富士火山南東麓の地下構造と地下水
著者 保坂 貞治
雑誌名 静岡地学
巻 80
ページ 19‑28
発行年 1999‑11‑21
出版者 静岡県地学会
URL http://doi.org/10.14945/00025139
静 岡 地 学 第 8 0 号 ( 1 9 9 9 )
南東麓の と地下水
保 坂 貞 治 *
富士火山の総面積約 9 6 9km
2のうち、山頂‑十里木および山頂一寵坂を結ぶ範囲内を南東麓斜面と みなすと、その部積は約 2 7 7km
2(28.6%) を占めている
Oこの南東麓斜面の降水量は富士火山全体の 降水量約 2 2 . 5 5 億トン/年の 31.5% ( 7 . 1 1 億トン/年)と推定されている(山本荘毅:1 9 7 1 ) 0
は地質資料、湧泉資料、深井戸ポーリング資料、降水資料などの文献調査および現地謡査@開 き取り調査等に基づいて、富士火山南東麓の蜂水(降雨+降雪)が地下に浸透したのち、地下水とし て地層中をどのように流動しているかについて若干の考察を試みたので報告する
Ol 富士火山南東麓およびその周辺の地質概観 1 1 富士火山南東麓の北東には、
質火山岩@火山砕屑岩を主とする丹沢層群と、
構成される大室山(標高 1
,5 8 8m) ~菰釣山
(1500‑1000 万 年 前 ) の
く石英関緑岩。斑レイ
1 , 3 4 5 m) ~三国山(標高 1 , 330 m) などの山々が よび火山砕屑岩を主とする箱根外輪山
している
Oさらに南に
の北東斜面に接している
O@ 火
町田 洋(1 9 9 2 ) によれば、富士火山の活動は約 1 0 1 降に活動した新期の活動に区分されている
Oしたが、泥流活動も活発であった。
丹沢山塊、箱根火山、
した古期の活動と約 5千年以 を盛ん どを挟んだ ( 約 1万年前)には、
の 後 ; 、 り、約 5 流出が卓越
コリア放出@
1 2
どの流動性に
く埋めている
Oに流下した。
(8 , 050 土 130~5 , 830 士 130
の活動が始まつん
Oで示される火 山は 3 , 5 0 0 年前まで
スコリア放出を伴う爆発的噴火や関火山活動(ス かったが、
し 1 9 8 8 ) 0
( 1 9 6 8 ) によ ように、 山の
1 6 , 5 0 0 土 4 0 0 となっている
O(OLFm 、 2 4 . 1 0 0 土 4 0 0
るものは、約 1
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1)である
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静岡地学 8 0 号 ( 1 9 9 9 )
麓に流した代表的溶岩流 ( 5‑10 mm の斜長石斑品を含む)であり、御殿場市大野原を中心に広く分 している
O三島溶岩流は富士岡地区の中清水、駒門を経て箱根外輪山の山裾に達したのち、流向を に変えて箱根火山
e愛鷹火山の裾合谷を厚く埋め、長泉町、清水町を経て三島に達している(総延 長 約 3 5km)o
本地域の三島溶岩流の南西側には、三島溶岩流より新しい裾野溶岩流 (SE
z曹SE
3ラSE
4)、畑間溶岩 流 (SE
5)などの!日期溶岩流、新期寄生火山溶岩流に属する印野丸尾溶岩流 ( 1 紅白)が分布している(図
1 )
0本地域の北西部に当たる には、小規模ながら中期溶岩流 (MCV)が分布し、これ (Sh i)、須走一御殿場溶岩流 (Sub) 、成就ヶ (Kem)が分布している。約 5 , 0 0 0 年前に活動を再開し
のほか、玄武岩質のスコリア@ラピリなど ( V )
っている(国 1 。 )
2
じ標高に分布している
Oこれは後述する地下に埋没した溶岩流の末端域にあたると b 三島溶岩流末端域での湧水
3 2 " ' ‑ ' 3 7 の 6 地点 6 個所で、合計 1 4 , 953 Q / s の豊富な湧水がある。近年この豊富な地下水を利用する 企業の増加、公共及び一般水源としての地下水の利用の増加に伴い、地下水位が下がり湧出量の減少
される
Oと枯渇が目立つてきた。
2‑3 富士火山と丹沢山系@愛鷹火山@箱根火山の地質境界域の湧水 ア 富士火山@丹沢山系境界域での湧水
①、③、⑥、⑦の 4 地点 1 0 個所で、合計 2 , 923 Q / s の湧水がある
O⑥の須 J I ! 湧水は富士火山と丹沢 山系が接する山裾に発達した侵食谷で湧水地点、では比高 89m の渓谷状谷壁の透水層(スコリア ラ ピリ質砂擦層)から多量の湧出が見られる
O筆者の調査 ( 1 9 8 8 年)によれば、須 J I ! 湧水の全湧出量に 上流域での深井戸汲上量を加えると約 4 2 万 t / 日であった。水質も良いので小山町の貴重な水源と
1 富士火山高東麓の湧水 山本荘毅 ( 1 9 9 2 ) より抜粋@
ぬ ー
治 山 ︺4a J
ブ
2 I小山町大御神 3 I 小山
4 I 小山町上野 5 I 上 野 J l I 6 I 須
J1 1 7 I 小山町中日向 8 I 小山町一色 9 I御殿場市上小林 1 0 I 御殿場市太郎坊下 1 1 I 御殿場市鏑有沢 1 2 I 御殿場市{二 1 3 I御殿場市柴怒田 1 4 I 御殿場市中畑 1 5 I 御殿場市川和ト 1 6 I 錦殿場市永塚@小木原 1 7 I 御殿場市印野 1 8 I 御殿場市杉名沢 1 9
所
3 6 3 1 1 3 1 1 7 1 1 2 2 4 2 5 2 4 2
路 間
F
々
e i
( R / s ) I 問 。 │ 地
1 3 . 3 I 2 0 I 御殿場市中清水 7 . 2
5 2 . 1 1 4 . 1 6 6 . 1 2 8 5 3 . 5 4 . 3 7 . 7 1 2 2 . 8 0 . 3 0 . 7 9 . 2 3 . 2 4 7 . 5 6 . 4 1 8 . 9 0 . 4 3 . 4 3 . 5
2 1 I 御殿場市萩蕪水
2 3
川 裾 野 市 下 和 田 2 5
2 8 I 駒 市 富 沢 2 9 I 長泉町水神@
3 0
3 2 3 3 3 4 3 5
3 6 I 三島市丸池 3 7 I 清水町柿田川
所
2 3 2 9 4 1 1 1 1 2 2 1 1 1 1 1 1 1
倒的
‑ q
l ( R / s )
1 8 6 6 . 2 1 1 8 . 3 1 5 1 . 3
1 3 . 5 3 . 2 2 6 . 0 3 3 . 0 2 7 . 0 1 5 . 0 3 1 4 . 0 3 1 4 . 0 3 . 0 2 8 9 . 0 8 7 9 . 0 2 9 5 9 . 0 6 9 . 0 1 7 1 2 . 0 9 0 4 5 . 。
は以下のように区 1 に示した自然湧水を地形図上にプロットしたものが図 2 である
Oこれらの
分することができる
O2 2
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なっている
Oイ 富士火山
e箱根火山境界域での湧水
⑬ " " ' ‑ ' 2 2、2 5の 5地点、 1 0個所で合計 2 1 6 5 e . / s の湧水がある
Oこれらの地点、は箱根火山西斜面に向かつ て流下した富士火山溶岩流が裾野市方面に流向を変える地域に当たり、主に富士火山系の湧水である
Oもっとも箱根寄りに位置する二子水源(東邦化工:1 9 9 0 )の水質調査の結果から富士火山系と判定した。
ウ 富士火山@愛鷹火山境界域での湧水
23、2 4、2 6、2 8の 4地点、 1 5個所で、合計 6 5 e . / s の湧水がある
O水源数は多いが、湧出量は少ない。
3 富士火山高東麓の地下水の流れ
山南東麓の地下水の流れについては、深井戸ボーリング資料(表 2)およびこれらを地形図 にプロットした図 3 と現地調査並びに開き取り調査に加え、自然湧水資料(表 1 )、富士火山南東麓
国 2 図 3
1)ング地点、国
の地質略図(図 1) して記述する
O3 ‑ 1 と古期富士火山噴出物の 山の泥流堆積物(火山岩塊@火山砂様
し、結粒培積物 る
ス
いる
2
小山町@
1 455鼠110 Oml 39
2 1/1'IIIJf怨訳214611110141 3 1
, J . l l J 員 H
審議1 1 490 I 15 1 41I三菱
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露磁 1 490 1 161 1 67 1 告書 1 16635
I~、副書j議定
18201200111611501 850 6 1//'山町議主下 161519013815211019 1111釜山葬{議長 145512301139116211440 81 牛肉書[大鰐捻 5931152 18 99 516 91小IUJftt之F 350 110 48 51 600 101/j、山町竹之T2350 201 6 I 2592 111小山潟校 140011501511751600121i等験講市議山 148011101 121 7911721 第8本滋
13 I害事儀場事仁彰 155311301 221 6512016 141議緩畿南主上告159317412813312001
15 I関議議事硲野 15告911401 681 791 603 善寺の緩
16 1努議議市緑野 15501119154119 絡の鼠蕊援
111録数議事ぐみ訳1515110015116 5号芽
181録殿場市議 1 390 I 60
191綴巌議事待出 132016811512511239 議生総長
201調緩議事話事訳1454118111613512140 3号j十
21 I関援緩和j、本Jil628 1 180 1 79 1 88 1 1900 3奇弁
221畿議議事本土野1642120016611311121 231察隊議事JII惨16101171198110813024 24 1察議議事務審Jlll4 6 3 1 8 0 1 6 8
25 1繁野市t室長本議1240161121 1 1 24
湾民系 認諾緩議鈴25.6‑81.8潟、 籍緩嘉
‑24
は流速が低下すると、粗粒@高密度の土 窃国化して、鍛密な不透水層を形成する
ノレー
受 玄設窓溶岩1.6-4 1.5mlこ?題、 J1I~珍議?叩36.2m
関iこ8騒、露上大向系10 1 516 1髭誇t建築終uω32.4皿式出議長安32.4イ8.5、訟 愛選先取議{車系i鴻土火山系)
~241
161 83120301玉石畿t9診議0‑179臨箆iこ16媛、安山岩務者179‑1
幸 吉
5閥、212‑224磁、愛畿大山系 180 I 81 1 玄設設覧議選?叩180田鶴iこ11議、富士火山系20411321 11伶186踊関iこ式出数議・義主義瓦緩10媛、 議士大山系
1301861101 重義援議縫3ω37飢餓一77田、火山鎗星空77ω室号 総、護士大潟議
100 1 45 1 玄設建議選3‑‑82担鋳iこ各議、J1I康診議21時100滋 関に3議、露士:J:.議議
1001 161 3211550 1玄武器議議J.7匂i∞総関iこ4層、大肉移譲142‑6ti.7 組関に3鼠富士犬山系
60 I 16
I 議議議選十60mlll~: 4J言、 JII康診緩ト 45.6回
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1 安~I議議選 48-63回、凝灰免緩滋 63拘 130冊、
議畿大必議
玄議議溶議14‑94.7m関仁?議.Jllj記珍綴18.9時総i 臨際ζ?縁、富士支出系
19122114001誇;義援畿勢i
…
10臨 録法議17‑26.5問、安肉議議 務総5ω32、組51時63恥愛護大向嘉 110 1 昔8I 108 I 1400 I翼翼援護鋳24 ‑ 5
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畿勢51向82潟、愛護大潟議
431長農協総務
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2吉I
200I
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46 1長議釘権一色 1140 1110 1 25 3841
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愛媛大山議
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3 2 富士火山南東麓の地下水の流れ ( 1 ) 新期富士火山噴出物
富士火山南東麓の表層を覆う新期富士火山噴出物(玄武岩質溶岩@火山砕屑物)は一般に多孔質で 透水性がよく、降水のほとんどは地下に浸透し、表流水として地表を流下することは少ない。このこ
とが、富士火山の形成年代が新しいこととともに、谷の発達が遅い原因と推定される
O( 2 ) 地下水は溶岩流に沿って優良な地下水脈を造っている
Oア 小山一御殿場地域には、新期富士火山の火山砕屑物(スコリア@ラピりなど)が備西風の影響を 受けて厚く堆積し(図 1 の V) 、溶岩流の露出は小山町須走 御殿場市板妻市街地には見られないが、
図 4 ‑ ⑥ 、 2 2 、 2 4 に見られるように、地下約 80m 付近に中期溶岩流と推定される溶岩流が存在してい る
Oまた、付近に設置された東富士ダムの地下水脈調査用ボーリングでも、 2 個所で地下 80m 付近で 溶岩流を確認している
Oこの溶岩流の延長上で、須}I[・期頭@用沢の湧水があり、御殿場市。小山町 の良い水源となっている
Oイ 図 3 ⑬の溶岩流も前述の溶岩流に近接し、
源)および表 1 ⑨(上小林湧水)、表 1‑ ⑬ される
O湧水)もこ
ウ 御殿場市印野地区には図 5 2 1 、⑮、⑬に見られるように 1 1 1 m ) が覆い、その下位には 1 8 期溶岩流(熔岡溶岩流 SE
4)ラ600
5守容
S主語
ヰ と地下水 思 5
と される
O図 2 ⑬(仁杉水 に関係しているものと
(SE
1)と される
緩高 臨滋a
車総
も認められ、その延長は御殿場市中清水 神山地区まで辿ることができ、図 3‑ ⑮、⑬、⑬水源や中 清水@ニ子湧水などを癌養@供給している
Oエ 御殿場市駒門 裾野市 長泉町地域の地下構造と地下水
この地域には図 6‑33
雪3 4 , 4 4
曹4 5 の深井ボーリング柱状図に見られるように、富士火山@箱根火 山および、愛鷹火山@箱根火山の裾合谷の堆積物(玉石混り火山砂擦など:古黄瀬川堆積物)を埋めて
( 1
日期溶岩流 SE
1)が厚く堆積している
O被野市役所 ( 1 9 9 3 年)の三島溶岩流地下風穴調 によれば、風穴内に良く洗浄された河成砂擦が底床を埋め、地下水の流動を示す水紋が認められた。
風穴内には車内擦や円躍を受けた溶岩塊も認められた。これらの事実は、多量の鋒雨があると風穴内 の水位が上がり、地下水が風穴内(三島溶岩流洞穴部)勢いよく流下したことを示している
Oまた、
された溶岩塊は地下J[
lの河床であったことを示している
O本地域の下流に当たる柿田J[
1..丸池@
菰池@小浜池などに多量の湯水が見られるのに、この地域を流れる黄瀬J[ I および大場J[ I
が少ないのは、降水の多くが多孔質で風穴に に流入し地下Jl I として流動しているた めと推定される
O( S E
1)が分布する裾野市街地で比較的近接する深井戸ボーリング(図 7 3 2
ヲ3 3
雪2 5
曹2 6 ) の自然水位は、挟在する火山砂醸の粒度や層厚などの違いを反映しており、 3 3 井に対して 3 2 井 が 10.5m 、 2 5 井が +4.9m 、 2 6 井が 5.8m というようにかなりの水位差が認められる
Oいずれの 柱状図にも顕著な不透水層は認められないが、自然水位は高い。また、揚水試験で多量の水を汲み上 げても深井戸内の地下水位はほとんど下がらない。三島溶岩流中を掘削した他井の揚水試験でも水位 されている
Oこれらの事実は、前述した地下風穴中の水紋、車円擦や水麓さ と棺まって、三島溶岩流内を豊富な地下水が幾筋かの地下 J I ! として流動している ことを示している
O( 3 ) 鮎沢 J I !" ! I 分水域の地下構造と地下水
鮎沢 J I ! " 黄瀬J1
1の分水界は富士火山御殿場口登山道からやや東よりにほぼ東西方向に位置している
Oこの地域には溶岩流は見られず、主として古期富士火山の泥流堆積物が分布しており、分水界を中心
とする幅約 2~4 km の範囲では 500m
自体の減少が認められた(御殿場市 1
して など)。
を掘削すると
さらに約1. 3 km 上流に当たる仁杉水源(表 2 ⑬)で揚水すると
の自噴が止まり、
と る自然湧水 が枯渇した。これらの事実は、主として泥流堆積物のみが分布し富士火山溶岩流が分布していない地 域では、被圧水層は蒋在するものの地下水流動量が少ないことを示している
O( 4 ) 裾野市須山水源(図 5 2 9
予3 0 ) 付近の地下構造と地下水
この付近の地表に の中期溶岩流(平塚溶岩流ト裾野溶岩流 I I I , I I
ヲ1 (古期溶岩流)な どが認められ、図 5 3 0 井のボーリング柱状図にはこれらの古期溶岩流が火山砂擦を挟んで、何賭も められる
O下位の不透水層(泥流堆積物)が深いため、地下水位は地表下 132m と深い。なお、地下
は透水性のよい裾野溶岩 1 (SE
2)もしくは三島溶岩 (SE
1)層と推定される
O2 6
静 岡 地 学 第 8 0 号 ( 1 9 9 9 )
捺高
5 k
綴AHV ‑
fA
15
国 5 と地下水(北一南方向)
町田
玄武岩焚溶岩