第 10 回
環上の線形代数
体Kのベクトル空間V とは・・・
1. V は0という特別な元を含む集合
2. 加算+ : V ×V → V が定義され, 次の性 質を満たす:i)∀x,y,x∈ V, x+ (y+z) = (x+y) +z ii) ∀x∈V, x+0=0+x=x, iii) ∀x ∈ V, ∃(−x)∈ V, x+ (−x) =0, iv)
∀x,y∈V,x+y=y+x
3. スカラー倍· : K×V → V が定義され(通 常は·は省略される), 次の性質を満たす: i)
∀λ, µ ∈ K, ∀x ∈ V, λ·(µ·x) = (λµ)·x, ii)∀λ, µ∈K,∀x∈V, (λ+µ)·x=λ·x+µ·x, iii)∀λ∈K,∀x,y∈V,λ·(x+y) =λ·x+λ·y, iv) 1を体Kの単位元としたとき, ∀x ∈ V, 1·x=x.
• 以上から「スカラー倍」の部分を除いたもの を加法群という.
• 今回の講義では,伝達関数行列を取り扱うが・・・
• 議論の過程で多項式をスカラーとして扱う必 要があり, 「スカラーの割り算ができる」と いう条件に抵触してしまう.
• スカラーに関する要求事項から「除算」を除 きたい.
• 加減乗算が定義された数学的対象を環という.
• 環の要素とのスカラー倍が定義された加法群 のことを加群という.
• この講義では体Kを1変数多項式環あるいは 有理式環で置き換えれば十分で,環や加群の 一般論は必要ではないので, 深入りせず, 環 および加群の定義のみを述べる.
• Rを加法群とする.
• Rに2項演算· : R×Rが定義され, 次の性 質を満たすとき, Rを環という: i) ∀x, y, z ∈ R, x·(y·z) = (x·y)·z), ii) ∀x, y, z ∈ R, x·(y+z) = x·y+x·z, iii) ∀x, y, z ∈ R, (x+y)·z =x·z+y·z
• +を加算,·を乗算と呼ぶ. 乗算の記号は曖昧 さがないときは省略される.
• ∃u∈R,∀x∈R,ux=xu=xとなるとき,u を(乗法)単位元と呼ぶ. 単位元を持つ環を, ただの環と区別して単位的環と呼ぶ.
• 環の定義に単位元の存在を含めることもある.
• ∀x, y ∈ R, xy = yxとなるとき, Rを可換環 という.
• Rが単位的可換環で,xy = 0⇒x= 0∨y= 0 となるとき, Rを整域という.
• Rが可換環で, 1 6= 0であり, ∀x 6= 0, ∃y, xy = 1となるとき, Rを体と呼ぶ.
• Q,R, Cは体の例である.
• Zは体でない単位的可換環の例である. m, n∈ Z, mn= 0 ⇒ m= 0∨n = 0だから, Zは整 域である.
• Q[x]を有理数を係数として持つ有限次元多項 式全体とすると,Q[x]は整域となる.
• n∈Nに対し, 体Kの元から成るn行n列の 行列全体が作る集合は,行列の和および積に 関して環である. これは非可換環である.
• 同様に, 可換環Rの元から成るn行n列の行 列全体が作る集合も行列の和および積に関し て環である.
• Mを加法群, Rを単位元を持つ環とする.
• 集合R ×M において, · : R ×M → M が 定義され, 次の性質を持つとき, (M,·)を左 R加群という. i) ∀r ∈ R, ∀x, y ∈ M, r · (x+y) = r·x+r·y, ii)∀r, s∈R, ∀x∈M, (r+s)·x=r·x+s·x, iii)∀r, s∈R,∀x∈M, (r·(s·x)) = (rs)·x, iv)∀x∈M, 1·x=x.
• 集合R ×M において, · : M ×R → M が 定義され, 次の性質を持つとき, (M,·)を右 R加群という. i) ∀r ∈ R, ∀x, y ∈ M, (x+ y)·r = x·r+y·r, ii) ∀r, s ∈ R, ∀x ∈ M, x·(r+s) = x·r+x·s, iii)∀r, s∈R,∀x∈M, ((m·r)·s) =m·(rs), iv)∀x∈M,x·1 = x.
• 要素が有理式から成る行列(伝達関数行列)を 考え, スカラーとしてsの多項式を考えた場 合, 数学的には我々はベクトル空間ではなく 加群を取り扱っていることになるのであるが,
「加群」という舞台を意識する必要が生じる ことは稀.
• この講義では加群の一般論には立ち入らない.
• Kを実数体あるいは複素数体, K[x]をKの 要素を係数とする1変数多項式全体の集合 とし, M(m, n;K[x])を, 各要素がxの(K係 数)多項式であるm行n列の行列全体とする.
A(x)∈M(m, n;K[x])を多項式行列という.
• M(m, n;K[x])はK[x]加群であるが, この事 実を今後使うことはない.
• K[x]はEuclid整域である. すなわち,f(x)∈ K[x]とg(x) ∈ K[x]が与えられているとき, f(x)とg(x)をともに割り切るモニックな多項 式の中で次数が最大のもの(これを最大公約 多項式といい, gcd (f, g)であらわす)を, Eu- clidの互除法によって求めることができる.
• f(x), g(x)∈K[x]に対し,f(x)とg(x)によっ てともに割り切れるモニックな多項式の中で 次数が最小のものを最小公倍多項式といい, lcm (f, g)と書く.
• d(x) = gcd (f, g),l(x) = lcm (f, g)とすると, d(x)l(x) =f(x)g(x)である.
• G(s) = (gij(s))をm行n列の伝達関数行列 とし, gij(s) = nij(s)/dij(s)とする. D(s) = lcm1≤i≤m,1≤j≤ndij(s)とすると,D(s)G(s)は 多項式行列である.
• 伝達関数行列の解析の際には, 上記のように 多項式行列に帰着させることもあれば,有理 式のまま取り扱うこともある.
• A(x)∈M(n, n,K[x])の行列式が非零のとき, A(x)を要素が有理式である行列と解釈する と, その逆行列を余因子行列と行列式により 書き下すことができる.
• detA(x)が零でない定数であれば(このよう な行列をユニモジュラという),逆行列も多項 式行列となる.
• A∈Km×nに対する行基本変形と同様に,A(x)∈
M(m, n,K[x])に対する行基本変形を定義す
ることができる:
1. ある行に零でない定数を掛ける 2. 2個の行を入れ換える
3. ある行に他の行の多項式倍を掛ける
• 同様に,列基本変形を定義することができる.
• Km×nとの違いは, 第3番目の基本変形に限 り, 倍率として多項式倍が許されること.
• 基本変形は基本行列を行列に左あるいは右か ら掛けることに対応し,基本行列はユニモジュ ラである.
• 第1番目と第2番目の基本変形に対応する基 本行列はKm×nと同一.
• 第3番目の基本変形に対応する基本行列では, 非対角要素として, スカラーだけでなく多項 式も許容される.
基本行列1:
2 0 0 1 基本行列2:
0 1 1 0 基本行列3:
1 5 0 1
,
1 1 +x2
0 1
,
1 0 x5 1
• Eulcidの互除法と基本変形の関係を調べる.
• 2個の多項式a(x)とb(x)(ただしa(x)の方が 高次)に対し, a(x) = b(x)q(x) +r(x)とする と, Euclidの互除法は(a(x), b(x))を(b(x), r(x)) に変える演算だが, 実はこれは(a(x), b(x))T に対する行基本変形になっている.
r(x)
b(x) = 1 −q(x)
0 1
a(x) b(x) b(x)
r(x)
= 0 1
1 0
r(x) b(x)
よって
b(x) r(x)
= 0 1
1 0
1 −q(x)
0 1
a(x) b(x)
• a(x) = (a1(x), . . . , an(x))T ∈ M(n,1,K[x]) とし, d(x) = gcd(a1(x), . . . , an(x))を a(x) の全要素の最大公約多項式とすると, 先に述 べた事実により,あるユニモジュラ行列U(x) が存在して, U(x)a(x) = d(x)
0n−1
!
となる.
• 0 6= A(x) ∈ M(m, n;K[x])を, 都合が良い
「標準形」に変形することを考える.
• A(x)の非零要素の中で次数が最低のものを ひとつ選び,行および列基本変形によって,そ の要素を(1,1)要素に移動する. 得られた 行列をA(1)(x) = (a(1)ij (x))とする. そして, A(1)(x)に対して,以下の操作を繰り返す.
j1 11 j1
の剰余に変える.
2. 列基本変形により,a(1)1j (x)を,a(1)11(x)によるa(1)1j (x) の剰余に変える.
3. j6= 1に対し,a(1)j1(x)とa(1)1j (x)がすべて零であれ ば終了. そうでなければ, 行および列基本変形に より,第1行および第1列の全要素の中で次数が 最低のものを第(1,1)要素に移して最初のステッ プに戻る.
• 上述のループを1回実行するごとに, a(1)11(x) の次数は1以上低下するから, 上記のループ は有限回で終了し, j 6= 1に対し, a(1)j1(x)と a(1)1j (x)はすべて零となる: a(1)11(x) 0
0 ∗
!
• ∗の部分に帰納法を適用すると・・・
• A(x)は行および列基本変形によって diag(d1(x), . . . , dr(x)) 0
0 0
!
という形に変換 されることがわかる. さらに,di(x)はモニッ クにできる(1≤i≤r).
• diag(d1(x), . . . , dr(x))をさらに簡単にするこ とを考える.
• gcd(d1(x), d2(x)) =g(x)とすると,あるp1(x) とp2(x)が存在し,d1(x)p1(x) +d2(x)p2(x) = g(x)となることが証明できる.
• d1(x) =g(x)q1(x),d2(x) =g(x)q2(x), l(x) = lcm(d1(x), d2(x))とする. l(x) =d(x)q1(x)q2(x) である.
0 1 0 d2(x) 0 1 0 d2(x)
1 0
−q2(x) 1
! d1(x) g(x) 0 d2(x)
! 1 0
−q1(x) 1
!
= 0 g(x)
−l(x) 0
!
0 −1
1 0
! 0 d(x)
−l(x) 0
! 0 1 1 0
!
= d(x) 0
0 l(x)
!
よって, d1(x) 0 0 d2(x)
!
は,基本変形により, g(x) 0 0 l(x)
!
という形 に変形でき,g(x)はl(x)を割り切る.
• g(x) = gcd(d1(x), . . . , dr(x)) とおき, 帰納法 により, diag(d1(x), . . . , dr(x))が, 基本変形 により, diag(g(x), l2(x), . . . , lr(x))という形 に変形でき, かつ∀k ≥ 2, g(x)|lk(x)となる ことを示す(g(x)|lk(x)はg(x)がlk(x)を割り 切ることを意味する記号).
• gk(x) = gcd(d1(x), . . . , dk(x))とおく.
が得られ,かつ∀j,gk(x)|lj(x)と仮定する.
• 先に述べた結果より, diag(gk(x), dk+1(x))は, 基本変形によ り, diag(gcd(gk(x), dk+1(x)), lk+1(x))という形に変形される.
gcd(g1(x), . . . , gk(x), dk+1(x)) = gcd(gk(x), dk+1(x)) lk+1(x)は gk+1(x)で割り切れるから,ここで帰納法を使うと・・・
• diag(d1(x), . . . , dk+1(x)) を 基 本 変 形 し て diag(gk1(x), l2(x), . . . , lk(x), lk+1(x)) と い う 形 に な り, gk+1(x)|lk+1(x)で,かつ∀j≤k,gk(x)|lj(x)でgk+1(x)|gk(x)だか ら,∀j≤k,gk+1(x)|lj(x)
• k=rのときdiag(g(x), l2(x), . . . , lr(x)),∀j ≥2, g(x)|lj(x)が得られる.
• g(2)(x) = gcd(l2(x), . . . , lr(x))とすると,g(x)|g(2)(x) で, 同様の計算をdiag(l2(x), . . . , lr(x))に適用す ると, diag(g(x), g(2)(x), l3(2)(x), . . . , l(2)r (x))とい う形になり, ∀j≥3,g(2)(x)|l(2)j (x)が得られる.
• 同様の計算を,第r回目まで繰り返す.
• この結果をまとめると,A(x)は, 基本変形に より, diag(g1(x), . . . , gr(x)) 0
0 0
!
,∀i,gi(x) はモニック, gi(x)|gi+1(x), という条件を満た す行列に変形できることがわかる. この形 をA(x)のSmith標準形あるいは単因子標 準形という.
列
ai1j1(x) · · · ai1jk(x)
... ...
aikj1(x) · · · aikjk(x)
(ただし1≤i1≤ · · · ≤ik≤m, 1≤j1≤ · · · ≤jk≤n)の行列式をA(x)の(ひとつの)k次小 行列式といい,k次小行列式すべての最大公約多項式をA(x) のk次の行列式因子という. 行列式の定義から,行列式因子 は基本変形によって不変である.
diag(g1(x), . . . , gr(x)) 0
0 0 と
diag(h1(x), . . . , hs(x)) 0
0 0
に変形されたものと仮定すると,各kに対し,Aのk次の行 列式因子はg1(x)· · ·gk(x)と一致し,同時にh1(x)· · ·hk(x)と も一致するから,r=sで,∀k, gk(x) =hk(x)でなければなら ない.
• A(x)∈M(m, n;K[x]),B(x)∈M(m, p;K[x]), C(x)∈M(p, m;K[x])とする.
• A(x) =B(x)C(x)であるとき,B(x)をA(x) の左因子, C(x)をA(x)の右因子という.
• Ai(x) = B(x)Ci(x) (i = 1,2)であるとき, B(x)をA1(x)とA2(x)の共通左因子という.
• D(x)がA1(x)とA2(x)の共通左因子で,A1(x) のA2(x)の任意の共通左因子B(x)に対し,あ るX(x)が存在して, D(x) = B(x)X(x) と なるとき, D(x)をA1(x)とA2(x)の最大共 通左因子という.
• 上記においてA1(x)とA2(x)の次元は一致 しなくてもよい.
• Ai(x) = Bi(x)C(x) (i = 1,2)であるとき, C(x)をA1(x)とA2(x)の共通右因子という.
• D(x)がA1(x)とA2(x)の共通右因子で,A1(x) のA2(x)の任意の共通右因子C(x)に対し,あ るX(x)が存在して, D(x) = X(x)C(x) と なるとき, D(x)をA1(x)とA2(x)の最大共 通右因子という.
• 左因子と右因子については並行した議論がで きるが, 重複を避けるため, 以下ではおもに 左因子について議論する.
• まず, Ai(x) ∈ M(m, ni,K[x]) (i = 1,2)の 最大共通左因子D(x)が存在し, ある多項式 行列Xi(x) i = 1,2に対し, A1(x)X1(x) + A2(x)X2(x) =D(x)となることを示す.
W1(x) W2(x) のように分割し(Wi(x)とAi(x)の列数を合わ せる), D(x) = U−1(x)S(x)と定義すると, Ai(x) = D(x)Wi(x) (i = 1,2) であるから, D(x)はA1(x)とA2(x) の共通左因子 である. また, Ai(x) = B(x)Ci(x) (i = 1,2)であるとき, B(x)
C1(x) C2(x)
V(x) =
A1(x) A2(x)
V(x) = D(x)であ るから,X(x) =
C1(x) C2(x)
V(x)とおくと,B(x)X(x) =D(x) である. よって,D(x)は最大共通左因子である. V(x) = X1(x)
X2(x)
! の ように分割すると,A1(x)X1(x) +A2(x)X2(x) =D(x)である.
構成されたA1(x)とA2(x)の最大共通左因子とする. 最大共通左因子 の定義から,あるX(x)に対し, D′ =D(x)X(x)であるが, D(x) = A1(x)X1(x) +A2(x)X2(x)であるので,D′(x) =A1(x)X1(x)X(x) + A2(x)X2(x)X(x)となる. すなわち, A1(x)とA2(x)の任意の最大共 通左因子は,A1(x)X′1(x) +A2(x)X′2(x)という形で書き表される.
• Ai(x) ∈ M(m, ni,K[x]) (i = 1,2)において, n1+n2 ≥mで,
A1(x) A2(x)
のSmith標 準形が
Im 0
となるとき,A1(x)とA2(x) は左素であるという.
• U(x)とV(x)により
A1(x) A2(x)
がSmith 標準形に変形され, A1(x)とA2(x)が左素の とき, 最大共通左因子のひとつは
D(x) =U−1
Im 0
であるが,零行列の部 分は省略できるので,最大共通左因子をD(x) = U−1(x) に取り直すことができる.
となる.
• 逆に,あるX1(x)とX2(x)に対し,A1(x)X1(x)+
A2(x)X2(x) =Imであれば, rank A1(x) A2(x)
= mが任意のxに対して成り立つから,そのSmith 標準形の階数はxに依存しないから, Smith標準 形は Im 0
でなければならない. したがって, A1(x)とA2(x)が左素である.
• Kを実数体あるいは複素数体,K(s)をKの要 素を係数とする1変数有理式全体の集合とし, M(m, n;K(s))を, 各要素がsの(K係数)有
理式(あるいは有理関数)であるm行n列の
行列全体とする. A(s)∈M(m, n;K(s))を有 理関数行列という(有理式行列という言葉は 使われないようである).
• 独立変数は何でもよいのだが,ここでは,伝達 関数をイメージしやすくするため,sを使った.
• G(s) = (gij(s))∈M(m, n;K(s))が与えられ, gij(s) =nij(s)/dij(s)で, nij(s)とdij(s)の最 大公約多項式は1であるものとする. d(s) = lcm{dij(s) : 1 ≤ i ≤ m,1 ≤ j ≤ n}と定義 する.
• P(s) =d(s)G(s)とおくと,P(s)は多項式行 列で, G(s) = 1
d(s)P(s)である. この表現を, G(s)の最小公倍分母による表現と呼ぶ.
• P(s)のSmith標準形は diag(g1(x), . . . , gr(x)) 0
0 0
! ,
• P(s)がSmith標準形に変形する際に用いら れた左基本変形に対応する基本行列の積を U(s),右基本変形に対応する基本行列の積を V(s)とする. U(s)とV(s)は正方で,ユニモ ジュラである.
• U(s)G(s)V(s) = d(s)1 U(s)P(s)V(s)だから・・・
U(s)G(s)V(s) =
d(s) . ..
gr(s) d(s)
(空白の部分は零)
• 前ページの表現において, i = 1, . . . , r に対 し, pi(s) = gcd(gi(s), d(s))とすると, gi(s) = pi(s)νi(s), d(s) = pi(s)δi(s)と書け(νi(s)と δi(s)は多項式), gcd(νi(s), δi(s)) = 1である.
• 前ページの式でgi(s)/d(s)をνi(s)/δi(s)で置 き換えたものをG(s)のSmith-McMillan 標準形という.
U(s)G(s)V(s) =
δ1(s)
. ..
νr(s) δr(s)
(Smith-McMillan標準形;空白の部分は零)
• G(s)のSmith-MacMillan標準形(前ページ) が得られているとき,δ1(s)δ2(s)· · ·δr(s)の次 数を, G(s)のMcMillan次数という.
• 続いて,有理関数行列の行列分解表現につい て述べる.
• G(s) ∈ M(m, n;K(s))に対し, G(s)の行列 分解表現とは,以下のいずれかの表現である.
⊲ 左分解表現: G(s) = D−1L (s)NL(s)
⊲ 右分解表現: G(s) = NR(s)D−1R (s)
• 左分解表現では,DL∈M(m, m;K[s]),NL ∈ M(m, n;K[s]) (いずれも多項式行列)
• 右分解表現では,DR∈ M(n, n;K[s]),NR ∈ M(m, n;K[s]) (いずれも多項式行列)
• 行列分解表現は一意的ではない.
• G(s) = d(s)1 P(s)となっているとき, DL = d(s)Im,NL(s) =P(s)は左分解表現,NR(s) = P(s),DR=d(s)Inは右分解表現である.
• U(s) および V(s)が ユニモジュラ で, U(s)G(s)V(s) が Smith - McMillan 標準形 であるとき・・・
δr(s)
= diag(δ1(s), . . . , δr(s) 0 0 diag(1, . . . ,1)
!−1
diag(ν1(s), . . . , ν(s) 0
0 0
!
= diag(ν1(s), . . . , ν(s) 0
0 0
! diag(δ1(s), . . . , δr(s) 0 0 diag(1, . . . ,1)
!−1
DL(s) = diag(δ1(s), . . . , δr(s) 0
0 diag(1, . . . ,1) U(s), NL(s) = diag(ν1(s), . . . , ν(s) 0
0 0
!
V−1(s)は左分解表現
• 同様に,
NR(s) =U−1(s) diag(ν1(s), . . . , ν(s) 0
0 0
! ,
DR(s) =V(s) diag(δ1(s), . . . , δr(s) 0 0 diag(1, . . . ,1)
!
は右分解 表現
• G(s)の左分解表現(DL(s),NL(s))において, (DL(s),NL(s))が左素であるとき,これを左 既約分解表現という.
• G(s)の右分解表現(NR(s),DR(s)) におい て, (NR(s),DR(s))が右素であるとき,これ を右既約分解表現という.
• Smith-McMillan標準形から求めた左分解表 現は左既約, 右分解表現は右既約である.
• 斎藤,線形代数入門,東京大学出版会, 1966
• 兒玉,須田,システム制御のためのマトリクス理論,計測自動制御 学会, 1978
• 須田,線形システム理論,朝倉書店, 1993