高気圧マイクロ波放電の小型高輝度光源への応用
著者 志藤 雅也
雑誌名 静岡大学大学院電子科学研究科研究報告
巻 28
ページ 82‑85
発行年 2007‑03‑22
出版者 静岡大学大学院電子科学研究科
URL http://hdl.handle.net/10297/1176
氏名 。 (本 籍 ) 志 藤 雅 也 (静 岡県 )に ぐ
̀学位 の種類 博 士 (工 学
)学位 記番 号 工博 甲第 273 号 学位授与の日付 平成 18年 3月 24日
学位授与の要件 学位規程第 5条 第 1項 該当 研究科。 専攻の名称 電子科学研究科 電子材料科学
学位論文題日 高気圧 マイクロ波放電の小型高輝度光源への応用
論 文 審 査 委 員 (委 員長 ) ′
教 授 中 西 洋一郎 教 授 永 津 雅 章 助教授 木 下 治 久 教 授 神 藤 正 士
論 文 内 容 の 要 旨
近年、照明の分野では、発光効率カラ 00h/Wで 数万時間の寿命 を持ち、かつ水銀などの有害物質を 含 まないランプの開発が、大学や企業 における研究開発の目標 となっている。この背景 には、消費 電力 に占める照明用電力の割合が高 くな り、 とりわけ発展途上国ではこれが 50%を 上回るなど無視 で きない レベルにあることが挙げられる。 このため、省エネルギーと地球環境保全の観点か ら、高 効率長寿命のランプの実現が切望 されている。
高輝度放電ランプ (HDラ ンプ )の 中で も、無電極放電ランプは、①電極 との反応で使 えなかった封 入物 を利用で き高演色性 と高効率化が期待で きる、②電極 による熱損失が無 くなるため高効率が期 待で きる、③放電管の構造が単純化 され製造 コス トを軽減で きる、④電極蒸発 による管壁黒化が解 消 されて長寿命化が期待で きる、⑤放電管容器 と電極間のシールの問題が解消 されて長寿命化が期 待で きる、⑥環境負荷物質の水銀 を無 くす ことが容易である、等の数多 くの利点があ り、次世代の 高機能ランプとしての可能性 を秘めている。
現在、多 くの研究機関で13.56MIIzの 高周波や 2.45GHzの マイクロ波を用いた無電極放電ランプの 開発が進め られている。高気圧放電の発生 と維持のために通常数 100W以 上の電力 を必要 とし、マイ クロ波源 にはマグネ トロンが用い られる。ランプ点灯 にはパ ラボラアンテナまたは空洞共振器が使 われ、直径 5011m以 上の大型 ランプを用い、マイクロ波漏洩 を防 ぐために点灯装置の開口部 をメッ シユで覆 う必要がある。このため点灯装置が大 きくな り、道路照明や自動車前照灯のような配光制 御 を必要 とする場所での利用 には適 さない。 また、マイクロ波源 に使われるマグネ トロンは振動 に 弱 く、寿命 も数千時間程度 と短いために、ランプ用途 には不向 きである。
本論文は、高輝度で発光効率が高 く長寿命である小型高気圧マイクロ波無電極放電 ランプの開発
を目的 として進めてきた研究成果 を纏めた ものである。第 1章 で高輝度放電 ランプについての歴史 と現状 を簡単 に述べた後、第 2章 で 自動車用 ランプの発展経緯 と自動車前照灯用 HIDラ ンプの現状 を紹介 した。第 3章 では放電ランプの原理 と無電極放電ランプの種類ならびに開発状況を紹介 した。
第 4章 ではマイクロ波回路や放電管など、本研究 に関係する実験装置の概要ならびに光束や放電管 温度の測定方法 について述べた。 この章以降は研究成果 に関わる章である。第 5章 では基礎実験 と
してガスフロー型ランプの点灯実験結果を示 した。この実験では、スロット型マイクロ波 ランチャー から供給 される数 10Wの 低電カマイクロ波 により、数 10Torrか ら大気圧 までの広い圧力範囲にわたっ て空間的に一様 なプラズマが生成 されることを明らかにした。これは、放電管壁 と高密度プラズマ と の境界 を伝搬する表面波がプラズマを生成 していると考えられる。以上の実験結果より、スロット型 マイクロ波 ランチャーによるプラズマ励起法は無電極放電ランプに最適であると考 えられる。
第 6章 はランプの実用化 を念頭 に置いて、キセノンガス と微量金属沃化物 を封入 した封 じ切 り型 放電ランプの実験結果を扱 っている。 70Wの マイクロ波入射電力により、最高で光束 35801m、 発光効 率51lm/Wの ランプ特性 を得 ることが出来た。発光効率が低い値 に留 まった原因の 1つ として、放電 管の管壁温度が低いために金属沃化物の蒸気圧 を十分 に高めることがで きなかったことが考えられ
る。
第 7章 では、放電管の発光効率が市販の HDラ ンプレベルに達 しない要因を探 る目的で、放電管 内部でのパワーバランスの計算 を行 った結果を示 した。これによると、熱放射損失力ち 7.1%、 マイク ロ波ランチャーヘの熱伝導損失力お 7.6%で あ り、発光に廻 るパ ワーはわずか18.2%に 留 まる事が明 ら かになった。通常使用 されている放電ランプでは 50%程 度であることか ら、封 じ切 り型放電管の発光 効率が低い原因は熱放射 と熱伝導損失 にあると考 えられる。
第 8章 では、 自動車前照灯用 HEDラ ンプとして市販 されている 5気 圧以上のキセノンガスを封入
した電極付小型メタルハ ライ ドランプ (D2ラ ンプ、D4ラ ンプ )を 、 looh/W以 上のこれまでにな く高
効率、高輝度で点灯できた実験結果を紹介 している。ランプ消灯直後に赤外線放射温度計 により測定
した放電管の管壁温度は約900℃ であ り、これは同様の手法で測定 した封 じ切 り型放電管の管壁温度
より 200℃ ほど低かった。 これは、放電管中心部 に突出 している電極がアンテナとして働 き、マイク
ロ波電力が直接 ランプの中心部に供給 されて高気圧ガスを電離 してランプ点灯 を実現 していると考え
られる。高気圧であるためにマイクロ波電力が放電形成のために効率 よく消費 され、高い発光効率が
得 られている。マイクロ波ランチャーとランプとの接触面積が少ないことや、プラズマ柱が容器壁か
ら離れて形成 されること、放電管形状が球状で表面積力Ⅵヽさいため熱放射損失が少ないことも高い発
光効率の理由と考えられる。 この放電管ではマイクロ波電力が 100W以 下で点灯で きるので、長寿命
の団体マイクロ波発振器を利用できる。これにより長期間にわたつてメインテナンスが不要な点灯 シ
ステムを実現できると考えられる。更に、ランプからのマイクロ波漏洩が無いため電磁遮蔽が不必要
であ り、配光制御性の良い高輝度点光源 を実現で きる。放電管 を無電極化できるため、このランプ点
灯法はメタルハ ライ ドランプだけでな く、サルファーランプ、クラスターランプ、紫外光 ランプな
ど、種々の高輝度高効率 ランプヘの応用が可能である。最後 に第 9章 では本論文の結論 を述べた。
本研究で開発 した放電管 とその点灯 システムは、自動車前照灯用 として大 きな需要が見込 まれるほ か、高輝度 と長寿命である利点を生か して、屋外照明、危険地域・高所地域の照明、 トンネル灯及び 地下道路灯 などにも需要が見込 まれる。また、キセノンや重水素 を大気圧程度の高気圧で封入すれ ば、エキシマランプや重水素ランプなどの紫外光源の実現 も可能である。この小型紫外光源は、電子 デバイス製造装置のリソグラフイなどに利用で きるほか、医療用、蛍光体 との併用による蛍光ランプ ヘの応用が可能である。
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