1.はじめに
視覚部が学生を受け入れる1年前の平成2年、当時の 教育方法開発センターでの教材作成が行き詰まり、各学 科で学生向けの教材作成を行うようになった。また、弱 視向けの拡大文字教材は考慮されておらず、コピー機に よる拡大コピーが手段であった。特に大きな問題となっ たのが、JISコードにない文字を教科書や参考書、また 国家試験問題等にも使用している鍼灸学科や理学療法学 科の教材作成である。そこで、当時のJISコード(JIS X
0208:1990)に無い文字を鍼灸・理学療法担当の教員の
協力を得て選別し、弱視教材作成システムをMS−DOS 版で開発した[1]。近年、コンピュータを取り巻く環 境が急速に変化し、パソコン機器のソフトウェアやハー ドウェアの発達は著しく、JISコードの改正と共に、視 覚障害者向けの教材作成の環境を大きく変化させてい る。ここでは、新しいOSやハードウェアに対応した、
外字を含む教材作成の新しいシステム化を含めて検討す る。
2.漢字はどのくらいあるか
JIS X 0208:1997は、一般的なパソコンなどに利用され
ている文字コードであるが、JIS第一水準漢字・第二水 準漢字とも呼ばれ、6355字の漢字をコード化している。
この6355字に含まれない文字を一般に「外字」と呼ぶ。
外字を検討する前に、漢字はどのくらいあるかについて 検討する。現在、いくつかの巨大な漢和辞典と文字集が ある。
1)康煕字典[2]
中国、清の康煕帝の命によって編纂され、1716年に完 成した字典。47035字の親字、 214の部首で、各部首と 各々の部首に収められた字は筆画順に配列。様々な字典 の模範。
2)大漢和辞典[3]
通称、「諸橋大漢和」と呼ばれる全13巻+補巻2冊と いう重厚長大な漢和辞典。 諸橋轍次を中心として編集 し、数十年の歳月を費やして大修館書店から発売。
51071字の親文字と、詩経・論語・孟子・老子・荘子な
ど古今の書物から収集した53万余語の膨大な数の熟語 のほか、篆書の文字1万、掲載熟語の検索ができる語彙 索引などを有した、事実上世界最大の漢和辞典。
3)漢語大字典
徐中舒(主編)の単漢字の字典(1990)。収録字数59170 字は大漢和辞典を上回り、全てピンインによって読音が 施されている。全10巻、四川辞書出版社・湖北辞書出 版社。
4)中華字海
中華書局中国友諠出版公司(1994)出版の親字数85668 字の漢字集。詳しい文字の説明は省略し収録漢字数に重 点。
5)今昔文字鏡[4]
文字鏡研究会が研究成果として公表している文字集。
大漢和辞典の50476字の親文字全てと、Unicode ISO/IEC
10646の中国・日本・韓国の文字を一括で扱うための規
格CJK漢字、および、甲骨文字、西夏文字、現代中国 の簡体字、変体仮名、梵字、略字および非漢字まで収録。
「非漢字」には、仮名・水文・記号・返り点等を含む。
表1に収録文字の一覧を示す。(2002年10月現在)
外字について 2
障害者高等教育センター 障害者基礎教育部門
村上佳久
要旨:外字とは、一般にJISコードに規定されない文字を言う。近年、このJISコードについて視覚障 害者の教育についても影響を及ぼす、大きな改正があった。また、パソコンなどの情報機器を活用し て教材作成を行う場合には、ハードウェアやOSなどの基本ソフトウェアについても留意が必要であ る。ここでは、教材作成における最新のOS環境下での外字について、新しい文字コード体系である
Unicodeの技術的問題点を検討し、教材作成に利用する新しいUnicodeの外字作成について検証する。
キーワード:外字、教材作成
5)は、1)と2)を網羅しているので、漢字は約10 万語あるといってよい。漢字として根拠のある文字は、
1)と2)に収録されている文字で、後は略字や簡体字 など一部省略した文字である。康煕字典と大漢和辞典は、
明治以来の漢字の活字字体の典拠で、国語学的に極めて 重要で、日本の漢字のうち常用漢字表に含まれないもの は、基本的に康煕字典の字体を拠り所とするよう、国語
審議会(2000/12)などで答申されており、康煕字典を
補うものとして大漢和辞典が挙げられる。[5][6] 漢字を使用する文化圏は、日本・中国・台湾・韓国・
北朝鮮・ベトナム・シンガポールなどの東アジアであり、
同じ意味の漢字でも国によっては字体が異なる場合もあ る。
3.文字コードとは
文字は、コンピュータ上で2進法で処理され、文字も 数で表すため文字と数字の一対一の対応を決める。この 時に、ある文字に対応する数を、その文字の文字コード と呼ぶ。英語なら1文字1byteで表現可能である。アル ファベットは、26文字で大文字・小文字と記号類を含め 64文字程度なので7bitで表現可能である。しかし、日 本語の場合1byteでは無理で、1byte=8bitでは、28=256 文字しか表現できない。1文字を2byteで表現すると、
2byte=16bitで、216=65536文字の表現が可能、1文字が 3byteなら、3byte=24bitで、224=16777216文字の表現が 可能となる。しかし、1文字のbyte数を増やすと情報量 が多くなり、文字の処理にも時間がかかる。
1963年American Standards Association(ASA、後のANSI) で初め て文 字コ ー ド が制 定さ れ、ASCII(American national Standard Code for Information Interchange)と呼ば れた。「情報交換用アメリカ国家標準コード」の略で、
一文字を7ビットの二進数:0000000から1111111まで(十 進法の0〜127)の128の番号(符号)であらわす。一 般に文字は8bitで表すが、ASCIIは7bitで表現し、8bit 目は、通信エラーチェック用のパリティbitとする。ほ
とんどのコンピュータで扱える特徴があり、US−ASCII とも呼ばれる。
US−ASCIIは7bitコードだが、ウムラウトが必要なド
イツ語、セディラが必要なフランス語などは表現でき ないので、12文字を自国言語の文字に入れ替えて使用 し、残りのアルファベットの大文字・小文字などはUS−
ASCIIそのままという規格が考えられた。これを使えば
世界的に判読が可能な情報交換を行うことが出来る。こ れがISO/IEC 646(1967)である。
同じ頃、8bitによるUS−ASCIIの日本版規格、JIS X 0201−1967(旧C 6220 情報交換用符号)が制定された。
これは8bitコードの枠内に、ローマ字94文字とカタカ ナ他を63文字等、157文字を規定し、残りは制御符合な どである。ローマ字部分は上記ISO/IEC 646の枠組みを
使用しUS−ASCIIとほぼ互換性がある。合わない部分は、
国別の違いを認めた文字、例えば"¥ (円マーク) "など
である。ISO/IEC 646との違いは半角カタカナを追加し
たものと考えるとよい。これらの文字コード規格により、
例え国が異なっても文字コードの情報交換を行うことが 可能となった。[7]
漢字を扱う文字コード規格は、1978年にJIS C 6226− 1978として制定された。この規格が一般にJIS第一水準・ 第二水準漢字と呼ばれている。その後、JIS X 0208−1978 と変更され、1983, 1990, 1997年と改訂された。日本で流 通しているパソコンの殆どがこの文字コードを採用して いる。その後、1990年に漢字数が不足していると言うこ とで、JIS X 0212−1990通称、補助漢字[8]が制定され たが、一般のパソコンには普及していない。2000年に JIS X 0208は、JIS X 0213−2000に統合されることになる。
このときに追加された文字群がJIS第三水準・第四水準 漢字である。しかし、JIS X 0213−2000は、一部のパソコ ンメーカを除いて、ほとんど普及していないのが現状で ある。
表1 今昔文字鏡収録文字
文字種類 文字数
漢字 101,936字
非漢字 2,382字
梵字 1,875字
甲骨文字 3,398字
西夏文字 6,000字
篆書 10,969字
合計 126,560字
表2 漢字コード制定の流れ
制定年 規格名称 第一水準 第二水準 非漢字(文字数)
1976 JIS C 6226−1978 2,965 3,384 453
1983 JIS X 0208−1983 2,965 3,388 524
1990 JIS X 0208−1990 2,965 3,390 524
1990 JIS X 0212−1990 5,801(補助漢字と呼ばれる)
1997 JIS X 0208−1997 2,965 3,390 524
2000 JIS X 0213−2000 2,965 3,390 1,158
4,344(第三・第四水準漢字)
2004 JIS X 0213−2004 2,965 3,390 1,158
4,354(第三・第四水準漢字)
表2は漢字コード制定の流れを示している。なぜ、JIS
X 0212やJIS X 0213は普及しなかったのか。その原因の
1つが、フォントメーカにある。
4.フォントと印刷
1985年頃は、感熱紙に印刷する熱転写プリンタか、普 通紙に細い針金の集合体で打ちつけ印刷するドット・イ ンパクト・プリンタがパソコン用のプリンタであり、文 字は16×16または24×24(22×22)のドットで構成 されていた。
一方、当時の印刷・出版業界の印刷は、専用の写植機(手 動または電算写植機)を用い、印刷文字は、写植機会社 が作成した極めて高額なのもで、各メーカごとに字体が 異なっていた。
1985年に ア ド ビ シ ス テ ム ズ(AdobeSystems)が
PostScript(ポストスクリプト)技術を発表し、ベクト
ルフォント(拡大縮小しても文字の形は相似)が登場、
文字の拡大縮小が可能となった。この技術は、写植機に も応用され、写植機でフォントを提供していたメーカは、
ベクトルフォントの作成も行うこととなる。
ドットプリンタ用フォントはドットの集合体で、画数 の多い文字を表現するにはかなり苦労する。文字コード では文字の形は、規定されず、一般的に康煕字典に掲載 されている文字の形を参考に作成されていた。当時の文 字コードの規格は、旧工業技術院(旧通産省)の担当で、
文字の形を決めるのは国語審議会(文化庁)、人名漢字(法 務省)など多くの担当部局によって漢字の形が決定され る。文字コードはJIS規格で決定されても字形の規定は 決まっていなかった。[9]
1983年にJIS X 0208−1978が改訂され、第一水準と第 二水準間で文字を入れ替え、文字を削除・追加などを行っ たため大きな混乱を生じた。例えば、頚−頸、砿−礦な どの例では、前者が1978年で後者が1983年である。同 じ文字コードでありながら文字が異なっている。
また、パソコンやプリンタも1978と1983のどちらか の規格を選択し、一部の文字が正しく印字できない状 況もあった。これは、第一水準漢字・第二水準漢字の多 数のフォントを利用するには、価格的にも第一水準漢字 を優先して、第二水準漢字はオプションとすることが多 かった事情もある。
1985年以降、ベクトルフォントの登場は、文字の形を 規定する必要に迫られ、JIS X 0208の1997年の改正時に
「表外漢字字体表」を公表し、文字の形の例を表示する ようになった。そのため、字形についての根拠を1990 年の改正時に精査し、標準的な字形を定めることとなっ
た。この、表外漢字字体表の見本として、工業技術院(旧 通産省)を中心に、1988年『文字フォント開発・普及 センター』が発足し、大手コンピュータメーカ、大手印 刷会社、写植機メーカなど25社が参加した「平成書体」
がある。
明朝体は、1989年リョービ・イマジクスが「平成明朝」
を、ゴシック体は、日本タイプライターが「平成ゴシッ ク」を作成した。この2つの書体は、JIS X 0208:1990の ときに標準書体として字形を示している。
文字の根拠とは、出版界や印刷界、新聞社などで、現 実にどの様な形で利用されているかという実態調査を行 い、偽字や省略字でないことを示したものである。康煕 字典と大漢和辞典に掲載されていることは、文字の根拠 の1つとされた。また、漢字使用例の具体的証拠(教科 書や地名など)を収集し、正確さを期して、JIS X 0208−
1997が漢字の形も含めて規格化している。
5.国際化
コンピュータが発達し、また、全世界中で情報通信が 盛んになると、国際的に情報通信を交換するための規格 が求められるようになった。ISO/IEC 646はその1つで、
この規格ではアルファベットなどは国際的に情報交換可 能である。しかし、東アジアなどで利用される漢字やア ラビア文字など欧米の文化圏とは異なる文字も含めて情 報交換する仕組みが考えられるようになった。
Unicodeは、1988年にXeroxで考案された多言語コー ド体系を原型とし、Unicode Consortiumが標準化したも のである。多言語では、アルファベットのように1文字 を1byteだけで表現することは不可能なので、2byteで1 文字を表現すると、65536文字が利用可能となる。この 文字数の中で全世界の文字を扱おうとしたのがUnicode である。漢字は文字数が非常に多数であるが、中国・台湾・ 日本・韓国で似ている漢字は同一コードを与えるという、
漢字を文字としてではなく形と認識している欧米の合理 的な考え方に基づいて、漢字はこの4カ国で利用するの を共通化しCJK統合漢字として20000字程度にすること が検討され、1991年にUnicode1.0が発表された。[10] これには、日本の漢字コードは、JIS X 0208−1990とJIS
X 0212−1990が選択されている。また、この2つの漢字
コ ー ド は、UNIX用の漢 字コ ー ド規 格EUC(Extended UNIX Code)−JP(1991)としてUNIX系の文字コードと しても利用されている。
漢字は、Unicode2.0(1996)で20902文字のCJK統合 漢字で全てを納めるはずであったが、康煕字典の例を 出すまでもなく不足し、改訂ごとに漢字は増加して、
Unicode3.0(2000)では6582文字、更にUnicode3.1(2001)
から42711文字を追加し、70195文字もの巨大な漢字集
合体となった。[11]ちなみにUnicode3.1には、点字も 2800-28FFに規定されている。
Unicodeは国 際 規 格で あ る、 ISO/IEC 10646−1と連 携 し、この国際規格によって定められる文字コード規格は UCS(Universal Multiple-Octet Coded Character Set)−Part1:
Architecture and Basic Multilingual Plane「国際符号化文字
集合 UCS 第一部体系及び基本多言語面」と呼ばれ、こ
の日本語訳がJIS X 0221−1:2001、中国語訳がGB 13000で ある。[12]UCSは、16bitのUCS−2と32bitのUCS−4が あり、UCS−2はUnicodeに一致させている。UCS−4では、
理論上21億以上の文字種を表現できる。また、Unicode では、外字の概念がない。無い文字は追加する。
ここで、JIS X 0221−1:2001(Unicode)とJIS X 0208他の 漢字コード規格の対応を図式化したものが図1である。
図1では、Unicode規格であるJIS X 0221−1が非常に
巨大で、JIS X 0213ですら小さな文字集合であることが
わかる。また、JIS X 0213とJIS X 0212は一部が重複し ていない。また、JIS X 0208はJIS X 0213に包括されて いるのがわかる。
6.フォント AdobeJapan1 の文字セット規格
巨大な漢字コードは規格化されたが、全て印刷可能な のであろうか。前述のように印刷・出版所では電算写植 機を利用してきたので、写植機メーカがフォントを作成 して販売する。コンピュータの発達に伴って、電算写植 からDTPへと変化する中で、フォントを作成するメー カもOS毎に様々な種類のフォントを作成する必要に迫
られ、負担も大きくなってきた。したがって、漢字文 字規格としては存在しても、フォントメーカは全ての漢 字を作成せずJIS X 0208−1997の6349文字が現在でも中 心である。この約6400字の漢字で様々な書体(明朝体・
ゴシック体・毛筆体など)が各社から販売されている。
DTPや電子印刷所、製版会社などでは、パソコンと 異なる規格によって文字コードを扱っており、これら のメーカに大きな影響力を持つのが、アドビシステム ズ で あ る。Adobeは、『Adobe−Japan1−』と言うCID/
OpenTypeフォントのための文字セット規格を発表して
いる。1−に続く番号がバージョンを表わし、文字セット は増えた分だけ上積みされ、過去のバージョンとは上位 互換となる。[13]
最も早い時期に制定されたのは、AdobeJapan1−0で、
JIS X 0208の1978/1983問題を包括する形で制定された。
これは、主として印刷所や出版所で、1978/1983問題の 文字の形を必要としたからである。
その後、JISの改正に合わせるように、1−1, 1−2が制 定された。大きな変化は、1−3からで、Microsoft/Apple に よ るWindows/Macintosh共 通の フ ォ ン ト体 系で あ
るOpenTypeフォントの制定である。さらに、1−3を
Unicode化に合わせるようにJIS X 0212の文字を追加し
た1−4が発表された。これで、殆どの場合、必要な文 字は包括され、一般的には印刷所・出版所では問題がほ とんど無くなった。
Adobe-Japan 1−5は1−4までの進化とは多少意味合い が異なり、出版・印刷に必要とされる文字・異字体を 収録したAdobe-Japan 1−4 (15444文字)をベースに JIS X 0123:2000 (4344文字)、国語審議会答申で提唱された印 刷標準字体(表外漢字字体表)(38文字)やMac OS X
v10.2に搭載された写植文字などの4,873文字を追加して
20317文字を制定したものとなっている。
さらに2004年6月にAdobeはAdobe-Japan1−6を発表 した。1−6は共同通信社が策定した新聞各社に配信す るための私的な文字コード規格『U-PRESS』をサポート するための非漢字と、1−5まででサポートされなかった
JIS X 0212(補助漢字)の漢字等を収録し、電算写植の
みならず新聞社も網羅した規格となった。
表3に「AdobeJapan 1」の各版の概要を示す。
Adobe Japan 1-5は、現在Mac OS X にバンドルされて
おり、20000字を超えるグリフセットが利用できる。
Windows環境では、大日本スクリーンから出版されて
いる「ヒラギノ」OpenTypeProセットが、サポートして いる。本来、このフォントセットは、Windows2004用と 言われていたが、Windowsの新しいバージョンのリリー 図1 漢字文字コードの対応
スが2006年以降になったため、現在のWindows環境で は、12000程度のグリフセットが標準でMS UIゴシック として添付されている。
現在のところ、この「ヒラギノ」OpenTypeProセッ トが有する20000字程度が最も大きい漢字集合フォント で、利用できる書体は、明朝体2種、角ゴシック体2種、
丸ゴシック体1種の5種類となる。これが、2004年12月 現在でのパソコンにおける一般的な漢字利用の技術的限 界である。
7.外字の現状
7. 1 視覚部における外字
視覚部における外字は、次のように分かれる。
電子図書閲覧室系:医学・東洋医学用語 教育方法開発センター系:点字
電子図書閲覧室系では、点字は、英文用のフォントと 同じ半角のみの構成で、128文字以下である。しかし、
教育方法開発センター系では、外字領域に触図用や点字 エディタ用の点字フォントを割り当てている。教育方法 開発センター系では、鍼灸学科・理学療法学科で利用す る医学・東洋医学用語の外字は出力できないため、これ らの教材は作成することが出来ない。そのため、両者間 でファイルの互換性は無い。
電子図書閲覧室系では、医学・東洋医学用語の外字と 点字との関係を考慮して作成しているので、触図と拡大 文字図のような図を共通化して、点字と拡大文字の説明 文を入れる教材作成においても問題なく作成でき、学生 が利用する自学自習用のパソコンでも、医学・東洋医学 用語の外字が設定されており、鍼灸学科・理学療法学科 の学生はレポート作成に困ることはない。
盲学校や視力障害センターなど視覚部と同様な鍼灸・
理学療法の学科を有するところでも外字は必ず設定され ている。
7. 2 盲学校や視力障害センターにおける外字 一般に盲学校などで利用されている、医学・東洋医学 用語の外字は3種類ある。
1)AOK外字
「高知システム開発」が開発した『盲人用AOKワー プロ』に利用される外字で、明朝体が63文字と一部が ゴシック体で提供される。現在はWindows用の画面読 み合成音声ソフトウェアとともに利用できる外字と、日 本語入力用の辞書と合成音声用の読みが同梱された製品 が販売され盲学校などで利用されている。
2)QL外字
Quality of Lifeが開発し、Office21が販売している外字 集。明朝体が1775文字、ゴシック体が166文字、日本語 入力用の辞書と共に提供され、視力障害センターを中心 に盲学校でも利用しているところは多い。
3)技短外字
筑波技術短期大学の電子図書閲覧室系で利用される外 字。公開講座参加者を中心に無料配布している。現在は、
明朝・ゴシック・丸ゴシック・教科書体など13書体で 159文字が日本語入力用辞書と共に利用可能である。書 体が多いのが特徴で学生の眼疾に合わせた教材作成が可 能である。一部の盲学校などで利用されている。
8.新しい外字
前述のように、Unicodeには本来外字はない。しかし、
現状では、20000字を超えるUnicodeフォントは、フォ ントメーカが製造していないため教育現場では利用でき ない。したがって、書体数を犠牲にして一部のUnicode フォントを利用出来るかどうかが、問題となる。
電子図書閲覧室系で作成した外字についてUnicodeと の対応を調査すると、対応できない文字が数文字あった。
1)省略文字(大漢和辞典にあり)
2)省略文字(今昔文字鏡のみにあり)
3)Unicodeにはあるがフォントがない
ここで、重要なのは利用される外字に根拠があるかで ある。省略文字でも大漢和辞典に収録されているものは、
漢字の根拠があるが、それ以外の場合は、出版社などで 作成された省略文字の場合が多い。筑波技術短期大学か ら全日本鍼灸学会を通じて、JIS X 0213作成のために提 出した外字一覧は159文字であるが、JISの委員会で採 択されたのは136文字である。これらは、教科書として 3冊以上掲載され、大漢和辞典に掲載されている。25文 字が教科書での用例の提出をJISの委員会から求められ、
0:8284文字 JIS X 0208-1978、JIS X 0208-1983 NEC,IBM,Fujitsu選定外字など 1:8358文字 JIS X 0208-1990を中心に採取 2:8719文字 JIS X 0208-1990を中心に採取
IBM拡張外字も選定 3:9357文字 JIS X 0208-1997を中心に採取
OpenTypeStd
4:15444文字 3にJIS X 0212-2000を1029文字追加 OpenTypePro
5:20317文字 4にJIS X 0213-2004を追加 6:23057文字 5にU-PRESSなどを追加
表3 Adobe Japan 1−
その結果、省略文字と認定されJISから省かれた。
今回の研究では、過去の外字の妥当性をもう一度検
証し、Unicode対応できるものはUnicodeで対応し、出
来ないものについては、本当に教育に必要かを精査し、
Unicodeと連携して利用できる外字を作成することが最
終目的である。
本当に必要な外字は、
①国家試験出題
②教科書類
③参考書類
の順に精査すると、本学で作成した159文字中136文字 はJIS委員会通りに採択し、23文字について改めて精査 すると、5文字が1)に、そして4文字が今昔文字鏡に もなく、6文字が3)に該当した。①②に該当しない2 文字を、新しい外字案からは省き、省略文字は、本字を 利用することとする。15文字は現在販売されているフォ
ントのUnicodeにないため新たに作成する。
9.エンコード
新しい外字をどの様な方式で文字コード化(エンコー ド)するのかは重要な問題である。特に簡単に文字を入 力できるかどうかが鍵となる。一般に利用されるIME による日本語入力は、UnicodeではなくShift−JISを利用 するため、Shift−JISでのエンコードが必要となる。そこ で、従来使用していた外字の中でUnicode対応が可能な 文字でかつ、字体が変更しない文字に関しては、Unicode 文字を利用し、それ以外の文字に対してはShift−JISの 外字を作成し運用する。すると外字数は15文字となる。
次いで検討が必要なのは、フォントの種類である。パ ソコン用のフォントはOSの影響を最も受ける。過去、
表4のような外字フォントを作成してきた。
OSが異なるとフォントのデータ構造が異なるため、
フォントは作成し直す必要がある。現在、電子図書閲覧 室系で利用しているのは、Canon FontGalleryシリーズの
TrueTypeFontで159文字14書体ある。
しかし、学生が本当に必要としている書体を選別する と太さについて様々な意見があるため、学生の要望の多 い明朝体、ゴシック体、丸ゴシック体の3書体で太さの 異なるものを検討した。その結果、新しく作成される外
字はOpenTypeFontで作成し、書体数は明朝体2種、ゴ
シック体2種、丸ゴシック体1種の5書体とした。
さらに必要なのは、日本語入力用の辞書と画面読み合 成音声用の音声辞書であるが、今回は日本語入力用の辞 書を作成し、合成音声用の音声辞書は、画面読み合成音 声ソフトの開発メーカにフォントデータを渡すこととし た。
10 .おわりに
外字は、単純ではない。「Unicodeにすれば外字はいら ない」と技術的問題を無視した発言をする人がいるのは 残念なことである。文字コード規格が決まっていても、
フォントがなければ教材は作成できない。①文字コード 規格、②日本語入力方法、③日本語入力辞書、④フォン トの4つが全て揃わなければ教材作成は出来ない。視覚 障害学生教育用にはさらに、⑤画面読み合成音声辞書も 必要となる。
技術を正当に評価し、必要なものを開発する態度こそ が正しい教材作成システムの開発手段であろう。そして、
視覚障害を有する学生が勉学に集中するための必要な事 項でもある。
備考
この研究は、平成16年度 障害者高等教育センター 長裁量経費「新しいOSの外字の作成について」研究代 表者:村上佳久によるものである。
謝辞
本研究に際し、快く外字の実地テストを引き受けてく ださった、盲学校・視力障害センターの先生方に深謝し ます。
参考文献
[1]村上佳久他:外字について.筑波技術短期大学テ クノレポート,5, 111−116, 1998
[2]松岡榮志三省堂編修所編纂:e康煕字典日本語 版.三省堂,2002
[3]諸橋轍次:大漢和辞典修訂版全13巻.大修館書店,
1986
[4]今昔文字鏡,文字鏡研究会編.紀伊國屋書店,2001 MS-DOS DotFont(16dot, 24dot) 1書体
Windows 3.0 WifeFont 12書体
Windows 3.1 TrueTypeFont 6書体
Windows 95 TrueTypeFont 10書体
Windows 98 TrueTypeFont 12書体
Mac OS 7/8 PostScriptFont 2書体
Windows 2000 TrueTypeFont 14書体
Windows Xp TrueTypeFont 14書体
表4 OSと外字フォント
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http://internet.watch.impress.co.jp/www/column/ogata/
[10]太田昌孝:いま日本語が危ない 文字コードの誤っ た国際化.丸山学芸図書,1997
[11]ユニコード漢字情報辞典,ユニコード漢字情報辞 典編集委員会,三省堂,2000
[12]川俣晶:パソコンにおける日本語処理/文字コー ドハンドブック.技術評論社,1999
[13]オブスキュアインク:デザイン、DTPのためのフォ ントの鉄則.毎日コミュニケーションズ,2003
External Characters 2
MURAKAMI Yoshihisa
General Education Department, Research Center on Higher Education for the Hearing and Visually Impaired, Tsukuba College of Technology
Abstract: An external character refers to a character which is not specified by JIS kanji code.
Recently, the JIS code was revised sharply. This revision affects the education visually impaired persons.
Moreover, it has influence on the textbooks created by using a personal computer. Furthermore, cautions are required also about a personal computer or OS.
Here, the external character under the latest OS environment in the teaching material making is examined.
And a technical problem of Unicode that is a new character-code system is examined. In addition, making the external character of new Unicode used to make the teaching material is verified.
Key Words:External Character