1983年信用状統一規則論考
(その2)
−B信用状の形式と通知−
福島昌則
目次
第1節はじめに
第2節第7条信用状の種析 第3節第8条通知銀行の責任 第4節第9条取消可能信用状 第5節第10粂取消不能信用状と確認
第6節第11条信用状の使用区分と銀行の指定 第7節第12条電信等による発行と条件変更 第8節第13条類似信用状の取扱い
第9節第14条不完全または不明確な指図の取扱い 第10節おわりに
第1節 はじめに
本稿においては, 1983年信用状統一規則 B 信用状の形成と通知 を採 りあげる。条文としては第7条から第14条までである。この部分は,信用状 統一規則制定当初から第三次改訂の1974年規則に至るまで第1粂〜第9条 (1933年規則),第1条〜第6条(1974年規則)としてまとめられていた部 分である。
前稿−A総則と定義−において述べたように, 1983年規則において,従来 の総則と定義の部分の(a)(b)(c)という表示方式を改訂し,第1条,第2粂‑‑‑
第 6 条と冒頭から条文方式を採用したことから, B 信用状の形式と通知は第 7 条からはじまる形となっている。
第
2
節 第7
条 信 用 状 の 種 類A r t i
c1e 7
a . C r e d i t s may be e i t h e r r e v o c a b l e
,o r i
i
i r r e v o c a b l e .
b . A l l c r e d i t s
,t h e r e f o r e
,s h o u l d
c1e a r l y i n d i c a t e whether t h e y a r e r e v o c a b l e o r i r r e v o c a b l e .
c . I n t h e a b s e n c e o f s u c h i n d i c a t i o n t h e c r e d i t s h a l l be deemed t o be r e v o c a b l e .
第 7 条
a . 信用状は,つぎのいずれで、もよい。
i 取消可能信用状,または i
i
取消不能信用状
b . したがって,すべての信用状には,それが取消可能または取消不能の L 、ずれであるかが明示されるべきである。
c . そのような明示のない場合は,その信用状は取消可能のものとみなさ れる。
信用状の種類について第 7 条はこのように定めている。すなはち取消可能 信用状,取消不能信用状のどちらでもよい。信用状にはどちらであるかを明 示すること。明示のない場合は,取消可能信用状とみなされる。としている。
伊淳孝平教授の商業信用状論付録 l 信用状統一規則によると, 1 9 3 3 年創設 時の規則において,この部分は次のとおり定められている。
第 2 条 信用状は次のいずれかの形式となすことを得
1 9 8 3 年信用状統一規則論考(その 2) B信用状の形式と通知 3
a) 取消可能の信用状または b) 取消不能の信用状
第 3 条 特に取消不能と明示せられざる限り,総ての信用状は取消可能の ものとす。有効期間の指定あるときと難も亦同じ。
この第 2 条について伊津教授は次のとおり解説しておられる。
「本規則は,信用状の種類につき存する多数の稽呼を r e v o c a b l eou i r r e v o c a b l e の二に統ーしたのである。例へば取消可能の信用状のことは c r e d i tnon c o n ‑ f i r m e
,c r e d i t r
・e v o c a b l e
,c r
・e d i ts i m p l e ( n o n ‑c o n f i r m e d c r e d i t o r s i m p l e c r e d i t ) 等と稿せられるが,誤解を起し易いから c r e d i tr e v o c a b l e に統ーした のである ( S p a l d i n g p . 1 3 0 ) 。かくの如く稽呼を統一すると共に,その効力 をも第
4条第
5条等に於て明瞭にし以て取消不能又は可能の信用状につき 存在した解釈の相異を一掃せんとするものである。」
第 3 条についての解説は次のとおりである。
「取消可能の信用状は,信用状の機能を充分に果すことの出来ぬものである から,信用状制度本来の立前から云へば,明示による反対の意思の現はれざ る限り,取消不能と為すを可とするが,本規則制定当時(筆者註 1 9 3 3 年,昭 和 8 年)の国際金融状態の不安動揺に鑑み,依頼者,発行銀行の利益を慮っ て本条の如き規定を設けたものと思はれる。」
1 9 5 1 年 規 則 に お い て も , 第 2 条第 3 条に日Ij設時の規定が引継がれてい
(2 )
る 。
1 9 6 2 年規則において条項変更が行なわれ,それまでの第 2 条第 3 条が一本 化され,第 l 条 a. b . c と
L、う配列におき代えられた。この配列は 1 9 7 4 年 規則, 1 9 8 3 年規則に継承されている。
1 9 7 4 年規則において第 l 条
C項末尾の e v e n t h o u g h an e x p i r y d a t e i s
s t i p u 1 a t e d . " (たとえ有効期限が定められていても)の文言が削除された。取
消可能か取消不能かを明示すること。この明示がない場合はたとえ有効期限
が定められていても取消可能のものとみなされると 1 9 6 2 年規則にあったもの
を‑印部分を削除したものである。
1 9 6 2 年規則において有効期限の但占が付されていた理由は,同第 3 5 条に取 消不能信用状には有効期限が絶対必要条件の旨の規定があったため,取消可 能・不能の明示がなくても,有効期限が明示されておれば取消不能とみなさ れると誤解されることを避けるためにこの但吉が付されていた。(1 9 3 3 年規 則 , 1 9 5 1 年規則も同理由で但告が付されていた。)
1 9 7 4 年規則においては,その第 3 7 条に取消可能信用状にお
L、ても,有効期 限の明示が絶対必要条件となったことから誤解のおそれが無くなり,この為 但書が削除されたわけである。
【 1 9 8 3 年規則の特徴】
1 9 7 4 年規則第 l 条が 1 9 8 3 年規則第 7 条となったことのみで あり,英文原文 は全く同ーである。邦訳では どちらであってもよい"が し、ずれでもよい"
と微妙に変化しているが問題視する程のことはなさそうである。
1 9 8 3 年規則の改訂に際して,取消可能・不能の明示のない信用状は取消可 能のものとみなすとしづ規定について,日本をはじめ他国の国内委員会から,
明示のない場合は取消不能とみなすという提案が行なわれた由であるが銀行 技術実務委員会での検討の結果, 1 9 7 4 年規則のそれと同様に,取消可能のも のとみなされるとなった由である。その理由は①取消不能または取消可能の 明示のない信用状はきわめて稀で ある。②現行規程のままであれば,もし取 消不能信用状を発行する心づもりであったものを誤って取消不能か可能かの 明示を欠いた場合,これを取消不能と変更することは可能であるが,反対の 規定であれば,もし取消可能信用状を発行する意図であったところ,明示を 欠いた場合には取消不能信用状となり取消可能信用状への変更が不可能にな る。ということである
O思うにこの理由は技術的な側面からの検討結果に過ぎず,信用状取引,特 に取消不能信用状取引の本質を踏まえた上での今後の検討が望まれる。
1 9 3 3 年規則創設当時の伊深教授ご指適のように, 5 0 年を経てなお,国際金
融状態の不安動揺に鑑み,依頼者,発行銀行の利益を庖つての結論であると
1 9 8 3 年信用状統一規則論考(その 2) B 信用状の形式と通知 5
思料せざるを得ない。次回改訂時には明示なき場合は取消不能とみなされる と訂正されることが望ましいと思料する。
第
3
節 第8
条 通 知 銀 行 の 責 任A r t i
c1e 8
A c r e d i t may be a d v i s e d t o a b e n e f l c i a r y t h r o u g h a n o t h e r bank ( t h e a d v i s ‑ i n g b a n k ) w i t h o u t engagement o n t h e p a r t o f t h e a d v i s i n g bank
,b u t t h a t bank s h a l l t a k e r e s p o n s i b l e c a r e t o c h e c k t h e a p p a r a e n t a u t h e n t i c i t y o f t h e c r e d i t which i t a d v i s e s .
第 8 条
信用状は,他行(通知銀行)を通じて,その銀行の側ではなんの約束もな しに,受益者に通知することができるが,当該銀行は,白行の通知する信用 状が外観上正規に発行されたとみられるかどうか ( t o c h e c k t h e a p p a r e n t a u t h e n t i c i t y ) について相応の注意を払う。
第 8 条は通知銀行の立場・責任について,なんらの約束もなしに受益者に 通 知 す る こ と が で き る と し さ ら に 通 知 す る そ の 信 用 状 が 外 観 上 正 規 に 発 行 されたものかどうかについて相応の注意を払うと規定している
O本条におい ては信用状と L 、う表現を使用し,取消可能. 1 & 消不能の区分をしていなし、点 に注意を払う必要がある
ο1 9 3 3 年規則において本条に該当する条文は次のように定められていた。
t H 6 条 l f x m 不能の信用状は他の銀行を介して之を受益者に通知すること を得るも,この取次銀行が単純に受益者に通知すべきことのみを委‑託せられ たるときは,この通知]を為すも自ら何等の保証義務をも負うことなし。
創設当初のこの規定は単なる通知のみで、あれば取次銀行(通知銀行)はな
んら保証的債務をれうものではな
L、と明示したものである。
この背景として当時のドイツ大審院判例に 受益者に通知したときは自ら 確認をなしたることとなる"としたケースがあり,一方学説は 当然に確認 したこととはならないが受益者は確認されることに重大な利害関係を有する から,もし確認しない通知であるならばその旨を明らかにすべきである と 云っていた。このような疑問の発生を未然に防止する日的で本条が設けられ たとされている。
本邦における事例では,信用状関係訴訟事件の最初の判決が 1 9 2 1 年(大正 1 0 年) 1 月 1 1 日に神戸地方裁判所において下された。その判決理由のなかに 次の一部がある。「被告銀行ハ・ー… andwe s h a l l be p 1 e a s e d t o pay y o u . . .…云 々ヲ以テ一般得意先ニ対スル営業上ノ辞令ニシテ名宛人ト取ヲ│ヲ為スト否ト ハ全ク被告銀行ノ任意トスル所ナリト主張スルモ本部(筆者註‑裁判所担当 部の意)ニ於テハ是ヲ以テ一片ノ辞令ニ過ギザルモノトハ解シ難ク,被告銀 行ハ信用状記載ノ約款ニ依リ前記金額ノ支払ヲ約束シタルモノト解スルヲ相 当トス。以下略」
本件は他の要因もあり,通知銀行の立場にあった被告銀行の勝訴に帰した が,被告銀行は以後上記文言の使用の停止を各屈に通達している。
信用状通知に関する混乱は, ドイツのみならず本邦にも存在していた状況 であり,信用状統一規則創設時に第 6 条において取次のみではなんら保証義 務を負うもので、はな L 、と明示したわけで、ある。
1 9 5 1 年規則では「第 6 条 取消不能信用状は,通知銀行を通じ,その通知 銀行がなんらの義務をも負わずに,受益者に通知することができる」と規定
し本条の趣旨の一層の明確化を企図している。
1 9 6 2 年規則では第 3 条第 2 項第 l 文に位置を移し, 1 9 7 4 年規則では第 3 条 ( b ) 項第 1文として次の文言を使用している。
「取消不能信用状は,他行(通知銀行)を通じて,その銀行の側でなんの約 束 (engagement) もすることなしに,受益者に通知することができる。」
【 1 9 8 3 年規則の特徴】
1 . 1 9 6 2 年規則, 1 9 7 4 年規則の第 3 条( b ) 頃第 l 文が,今回第 8 条に位置ずけ
1 9 8 3 年信用状統一規則論考(その 2) B信用状の形式と通知 7
されて独立の条文となった。
2 . 1 9 3 3 年規則以来,主語は 取消不能信用状は"としてきたが,今回の改 訂で 信用状は"となり取消不能信用状のみならず取消可能信用状も含まれ ることとなった。これは今回新たに加えられた外観上の真正性の点検(特徴 の 3 ……次項参照)条項との関連で採られた措置である。
3 . 通知銀行の信用状外観上真正性点検義務 今回新たに付加された条頃である。
通知銀行・受益者間の問題として,信用状統一規則制定以前の時期において は,受益者は信用状の通知を受けた段階で,通知銀行は当然その信用状によ る支払,引受,または買取に応じるもの、と思いこみ同行にそれを要求するこ とがあり,なかには裁判に持込むなどのこともあったようである。(前述本 邦の事例もこのたくやし、である。)この解決策として信用状統一規則創設時以 降一貫して通知のみではなんらの義務なしとの趣旨で規則に盛込んでいる が,現在に於ても受益者は通知銀行により通知された信用状は真正なものと 信頼している実情から本項を新たに付加して,受益者の信頼に応えることと したと判断される。実際の取引面においては, コルレス契約において,署名 鑑,電鍵の交換が行なわれており,通知銀行を選定する場合は, コルレス先 のなかから選ぶというのが通常の事務処理であるから, m a i l c r e d i t の場合は 署名照合, c a b l e c h e d i t の場合は c h e c kc y p h e r により,点検は可能である。
問題は,コルレス契約がない銀行から信用状の通知を依頼される場合であ るが,この場合はコルレス契約先である他行に証明を依頼する方法と,その まま免責文言を付加して通知する方法の 2 つが考えられる。受益者と通知銀 行間の取引の有無,取引がある場合取引関係の深浅の度合いによって臨機応 変の処置が必要とされる。
付加された本条項はこのような問題点を抱えており,次回改訂時にはなん
らかの改善案が提起されることが予想される。その一例としては,信用状発
行銀行に対して通知銀行を選定する場合は必ずコルレス先とすることを義務
ずけることが考えられる。もっとも経験設かな外国為替銀行では実務取扱面
において古くから実行されていることであり,そこまでする必要はないとの
反論が出ることも予想される。
特 徴 3 の最後段に本条を付加する契機となった事情を紹介しておく。
" 1 9 7 8 年 4 月 1 4 日開催の ICC 銀行技術実務委員会において次の決議がなさ れた。「委員会は,通知銀行は,たとえ通知銀行が当該信用状に確認を加え なかった場合でも,信用状を送達することにより発行銀行の署名の真正であ ることを黙示している旨決議した。
J第 4 節 第 9
条 取 消 可 能 信 用 状A r t i
c1e 9
a . A r e v o c a b l e c r e d i t may be amended o r c a n c e l l e d by t h e i s s u i n g bank a t any moment and w i t h o u t p r i o r n o t i c e t o t h e b e n e f i c i a r y .
b . However
,t h e i s s u i n g bank i s bound t o :
r e i m b u r s e a b r a n c h o r bank w i t h which a r e v o c a b 1 e c r e d i t h a s b e e n made a v a i l a b l e f o r s i g h t payment
,a c c e p t a n c e o r n e g o t i a t i o n
,f o r any p a y ‑ ment
,a c c e p t a n c e o r n e g o t i a t i o n made by s u c h b r a n c h o r bank p r i o r t o r e c e i p t by i t o f n o t i c e o f amendment o r c e n c e
l1a t i o n , a g a i n s t documents which a p p e a r on t h e i r f a c e t o be i n a c c o r d a n c e w i t h t h e t e r m s and c o n d i ‑ t i o n s o f t h e c r e d i t .
i i
r e i m b u r s e a b r a n c h o r bank w i t h which a r e v o c a b l e c r e d i t h a s been made a v a i 1 a b l e f o r d e f e r r e d payment
,i f s u c h b r a n c h o r bank h a s
,p r i o r t o r e c e i p t by i t o f n o t i c e o f amendment o r c a n c e l l a t i o n
,t a k e n up documents which a p p e a r on t h e i r f a c e t o be i n a c c o r d a n c e w i t h t h e t e r m s and c o n d i ‑ t i o n s o f t h e c r e d i t .
第 9 条
a. 取消可能信用状は,発行銀行によりいつの時点においても受益者にた
L、する事前通知なしに変更または取消を行なうことができる。
b . ただし,発行銀行は,つぎの義務を負う。
1 9 8 3 年信用状統一規則論考(その 2) B 信用状の形式と通知 9
i 取消可能信用状が一覧払,引受もしくは買取のために使用すること ができるようになっている支庖または銀行が条件変更または取消の通知を うける前に信用状条件と文面上一致しているとみられる書類と引換えに行 なった支払,引受もしくは買取について,当該支 f 苫または銀行にたいして 補償 ( t or e i m b u r s e ) すること
i i
取消可能信用状が後日払 ( d e f e r r e d p a y m e n t ) のために使用するこ とができるようになっている支広または銀行が条件変更または取消の通知 をうける前に信用状条件と文面上一致しているとみられる書類を引取った ときは,当該支屈または銀行にたいして補償すること
本条は取消可能信用状の効力についての規定である。
取消可能信用状は受益者の立場からすれば,たえず発行銀行による取消の ため代金回収が不能になるというリスクを包含しており,その為実際問題と してほとんど利用されないと L 、う状況にある。とは云え発行銀行と買主間の 関係において,発行銀行の立場を保護する有効な手段であると
L、う側面もあ る 。
この為,信用状統一規則制定以前の時期に於て,アメリカの TheAmerican A c c e p t a n c e C o u n c i l は,取消すことができる時限の問題や取消のさいに受 益者への通知の必要の有無等の問題を回避するため,信用状の基準形式のな かから取消可能信用状を除外した。そして A u t h o r i t yt o p u r c h a s e をその代 替手段としたという経緯があった。
1 9 3 3 年規則はこの問題に正面から取組み,その第 4 条に次のように規定を 設けた。
1 9 3 3 年規則
第 4 条 取消可能の信用状は銀行,受益者間に法律上の義務を生ぜ、しめざる
ものとす。この結果,この極の信用状は,銀行に於て受益者に対する通知義
務さへも負うことなくして 変更又は取消すことを得。この程の信用状が取
引先又は支自に対して通達せられたるときは,その変更又は取消は,其処に
於て信用状の利用せらるべき該取引先又は該支庖が,変更又は取消の通知を
受領したる時よりその効力を生ず。
この第 4条において,取消可能信用状は原則として受益者に対する通知義 務さへ負わないで変更又は取消すことができるとし,後段において通達され た取引先又は支屈の利益を保護する条文を設けている。すなはち変更・取消 の事実を知る前に信用状金額の支払を行なった場合はその支払を有効とした ものである。
1 9 5 1 年規則第 4 条はこの考え方を踏襲し,表現の明確化を図る目的の範囲 での改訂にとどめている。
1 9 6 2 年規則では第 2 条第 l 項第 2 項に位置を移しているが条文の趣旨はそ のまま踏襲されている。
1 9 7 4 年規則においては第 2 条に規定されているが,この時の改訂で創設時 以来冒頭部分に述べられていた「取消可能信用状は,関係銀行と受益者との 間の法的拘束力のある約定とはならなし、」が削除され,取消可能信用状は受 益者に通知することなく変更‑取消が可能であると L 、う文言に改められてい る。この削除の理由として 取消可能信用状が変更または取消されるまでは,
同信用状は銀行と受益者との聞の拘束的約定となるからである"と L 、う見解 があった。また ICC 議事録にも このタイプの信用状については,発行銀 行は,事実上取消の権利を行使しないかぎり,受益者に対し支払うべき義務 を約定している。"と L 、う部分があった。このことから論争が行なわれたで あろうことが推察されるが,結局拘束力否定の文言を削除して結着を図った
ものとさオ
lている。
1 9 7 4 年規則のもう一つの改訂事項は,変更・取消の効力発生時点の文言を 削除し,代りに発行銀行の補償義務を確立したことである。この背景として は,イギリスの大銀行が実行してきた善意の買取銀行を保護するロンドン慣 行があり,その趣旨を取入れた改訂で、あるとされている。
【 1 9 8 3 年規則の特徴】
1 . 1 9 7 4 年規則第 2 条前段が 1 9 8 3 年規則第 9 条 a となり,前者の後段が後者
の b iとなり,後者の bi i が追加されている。
1 9 8 3 年信用状統一規則論考(その 2) B 信用状の形式と通知 1 1
2 . 変更または取消を発行銀行が一存で、行ない得る権限を明示したこと。
これは 1 9 8 3 年規則第 9 条 a で明示された。 1 9 6 2 年規則までは 銀行において ..一変更又は取消すことを得。"とあったが, 1 9 7 4 年規則改訂時に拘束力否 定文言の削除もからみ, 銀行において"の文言も削除された。これを今回 発行銀行によりいつの時点においても…ー・変更または取消を行なうことが できる。"とし発行根行の権利であることを明示したものである。
第 9 条 b i は発行銀行の義務その l であるが, 1 9 7 4 年規則第 2 条後段の趣旨 を承継している。
3 . 第 3 の特徴は,今回はじめて追加された後日払信用状(第 6 節第 1 1 条参 照)のもとにおける発行銀行の義務を第 9 条 bi i として追加し明示したこと である。
第 5節 第1 0
条取消不能信用状と確認、A r t i c l e 1 0
a. An i r r e v o c a b l e c r e d i t c o n s t i t u t e s a d e f i n i t e u n d e r t a k i n g o f t h e i s s u i n g bank
,p r o v i d e d t h a t t h e s t i p u l a t e d documents a r e p r e s e n t e d and t h a t t h e t e r m s and c o n d i t i o n s o f t h e c r e d i t a r e c o m p l i e d w i t h :
i f t h e c r e d i t p r o v i d e s f o r s i g h t payment
一一t opay
,o r t h a t payment w i l l be made;
i i
i f t h e c r e d i t p r o v i d e s f o r d e f e r r e d payment
一一t opay
,o r t h a t p a y ‑ ment w i l l be made
,on t h e d a t : e s ) d e t e r m i n a b l e i n a c c o r d a n c e w i t h t h e s t i p u l a t i o n s o f t h e c r e d i t ;
i i i i f t h e c r e d i t p r o v i d e s f o r a c c e p t a n c e ‑ t o a c c e p t d r a f t s drawn by t h e b e n e f i c i a r y i f t h e c r e d i t s t i p u l a t e s t h a t t h e y a r e t o be drawn on t h e i s s u ‑ i n g bank
,o r t o be r e s p o n s i b l e f o r t h e i r a c c e p t a n c e and payment a t m a t u r i ‑ t y i f t h e c r e d i t s t i p u l a t e s t h a t t h e y a r e t o be drawn on t h e a p p l i c a n t f o r t h e c r e d i t o r any o t h e r drawee s t i p u l a t e d i n t h e c r e d i t ;
i v i f t h e c r e d i t p r o v i d e s f o r n e g o t i a t i o n ‑ t o pay w i t h o u t r e c o u r s e t o
d r a w e r s a n d / o r bona f i d e h o l d e r s , d r a f t ( s ) drawn by t h e b e n e f i c i a r y , a t s i g h t o r a t a t e n o r
,o n t h e a p p l i c a n t f o r t h e c r e d i t o r on any o t h e r drawee s t i p u l a t e d i n t h e c r e d i t o t h e r t h a n t h e i s s u i n g bank i t s e l f
,o r t o p r o v i d e f o r n e g o t i a t i o n by a n o t h e r bank and t o pay
,a s a b o v e
,i f s u c h n e g o t i a t i o n i s n o t e f f e c t e d .
b .
Whe n an i s s u i n g bank a u t h o r i z e s o r r e q u e s t s a n o t h e r bank t o c o n f i r m i t s i r r e v o c a b l e c r e d i t a n d t h e l a t t e r h a s a d d e d i t s c o n f i r m a t i o n
,s u c h c o n f i r m a ‑ t i o n c o n s t i t u t e s a d e f i n i t e u n d e r t a k i n g o f s u c h bank ( t h e c o n f i r m i n g b a n k )
,i n a d d i t i o n t o t h a t o f t h e i s s u i n g b a n k . p r o v i d e d t h a t t h e s t i p
u1a t e d documents a r e p r e s e n t e d a n d t h a t t h e t e r m s and c o n d i t i o n s o f t h e c r e d i t a r e c o m p l i e d w i t h :
i f t h e c r e d i t p r o v i d e s f o r s i g h t payment
一一t opay
,o r t h a t payment w
i11b e made;
i i
i f t h e c r e d i t p r o v i d e s f o r d e f e r r e d payment
一一t opay o r t h a t p a y ‑ ment w
i11be made
,on t h e d a t e ( s ) d e t e r m i n a b l e i n a c c o r d a n c e w i t h t h e s t i p u l a t i o n s o f t h e c r e d i t ;
i i i i f t h e c r e d i t p r o v i d e s f o r a c c e p t a n c e ‑ t o a c c e p t d r a f t s drawn by t h e b e n e f i c i a r y i f t h e c r e d i t s t i p u l a t e s t h a t t h e y a r e t o b e drawn on t h e c o n ‑ f i r m i n g bank
,o r t o be r e s p o n s i b l e f o r t h e i r a c c e p t a n c e and payment a t m a t u r i t y i f t h e c r e d i t s t i p u l a t e s t h a t t h e y a r e t o b e drawn on t h e a p p l i c a n t f o r t h e c r e d i t o r any o t h e r d r a w e e s t i p u l a t e d i n t h e c r e d i t ;
i v i f t h e c r e d i t p r o v i d e s f o r n e g o t i a t i o n ‑ t o n e g o t i a t e w i t h o u t r e c o u r s e t o d r a w e r s a n d / o r b o n a f i d e h o l d e r s
,d r a f t ( s ) drawn by t h e b e n e f i c i a r y
,a t s i g h t o r a t a t e n o r
,on t h e i s s u i n g bank o r on t h e a p p l i c a n t f o r t h e c r e d i t o r on any o t h e r drawee s t i p u l a t e d i n t h e c r e d i t o t h e r t h a n t h e c o n f i r m i n g bank i t s e l f .
c .
If abank i s a u t h o r i z e d o r r e q u e s t e d by t h e i s s u i n g bank t o a d d i t s c o n ‑
f i r m a t i o n t o a c r e d i t b u t i s n o t p r e p a r e d t o d o s o
,i t must s o i n f o r m t h e i s s u i n g
bank w i t h o u t d e l a y . U n l e s s t h e i s s u i n g bank s p e c i f i e s o t h e r w i s e i n i t s c o n f i r
1 9 8 3 年信用状統一規則論考(その 2) B 信用状の形式と通知 1 3
m a t i o n a u t h o r i z a t i o n o r r e q u e s t
,t h e a d v i s i n g bank w i l l a d v i s e t h e c r e d i t t o t h e b e n e f i c i a r y w i t h o u t a d d i n g i t s c o n f i r m a t i o n .
d . Such u n d e r t a k i n g s c a n n e i t h e r b e amended n o r c a n c e l l e d w i t h o u t t h e a g r e e m e n t o f t h e i s s u i n g bank
,t h e c o n f i r m i n g bank ( i f a n y )
,and t h e b e n e f i c i a r y . P a r t i a l a c c e p t a n c e o f amendments c o n t a i n e d i n one and t h e same a d v i c e o f amendment i s n o t e f f e c t i v e w i t h o u t t h e a g r e e m e n t o f a l l t h e a b o v e named p a r t i e s .
第 1 0 条
a . 取消不能信用状は,明記された書類が呈示されかつ信用状条件が充足 されていることを条件とするつぎのことについての発行銀行の確約である。
i 信用状が一覧払を定めている場合には,支払うこと,または支払が 行なわれること
i i
信 用 状 が 後 日 払 を 定 め て い る 場 合 に は , 信 用 状 の 条 件 ( s t i p u l a ‑ t i o n s ) にしたがって決定される期日に支払うこと,または支払が行なわれ ること
i i i 信用状が引受を定めている場合には,信用状が受益者により手形を 発行銀行宛に振出すよう定めているときは,その手形を引受けること,ま たは信用状が信用状発行依頼人もしくは信用状に定められたその他の者を 支払人として振出すよう定めているときは,その手形の引受および満期日 の支払に関して責任を負うこと
i v 信用状が買取を定めている場合には,信用状発行依頼人もしくは信 用状に定められた発行銀行以外のその他の者を支払人として受益者が振出 した一覧払もしくは期限付の為智子形を,手形振出人および/もしくは善 意の所持人の償還義務を免除して支払うこと,または他行によって買取が 行 な わ れ る よ う に し か っ そ の よ う な 買 取 が 行 な わ れ な い と き は , 上 記 の
とおり支払うこと
b . 発行銀行が他行に取 m 不能信用状を確認する権限を与えるかまたは依
頼し,その他行が確認を加えた場合には,そのような確認は,明記された占
類が呈示されかつ信用状条件が充足されていることを条件とする,発行銀行 の確約に加えた,つぎのことについてのその銀行(確認銀行)の確約である。
i 信用状が一覧払を定めている場合には,支払うこと,または支払が 行なわれること
i i
信用状が後日払を定めている場合には,信用状の条件にしたがって 決定される期日に支払うこと,または支払が行‑なわれること
i i i 信用状が引受を定めている場合には,信用状が受益者により手形を 確認銀行宛に振出すよう定めているときは,その手形を引受けること,ま たは信用状が信用状発行依頼人もしくは信用状に定められたその他の者を 支払人として振出すよう明示しているときは,その手形の引受および満期
日の支払に関して責任を負うこと
i v 信用状が買取を定めている場合には,発行銀行もしくは信用状発行 依頼人もしくは信用状に定められた確認銀行以外のその他の者を支払人と して受益者が振出した一覧払もしくは期限付の為替手形を,手形振出人お よび/もしくは善意の所持人の償還義務を免除して買取ること
C. ある銀行が発行銀行によって信用状に確認を加える権限を与えられま たは依頼されたにもかかわらず,確認を加える用意がないときは,当該銀行 は,発行銀行にその旨を遅帝なく通知しなければならない。発行銀行が確認 の授権または依頼のなかに異なる定めをしていないかぎり,通知銀行は,確 認を加えることなしに受益者に信用状を通知する。
d . このような確約は,発行銀行,確認銀行(もしあれば)および受益者 の同意なくしては変更も取消もできない。同じーっの条件変更の通知のなか に含まれているいくつかの条件変更のなかの一部の受諾は,上記の当事者全 員の同意なくしては有効とはならなし、。
本条は取消不能信用状と確認についての規定である。
1 9 3 3 年規則は取消不能信用状と確認について次'のとおり定めていた。
第 5 条 取消不能の信用状は,受益者に対して一定の信用を開設する旨の銀
行の確定的約定とす。この種の信用状は,利害関係人全員の同意を得るに非
れば,之を変更又は取消すことを得ず。
1 9 8 3 年信用状統一規則論考(その 2) B信用状の形式と通知 1 5
第 7 条 取 次 銀 行 は , 信 用 状 開 設 銀 行 よ り 取 消 不 能 信 用 状 の 認 確 ( c o n ‑ f i r m e r ) を為すべき旨を要請せらるることあるべし。この場合に於ては取次 銀行は,確認をなしたる日以後受益者に対して自ら責任を負うべきものとす。
第 5 条において取消不能信用状の法律的性質を明らかにしようとし,第 7 条において確認による法律効果を明らかにした。ちなみに第 6 条は通知銀行
(取次銀行),第 8 条は有効期間の指定がない場合の取扱いについて述べて L 、 f
こ。1 9 5 1 年規則改訂時においては,条文構成は 1 9 3 3 年規則と同様であるが,各 条文ともに規定の詳細化が図られた。特に第 5 条においては次のとおりでそ の傾向が顕著である。
第 5 条 取消不能信用状は発行銀行の確約であり,その銀行が受益者又は,
場合により,受益者並びにその信用状に基いて振出された為替手形の善意の 所持人に対する次の約定となる。即ち書類又は,場合により,書類及びその 信用状による為替手形が信用状条件に一致していさえすれば,信用状に記載 の支払,引受又は流通 ( n e g o t i a t i o n ) の条項を正しく履行する旨の約定であ る。(以下確認・変更・取消関係条項省略)。
1 9 6 1 年規則においては上記第 5 条前段の趣旨が第 3 条第 l 項に引継がれて
L、る。確認条項は第 3 条第 2 項,変更取消条項は第 3 条第 3 項に承継された。
1 9 7 4 年規則においては第 3 条( a ) 取消不能信用状の性質, ( b ) 取消不能信用状 の通知と確認, ( c ) 取消不能信用状の変更‑取消の合意と L 、う構成をとってい る 。
さらに第 3 条( a ) は i ) i i ) i i i )と分類され,夫々 payment( 支払), Accep‑
t a n c e (引受), N e g o t i a t i o n (買取)の各信用状についての確約の内客が規定 され f
こ。特筆すべきは,第 3 条例 i i )の引受条項であるが,これにより,手形が発
行銀行以外の銀行を引受銀行とした場合と発行依頼人を引受人(支払人)と
した場合の発行銀行の確約の内容を,発行銀行が引受のみならず満期日の支
払についても責任を負う旨を規定したことによって,この種取消不能信用状 を真の支払担保手段としたということである。
また,第 3 条( b ) の確認条項も ( a ) にならい, i) i i ) i i i ) と分類された。
【 1 9 8 3 年規則の特徴】
1 9 7 4 年規則第 3 条が 1 9 8 3 年規則では第 1 0 条となっている。
1 . a 項 b 項に 明記された苫類が呈示され"と L 、う文言が挿入されている。
1 9 7 4 年規則までは 信用状条件が充足されていることを条件として"となっ ていたが,これに明記された書類の呈示が条件として追加挿入されたわけで ある。従来の信用状条件充足の文言解釈として明記された書類が呈示されそ れが信用状条件を充足していることと解されていたが,今回,文言解釈をよ
り一層明確に強調するために採られた措置で、ある。
2 . 特徴の第 2 は 後日払信用状"に関する条項が追加されたことがあげら れる。これは a 項 b 項それぞれの i )が一覧払にのみ適用されると修正され たことに伴い, i i ) として後日払に適用する条項を新設したものである。(後
日払信用状については第 1 1 条参照)
3 . 特 徴 の 第 3 は 「 買 入 / 買 取 J(purchase/ n e g o t i a t i o n ) を「買取」
( n e g o t i a t i o n ) におきかえたことである。( a 項 b 項それぞれの i v ) 。これは 銀行委員会の意見を採用したということであるが,わが国では 1 9 7 4 年規則の 邦訳において「信用状が買取 ( p u r c h a s e ,/ n e g o t i a t i o n ) を定めている場合に は」とし既に同義語と解していた。
4 . 買取によって使用される信用状の発行銀行の確約内容の明示
a 項 i v として,自己以外の者を支払人として,手形を振出す場合でも発行 銀行は支払う責任があるとし,更に他行を買取銀行に指定した場合に買取が 行なわれないときも支払責任ありとした。
5 . 確認銀行を支払人とする手形を振出すよう定めている場合の確認銀行の 確約は「買取」ではなく支払または引受であるとした。 b 項 i v がこれであり 表現は柏難解であるが 1 9 7 4 年規則第 3 条( b ) i i i ) を加筆修正したものである
O6 . 確認拒絶条項の追加
1 9 8 3 年信用状統
a規則論考(その 2) B 信用状の形式と通知 1 7
第 1 0 条 C 項が新たに追加された。発行銀行から確認を依頼された場合に,
その時の事情により確認を加えることが出来ないということも起り得る。通 常その旨を発行銀行に通知し新たな指示を仰ぐと L 、う措置がとられるが,反 面受益者への通知が遅れると
L、う事態が生ずる。受益者の不利益を回避する
とともに発行銀行への通知義務を明示したのがこの
C項である。
7 . 条件変更・取消の際,同意を要する「関係当事者」を具体的に明示した。
1 9 7 4 年規則までは「関係当事者全員の同意なしに... J ( w i t h o u t t h e agreement o f a l l p a r t i e s t h e r e t o . " ) と記されていたが, 1 9 8 3 年規則第 1 0 条 d 項において「発行銀行,確認銀行(もしあれば)および受益者の同立なくし て ・ ・ ・ ・ ・ ・ J ( w i t h o u t t h e a g r e e m e n t o f t h e i s s u i n g bank , t h e c o n f i r m i n g bank
( i f a n y ) , and t h e b e n e f i c i a r y . " ) と明確にした点が特筆される。
第
6
節 第1 1 条
信用状の使用区分と銀行の指定A r t i
c1e 1 1
a . A l l c r e d i t s must c l e a r l y i n d i c a t e w h e t h e r t h e y a r e a v a i l a b l e by s i g h t payment
,by d e f e r r e d payment
,by a c c e p t a n c e o r by n e g o t i a t i o n .
b . A l l c r e d i t s must n o m i n a t e t h e bank ( n o m i n a t e d b a n k ) which i s a u t h o r i z e d t o pay ( p a y i n g b a n k )
,o r t o a c c e p t a r a f t s ( a c c e p t i n g b a n k )
,o r t o n e g o t i a t e ( n e g o t i a t i n g b a n k )
,u n l e s s t h e c r e d i t a l l o w s n e g o t i a t i o n by any bank ( n e g o t i a t i n g b a n k ) .
c . U n l e s s t h e n o m i n a t e d bank i s t h e i s s u i n g bank o r t h e c o n f i r m i n g bank
,i t s n o m i n a t i o n by t h e i s s u i n g bank d o e s n o t c o n s t i t u t e any u n d e r t a k i n g by t h e n o m i n a t e d bank t o pay
,t o a c c e p t
,o r t o n e g o t i a t e .
d . By n o m i n a t i n g a bank o t h e r t h a n i t s e l f , o r by a l l o w i n g f o r n e g o t i a t i o n
by any bank
,o r by a u t h o r i z i n g o r r e q u e s t i n g a bank t o add i t s c o n f i r m a t i o n
,t h e i s s u i n g bank a u t h o r i z e s s u c h bank t o pay , a c c e p t o r n e g o t i a t e , a s t h e c a s e
may be , a g a i n s t documents which a p p e a r o n t h e i r f a c e t o be i n a c c o r d a n c e
w i t h t h e t e r m s and c o n d i t i o n s o f t h e c r e d i t
,and u n d e r t a k e s t o r e i m b u r s e
s u c h b a n k i n a c c o r d a n c e w i t h t h e p r o v i s i o n s o f t h e s e a r t i
c1e s .
第 1 1 条
a . すべての信用状は,それらが一覧払,後日払,引受または買取のいず れによって使用されるものであるかを明確に示さなければならない。
b . すべての信用状は,それがどの銀行(買取銀行)による買取をも許容 するとしていないかぎり,支払もしくは手形の引受または買取の権限が与え られる銀行(支払銀行,引受銀行,買取銀行 指定銀行)を指定しなければ ならなし、。
c . 指定銀行が発行銀行または確認銀行で、ないかぎり,発行銀行によるそ の指定は,支払,引受または買取を行なうことについての当該指定銀行のな んの確約ともならない。
d. 自行以外の銀行を指定することによって,またはどの銀行による買取 をも許容することによって,またはある銀行に確認を加える権限を与えるか もしくは依頼することによって,発行銀行は,信用状条件と文面上一致して いるとみられる書類と引換えに,場合に応じて支払,引受または買取を行な う権限をそのような銀行にたいして与えることになり,さらに本規則の規定 にしたがって当該銀行に補償することを確約することになる。
この第 1 1 条は, 1 9 8 3 年規則により,新らしく設けられた条文で、ある。
a 項は使用区分を明示している。すなはち,一覧払,後日払,引受,買取 のいずれかを明確に示すことを要求している。
b 項はし、わゆる o p e nc r e d i t の場合を除き,支払銀行,引受銀行,買取銀 行を指定することと定めている。
この a 項 , b 項によって,信用状の受益者はどの銀行からどのような方法 によって支払を受けることができるかを明確に知ることができるようになる 筈である。
C
項は指定されたからといってその銀行の確約とはならないと明示してい る。ただし自ら発行銀行,確認銀行である場合は別である。
d 項は発行銀行と被指定銀行間の権利義務関係を示したものである。
1 9 8 3 年信用状統一規則論考(その 2) B信用状の形式と通知 1 9
本条の新設により,発行銀行はより明確な信用状の発行に努力することが 期待され,また発行銀行と被指定銀行間の権不
JI.義務の明示により,従来,
ともすれば陥りがちであった誤解と混乱を未然に防止する効果が予想され る 。
本条で特筆すべきは「後日払信用状」という新しい概念の信用状をとり入 れたことである。
後日払信用状については次のとおりの説明がなされている。
『信用状条件によって決定される期日,たとえば,船荷証券の発行日後 1 8 0 日というような期日に支払が行なわれることを定めている信用状であって,
手形を振出すことを要件としていないものである。このような信用状は以前 から手形の印紙税回避のためにヨーロッパで発行されており,わが国の為替 管理法の手形原則撤廃後はわが国へ仕向けられることも多くなってきている。
ICC 日本国内委員会のメンパーパンクによる統一規則の邦訳作業において は,従来から外国為替取引で d e f e r r e dpayment の語が使われることがあり,
「繰延払 L 、」または「延払 L 、」と訳されているが, 1 9 8 3 年規則にある d e f e r ‑ r e d payment の語は,それとは異なる概念を持たされているとの判断から「後
日払 L 、」と L 、う訳語を採用している。なお,発行銀行により指定された銀行 が期日に支払いを行なうことについての受益者に対する約束は, 1 9 8 3 年規則 では d e f e r r e dpayment u n d e r t a k i n g と呼ばれているが,この語については,
「後日払い約束」と
L、う訳語が採用されている。』
後日払信用状は 1 9 8 3 年規則においてはじめて認知されたが,形式,使用文 言等も統一されておらず,この為,事務処理体制の整備もこれからの課題と L 、う状況である。
第 7 節 第 1 2 条 電 信 等 に よ る 発 行 と 条 件 変 更
A r t i
c1e 1 2
a . When a n i s s u i n g bank i n s t r u c t s a bank ( a d v i s i n g b a n k ) by any
t e l e t r a n s m i s s i o n t o a d v i s e a c r e d i t o r an amendment t o a c r e d i t , and i n t e n d s
t h e m a i l c o n f i r m a t i o n t o b e t h e o p e r a t i v e c r e d i t i n s t r u m e n t
,o r t h e o p e r a t i v e amendment
,t h e t e l e t r a n s m i s s i o n must s t a t e f u l l d e t a i l s t o f o l l o w " ( o r words o f s i m i l a r e f f e c t )
,o r t h a t t h e m a i l c o n f i r m a t i o n w i l l b e t h e o p e r a t i v e c r e d i t i n ‑ s t r u m e n t o r t h e o p e r a t i v e amendment. The i s s u i n g bank must f o r w a r d t h e o p e r a t i v e c r e d i t i n s t r u m e n t o r t h e o p e r a t i v e amendment t o s u c h a d v i s i n g bank w i t h o u t d e l a y .
b . The t e l e t r a n s m i s s i o n w i l l b e deemed t o b e t h e o p e r a t i v e c r e d i t i n s t r u ‑ ment o r t h e o p e r a t i v e amendment
,and no m a i l c o n f i r m a t i o n s h o u l d b e s e n t
,u n l e s s t h e t e l e t r a n s m i s s i o n s t a t e s f u l l d e t a i l s t o f o l l o w " ( o r words o f s i m i l a r e f f e c t )
,o r s t a t e s t h a t t h e m a i l c o n f i r m a t i o n i s t o b e t h e o p e r a t i v e c r e d i t i n ‑ s t r u m e n t o r t h e o p e r a t i v e amendment.
c . A t e l e t r a n s m i s s i o n i n t e n d e d by t h e i s s u i n g bank t o be t h e o p e r a t i v e c r e d i t i n s t r u m e n t s h o u l d c l e a r l y i n d i c a t e t h a t t h e c r e d i t i s i s s u e d s u b j e c t t o Uniform Customs and P r a c t i c e f o r Documentary C r e d i t s
,1 9 8 3 r e v i s i o n
,ICC P u b l i c a t i o n n o . 4 0 0 .
d .
Ifa bank u s e s t h e s e r v i c e s o f a n o t h e r bank o r banks C t h e a d v i s i n g b a n k ) t o h a v e t h e c r e d i t a d v i s e d t o t h e b e n e f i c i a r y
,i t must a l s o u s e t h e s e r ‑ v i c e s o f t h e same bank ( s ) f o r a d v i s i n g a n y amendments.
e . Banks s h a l l be r e s p o n s i b l e f o r any c o n s e q u e n c e s a r i s i n g f r o m t h e i r f a i l u r e t o f o l l o w t h e p r o c e d u r e s s e t o u t i n t h e p r e c e d i n g p a r a g r a p h s .
第 1 2 条
a . 発行銀行がなんらかのテレトランスミッション ( t e l e t r a n s m i s s i o n ) に よって信用状もしくは信用状の条件変更を通知するようある銀行(通知銀行) に指図し、かつメール・コンブァメーションを信用状の原本もしくは条件変 更の原本とする場合は,そのテレトランスミッションに, f u l l d e t a i l s t o f o l l o w " (またはこれと同趣旨の文言)と明記するか,またはメール・コンフ
ァメーションを信用状の原本もしくは条件変更の原本とする旨を明記しなけ
ればならない。発行銀行は 当該通知銀行に信用状の原本もしくは条件変更
1 9 8 3 年信用状統一規則論考(その 2) B信用状の形式と通知 2 1
の原本を遅滞なく送付しなければならない。
b . テレトランスミッションに f u l ld e t a i l s t o f o l l o w " (またはこれと同趣 旨の文言)と明記していないかぎり、またはメール・コンファメーションを 信用状の原本もしくは条件変更の原本とする旨を明記していないかぎり,そ のテレトランスミッションが信用状の原木もしくは条件変更の原本であると みなされるものとしまたメール・コンブァメーションをいっさい送付すべ
きではない。
c . 発行銀行が信用状の原本としようとするテレトランスミッションに は,当該信用状が荷為替信用状に関する統一規則および慣例 1983 年改訂版 ICC ノミブリケーション N o .4 0 0 にしたがって発行されたことを明確に示すべ
きである。
d . ある銀行が信用状を受益者に通知してもらうために他行(通知銀行) のサービスを利用する場合は,その銀行は,条件変更の通知のためにも同じ 銀行のサービスを利用しなければならない。
e . 銀行は,上記の各項に述べる手続にしたがうことを怠ったために生じ るすべての結果にたし、して責任を負う。
通信手段の発達とともに,信用状の通知形態も変遷を遂げて来た。古くは 受益者自身が信用状を J 先行し,旅先でこの信用状に基き資金を調達して商品 を仕入れると L 、う形態が行ーなわれ,これはいわゆる旅行信用状の始祖とされ ている。商業信用状の通知方法としては,信用状原本を郵便により送付する 方法が行なわれ,郵便馬車,鉄道郵便,海 l 二 愉 j 去の場合は郵便船による送達 が行なわれた。航空機の発注により航空便による送付は所要時間の短縮をも たらし現在も航空間による信用状原本の送付は広く利用されている。一方 屯伝・の発達に伴ない ,
~l,、を要する信用状の通知に利用されるケースが増大してきた。
1 9 3 3 年統一規則創設時は有線通信に加え無線通信も急速に発述しており,
信用状の通知に屯信‑屯報が広く利用されつつあった。
1 9 3 3
1! 三規則は次のように規定した。
1 9 3 3 年規則第 9 条第 2 項
電信により取引先に右の如き信用状を発行したることを通知すべき旨を委 託したる場合に於て,若し該信用状証券自体を流通せしめむとするときは,
発行銀行はその信用状原本をその取引先に送付することを要す。然らざる場 合に於ては発行銀行は,之により生じ得べき‑切の結果に就き責任を負ふ。
かねてから英国の銀行は,電信により信用状内容を取引先である他行(受 益者所在地の通知銀行)へ通知した場合は,信用状原本を m a i l c o n f i r m a ‑ t i o n として送付し,電信通知の内容を追認すると
L、う方式をとり慣行化され ていた。これは歓迎すべき慣行でありトラブルの未然、防止の観点から他の国 の銀行でも踏襲されている。 1 9 3 3 年規則はこの慣行をふまえて,信用状自体 を流通させようとする発行銀行は,当該原本を送付することを要すと規定し た。そのあと後段において原本を送付しなかった場合はそのためにおこり得 る一切の結果において責任を負うとしている。
電信通知の場合の発電文は,通常は秘密保持のため暗号化するとともに,
電信料節約のために語数を節約する傾向がある。このことから暗号化の段階 と解読の段階でたえず誤訳の危険性があり,さらに使用暗号
i践により,原文 の正確な伝達が困難であると L 、う問題を内包していた。したがって正確を期 するためには電信発電後ただちに信用状原本を m a i lc o n f i r m a t i o n として通 知銀行に送付し受益者へ交付すると
L、う措置が必要であった。
しかしながら、航空便が未発達であった時代には郵送に多くの日数を要し、
信用状条件の船積期限に間にあわないというケースもおこり得たわけであ る。このことから電信通知による信用状で船積を行ない為替手形を取組むと L 、う事態が生じ,買取銀行での買取後において問題化するということとなる。
さらに発行銀行が信用状原本の送付を失念するケース,あるいは信用状条件
の全内容を電信で通知したことから原本の送付は一切不要とするケースなど
種々考えられる。そこで統一規則は上述のとおり,発行銀行に対し一切の責
任を負わせるという趣旨を明示したわけて、ある。
1 9 8 3 年信用状統一規則論考(その 2) B信用状の形式と通知 2 3
1 9 5 1 年規則もこの趣旨を貫いて第 5 条第 5 項に次のとおり規定している。
1 9 5 1 年規則第 5 条第 5 項
発行銀行が取引先銀行に,信用状の通知をなすべき旨を電信指図する場合,
もしその信用状自体を流通させようとするときは,当該信用状の原本を当該 取引先銀行へ送付しなければならない。万一発行銀行が他の取扱をしたとき は,これに因って生ずることあるべきすべての結果に対して責任を負う。
1 9 6 2 年規則において,電気通信手段として旧来の c a b l e (電信), t e l e g r a m (電報),に加え,新たに t e l e x (加入電信)が登場した。さらに条文の整備明 確化を図り次の構成を採用した
c1 9 6 2 年規則第 4 条
l 項 原信用状を原本扱いとする場合の発行銀行の手続上の義務
When an i s s u i n g bank i n s t r u c t s a bank by c a b l e , t e l e g r a m o r t e l e x t o n o t i f y a c r e d i t and t h e o r i g i n a l 1 e t t e r o f c r e d i t i t s e l f i s t o be t h e o p e r a t i v e c r e d i t i n ‑ s t r u m e n t
,t h e i s s u i n g bank must s e n d t h e o r i g i n a l l e t t e r o f c r e d i t
,and any s u b s e q u e n t amendments t h e r e t o
,t o t h e b e n e f i c i a r y t h r o u g h t h e n o t i f y i n g ban k .
大意〕発行銀行が屯信・電報あるいはテレックスで通知銀行に信用状を通知 するよう指図しかっその信用状の原本自体を取引に使用させる信用状の証 1 ! ?
とすることになっているならば,その原本を通知銀行経由受益者に送付しな ければならない。あとの変更通知もまた同じである。
ここで問題となったのは,信用状の電信・電報あるいはテレックスによる 通知自体が,いわゆる c a b l ec r e d i t (電信信用状)ではないのか,にもかかわ らずそのあとに o r i g i n a l l e t t e ro f c r e d i t (信用状原本)とし、う語を使用してい るのはどういうことなのか? c a b l e c r e d i t が信用状原本ではないのか?とい う疑問であった。本件は 1 9 7 4 年規則において m a i lc o n f i r m a t i o n の概念翠入 により疑問の解消が図られた。
2 項 発行銀行の l 項の手続上の義務怠慢に対する責任
The i s s u i n g bank w i l l be r e s p o n s i b l e f o r any c o n s e q u e n c e s a r i s i n g from i t s f a i l u r e t o f o l l o w t h i s p r o c e d u r e .
大意〕発行銀行は手続を怠ったためのすべての結果に対して責任を負う。
1 9 7 4 年規則においては,第 4 条 a 項 b 項 c 項の構成をとり a 項にお いてメール・コンブァメーションの概念を導入し取扱いの明確化を図ってい る 。 b 項は 1 9 6 2 年規則第 4 条 2 項の趣旨がそのまま引継がれている c 項は
1 9 7 4 年規則ではじめて追加された条項で、ある。
a 項 後送のメール・コンファメーションを原本扱いとする場合の発行銀行 の手続上の義務
要旨〕メール・コンブァメーションを信用状原本とする場合には,その電信
・電報あるいはテレックスにその旨明示のこと。信用状原本(メール・コン ブァメーション)を送付のこと。条件変更の場合も同じ。
b 項
発行銀行の a 項の手続ーとの義務~'I~iこ対する立任1 9 6 2 年規則第 2 項と同旨である。
C
項 電信案内自体を原本とみなす判定基準とメール・コンファメーション の省略
本項は 1 9 7 4 年規則で新たに設けられた条項で、ある。 I C C 作業部会の次の指 摘が本項新設の契機となった。
1 6 2 年規則第 4 条は,一部分の問題のみを反映しているにすぎず, メール・
コンブァメーションの到来を待つことがなく電信による買取信用状を開設す る点にかかわる問題に対しては何らの解決をも提供していない。」
新 設
C項の原文は次のとおりで,その要旨は電信指図に信用状条件が完全 に表示され,かつ a 項に規定する効力発生時点の明示により制限されていな し、場合,その電信指図で開設された c a b l ec r e d i t は信用状原本とみなすとい うことである。そしてメール・コンファメーションの送付を不要とした。こ の不要とした点はメール・コンブァメーションの送付が果してき f 、こ夕、、ブルチ
ェッグ機能を廃止したこととなり,別の混乱を生ずる危険が発生した。
C