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効果的な地域防犯活動のためのボランティア支援システムの開発

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Academic year: 2021

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効果的な地域防犯活動のためのボランティア支援システムの開発

Development of volunteer supporting system for efficient regional crime prevention activities

土木工学専攻 21 号 齋藤勝久 Katsuhisa Saito

1.背景と目的

地域住民による「自分たちのまちは自分たちで守ろ う」とする機運が非常に高まっており,近年子どもや 弱者を不審者から守るための防犯ボランティア活動 が全国で展開されている.平成 21 年末時点で,全国の 防犯ボランティア団体は 42,762 団体にのぼり,その構 成員は 260 万人に達している.特に近年になって爆発 的に増加している

1)

が,この背景には,治安に対する不 信感の高まりがある. 内閣府が平成 18 年に治安に関す る調査を一般市民に行ったところ,86.6%が「治安は悪 くなったと思う」と答えている

2)

.一方で, 平成 21 年に 警察が認知した犯罪は 170 万件強であり

3)

,警察による 認知犯罪件数は近年減尐傾向にある.

このような状況にもかかわらず,現状では各地で行 われている犯罪対策の実態とその影響に対する調査 はあまり進んでいない

4),5)

.また防犯ボランティアの 活動は,活動が体系的に行われておらず

6)

,過剰な防犯 活動が原因で疲れを感じてしまう『防犯疲れ』の問題 も指摘されている

5)

.

そこで本研究では,地域住民が地域状況や発生して いる犯罪特性に応じて効果的に防犯活動を実施でき る環境整備を目指した.結果的には,現在全国各地で 普及している安全・安心メールと呼ばれる行政サービ スを利用し,地域のボランティアが独自に地域活動の 分析や評価を行い,効果的な対策を効率よく立案し, 実施できる環境をつくるシステムを開発している.

2 研究の構成

本研究は図上に示すように全6章から構成されて いる.

1 章:研究の背景と目的を提示する.

2 章:ワークショップ(WS),ヒアリング,文献調査を 通して地域防犯全体の枠組みをまとめた.

3 章:地域住民が犯罪リスクを把握するための手段 を検討した.

4 章:犯罪リスクに対する対策を整理した.

5 章:4 章までに行われてきた成果から対策実行ま でのフローチャートを提示した.

6 章:5 章でつくったフローチャートをシステム化 し,地域の人達が効果的に防犯活動を行える環境作り を行った.

3 研究内容

a)2 章 防犯特性の分類

本研究では,子どもの防犯に関連する特性を網羅的 に分類・整理するため,Work Breakdown Structure(WBS) の手法を使用した.WBS とは,複数の階層を作って分類 することで全体を整理する手法であり,主にプロジェ クトマネジメントの分野で使用されている.WBS の特 徴は階層構造であること,各階層(レベル)が WBS で 扱う対象情報を全て網羅することの 2 点である.この 方式を採用にすることにより,拡大し続ける属性内容 を構造的に整理することを可能にしている.

防犯に関する特性を 2 つの特性(犯罪発生特性と犯 罪対策特性)に分け,それぞれについて WBS を製作し た.これはワークショップ(WS),アンケート,ヒアリン グを通して製作したものである.既往の研究から,犯 罪発生に影響を与えると考えられる要素と保護者が 注目している要素を調べ,それらの情報から WBS を構 成する要素とレベルを製作した.各レベルの概要は表 1 に記すとおりである.

図 1 修士論文全体構成図

地域ボランティア

対策 リスク

要素のリストアップと地域防犯活動全体の整理・・・2章

犯罪リスクを把握する 手段の整理・・・3章 犯罪リスクに対する

対策の整理…4章

対策実行までのフローチャートの作成…5章 より効率的な地域防犯活動の全体像の提示し,システム化・・・6章 犯罪防止活動体制全体像

研究の背景と目的・・・1章

(2)

b)3 章 犯罪情報の分析

現在,身近に利用出来る犯罪情報としては,県毎に 警察によって配信される犯罪統計がある.ただこの統 計は,「配信頻度が低い」,「統計の対象となる地域の 単位が非常に大きい統計の情報ソースを閲覧する事 ができない」,「法律の範疇にない不審行為は統計の 数に含まれない」等,様々な問題がある.

そこで,本研究では全国各地で普及してきている安 全・安心メールと呼ばれる行政サービスを利用し,こ こから犯罪統計を制作することを試みた.安全・安心 メールは短文ながら,「どこで,誰が,誰に対して,どの ような行為が発生したのか」をほぼリアルタイムに知 ることができるので,情報ソースとして非常に適して いると考えた.

現在までに 144 団体から配信される安全・安心メー ルを受信しており.最も古いデータは 2008 年 6 月のも のである。現在まで継続して情報を収集しており,日 に 50 件以上のメールを受信している.

得られた情報には 2 章で製作した属性情報を付与し た.付与はプログラムを組み自動的に行った.手順を 大まかに説明すると,①テキストから文字を読み取る, 次に②文字情報を元に属性候補を抽出し,③得られた 属性候補の中から内容に最も適した属性を付与する, である.自動的に付与された情報に対して,精度を確 認したところ高い結果が得られた.高い精度が得られ た理由としては,安全・安心メールの内容が短く,誤判 別につながる情報が尐なかったことが考えられる.

属性を付与した安全・安心メールの特質を調べるた め,警察による犯罪統計との比較を行った.その結果, 安全・安心メールは,警察が配信する犯罪統計から窃 盗と虐待に関する情報を除いた統計と高い相関を持 つことがわかった(表 2).

以上の結果から, 安全・安心メールにいくつかの工 夫を施すことで,地域住民が自分達の地域の犯罪リス ク全体像を知ることができることがわかった.

c)4 章 対策情報の分析

4 章では,犯罪に対する対策を集め,データベース (DB)化することを目指した.また,DB 化した対策に対 して,犯罪に関する属性を当てはめることで, 対策の 傾向を見た.

表 1 WBS レベル全体像

表 2 安全メール分析結果まとめ

対策の収集としては,まずは内閣府が年に 1 回提言 している『犯罪から子どもを守るための対策』

7)

を対 象に行った.その後,収集した対策だけでは不十分と

レベル1 犯罪事象 犯罪を法律から行為のレベルまで展開したもの レベル2 包括罪種 犯罪の種類を警察白書の包括罪種別に分ける レベル3 罪名 犯罪の種類を包括罪種の内訳罪種別に分ける レベル4 行為 犯罪の種類を行為種別に分ける

レベル1 空間 事象が発生した生活空間の要素を展開したもの レベル2 施設 犯罪発生時の場所を施設別に分ける

レベル3 施設名称 施設別に大きく分けられた空間をさらに細かく分ける レベル4 設備 施設内のどの施設で発生したかまで分ける レベル5 監視性 犯罪発生した空間の見通しのよさについて分ける レベル6 明るさ 犯罪発生した空間の照明装置の有無を分ける レベル7 領域性 犯罪発生した空間への入りやすさについてわける レベル1 被害者 被害者の属性を展開したもの

レベル2 年齢 犯罪発生時の被害者の年齢を分ける レベル3 性別 犯罪発生時の被害者の性別を分ける レベル4 年代 犯罪発生時の被害者の年代を分ける レベル5 年代詳細 犯罪発生時の被害者の社会区分を分ける

レベル6 行為大要素 犯罪発生時の被害者の行為を空間のスケールで分ける レベル7 行為小要素 犯罪発生時に行っていた行為を分ける

レベル8 行動人数 犯罪発生時の被害者と共に行動していた人数を分ける レベル9 第3者の存在 犯罪発生時、第3者がいたか分ける

レベル1 加害者 加害者の属性を展開したもの レベル2 年齢 犯罪発生時の加害者の年齢を分ける レベル3 性別 犯罪発生時の加害者の性別を分ける レベル4 年代 犯罪発生時の主体の年代を分ける レベル5 年代詳細 犯罪発生時の主体の社会区分を分ける レベル8 凶器 加害者の凶器所持をわける

レベル9 行動 被害者に接近するために使用した交通手段を分ける レベル10 被害者との関係 被害者との関係を示す

レベル1 環境 環境条件を整理し展開したもの レベル2 年 犯罪発生年を見る

レベル3 月日 犯罪発生月日を見る レベル4 時間帯 犯罪発生時刻帯を分ける レベル5 時刻 犯罪発生時刻を分ける レベル6 時期 犯罪発生時は時期を分ける

レベル7 日特性 犯罪発生時、被害者が休日かどうか分ける レベル8 季節 犯罪発生時、季節はいつだったか分ける レベル9 天候 犯罪発生時の天候を分ける

レベル1 住所 犯罪が発生した住所を展開したもの レベル2 地方 犯罪が発生した住所を地方単位で分ける レベル3 都道府県 犯罪が発生した住所を都道府県単位で分ける レベル4 区市町村 犯罪が発生した住所を区市町村単位で分ける レベル5 町丁目 犯罪が発生した住所を町丁目単位で分ける レベル1 地域状況 地域に関する情報を展開したもの

レベル2 住民コミュニティ 住民同士のコミニティの高さを見る(ソーシャルネットワーク) レベル3 町の清潔さ 町の清潔さを見る

レベル4 行政との連携 行政との連携を見る レベル5 警察との連携 警察との連携を見る

レベル1 担い手 対策を担う主体の要素を展開したもの レベル2 組織 犯罪対策を行う組織を大きいくくりで分ける レベル3 組織小分類 犯罪対策を行う組織を名称のレベルまで分ける レベル1 対策種類 対策の種類を整理し要素を展開したもの レベル2 ハード ソフト 犯罪対策の種類をハード、ソフトの二つに分ける レベル3 予防種 犯罪の予防種を分ける

レベル1 フェーズ 対策がどの段階で効果を表すかを整理し展開した物 レベル3 対策フェーズ 対策の効果があるフェーズを示す

レベル1 コスト 対策がどの段階で効果を表すかを整理し展開した物 レベル2 活動時間 犯罪対策を行う時間を分ける

レベル3 活動頻度 犯罪対策を行う頻度を分ける レベル4 活動人数 犯罪対策を行う人数

レベル5 初期費用(物) 犯罪対策を始める際にかかる収支の金額を分ける レベル6 継続費用(物) 犯罪対策を始める際にかかる収支の金額を分ける

犯罪発生特性

犯罪対策特性

警察統計

対象年代 分類 項目数 安全メール 小学生

相関係数

安心メール 中学生 相関係数

小学,中学生 罪名 13 -0.0846 -0.0182

小学,中学生 『窃盗犯』を

除いた罪名 12 0.7736 0.5769

小学,中学生 施設名称 10 0.2451 0.2015

小学,中学生 『窃盗犯』と虐待を

除いた施設名称 10 0.8961 0.8919 警察統計

対象年代 分類 項目数 警察統計 小学生

相関係数

警察統計 中学生 相関係数

未成年 罪名 13 0.9990 0.9998

未成年 『窃盗犯』を

除いた罪名 12 0.7347 0.9664

(3)

感じた分野の情報を収集した.最終的には, 『犯罪か ら子どもを守るための対策』に加え,犯罪予防の世界 で言われる地域的特徴の改善について書かれた「安全 安心まちづくり条例」

8)

,被害者の回復について書かれ た『犯罪被害者のメンタルヘルス』

9)

,ボランティアが 現状行える活動をまとめた『防犯ボランティア活動マ ニュアル リーダー編』

10)

でとりあげられた対策を収 集することで,地域で行うことができる対策の網羅的 な収集を目指した.最終的に 222 の犯罪対策を収集し たが,それぞれについて担い手,フェイズ,ハード or ソ フトに関する分類を行った.

対策を分類ごとに集計することで,地域全体の対策 の傾向が分析できるようになった.例えば担い手とフ ェイズのクロス表からは,現状の防犯活動は担い手に よらず犯罪抑止に大きな比重を置いていることがわ かる.活動の担い手と活動の種類のクロス表からは, 担い手毎に期待される対策の内容が大きく異なるこ とがわかる(図 2).

また,収集した対策が被害リスクに対してどのよう な影響を及ぼすかを調べた.対策に関する過去の実証 研究のレビューをしたが,ボランティアの活動の成果 に関する研究はあまりなかった.そこでまず,対策の 意図,目的に関する参考文献を探し,そこに書かれて いる対策毎の目指す効果を定性的にまとめた.

その後,対策に関する地域の実態を定量的に示すた めに,埼玉県警の協力による,アンケート調査を行っ た.調査内容は以下の項目である.

・地域で実際に行われている活動とその頻度

・地域に対する自己評価

・地域の特性

図 2 防犯対策の担い手と種類のクロス分析結果

アンケートは埼玉県主催のセミナー時にアンケー ト用紙を配布してその場で回収している.2 回行って おり,1 回目は,埼玉県行田市,羽生市,加須市を対象 に,104 団体からアンケート回答を回収することがで きた.また 2 回目は,埼玉県さいたま市西区,岩槻区,大 宮区,北区,見沼区,蓮田市を対象に,151 団体からアン ケート回答を回収することができた.

アンケートの結果は犯罪情報と併せて分析した.ア ンケートから得られた代表的な知見としては,対策頻 度と防犯疲れには一定の関係性があること,地域特性 によって犯罪状況が変化すること,行われている対策 と地域に対する自己評価に相関が見られなかったこ と,などがあげられる.また,対策毎の効果を見出そう と試みたが,有意な結果は得られなかった.

d)5 章 対策実行までのフローチャート

地域への実態調査とアンケート結果を基に,現状の ボランティアが対策を立案し実行するまでのフロー チャートを製作した.問題点として,活動が地域の自 己評価を反映しておらず,対策の目的として具体的な 数値目標を掲げていないことが判明した.これを改善 するためには,PDCA と被害情報対策情報の蓄積,また 目的を持った対策が実行できる環境作りが必要であ る.

そこで,本章までに行われた地域に対する実態調査 と提供可能になった情報を基に,地域に対する支援シ ステムを開発する.重要なコンセプトとして,単に地 域に情報を提示するだけのシステムではなく,今後数 値的な犯罪効果の効果を示すべく情報の収集を行う ことを意識して設計している(図 3).

e)6 章 ボランティア支援システムの開発

本研究では対策の立案に地域の犯罪特性を反映さ せるため,安全・安心メールを集計,グラフ化できるよ うにしており(図 4),対策の目的に沿った情報から対 策の候補を選出し(図 5),実際の活動の記録を支援す るためのシステムを構築した(図 6).また,従来防犯 ボランティアの活動にふれることが困難だった地域 住民に向けて,犯罪被害と活動の関係把握が可能にな るシステムを構築している(図 7).

担い手 種類

N=222

(4)

図 3 提案するボランティア支援システムの全体像

図 4 データのグラフ化(見える化)

図 5 対策の提示

図 6 活動の記録

図 7 一般住民向けシステム

4.今後の課題

各システムのプログラム上の DB 統合がまだ完了し ていない.これを修士論文提出までに完了させ,今後 システム導入後の効果検証を行う必要がある.

参考文献

1)警察庁: 「報道発表資料 自主防犯活動を行う地域住民・ボラ ンティア団体の活動状況について,2010.

2)内閣府:「治安に関する世論調査」, 2007,

http://www8.cao.go.jp/survey/h18/h18-chian/index.html 3)警察庁: 「平成 21 年の犯罪情勢」,2010,

http://www.npa.go.jp/toukei/index.htm 4)原田豊:「子どもの被害防止の実証的基盤」,2007

http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu2/0 16/shiryo/07071908/001.pdf

5)島田貴仁:「子どもの犯罪被害実態と防犯対策を考える」,『予 防時報』232 号,2008.

6)社会技術研究開発センター:「平成19年度研究開発実施報 告書」,犯罪からの子どもの安全,系統的な『防犯学習教材』

研究開発・実践プロジェクト,2007.

7)内閣府: 「犯罪から子どもを守るための対策」, 2010.

http://www.cas.go.jp/jp/seisaku/kodomo/index.html 8)東京都:「安全・安心まちづくり条例の施行について」,

http://www.keishicho.metro.tokyo.jp/seian/ansin/anzen .htm

9) 小 西 聖 子 : 『 犯 罪 被 害 者 の メ ン タ ル ヘ ル ス 』 , 誠 信 書 房 ,2008.12.

10)全国防犯協会連合会:『防犯ボランティア活動マニュアル リーダー編』, 東京法令出版,2009.

知識の取得 属性データの設定

•犯罪状況に合わせて

・目的を立てて コーディネータ

防犯リーダー

ボランティア 保護者

安全・安心メール 研修教材(テキスト、ビデオ等)

地域毎の防犯活動

ボランティア 地域

対策の決定

犯罪防止活動 の実行

地域状況 経験の蓄積 警察・行政・小学校

情報の提供

子ども

データベース

+分析

+分析

評価

システム化①

22

システム化④

システム化③ システム化②

システム化

システム化

安全・安心メールをWBS項 目に従って分類。見たい視 点を任意に設定

グラフによってメール の分類結果を提示。

DB上にある対策と 地域状況を提示

地域状況を踏まえた 対策を提案

日々の活動を記録し、

履歴として管理

パトロールなど活動のレポート を自動集計

パトロールの総時間、

人数など

図  3  提案するボランティア支援システムの全体像  図  4  データのグラフ化(見える化)  図  5  対策の提示  図  6  活動の記録  図  7  一般住民向けシステム 4.今後の課題  各システムのプログラム上の DB 統合がまだ完了していない.これを修士論文提出までに完了させ,今後システム導入後の効果検証を行う必要がある

参照

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