審 査 論 文 要 旨(日本文)
論文提出者氏名: 野中 雅也 審査論文
題 名:
Safety of gastroenterologist-guided sedation with propofol for upper gastrointestinal therapeutic endoscopy in elderly patients compared with
younger patients
(消化器医による高齢者に対するプロポフォールを用いた上部消化管内視鏡治療の安全性の若年者との比較検討)
著 者:Masaya Nonaka, Takuji Gotoda, Chika Kusano, Masakatsu Fukuzawa,
Takao Itoi, Fuminori Moriyasu
掲載誌:Gut and Liver(in press, 2014)
(審査論文要旨:日本語論文の場合
1,000
字以内・英語論文の場合500 words)
【背景と目的】
内視鏡治療を施行する上で患者の鎮静は重要である。プロポフォールを用いた鎮静は、従来 の鎮静剤より術者と患者に有益性があるとされ急速に普及しつつある。しかし、プロポフォ ールを用いた鎮静はその安全性の面から議論されており、高齢者に臨床使用した報告は海外 で認めるものの、長時間の内視鏡治療での安全性を評価した報告はない。今回我々は高齢者 に対する内視鏡医によるプロポフォールを用いた上部消化管内視鏡治療の安全性につき検討 した。
【方法】
プロポフォールを用いた内視鏡下胆膵系治療、胃、食道の内視鏡的粘膜下層剥離術(ESD)を 施行した
160
人を対象とした。対象を75
歳未満の若年者グループと75
歳以上の高齢者グル ープの2
グループに分類し治療内容の詳細、循環動態における有害事象の割合、プロポフォ ール持続静注の中断の有無につき比較した。収縮期血圧が80mmHg
以下、1分間心拍数が50
回以下、動脈血中酸素飽和度が90%以下となった場合を有害事象とした。
【結果】
患者背景では、肝機能障害者が高齢者に多く統計学的有意差を認めたが、その他の項目では
ASA
(American Society of Anesthesiologists)スコアーも含め両群間で明らかな統計学的有意差は
認めなかった。鎮静維持のためのプロポフォールの持続投与量の平均は高齢者に低量で統計 学的有意差を認めた。また有害事象の頻度は両群間で統計学的に有意差を認めなかった。若 年者の7
人、高齢者の10
人に有害事象のための一時的なプロポフォール投与中断例を認めた が、いずれも投与を再開し治療を完遂できた。【考察】
プロポフォールとミダゾラムを比較した報告では、両者に有害事象の差は無いものの鎮静に 要する時間や、投与終了後覚醒に要する時間はプロポフォールが優位に短かった。しかし年 齢や併存疾患で薬物動態は影響を受けるため、高齢者や併存疾患を持つ患者への投与はより 慎重にすべきである。今回の検討ではプロポフォール持続投与の平均維持量は高齢者で低値 であった。これは、高齢者では若年者に比べ低用量で鎮静効果が得られ、また血中半減期濃 度の延長によるためと考えられた。
【結論】
内視鏡医によるプロポフォールを用いた鎮静は、高齢者と若年者ともに長時間の内視鏡治療 でも安全に使用可能であった。ただし、高齢者においては投与量の調節をより慎重に行うべ きであると考えた。
東 京 医 科 大 学