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(1)

防 災 科 学 技 術 研 究 所 研 究 資 料

National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention, Japan

Technical Note of the National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention Technical Note of the National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention

独立行政法人

防災科学技術研究所

295

No. 295 No. 295

A Study on Strong-Motion Maps for Scenario Earthquakes in Japan Median Tectonic Line Fault Zone (Eastern Edge of the Kongo Mountains - Southern Edge of the Izumi Mountains)

中央構造線断層帯(金剛山地東縁ー和泉山脈南縁)の 地震を想定した地震動予測地図作成手法の検討

February 2006

(2)
(3)

中央構造線断層帯(金剛山地東縁

和泉山脈南縁)の 地震を想定した地震動予測地図作成手法の検討

藤原 広行・河合 伸一・青井 真・㓛刀 卓・

石井 透・早川 讓・森川 信之・小林 京子・

大井 昌弘・先名 重樹・奥村 直子

独立行政法人 防災科学技術研究所 特定プロジェクトセンター

独立行政法人防災科学技術研究所では、「地震調査研究の推進について-地震に関 する観測、測量、調査及び研究の推進についての総合的かつ基本的な施策-」(平成 11年4月)に基づき、地震調査研究推進本部地震調査委員会により進められている

「全国を概観した地震動予測地図」の作成に資するため、平成13年4月より、特定プ ロジェクト「地震動予測地図作成手法の研究」を実施しており、その研究の一環と して震源断層を特定した地震動予測地図作成手法の検討を行ってきた。

本研究資料では、中央構造線断層帯(金剛山地東縁-和泉山脈南縁)の地震を想定

した地震動予測地図作成に必要な検討を実施し、その成果をとりまとめた。本検討

結果は、地震調査研究推進本部地震調査委員会が作成する「震源断層を特定した地

震動予測地図」の具体的な作成事例に資するものとして位置づけられる。

(4)
(5)

1.はじめに 1

2.地震動予測地図作成条件 3

3.地下構造モデルの設定

3.1 地下構造モデル設定の考え方と方針 5

3.2 対象地域の地質環境 7

3.3 伝播経路モデル 11

3.4 深部地盤構造モデル 12

3.5 浅部地盤構造モデル 37

4.断層モデルの設定

4.1 震源断層の推定 47

4.2 巨視的断層パラメータの設定 53

4.3 微視的断層パラメータの設定 59

4.4 特性化震源モデル 61

5.簡便法による地震動評価

5.1 計算条件と計算方法 67

5.2 計算結果 69

6.詳細法による地震動評価

6.1 計算条件と計算方法 75

6.2 詳細法工学的基盤で評価された地震動の時刻歴と周期特性 82

6.3 詳細法工学的基盤で評価された地震動の速度最大値 111

6.4 詳細法工学的基盤から地表に至る表層地盤の速度増幅率 119

6.5 地表で評価された地震動の速度最大値と計測震度 120

(6)

7.1 詳細法による評価結果と簡便法の距離減衰式との比較 127 7.2 詳細法による Case1 と Case2 の評価結果の比較 130 7.3 疑似速度応答スペクトルの地図への応用の試み 134

7.4 結果の考察 138

8.おわりに 139

付録A.簡便法計算手法 141

付録B.詳細法計算手法 145

参考文献 155

謝辞 167

(7)

- 1 -

1.はじめに

独立行政法人防災科学技術研究所では、地震調査研究推進本部地震調査委員 会が進めている「全国を概観した地震動予測地図」の作成に資するため、平成 13 年 4 月より、特定プロジェクト「地震動予測地図作成手法の研究」を開始し、

地震調査委員会及び関連する部会・分科会の指導の下に、実際の地震動予測地 図作成に関する作業を実施している。地震動予測地図には「確率論的手法によ る地震動予測地図」と「震源断層を特定した地震動予測地図」の2種類あるが、

本研究資料では、後者の震源断層を特定した地震動予測地図のうち、特に、中 央構造線断層帯(金剛山地東縁和泉山脈南縁)の地震を想定した強震動評価 に関する検討をまとめた。

本研究資料では、地震調査委員会から公表された「中央構造線断層帯(金剛 山地東縁伊予灘)の長期評価について」(平成15年2月12日)の評価結果 に基づき、地震動の計算に必要なパラメータの設定、具体的には、地震動予測 地図作成領域の設定、強震動予測に必要な三次元地下構造モデルと特性化され た断層モデルの設定を行った。次に、経験的距離減衰式を用いた簡便法および 高精度な広帯域ハイブリッド法を用いた詳細法により地震動を計算し、地震動 予測地図作成のために必要な検討を実施した。

(8)
(9)

- 3 -

2.地震動予測地図作成条件

図 2-1 に、地震動予測地図作成領域を示す。本検討では、中央構造線断層帯(金 剛山地東縁-和泉山脈南縁)の地震を想定して、簡便法( 付録 A 参照 )と詳細 法( 付録 B 参照 )によりそれぞれ地震動を評価し、地震動予測地図を作成する。

図 21 の全領域が簡便法による地震動予測地図作成領域で、その範囲は次の通 りである。

東経 134.0°~136.5° 北緯 33.5°~35.5°

図中の矩形領域は詳細法による地震動予測地図作成領域で、後述( 6 章 )す るように、実際には、簡便法による地震動評価結果をも踏まえて設定したもの である。詳細法による地震動予測地図作成領域は 115 km × 100 km の矩形領域 で、東西方向を x 方向、南北方向を y 方向とする直交座標系で扱い、領域の四 隅の x 座標と y 座標( 単位:km )およびそれらの計算機上での東経と北緯( 単 位:度 )を併記すると次のようになる。

x [km] y [km] 東経 [deg] 北緯 [deg]

0 0 134.700000 34.900000 115 0 135.949429 34.900000 0 100 134.700000 33.998615 115 100 135.949429 33.998615

また、図中の△印は詳細法工学的基盤での時刻歴例示地点で、後述( 6 章 )す るように、実際には、断層との相対位置関係から見て特徴的な地震動になると 判断される地点や地域の中心都市の地方自治体中央庁舎位置等に最も近い格子 点の中から 10 地点を選んだものである。以下に、各地点の 略号・施設名・東経・

北緯(各々60 分法表示と度単位小数表示)を列挙する。

NAR 奈良市役所 135 48 28 135.8078 34 40 55 34.68194 KAS 橿原市役所 135 47 43 135.7953 34 30 22 34.50611 OSA 大阪此花 135 23 33 135.3924 34 39 34 34.65950 SAK 堺市役所 135 29 08 135.4856 34 34 14 34.57056 IZU 和泉市役所 135 25 25 135.4236 34 29 01 34.48361

(10)

SEN 泉南市役所 135 16 25 135.2736 34 21 58 34.36611 KAN 関西空港 135 14 50 135.2472 34 25 50 34.43056 WAK 和歌山市役所 135 10 25 135.1736 34 13 38 34.22722 KOB 神戸市役所 135 11 54 135.1983 34 41 13 34.68694 SUM 洲本市役所 134 53 54 134.8983 34 20 21 34.33917

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(11)

- 5 -

3.地下構造モデルの設定

3.1 地下構造モデル設定の考え方と方針

地表における地震動予測計算に必要とされる地下構造モデルとしては、図 3.1-1 に示すように震源から地表までを対象としている。地下構造モデルを作成 するには、必要となる資料やモデル作成の手法によって、以下のモデルを設定 する必要がある。

・伝播経路モデル:震源から対象地域の地震基盤までの広域の地下構造

・深部地盤構造モデル:対象地域の地震基盤から工学的基盤までの地下構造

・浅部地盤構造モデル:対象地域の工学的基盤から地表までの地下構造 地震基盤とは、S波速度で 3km/s 程度以上の地層

工学的基盤とは、S波速度で 400m/s 程度の地層

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図 3.1-1 地震動の伝播経路と地下構造モデル

3.1.1 伝播経路モデル

伝播経路モデルの対象範囲は、想定地震の断層モデルが平面的にも深さ方向

(12)

にも十分入る領域とする。したがって、プレート、上部マントル、下部地殻、

上部地殻が含まれ、深さは 40km 程度までを考える。

伝播経路モデルの設定に際しては、文献調査を行い、最新の知見を反映させ ることを基本とする。必要なパラメータは、層厚、P波速度、S波速度、密度、

Q値(Qp、Qs)である。

3.1.2 深部地盤構造モデル

深部地盤構造モデルの対象範囲は、地震基盤以浅で工学的基盤までの地層を 対象とする。深部地盤構造モデルの設定に際しては、伝播経路モデルの設定と 同様に文献調査を行い、最新の知見を反映させることを基本とする。

伝播経路モデルおよび深部地盤構造モデルにおいては、理論的評価手法による 地震動の計算を行うことから、3次元のモデル化を行う。

3.1.3 浅部地盤構造モデル

浅部地盤構造モデルの対象範囲は、工学的基盤から地表までの地層を対象とす る。浅部地盤構造モデルの作成の考え方は次の地震動算出の考え方によって2 種類モデルの作成を行った。

①計算対象範囲及びその周辺地域を簡易的な手法によって地震動を算出する 方法として、国土数値情報の微地形区分を用いた増幅倍率を求める。

②ハイブリッド法によって算出された工学的基盤における地震波形を用いて 応答計算によって地表の地震動を求めるための地盤モデルの作成。

本検討では、①の考え方に基づいて浅部地盤構造のモデル化を行うこととし、

国土数値情報が基準地域メッシュ(第三次地域区画)(約 1km×1km メッシュ)

となっていることから、基準地域メッシュごとに微地形分類を行い、松岡・翠 川(1994)および藤本・翠川(2003)の方法によって増幅倍率を求める。

(13)

3.2 対象地域の地質環境

- 7 - 3.2 対象地域の地質環境

本検討では、中央構造線断層帯(金剛山地東縁 和泉山脈南縁)を起震断層 とする地震動予測地図を作成するため、中国地方東部、四国地方中央部 近畿 地方 中部地方西部にかけての地域を検討対象地域とした。

検討地域のうち、近江・京都・奈良盆地および大阪平野は、「琵琶湖西岸断層 帯」(地震調査委員会、2004; 防災科学技術研究所、2005)で、姫路、岡山、香 川の各平野部は「山崎断層帯」(地震調査委員会、2005; 防災科学技術研究所、

2006)で深い地盤構造モデルを作成している。また、濃尾平野は愛知県(2003)、

伊勢平野は三重県(2003)がモデルを作成している。既に構造モデルが作成さ れている地域については既往モデルを活用し、今回新たに作成する紀伊半島 四国地域と既往のモデルをつなぐことにより、中四国から中部地方にかけての 深部地盤構造モデルを検討した。

新たに深い地盤構造モデルを作成する紀伊半島 四国の地質について以下に 述べる。

図 3.2-1 に地質平面図、表 3.2-1 に地質構成、図 3.2-2 に重力ブーゲー異常分布 図を示す。本地域の地質は、ジュラ紀から第三紀に及ぶ付加体、花崗岩類、中 央構造線(以下、MTL と略称)の活動により形成された和泉層群および鮮新 更新統などからなる。

(1)付加体

本地域の地質は東西方向にのびる帯状配列で特徴づけられ、これらの地質の 多くは、プレートテクトニクスにより形成された付加体と花崗岩類からなる。

MTL を境として、北側の西南日本内帯と南側の西南日本外帯に区分され、紀伊 半島 四国地方の内帯は北から領家帯、和泉帯、外帯は北から南へ三波川帯、

御荷鉾帯、秩父帯、四万十帯からなる。これらのうち、和泉層群を除いて付加 体である。

領家帯、三波川帯、御荷鉾帯、秩父帯の速度は、新鮮部のP波速度で 5km/s 以上を示し地震基盤と見なせる地質体である。

四万十帯は北帯と南帯に区分される。北帯は白亜紀の付加体であり、南帯は

古第三紀 新第三紀前期中新世の付加体である。南帯は付加年代が新しく固結

度がやや小さい。既往の地殻構造探査によると、地震基盤に相当する速度層は

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南に向かって深くなる傾向がある(伊藤ほか,1982;蔵下ほか,2002 など)。こ れは、四国地方の付加体が北から南へ形成年代が新しくなるためと推定される。

(2)和泉層群

和泉層群は後期白亜紀における MTL の左横ずれに伴い形成された堆積盆の堆 積岩類である。紀伊半島中部から四国にかけて、MTL の北側にほぼ東西方向に 細長く分布している。その南限は MTL により切られ、三波川変成岩類および鮮 新更新統に接している。本層のP波速度は新鮮部でも 3.54.0km/s である(伊 藤ほか,1996;吉川ほか,1992)。層厚は最大 3,000m 以上である。

(3)中央構造線沿いの鮮新更新統

MTL 沿いの平野や丘陵地には、鮮新更新世の未固結な堆積物が分布してい る。MTL の活動により形成された堆積盆地の堆積物であり、和歌山の紀ノ川沿 いでは菖蒲谷層、徳島の吉野川沿いでは土柱層、愛媛県東部では岡村層と呼ば れている。これらの地層は、大阪層群とほぼ同じ時期の堆積物である。徳島平 野から鳴門海峡および紀淡海峡で特に厚く堆積しており、層厚は最大約 2,100m である(横倉ほか,1998)。

(4)四国・紀伊半島沖の海域

四国沖および紀伊半島沖の大陸棚、前弧海盆(土佐海盆・熊野舟状海盆)、下 部大陸斜面には新第三紀第四紀の堆積岩類が分布している。その基盤は第三 紀の付加体である(地質調査所,1986,1987)。海底地震計(OBS)による地震 探査(Kodaira et al., 2000a, 2000b など)によると、地震基盤に相当する速度層の 深さは 78km である。

Kodaira et al.(2000a, 2000b) によると、外縁隆起帯である土佐碆(とさばえ)

は水深 200m 以下の顕著な隆起帯をなすが、23km/s の速度層は、土佐海盆と 土佐碆でほぼ同じ厚さである。

(5)その他の地質

紀伊半島南部には、新第三紀中新世の田辺層群、熊野層群、熊野酸性岩類が

(15)

3.2 対象地域の地質環境

- 9 - 分布している。

愛媛県松山市の南東には、古第三紀の久万層群と新第三紀中新世の石鎚層群 が分布している。

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図 3.2-1 地質平面図

100

万分の

1

日本地質図第

3

CD-ROM

版(地質調査所、1992)

表 3.2-1 紀伊半島~四国の地質構成

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図 3.2-2 ブーゲー異常分布図(補正密度 2.67g/cm

3

日本重力 CD-ROM(地質調査所、2000)

(17)

3.3 伝播経路モデル

- 11 -

3.3 伝播経路モデル

震源モデルから地震基盤までの伝播経路のモデルについては、図 3.3-1 に示す ように設定した。

深い地盤構造モデルで作成する地震基盤層の下、深度 4km に地震発生層とし てP波速度 6.0km/s の層を設定した。モホ面とコンラッド面の深度とP波速度は、

Zhao and Hasegawa (1993) を参考に深度約 16km と深度約 35km に 6.7km/s と 7.8km/s として設定した。P波速度は各グリッドにおける速度値の平均値とした。

Zhao and Hasegawa (1993) ではP波速度のみが求められているため、S波速度・

密度は Ludwig et al. (1970) により求めた。本地域の物性値を表 3.3-1 に示す。

表 3.3-1 物性値一覧

Vp=6.0km/s Vs=3.4km/s ǹ=2.7g/cm3

Vp=7.8km/s Vs=4.4km/s ǹ=3.3g/cm3

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図 3.3-1 中央構造線断層帯(金剛山地東縁 和泉山脈南縁)の地震を想定した 強震動評価における伝播経路モデルの模式断面図

速度層 P波速度

(km/s)

S波速度 (km/s)

密度 (g/cm3) 地震発生層上面~コンラッド面 6.0 3.4 2.7

コンラッド面~モホ面 6.7 3.8 2.9 モホ面以深 6.7 3.8 2.9

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3.4 深部地盤構造モデル

3.4.1 深部地盤構造モデル作成の手順

中央構造線断層帯(金剛山地東縁和泉山脈南縁)を起震断層とする地震動 予測地図を作成する目的で、中国地方東部、四国地方中央部近畿地方中部 地方西部にかけての地域の深い地盤構造モデルを検討した。

検討地域のうち、近江・京都・奈良盆地および大阪平野については「琵琶湖 西岸断層帯」で、姫路、岡山、香川の各平野部については「山崎断層帯」で深 い地盤構造モデルを作成している。また、濃尾平野は愛知県(2003)、伊勢平野 は三重県(2003)がモデルを作成している。

本検討では、モデル未作成の紀伊半島四国地域の深い地盤構造モデルを作 成し、既往モデルとつなぎ合わせることにより、中四国から中部地方にかけて の深い地盤構造モデルを検討した。

なお、上記「琵琶湖西岸断層帯」および「山崎断層帯」における深部地盤構 造モデル作成の詳細は、それぞれ既刊されている防災科学技術研究所研究資料

(防災科学技術研究所、2005, 2006)を参照されたい。

3.4.2 文献の収集・整理

図 3.4-1 に文献位置図を示す。紀伊半島、四国、および紀伊半島・四国沖海域 の文献について述べる。

(1)紀伊半島

紀伊半島では文献 8(吉井ほか,1990)の屈折法地震探査があるが、観測デー タのみで速度構造図は公表されていない。紀ノ川沿いの MTL を南北に横断する 反射法地震探査として、文献 11(吉川ほか,1992)がある。吉川ほか(1992)

によると、MTL は北に緩く傾斜しており、MTL を境として和泉層群と鮮新更 新統が接している。鮮新更新統の厚さは約 750m である。

紀淡海峡では文献 15(横倉ほか,1998)の反射法地震探査がある。これによ ると、鮮新更新統の厚さは約 2,100m である。佃(1997)は淡路島南方海域で 空中重力探査を行っている。これによると、淡路島南方の沼島(ぬしま)から徳島 県小松島市にかけて、北東南西方向の高重力異常がある。これを境にして、

(19)

3.4 深部地盤構造モデル

- 13 -

鮮新更新統の堆積盆地は東側の紀淡海峡和歌山平野と西側の鳴門海峡徳 島平野に分かれる。

(2)四国

四国では文献 5(伊藤ほか,1982)、6(伊神ほか,1982)、7(井上ほか,1984)、

26(蔵下ほか,2002)などの屈折法地震探査がある。これらの探査は地殻構造 探査を目的としたものであり、地震基盤より上位の速度構造は分解能が悪い。

このため、深い地盤構造モデルの検討にあたっては、速度データとしては使用 しなかった。

四国の MTL 沿いの反射法地震探査として、文献 13(佃・佐藤,1996)、14(伊 藤ほか,1996)、17(池田ほか,2003)がある。伊藤ほか(1996)の反射法地震 探査によると、MTL は約 45゜北へ傾斜しており、和泉層群と鮮新更新統(土 柱層)が接しており、鮮新更新統の厚さは約 600m である。和泉層群と領家帯 の境界は、約 30゜南に傾斜しており、深部で MTL に切断される。和泉層群の厚 さは約 3,000m である。和泉層群は四国から紀伊半島中部にかけて、MTL の北側 に東北東西南西方向に細長く分布している。他の地域における和泉層群の形 状は、本論文に基づいて推定した。

徳島平野の地下構造は佃・佐藤(1996)、森野ほか(2001)により検討されて いる。MTL は阿讃山地と徳島平野の地形境界から 500m1km 南側をとおる。既 存ボーリングによると、MTL から北側では 1050m の深さで和泉層群に達する が、南側では鮮新更新統の厚さは約 1,500m である。

(3)紀伊半島・四国沖海域

海底地震計による地震探査があるが、速度構造断面が公表されているのは文献 19(西坂ほか,1997)、20(Sato et al., 1998b)、24(Kodaira et al., 2000a)、25(Kodaira et al., 2000b)である。

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110 は屈折法地震探査、1126 は反射法・屈折法地震探査、27 は重力探査。近江・京都・奈 良盆地、大阪・濃尾・伊勢平野は除く。

1:市川(1968) 2:通商産業省(1970) 3:Yoshii et al.(1974) 4:青木・村松(1974) 5:伊藤ほか(1982) 6:伊神 ほか(1982) 7:井上ほか(1984) 8:吉井ほか(1990) 9:RGES(1995) 10:RGES(1997a) 11:吉川ほか(1992) 12:由佐ほか(1992) 13:佃・佐藤(1996) 14:伊藤ほか(1996) 15:横倉ほか(1998) 16:Sato et al.(1998a) 17:

池田ほか(2003) 18:鳥取県(2003) 19:西坂ほか(1997) 20:Sato et al.(1998b) 21:Mochizukiet al.(1998) 22:Nakanishi et al.(1999) 23:Takahashi et al.(1999) 24:Kodaira et al.(2000a) 25:Kodaira et al.(2000b) 26:

蔵下ほか(2002) 27:大野ほか(1994)

(21)

3.4 深部地盤構造モデル

- 15 -

3.4.3 地質構造モデルの作成

紀伊半島四国にかけては、多数の屈折法地震探査があるが、これらは地殻構 造探査を目的としたものであり、地震基盤より上位の速度構造は分解能が悪く、

地震基盤より上位の速度構造モデルを作成する際のデータとはならない。その ため、反射法地震探査と地質解釈により地質構造モデルを作成した。

紀伊半島四国の大部分は基盤岩類が露出した山地よりなる。主な堆積岩類は MTL 沿いに分布している和泉層群と鮮新更新統である。

(1)和泉層群の分布

伊藤ほか(1996)に示される構造が東西方向に続くと考え、和泉層群の三次 元的な分布を推定した。

(2)鮮新更新統の分布

紀伊半島の紀ノ川沿いでは、東から西へ鮮新更新統の層厚が厚くなる。根 来断層付近で厚さは約 750m(吉川ほか,1992)であり、紀淡海峡で最大約 2,100m

(横倉ほか,1998)になる。これらのデータを基に、本層の厚さを東西方向に 比例配分的に変化させて面的な分布を推定した。

四国の吉野川沿いでは、西から東へ鮮新更新統の層厚が厚くなる。沖積低 地西端の池田町で 76m(岡田,1968)、父尾断層付近で約 600m(伊藤ほか,1996)、

徳島平野で約 1,500m(佃・佐藤,1996;森野ほか,2001)である。吉野川沿い についても紀ノ川沿いと同様、厚さを東西方向に比例配分的に変化させ面的な 分布を推定した。

愛媛県の西条市では、川上断層と岡村断層に挟まれた地域がプルアパートベ イズンをなし、鮮新更新統が約 500m の厚さで分布している(西条市地下水調 査資料)。

(3)紀伊半島・四国沖海域

Kodaira et al.(2000a,2000b)、西坂ほか(1997)の速度構造断面に基づいてモ デルを作成した。これらの速度構造断面では、新第三紀第四紀の堆積岩類と 付加体は明瞭に区分されていない。そのため、地質的な解釈は避けて、速度層 境界としてモデルを検討した。

(22)

3.4.4 速度層区分

紀伊半島四国では、地殻構造探査を除いて速度値に関する文献はない。周 辺地域の物性値を参考にして、地質とP波速度の関係を検討した。

(1)周辺地域における深い地盤構造モデルの物性値

表 3.4-1 に既往資料による大阪平野、京都盆地、近江盆地、および濃尾平野の 物性値を示す。

①大阪平野

香川ほか(2003)による。当地域は、基盤岩類の上に大阪層群が分布して いる。モデルでは大阪層群を3層(速度層13)に区分されている。

②京都盆地

京都市(2003)による。当地域は、反射法地震探査により、地質構造モデル を作成し、地層の堆積年代・深度とP波速度の関係から、速度値を設定して いる。このモデルは地層の堆積年代と深度の積とP波速度の関係式で表され るが、今回設定する速度値に相当する深度を求め、モデルに取り込んだ。

③近江盆地

「琵琶湖西岸断層帯」で作成した深部地盤構造モデルによる。当地域は、

鮮新更新統を3層に区分している。

④濃尾平野

愛知県(2003)による。反射法地震探査結果などから地質構造モデルを作 成し、地層ごとに深度とP波速度の関係式を求め、速度値を設定している。

今回のモデル作成に用いる速度と深さは、今回設定する速度値に対応する深 度を関係式から求め、モデルに取り込んだ。

⑤伊勢平野

三重県(2003)による。当地域では、微動アレイ探査を実施し、重力デー タを参考に地震基盤相当層の深度分布図を作成している。しかし、地震基盤 より上位の地層のモデル化がなされていないため、地震基盤データのみを取

(23)

3.4 深部地盤構造モデル

- 17 -

表 3.4-1 紀伊半島 四国周辺地域の速度層区分

(1) 大阪平野(香川ほか,2003)

速度層 P波速度(km/s) S波速度(km/s) 密度(g/cm

1 1.60 0.35 1.7

2 1.80 0.55 1.8

3 2.50 1.00 2.1

4 5.40 3.20 2.7

(2) 京都盆地(京都市,2003)

速度層 P波速度(m/s) S波速度(km/s)

密度(g/cm

堆積層

(大阪層群など)

Vp=Vo+a*(T*D)b

盆地内を10ブロック(一部地区は さらに細区分)に分割し、区分ご とに係数(Vo,a,b)を設定

Gassmann(1951) の関係式

基盤岩類 基盤岩上面からの深度とP波速度

の関係を考慮 Gassmann(1951) の関係式

T: 堆積年代(万年)、D:深度(m)

(3) 近江盆地(琵琶湖西岸断層帯)

速度層 P波速度(km/s) S波速度(km/s) 密度(g/cm

1 1.6 0.39 1.8

2 1.8 0.43 1.9

3 2.0 0.62 2.0

4 2.2 0.75 2.0

5 2.5 0.95 2.2

6 3.8 1.8 2.4

7 4.4 2.2 2.5

8 5.2 3.1 2.6

(24)

表 3.4-1 紀伊半島 四国周辺地域の速度層区分(つづき)

(4) 濃尾平野(愛知県,2003)

速度層 P波速度(m/s) S波速度(m/s) 密度(g/cm) 1 1143*D0.111 277*D0.141 1.76*(Vp/1000)0.239 2 1381*D0.082 290*D0.174 1.76*(Vp/1000)0.239 3 0.406*D+2708 0.362*D+1053 1.76*(Vp/1000)0.239 4 5500 3000 2.6

D:深度(m)

(2)紀伊半島四国の速度層区分

①地震基盤

近江盆地、大阪平野、および中国地方では、地震基盤のP波速度は 5.2km/s に設定されている。四国における地殻構造探査によると、地震基盤のP波速 度は 5.56.1km/s(青木・村松,1974;市川,1968;伊神ほか,1982;井上ほ か,1984;伊藤ほか,1982;木村,1979)である。基盤岩類の種類により地 震基盤のP波速度は異なるものと考えられるが、周辺地域の速度も考慮し、

5.2km/s とする。

②和泉層群

伊藤ほか(1996)、吉川ほか(1992)および Hi-net によると、和泉層群のP 波速度は 2.74.2km/s の範囲内にあり、新鮮部では 3.54.0km/s 程度である。

③鮮新更新統

紀伊半島四国における鮮新更新統についての速度データはない。当地 域に分布する土柱層および相当層は、大阪層群に対応する地層と考えられる ため大阪平野における速度層区分(香川ほか,2003)に準ずる。

表 3.4-2 に各地域で用いられている速度層区分を示す。紀伊半島四国の深部 地盤構造モデルは、周辺地域を含めたモデルとするため、大阪平野、京都盆地、

近江盆地、濃尾平野で設定されたすべての速度層を使った区分とした。速度層

(25)

3.4 深部地盤構造モデル

- 19 -

は19であり、細分されているように見えるが、速度層15は各地域にお ける鮮新更新統の区分である。

表3.4-2 各地域の速度層区分

速度層 P波速度

(km/s)

大阪 京都 近江 濃尾 中国地方 紀伊・四国

1 1.6 ○ ○ ○ ○

2 1.8 ○ ○ ○ ○ ○

3 2.0 ○ ○

4 2.2 ○ ○

5 2.5 ○ ○ ○

6 3.3 ○ ○ ○

7 3.8 ○ ○ ○

8 4.4 ○ ○ ○

9 5.2 ○ ○ ○ ○ ○ ○

3.4.5 山地における基盤岩類の風化帯の設定

KiK-net および K-NET により、山地部の風化帯の厚さを検討した。図 3.4-2 に 山地部におけるP波速度と深度の関係を示す。図には「山崎断層帯」を対象と した、中国地方と紀伊半島四国の関係図も示してある。両地域ともほぼ同様 の関係になったため、「山崎断層帯」と同じに設定した。

(26)

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図 3.4-2 山地部におけるP波速度と深度の関係

(27)

3.4 深部地盤構造モデル

- 21 -

3.4.6 物性値の設定

図 3.4-3 にP波とS波速度の関係図を示す。図には「山崎断層帯」を対象とし た中国地方と「中央構造線断層帯(金剛山地東縁和泉山脈南縁)」を対象とし た紀伊半島四国の関係式を示しているが、両者はほぼ同じ関係になる。

P波速度とS波速度の関係式は次のとおりである。

Vp 2.0km/s 未満 : Vs=0.1620Vp+0.0836 Vp 2.05.0km/s : Vs=0.5656Vp-0.5377

地震基盤のS波速度は、山崎断層帯で設定している 3.1km/s とした。密度は Ludwig et al. (1970) の関係図(図 3.4-4)から求めた。

紀伊半島四国を含む中国地方東部から中部地方西部地域の物性値を表 3.4-3 に示す。

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図 3.4-3 P波とS波速度の関係図

(28)

図 3.4-4 Ludwig et al. (1970) によるP およびS 波速度と密度の関係

(紀伊半島四国地域の物性値を◆および■で示す)

表3.4-3 地盤構造モデルの物性値

速度層 P波速度

()

S波速度

() 密度(

(29)

3.4 深部地盤構造モデル

- 23 -

3.4.7 3次元速度構造モデルの作成

図 3.4-5 (1)(8) に各速度層上面標高のコンターを示す。また、図 3.4-6 (1) (5) に南北方向の断面図を示す。

海域を除く地震基盤の最深部は、MTL の北側に位置し、東西方向に細長くの びる。これは和泉層群の分布と一致する。

P波速度 3.3km/s 層上面(鮮新更新統の基底)は、和歌山平野、徳島平野の MTL に沿って、1,5002,000m と深くなっている。

図 3.4-7 に浅いボーリングデータによる工学的基盤(N値 50 以上の上面)の 深度コンター図、図 3.4-8 に使用したボーリングデータ位置図を示す。工学的基 盤は、浅いボーリング資料を収集・整理し、N値 50 以上が3回連続する深さを 工学的基盤とした。

(30)

ᮡ㜞 [m]

図 3.4-5 (1) Vp 1.8km/s 層上面標高

(31)

3.4 深部地盤構造モデル

- 25 -

ᮡ㜞 [m]

図 3.4-5 (2) Vp 2.0km/s 層上面標高

(32)

ᮡ㜞 [m]

図 3.4-5 (3) Vp 2.2km/s 層上面標高

(33)

3.4 深部地盤構造モデル

- 27 -

ᮡ㜞 [m]

図 3.4-5 (4) Vp 2.5km/s 層上面標高

(34)

ᮡ㜞 [m]

図 3.4-5 (5) Vp 3.3km/s 層上面標高

(35)

3.4 深部地盤構造モデル

- 29 -

ᮡ㜞 [m]

図 3.4-5 (6) Vp 3.8km/s 層上面標高

(36)

ᮡ㜞 [m]

図 3.4-5 (7) Vp 4.4km/s 層上面標高

(37)

3.4 深部地盤構造モデル

- 31 -

ᮡ㜞 [m]

図 3.4-5 (8) Vp 5.2km/s 層上面標高

(38)

図 3.4-6 (1) 南北方向断面図(東経 134.55 度)

図 3.4-6 (2) 南北方向断面図(東経 134.95 度)

(39)

3.4 深部地盤構造モデル

- 33 -

図 3.4-6 (3) 南北方向断面図(東経 135.20 度)

図 3.4-6 (4) 南北方向断面図(東経 136.00 度)

(40)

図 3.4-6 (5) 南北方向断面図(東経 136.60 度)

(41)

3.4 深部地盤構造モデル

- 35 -

ᷓᐲ [m]

図 3.4-7 工学的基盤(N値50以上)の深度分布

(42)

図 3.4-8 浅いボーリング位置およびN値50以上となる深さ

(43)

3.5 浅部地盤構造モデル

- 37 -

3.5 浅部地盤構造モデル

浅部地盤構造モデルは、国土数値情報の地形・地質データおよび標高データ をもとに表層地盤の増幅倍率を求めることとした。

3.5.1 国土数値情報を用いた表層地盤の増幅率評価の基本的な考え方

地震動評価における表層地盤の増幅率評価については、簡易的に地盤の増幅度 を全国同水準に求めることを前提に考える。

評価方法は、国土数値情報に含まれる地形学的情報が全国を網羅しているので、

これを用いた経験式から、地表から工学的基盤までの表層地盤の平均S波速度 を推定し、さらに、これと表層地盤の増幅度の関係を表す経験式から表層地盤 の増幅度を求める。工学的基盤における地震動強さ(最大速度)に表層地盤の 増幅度をかけることにより、地表の地震動強さが求められる。

松岡・翠川(1994)は、地盤情報を含むデータが日本全国 1km メッシュでデ ータベース化されている国土数値情報を用いる方法を提案している。しかし、

松岡・翠川(1994)では、平均S波速度を推定するための経験式を作成する際 に用いたデータが関東のデータであったため、この経験式を全国的に用いるに は問題があった。

その後、藤本・翠川(2003)は、全国のPS検層データから地盤の平均S波速 度を求めるように提案した。

ここでは、藤本・翠川(2003)の方法を用いて地盤の増幅度の評価を行った。

3.5.2 増幅率評価に用いる国土数値情報および地質図

地盤を一律に細かく評価した資料として、国土数値情報(国土交通省国土地 理院)や 100 万分の 1 地質図(独立行政法人産業技術総合研究所地質調査総合 センター)などがある。前者については地形分類、海岸線、主要河川、標高の データ、後者については表層地質分布から地質年代のデータを使用する事がで きる。このうち、地形分類のデータは、全国を約 1km のメッシュに分けて、メ ッシュごとに評価されている。しかし、これは県を単位とした分析であり、県 によって評価の精度が違ったり、表現が異なったりしており、全国的には統一 的でない部分もある。また、これらのデータは主に昭和 40 年代に作成されたた めにその後に埋め立てられたり、造成されたりした地域のデータは含まれてい

(44)

ない。以上の点を踏まえ、対象地域の地形分類データについて統一的に見直す 作業を行った。

表 3.5-1 に国土数値情報による地形分類および表層地質分類と藤本・翠川

(2003)による微地形区分との関係を示す。ここでは表 3.5-1 の対応関係を基本 として、藤本・翠川(2003)の微地形区分への分類を行うこととした。

なお、以下の2点について、新たに考慮することとした。

①微地形区分の「他の地形(沖積・洪積)」の見直し

国土数値情報を用いた微地形区分の中にある「他の地形(沖積・洪積)」と いう分類は、その大半が第四紀に噴火した火山の地形であるが、同地域の地質 図と比較すると第三紀以前の岩盤が露出している地域が混在している箇所が 多く見られた。そこで、「他の地形(沖積・洪積)」に分類される地域の地質図 と照らし合わせて、再分類を行った。

②微地形区分がなされていないメッシュの再評価

国土数値情報では、湖や海沿いにおいて 1km メッシュの大半が水面部であ る場合は対象から除外している。このため、メッシュ内に陸がわずかに存在す る場合でも、微地形区分が抜けている場合がある。そこで、データが抜けてい る湖および海沿いのメッシュに対して微地形ないしは地質を追加する作業を 行った。

(45)

3.5 浅部地盤構造モデル

- 39 -

表 3.5-1 国土数値情報による地形分類および表層地質分類 と藤本・翠川(2003)による微地形区分との関係

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(46)

3.5.3 表層地盤の増幅の評価

表層地盤の増幅の評価については、前節で示した地震動評価のための微地形 区分ごとに平均S波を設定し、その平均S波速度から増幅度を算定する方法を 採用した。今回採用した藤本・翠川(2003)では、松岡・翠川(1994)によって示 された式(3.5-1)の関係を用いて、図3.5-1に示すような3つに区分された地域

(東北日本・中央日本・西南日本)の微地形区分ごとの平均S波速度を算定し ている。図3.5-2に微地形区分ごとの標高または主要河川からの距離と平均S波 速度の関係を示し、それにより求められている式(3.5-1)の係数を表3.5-2に示 す。

±

+

+

=a b LogH c LogD

LogAVS (3.5-1)

AVS ;地表から地下 30m までの推定平均 S 波速度(m/s) a,b,c,σ ;係数(表 3.5-2)

H ;標高(m)

D ;主要河川からの距離(km)

図 3.5-1 主要構造線に基づく日本列島の地域分け

藤本・翠川(2003)

(47)

3.5 浅部地盤構造モデル

- 41 -

図 3.5-2 地域ごとの微地形区分と地盤の平均 S 波速度

藤本・翠川(2003)

(48)

表 3.5-2 式(3.5-1)における微地形区分ごとの係数

C D E

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表中の地域は E: 東北日本、C: 中央日本、W: 西南日本、a, b, c は 式(3.5-1)の回帰係数、σは標準偏差。

(藤本・翠川 (2003) による)

(49)

3.5 浅部地盤構造モデル

- 43 -

また、それぞれの微地形区分における標高のデータに係る係数“b”と主要河 川からの最短距離に係る係数“c”は、実測値データを元に決定した関数による ものであるため、表 3.5-3 および表 3.5-4 に示す有効な範囲を設定した。

表 3.5-3 係数“b”の標高の範囲

表 3.5-4 係数“c”の主要河川からの最短距離の範囲

松岡・翠川(1994)は、第三紀ないしそれ以前の丘陵地(AVS が 600m/s 程度)

を基準とした表層地盤の速度増幅度について、式(3.5-2)を用いて算定するこ とを提案している。

16 . 0 66

. 0 83 .

1 ±

= LogAVS

LogARV (3.5-2)

(100<AVS<1500)

AVS;地表から地下 30m までの推定平均S波速度(m/s) ARV;地表から地下 30m までの速度増幅度

なお、標高値や主要河川からの距離によっては平均S波速度が 100m/s 未満と 4 4

-%

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0)3 1! 2

$*

+, ./(

'6

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#"

$#"

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(50)

なる場合が生じるが、ここでは、平均S波速度が 100m/s 未満となった場合には、

平均 S 波速度 100m/s の速度増幅度で評価するものとした。

また、式(3.5-2)は、平均S波速度が 600m/s を基準(増幅度=1.0)としてい る。今回の予測地図作成に当たっての基盤の評価は、工学的基盤(S波速度 400m/s 相当)で行うことを想定しているため、上記増幅度をS波速度 400m/s の 地盤上に適用する場合には、1.31 で割った増幅度を用いることにした。

以上までに述べた方法で、中央構造線断層帯(金剛山地東縁和泉山脈南縁)

周辺地域について、1km メッシュごとに求めた微地形区分と工学的基盤以浅の 速度増幅度の分布をそれぞれ図 3.5-3 と図 3.5-4 に示す。

(51)

3.5 浅部地盤構造モデル

- 45 -

図 3.5-3 国土数値情報を用いた藤本・翠川(2003)に基づく微地形区分の分布

(52)

図 3.5-4 藤本・翠川(2003)に基づく工学的基盤以浅の速度増幅度分布

(53)

- 47 -

4.断層モデルの設定

活断層で発生する地震の強震動評価のレシピ(地震調査委員会, 2003b, 以後

「強震動評価レシピ」と呼ぶ )により、中央構造線断層帯(金剛山地東縁伊 予灘)の長期評価結果(地震調査委員会, 2003a, 以後「長期評価」と呼ぶ)に基 づき、中央構造線断層帯(金剛山地東縁-和泉山脈南縁)地震による地震動予 測地図作成のための断層モデル(特性化震源モデル)を設定する。断層モデル の設定に必要な情報が評価されていない場合には、別途調査した上で、それら を考慮して判断・設定する。

4.1 震源断層の推定

中央構造線想定金剛和泉地震の震源断層を推定する。

4.1.1 起震断層の設定

長期評価によれば、中央構造線断層帯は 5 つの区間に区分されており、最も 東側の金剛山地東縁和泉山脈南縁の区間とは、金剛山地東縁の奈良県香芝市 から五條市付近を経て和泉山脈南縁の和歌山市付近に至る区間である( 図 4.11・図 4.12 参照 )。このうち、和歌山市付近では伏在断層( 和歌山北断層)

となっている。ここでは、和歌山北断層( 伏在断層 )以東を検討対象とする。

長期評価によれば、金剛山地東縁和泉山脈南縁の区間では、1 世紀以後 4 世 紀以前に最新活動があったと推定され、その平均的な活動間隔は約 2 千1 万 2 千年であった可能性がある。この区間での将来の活動としてマグニチュード 8.0 程度の地震が発生する可能性があり、しかも、この区間で今後 30年間に地震が 発生する可能性は日本の主な活断層の中では高いと評価されている。中央構造 線断層帯は全体としては右横ずれを主体としつつ上下方向のずれを伴う断層帯 であるが、断層帯最東端の奈良県香芝市から五條市に至る金剛山地東縁部分は 西側が相対的に隆起する逆断層となっている。

本検討では、和泉山脈南縁部分は右横ずれを主体とする断層帯と考え、この 断層帯の北側ブロックが切れている東側末端部で生じた変位( 上昇 )が長年に わたって蓄積されたことにより金剛山地東縁部分が形成されたと考える。この ような基本的な捉え方に沿って、金剛山地東縁和泉山脈南縁の区間の活動を 引き起こす地震を想定する。

(54)

図 4.1-1 中央構造線断層帯の概略

(地震調査委員会, 2003a)

図 4.1-2 中央構造線断層帯の金剛山地東縁 和泉山脈南縁の活断層位置

(55)

4.1 震源断層の推定

- 49 -

4.1.2 地震発生層の設定

長期評価によれば、断層上端の深さは0 kmとされているが、地震発生層の上 限については特に記述がない。また、地震発生層の下限の深さは約 15 km とさ れている。

近畿地方中北部では、最近の微小地震の発生分布に関する精度の高い検討が 行なわれ、地震発生層の深さが詳細に調べられている(伊藤・黒磯, 1988; 伊藤, 2002)。中央構造線断層帯の金剛山地東縁和泉山脈南縁の位置は、それらの検 討対象領域の南端付近なので、ここでは参考までに紹介する。図4.13に、近畿 中北部の地殻内地震(19762000年)の発生深さの頻度分布(伊藤, 2002)を示 す。地震発生層には明瞭な上下限があり、特に15 km 以深では地震発生数が急 激に減少して地震発生層の下限に至ることがわかる(伊藤・黒磯, 1988; 伊藤, 2002)。図4.14に、近畿中北部の地殻内地震(19762000年)の震央分布と南 北断面深さ分布(伊藤, 2002)を示す。中央構造線断層帯の金剛山地東縁和泉 山脈南縁の位置は図中のBD断面の左端( 南端 )付近に相当する。伊藤(2002)

は、特に震源精度の高い南半分では上下限がはっきりしていること、下部地殻 だけでなく地殻表層部の数 km には地震が発生しないかまたは非常に少ないこ と、少数の地震が下部地殻に発生しているように見えるのは震源決定誤差によ るもので実際には地震が発生していないことなどを指摘している。更に、その ような誤差を考慮して震源の分布密度から統計的に地震発生層の上下限を定め、

地震発生層の上限・下限・中央の深さは正相関にあって上限深さの空間変化は 下限深さの空間変化と概略的に同じであること(つまり上限が深いところでは 下限も深い)、地震発生層の厚さが約10 kmであることを解明している。

図4.15に、最近のデータを含むデータベース(1997.10.012004.05.04)を用 いて気象庁により作成された中央構造線断層帯(金剛山地東縁和泉山脈南縁)

周辺の地殻内地震の地震活動(震央分布と深さ分布)を示す。地震発生分布の 全体的な傾向は前述の各研究結果と同様である。長大な断層帯沿いの短期間(6 年半)の地震活動なので地点によるばらつきはあるが、全体として見ると、中 央構造線断層帯付近での地震発生層の上限深さは約 45 km、下限深さは約 14 15 km 程度に見える。

また、地下構造モデルの検討結果(3章)によると、中央構造線断層帯沿いの 堆積層厚は、深い場所では 4 km近くになることが明らかになっている。

以上に基づき、本検討では、中央構造線想定金剛和泉地震の特性化震源モデ

(56)

ルの断層上端深さを4 km とし、断層下端深さを15 km とする。

図 4.1-3 近畿中北部の地殻内地震(1976 2000 年)の発生深さの頻度分布

(伊藤, 2002)

(57)

4.1 震源断層の推定

- 51 -

図 4.1-4 近畿中北部の地殻内地震(1976 2000 年)の震央分布と

南北断面深さ分布( 伊藤, 2002 )

(58)

15!0 2 "3

16!0 2"3

図 4.1-5 中央構造線断層帯( 金剛山地東縁 和泉山脈南縁 )周辺の地震活動

( 1997.10.012004.05.04 , 気象庁作成 )

(59)

4.2 巨視的断層パラメータの設定

- 53 -

4.2 巨視的断層パラメータの設定

中央構造線想定金剛和泉地震の震源断層の推定結果に基づいて、巨視的断層 パラメータを設定する。

4.2.1 断層の位置と走向の設定

長期評価(地震調査委員会, 2003a)による断層帯の位置に概ね対応させるよ うに、中央構造線想定金剛和泉地震の位置と走向を設定する。ここでは前述の ように、和泉山脈南縁部分は右横ずれを主体とする断層帯と考え、その北側ブ ロックの東側末端部に逆断層の金剛山地東縁部分が形成されたと考える。断層 帯を構成する多くの活断層を細かく見ると複雑に分岐・湾曲しているが、強震 動評価に用いる巨視的断層モデルの地表トレースとしては、右横ずれを主体と する和泉山脈南縁部分と、これに直交する逆断層の金剛山地東縁部分とによっ て、大きくモデル化することにした。

図 4.21 に、中央構造線想定金剛和泉地震の特性化震源モデルの設定概要を説明 する。長期評価に示された断層帯の端部の位置は次の通りである。

和泉山脈南縁部分 西端: N 34°14′,E 135°04′(図中a)

和泉山脈南縁部分 東端: N 34°23′,E 135°42′(図中b)

金剛山地東縁部分 北端: N 34°32′,E 135°41′(図中c)

和泉山脈南縁部分の複数の活断層は東西にほぼ直線的に並んでいるので、長 期評価による和泉山脈南縁部分の西端(図中a)と東端(図中b)を結んだ直 線abを和泉山脈南縁部分の巨視的断層モデルの地表トレースとする。走向は N74°E である。金剛山地東縁部分はやや湾曲しているが、前述の考え方に基づ いて、長期評価による金剛山地東縁部分の北端(図中c)から直線abに直交 する直線cdを引き、金剛山地東縁部分の巨視的断層モデルの地表トレースと する。走向は N344°E である。

4.2.2 断層の傾斜角と長さ・幅の設定

長期評価(地震調査委員会, 2003a)によれば、和泉山脈南縁部分は北傾斜の 右横ずれ断層、金剛山地東縁部分は西側隆起の逆断層とされている。断層の傾

参照

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