I ( 無電解めっきによる高抵抗体の作製
青木博夫 樋浦正
1 . ま
え がき
金属皮膜抵抗器は,抵抗温度係数 (以下
TCR
と略記)が小さ く,安定度が大 きい とい う 特長を有す るうえ,近時価格が低下 しているため各方面に使用されつつある. しか しなが ら この抵抗器は主に真空蒸着法に よって作製され るため,その初抵抗値の上限は数百オームと たいへん低 く,溝切 りを行なって抵抗値の増大をはか ってもせいぜい1
メグオーム程度であ る( 1
).
そこで我々は,無電解め っき法により,Ni ‑ P
合金皮膜をセラ ミクス円筒基体上に析出 させ金属皮膜抵抗体を作製することを試み,T. C. R
特性を測定 したところ1 0
キ ロオーム以 上の高抵抗値においても10 0ppm/o C以下の良好な値を得 ることができた. しか しなが ら短
時間過負荷特性 (以下STOL
と略記)は,現段階では,JIラツキが大 きく0 . 2 %
以 下 の値 を安定 して得 ることができなか った. また,熱処理に よる抵抗値変化の.ミラアキを抑えるた めの端子部処理の方法についても合わせて実験を行な った.2 . 試料の作製と実験方法
基体 としては 表面未研摩の
1 / 4 WP
型 ムライ ト磁器円筒 (1・74 ×5 ・ 5 mm)
を.使用 した.これを図
1
に示す ごとく,イソプロピルアル コ‑'ルに よる超音波洗浄,塩化第一 スズめ塩酸 溶液に よる 感受性化, 塩化パ ラジウムの塩酸溶液による活性化の 前処理を施 した後,Ni ・ P
め っき浴(2)(浴量30 0 c c
,浴温45oC)中に lpッ ト 5 0
本づつ4 0
秒間浸漬 し, 皮膜形成を行なった. これに直ちに熱処理 (空気中
2 50oC,2
時間)を施 した後キ ャップ電極を圧入 した も のと,一方抵抗膜の上にさらに電極部のみ十分厚 くめ っきを再び行ない,上記の熱処理を施 した後,キ ャップ電極を圧入 した ものの2
種塀の pッ トを作製 した.(電極部の再め ,'Lきは次図 1 めっき工程 l‑
* 昭和
5 8
年1 0
月電子通信学会兼海支部連合大会において発表*
* 電気工学科 講師*手書 電気工学科.教授
原稿受付 昭和5
9
年9
月28
日Ni‑P
めっき キ+ップ屯梅図2 電極部めっき抵抗体の断面図
の方法で行な った. まず電極部以外の 部分すなわち抵抗膜 として残 してお き たい部分にマスキングを施 しこれを再 び
Ni ・ P
め っき浴に浸漬すると,電極 部のみにめっきが厚 く形成され ること になる.次にこれを溶剤に浸潰 しマス クを 除去する. 電極部 のみ 厚 くめ っ きした 試料の 断面図を 図2
に 示す.STOLは,JISC5202に従 って行なった.その方法は,定格の2.5倍の電圧を5秒間印加 し, 電圧を取 り除いて
3 0
分間無負荷で放置 した後,抵抗値を測定 し,この試験前後における抵抗 値 の変化量を算出す るものである.3 . 実験結果 と検討
3‑1熱処理による抵抗値変化図
3
に,電極部め っきを施 さない試料についての初抵抗値に対する熱処理に よる抵抗値変 化率を示す.図4
には電極部めっきを施 した試料についての同様の実験結果を示す.両図か ら初抵抗値の増大に伴なって,25kst付近 までは抵抗値変化率 も増大 し,それ以上では,ほ ぼ一定になっていることがわか右. また変化率の 大きさは, 電極部めっきを 施さないもの は,め っきを施 した ものに対 して数倍の大 きさになっていることがわかる.変化率のバラツ キについてみても,電極部め っきなしのものはめ っきあ りのものに対 して大 きな値を示 して いる.Ni ・ P
を十分厚 くめ っきした部分は, 熱処理前後において数オーム以下 と変化が小さ な値であることか ら,̀電極部めっきなしで熱処理を施 した場合の抵抗値増大の主たる原因は キ ャップ電瞳 と抵抗膜 との接触部で生 じていることがわかる. しか しなが ら電極部以外の抵5 0 ‖ コ Hリ
(
X O T
X)∝
\∝ V
1 0 20 3 0 40 5 0 R( k f Z )
図3 熱処理による抵抗値変化率 (電極部めっきなし)
('
/00T X
)∝\∝V 10
81 1 0‑ ‑ 2 0 3 0
‑・40‑
R( k S l 】
図4 熱処理による抵抗値変化率 (電極部め:?きあり・)
無電解めっきによる高抵抗体の作製 抗膜 自体の抵抗値 も熱処理に よってかな り増大す ることが図
4
よりわかる. これは熱処理に より,表面に絶縁膜が形成 され有 効抵抗膜厚が減少す るため と考え られる.そのモデル図を図5
に示す. これ よ り初抵抗値に対する抵抗値増加分 との関係を求 める.熱処理前の膜厚をd,絶縁膜厚をa
とした場合,初抵抗 値Rは,R‑K 吉( K: c o
nst・) (1)2 9
抱 は頂
基 体 図
5
抵抗院と絶縁膜とな り熱処理後の抵抗値
R'
は,有効膜厚が(d‑a)
となるので, R' ‑ K
古土
となる.これか ら抵抗値の増加分
△R
は,△R
‑R・ ‑R‑K(
嘉 一与)‑ Ki
・よ ‑ K 号
・まt
i( i' 1
)‑
K i ・
ま( 1 . 普
+ (i)
2. (
号) 3 ・.
・・・・・・・・) ' 吉 ‑芸を代入 して△R ‑ 量R2 ・( 意) W .(
是)3R4
I ・・・‑ 義 C " R n ' 1 ( C ‑ 芸 ) ( 4 ' 至 5 .
1ユ
:
とな り初抵抗値Rと抵抗値増加分△Rとの閑 <
係が求まる.図
6
は電極部め っきあ りの試料 のR
と△R
を示 した ものである. 国中R
が2 5 k
sとまでの曲線は,定数C
を 回帰法で決定 した後,(
4)
式 より求めた ものである.●実測値 とよく一致 していることがわかる.以上 のこ とか ら,初抵抗値が2 5k
sと付近 までの抵抗値 の増大は,表面が一様の厚 さで絶縁膜でおお われるため と考えてよい.次に初抵抗値
2 5 k
sと付近以上では抵抗値の 増加傾向がそれ以下 とは異な りほぼ直線的に 増加 していることがわか る. これは,この抵 抗値付近を掛 こして皮膜が連続膜か ら図7
に 示す ように島状皮膜にな り導電機構が異なる( 2 )
10
20 30 40 50
・1.R(kfZ)
図6 熱処理による抵抗値変化 (電極部めっきあり) 〜
lF断面図
Ni‑P
め っ畠̲ためと推測 される.不連続膜 の場合の抵抗値
R
と表面被覆率 βとの間には次の関係式が成立(
8)
する.l o gR‑Kl ( 1‑ ノ有)
(Kl:占 o ns i . )
(5) 図7において基体の表面積をA,島の数をn
,、島の半径をr
とすれば,表面被覆率 飢 ま,
棚
O ‑等 ‑( K 2r)2
(K2 ‑招 : c o n s t
) (6) 次に熱処理に より絶縁部分が,〃だけ形成 されたとすれば,基 体
側断面図
図
7
島状皮膜 の絶縁膜/ 表面被覆率0,紘,
0,
‑空等壁 ‑t K2 ( r ‑a ) P ( 7 )
となる.
0,0'
か ら熱処理前の抵抗値R
,熱処理後の抵抗値R'
を求めてその差か ら抵抗増加分△Rを求めると,△R‑R' ‑R‑
10Kl ( 1 ‑ K B ' +K2 a )
‑10
Kl(I ‑K2 r )
‑10 Kl ( I ‑Ka
y) (1 0KL K2 al 1)
‑R( 1 0KI K2 4‑ 1)
となる.ここで熱処理温度,時間が一定ならLiも一定 と考えてよいか ら
(10KI K2 0‑1 )
をC
とお くと,AR‑CR
とな り一
△R
はR
に比例す争羊与にな【り周 6
の傾向 と一致する・3 ‑2 、 TCR
3‑ 1
で用いた試料のTCR
の測定を行なった.図8
に電極部めっきあ り, 図9
に電極部 め っきな しの pッ トの抵抗値 とTC
丘の関係を示す. 国中rは相関係数であ り,両 ロットと0 ㌧ 8
( 〟 \E d d )∝
Uト.' R(kn).
1℃
●20 30 40 5 0 60
plated
(〟 \ Edd )∝
oト
4 0
0
● ● ● ● .
electrode ▲‑40
' ・ :: ・ ・ . ・ . 180
● ; ・
‑1 20
‑1 60
図
8 TCR
特性 (電極部めっきあり) 図9TCR
特性 (電極部めっきなし)無電解めっきによる高抵抗体の作製
3 1
ち,抵抗値 の増大に伴なって,符号は正か ら負に転 じその絶対値 も増大 して行 く.電樋部め っきな しのものはあ りのものに比べて,同抵抗値の場合,TCRは より正側に現われ,その バラツキは大 き く不安定である.電極部め っきあ りの ロッ トのTCRは,3 0 k
sl程度 まで‑1 0 0
ppm/oC以内におさまっている.TCRに関 しても,バ ラツキについてみ る と電極部め っき あ りのものの方が よい結果を示 している.3 ‑3
STOL図
1 0
に電極部めっきあ りの試料,図11に電極部め っきなしの試料のSTOL特性を示す.電極部めっきあ りの試料は,抵抗値の増大に伴なって,抵抗値変化率は負側に増大 して行 く 傾向にある.その相関係数は
‑0.
64となる.一方電極部めっきな しの試料は,抵抗値 と抵抗 率変化の間にあま り相関がな く,その相関係数は‑0 . 2 4
となる.いずれに しても抵抗値は減 少するわけであるが,その原因は,次のように考え られ る. まず,過負荷電圧を印加するこ とにより,抵抗皮膜 の温度が熱処理温度以上に上昇 し, 皮膜 の結晶化がさらに進行 し( 4 )
,抵 抗値を減少させるとするもの,お よび,皮膜は高抵抗になるほ ど図7
に示す ような島状構造 に近づ き,この島は熱処理によって表面に薄 く絶縁膜が形成 されていると考え られそれが過 負荷電圧に より破壊 されることにより尋通 し,抵抗値を減少 させ るとするもの等である.電 極部めっきなしの試料では,キ ャップ電極 との接触部において抵抗値増大の要因が作用 し, 前述の減少の要因に加わ り抵抗値 と抵抗値変化率 との相関が小さ くなった ものと思われ る.R( k
SZ)20 40 6 0 80 1 0 0 1 2 0 1 40
3 45︻ l
︼(X)∝\∝
V
ー1
‑2
≡ ‑ 3
∝ \ a A‑4 :
‑5
′●● ● ● ● ●
2 , o e 7t a , t . e d ● d e ' ' . ' : : . ● ' ● ● ● ● ' . ・ ・ '
「 =‑0 . 2 4
図10STOL特性 (電極部めっきあり) 図11STOL特性 (電極部めっきなし)
4 . あ と が き
無電解
Ni ・ P
め っき法に より,従来真空蒸着法では実現 しえなか った抵抗値1 0 k
s2以上で し か も,TCRが100ppm/oC以下の高抵抗体を作製することができた. また 電極部に十分厚 くNi ・ P
め っきを施す ことにより, さらに その特性を安定させることがわか った.抵抗値 とTCRに関 しては一応満足する値を得たわけであるが,STOLに関 しては,現在,数社 のメ ーカーの社内規格値である