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学校保健活動における「目の健康」に関する指導の 教材開発

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教材開発

著者 赤田 信一

雑誌名 静岡大学教育学部研究報告. 教科教育学篇

28

ページ 123‑132

発行年 1997‑03‑24

出版者 静岡大学教育学部

URL http://doi.org/10.14945/00010334

(2)

静岡大学教育学部研究報告 (教科教育学篇)第28号 (1997.3)123〜132

学 校 保 健 活 動 に お け る

「 日の健 康 」 に関 す る指 導 の教 材 開発

Investigation of Teaching Materials on Ocular Health

in School Health Practice

田 信 一 Shinlchi AKADA

(平8年10月7日 受理)

は じめに

本論稿 は、学校保健活動 における「 目の健康」に関す る保健指導 の開発 につ いて事例 的 にそ の考察 を行 うものである。

「 目の健康」に関す る保健指導 は、主 に小学校 の学校保健活動 の中において活発 に実施 され て いる。 これ は「 視力の低下」 とい う健康問題が、現在多数 の児童 にとっての共通 の問題 と し て認識 されて いることによると考 え られ る。学校保健統計 によると、1994年度 の12才男女 にお ける「 裸眼視力1.0未満」者 は、約43%と高 い値を占めている。また、10年前、20年前 の デー タ と比較 して も、その値 は1984年度が約32%、 1974年が約24%と な ってお り、年 を追 って の「 裸 眼視力1.0未満」者 の急激 な増加 の現状 がある。 この子 ど もの健康問題 の現状 に対 し、「 日の健 康」に関す る保健指導 は、「 視力低下 の防止」を目標 とし、数 多 くの学級 にお いて授 業 プ ラ ン が作成 され、そ して実践 されているのである。

そ こで本論稿 では、学校保健活動 にお ける「 日の健康」に関す る保健指導 の開発 につ いて事 例的 にその考察 を進 め ることで、 これが今後 の「 目の健康」に関す る保健指導 の開発 の一 資料 になることを期待す るものである。

「 目の健康」に関す る保健指導の教育 目標 につ いて

小学校 で実施 され る健康診断 において は、 ラン ドル ト氏環 による視力検査 が行 われ る。 この 検査 における裸眼視力1。0の基準 は、直径7.5ミ リの リングの中にカ ッ トされ た1.5ミ リの切 れ 日 5メ ー トルの距離を もって識別出来 るかどうかにある。検査で は主 に2つの診 断結果 に分類 され、そのひ とつ は1.5ミ リの切れ 目を識別で きる裸眼視力1.0以上 の「 矯正 の必要 は無 い日」

であ り、 もうひとつ は切 れ 目を識別 出来 ない裸眼視力1.0未満 の「矯正 の必要性 が出て くる日」

である。

この矯正 の必要性 の出て くる裸眼視力1.0未満 につ いて は、 それが近視 によ る もの と遠 視 に よ るもの、さ らに乱視 によるもの とこれ らの混合 による場合があるが、何 れに して も、矯正 に よ り視力 が回復すれば、いわゆる正視 と何 ら変わ りはないわけである。 しか し、 日本 にお いて

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は矯正 のためのメガネ等 の使用が、「 目が悪 い」=不健康 な人 とい う偏見 と結 び付 く傾 向が強 くあ り、視力低下 によ り見 えに くくな って も矯正 を放棄す る子 どもも多 くいるよ うである。 こ の矯正放棄 による弊害 としては、極度の目の疲れ とこれによるさらなる視力低下、集中力 の低 下 、見えづ らいことによる事故 の発生 などが上 げ られ る。 このよ うな好 ま しくない状況 を生 み 出 さないために も、正 しい理解 に基づ く視力 の矯正 が必要 である。さらに、生涯 を通 して の視 力 につ いて考 えれば、年齢 を重ね ることに付随 して「老眼」の状態 は多 くの人 に発生 しうる こ とであ り、上記 の弊害 を避 けるために も、矯正 の必要性 の認識 は重要である。矯正 の ための一 道具 を メガネとす るな ら、快適 な視界を得 るために、「 うま くメガネを使 い こなす」 ことが大 切 となる。 このよ うな観点か ら「 日の健康」に関す る保健指導 の教育 目標を考え ると、 それ は

「 メガネを使 わずにすむよ うな良 い視力 を守 るためには何 が必要か」 とい うことにつ いて の知 識 や態度 を理解 ,習 得 させ るので はな くて、「 自分 の日の状態 と矯正 の意義 を知 り必要 で あれ ば メガネ等 を うま く利用す る」 ことにつ いての知識や態度を理解 0習 得 させ る必要性 があ る も の と考 え られ る。 もちろん前者の保健指導の教育 目標 にある「良 い視力、今ある視力 を守 るた めの知識 や態度 の理解・ 習得」は否定 されるものではな く、重要 な目標のひとつである。 ただ しそれが、「 メガネ等 による矯正 があたか も不健康 であるかのよ うな価値観」 を前提 と し、 そ の不健康状態か ら遠 ざかろうとす るね らいがあることに問題がある。視力 はひとつの個体差 で あ り、それ は身長 の高低 と同 じ様 な もので、近視や遠視0老眼のそれ 自体 は健康・ 不健康 とい う枠 に当て はまるもので はない。よ って「 視力低下=不健康」 とい う価値観 は否定 され るべ き ものであ り、その価値観を脅迫観念的に利用 し、保健指導を行 うことは更 め られ るべ き もので あろ う。

以上 よ りこれか らの「 日の健康」に関す る保健指導の教育 目標 を考 え るとき、「 矯正 を肯定 的 に捉 え、その必要性 が発生 したときは矯正 を行 うことで快適 な視界 (視)を得 る必要性 を 理解 させ、その態度 を育ててい くこと」 と同時 に、「視力低下=不健康 」 とい う価値観 を用 い ない中で「 良 い視力、今ある視力を守 るための知識 を理解 させ、その態度を育ててい くこと」

を重要 な もの と し、 これ らを保健指導の教育 目標 の中に取 り入れる必要があると考え る。

「 目の健康」に関する保健指導の教材 につ いて

ここで は保健指導 の対象を小学校中学年 とし、主 な教材 として5つを用意 した。ひとつ は、

それを読 み進 め ることで学習が展開 されてい く内容 となる「 物語教材」である。物語 に登場 す るキ ャラクターを工夫す ることで、小学校中学年 の子 ど もの興味を誘 い、学習への動機付 けを 計 るものである。 もうひとつ は、OHPの ピンボケ画像」である。 この画像 によ り視力 が低下 した場合 の感覚 が疑似体験 で きると同時に、その見えづ らくな った (ピンボケ)画像 が矯正 に よ りどれだ けはっきりす るかを感覚的に疑似体験 させ るものである。 もうひ とつ は、「 物 を見 る場合 の距離 によって毛様体筋 の疲労 がどのよ うに違 って くるかを疑似体験 させるための実験」

である。 これ は、お もりを用意 して腕 で持 ち上 げることで、物を見 る場合 に15m目 を離 した場 合 と30cmの時ではどれだけの比 の負荷の差があるのかを、疑似体験 させ る ものであ る。 もうひ

とつ は、「 テ レビゲームと目の疲労 について語 られた ビデオ教材」 で あ

る。 これ はテ レビゲ ー ムの画面を 目で追 った場合、毛様体筋がどれほどの緊張状態 となるかを ビジュアル化 して示 し た ものであ る。 もうひとつ は、「 視力変化の グラフ作 り」で あ る。 これ は、 2種類 の生 活 習慣

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学校保健学習における「 目の健康」に関する指導の教材開発

の違 い によ る視 力変化 を グラフ化 す る ことで、視力 の変化 は生活習慣 だ けに影響 され る もの で はな い可 能 性 が あ る ことを理 解 させ る もので あ る。

「 目の健 康 」 に関す る保 健指 導 の指導 プ ラ ンにつ いて

ここで は上記 に示 した「 教育 目標」0「教材 」を踏 まえて「 日の健康 」 に関 す る保 健 指 導 の 指 導 プ ラ ンを示 す 。なお、 ここで の指導 プ ラ ンの一 部 は、著者 によ り小学校 中学 年 を対 象 と し て実践 されて い る ものが含 まれて い る。そ こでの実践 の内容 も活 用 し、指導 プ ラ ンの具 体 性 を 高 め る こと と した。(なお、 この先 行実践 は本論 稿末 の「 参考文献 3」 に詳 しい。)

1)授 業 の導 入 一子 ど もと物語教材 の出会 い一

導 入 で は子 ど もの興 味 を誘 い、学 習へ の動機付 けを計 るため に物語教 材 を利 用 す る。 ス トー リー は子 ど もの 日常 の学校生活 を モデル と し作成 す る。その ことによ り架 空 の物 語 が子 ど もに と って身近 な存 在 とな る。以下 に、授 業 で配布 す る物語 文 を示 す 。

2ひきのねず み くん

ある森にねずみのふたごの兄弟、ルイスとラッキーが住んでいました。ルイスとラッキーはとて も仲良 しで学校にも毎日いっしょに行 っていました。でもクラスはちがうんです。

ルイスは 1組 、ラッキーは2組。 2ひ きはクラスの人気 ものです。

ルイスとラッキーは本を読んだり勉強することが大好 きです。クラスの友達 といっしに、よ く図 書館に本を読みにいきます。

「 ぼくはここだ」「 わたしはここにする」

じゅうたんの部屋で場所取りがはじまります。ルイスと1組 の友達はいつもこうして横 になり目を 近づけて読書 します。ラッキーと2組の友達は、前の部屋でいすにすわって読書 していますよ。ル イスとラッキーは本の読み方がちがうようです。

教室で勉強 している2ひ きをのぞいてみると、おやっ、ちょっとしせいが違 うようですね。

ルイスは前かがみに、ラッキーは姿勢が立 っています。

<遊ぶのも大好き>

「 今日はだれの家に集まろうか」「 ルイスの家で しようよ」

学校が終わり家にかえる途中、 1組 の友達はどこで遊ぶかを話 し合います。ルイスの組では、今 テレビゲームが大人気。友達の家に集まって、毎日2時間 ぐらいのファミコン大会が開かれていま す。いっぼうラッキーのクラスでは、今テニスが大人気。友達 とテニスコー トを作 り、いつ もテニ スをしています。2組の友達は、外で遊ぶのが大好 きなんです。

<将来の夢>

「 あっ、始まった。ピッ、 ピッ」

ルイスはテレビのスイッチをつけます。ルイスには将来なりたいものがあります。それはテ レビド ラマに出ることです。だから、テレビが大好 き。ふだんから、ついついテレビを見す ぎて しまいま す。今日はアニメも含め、3時間 もテレビを見てしまいました。

ラッキーの夢は、世界の海を旅できる船の船長さんになることです。のんびりした性格のラッキー は海が大好 きなのです。よく海の見える丘にいって、大きな海に浮かぶ船をながめています。あま リテレビは見ません。

(5)

<ルイス、どうしたの>

今日は日曜日。お母さんにお弁当を作ってもらって、2ひきは仲良く山ヘハイキングに出かけま した。紅葉がとてもきれいな季節。山は赤くそまっていました。2ひきは山頂にたどり着き、下に 広がる風景をながめます。

ラッキー「わ―、きれいだな―。ルイス、ここから海が見えるよ。あの船は外国まで旅をするんだ よ。大きな船も遠くからだと、とても小さく見えるね。

ルイス 0""・・」

ラッキー「右の下の方には道路があるね。走っている車はおもちゃみたいに小さく見えるね。」

ルイス 0"・00"0」

ラッキー「ねぇ、ルイス。さっきからだまっているけど、どうしたの?」

ルイス 「だってぇ0……・」

ルイスは今にも泣き出しそうに言います。

ルイス 「ぼくには、海にうかんでいる船も、道路の車もボォーッとして見えないよ―。 いったい、どうしたのでしょう。

ルイスは遠くの風景を、はっきり見ることが出来なくなってしまったんです。

ルイス 「 エーン、エーン」

ルイスは泣き出してしまいました。どうやら、視力が落ちたようなのです。そういえば、

最近、黒板の文字がボォーッとして見えにくくなったと言っていました。

2)  OHPの ピンボケ画像」の利用

一視力が低下 した場合の視界を感覚的に疑似体験す る場面 ―

ス トー リーの展開 にある「 ルイス」の視界の状態を、OHPのピンボケ画像を利用 し疑似体験 させ る。つ ま り視力が低下す るとい うことが どのよ うな状況 に遭遇す ることにな るかを示 す わ けであ る。 ここでのOHPシー トは通常の写真を拡大・ 転写 した ものである。また液晶プ ロジェ クター等 の機器 を利用す ることも出来 る。手元で「 ピン ト合わせ 0ずらし」が出来れ ば良 いわ けであ る。なお、上記 のス トー リーでの日の状況 は「近視」であ るので、 ここで の画像 も遠 く の風景 はピン トをず らし、近 くの風景 は ピン トを合 わせ るとい う作業 によ り、「 近視」 の 目 (視)の状態を、ある程度 の具体性を もって説明で きる。

3)  ス トー リーの内容 に関す る発間

一知識 のあいまいさの発見 と目0視力 についての探究活動 の課題 を発見す る場面 一

ス トー リーの続 きとその内容 について発間を用意す る。ここでは常識的な問いか ら始 ま り、

さ らにその問 いを深 めて い く展開 となる。視力の低下 につ いて議論す ることによ り、今後知 り たい こと、調 べたいことについての探究活動 の課題を発見す る。

<ルイスと病院の先生との会話>

ハイキングからもどり、ルイスは日の病院へ行きました。先生に視力をはかってもらうと、やは り視力が低下していたことがわかりました。

納得のいかないルイスは先生に質問します。

ルイス 「 ラッキーは良く見えるというのに、どうしてぼくだけ遠 くが見えづらくなったのですか。

そんなの、おかしいよ。納得できない!」

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学校保健学習における「 日の健康」に関する指導の教材開発

●教 師か らの発問

「 ルイスが言 って います。『 どうしてぼ くだけ見 えづ らくな って しま ったのです か』

と。さて、 この とき病院の先生 はなん と答えたで しょう。みなさん、先生 にな ったつ も りでルイスが納得 出来 るよ うに答えてあげて くだ さい。

●予想 され る子 ど もの反応

「 ルイス、 きみは勉強を した り本を読んだ りす る時の姿勢 が悪 か ったので はな いか い。それにテ レビも見す ぎで しょ。そんなことを して はだめだよ。」

「 ラッキーは本 を読 む ときは良 い姿勢 でいるけど、ルイスは目が近す ぎるか らだよ。

それにテ レビゲームをす るときも目が近す ぎるよ。ち ょっと離 れなきゃ。」

「 テ レビゲームのや りす ぎ。それで 目が疲 れ るのだよ。

●教 師か らの追発間

「皆 さん いろいろと答えて くれま したが、ルイスはまだ納得 していないよ うです よ。 ル イスにはこんな言 い分 があるみたいです。」

『 ぼ くが遠 くを見えづ らくなったわけは、本を読む ときの姿勢が悪 か ったか ら だ というけど、ぼ くとラッキーとの本の読み方にどれだけの差があるって言 う 試 してみてよ。まず、ラッキーが本を読む姿勢。次にぼ くが本 を読 む姿 勢。ぼ くの方がたったの15cmぐ らい目が近 いだけ じゃないか。た ったそれだ け の差で、ぼ くだけ遠 くが見えづ らくなるのはおか しいよ。』

『 た しかにテ レビゲームをす ることは好 きだよ。日も疲れ ることもあるよ。 で もね、 ラッキーみたいにテニスを したって動 いてい くボールを目で追 いか ける のだか ら、 ラッキーも日は疲れるはずだよ。そうなのに、どうしてぼ くだけ視 力が落 ちて しまうのそんなのおか しいよ。』

『 このクラスの友達 にもぼ くと同 じ様なことを している人がた くさん いる じゃ ない。で も、視力の高い人が多いよね。そうなのに、どうしてぼ くだ け視力 が 落 ちて しまうのそんなのおか しいよ。』

「 ルイスに もいろんな言 い分があるみたいですね。 これにつ いて賛成意見 と反対 意見 を聞かせて くだ さい。議論 していきたいと思 います。」

●予想 され る子 ど もの反応 (議論 の概要)

反対「 ルイスの言 い分 には反対です。本を読 む差がた った15cmだけと言 うけ ど、 そ 15clllが重要だ と思 うか らです。

賛成「 ルイスの言 い分には賛成できることろがあります。15cmの差なんてほんのちょっ との差 にす ぎないと思 います。教室 の前 の席 の人 と後 の席 の人での黒板 との距 離 の差 は、15cmどころ じゃないで しょう。 もし15cmが重要 な ら前の席 の人 はみ

(ルイスの言 い分)

(7)

んな視力 が低下 して しまうことにな って しま うことになるけど、そん な ことは ないで しょ。」

反対「 テ レビゲームとテニスは違 う。テ レビゲームはテニスよ り近 い距離 を見 る。」

賛成「 どち らも動 く物を 目で追 うことには変 わ りな いのだか ら、 日の疲 れ はい っ しょ。

反対「私 とルイスは違 う。テ レビゲーム も時間を決 めてや って いる。

賛成「 ルイスが言 うよ うに、同 じことを して いる人 は多 いと思 う。ルイスだ け視力 が低下す るのはおか しいと思 う。」

●教 師か らの追 々発問

「反対 と賛成意見が出て きま したが、お互 い相手 に自分達 の論 を納得 させ るまで に は至 らなか ったよ うです。お互 いに納得を得 るためには、どのよ うな事実がわかれば よいの で しょうか、何 を調べな くて はな らないので しょうか。意見を出 して くだ さい。」

●予想 され る子 ど もの探究活動 の課題

課 題 1 課題2 課題3 課題4

「 目の見え る仕組 とピン ト調節 の仕組 につ いて調べたい。

15cmと30cmの差 と目に与え る影響 につ いて調 べたい。

「 テ レビゲームを している時の 日の働 きにつ い調べたい。

「 今、視力が高 い人 は今後 も高 いままなのか、それとも低下す るのか調べたい。

4)探 究活動 と学 びの発表

一課題を探究 し知識0理解 を深 め、それ らを発表す る場面 一

前場面 での子 どもは、ス トー リーの展開 と議論 よ り、日の見え る仕組等 に関す る自分達 の知 識 の曖昧 さに気付 き、その曖昧 さを補 うための探究活動 の課題 を設定 した状況 にある。前場面 を受 け、 ここの場面 で は設定 した課題 1か ら4について グループ別 にその探究活動を行 う。

子 ど もは探究活動 に際 して、授業者 が用意す る以下 に示す『探究活動のための情報』をグルー プで受 け取 り、その情報 を活用 しなが ら、最終的には学んだ ことを簡単 な レポー トにま とめ他 の グループに向 けそれを発表す ることになる。

以下 に教 師が用意す る『 探究活動 のための情報』の内容を示す。

課題 1の グループに対 して は、日の構造 と ピン ト調節機能を図解 した資料 を渡す。それ に は 断面図 とともに毛様体筋 とい う筋肉の収縮 によ リピン トの調節が行われ ること、また毛様体 筋 の収縮 は近 くの物を見 るときほど強 く収縮 しなければな らないことが示 されている。

課題2のグループに対 して は、物を見 る場合 の距離 によって 目の中の筋肉 (毛様体筋)の き方 に違 いがあるとい うことを示 した ビデオ教材を与 え る。 ビデオで は図‑1に示す様 な画像

が含 まれて いる。また、15cmと30cmの場合 では日の筋肉の負担 が どれだけの比 で違 うのかを、

用意 したお もりを実際 に持 ち比べ ることによ り、疑似体験的に確認 させ る。

(8)

学校保健学習における「 目の健康」に関する指導の教材開発

‑1

右のグラフは、近 くのものを見るときに 日のピントを調節する「毛様体筋」にどれ くらいの負担がかかっているかを測定 した もの。「毛様体筋」の負担 は、日を30cm離 しているときにくらべ、20cmで1.5倍 15cmで2倍にも増えている。

課題3のグループに対 して は、テ レビゲームを して いるときの目の中の ピン ト調節 を行 う仕 (毛様体筋)が、どれ ほど過激 に働 いているかを示 した ビデオ教材を与える。ビデオでは図―

2に示す様 な画像が含 まれて、日か ら近 い位置 にあ り同時 に激 しく動 き回 るテ レビゲームの画 面 を見 るとき、毛様体筋が途切れ ることな く収縮 を不規則 に繰 り返 し、 ピン トを合 わせ よ うと

して いる様子 が示 されて いる。

‑2

0は次々に移り変わるテレビゲームの画面に 対応した視線の移動の様子を示している。また、

○の大きさの変化は移動する物体に対 して毛様 体筋がピントを合わせようと調節を繰り返 して

いることを表わしている。(上)

下図は読書中の視線の動きを示している。

テレビゲームの時のような急激な○の大きさ の変化は無い。同じ距離にある物体を見る場合 でも、両者には毛様体筋の負担度に大きな違い がある。

課題4のグループに対 しては、ある生活行動をとっていた子 どもの小学校6年生 までの視力 結果を与え、年次毎の視力変化のグラフを作成 させる。ある生活行動 とは、小学校の低・ 中学 年の頃か ら日常的にテ レビゲームに親 しみそれを高学年 まで継続的に行 っていたこと、また、

日を近づけた姿勢で学習・ 読書を行 っていたことである。同時に、特別な問題行動 は行 ってい ない子 どものデータも与えた。図‑3は最終的に作成 されるグラフである。

‑3

︵毛

目を何gn離しているか

(注)このグラフは統計的慮意味を示さない.個々の人物の事例的データである。

(9)

それぞれの探究活動 の結果 は各 グループか ら発表 され る。そ こで総合的に明 らかになる こと は次 の ことである。

ひとつ は、人間の日の調節機能 は筋肉 (毛様体筋)の収縮運動が大 きな役割 を担 い、近 い物 を見 るときにその負担が高 まること。また この負担 が 日の疲れにつ なが り、 この ことが視力低 下 の現象 を発生 させ る一要因 とな ること。

ひとつ は、ある物を見 るときの毛様体筋 の収縮運動 の負荷 は、日との距離 が30cmの場合 を 1 とす るな ら15mの場合 では 2と な り、負担 の比が2倍の差 となること。

ひとつ は、日か ら近 い位置 にあるモニター画面 を見 なが らの遊 びとな るテ レビゲームは、 日 との距離が近 いがゆえに毛様体筋 の負担 は高 ま り、同時 に動 き回 る物体 を 目で追 うことに よ り 毛様体筋 は必要以上 の収縮運動 を行 うこととな り、いっそ うその負担が高 ま って しま うこと。

ひとつ は、日に負担 をか けす ぎる生活行動 によ り視力低下を招 いて しま う人がいることと同 時 に、そのよ うな生活行動 を とって いて も視力低下 の現象 が発生 しない人 もいるとい うこと。

逆 に、普通 の生活行動 を行 っていて も視力低下 の可能性 はあること。つ ま り視力低下 とい う現 象 は、生活行動 によ り引 き起 こされ る現象であると同時に、身長 が高 い人・ 低 い人 がい るよ う

に、人 それぞれ生 まれ持 った個別性 (遺)によ りその発現が影響 され ること。

5)保 健指導のまとめ

一今 ある視力を守 るための生活行動 の確認 と矯正す ることの意義 についての気付 き―

前場面 での探究活動 によ り、子 ど もはどのよ うな生活行動が どのよ うな理 由によ り視力低下 を引 き起 こすかを理解 で きたと同時 に、遺伝・ 個別性 によって も視力低下 とい う現象 の発現 が 影響 され るとことを理解 で きたと考え られ る。 ここの保健指導 のま とめの場面 で は、上 記 の理 解 を踏 まえて、今ある視力 を守 るための生活行動 の確認 と、同時 に視力低下 とい う現象 が誰 に で も起 こる可能性があることを確認 しなが ら、その ときは積極的に矯正 を行 い良 い視界 を得 る

ことの意義 を確認 させたい。

一番 目の「 今ある視力を守 るための生活行動の確認」につ いて は、前場面 の各 グループによ る探究活動 の発表 の際 に、教師が羅列的に板書 した リフラッシュカー ドを掲 げた りしなが ら行 えば良 いと考 え る。

二番 目の「 視力低下 とい う現象が誰 にで も起 こる可能性があることの確認」 と「 矯正 が必要 とな った時 は積極的 にそれを実施す ることの意義 の確認」につ いて は、以下 に示す発間 を用意 し、子 ど もとの応対 のなかで進 めて い く。 この発間 によ り、視力低下 とい う状況 は可 能 で あ る のな らば避 けたい もので はあるが、 もしその状況 とな った場合 は、 それを受 け入 れ積極 的 に

『 見 え る状態』の目にす ること、つ ま り矯正 を行 うことの大切 さ0意義 につ いて気付 かせ る。

矯正 は『 日の不健康 さ』を表わす ものではな く人間の健康的な生活 に とって価値 あ るもので あ り、矯正せず視力 が低 い状況 にあることこそ問題 であることに気付かせ たい。

また、矯正 の意義 を説明す るときは、OHPを利用 したい。 ピンボケの画像 を映 し、遠 くが良 く見えない状況 を作 る中で、「 メガネ等を使 って矯正す るとこの よ うに見 えて くる」 と解説 し なが ら、OHPの ピンボケを修正 しピン トの合 った画像 を示す のであ る。 ク リアーにな った画 像 か ら子 ど もに矯正 の価値を気付かせ たい。

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学校保健学習における「 目の健康」に関する指導の教材開発

●教 師か らの発間

「探究活動 の中で どのよ うな理 由によ リルイスの視力 が低下 したのかが理解 出来 た と思 います。ルイス も十分 に納得出来 たと思 います。 しか し、納得出来 たといって もルイス の『 遠 くの風景 がよ く見えない』 という状況 は変わ りません。では、 このよ うな状況 の ルイスに、みなさんはどのよ うなア ドバイスを与えてあげることが出来 ますか。」

●予想 され る子 ど もの反応

「 ルイス、 これ以上視力が低下 しないよ うに、勉強を した り本を読 んだ りす る時 は 姿勢 に気 をつ けた方が いいよ。テ レビの見す ぎも注意 しよ う。

「 メガネを利用 して遠 くも良 く見 え る状態 に しよ うよ。その方が気持 ちいい し、勉 強 も遊 び ももっと楽 しくな るよ。

●教 師か らの発間

「 で はみなさん、 ラッキーに も何か ア ドバ イス して もらいますか。

●予想 され る子 ど もの反応

「 ラッキーは今ある視力を守 っていくためにも、今の生活態度を続 けていって くだ さい。

「 ラッキーは今は視力は良いけど、もしか したらいつか視力が落ちて しまうか もし れません。そのときは、ルイスと同 じようにメガネとかを使 って良 く見える日の状 態に しようね。

4  おわ りに

本論稿 は、学校保健活動 における「 日の健康」に関す る保健指導 の開発 につ いて事 例 的 にそ の考察 を進 めることで、 これが今後 の「 目の健康」に関す る保健指導の開発の一資料 にな るこ とを期待 した ものである。

この中で、「 目の健康」に関す る保健指導 の教育 目標を、「良 い視力、今あ る視力 を守 るため の知識 を理解 させ、その態度 を育ててい くこと」 と した と同時 に、「 矯正 を肯 定 的 に捉 え、 そ の必要性が発生 したときは矯正を行 うことで快適 な視界 (視)を得 る必要性 を理解 させ 、 そ の態度 を育 てて い くこと」 とし、 この教育 目標 に対応 した教材開発、また指導 プ ランの組 み立 てを試 みた。

子 ど もが今後生活 して い くであろ う社会 は、今以上 にOA機器中心 の「 近 い距離 の画面 を長 時間見続 けなが らの仕事・ 生活」にな ってい くもの と予想 され る。必然的 に目への負担 は視力 低下 の状況 をよ り多 くの人 に引 き起 こす ものであろ う。近視 とい う状況 は日の環境 に対す るひ とつの「 適応」 とも考え られるが、近視 によ り遠 くの画像が見えづ らくなるのは必至 で この状

(11)

態を放置す ると体調の崩れや事故の発生等が危惧 される。健康0安全を保つためにも『矯正』

は意義 ある保健行動のひとつなのである。本論稿での指導プランは、今ある視力を守 るための 生活行動・ 保健行動を示 したと同時に、今後重要性がさらに増す ことが予想 されるこの『矯正』

という保健行動を肯定的に捉えることの出来 る子 どもの育成をね らった一試案である。

謝辞

今回の研究にあたらて、多大なご協力を頂いた大分大学教育学部附属小学校教諭でいらっしゃっ た辛島亮一先生 と利光弘文先生の両氏に対 し、ここに謹んで感謝の意を表 します。さらに本原 稿の校閲を頂 いた河鍋習教授、山本章教授、谷健二助教授にあつ く御礼申 しあげます。

参考文献

0正木健雄著『 おか しいぞ子 どものか らだ』大月書店、1995 0日 本子どもを守る会編『子ども白書』、1995

0住田実編『 小学校 瞳が輝 く保健指導で楽 しいキャッチボール』、1995

参照

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中学校保健学習における歩数計を活用した授業実践報告 ー保健分野「生活行動・生活習慣と健康〔運動と健康〕」ー 森  悟