 分娩後種付け まで

現状

上:全国 下:九州

推奨値

育成牛

3ヶ月齢以降

現状

育成牛

上:全国 下:九州 日本飼 養標準 適正値 コバルト 0.10 0.66±0.66 0.76±0.64 1.0 0.65±0.61 0.68±0.43 0.10 銅 18 9.9±6.5 10.8±7.0 14 9.8±4.4 10.3±4.0 8 亜鉛 30 59±40 65±49 70 55±21 55±20 30 上記推奨値を満たすよう銅や亜鉛を強化した配合飼料も増えている 京都大学、2012

(28)

肥育牛への推奨量は?

(29)

29

和牛肥育における亜鉛給与試験の結果まとめ

(30)

肥育農家での飼料調査

肥育前期

の飼料 (mg/kg乾物)

平 均 ±SD 範 囲 日 本 飼 養 標 準 適 正 値 マ ン ガ ン 97±43 50-208 40 279±131 107-654 50 コ バ ル ト 0.41±0.40 0.03-2.66 0.10 8.0±2.0 4.7-12.8 8 亜 鉛 50±13 31-95 30 モ リ ブ デ ン 0.76±0.21 0.38-1.22  亜鉛が70mg/kgに達している農場は非常に少ない

(31)

31

肥育農家での飼料調査

肥育後期

の飼料 (mg/kg乾物)

平 均 ±SD 範 囲 日 本 飼 養 標 準 適 正 値 マ ン ガ ン 83±36 15-171 40 172±91 89-528 50 コ バ ル ト 0.61±0.67 0.02-3.42 0.10 7.3±2.0 5.0-14.3 8 亜 鉛 59±27 32-177 30 モ リ ブ デ ン 0.56±0.24 0.15-1.35  肥育後期の亜鉛補給  ビタミンA欠乏からのマイルドな回復作用?  肉色が濃くなるケースが稀にある 京都大学、2009

(32)

最新の話題

(33)

33

これまでの鉄の補給についての一般常識

 鉄は、(貧血の新生子牛や出血性疾患時を除いて)補給の必 要はない。粗飼料に要求量の数倍以上の鉄が含まれるため。  “鉄はむしろ悪者“”添加しない方が良い”  子牛では過剰な鉄は増体低下要因 – 飼料中250mg/kgから  亜鉛や銅の吸収率を低下させる  ビタミンを酸化して破壊する  病原微生物の増殖を助長する  肥育牛では、鉄の摂取量が多いと肉色が濃くなる  繁殖牛や乳牛では、十分に調べられていない

(34)

平 均 範 囲 日 本 飼 養 標 準 要 求 量 MTL1 要 求 量 未 満 マ ン ガ ン 177 30-1,082 40 1,000 1.6% 353 47-2,825 50 1,000 0.3% コ バ ル ト 0.63 ND-5.37 0.10 10 4.4% 10.1 2.2-49.3 8 100 50.5% 亜 鉛 61 11-456 30 500 13.7% モ リ ブ デ ン 2 0.77 0.11-4.01 6 1MTL:摂取許容限界 2 銅 の 吸 収 利 用 性 を 低 下 さ せ る

全国の集計結果

周産期の繁殖牛に与える飼料

(mg/kg乾物) MTL超:マンガン0.3%、鉄4.6%、他はなし

(35)

35

酪農家での飼料調査

泌乳前期の飼料 (mg/kg乾物)

平 均 ±SD 範 囲 日 本 飼 養 標 準 要 求 量 要 求 量 未 満 NRC 要 求 量 要 求 量 未 満 マ ン ガ ン 68±22 24-163 40 7.1% 14 0% 417±179 96-900 50 0% 15 0% コ バ ル ト 0.70±0.76 ND-3.59 0.10 2.4% 0.11 2.4% 10.4±4.0 4.4-22.9 10 64.3% 11 69.0% 亜 鉛 59±21 24-101 40 19.0% 48 40.5% モ リ ブ デ ン 0.81±0.30 0.18-1.43 NRC2001:体重 680kg、泌乳 90 日、乳量 35kg、DMI23.6kg 京都大学、2012

(36)

粗飼料中の鉄の利用性

 粗飼料を分析すると、数百mg/kg検出される  しかし、粗飼料の鉄含量が高い場合、それは付着した土壌由来  土壌の鉄の大部分は、酸化鉄や水酸化鉄である。消化管内で 溶けにくく、牛の利用性が極めて低い  土壌由来を差し引くと、飼料の鉄は要求量ギリギリ?  分娩前後は要求量を満たせていない?

(37)

37

ヒトの産科学

 鉄欠乏性貧血は2-3割の妊婦に起こる。  非妊娠時より血液量は5割増えるが、赤血球量は2-3割しか増えない ので、希釈が起こるから。 (循環器の負担を減らすメリット?)  鉄欠乏性貧血は、微弱陣痛、難産、低体重児出産、産褥熱、 のリスク因子である。  鉄欠乏性貧血の妊婦には、鉄剤投与や食事指導が有効。 牛も妊娠により鉄欠乏になりやすいのか?

(38)

周産期の鉄の役割(仮説)

 ヘモグロビン 酸素運搬  ミオグロビン 筋肉での酸素の貯蔵  シトクロム 呼吸鎖・電子伝達系(エネルギー産生)  鉄が不足すると、酸素不足・エネルギー不足になり  筋力低下 → 微弱陣痛、難産、起立不能、第四胃変位  胎仔への酸素供給不足 → 新生子牛活力低下  分娩後のNEB悪化 → ケトーシス、繁殖障害

(39)

39

鉄の補給試験の方法(先行実施分)

 北海道5戸、東北12戸  プレミックスを農場に2013年2月から1年間支給  MeijiSeikaファルマ社から提供  処方1: 鉄900mg/日+銅300mg/日  処方2: 鉄500mg/日+銅300mg/日+マンガン200mg/日  有機(アミノ酸キレート)と無機(硫酸塩)の併用  銅: アミプラスCu + 硫酸銅  鉄: アミテツ + 硫酸鉄  マンガン: アミプラスMn  給与期間: 分娩予定日3週間前~初回授精  TMRの農場は、TMRに混合  給与牛の成績を、開始前1年間に分娩した非給与牛と比較  北海道: 牛群管理ソフト  東北: 繁殖獣医師保有データ+農場野帳

(40)

鉄と銅の併用が必要

 鉄が体内で運搬されるためには、銅の働きが必要。  銅含有酵素セルロプラスミン(フェロオキシダーゼ)が、小腸の側底膜を通過し た二価鉄を三価鉄に変える。鉄は二価でないと細胞膜を通過できないが、三価に変 わらないと血中トランスフェリンに結合できず必要臓器に効率的に運搬できない。  銅は骨髄における赤血球の分化・成熟にも関与している。  わが国の繁殖牛は、銅不足の飼料を与えられている。 銅不足を解消してこそ、鉄の補給効果が得られるはず!

(41)

41

基礎飼料中の微量元素

分娩前/分娩後, mg/kgDM 処方 飼料中Cu 要求量10 飼料中Fe 要求量50 分娩前TM添加 分娩後TM添加 北海道 Fe+Cu 13.4/12.0 152/204 配+固 配+添+固 北海道 Fe+Cu+Mn 5.9/7.5 100/192 配+固 配+添+固 北海道 Fe+Cu 10.7/6.7 67/382 配 配+添 北海道 Fe+Cu 15.0/8.5 75/122 配+添 配+添+固 北海道 Fe+Cu+Mn 14.2/8.3 103/231 配 配+添+固 北海道全体 11.8/8.6 99/226 東北 Fe+Cu 6.0/13.4 56/244 配 配+添+固 東北 Fe+Cu 15.5/9.6 97/203 配+添+固 配+添+固 東北 Fe+Cu 14.7/12.8 299/295 配+添+固 配+添+固 東北 Fe+Cu 11.6/11.4 136/252 配+添+固 配+添+固 東北 Fe+Cu 6.8/7.7 100/254 配+固 配+添+固 東北 Fe+Cu 6.4/10.2 137/179 配 配+添+固 東北 Fe+Cu+Mn 6.7/6.9 81/273 配 配+添 東北 Fe+Cu+Mn 10.1/11.5 75/161 配+固 配 東北 Fe+Cu+Mn 5.7/8.8 230/138 配+添 配+添 東北 Fe+Cu+Mn 12.4/22.4 339/629 配 配+添 東北 Fe+Cu+Mn 6.5/13.3 224/346 配+添 配+添+固 東北 Fe+Cu+Mn 9.5/15.5 285/237 配+添 配+添+固 東北全体 9.3/12.0 172/268

(42)

自然分娩率

非給与牛442頭 給与牛524頭

処方

非給与牛 給与牛

北海道 Fe+Cu 64 87 23 北海道 Fe+Cu+Mn 66 99 33 北海道 Fe+Cu 47 67 19 北海道 Fe+Cu 77 91 14 北海道 Fe+Cu+Mn 54 68 13

北海道全体

60.4

80.5

+20.1

→ 難産や、介助を要する分娩が減った 後産の落ちも良くなった

(43)

43

60日除籍率

非給与牛881頭 給与牛796頭 処方 非給与牛 給与牛 差 備考 北海道 Fe+Cu 8.4 3.7 -4.7 北海道 Fe+Cu+Mn 16.1 2.0 -14.1 北海道 Fe+Cu 8.1 4.5 -3.6 北海道 Fe+Cu 6.8 2.4 -4.3 北海道 Fe+Cu+Mn 1.5 3.3 +1.9 北海道全体 7.6 3.2 -4.5 東北 Fe+Cu 0.0 2.6 +2.6 東北 Fe+Cu 1.7 3.1 +1.4 東北 Fe+Cu 0.0 6.1 +6.1 東北 Fe+Cu 0.0 14.3 +14.3 飼槽のカビ発生→吸着剤使用 東北 Fe+Cu 2.6 0.0 -2.6 東北 Fe+Cu 5.0 0.0 -5.0 東北 Fe+Cu+Mn 10.6 5.9 -4.8 東北 Fe+Cu+Mn 0.0 5.6 +5.6 導入妊娠牛の増加・BCS管理悪化 東北 Fe+Cu+Mn 9.5 0.0 -9.5 東北 Fe+Cu+Mn 9.7 11.8 +2.1 東北 Fe+Cu+Mn 8.8 5.4 -3.4 東北 Fe+Cu+Mn 5.7 5.2 -0.5 東北全体 4.9 4.6 -0.3 ノーバス社、未発表

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農場聞き取り ○は改善の実感

処方 子牛下痢 減少 新生子牛 活力 周産期疾病減少 後産の 落ち 北海道 Fe+Cu ○ × ○四変 ○ 北海道 Fe+Cu+Mn 元々少 ○ ○起立不能,四変,ケト,脂肪肝,胎盤停滞 ○ 北海道 Fe+Cu ○ 元々良 ○ケト,四変 × 北海道 Fe+Cu × × ○低カル,ケト,胎盤停滞 ○ 北海道 Fe+Cu+Mn ○ ○ ○四変 ○ 東北 Fe+Cu ○ × ○低カル,起立不能,四変 ○ 東北 Fe+Cu ○ ○ ○四変,低カル ○ 東北 Fe+Cu ○ 未 ○低カル × 東北 Fe+Cu ○ 未 × ○ 東北 Fe+Cu ○ 未 ○胎盤停滞 ○ 東北 Fe+Cu 元々少 ○ ○低カル,起立不能,四変,胎盤停滞,産褥熱 ○ 東北 Fe+Cu+Mn ○ 未 × ○ 東北 Fe+Cu+Mn 元々少 未 ○四変 ○ 東北 Fe+Cu+Mn ○ ○ ○低カル,産褥熱,四変 未 東北 Fe+Cu+Mn 元々少 未 ○起立不能 未

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多くの農場で得られた結果

 分娩介助や難産の減少、後産の落ちの改善  子牛の活力改善と下痢減少  周産期疾病の減少  低カル、胎盤停滞、産褥熱、起立不能、四変、ケトーシス  60日除籍率の減少  2つの処方は同等の効果  共通する、鉄500mg/日+銅300mg/日が有効投与量  つまり、多くの農場では、分娩前後の鉄と銅が不足している  マンガンは現状の補給量で充足 → 肉用繁殖牛への鉄補給も、子牛の活力を改善するか?

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まとめ

 粗飼料の銅と亜鉛の含量は、以前よりも減っている  日本飼養標準要求量を満たしていても、分娩前後の繁殖牛に 銅を、育成期の子牛にコバルト・銅・亜鉛を補給すると、繁殖・ 育成成績が向上した。したがって、一般農場の上記ステージ における銅や亜鉛の要求量は、日本飼養標準よりも高い。  肥育期の亜鉛要求量は育成期と同じと考えてよい  繁殖牛への鉄補給が有効である可能性

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お問合せ先:

鳥居 伸一郎

Shinichiro Torii, PhD Novus International Pte ltd.

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