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アクリルレジンと長石質系陶材の接着に対する

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アクリルレジンと長石質系陶材の接着に対する

2

液性シラン処理剤と

亜硫酸ナトリウム含有プライマーの併用効果

日本大学大学院歯学研究科歯学専攻

赤羽 俊亮

(指導:松村 英雄 教授,小泉 寛恭 准教授)

(2)

1

歯周病や外傷によって歯の動揺が生じた際に,歯の保存,歯周組織の保護お よび歯の移動防止を目的として,暫間固定が行われている。暫間固定には種々 の方法があるが,接着性のアクリルレジンを用いることが多い。接着性のアク リルレジンによる暫間固定を行う際,動揺歯とその隣在歯に陶材を用いた補綴 処置がなされている場合は,接着面が滑沢なため高い固定効果を得ることは困 難である。

長石質系陶材とアクリルレジンを接着する際には,微小機械的嵌合を得るた めにアルミナブラスト処理あるいはフッ化水素酸によるエッチング処理を行い,

その後シラン処理を行う。しかし,暫間固定は口腔内において行われることか ら,フッ化水素酸の使用は不可能であり,アルミナブラスト処理は長石質系陶 材を破損させる可能性がある。従って,長石質系陶材を用いた補綴装置の表面 を対象として口腔内にて暫間固定を行う場合は,アルミナブラスト処理あるい はフッ化水素酸によるエッチング処理を行うことなく,化学的結合を得ること が,高い固定効果を得るために必要となる。

トリ-n-ブチルホウ素(TBB)を重合開始剤とし,機能性モノマーの一つであ る無水トリメリト酸 4-メタクリロイルオキシエチル(4-META)を含有したメタ ク リ ル 酸 メ チ ル (MMA) 系 ア ク リ ル レ ジ ン ( ス ー パ ー ボ ン ド C&B, 以 下

4META/MMA-TBB レジン)は,常温において高い転化率を示し,重合後の残留

モノマーの量が極めて少ないとの報告がある。さらに,重合が接着界面から開

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2

始するため,重合収縮方向は接着界面へ向かう特徴を有するとされている。こ れらの理由から,4-META/MMA-TBBレジンは,装着材料や暫間固定材として幅 広く用いられている。

歯質とアクリルレジンの接着強さを向上させる目的で,歯質への亜硫酸ナト リウム含有プライマー処理の有効性が報告されている。しかしながら,長石質 系陶材とアクリルレジンとの接着に対する 2 液性シラン処理剤と亜硫酸ナトリ ウム含有プライマーの併用効果についての報告は少ない。また,暫間固定に関 しては,天然歯に対して 4-META/MMA-TBB レジンを用いて固定を行った症例 報告はあるが,陶材を用いた補綴装置に対して固定を行った症例報告は少ない。

陶材を用いた補綴装置に対して強固な暫間固定をもたらすためには,口腔内 で可能な操作により,長石質系陶材とアクリルレジンの接着耐久性を向上させ ることが必須である。そこで本研究の目的は,2種類のアクリルレジンと長石質 系陶材との接着に対する 2 液性シラン処理剤と亜硫酸ナトリウム含有プライマ ーの併用効果を評価し,接着界面におけるアクリルレジンの重合挙動の促進に ついて検討することとした。

本研究では被着体として,長石質系陶材の CAD/CAM 用ブロック(Vitablocs Mark Ⅱ, A3C I12)を切断し,154枚の板状試料(縦 10.0 mm,横 12.0 mm,高さ 2.5 mm)を製作した。全ての試料表面を耐水研磨紙(3M Wetordry, #600800

1000,1200,1500)を用いて注水研削し,アセトン中にて 5 分間超音波洗浄した

後に減圧デシケーター内で乾燥させたものを被着体試料とした。表面処理剤は,

(4)

3

2 液性シラン処理剤であるシラン-リン酸エステルプライマー(スーパーボンド PZプライマー,以下 PZ),シラン-4-METAプライマー(ポーセレンライナーM,

以下 LM)および 1 液性亜硫酸ナトリウム含有プライマー(ティースプライマ ー,以下 TP)の 3 種類を用いた。装着材料として 4-META/MMA-TBB レジン,

または 4-METAを含まない MMA-TBB レジンを使用した。

試料は表面処理方法によって,対照群,PZ 群,PZ+TP 群および LM+TP 群の 4 群に分類した。対照群では,試料表面にいずれのプライマーも塗布しなかった。

PZ群では,PZを試料表面に 10秒間塗布した後,表面を圧縮空気で乾燥させた。

PZ+TP 群では,PZ を試料表面に 10 秒間塗布した後,表面を圧縮空気で乾燥さ

せ,その後 TPを表面に塗布した。LM+TP群では,LM を試料表面に 10秒間塗 布した後,表面を圧縮空気で乾燥させ,その後 TPを表面に塗布した。

すべての試料において接着面積を規定するために直径 5.0 ㎜の孔を有する両 面テープを試料表面に貼付した。続いて,ステンレス鋼製リング(SUS303)を 設置し,アクリルレジンを筆積み法にてリング内に充填した。充填から30分後,

各試料を 37℃精製水中に 24 時間浸漬した。この状態を熱サイクル負荷 0 回と みなし,各群 11 個の試料に対してせん断接着試験を行った。各群の残り 11 の試料は,水中熱サイクル(5-55℃,各 1 分間)を 20,000 回負荷した後,せん 断接着試験を行った。試験は,万能試験機を用いてクロスヘッドスピード 0.5

mm/min の条件でせん断接着強さを測定した。なお,LM+TP 群においては,装

着材料は 4-META/MMA-TBBレジンのみを用いた。

(5)

4

せん断接着試験後,接着破壊様式を評価するために,試料破断面を光学顕微

鏡(16×,Stemi DV4)で観察した後,熱サイクル負荷20,000 回後の代表的な試

料表面を走査電子顕微鏡(ERA-8800FE,以下SEM)で観察した。

示差走査熱量測定(以下 DSC)は,MMA-TBB レジンと4-META/MMA-TBB ジンの重合挙動に対する TP 使用の影響を分析するために行った。測定用試料

は,2.5 µL TP をアルミ容器に滴下し,PMMA 10wt%混和した MMA ある

いは 4-META/MMA 37.5 µL 加えた後,2.5 µL TBB を滴下したものとした。

TP 未使用群においては,TP の代わりに 2.5 µL のアセトンを滴下した。MMA- TBB レジンおよび 4-META/MMA-TBB レジンは TBB との混合直後に重合反応 を開始するため,測定は TBB 滴下と同時に開始した。測定条件は,窒素ガス下

にて 37℃等温で 60分間の測定とし,基準物質は空のアルミ容器を用いた。重合

活性の相違は,DSC により得られた曲線(以下 DSC曲線)の形状に基づいて評 価した。

せん断接着試験の結果に対して,Shapiro-Wilk 正規検定(SPSS 19)を行った ところ,熱サイクル負荷 0 回の対照群において正規性が認められなかった。よ ってノンパラメトリック法である Kruskal-Wallis検定(SPSS 19),Steel-Dwass 重比較(Kyplot 5.0)および Wilcoxon順位和検定(SPSS 19)を行った。記述統 計量として,各条件におけるせん断接着強さの中央値と四分位範囲を求めた。

全ての検定の有意水準(α)は 0.05と設定した。

MMA-TBB レジンを装着材料として用いた条件における熱サイクル負荷 0

(6)

5

においては,PZ 群と PZ+TP 群が対照群と比して有意に高いせん断接着強さを 示した。熱サイクル負荷 20,000 回後においては,PZ+TP 群が PZ 群と比して有 意に高いせん断接着強さを示した。4-META/MMA-TBBレジンを装着材料として 用いた条件における熱サイクル負荷 0 回においては,PZ 群,PZ+TP 群および

LM+TP 群が,対照群と比して有意に高いせん断接着強さを示した。また,PZ+TP

群と LM+TP 群との間で有意差が認められた。熱サイクル負荷 20,000 回後のせ

ん断接着強さにおいては,PZ+TP 群が有意に高いせん断接着強さを示した。以

LM+TP 群,PZ群および対照群の順番に有意差が認められた。

接着破壊様式において,接着強さの高い群では被着体の凝集破壊の傾向が高 く,接着強さの低い群は界面破壊の傾向が高いことが示された。SEM 観察にお いては,PZ 群は混合破壊および被着体凝集破壊を示し,PZ+TP 群と LM+TP は,被着体凝集破壊を示した。

DSC 分析の結果から TP 未使用群では,MMA-TBB レジンと 4-META/MMA- TBB レジンの発熱ピークが測定開始後 20 分から 60 分の間に観測された。それ に対し,TP使用群では,MMA-TBBレジンと 4-META/MMA-TBBレジンの発熱 ピークが測定開始後 5 分以内に観測された。さらに,MMA-TBB レジンと 4- META/MMA-TBB レ ジ ン の DSC 曲 線 の 形 状 を 比 較 す る と , 発 熱 ピ ー ク は 4-

META/MMA-TBB レジンにおいて早期に観測された。

アクリルレジンと長石質系陶材との接着に対する 2 液性シラン処理剤と亜硫 酸ナトリウム含有プライマーの併用効果について検討した結果,以下の結論を

(7)

6 得た。

1. 長石質系陶材に対して,MMA-TBB レジンを用いて接着する際には,対照群 およびPZ 単独群と比して,PZ TPを併用した群が接着耐久性に優れてい た。

2. 長石質系陶材に対して,4-META/MMA-TBBレジンを用いて接着する際には,

対照群,PZ単独群および LM TPを併用した群と比して,PZ TPを併用 した群が接着耐久性に優れていた。

3. DSC 分析の結果から,TP の使用によりアクリルレジンの発熱ピークが早期 に観測されたことより,TP によるアクリルレジンの初期重合の促進効果が 示唆された。

な お , 本 論 文 は 原 著 論 文 Akahane S, Koizumi H, Kodaira A, Nakamura M, Yoneyama T, Matsumura H, Combined effect of two-liquid silane-phosphate primer and single-liquid sodium sulfite primer on bonding between self-polymerizing resins and feldspathic ceramics, Dental Materials Journal (in press) を 基 幹 論 文 と し ,4-

META/MMA-TBB レジンと長石質系陶材との接着に対するポーセレンライナー

M とティースプライマーの併用効果に関する新たな実験データを加え総括した ものである。

(8)

7

歯周病1,2)や外傷3-5)によって歯の動揺が生じた際に,歯の保存,歯周組織の保 護および歯の移動防止を目的として,暫間固定が行われている。暫間固定には 種々の方法があるが,接着性のアクリルレジンを用いることが多い。接着性の アクリルレジンによる暫間固定を行う際,動揺歯とその隣在歯に陶材を用いた 補綴処置がなされている場合は,接着面が滑沢なため高い固定効果を得ること は困難である。

現在,長石質系陶材とアクリルレジンの接着面処理操作は,ほぼ確立されて いる。長石質系陶材とアクリルレジンを接着する際には,微小機械的嵌合を得 るためにアルミナブラスト処理あるいはフッ化水素酸によるエッチング処理6,7) を行い,その後シラン処理 8)を行うことが有効と報告されている。しかし,暫間 固定は口腔内において行われることから,フッ化水素酸の使用は不可能であり,

アルミナブラスト処理は長石質系陶材を破損させる可能性があるとの報告もあ 9)。従って,長石質系陶材を用いた補綴装置の表面を対象として口腔内にて暫 間固定を行う場合は,アルミナブラスト処理あるいはフッ化水素酸によるエッ チング処理を行うことなく,化学的結合を得ることが,高い固定効果を得るた めに必要となる。

トリ-n-ブチルホウ素(TBB)を重合開始剤とし,機能性モノマーの一つであ る無水トリメリト酸 4-メタクリロイルオキシエチル(4-META)を含有したメタ クリル酸メチル(MMA)系アクリルレジン(スーパーボンド C&B,サンメディ

(9)

8

カル,以下 4-META/MMA-TBBレジン)は,常温において高い転化率を示し,重 合後の残留モノマーの量が極めて少ないとの報告がある 10)。さらに,重合が接 着界面から開始するため,重合収縮方向は接着界面へ向かう特徴を有するとさ れている 11)。これらの理由から,4-META/MMA-TBB レジンは,装着材料や暫間 固定材として幅広く用いられている。

歯質とアクリルレジンの接着強さを向上させる目的で,歯質への亜硫酸ナト リウム含有プライマー処理の有効性が報告され 12-15),亜硫酸ナトリウム含有プ ライマーが接着界面におけるアクリルレジンの重合に影響をおよぼす可能性が 示されている。しかしながら,長石質系陶材とアクリルレジンとの接着に対す 2 液性シラン処理剤と亜硫酸ナトリウム含有プライマーの併用効果について の報告は少ない。また,暫間固定に関しては,天然歯に対して 4-META/MMA- TBB レジンを用いて固定を行った症例報告はあるが 1,2),陶材を用いた補綴装置 に対して固定を行った症例報告は少ない。

陶材を用いた補綴装置に対して強固な暫間固定をもたらすためには,口腔内 で可能な操作により,長石質系陶材とアクリルレジンの接着耐久性を向上させ ることが必須である。そこで本研究の目的は,2種類のアクリルレジンと長石質 系陶材との接着に対する 2 液性シラン処理剤と亜硫酸ナトリウム含有プライマ ーの併用効果を評価し,接着界面におけるアクリルレジンの重合挙動の促進に ついて検討することとした。

(10)

9

材料および方法

使用した材料を Table 1に示した。被着体として,長石質系陶材の CAD/CAM ブロック(Vitablocs MarkⅡ, A3C I12, Vita Zahnfabrik)を使用した。CAD/CAM ブロックを,ダイヤモンドディスクを装着した低速回転切断器(Isomet, Buehler)

を用いて切断し,154 枚の板状試料(縦10.0 mm,横 12.0 mm,高さ 2.5 mm を製作した。滑沢な陶材表面を得るために,全ての板状試料表面に対して,耐 水研磨紙(#600,800,1000, 1200,1500, 3M Wetordry Tri-M-ite,3M ジャパン)

を用いて注水研削を行った。研削後,超音波洗浄機(SUC-110,松風)を使用 し,アセトン中にて 5 分間洗浄後,減圧デシケーター内にて 24 時間保管し乾 燥させたものを被着体試料とした。

表面処理剤は,2液性シラン処理剤であるシラン-リン酸エステルプライマー

(スーパーボンド PZプライマー,サンメディカル,以下 PZ),シラン-4-META プライマー(ポーセレンライナーM,サンメディカル,以下 LM)および 1 性亜硫酸ナトリウム含有プライマー(ティースプライマー,サンメディカル,

以下 TP)の 3種類を用いた。PZ は,リン酸エステル系モノマーを含む A液と シラン化合物を含む B 液で構成され,LMは,4-METAを含む A液とシラン化 合物を含む B 液で構成されるシラン処理剤である。一方,TP 4-META,亜硫 酸ナトリウム,水およびアセトンを含有するプライマーである。

装 着 材 料 と し て 4-META/MMA-TBB レ ジ ン , ま た は 4-META を 含 ま な い

(11)

10

MMA-TBBレジンを使用した。

せん断接着試験

実験手順を Fig. 1に示した。試料は表面処理方法によって,対照群,PZ群,

PZ+TP 群およびLM+TP 群の 4群に分類した。対照群では,板状試料表面にいず

れのプライマーも塗布しなかった。PZ 群では,同量の A 液と B 液を混和した PZを板状試料表面に 10秒間塗布した後,表面を圧縮空気で乾燥させた。PZ+TP 群では,PZを板状試料表面に 10秒間塗布した後,表面を圧縮空気で乾燥させ,

その後 TP を表面に塗布した。LM+TP 群では,同量の A 液と B 液を混和した LM を板状試料表面に 10 秒間塗布した後,表面を圧縮空気で乾燥させ,その後 TPを表面に塗布した。

次に,すべての試料において接着面積を規定するために直径 5.0 ㎜の孔を有 する両面テープを板状試料表面に貼付した。続いて,直径 5.0 mmの被着面周囲 にステンレス鋼製リング(SUS303,内径 6.0 mm,高さ 2.0 mm,厚さ 1.0 mm)

を設置し,アクリルレジンを筆積み法にてリング内に充填した。充填から 30 後,各試料を 37℃精製水中に 24時間浸漬した。この状態を熱サイクル負荷 0 とみなし,各群 11 個の試料に対してせん断接着試験を行った。各群の残り 11 の試料は,熱サイクル試験装置(Thermal Shock Tester TTS-1 LM,トーマス科学 器械)を用いて,水中熱サイクル(5-55℃,係留時間各 1 分間)を 20,000 回負 荷した後,せん断接着試験を行った。試験は,万能試験機(Type 5567,Instron)

(12)

11

を用いて,クロスヘッドスピード 0.5 mm/min の条件で行い,せん断接着強さを 測定した。なお,LM+TP 群においては,装着材料として4-META/MMA-TBB ジンのみを用いた。

破壊様式の判定

せん断接着試験後の接着破壊様式を評価するために,試料破断面を光学顕微

鏡(16×,Stemi DV4,Carl Zeiss)を用いて観察した。接着破壊様式は次の 5

に分類した(Fig. 2)。

A: 被着体-アクリルレジンの界面破壊

B: 被着体-アクリルレジンの界面破壊とレジンの凝集破壊による混合破壊 C: 接着規定面内における被着体凝集破壊

D: 接着規定面を超える被着体凝集破壊

E: 被着体-アクリルレジンの界面破壊のない,被着体凝集破壊

走査電子顕微鏡観察

接着破壊様式の判定後,熱サイクル負荷 20,000 回後の代表的な試料破断面を 観察した。観察は,試料表面に金蒸着処理(Quick Coater SC-701, サンユー電子)

を行い,走査電子顕微鏡(ERA-8800FE, エリオニクス,以下 SEM)を用いて加

速電圧 10 kVの条件にて行った。

(13)

12 示差走査熱量測定

示差走査熱量測定(以下 DSC)は,MMA-TBB レジンおよび 4-META/MMA- TBB レジ ンの重合 挙動に対する TP の 影 響を分析するため,示差走査熱量計

DSC-6100,セイコーインスツル)を用いて行った。測定用試料は,2.5 µL

TPをアルミ容器(直径 5.2 mm,高さ 5.0 mm)に滴下し,PMMA 10wt%混和 した MMA あるいは 4-META/MMA 37.5 µL 加えた後,2.5 µL TBB を滴下 したものとした。TP 未使用群においては,TP の代わりに 2.5 µL のアセトンを 滴下した。MMA-TBB レジンおよび 4-META/MMA-TBBレジンは TBB との混合 直後に重合反応を開始するため,測定は TBB 滴下と同時に開始した。測定条件 は,窒素ガス下にて 37℃等温で60 分間の測定とし,基準物質は空のアルミ容器 を用いた。重合活性の相違は,DSCにより得られた曲線(以下 DSC 曲線)の形 状に基づいて評価した。

統計分析

統計分析は,2 つのアプリケーション(IBM SPSS Statistics Ver. 19, IBM および Kyplot 5.0, KyensLab)を用いた。記述統計量として,各条件におけるせん断接着 強さの中央値と四分位範囲を求めた。

正規性の検定として Shapiro-Wilk正規検定(SPSS 19)を行い,ノンパラメト リック法である Kruskal-Wallis 検定(SPSS 19),Steel-Dwass 多重比較(Kyplot

5.0)および Wilcoxon順位和検定(SPSS 19)を行った。全ての検定の有意水準

(14)

13

α)は 0.05 と設定した。

統計分析

せん断接着試験の結果に対して,Shapiro-Wilk 正規検定を行ったところ,熱サ イクル負荷 0 回の対照群において正規性が認められなかった(p < 0.05)。よっ てノンパラメトリック法による検定法を選択した。Kruskal-Wallis検定を行った

ところ,MMA-TBB レジンを装着材料として用いた条件における熱サイクル負

0 回(χ2 = 21.94),熱サイクル負荷 20,000 回後(χ2 = 29.07),4-META/MMA- TBB レジンを装着材料として用いた条件における熱サイクル負荷 0 回(χ2 =

29.79),熱サイクル負荷 20,000 回後(χ2 = 38.18)には,それぞれ各群間に有意

差を認めた。

せん断接着試験

MMA-TBB レジンを装着材料として用いた条件におけるせん断接着強さの結

果を Table 2 に示した。熱サイクル負荷0 回のせん断接着強さの中央値は 1.1

29.5 MPaであった。PZ群と PZ+TP群は対照群と比して有意に高いせん断接

着強さを示した(category b)。熱サイクル負荷 20,000 回後のせん断接着強さの

中央値は 0.0 から 13.0 MPa であった。PZ+TP 群が PZ 群と比して有意に高いせ

ん断接着強さを示した(category d)。

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14

4-META/MMA-TBB レジンを装着材料として用いた条件におけるせん断接着

強さの結果を Table 3に示した。熱サイクル負荷 0回のせん断接着強さの中央値

2.9 から 28.1 MPa であった。PZ群,PZ+TP群および LM+TP 群は,対照群と

比して有意に高いせん断接着強さを示した(p < 0.001)。また,PZ+TP群と LM+TP 群との間で有意差が認められた(p < 0.01)。熱サイクル負荷 20,000 回後のせん 断接着強さの中央値は 0.2から 14.2 MPa であった。PZ+TP 群が有意に高いせん 断接着強さを示した(category G)。以下 LM+TP 群,PZ 群および対照群の順番 に有意差が認められた(p < 0.001)。

破壊様式の分析

破壊様式の判定結果を Table 4に示した。接着強さの高い群では被着体の凝集 破壊の傾向が高く,接着強さの低い群は界面破壊の傾向が高いことが示された。

接着破壊様式の判定後に観察した試料破断面の代表的な SEM 画像を Fig. 3 Fig. 4 に示した。PZ 群の破壊様式は B様式(Fig. 3a, c)および C様式(Fig. 4a, c)であったが,PZ+TP 群では,破壊様式は D 様式(Figs. 3e, 4e)であった。

LM+TP 群の破壊様式は,C 様式(Fig. 4g)および D 様式(Fig. 4i)であった。

示差走査熱量測定分析

DSC 分析によって得られた DSC 曲線の形状を Fig. 5 に示した。TP 未使用群 では,MMA-TBB レジンと 4-META/MMA-TBB レジンの発熱ピークが測定開始

(16)

15

20 分から 60 分の間に観測された。それに対し,TP 使用群では,MMA-TBB

レジンと 4-META/MMA-TBB レジンの発熱ピークが測定開始後 5 分以内に観測

された。さらに,MMA-TBBレジンと 4-META/MMA-TBBレジンの DSC 曲線の 形状を比較すると,発熱ピークは 4-META/MMA-TBB レジンにおいて早期に観 測された。

Kato 8)は,炭化ケイ素研磨紙を用いて研削した長石質系陶材表面に対して LM を塗布した条件における 4-META/MMA-TBB レジンの接着強さは熱サイク ル負荷によって大幅に低下したことを報告している。本研究の結果においても,

各群の接着強さは熱サイクル負荷によって低下したが,LM TPを併用した群 および PZ TP を併用した群における接着強さの低下は抑制されたことから,

PZ あるいは LM 塗布後の TP の使用が接着耐久性向上に有効であることが示唆 された。

本研究の目的は,アクリルレジンと長石質系陶材との接着界面に対する 2 性シラン処理剤と TP に含有される成分の併用効果を検討することである。TP

4-META,亜硫酸ナトリウム,アセトンおよび水を含有している 12-14)。最初

に,装着材料に機能性モノマーである 4-META を含まない MMA-TBB レジンを 用いて,PZ TPの併用効果を確認した。また,臨床で用いられる4-META/MMA- TBB レジンに対するPZおよびLM TPの併用効果についても併せて検討を行

(17)

16 った。

TPに含有される亜硫酸ナトリウムについては,接着界面におけるアクリルレ ジンの重合を促進させることが報告されている 16)。また,Okamoto 17)は,微 量の水が部分酸化されたトリ-n-ブチルホウ素からの活性種の生成を補助すると 報 告 し て い る 。 従 っ て , 亜 硫 酸 ナ ト リ ウ ム と 水 は MMA-TBB レ ジ ン や 4-

META/MMA-TBB レジンの重合に有効と考えられる。なお,TPはシラン化合物

を含有しないため,本研究では板状試料に対する表面処理方法の設定において,

TP単独塗布の検討は行わなかった。

装着材料と被着体の一般的な接着試験方法として,せん断および引張接着試 験が用いられている。Della Bona van Noort18)は,レジンと長石質系陶材にお けるせん断接着強さと引張接着強さを比較し,接着強さの評価において,引張 接着試験は,せん断接着試験よりも適した方法であると報告している。しかし ながら,本研究において使用した MMA-TBB レジンおよび 4-META/MMA-TBB レジンの硬化物は柔軟性と粘りを示すことから,せん断接着試験が引張接着試 験よりも適した試験方法であると考え選択した。

アクリルレジンの作業時間,硬化時間および重合時間を分析する方法の一つ として,DSC が用いられており 19,20),重合挙動に関するいくつかの研究が報告 されている 19-21)。本研究では,MMA-TBB レジンと 4-META/MMA-TBB レジン の重合挙動に対する TP の影響を分析するために DSC を行った。その結果,

MMA-TBB レジンと 4-META/MMA-TBB レジンのどちらにおいても,発熱ピー

(18)

17

クが TPの使用によって著しく早期に観測された。さらに,MMA-TBBレジンと

4-META/MMA-TBB レジンのDSC 曲線の形状を比較すると,4-META/MMA-TBB

レジンにおける発熱ピークは,MMA-TBBレジンと比較して早期に観測された。

これらの結果から,アクリルレジンの重合が TP により促進されたことが示さ れ,さらに重合の促進には 4-META の存在と濃度が影響をおよぼすと推測され る。Imai 11)が,接着界面での迅速な重合開始が被着体とレジンとの接着に重 要であると報告していることから,TPがアクリルレジンの初期重合を促進する 効果によって,せん断接着試験において,TP併用群がより高い接着耐久性を示 す結果となったと考えられる。

臨床において,口腔内には唾液が存在するため,暫間固定を行う被着面に対 する唾液による汚染を考慮する必要がある。唾液による汚染に対して Aboush22) は,リン酸の使用が長石質系陶材の表面洗浄方法として最も有効であったと報 告しており,Aladağ 23)は,0.5%次亜塩素酸ナトリウム溶液の使用が陶材の表 面洗浄方法として有効であったと報告している。これらの報告は,表面洗浄に より装着材料と陶材の接着強さを回復できることを示唆していることから,臨 床において本研究で報告した効果を得るには,リン酸あるいは次亜塩素酸ナト リウムによる表面洗浄を行うことが望ましいと思われる。

本研究の結果から,TP がアクリルレジンの初期重合を促進することにより,

長石質系陶材とアクリルレジンとの接着界面において強固な接着が得られ、高 い接着耐久性をもたらすことが示された。従って,PZ あるいは LMによる表面

(19)

18

処理と TPの併用は,長石質系陶材を用いた補綴装置によって処置された歯に対 する暫間固定において効果を示し,PZ TP を併用することがより効果的であ ると示唆された。

アクリルレジンと長石質系陶材との接着に対する 2 液性シラン処理剤と亜硫 酸ナトリウム含有プライマーの併用効果について検討した結果,以下の結論を 得た。

1. 長石質系陶材に対して,MMA-TBB レジンを用いて接着する際には,対照群 およびPZ 単独群と比して,PZ TPを併用した群が接着耐久性に優れてい た。

2. 長石質系陶材に対して,4-META/MMA-TBBレジンを用いて接着する際には,

対照群,PZ単独群および LM TPを併用した群と比して,PZ TPを併用 した群が接着耐久性に優れていた。

3. DSC 分析の結果から,TP の使用によりアクリルレジンの発熱ピークが早期 に観測されたことより,TP によるアクリルレジンの初期重合の促進効果が 示唆された。

(20)

19

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(24)

表および図

(25)

Table 1 Materials assessed

Material/Trade name Manufacturer Lot Composition Adherend material

Vitablocs Mark II Vita Zahnfabrik 46680 SiO2 56-64%, Al2O3 20-23%,

A3C I12 48291 Na2O 6-9%, K2O 6-8%,

CaO 0.3-0.6%, TiO2 0.0-0.1%

Primer

Teeth Primer Sun Medical ML1 4-META 10-30%, sodium sulfite 1- 5%,

acetone 20-40%, water

Super-Bond PZ Primer A liquid Sun Medical MK1 MMA, phosphate monomer, others Super-Bond PZ Primer B liquid Sun Medical MG1 MMA, silane

Porcelain Liner M A liquid Sun Medical SR12 MMA, 4-META 5%

Porcelain Liner M B liquid Sun Medical TF1 MMA, 3-TMSPMA 4%*

Luting material

Methyl methacrylate Tokyo Chemical Industry

UQSHMSN MMA 99.8%

Super-Bond Monomer Sun Medical LX1 MMA, 4-META

Super-Bond Catalyst Sun Medical LT1F TBB, TBB-O, hydrocarbon Super-Bond Ivory Opaque powder Sun Medical MM1 PolyMMA, titanium oxide 4-META, 4-methacryloyloxyethyl trimellitate anhydride; MMA, methyl methacrylate; 3- TMSPMA, 3-(trimethoxysilyl)propyl methacrylate; TBB, tri-n-butylborane; TBB-O, partially oxidized tri-n-butylborane; *Taira et al.24)

(26)

Table 2 Shear bond strength between feldspathic ceramics and MMA-TBB resin in MPa Groups 0 thermocycle 20,000 thermocycles Post-/Pre-

BS Ratio (%) WRS Median IQR Median IQR

Control 01.1a 1.2 a0.0 0.0

PZ 28.2b 3.6 07.7c 1.2 27.3 S (p < 0.0001) PZ+TP 29.5b 2.3 13.0d 2.1 44.1 S (p < 0.0001) n = 11; PZ, Super-Bond PZ Primer with equal amounts of liquids A and B was mixed and applied the bonding surface.; PZ+TP, PZ primer was applied to the plate surface. After 10s, the surface was dried in mild air. A Teeth Primer was then applied to the surface.; IQR, interquartile range; Post-/Pre-BS ratio, Post-/Pre-thermocycling bond strength ratio (%); WRS, where “S”

indicates that the difference between the binary conditions of the pre- and post-thermocycling bond strength is significantly different (Wilcoxon rank sum test). Identical letters indicate that the values are not significantly different (Steel-Dwass multiple comparisons; p > 0.05 and Wilcoxon rank sum test; p > 0.05).

Table 3 Shear bond strength between feldspathic ceramics and 4-META/MMA-TBB resin in MPa

Groups 0 thermocycle 20,000 thermocycles Post-/Pre- BS Ratio (%) WRS Median IQR Median IQR

Control 02.9A 0.7 00.2D 0.1 a6.9 S (p < 0.0001) PZ 28.1BC 4.9 05.4E 2.9 19.2 S (p < 0.0001) PZ+TP 27.3C 2.7 14.2G 6.2 52.0 S (p < 0.0001) LM+TP 23.7B 2.0 7.4F 1.1 31.2 S (p < 0.0001) n = 11; PZ, Super-Bond PZ Primer with equal amounts of liquids A and B was mixed and applied the bonding surface.; PZ+TP, PZ primer was applied to the plate surface. After 10s, the surface was dried in mild air. A Teeth Primer was then applied to the surface.; Porcelain Liner M with equal amounts of liquids A and B was mixed and applied the bonding surface.; LM+TP, Porcelain Liner M was applied to the plate surface. After 10s, the surface was dried in mild air.

A Teeth Primer was then applied to the surface.; IQR, interquartile range; Post-/Pre-BS ratio, Post-/Pre-thermocycling bond strength ratio (%); WRS, where “S” indicates that the difference between the binary conditions of the pre- and post-thermocycling bond strength is significantly different (Wilcoxon rank sum test). Identical letters indicate that the values are not significantly different (Steel-Dwass multiple comparisons; p > 0.05).

(27)

Table 4 Failure mode analysis

Groups 0 thermocycle 20,000 thermocycles

A B C D E A B C D E

MMA-TBB

Control 9 2 0 0 0 11 0 0 0 0

PZ 0 0 0 0 11 0 1 10 0 0

PZ+TP 0 0 0 0 11 0 0 0 11 0

4-META/MMA-TBB

Control 10 1 0 0 0 11 0 0 0 0

PZ 0 0 0 1 10 0 3 8 0 0

PZ+TP 0 0 0 1 10 0 0 0 11 0

LM+TP 0 0 0 4 7 0 0 8 3 0

(28)

Figure 1 Specimen preparation for shear bond test

Figure 2 Classification of failure modes:

A: adhesive failure including adherend-self-polymerizing resin interface separation

B: mixed failure including a combination of the adherend-self-polymerizing resin interface failure and cohesive failure in resin

C: cohesive failure inside the plate within the limits of the bonding area D: cohesive failure inside the plate beyond scope of the bonding area

E: cohesive failure inside the plate without an adherend, namely, self-polymerizing resin interface separation

(29)

Figure 3 Representative photomicrographs of debonded surfaces of thermocycled feldspathic ceramics bonded with MMA-TBB resin. The specimens were primed with PZ (Figs. 3a-3d) and PZ+TP (Figs. 3e and 3f).

The small white rectangles in Figs. 3a, 3c, and 3e indicate the location in the Figs. 3b, 3d, and 3f images of the enlarged area. Hand pointer indicates resin remnants. Broken ceramic surface can be observed in categories C and D (asterisk).

(30)

Figure 4 Representative photomicrographs of debonded surfaces of thermocycled feldspathic ceramics bonded with 4-META/MMA-TBB resin. The specimens were primed with PZ (Figs. 4a-4d), PZ+TP (Figs. 4e and 4f), and LM+TP (Figs. 4g-4j).

The small white rectangles in Figs. 4a, 4c, 4e, 4g, and 4i indicate the location in the Figs. 4b, 4d, 4f, 4h, and 4j images of the enlarged area. Hand pointers indicate resin remnants. Broken ceramic surface can be observed in categories C and D (asterisk).

(31)

Figure 5 Time and exotherm curves for polymerization of (a) MMA-TBB resin and (b) 4-META/MMA-TBB resin at 37ºC. The monomer and polymer in an aluminum pan were polymerized, and heat evolution induced by polymerization was recorded by DSC.

a

b

Table 1 Materials assessed
Table 3 Shear bond strength between feldspathic ceramics and 4-META/MMA-TBB resin in  MPa
Table 4 Failure mode analysis
Figure 1 Specimen preparation for shear bond test
+4

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