(仮)アフォーダンス的設計論
me11071 中山 大輔
指導教員 赤堀 忍 0 序論
世界にすべての知覚情報は埋め込まれている。
J.J.ギブソン 0_0 研究背景
「すべてのものには理由がある。」私はそう思う。建築にとって その理由とは形態であり、空間である。その空間を決定している 要素は人の行為であり、その行為こそが建築の決定的な存在意義 であると私は考える。
建築とは人が存在することで始めて機能が確立され、意味をな すものであるが、近年の建築は人の身体を越え、ものや形態によ って人を支配しているように感じる。そのような建築はただの箱 でしかなく、人を内包する健全な建築空間ではない。このような 社会的背景による建築の変化を人の行為を基点とした建築空間の 提案によって見直すことが重要であると考える。
0_1 研究目的
人と建築という関係性をもう一度再認識する必要があると考える。
芦原義信氏はこのように述べている。
イタリア人は人々の出会いの場としての人為的な広場“ピアッツァ”をつ くってきたし、イギリス人は人々の出会わない休息の場として自然的な 公園“パーク”をつくってきた....。
私はそのように人の行為が溢れる場こそ豊かな場であると思う。
が、現代の日本においてそのような行為をアフォードするような 場は失われている。建築において言うならば、空間での人の行為 は家具やサインのような建築の形態ではなく、付加要素によって 空間の性質は決定され、人の行為は希薄なものになってきている。
それこそが「箱の建築」であり、空間の豊かさを失っている。
私は、アフォーダンスという理論を建築に応用することによっ て人の行為を生み出す豊かな空間の設計を目的とする。
0_2 研究方法
第一章では、人間の知覚や行為その環境についてジェームス.J.ギ ブソンの提唱した「アフォーダンス」の概念の理解を出発点とす る。そして、アフォーダンスの概念を建築という分野に歩み寄ら せることが重要である。
第二章では、建築作品の分析を行う。建築の構成要素(柱、梁、
壁、階段...etc)が空間や人の行為に対してどのような情報を与え、
どのような意味を持っているのかを分析することによって建築形
態の持つアフォーダンスを見出す。
第三章では、第一章のアフォーダンスの建築への歩み寄り、第 二章の建築形態の意味の獲得によってアフォーダンス理論を用い た建築設計のプロセスを確立させる。
第四章では、第三章で得られたアフォーダンスの建築形態への 応用を基に箱としての建築ではなく人の行為によって豊かさを持 つ都市公園としての美術館の設計を行う。
01 アフォーダンスから建築へ 1_1 アフォーダンスの概念
J.J.ギブソンによって誕生した。動物はその「情報」をもとに行 動し、環境に内在する「情報」もまた動物の行動により変化する。
ギブソンは、そのような環境と動物の相互作用をアフォーダンス と呼んだ。彼は遺作である「The Ecological Approach to Visual
Perception」(1979 年)に於いて、アフォーダンス理論を中心とし
た視覚論の全体像を示している。彼は環境を構成する要素をミー ディアム(媒質)、サブスタンス(物質)、サーフェイス(表面)という3 つに分類し、人間が発見するアフォーダンスの持つ意味はサーフ ェイスに実に豊かに存在していると述べている。
1_2 サーフェイスの概念
「面の生態学的法則」を基にサーフェイスがいかに建築にとっ て重要なキーワードであるかを理解する。サーフェイスのテクス チャーとしての肌理、サーフェイスのレイアウトによって知覚さ れる空間の形や大きさ、光の明暗による空間の広がりなど人はサ ーフェイスの知覚によってその場を理解し、体験しているという ことが言えるであろう。
1_3 アフォーダンス的建築の入れ子構造
物理的実在は原子から銀河系にいたるどの水準でもすべて構造 を持っている。これらを構成する単位は、 大きい単位の中に小さ い単位が埋め込まれているという “入れ子” になっているのだ。
例えば、 峡谷は山に組み込まれ、樹木は峡谷に、 木の葉は樹木 に、 そして葉脈は木の葉の入れ子となっているのである。
この構造をアフォーダンスの建築的手法に用いるための方程式 を次のような基本構図として設計へ変換して行く。
まずアフォーダンスを形態に起こすための記述として「A を B の状 態にするためには C をすればよい」ということを前提とする。
A=人 B=行為 C=形態 D=空間 と捉える。
- 空間的構成論 B∈C : 行為は形態の元である。
- 建築的構成論 C*X∈D : いくつもの形態が織り重なったものが 空間の元である。
- 結果論 A⇔C=B : 人と形態の相互関係によって行為は生み出さ れる。
- 物理的プロセス
人は柱にもたれ掛かったり、壁をよじ登ったり、階段に腰をおろ したり、坂道に寝転がったり、建築を構成している要素の中で様々 な「情報」を読み取り、行為を起こしている。そのような行為は 構成要素がもともと意図している用途ではなく、その形態や面の 形状によって獲得している要素である。
改めて、建築の構成要素が人にどのような「情報」を与え、行 為を起こすことができるのかを再認識する必要があるのではない か。
1_4 行為のデザイン
プロダクトデザインに於いて人の行動を創造し、形態を生み出 しているものが存在している。そのひとつとして深沢直人の「お 皿つきライト」がある。彼らのデザインは、行為の知覚が言語化 に先立って行われるということを前提としている。
1_5 アフォーダンスと建築
サーフェイスは豊かな意味の宝庫である。さらに、建築行為は 敷地の表面を読み解き、修正し、また「囲い」をつくることでそ の場所に新たな意味や価値、場所性を生むことを目的としている。
この“囲われ感”とでも言える知覚が人間の行為に大きな意味を もたらす。故に建築に於いて重要なことは、“囲い方”“サーフェ イスの選択”である。
アフォーダンスにおいて「空間」概念は存在せず、その奥行き 後描くは「遮蔽縁」によって与えられるのもであるということが 理解されたであろう。そして、この「遮蔽縁」を用いることで知 覚している。
− 感測的プロセス
建築の入れ子構造で言うところの「空間」にあたる。建築は構成 要素の組み合わせによってできているものであり、故に面と面と の重なりが必ず存在する。その重なりは「遮蔽縁」であり、人は 移動することによって奥行きを感じ、その場の印象を獲得するこ とができる。その場所が留まる場であるのか、進む場であるのか という人の行動に「情報」を与えることができるプロセスである。
2_0 建築からアフォーダンスへ 2_1 建築分析
これまでアフォーダンス理論から建築への変換を行い、「物理的
プロセス」と「感測的プロセス」の二つの理論を確立させた。本 章では建築空間における二つのプロセスの観点から分析を行う。
それによって建築の形態はどのように人の行為や行動に影響を与 えているかを明確にすることでアフォーダンス的視点からみる建 築形態が理解される。
2_2 データシート
前期のサブゼミで行ってきたデータシートを基に構成し、作品 をピックアップしてデータシートの作成を行う。
2_3 分析結果 2_4 分析による図式化
建築をアフォーダンスというフィルターを通して、各プロセス でどのような影響を与えているかを分析した中で具体的に設計に 落とし込むことができるツールを具現化する。
その図式化を基に空間に変換できるような図式化を行う。
3_0 アフォーダンス的設計論 3_1 アフォーダンス的建築空間
第一章、第二章において論じてきた内容から建築空間のダイア グラムを作成する。二つのプロセスを統合するための建築的プロ セスを確立する。
4_0 PROJECT 4_1 敷地
対象敷地はゆりかもめの新豊洲駅から台場駅の範囲で設定する 予定。この場所は埋め立て地であり、歴史的背景が薄く、様々な 機能が混在しているがそこ場所には人の行為と呼べるような豊か さは存在しない。そして、そこに存在しているものは「表現表面 の経験」で述べられているように建築という純粋な形態ではなく、
サインや象徴としてのオブジェのようなものが立ち並んでいる。
その場所に人の行為を内包した都市公園としての美術館が必要で ある。
4_2 設計プロセス
主に「感測的プロセス」を基準とした移動する建築を目指して いく。その「感測的プロセス」のなかに「物理的プロセス」とし ての単位空間を連続させる。しかしそこには明確な機能は与える ことはしない。なぜならばそれは“機能”ではなく“行為”であ るからである。移動することと鑑賞するところ、公園としての行 為を与える方法で設計をしていく。