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「高度成長」と労働時間・労働強化・労働災害 山 下 隆 資 は じ め に

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289   −153−  

研究ノート   

「高度成長」と労働時間・労働強化・労働災害  

山  下  隆  資  

は じ め に   

周知のように.,日本経済は.1960年代に㌧入っていらぢるしい「高度成島」をとげた。経済   企画庁『国民所得統計』によって:1960年から69年に/いたる10年間の実質経済成長率をなが   めてみると,62年と65年に.2度の深刻なネ況を経験したに.もかかわらず,年平均11.4%と   いう「高い」成長率を示したのである。このような高度成長が可能となったのは,一−・方で   は国家と独占資本が⊥体となって二,いわゆるスクラップ・アンド・ビルド政策に.よる産業   構造の「合理化」をはかるとともに.,他方では各企業の直接的生産過程内部でも徹底した  

「合理化」がおしすすめられたから紅はかならない。「高度成長」とは資本の高蓄積のこ  とであり,資本の蓄積とは剰余価値の資本への転化のことである。したがって.「高度成長」  

とは労働者の搾取が強化されたこ.とのうらがえしの表現に.はかならない。日本経済はこれ   はどの「高度成長」を示しながらも,働く労働者の実質賃金はそれはど上昇せず,利潤増   大のための資本主義的合理化は,その集中的表現ともいうぺき労働災害・職業病を多発さ   せ,労働者の生命と健康をいちぢるしく破壊したのである。否,資本は,このように.労働  

者階級を犠牲にすることに・よって,みずからの「高度成長」を達成したのである。本稿で  

は1960年から69年にかけて.の10年間の「高度成長」期における労働時間の変化 労働強度   の増大,労働災害の増加といった直接的生産過程内部での労働者階級の実態に焦点をしぼ  

り,これを実証的に.ながめてみたいと思う。  

H 「高度成長」と労働時間   

まずはじめ紅「高度成長」期の所定内労働時間がどのよう紅変化してきたかをながめて   みること紅する。第1表は,企業規模30人以上での月間労働時間の推移を表わしたもので   あるが,これ紅よると,1960年以降,全産業での月間所定内労働時間は少しづつ短縮ナる   傾向に・ある。つまり,1960年の全産業での所定内労働時間ほ1鋸.8時間であったものが,  

69年には171・4時間となり,10年間で9.4時間短縮(5㊥2%の短縮,1グ月の平均出勤日数を  

24日とすれば1日平均約23分の短縮)しているのである。同様な傾向は製造業にもみられ   

(2)

塊44巻箆3ぢ  

辣1去 月閲実労働時間数(規模30人以上)  

290   

(時間)  

,・・・・・5・ノ ーー  

盲    ら   調 査産業 封    二      l 製  造  業   年 月  

封   所︻   定聖」 

︻  ︹D  7  

198小0   

207uO    203.4    198.4    1961.9    195.7    191.8    193.0    193u9    193.0、  

179 .. 7  182.0    173.4    178..8    177.6    176.1    175.1    174.7    173.8    172.8  

3  8   

nO O  

つ−  OU  

l l  

4  2  

9   0  

1  2  

L〇  O  1  2  3   ︻〇  6  6  6  6  

9  9  

1   1  

3  9 

1  

0  8  6  

1  7  6  

0  9  9  

2  1  1  

179.0 1 

195小7 〜  177.1   65 弓  192 91 176.4  

193.2 175.8   66   

67    68    69  

0  3  

9   1  

192.7 174.1   

190.0 ㌔   171.4   190.0 ∃  169.8   

資料出所,労働省「毎・月勤労統計調査」   

る。この10年聞で,製造業の月間所定内労働時聞軋182‖0時間から169・8時聞へと12=2時   間短縮(6.7%短縮)されてこいる。   

だがしかし,このように所超内労働時聞が短縮される傾向にあったといっても,その内   容を検討してみる必安がある。   

舞1に・,所定内労働時間の短縮㌢ま.,おもに独占的大企業での詣であって,中小企先でほ   相変わらずの長時間労働が続いている。労働省『貸金労働時間制良庵合調査』(1969串9   月)によって企条規惧別の適所定労働時間をみると,大企業ほと適所定労働時間が短かく   なっていると.とがわかる(弟2衣)。つまり,退所定労働時間42時間未満の短かい時間階   級に属する企業の割合ほ,5,000人以上の規模では46.3%となっでいるが,30〜99人の規   模ではわずか4…9%にすぎず,規模が大きくなるはどその割合が高くなっている。   

これ紅対し,適所定労働時間が48時間以上(ユ日8時間、以上)の時間階級に属する企業   についてみると,5,000人以上の規模では8.9%,500〔〜・′999人の妹模では27.0%となってい   るが,30〜99人の規模では実紅68小1′%となっている。このように規模が小さくなるはど長  

い時間勝取に隠する割合が高くなっているのである。しかもこの調査は企業規枚30人以上   

(3)

「高度成長」と労働時閲・労働強化・労働災t.さ手   ∽∂5−  

291  

についての調査であり,それ以下の零細企業ほ含まれていない。企業規梯29人以下の零細   企業での所定内労働時間は,これよりもさらに長いものと考えられる。「大企業では最近   週休2日制を採用する企業が多くなった」といわれているが,中小零細企業で働く多くの   労働者ほ,土曜日の午後ですら労働力を販売しなけれはならないのが実伯である。  

「低賃金の申の長時間労働」というわが国の特徴ほ,「高度成長」別に入ってからも,中   小企業を中心に.,依然として.続いているのである。  

第2表 退所定労働時間の状況(企業規模30人以上)  

(1969年9月)  

00t40諾チ誹2:00l42i2チ誹5:  

産業・規模 i討   事業所構成比   調査産業封   

5000人以上   ∴二:   8・2!7・5 ■ 9…5− 6.5    ・ 

一  

 ̄一   二二二  

1000′・ノ4999    【   500〜 999   

100′・ノ499   30′、一 99    鉱    建  設  

0  1  3  9  

5.42.1   3..81.7   

L  

2..70.7   装 薬   7  8  4  8  0  2    1  1  2  6  8  7  

3  1  

47小7】 2.4   1…2】38..6】  

1…:;】;;:;!1二  

758…0   7..47.2   12巾310u7   

9・55小4   10り5 1一.3   製  造  業  

卸売小売業   金融保険業   不 動 産 業   運輸通信 業   電気ガス水道業  

3.28.0  

6 一 5  

牒﹂﹂   3  

1り21…81 1.8   3.75291 37   

1000  1・32・4岳 89・7  

資料出所 労働省「賃金労働時間制度総合調査」   

塊2に,独占的大企業を中心に所定内労働時間が短縮されたといっても,このことから   ただちに.,外面的にあらわれた数字どおりの所定内労働時間が短縮されたと簡単に結論づ  

けることはできない。なぜなら,外面的にほ労働時間が短縮されたように見えるが,実頁  

的には労働時間が延長される巧妙な方法がとられているからである。   

(4)

籍44巻 発3号   292   

−−∫♂−  

たとえば八幡製鉄や富士製鉄でほ.,63年に「現場到着制」「新勤番体制」を実施し,従   来工場の門のところ紅あったタイム・レコーダーを職場にうつし,作業服の着がえ,作業   準備,入浴などを所定内労働時間からはずし,労働時間を実質的に延長させている。また   この八幡・富士が合併して∴生れた新日本製鉄や住友金属,日本鋼管などでは,従来の三直   三交替制から四直三交替制への切りかえ紅ともなって二,1日の実労時間を7時間から7時   間15分紅延長し,休憩時間を1時間から45分に腐縮することに・よって労働時間の延長をは   かってこいる。三井炭鉱では1964年の大争箪の前は15分以内の発破待避時間がみとめられて  

いたものが,争議後はこれがまったくみとめられなくなるといった,人命を無視した時間   延長がなされている。このほか造船業なとでは取付工,ガス工,電気熔接工などといった   従来の単能工を,これらの作業がすべでできるよう多能工化し,それ紅よって手樽ち時間   をなくし時間管理を強化している。   

こよのうに.資本はさまざまの方法で実質的な労働時間の延長をはかっており,場合によ   っては,名目上は所定内労働時間が短縮されたに・もかかわらず,実質的な労働時間は.従来   よりも延長されてこいるということもありうるのである。   

第3に,たとえ実質的にわずかばかりの所定内労働時間の短縮がおこなわれたとしても,  

資本がなぜ労働時間を短縮するのか,考えてみる必要がある。労働省『賃金労働時間制度総   合調査』(1967年)によって,従楽員5,000人以上の企業が,労働時間の短縮をおこなった動   機をみると「作業能率の向上を目指すもの」55巾1%,「労働組合の要求によるもの」賂7  

%,i ̄他社紅同調して」24・9%,「交通事情を考慮して」0巾2一%,「その他」5・・2%となって   いる(1事業所で2つ以上の理由をあげてるところがあるので合計は100に・ならない)。  

この調査結果が物語っていることは,独占的大企業での所定内労働時間の短縮は,決っし   て労働者の労働を軽減さすため紅おこなわれたわけではなく,何よりもまず作業能率の向   上を,つまり生産性の向上・利潤の増大を目指しておこなわれたというと.とである。独占  

的大企業は.,所定内労働時間のわずかばかりの短縮とひきかえに・,つぎに述べるように.,  

残業時間を必要紅応じて自由に・延長させたり,交替制勤務をより増加させたり,また弟二   節で述べるように.,労働強度を−・般と高めることに・よって,生産性の向上・利潤の増大を   目指したものに.ほかならない。   

川 そこでまずはじめ紅残業時間についてみると,すで紅儲1表でも示されているよう  

に、,全産業の所定外労働時間ほ,好況期にほ増加し,不況期には減少するという変動を示し  

ながらも,所定内労働時間の傾向的な短補にくらべ,65年不況以降の好況過程では再び増   

(5)

「高度成長.」と労働時間・労働強化・労働災害   −57・岬   293  

加する傾向に.ある。このような傾向は特性製造業で強くみられる。製造業の中でも鉄鋼,  

輸送用機器(自動車),非鉄金属といった業種での長時間残業が目立っている(算3表)。  

籍3表 月間所定外労働時間数(製造業規模30人以上)   

(時間)   

資料出所 労働省「毎月勤労統計調査」より作成   

好況期に,製造業でこのよう紅残業時間が増加するのはなぜか。その第1の理由は,資   本が,一博的な好況に.よる需要拡大紅対応して生産堂の拡大をはかる場合,新しく機械設   備を購入したり労働者を新規採用することに.よって生産塩を拡大させるよりも,現存する  

機械設備や労働者を長時間使用した方がはるかにコストが安くつくからである。65年不況   以降,特に鉄鋼,輸送用機器,非鉄金属などで残業時間が増加したのは,65年不況を契機   に,独占的大企業は労働節約的投資を積極的におこない,徹低的な「人員削減計画」に・よっ   て雇用労働者数を相対的に.いちぢるしく減少さしていたのであるが,好況期紅・は,これら   相対的に減少さしていた労働者を長時間の残業にかりたてることによって,生産長の拡大   をはかったからに.はかならない。そしてこの場合,日本の労働基準法に・よる残業賃金割増  

率が25%という低い水準に.決められていることも,資本が新らしく労働者を採用せず,既  

(1)  

存労働者の残業紅よって生産盈を拡大させようとする誘戟の一つに・なっているのである。  

(1)アメリカでは法律上50%の割増率となっており,イギリスの協約では大体過2時間まで   

の残業は25%,それをこえると50%というのが圧倒的である,(藤本武『■労働時間皿66頁)   

(6)

籍44巻 寛3弓   294   

一一 5ざ一一  

もう1つの理由ほ,日本の労働者の賃金が,残業をしなけれ略生活を維持することがで   きないはどの低い水準におさえられているからである。「高度成長」期に・入って,名目的   賃金はかなりの上昇を示したものの,消費者物価の上昇がはげしく,実質賃金ほそれはど   上昇しなかった。また若年層に.くらべ,家族扶益義務のある中高年合労働者の賃金上昇率  

が相対的に.低くかったことから,彼らの多くは文字通り「生きるために・」残・業労働をせざ   るをえなかったのである。全金プリンス調査部がおこなった『生活実態調査』(1970年3   月)によると,「最近の生活ほどうですか」という質問に対し,「どうにかやっている」77・5  

%,「非常に.苦しい」16り9%となっており,しかもこれら労働者のうちのはとんどの人は   残業による収入が金収入の30%を占めているのである。この調査結果は,労働者の生活が   残業収入によってかろうじて維持されていることを明確に示している。   

このように資本ほ,−・方では所定内労働時間を短縮させながも,他方では必要に応じて   残業時間を増加させ生産量の拡大・利潤遠の増大をはかっており,労働者にとってほ相変   わらずの長時間労働が続いているのである。  

(ロ)つづいて交替制勤務の採用状況をながめてみると,現在では鉱業のはか,製造其の繊   維,鉄鋼,紙パルプ,石油,化学,輸送用機器などといった業種のはとんどの独占的大企   業で昼夜交替制勤務が採用されている。そこで労働省『賃金労働時間制度総合調査」によ   って,全労働者に対する交替制勤務檻従事する労働者の割合をみると,第4表で示されてい   るように,独占的大企業はど交替制勤務に従事する労働者の割合が高くなっている。つま   り,30′・〉99人の規模では交替制勤務に.従事する労働者の割合は7血9%にすぎないが,5,000   人以上の規模でほ26.3%と,約3倍に.なっているのである。そして産業別では鉱業の46・0  

%が一番高く,運輸通信業28.5%,不動産米18い5%,製造英15・・7%といった服で続いてい  

る。製造業の中では鉄鋼39.4%,繊維37.4%,パルプ・紙28・3%といった業種での交替制   動務の割合が高く,このほか非鉄金属,輸送用機器,石油石炭製品といったような業種で   の交替制勤務に従事する労働者の割合も,「高度成長」期に・入ってから次雄に∴増加している   のである。   

このように蘭造業の独占的大企業を中心に.,交替制勤務がしだいに増加してゆく根本的   な理由は何か。それは独占的大企業が機械設備を24時間フル回転させ,減価償却を早め,よ  

り■.−くより多くの独占利潤を独濁しようとするからに・はかならない。周知のように「高度  

成長」別の「技術革新上にともなう独占的大企業の機械設備への投資ほ巨大な額に達した0  

そしてこの機械設備の価伯は,たとえ使用せずにおいたとしても「使われない剣が鞘の中   

(7)

「高度成長」と労働時間・労働強化・労働災害  

295    −β9一山  

舘4表 交替制勤務形態の状況(企業規模30人比上)  

(1968年9月)  

(%)  

調査産業封    5,000人以上    1,000一ノ4,999  

500〜 999   100′} 499  

30〜  99    鉱   業   建  設    業   製    造  業   卸売小売東   金融保険業   不 動 産 業   運輸通信業   電気ガス水道業  

資料出所 労働省「賃金労働時間制度総合調査」  

で錆びるように.」(マルクス)自然力によって物理的に.摩滅する。またこのような物理的な   摩滅の授かに.,社会的に陳腐化レてしまうといったような道徳的摩滅の危険にもさらされ  

ている。そこで独占的大企業ほ,このような物理的・道徳的摩滅を防ぐためにも,あるい  

はまた特別剰余価値の得られる蜜月期間を十分に利用するためにも,機械設備をできるだ  

け長時間稼動させようとするのである。しかし機械設備の長時間稼動のために同一・労働者  

を長時間労働させるには一億の生垣的,社会的限界がある。そしてこの限界をのりこえる  

ものとして,鉄鋼業や繊維工業などにみられるよ うな昼夜交替制勤務が登場するのであ  

る。独占的大企業は,昼夜交替制勤務の採用によつて,ほじめて磯城設備の24時間稼動を可  

能とし「高価な機械の遊休」を防ぐとともに,以前とくらぺていらぢるしく生産鼻を拡大   

(8)

寛44巻 貨3号   296  

−60−  

させ,より多くの独占利潤を獲得できる。資本に.とっては,たとえ所定内労働時間を短縮   させたとしても,交替制勤務の増加に.よって生産量を拡大した方がははるかに眉利なので   ある。   

だがしかし,労働者にとってほ,たとえ昼間休もうとも,夜間労働が反生理的労働であ   り人間性を無視した労働であることに変りない。労働者は昼間の社会的,文化的生活から   引き離されるとともに,夜間労働に.よる肉体的,精神的疲労も昼間労働紅くらぺていらぢ  

るしく増大する。夜間労働によって労働者は早朝帰宅し昼間に・睡眠をとらねばならない   が,住宅事情の悪化から,遠距離通勤や昼間の騒音紅悩まされる場合が多い。また昼間の   睡眠はどうしても短かく浅くなり,夜間労働による妓労ほ・なかなか回復しがたい。その結  

凰胃かいよう,心臓病,高血圧といったような病気が労働者の間にひろがり,労働災害の   発生も増加する。だが独占的大企業にとっては,労働者の健康状態や文化生活よりも,ただ  

ひたすらに利潤を求め,みずからを成長させてゆくことの方がはるかに虜要なのである0  

(ニ)「高度成長」と労働強化  

っぎに.労働強度の増大についてながめてみよう。資本は労働時間を短縮させたとして   も,単位確聞当りの労働支出を増大させることに・よって,以前にもまして生産性を高め,  

利潤を増加さすことができる。一般的に.いって,資本が剰余価値を増大させる方法として   は,賃金の労働力価値以下への切下仇 労働時間の延長,労働強度の増大という三つの基   本的な方法がノある。そして露骨な賃金切下げや,大幅な労働時間の延長が困難な現在で   は,資本に.とって,労働強度を増大させることによって剰余価値を増大させる方法がもつ  

とも有効である。そ・してこの労働強度の増大は生産過程の機械化・自動化,それ紅ともな   う人間労働の単純化と密接に.結びついている。   

日本の「高度成長」期に.は,いちぢるしい「技術革新」によって,たとえば機械工業で   は各種専用機の導入,トランスファー・マシ∵/などによる切削加工の自動化,機械部品な   どの製作工程への冷間鍛造機や放電加工機の導入,組立部門でのベルトコンベアーの普   及,造船業における自動熔接機,自動切断機の採用,また装置産業では計器に.よる温度調  

節やフイ−ド・バックを中心としたプロセスオ一トメ−ジョンの採用,鉄鋼部門では手動   式圧延から計器によるロ−ル操作への転換,ストリップミルでのロ−ルガングによる鋼材  

移動への転換,といったようなかたちで独占的大企業を中心に,生産過程の機械化・自動化  

がいちぢるしく進んだ。そしてそれにともなって従来の熟練労働や筋肉労働はしだい紅か   

(9)

「高度成長」と労働時間・労働強化・労働災害   −6ユー   297  

げをひそめ,それに.代って−単純作業の反復,計器の監視,単純なスイッチ・操作といったよ   うな単純労働,計器監視労働が大幅に.ふえることとなった。   

だがしかし,マルクスが「械械ほそれ自体としてみれば労働時間を短縮するが,資本主   義的に.充用されれほ労働日を延長し,それ自体として−は労働を軽ぐするが,資本主義的に  充用されれば労働の強度を高くし,それ自体としては自然紅対する人間の勝利であるが,  

資本主義的に充用されれば人間を自然に.よって−抑圧し,それ自体としては生産者の富をふ  

(2) やすが,資本主義的に充用されれほ生産者を貧困化する」と述べているごとく,「高度成  

長」期の「技術革新」に.よる生産過程の機械化・自動化も,決っして労働者の労働を軽減  

するためたおこなわれたわけでほない。それはあくまでも資本がより多くの利潤を猿得す   るために.おこ.なったにすぎない。資本ほ生産過程の機械化・自動化によって,短期間の訓   練で新規学卒者や若年の未熟練労働者を生産態勢檻適応させろことを可能とし,一方では   従来そこで働いていた相対的に焦金の高い中高年令労働者を,配置転換,下請企業への出   向,自己退職という形で強力紅人員整理し,労働費用の削減をはかった。そして他方では   数のうえで相対的檻減少した労働者に対し,機械の運転速度を早めたり,同一・労働者の作  

業範囲を拡大すること紅よって:一段と労働強度を高め,生産性の向上・利潤の増大をはか   ったのである。   

生産過程の機械化・自動化のもっとも典型的な例として.は,電気機器産業,自動車産業   などで広く採用されて:いるベルトコンベア・システムがあげられる。ことでは機械が生   産の「主導権」を振り,労働者は機械に完全に.「支配」され,機械の単なる「附属物」の  

地位におかれている。そして機械の速度をちょつと早めるだけで労働強度は一度と高まり   生産性はいちぢるしく向上することから,機械の運転速度はつねに労働者の生理的限界ぎ   りぎりまで紅高められることになる。「松下電器商槻工場のブラウン管職場では,57年に  は1時間78本の速度で動いていたコンベアー・が,61年以降は120本の速度に・なった。ソニ   ー・では,61月11月には1ライン1日320台の生産高だったヲ汐カー製造課で,翌年の1月25日   には370台紅ふえ,トランジスタ−レ」−・ル作業では,60年12月に2・000台だったが,翌61年   12月には3,000台の出来高となった。ここでは各ライン交替要員はなく,稼動申紅便所に 

(3)  

行くことも許されない」「女子・が八割をしめる八欧電気のテレビ配線職場委のアンケ−ト  

調査によると,コンベア−のスピ−ドが『早い』と答えたものが75い9%,流れに追われた  

(2)K..マルクス『資本論』邦訳,マルクス・エンゲルス全集版・第1分冊577貢  

(3)戸木田嘉久『閣代の合理化と労働運動.』318頁。   

(10)

寛44巻 第3弓   298  

−6クー  

とき『おっかけて行って自分でやる』というものが42.3%『一月中流れ作業をやっている   と,コンベアーから離れても物が動いて:みえ.ることがありますか』との問に・,57ゆ0%が  

(4)  

『ある』と答えている。」「(東芝電気の)ある電子関係の女子の職場ではベルト・コンベ   アーのスピードが65年12月から1.3怯もはやめられ,組の生産目標は8万個から12万個と  

(5)  

いっきよにひきあげられた」といったように,資本は生産景増大のためにベルト・コンベ   アーのスピ−ド・アップをはかり,労働強度博一・段と高められて:いる。   

また自動嘩産業は,自動的に動く工作機械群の佐系とコンベアーレスチムによって象徴   されて−いるが,ここでも生産愚増大のため紅コンベアー・のスピードはおどろくはど高めら   れている。つぎに日産自動車の例を示そう。「あるプレスエー①62年とろはプレスは1   ラインで約800であったが,現在でほ3..500紅ふえ,4倍以上の仕事量を消化しなければな   らなくなっている。作業密度は濃くなり,動作を速くしなければおいつかない。⑧しかも   これまで1台を・4人で(2人が入れて他の2人がはずしていた)あつかつていたプレス作   薬ほ,2人(1人が入れて他の1人がはずす)にへ,らされてしまい,災害の危険が増大し  

ている」「プレスしたものを熔接して一組立をおこなう車体エーG)62年ころは1日30台完成  

すればよかったが,現在はコンベアーイヒで仕事においまくられ,昼夜交替で400〜500台も   つくらされている」「塗装を担当するある労働者−①67年ころほ1ラインで8..000台処理  

していたが,現在は1万4〜5000台,④ふきつけは65年とろほ3分40秒ぐらいでやって   いたが,現在ほ3分前後に短縮されている」「組立ラインの労働者−①朝8時30分から作   業開始だが,そ・の30分も前からラインについて二準備作業をやる労働者が最近ふえている。  

コンベア−のスピードがやたらと速くなっているために.,こうでもしないと追いついてい   けないからだ。昼休養も同様である。④塵産台数は毎月きめられているが順調に.前の作菜   工程がすすまないときは,月の後半に.仕事がきつくなり,残業や休日出勤がかさなる。⑨  

予定よりつね紅コンベアーの速度が速い,人手が足りない時でも生産は強行される」「あ   る機械工−①専用機がふえ,嘩純作業紅なったため,かけもちがふえている。仕事が単純   化されているのでベテランの機械エはやめていくものが多い。④やり嬉し作業は工数に 

(6) いれられず余分な仕事とみなされる」。同様なことほトヨタ自動車でも見られる。66年に.完  

成されたトヨタ自動通商岡工場では,コンベアノーのスピ−ドアップによって,−・台当たり  

(4)同上,319貫,  

(5)独占分析研究会『日本の独占企温』(1)362頁。  

(6)独占分析研究会『日本の独占企業』(3)356〜357頁   

(11)

「高度成長」と労働時間・労働強化・労働災害   −6β−  

299  

(7)  

の生産タクトは1分20秒というおどろくべき早さになっている。   

このはか石油産業や鉄鋼業の製鋼部門などでは巨大な自動制卸装置が採用されて−い  る   が,こ.こでは1人当りの計器監視の範閏を広げることに.よって労働強度が高められてい   る。資本は人月削減討画に.よって:,監視労働に従事する労働者や予備員をぎりぎりまでに   削減し,休み時間や食事時間になって:も労働者は現場を離れることができず,現場で休憩   や食事なしなければならないといった状態な生見出してこいる。   

このように「高度成長」期の「技術革新」紅よって,労働者の労働はいちぢるレく単純化   されたに.もかかわらず,資本は生産性の向上・利潤の増大のために,機械逼転のスピー・ド・  

アップや同一・労働者の作業範喝を拡大し,労働強度を一段と高めたことから,労働者の精   神的肉体的疲労は極度紅高まらている。1969平9月に労働省単調労働専門家会議が「技術   革新」の進んだ単調労働の多い職場に.おける労働者ゐ意謂・態度を調査した『単調労働実   態調査報薯』によると,「頭がポ−とする」「考え.るのがいやに.なる」「目がちらちらする」  

といったような何らかの「神経的な疲れを訴え.るもの」が実紅86巾4%紅も達しでいる。そ・  

寛5表 単調労働の多い職場における労働の意識。態度 (単位■%)  

割合と 二意識凋度等 再合  

意 識・態 度 等  

神経的な疲れを訴えるもの   現在の仕事がすきでない   仕事の性質な理由に.現在の仕   事を変わりたい  

現在の仕事ではあまり能力が   発揮できない  

仕事に疲れを感じる   翌日まで仕事の疲れがとれな   い  

仕事の機械化・自動化への不   安  

職場で歯車感を感じる   仕事で神経質になったりイラ  

イラすることが多い   頭がボーッとする   

考えるのがいやに.なる    話をするのがいやになる   

目がちらちらする    耳なりがする   筋肉がピクピクする   物事に.熱心に.なれない   30分〜2時間位で仕事にあ  

きる  

職場で孤独を感じる  

資料出所 労働省単調労働専門家会議「単調労働実態調査報告_J(1969年9月)  

(注)単調労働者以外の労働者を含む  

けJ同上393貢。   

(12)

寛44巻 算3号   300  

−64・−  

のはか「仕事に凝れを感じる」84.1%,「翌日まで仕事の疲れがとれない」61・6%,「仕  

(8)  

事で神経質になったりイライヲすることが多い」39.9%となっている(第5表)。この調   査報碧から明らかなように,生産過程の機械化・自動化の進展は.,本来人間労働を単純化  

させることによって人間労働を軽減させる根拠をなすものであるが,資本主義社会のもと   でほ,以前よりもはるかに.大きな労働強度の増大をもたらし,労働者の搾取強化の手段に 

(1一  

200  

生死指数・、 

\、  

労動生産慄指数  

150  

100  

1 50  指数    年   

転化してこいるのである。  

そしてこのような「高度成長」  

期のきびしい労働強化の結   果,いか紅生産が拡大されい   かに.労働生産性が高められた   かを次に示そう。   

第1図は製造業における生   産,雇用,労働生産性などの   推移を示したものである。こ   れに.よると1960年から1969   年の10年間に,雇用は1.5倍   しか上昇しなかったにもかか   わらず,生産の方は.実に.3.5   倍も上昇している。(この10   年間に実質賃金は1.6倍しか   上昇していない)。そして,  

製造業の申での業種別の労働   生産性をみると,「技術革新」  

に.よって生産過程の機械化・  

自動化がいちぢるしく進んだ   輸送用機械(自動車),石油・  

資料出所 生産指数(通産省「通産統計」)  

労働生産性指数(日本生産性本部「季刊,生産性  

統計」)  

雇用指数,労働時間指数,実質賃金指数(労働  

省「毎月勤労統計調査」)  

㈲自動車産業,電気機器産業などのペルー・コンベア−・のもとで働く労働者は,一分− 

秒のムダもない徹底的な時間管理と.人間性を無視した単純作業のくりかえしによって,   

単なる肉体的精神的疲労の域をこ.え,神経痛や近視乱視に・なったり精神病患者になる者    がめだって多い。たとえばトヨタ自動車では65年に40人の精神病患者と10人の自殺者を   

出しているのである(『日本の独占企業』(3)395貴)   

(13)

「高度成長」と時労働間・労働強化・労働災害   −6∂−  

301  

石炭製品,鉄鋼,電気機械,化学といった業種での労働生産性の上昇がいちぢるしい(籍   6表)。つまり,製造業全体の平均の労働生産性は,1960年から1969年の10年間に・2・5借   上昇したのであるが,輸送用機械,石油・石炭製品は3・9倍,鉄鋼は3・3倍,電気機械,化  

(9)  

学は3.1倍と,おどろくほどの上昇を示してt、るのである。  

籍6表 業種別労働生産性指数(製造業)   (1960=100)  

I   

● 

・ 

・ 

.. 

資料出所 日本生産性本部「季刊生産性統計」  

注 金属製品工業のみ1965=100  

(9)また製造業以外の,いわゆる「斜陽産業」といわれる石炭業でも,徹底した首切り「合   

理化」ときびしい労働強化の結果,出炭能率はおどろくほど上昇している。たとえば三   

井鉱山の出炭能率の推移をみると,1961年3月期から1969年9月期紅かけて成年男子従   

業員数は.30,339人から10,442人へと約3分の1紅減少して1、るが,出炭量(半年間生産実   

(14)

第44巻 第3弓   302   

ー66−  

また「高度成長」期に,労働強度がいちぢるしく高められたのは,攣に直接的な生産部   門に.おいてこだけではない。   

事務労働の分野でも機械導入による「合理化」が積極的にすすめられ,労働者の健康を   破壊するはどの労働強化がもたらされでいる。たとえば金融機関では,オンラインシステ   ムを中心とする機械化によって事務労働の単純化と標準化がはかられ,作業速度が一・段と  

高められている。その結果,キー・・パンチ・ヤー,タイピストなどに「けんしょう炎」がふ   え,肉体的精神的披労を訴える労働者も激増している。1969年2月仝労金関東地通が,労   働金庫につとめる金融労働者に対しておこなった『健康アンケート調査』によれは,9単   組1,260人の回答者のうち,「目がつかれる」69%,「首・肩がこる」66%,。「胃腸が悪   い」43%,「背中がいたい」34%,「頭痛がする」30%,「首・肩・指などが痛む」29%,  

「陳がいたむ」27%,「いらいらする」27%となっており,「身体は完全に・健康」と答え  

(10)  

た人は,わずか8%にすぎなかった。このように事務労働の分野でも,機械化,「合理化」  

によって仕事のスピー・ド・アップが要求され,労働者の健康がいちぢるしく破壊されるほ   どに.労働強度が高められているのである。  

E)「高度成長.jと労働災害   

次にわれわれは「高度成長」期における,労働者の安全性を無視した利潤第一主義の徹   底した「合理化」が,いかに.多くの労働災害を発生させ,どれはど多くの労働者を犠牲に 

してきたかをながめてみることにする。   

まず労働災奮に.よる死傷者の数を,労働省労働基準局『労働者災害補償事業月報』の労   積)の方は3り441(千)トンから4・490(千)トンへと約1小3倍増加している◇レたがって1   

人当りの出炭畳は,実に3.8倍に.も上昇しているのである。(独占分析研究会『日本の独    占企艶』(3),51真の滞16表を参照)  

(1Ⅷ 同様なことは郵政の事務労働者の申紅もみられる。全逓信労働組合の報告によると,   

東京簡易保険局のキ・−パンチヤ−とタイピスト90人のうち12人が「けんしょう炎」にか   

かり,その他,肩こり,しびれ,だるい等の症状を訴えているものほ全体の約40%を占    めている。しかし当局はこれらの中の1人も職業病と認定していない。そして当局から    一・方的に休職とされ,引続いて昇給を延伸するという冷酷な処分が発令されたGさんは  

「けんしょう炎」の症状について次のよう紅述べている。「症状は腕から手にわたる全    体のカが抜けてしまって,痛み,つれ,があり腕がだるく,辛がしびれ,明け方まで眠   

ることができなく,起るのも辛く軽い著さえも持つことができませんし,洋服を着るの    も左の手でやつと着る状態でありました。入院しですぐ牽引治療を続けておりました    が,痛み,しびれ,つれ,がひどく,3回ブロック(麻酔)しましたが,呼吸困難にな   

り中止しました。‥・一(退院後も)腕のだるさは直らず,指先にしびれ,痛みがあり,   

肩から召すじに.痛みの症状がでてきました。」(月刊『いのち』.偲■37・11貰)   

(15)

「高度成長」と労働時間・労働強化。労働災害   −67−  

303  

災保険の給付を受けた新規受給者数常.よってながめてろると,1960年に87フラ4,000人だっ   たものが,10年後の69年には,実に.171万5,000人へといちぢるしく増加してこいる。この数   がいかに多いかということは,交通事故に.よる死傷者数とくらぺてこみてもよくわかる。69   年時点での交通事故に・よる死傷者数は,寛7表で示されているように,98万3,000人とな  

っている。したがって69年時点での労働災害による死傷者数は,これよりも1.7倦も多い   こと把なる。しかも現在の労災保険の適用規定からすると,使用労働者数が5人以下の,主   としてサー・ビス業の適用事業所の災害件数ははとんど把超されて†いないこと,国家公務員  

ノ 災害補償法,地方公務員災害補償法,船員法の適用労働者はそれぞれ別の機関で把越され  

ていること,労災保険適用事業所の中でも,労災事故を健康保険でどまかす場合があるこ   となどを考えると,実際の労働災害による死傷数は,この数字をはるかにこえるものと考  

え.なければならない。   

だが毎年これはど多くの労働災害が発生し琴がらも,一般的にはそれはど知れわたって   いない。交通事故による死傷数について.は「交通戦争」という呼び名のもとに毎日のテレ  

ビや新聞に・よって報道されているが,それよりもほるか紅多い労働災害による死傷者につ   いては,よほどの大事故でない限り,報道さ  

れないからである。   

そこでつぎに,1960年代の「高度成長」期   の労働災害に・よる年度別の死傷者数の推移,  

重大災害の発生状況,企業規模別,年令別の   災害発生率などの特徴をながめてみることに   する。   

まず貨1に,労働省『労働者死傷年報』に   よって,休業8日以上の死傷者数をながめて   みると,1960年から69年の10年間に,全産業で   の休業8日以上の死傷者数は延べ426万2,000   人にも達している(箆8表)。これを年度別   紅みるならば,もっとも多かったのほ1961年  

第7表 各種災害の推移  

年  (1)宗遥温箸  ■(2虐望現品誓    1960    874(千人)  ,301(千人)   

61    966    322    62  1,046    325    63  1,043    371    64  1,098    414    65  1,341    438    66  1,673    532    67  1,649    669    68  1,717   842    69  1,715    983    の48万2,000人であり,その後少しづつでは 資料出所(1)労働省「労働者災菩補償   あるが減少傾向にある。しかし65年不況をさ   保険事業月報」  

(2)響靡庁資料による   

かいに・,その減少テンポがいちぢるしく鈍化  

(16)

304   第44巻 第3号   

−6β−−  

7  

(6,088)  

0  

(1,266)  

8  

(604)  

0  

(2,470)  

7  

(510)  

2  

(161)  

4  

(165)  

8  

(277)  

5  

)   3   

(6,208)  

8   

(1,348)  

6   

(546)  

2   

(2,492)  

2   

(598)  

3   

(134)  

7   

(138)  

9   

(250)  

6  

)  

394,62  

(5,990)  

2  

(1,191)  

3  

(335)  

6  

(2,405)  

0  

(533)  

0  

(185)  

12,52  

(136)  

7  

(310)  

9  

(613   全産業  

製造業    鉱 業    建設業    運輸兼    陸上庶物 取扱業   港 湾  

荷役業   林 業    その他  

408,331  

(6,046)  

149,550  

(1,161)  

42,349  

(960)  

113,444  

(2,251)  

28,275  

(449)  

17,640  

(225)  

12,090  

(112)  

22,486  

(319)  

22,497  

(569)  

405,361  

(6,303)  

145,30  

(1,195)  

39,59  

(706)  

117,03  

(2,482)  

30,99  

(589)  

13,88  

(184)  

12,444  

(153)  

22,13  

(321)  

23,97  

(673)  

7  

)  

160,324  

(1,189)  

41,930  

(730)  

120,420  

(2,405)  

26,849  

(506)  

20,052  

(218)  

13,347  

(133)  

24,788  

(327) 20,848 (618)  

6   6  

, (6,506  

468,139  

(6,095)  

166,952  

(1,160)  

59,043  

(920)  

134,231  

(2,302)  

22,828  

(403)  

24,398  

(250)  

12,863   

(109)  

29,960  

(401)  

17,864  

(550)  

481,68  

(6,712)  

175,212  

(1,351)  

59,664  

(913)  

134,552  

(2,652)  

2ち,596  

(401)  

26,018  

(267)  

1  

29,536  

(600)  

(400) 18,706   

− 

資料出所 労働省「労働者死傷月報」  

(注)()内は死亡者数で内数をしめす。  

しているのが目につく(第2図)。つまり,61年から65年にかけての4年間に7万3,000入   滅少したにもかかわらず,65年から69年の4年間には,わずか2万6,000人しか減少して  いないのである。   

また死亡者数だけをとり出してみると,この10字間で延べ6万2,167人もの労働者が労   働災害で死亡している。これを年度別軋みると,もっとも経済成長率の高かった61年の   6,712人が最高で,もっとも少なかった67年でも5,990人が死亡して言いるのである。傾向と  

してほ67年に.1皮だけ6,00b人台を割ったものの,他の年はいずれも6,000人台をこえ/てお   り,はとんど横ばい状態が続いている。資本主義社会では,労働者は労働力を販売するの   であって,生命を売り渡すのではなかったはずである。しかし現実紅は,毎年6,000人を   越え.る尊い生命が,わずかばかりの補償金で売り渡されているのである。   

第2紅,労働省『藍大災害報告,』に.よって,一席に3人以上の死傷者を伴う重大災害事  

故の発生状況をみると,「高度成長」期の安全性を無視した生産規模の拡大によって,そ  

の発生件数はいちぢるしく増加している(第3闇)。つまり1960年には302件の重大災害事  

故が発生し,それに.よって1,694人の死傷者を出しているが,1969牢には発生件数が432件   

(17)

「高度成長」と労働時間・労働強化・労働災害  

−6−9−−   

305  

となり,またそれによる死   傷者数も2,361人に増加し  

てこいるのである。  

1960年代の「高度成長」  

期に.発生した重大災害事故   の中でもっとも規模が大き  

くもっとも悲惨な例として   は,1963年11月9日三井三   池炭鉱で生じたガス炭塵爆   発事故がある(鉱山保安法   適用事業で発生した壷大災   害事故は,上記労働省『重   大災害報告』の中に.は含ま   れない)。この爆発事放で   は,一顧にして458人の労   働者の尊い生命が奪われ,  

822人の一・酸化炭素中書催   患を含む大患の重軽傷者を   出したのであるが,このガ   ス炭塵爆発は,炭塵を掃除   し,炭塵が飛ばぬように.水   1959 60  61 62 63 64  65 66 67 68 69  

ニ 年  

資料(1)死傷者数,死亡者数についてこは第8表に同じ   

(2)実質経済成長率ほ経済企画庁「国民所得統計」  

に.よる。  

をまき,岩粉を吹きつけておけば十分防ぐことができるもっとも「非近代的」な事故とい   われている。しかしこのもっとも「非近代的」な事故が,もっとも「近代的」といわれた  

「優良炭鉱」三井三池で生じたのである。事政後会社側は「爆発のあったところは,炭鉱   のノドもと紅たある主要な坑道だ。いつもきれいに・整とんし,炭塵が舞い上らぬよぅに必  

要なところは散水もしていた」と弁明しているが,事故後の技術調査団の所見によれば  

「第1斜抗底のポケットに.あたる散水機は赤さびて動かなかったし,12台のベルトが連結   する落しロには散水設備がなかった。換気装置で岩粉をまく岩粉棚はとりはずされてい  

(11)  

た」という。また第1斜抗のコンベア番は,三池争議前に12人いたものが,争議後はわ   

(11)『世界.』1964年2月弓,149頁 

(18)

箆44巻 舞3宅   306   一一7(フー  

ずか1人に減らされていたという   ように,徹底した保安要員の削減   もおこなわれていたのである0 こ   れらのことから明らかなように・,  

この大爆発事故は生産第1主義・  

利潤第1主義の安全性を無視した  

「合理化」に.よって生じたもので   ある。しかもこのような悲惨な炭   鉱爆発事故は,この三井三池で終  

ったわけではない。第9表で示さ   れるように.,その後も驚くほど激   発しているのである。   

このはか製造業では,1964年・6   月,わが国の化学工業の代表的メ  

−カである唱和電工川崎のプロピ  

レンオキサイドエ場の爆発事故で   16人の死者と,約100人の重軽傷   者を出し,三井石油化学の岩国工  

寛3図 産業別重大災害発生件数の推移  

Å2  

500  

0  30  

0   0   0   0   2   頚大災害発生件数▲T  

1960 61 62 63 64 65 66 67 68 69  

−・−−・・・・・−・−一斗  

資料出所 労働省「重大災害報墓」  

(注)(1)東大災害とほ一席に・3人以上の死傷者を   ともなった災害  

(2)鉱山保安法適用事業で発生した壷大災害   は除く。  

場や大竹工場でも爆発事故が相つ  

いで発生した。また石川島播磨名古屈造船所では,1966年2月,建造中の船舶タンクの火  

炎事故によって15人の社外工が死んでいる。建設業では1969年4月,東京荒川新四ツ木橋  

橋脚建設現場(間組)の事故で8人の労働省が死亡した。これらははんの一例粧すぎない   が,このような重大災害事故が「高度成長」期紅相ついで発生し,しかもその発生件数ほ   いちぢるしく増加して:いるのである。   

箆3に,企業規模別の災害発生状況をみると,籍4図で示されて小るよう紅,劣悪な労働  

環境に・ある中小企業はど災害発生の度数率(度数率=麹慧法諾亜×100,000)  

が高くなっている。従業員1,000人以上の企兼規模の災害発生度数率が2小75ともっとも低  

いのに対し,30⊥99人の規模でほその約6倍の17・48という高い発生度数率を示レている  

のである。しかもこの調査でほ29人以下の企業は除外されているが,零細企業ほど劣悪な  

労働環境にあることを考え.ると,29人以下の零細企業での災害発生度数率はさらに高いも   

(19)

「高度成長」と労働時間卜労働強化・労働災害   …アブ…  

算9表 戦後のおもな炭鉱事故   307  

資料出所 「朝日新聞」関西版(1971年7月18日)  

算4図 製造業に.おける規模別災害発生度数率(1969年)   

のと予想されるのである。   

また「高度成長」期に.,  

造船業,化学工業,鉄鋼   業などの独占的大企業は  

「合理化」に.よる費用削   減ということから,同一  構内でおこなわれる各種   の作業をますます外註・  

下請化する傾向にあった   が,これら中小下請企業   での災害発生率は,顆企  

薮  渾▲︼  

規書莱  規1宍  呪幌  親書葵  規憐   30〜 1机上:(泊〜  SOO→ 1000人  

99ノ、 299ノ、19り\ 999人  一  

資料出所 労働省「労働災害勤行調査」   

(20)

籍44=巻 籍3号   308  

−72−  

共にくらべ圧倒的に高くなっている。弟10表は,親企業と下請企業との災害率の比較を示   したものであるが,下請企業の災害発生度数率ほ,親企業のおよそ3倍もの高率を示して  

いるのである。また鉄鋼業   と造船業に.おける親企業と   下請企業との災害による死   亡者数をくらぺてみると,  

寛11表,寛12衷で示されて:  

いるように下請企業での死   亡者数の方がはるかに.多   い。特紅68年の鉄鋼共にお   ける死亡災害では,本工労   働者の26人に対し,下請労   働者はその約5倍の126人   が死亡しているのであるb  

この年の主な製鉄所での木   工労働者と下請労働者との   災害による′死亡者数をくら   ぺてみ.ると,八幡製鉄慧津  

では=本工ゼロ紅射し下請労   働者は30人,同戸畑はで本   工3人に.射し下請労働者は   19人,富士製鉄名古屋では   算10表 親企業と下請企業との災害率の比較(1969年)  

産    彊霊媒  度数率  強度率   

造   船   78  14.64 6.22  3.34 0.85   

化 学 工   業〈1芽138  9.35 3.61  1.09 0.49   

鉄   鋼   業〈暦70  6.85 2.68  2.24 1.05   

食料品製造業i儲  17.90  

.2   13.77    13.42  

パルプ・紙製学業〈儲 8   2.56  1.32 0・、07   

窯米・土甜品製造業〈  22.34  

4 6.17 1.55 

6.09   早  

17.59   2 

1  

10.09  

u  

7  

資料出所 労働省労働基準局調べ  

(注)度数率=麹慧読謡賢墾  ×100,000   

強皮率=×1,000  

本工1人に対し下請労働者12人,住友金属和歌山では木工ゼロに対し下請労働者21人,川  

崎製鉄水島では本工3人に対し下請労働者19人 というように下請労働者の死亡者数が圧  

倒的に.多くなっている。このことからも明らかなように・,独占的大企業は,多くの下請労   働者を利用すること紅よって,彼らから剰余価値な搾取するほかりでなく,危険性の高い椎  

葉をおし、つけることによって,彼ら、の生命までも奪っているのである0   

筋4に,製造業や建設業紅おける死傷数は,他の産業紅くらべはるか紅多いのであるが  

(舞8表参照),これらの産業での年令別の災害発生率をみると,中高年令に・なるにしたが  

ってその災害発生率はきわめて高くなっている。第5図ほ製造其の年令別の災害発生率   

(21)

イ高度成長」と労働時間・労働強化・労働災害   −7β一    策11表 鉄鋼業紅おける死亡災害   籍12表 造船業における死亡災害   309  

増 坦  関連労働者  計  32人  36人  68人  22  29  51  40  44  84  26  126  152  31  59  9d   

年 月l常用工l下請工岳 封  

人  

27    65  

;…呈;;  

資料 月刊「いのち」ノ拓■37(1969年11月)  

より作成   

(注)造船工業会の資料による。  

資料「労働法律旬報」ノ佑754(1970年10月)  

(注)1.鉄鋼労連「死亡災害報薯」に   よる  

2い 鉄鋼労連組合員とは本工労働   者のこと,関連労働者とは下   請労働者のこと。  

(労働者1,000人当り休業8日以   上の死傷者)を示したものである。  

これに.よると20⊥24才の年令層が   いちばん低く,年令が高まるにし   たがってしだいに高くなり,亭5才   以上の年令層の災害発生率は,20  

〜24才層の2.4倍に.もなっている   のである。同様に.建設業でも年令   が高くなるに.つれて災害発生率  

(この場合は仁延労働者10万人当   り休業1日以上の死傷者数)が高   まり,20〜29才の年令層匿対し,  

50〜56才の年令屑での災害発生率   は・2倍に.,60才以上の年令層での   籍5図 製造業における年令別災害発生率  

20二者 20  25  30  35  40   55才   未iポj −2拍 ′Y29う 〜34′才 一39万 一朝才 以」:  

資料出所 死傷者数は労働省「労働者死傷年報」  

(1969年)  

労働者数は総理府「就業構造基本調査」  

(1968年)  

(注) 年令別死傷者数を「就業構造基本調査」の  

年令別労働者数で険して算出  

それは3倍にも適っしている(鰭6図)。そして建設業紅おける災害事故では,1969年4月  

の東京荒川橋新四ツ木橋の事故の例に.み.られるように・,多くの場合,中高年令層の出稼労  

働者がその様牲になっているのである(この事故の8名の犠牲者のうち7名が,青森県津   

(22)

第44巻 第3号  

籍6図 建設業紅おける年令別災害発生率  

−74− 

軽からの出稼労働者であった)。農   林省『虚栄就業勤行調査報告』に   よると,1968年度の全国の出稼労   働者の56.4%が建設業匿流れ,こ   れら出稼労働者のうち35才以上の   年令屑が58..1%を占めている。彼  

らの多くほ未熟練労働者ゆえに.,  

土工や人夫などの単純な筋肉労働   者として.働く以外紅方法がなく,  

比較的高年今に.もかかわらず,危   険な土木工事現場や建築工事現場   などで,長時間・重労働を強いら   れている。したがって\災害発生率   はきわめて高く,ある者は墜落し,  

310  

2桐 20  30  40  50  60フき   未満、29ノ ー・39カ、49フトーー59牙 以上   資料出所 労働省「労働災害動向調査特別調査」  

(1968年)  

(注)本調査では68年7〜9月紅ついて,年令別   に死傷者数および延労働者数の調査が行な   われている。  

ある者は倒壊物の下敷となり,またある者はダンプにはねられるといったよう   な無惨な死に追いやられているのである。   

以上で日本の「高度成長」期に.,恐るべき数の労働災害事故が発生しでいることをなが   めて来た。さてそれでは,このような悲惨な災害事故はなぜ生じたのであろうか。   

その根本的原因は何よりもまず,資本が,一方では生産拡大のために労働者の生理的限   界ぎりぎりまでに労働強化をおしすすめながらも,他方では「合理化」という名のもとに,  

安全施設部門への資本支出を徹低的に削減したからに.はかならない。資本主義的生産の目  

的はあくなき利潤の追求であり,それぞれの資本軋,他の資本との競争にうち勝ち,より   多くの利潤を獲得するために,徹底的に費用削減をほかろうとする。とりわけ安全施設部   門への資本支出は,それが生産性の向上・生産の拡大のために直接的に.結びつかないた   め,この部門への資本支出を極端に.切りつめようとする。時紅ほ必要最小限の安全施設へ  

の資本支出さえ削除するのである。たとえば,すで紅みてきたよう紅炭鉱で悲惨な災害事  

故が激発したのは,資本が費用削減のために,落盤の危険を防ぐ支柱を節約するとか,ガ  

ス炭塵爆発を防止するため紅不可欠な散水施設,岩壁空洞部分充填施設,通水排ガス施  

設,いな,ガス濃度測定琴までも含めて,安全施設部門への資本支出を極度紅節約したか  

らにはかならない。また建設業などで墜落による事故が多いのも,資本が足場,階段,手   

(23)

「高度成長」と労働時間・労働強化・労働災害   −75一   311  

すり,防網等,安全設備への資本支出を節約したからにはかならない。   

資本側は.,災害事故が発生するたびに「事故の原因は労働者の過失・不注意にある」と   いった種類の声明を発表し,みずからの責任を労働者に転嫁しようとする。だがしかし,労  

働者のらよっとした不注意によっても災害車扱が生じるはど,生産現場が危険な状態準庖   かれている点にこそ問題がある。資本が一方では生産拡大のために労働者の注意力がいち   ぢるしくおとろえるほどに労働強化を強要し,他方では安全施設への投資を徹底的に削減   し,事故防止を労働者の注意力紅頼っているかぎり,しかも事故防止のためには労働者の   かなり高い注意力が必要とされるかぎり,災害事故は減少するはずがない。すでにみてき   たようにヰ小下請企業が災害発生率が高いのは,そこ.で働く労働者の注意力が,独占的大  

企業で働く労働者のそれに.くらぺて劣るからではない。独占的大企業が,み・ずからの安全   施設部門への資本支出を削減するために・,危険性の高い作業をこれら中小下請企業に・おし   つけ・ているにもかかわらず,中小下請企業もまた,安全施設部門への資本支出をいちぢる  

しく削減しているから紅ほかならない。同様に.,中高年令層や出稼労働者などの災害発生   率がきわめて高かったのも,そ・の根本的原因は,彼らの身体的機能の低下や機敏性の欠   如,あるいは彼らの技術的未熟練紅あるのではなく,機敏性に屈み,熟練の高い労働者で   なければ災害事故を防ぐことができないはどに,資本が安全施設部門への資本支出を削減   して.いる点にこ.そ,責の原因が存在しているのである。   

このように資本は,あくなき利潤追求のために,労働者の生命までもあえて二犠牲にする  

「合理化」をおしすすめながら,みずからの「高度成長」をとげて.来た。資本の本性が利   潤追求ということから,資本は,労働災害補償金額が大幅に届くなり,労働者を死傷させ  

るこ.とが資本に.とって大きな損失とならないかぎり,安全施設部門への資本支出を決っし   ておこなわない。風早八十二氏は「資本が,不変資本の−部を安全施設紅あてるとすれ   ば,それは彼が,その富を労働者の血と肉のいけにえの上紅きづきあげることを正義紅反   するとか,犯罰である享思うからではさらさらないことはもとより,それを『恥』と感ず   るからでもなく,ただ,安全施設への出費とくらべて,災害後旧艶労働者か抗議のスト   を起すことに.よって事業がこ.うむる損失,災害で失なった労働力の補充紅要する費用,犠   牲者遺族への扶助料,傷病者の療養費などの出費の方が高くつくという計算の問題にすぎ  

(12)  

ません」と述ぺておられるが,資本の本性を見事に・いいあらわした言葉である。そして貨  

(12)月刊『■いのち』算5巻第4号,4頁   

参照

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