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原価概念の問題点と原価の本質

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(1)

原価概念の問題点と原価の本質

対象計算ないし給付単位計算を本来的な課題とする原価計算上の原価は︑わが国﹁原価計算基準﹂の第二早の三の

規定にみられるように﹁経営に︑おける一定の給付にかかわらせて︑把握された財貨又は用役︵以下これを﹁財貨﹂と

いう︶の消費を︑貨幣価値的に表わしたものである﹂といえる︒かかる原価に対する基本的な考え方は︑各時代の各

国経済社会の発達段階と︑それに伴なう経営計算制度の発展状態によってその事情を異にしているため区々であった

が︑要は︑資本構成体としての企業体に対する利害関係集団の要請の集約的表現である原価計算目的に照応して︑各

種の原価概念が規定され︑また多数の下位概念を派生して今日に至っていることは周知の通りである︒

だが︑これらの原価概念は︑これまで一般的には計算技術的観点から規定されてきたといえる︒というのは︑原価概

念の規定には︑これまでH原価と費用とを対置せしめてこれを科学的ないし理論的に規定せんとする一つの憤向︵例

えばニックリッシユ教授︶と︑これに対するいま一つの傾向として︑臼原価と費用とを計算技術的に規定せんとする

傾向︵例えばシュマレンバッハ教授︶とがあった︒だが︑これがコジオール教授の指摘されるように︑結局前者の試み

振価概念の問題点と旋価の本質      二一

(2)

は失敗に帰し︑後者のシュマレンバッハ教授によって誌みられた計算技術的観点からする原価概念の規定が学界なら

びに実務界において支配的であったという事実からである(︿也・問︒

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・)︒計算技術的観点からする原価概念の規定とは︑シ

ユマレンバッハ教授が︑費用とは﹁損益計算において計算される財貨の消費﹂を呼び︑原価とは﹁原価計算において

経済的給付と対立せしめられるところの財貨の消費﹂を呼ぶとするこの規定の仕方が︑すなわちこれである(∞の

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教授の規定した計算技術的観点からする原価概念が︑その著書﹁原価計算と価格政策﹂において公にされてから今日

に至るまで︑他の多数の人々によって各種の原価概念が説かれてきた︒だが︑それらの多くは︑いづれもシュマレン

バッハ教授の見解の祖述に止まり︑したがって少なくともドイツにおいては教授の見解が支配的であったという見方

は諸家の一致した結論であるといえよう

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国・国ωωP

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原価も費用も︑もともと実務的に成長してきた概念であり︑企業の経営過程における財貨価値の消費であるという

点においては本質的には同質である︒したがって︑われわれが︑このように本質的に同質のものを上に述べたように

対置させて考える考え方自体に問題があるといえる︒こ乙に︑コジオ

l

ル教授が︑原価と費用とを対置させて考える

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現代の経営計算制度は︑左に示す図表ーのように︑企業の経済活動を抽象的には統一'的な資本の価値増殖運動とし

これを工企業ではさらに収支過程(調達過程・販売過程)と生産過程との二つの部分領域に分けて計算す

(3)

る︒しかしこの計算は︑現代経営計算制度のもとでは︑

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‑;P ! [ 4 1 F  

この企業資本(自己資本・他人資本)の価値増殖運動を資産

‑費用・収益・原価・給付という各範鴎概念に分類することによってのみ計算技術的に可能と

この企業資本の価値増殖運動は︑具体的には財産の増減関係として︑

抽象的には企業の経済活動を費用と収益ならびに原価と給付との発生の統一的活動として把握

することによって︑その成果が統一的に計算確定される︒だから︑ペイトンならびにリットル

﹁原価﹂と﹁費用﹂と﹁資産﹂とは同質的なものであり︑ただこれらは計算技

術上の観点から伝統的な意味が与えられてきたにすぎないと考え︑この三者の関係を規定して

﹁損益計算書において棚卸項目と関係をもち製品に密接に結びついていると考えられるものを

原価

( g ω

同)と呼び︑収益控除項目で生産の技術的過程ならびに具体的な製品に直接関係をも

たないものを費用

(OM℃O

ω σ

ω )

と時び︑生産のために取得された要素で経営過程において正

当に売上原価ならびに費用として取扱われる点にまで至っていないものを資産

( m g Z ω )

びこれは貸借対照表に表示される﹂

(

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これは︑明らか

に原価と費用との同質性を示すと同時に︑先に述べた企業資本の価値増殖運動の経営過程における原価と費用との間

にある計算技術的観点からする関係を示したものとして注目される︒もちろん︑ここに述べられている原価の理解の

( K F 5 2 t g w

ω件︒ロ)として一般に理解されているものであるといえる︒そこで︑いわゆる﹁支出原価﹂

V ¥  

まこの考え方を具体的な計算関係をもって図解すれば次の図表

E

ならび図表

E

のような関係に示されよう︒

このように︑原価は﹁資産﹂と﹁費用﹂と本質的には同質性をもつものであり︑これが計算技術上の観点から区別

(4)

図 表

E

(企業資本のマイナス.fitの総指図解)

経 費

{ 資 産 )

図表1I: 

Solomons

, 

D.

, 

Studies i n   Costig

, 

1 9 5 2 .   P . 1 6 4 .  

図表

I I T:  Blocker

, 

1 .   G.

, 

E s s e n t i a l   o f   Cost Accounting

, 

1 9 5 0 .   p . 2 3 .  

付生産と百接密接な関係をもち︑

して計算表示される︒したがって︑原価が︑原価

会計という計算機構のもとで他のものと区別して

記録計算されるためには︑他の諸概念と原価概念

とを区別する本質的な特徴が求められなければな

らぬ︒そこで︑われわれが︑いま原価と費用とを

区別する基準を求めるとすれば︑それはいかなる

点に求められるのかということが問題となる︒た

しかに︑計算技術的には原価も費用も共に経済価

値(財貨ならびに用役)の消費を前提としている

という点においては同じである︒だが︑

その経済価値の消費が給付生産と直接密接

な関係をもたない収支過程において発生し︑しか

もそれが過去・現在・未来期間のいづれかの時点

において支出を伴なう収支的価値消費であるのに

しかもそれが支出と直接関係をもたない給付生産過程上の価値消費いい換えれば給 対して︑他方の原価は︑その経済価値の消費が給

付原価計算上の財貨価値の消費を表わすところの概念であるという点に両者を区別する本質的な基準が求められる︒

したがって︑原価計算上の原価概念は︑原則的には︑企業の生産過程における一定の給付生産実現のための一切の

(5)

財貨ならびに用役の消費を意味するということになる︒このように︑給付生産実現のために消費された財貨ならびに

用役が原価であるという理解の仕方は︑正に給付よの対応において考えることによって︑初めてその原価のもつ意味

を正しく理解することが可能となる︒乙こに︑ドイツにおいて原価計算(問︒巴

g

2

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しばしば﹁

原価計算と給付計算﹂

( 問

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件 ︒

ロ ・ ロ ロ

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ロ ロ

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というふうに原価計算と給付計算とを対立せしめて表

現されるゆえんものがあると考えられる︒

原価が︑上に述べたように︑常に生産的給付との対応関係において求められるということからみて︑原価概念(同‑

g g

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)

(

ω

t

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‑ R )

と区別されなければならぬ︒だが︑ここで注意を要することは︑会

計は永い歴史の過程において常に前進的・革新的発展をとげてきたけれども︑百年ほど前までは会計の文献において

一個の原価概念と一個の価値概念しか存在しなかったということである︒これは︑われわれが問題としようとしてい

る原価概念と支出概念との区別にとって注目すべき一つの史実である︒しかも︑その当時の原価は︑多くの場合今日

として理解されているいわゆる

評価されたものである﹂ということである

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吋印・)︒このように︑原価計算の発展初期の段階において

は︑原価概念は支出概念と結びついて考えられてきたし︑乙の傾向は米国においてはごく最近までみられた︒だが︑

これが特にドイツにおいては一九二

O

年頃から以後になってくると︑原価理論において︑次第に原価概念と支出概念

(6)

一 一

とが明確に区別された形において理解されるようになってきた︒こ乙に︑以下採り上げようとする原価概念と支出概

念とを区別することの問題についての出発点がある︒

メレロウィッチ教授は︑原価概念と支出概念との区別を規定して﹁支出は︑ずべての経営によって支払われた貨幣

額であるDこれに対して一方の原価は︑貨幣の支払額ではなくて財貨の消費である﹂

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とする︒これは︑財貨の消費としての原価は︑その財貨価値の消費が最初

は数量として把握され︑しかも一定の給付に対する消費部分が各種の単位の数量として表現されるため︑原価は支出

計算基準﹂においても(例えば︑三︑ とは関係なく消費という事実に基づいて把握されるという考え方である︒ドイツではもちろんの乙と︑わが国﹁原価

原価の計算に当って数量計算

四の

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と価値計算(当

0 2 8 5

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(評価)とを分けて考えようとする考え方は︑まさに上のような思考か

らきているといえる︒そうした立場から︑原価が支出に基づかないで︑常に消費に基づいて認識されるということは

上に述べたように︑原価は一定の給付に対する消費部分が最初は各種の単位の数量として表現され︑しかもその一定

の給付に対する消費量一が確実な大きさとして客観的に把握されなければならぬという原価のもつ本質的な特徴からき

ている︒ここに︑原価計算が︑対象計算ないし客体計算として特徴づけられるゆえんのものがある︒

かかる原価の本質的な特徴は︑次のような諸事例に求められる(︿也・

N

2 ω O E O ‑ p p o ‑

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∞ ・ )

ー原価は支出という事実が前に在在せず︑したがって後にも先にも貨幣の支払が行なわれていない場合でも︑数

量的に財貨の消費がなされている場合には原価は発生する︒例えば︑

H

無償取得の原材料が消費された場合︑同

自己資本利子︑未払の企業家賃金︑私宅を営業上利用している部分に対する未払賃借料︑帳簿上償却済になって

いる機械設備の利用などのような附加原価に属する財貨が消費された場合︑国自家生産の例えば電気・ガス・用

(7)

水・機械などの用役が消費された場合などが︑すなわちこの事例に当る︒

2

前の事例のように︑支出がなくとも原価が発生することがあるように︑逆に支出があっても原価として示され

ない場合がある︒例えば︑付土地の購入のように支出はあっても︑その財貨の消費がみられない場合︑∞支出と

ともに消費があっても︑経営条件すなわち給付生産と結びつかない火災による財貨価値の数量的消費とか︑財貨

の評価損とか︑遊休設備の維持のために生ずる財貨価値の喪失などのような消費とか︑あるいはたとえ給付生産

と結びついていても異常な棚卸減耗とか︑異常な仕損による財貨価値の消費とか︑特別減価償却分などのような

消費である場合(中性費用)︑同支出があっても反対給付のない場合(法人税・寄付金・利益配当)などが︑す

なわちこの事例に当る︒

原価はたとえ支出に基づくものであっても︑貨幣の支出と財貨の消費との聞に時間的な相違があったり︑また

貨幣の支払額と財貨の消費額との聞に数量的にも金額的にも相違がある場合がある︒例えば︑前者の時間的相違

には︑材料の購入に際して消費が先に行なわれて支払(支出)が後でなされる場合とか︑また逆に支払が先に行

なわれて消費が後から行なわれる場合などがこれに属する︒乙れには︑その他︑賃金の前払・後払とか︑保険料

後者の数量的・金額的相違には︑コジの前払・後払とか︑休眠中の賃金とか︑固定資産税などがある︒

オール教授のいわゆる﹁別原価﹂と時ばれる減価償却・他人資本利子・危険費などがこれに属するが︑これらが

すなわちこの事例に当る︒

費用は︑原則的には支出価値(取得価格)によって評価されるが︑原価はしばしば支出価値によらないで別の

価格で評価される場合がある︒例えば︑材料が計算価格(時価・平均価格・標準価格・その他)で評価される場

合などが︑すなわち乙の事例に当る︒

(8)

以上の事例から明かなように︑すでに述べた原価のもつ本質的な特徴から︑財貨の消費としての原価概念は︑原理

的には貨幣の支払額としての支出概念と常に明確に区別して考えられなければならぬ︒ここに︑現代原価理論におい

て︑原価概念が常に支出概念と明確に区別して考えられるゆえんが求められる︒ 二入

原価概念と費用概念との区別

いま︑費用は収益を獲得するための財貨価値の消費であり︑原価は給付(給付収益)を獲得するため

の財貨価値の消費であると規定するならば︑両者のもつ共通的な一つの特徴は︑これを﹁目的概念﹂に求める乙とが

できる︒原価と費用とは︑繰返し述べているように︑本来的には同質である︒したがって︑原価と費用との範囲に関

する両概念の差異は生じない筈である︒それにもかかわらず︑現代経営計算制度のもとで︑われわれが両者の範囲に

関する両概念の差異を認めなければならぬということは︑むしろ︑その両者の区分が︑計算技術的観点からする把握

思考上の相違からくる両者の本質的な特徴に求められているという点からきているといえる︒

このように︑原価と費用とを区分することの問題は︑計算対象を異にする財務簿記と経営簿記とが統一的な総体簿

記体系の中に並荏し︑しかも経営過程(収支過程と生産過程)における財貨価値の消費が︑

は︑常に過去・現在・未来のいづれかの時点の支出に基づいて収益との対応において考えられ︑これが期聞を対象に 一万の財務簿記において

把握されるのに対して︑他万の対象計算ないし客体計算としての経営簿記(原価計算簿記)においては︑支出に基づ

かないで消費という事実に基づいて給付との対応において考えられ︑これが一定の給付単位ないし期間給付を対象に

把握されるところからきている︒このようにして︑経営過程(収支過程と生産過程)における財貨価値の消費が︑二

(9)

つの異なる対象(期間と客体)に対して︑異なる把握思考(支出と消費)に基づいて帰属させられる︒このため︑収支

過程上の財貨価値の消費としての費用と生産過程上の財貨価値の消費としての原価との聞に構成要件の相違が生ずる︒

ここに︑原価と費用との範囲に関する両概念の差異が導き出される根拠があるといえる︒

コジオ l

ル教授は︑原価と

費用との範囲に関する両概念の差異を﹁損費は財務簿記ないし収支的簿記に計上し︑原価は経営簿記ないし原価計算

簿記に計上する︒それ故に︑両者の構成要件は︑実は明確に区別され得るし︑また計算制度上実践的にも別々に求

められる︒損費の大部分は同時に原価であり︑原価の大部分は同時に費用である︒このため︑乙の費用に等しい原価

(

E E W O E g )

と共に︑さらにそれ以外に費用性を欠いた原価(附加原価

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と原価性を欠

いだ給付原価計算上の中性損費(ロ

2

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g

)

構成され︑これに対して原価は基礎原価と附加原価とから構成される﹂と規定するが︑ 損費は基礎原価と中性費用から

これは︑明らかに現代会計実

践における原価と費用との間にある上に指摘したような経営過程上の財貨価値の消費の把握思考上に本質的な性格上

の相違のあることを認めた考え方に由来していることはいうまでもない︒

そこで︑いま︑乙の原価と費用との関係を具体的にわが国会計実践を考慮に入れながら図解すれば︑左記の図表町の

ように分類表示する乙とができる︒この図表は︑

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に掲げるものを修正表示したものである︒いま︑乙の図表について簡単に註記すれば︑点線の部は︑そのもの自体と

しては原価の性格をもつので︑支出に基づいて確定された中性費用が︑消費に基づいて確定される消費原価に調整計

算されて附加原価として原価に加えられることを表わすD

次に︑左に図解した原価と賀用とを構成する個々の要素について︑これを具体的・内容的に考察してみる︒

左記の図表町に示されるように︑資用は基本原価(目的費用)と中性費用と総損益に影響を及ぼす費用とから構成

原価概念の問題点と原価の本質

二 九

(10)

1110 

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企業家末払賃金

1:

自己資本利子

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区画匝画面 匡亘

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経営簿記

l 給付原価計算竺唖 l

隆副

ー一日

図表町

(11)

されるG費用としての基本原価(目的費用)には︑一般管理および販売費である給料・賃金・消耗品費・賃借料・保

険料・修繕費・電力料・租税公課・運賃・保管料・旅費交通費・通信費・広告料などが乙れに属する︒もちろん︑

般管理および販売費は基本原価であるから原価にもまた費用にもなり得る性格をもつものであるが︑現代の会計実践

では生産物原価は製造原価のみをもって構成され︑一般管理および販売費は︑わが国﹁原価計算基準﹂六の

2

の﹁販

売費および一般管理費を計算し︑これを損益計算書上期間原価として当該期間の売上高に対応させる﹂という表現に

みられるように︑期間原価として売上収益から控除する方法がとられている︒だが︑生産物原価が総原価をもって構

一般管理および販売費は給付の製造原価に賦課または配賦される乙とになる︒中性費用は︑周知

のように︑給付生産に制約された因果関係的拘束をもたず︑しかもその財貨価値ないし経済価値の消費額が︑過去・

現在・未来期間のいづれかの時点の支出価値によって価値的に確定されると乙ろの収支過程上の財貨価値ないし経済

価値の消費である︒どが︑現代のように複雑な経営の生産過程において︑その財貨価値ないし経済価値の消費が︑原

価性をもつか︑それとも原価性を欠いだ中性費用であるかを具体的な事実関係において決定することには非常な困難

を伴なう︒ここに︑中性質用としての﹁非原価項目﹂が︑わが国﹁原価計算基準﹂の五にみられるように具体的に個 成される場合には︑

々の.項目について決定される必要があるし︑また非原価項目を具体的に個々の事実関係について決定されるゆえんの

ものがある︒かかる性格をもっ中性費用は︑営業外費用・経営臨時賀用・貸借対照表上の減価償却費・支払利子とか

ら構成される︒営業外費用には︑社債発行差金償却・貸倒償却・有価証券評価損・有価証券売却損・売上割引・原価

差異などがこれに属する︒経営臨時賀用は経営期間外資用と経営異常費用とに分れ︑経蛍期間外費用には前期損益修正

項目である固定資産売却損・修結費予想不足額・過年度減価償却不足修正額などが属し︑経営異常費用にはいわゆる

企業危険といわれている一般的企業家危険(資本投下危険・立地危険・その他)ならびに個別危険(棚卸減耗危険・

原価概念の問題点と原価の本質

(12)

仕損危険・製品保証危険・実験危険・発送危険)などから招来する損費が乙れに属する︒総損益に影響する費用には︑

利益剰余金に課する支出項目である︑たとえば法人税・所得税・配当金・役員賞与金などがこれに属する︒

次に︑原価は︑基本原価と給付原価計算上の原価(附加原価と別原価)とから構成される︒原価としての基本原価

には︑原価要素としての材料費・労務費・製造経費などがこれに属する︒附加原価には︑過去・現在・未来期間のい

かなる時点にも支出を伴なわず︑したがって財務簿記上の損益計算には現われてこないと乙ろの企業家賃金・自己資

本利子・無償取得の原材料費・償却済の機械の減価償却費などがこれに属する︒また︑別原価には︑次節において詳

それ自体の性質からすれば原価性をもつが︑そのままでは原価として認められないところの危険賀・

減価償却費・他人資本利子などがこれに属する︒

四 原価概念を精密化するものとしての別原価

の問題は︑周知のように︑古くから附加利潤の問題とし

て︑これまで個別的には各国において多数の人々によって論議されてきたと乙ろである︒したがって︑たしかに︑ ︑ことに採り上げようとする﹁別原価﹂

(

ω

目 向 ︒

ω

)

一「

別原価﹂という概念は︑

i

ル教授によって初めて採り上げられた概念ではあるが︑実は︑乙れを歴史的にみる

場合には必ずしもこと新しい問題とはいえない︒従来附加原価を構成するものと老えられていた個々の要素について

検討してみるとき︑その中にはその性格を異にする異質的なものが混在していたといえる︒そのため︑ややもすれば

原価概念は︑内容的・具体的には不明確さをまぬがれなかった︒その点に着目したコジオ

l

ル教授が︑附加原価概念

中に含められていた個々の要素を︑その要素のもつ性格上の観点から整理して︑支出価値に基づいて確定された収支

(13)

的財貨価値の消費のものと︑消費価値に基づいて確定される消費原価の性格をもつものとを明確に区別し︑そのもの

自体の性質からすると全く原価性をもつが︑そのままでは原価とはなり得ないところの収支的(支出的)財貨価値に

基づくものを取り出して﹁別原価﹂として概念事つけたところに︑コジオ

l

ル教授によって規定された﹁別原価概念﹂

のもつ原価計算上の意義が求められる︒このようにして︑乙の別原価概念が構成されることによって︑費用は支出価

値に基づいて測定され︑原価は消費価値によって測定されるという原価と費用との把握思考上の本質的な相異が明確

こうすることによって原価概念の性格がヨリ一層精密佑されるに至ったことはたしかである(︿包

‑Z

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8 l ‑ o ω

・)︒さらに︑別原価概念が規定されることによっ

て︑これまでややもすれば混乱しがちであった附加原価概念も非常にすっきりした形において明確化されたという関

係にある︒ここに︑われわれが︑コジオ

i

ル教授の﹁別原価概念﹂を︑実は︑原価概念を精密化するものとして採り

上げるゆえんのものがある︒

i

ル教授は︑別原価概念を規定して﹁そのもの自体の性格からすると全く原価性をもつから原価計算上考慮

されなければならないが︑しかし原価計算(経営簿記)では︑支出に基づいて計上された財務簿記上の金額ではなく

﹁別個に﹂把握されなければならないところの損費がある︒そこで︑私はこれを端的に別原価と呼ぶ﹂(︿包・ロ

2 ω

己 ﹃

0 ・

F P C ‑

8

・)と説明される︒これには︑教授も指摘されるように減価償却費・他人資本利子・危険費など

が属する︒ここでは︑上に述べた論述を補足するという意味において他人資本利子について考えてみる︒

周知のように︑給付原価計算上の利子には︑これを内容的にみた場合︑収支的すなわち支出に基づいて確定される

中性費用としての他人資本利子と給付原価計算上の消貨に基づいて確定される附加原価としての自己資本利子とが同

時に含まれる︒これまで繰り返し述べたように︑給付原価計算上の財貨の消費としての原価は︑過去・現在・未来の

(14)

いづれかの時点の支出と結びついて確定される費用には照応しない︒いい換えれば︑原価計算上の原価は支出に基づ

いて確定されないので︑財務簿記上の損費は給付原価計算上の原価の金額と一致しない︒したがって︑他人資本利子

のように支出に基づいて確定された費用が︑消費に基づいて確定される附加原価としての自己資本利子と同じように

附加原価として取り扱われるためには︑支出に基づいて確定された他人資本利子が︑消費に基づいて確定される消費

原価に変えられる必要がある︒そのためには︑給付原価計算上の利子として認められる他人資本は給付生産目的に必

要な資本でなければならぬ︒そこで︑具体的には︑給付生産目的に役立つ資本実体が給付原価計算上の利子計算の対

象として考えられる︒このようにして︑支出価値に基づいて確定された他人資本利子は︑消費に基づいて確定される

消費原価に変えられる︒これが︑周知のように︑ドイツにおいて附加原価としての自己資本利子と合体されて﹁経営

( σ 2 ユ

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ロ ︒ 件 当

︒ ロ 門 同

{ 向

関与一件巳)という形で採り上げられるゆえんでもある︒このため︑給付原価計算

上の利子計算の対象となる経営必要資本は利付経営必要資本と呼ばれる︒このようにして︑給付原価計算上の利子は︑

利子計算の基礎となる﹁利付経営必要資本﹂に基づいて算定される︒

( A K G )

'

中に含めてはならない﹂という表現にみられるように︑経営目的に役立つ設備財産主己主

3 4 0 2 u α m o

)

(

ω

N 4 0 2 H H O m g ω )

R

(

)

)

以上のようにして︑支出価値に基づいて確定される他人資本利子は附加原価化される︒附加原価は︑周知のように

過去・現在・末来のいかなる時点の支出とも結びつかないところの﹁原価には江り得ても費用とはなり得ない財貨価

(15)

値の消費﹂である︒したがって︑附加原価は計算技術的には原価要素別勘定に借方記入され︑それに照応する財務勘

定が対応勘定として現われてこない︒そのため︑附加原価は給付原価計算上の成果計算(月次損益計算)には現われ

るが︑財務符記上の成果計算(年次損益計算)には現われてこないところの財貨価値の消費である︒このようにして︑

附加原価は︑給付原価計算上の成果計算である月次損益計算の段階において調整計算がなされなければならぬ︒すな

わち附加原価として原価に算入された大きさピけの金額が月次損益計算の貸方に附加収益として調整記入される︒

五 原価の本質と原価概念

原価計算上の原価は︑これまでの考察で明かにされたように︑原則的には︑生産過程上の財貨価値の消費が給付と

の対応において考えられ︑しかもその財貨価値の消費が支出に基づかないで消費に基づいて認識される︒そこで︑ゎ

いま︑上のような認識に立って原価のもつ一般的な特徴を抽出すれば︑原価の本質は︑少なくとも次の三

つの特徴(拙訳﹁コジオ

i

ル原価計算﹂千倉書一民刊︑一頁参照)に基づいて規定されよう︒

原価は︑経済財の数量的消費を前提としなければならぬ︒給付との対応において考えられる財貨の消費として

その一定の給付に対する消費部分が各種の単位の数量として表現され︑しかも一

定の給付に対する財貨の消費数量が確実な大きさとして客観的に把握されなければならぬという関係にある︒こ の原価は︑最初は数重であり︑

のため︑原価は︑費用のように財貨または用役の消費が最初から支出価値ないし貨幣の支払額をもって把握され

ないで︑財貨または用役の消費が数量的に把握されなければならぬという性格をもっている︒ここに原価のもつ

第一の特徴が求められる︒ここにいう原価計算上の財貨の消費には︑有形財(例えば原材料・その他)のような

(16)

一よー

財貨の消費という形をとるものもあれば︑無形財(例えば労働給付・その他)のような財貨(用役)の消費とい

う形をとるものもあれば︑さらに名目財(例えば貨幣・債権)のようにその消費が利子という形をとる抽象的な

貯蔵性をもっ財貨の消費という形をとるものも含まれる︒したがって︑財貨の消費数量概念には各種の計算単位

の数量が含まれる︒

この財貨の消費は︑評価されていなければならぬ︒原価は一定の給付の投影(司

g Y E Z D )

である抽象的な価

値を貨幣価値的に表現したものであるから︑上のように各種の数量として把握された異質の原価財の数量は︑こ

れが同質化されかつ合計されるために︑常に貨幣を公分母として表現されたものであることが必要である︒わが

国の﹁原価計算基準﹂は︑第一章の三において原価の本質を﹁原価とは︑経営における一定の給付にかかわらせ

て︑把握された財貨または用役(以下これを﹁財貨﹂という)の消費を︑貨幣価値的に表わしたものである﹂と

規定するが︑ここにみられる﹁貨幣価値的に表わしたもの﹂という表現の意味は︑ここにいう評価に当るものと

いえる︒原価の算定は︑一般に次のようにして求められる︒

調

B

H

蕊時総帥×母ぬ由設

この等式から読み取り得るように︑評価は︑財貨の消費数量の価格計算すなわち財貨の消費数量に対する価値

の計算であることを意味する︒ここに︑一定の給付の投影である抽象的な価値としての原価の第二の特徴が求め

一定の給付に関連せしめられていなければならぬ︒原価は経営が一定の給付の生産を実現する

ために消費した一切の財貨ならびに用役であるから︑上のように評価された財貨価値の消費は︑これを一定単位

の給付ないし期間給付に対して認識せられる︒だから︑評価された財貨価値の消費としての原価は︑原理的には︑

(17)

一定の給付を対象に認識される概念であることを意味する口そうした意味で︑先に引用した原価計算基準の﹁原

価の本質﹂の規定にみられる﹁原価とは︑経営における一定の給付にかかわらせて把握された財貨または用役﹂

という文言は︑正に右に述べた原価が一定の給付を対象に認識されるべきものであることを表わしたものである

といえる︒乙乙に︑原価計算が一般に対象計算ないし客体計算といわれるゆえんのものがあると同時に︑対象計

算ないし客体計算としての原価計算上の原価の第三の特徴が求められる︒

以上採り上げた原価のもつ三つの特徴は︑生産過程上の財貨価値の消費として規定される原価がもつべき一般的・

本来的な性格を抽出したものである︒したがって︑われわれが︑原価計算上の原価を規定するに当って︑右に掲げた

三つの特徴に照して考えることによって︑初めてその原価のもつ本来的ないし本質的な意味を正しく理解することが

可能となる︒これが︑実践的には︑企業に対するその時代の経営理念とか︑企業に対する利害関係集団の要請の集約

的表現である各種の原価計算目的とかによって︑さらに限定された形において︑原価の一般概念ならびに各種の原価

の下位概念が形成される︒そうした意味では︑わが国の﹁原価計算基準﹂における﹁原価の本質﹂の規定は︑正に乙

の限定された形においての実践的な原価の一般的概念規定の一例であるといえる︒(三九・五・六完)

原価概念の問題点と原価の本質

図表 I I T:  Blocker ,  1 .   G. ,  E s s e n t i a l   o f   Cost Accounting ,  1 9 5 0

参照

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