: 学校現場における多文化共生の実現に向けて
著者 矢崎 満夫
雑誌名 静岡大学教育実践総合センター紀要
巻 19
ページ 171‑180
発行年 2011‑03‑31
出版者 静岡大学教育学部附属教育実践総合センター
URL http://doi.org/10.14945/00006604
静 岡大学教育学部附属教育実践総合セ ンター紀要 No。 19 p.171‑180 (2011)
〈論文〉
学生ボランティアによる「つなが りづ<り 」の支援
―学校現場 における多文化共生の実現 に向けて 一
矢崎 満夫*
Support of"Connection‐ IIlaHng"by Volunteer Students:
Ailning at the achievemcnt ofrnulticultural symbiosis at school
Mitsuo YAZAICI
要 旨
静 岡大学 の学生ボ ランテ ィア団体(ONES)が、静 岡市内小中学校 にお いて 「日本語指導が必要な児童生徒」
を対象 とした支援活動 を展開 して いる。ONESが 目指す支援 は、当該児童生徒 に対 す るものだけでな く、教員 や クラス メイ トらにも働 きかけを行 うことによって さまざまな 「つなが り」 を創 出 し、彼 らを取 り巻 く環境の整 備 に寄 与す る もので ある。 「異な る もの 同士 が結びつき、その相互作用によって新たな価値が創造 され る」 こと が多文化共生の意義であると考 えるが、学校現場 にお いて 「つなが りづ くり」 に関与す る支援 者の存在は、 この
「化学反応」 を起 こす 「触媒」 としての役割 を担 っているといえる。支援活動 を通 した学びの振 り返 りか らは、
学 生 自身 が 当該活 動 の意義 を見 出 してお り、 また学校 か らも活 動 に対す る肯定的評価 を得て いる ことがわか った。
キ ー ワー ド:学生ボランティア 学校現場 日本語指導が必要な児童生徒 多文化共 生 「つながりづくり」
1.はじめ に
文部科 学 省 (2008a)の調 査結果 によ る と、 日本 国 内の公 立学校 に在籍す る 「日本語指 導が必 要な外 国人 児童生徒」 の数は合計2万 8575人で、2007年の同調 査 と比べ 12.5%の増加 とな った とい う。 また 当該 児 童 生徒 の在籍校 は 6212校で 、 うち 「1人」在籍校 が 2844校で約半数 を占め、 「5人未満」 では4831校に の ぼ り、全体 の8割近 くに及ぶ こともわ か った。 この よ うな1校当た りの外 国人児 童生徒 数 が4人以 下 の
「散在校」では、加配教員の配置等 の支援態勢が整い に くく、 当該児童生徒教育 をどのよ うに進 めて い くか が大きな課題 とな っている。
同調査結果 で、静 岡県 は 「日本語指導 が必 要な外 国 人児童生徒」 の数が 2903人と全国第2位で ある こと が報告 された。そ の大部分 は、浜松市 をは じめ とした ブ ラジル人が集住す る西部地 区に集 中 して いるが、そ うした地域では当該児童生徒の数が多 く、彼 らに対す る教育 を看過できない状況 にある。そのため、行政側 として も比較的多 くの予算配分 を行 い、外 国人児童生 徒担 当の加配 教員やバイ リンガル相談員 の配置な ど、
ある程度 の対策 は講 じてきて いるとい うことができる。
一方 、2010年の静 岡市教育委員会 の調査 による と、
静 岡市 は当該児童 生徒数が 58人で あ り、 しか もそれ
らの子 どもたちが市内 34校の小中学校 に散在 して在 籍 して いる ことがわか った。静岡市は、浜松市 と比べ て 当該児童生徒の数が少な く、 1校当た りの当該児童 生徒数が4人以下 の典型的な 「散在地域」である とい え る。加配教員の配置が ないため、 日頃は学級担任教 師が指導 に当た る ことが 多 い。そ こで静岡市では 「日 本語指導セ ンター」 を設置 し、 「通級指導」 「訪問指 導」 「適応相談」 の3種類 の支援態勢 を整えて きた。
しか し、 「通級指導」 には児童生徒 の交通手段 、 「訪 間指導」 「適応相談」 には指導や相談 を受 ける回数や 頻度 にそれぞれ課題が あ った(1)。
そ う した課題 を少 しで も解 消す る もの と して 2006 年 に創 設 され た のが 「日本語 0学習 支援 学 生 ボ ラ ン テ ィア派遣制度」である。 これ は、静岡大学・静岡県 立大学 と静岡市教育委員会 との連携事業の一環 で、両 大学 の学生ボ ランテ ィアが市 内小中学校 に赴 き、 「日 本語指導 が必 要な児童生徒」(Dに対 して 日本語 や教科 の学習支援等 を行 うとい うものである。
筆 者 は 当該 制度 設 立以 来 、 静 岡大学 の学 生 ボ ラ ン テ ィアによる 「つなが りづ く り」支援 に着 目してきた。
本稿では、矢崎・ 宇都官 (2007)で 述べた 「つなが りづ く り」支援 の意義 を再考 し、学 生 による学びの振 り返 りと学校側か らの評価 も交 えなが ら、学校現場 にお け る多文化共 生実現 に向けた支援 のあ り方 について、あ らた めて提案 を行 う。
*静岡 大 学 大 学 院 教 育 学 研 究 科 (教 職 大 学 院)
2.「つなが りづ<り」の支援
2.l 従 来 の 「支援」のあ り方
来 日す る 「日本語指導が必 要な児童 生徒」 は、 自分 の意思 とは関係な く (大抵 の場合 は親 の都合 で)、 そ れ まで暮 らして いた出身国の生活 を離れて 日本へや っ て くる。そ のため 当該児童生徒は、来 日した途端、言 葉 も文化 習慣 も友達関係 も学校での勉 強 も、 どれ もが 自分 との 「つなが り」 を失 った状況 に陥 る。そ の 「つ なが り」 を少 しず つ創 り出 し、社会生活が営めるよ う に導 くことが 「支援」なのではないか と筆者は考える。
縫 部 (2006)は外 国人児童生徒の教育 を考えて い く 上で の 「つ なが りの教育」の重要性 を述べ、彼 らを取
り巻 く環 境 とのつなが りに関 して 「先 生 とのつなが り」 「級 友・ 友 達 とのつなが り」 「家族 とのつなが り」 「地 域社会 とのつなが り」 「いろい ろな教科 との つなが り」 「日本語 とのつなが り」等 を挙 げて いる。
筆 者 は これ らの 「つ なが り」 を参考 に、学 生 ボ ラ ン テ ィアが行 って いる支援の有 り様 を分析 し、矢崎・ 宇 都宮 佗00η にお いて以下の6つの 「つなが り」 の創 出 につ いて考察 した (p160).
上記 の うち、J〜d)は人 と人 との 「つなが り」 を表 して い る。 この うち、Jと り は 、学 生ボ ランテ ィア が 当事者 とな り、当該児童生徒・ 教員 との良好な関係 性 をつ くる とい う「つなが り」 で ある。 一方 、J、 J
は、学 生ボ ランテ ィアは仲介役 として関わ り、当該児 童 生徒 と教員・ クラスメイ トとの間に創 出 した 「つな が り」 で あ る。Jは日本語 、f〕 は教科学 習 内容 との
「つなが り」であるが、 これ は学生ボ ランテ ィアが当 該児童 生徒 に対 して、基本的 には 「教授す る」形で創 出 して いる とい うことがで きる。
ここで従来の外国人児童生徒支援 のあ り方 を考 えて み る と、 これ まで盛 ん に議論 されて きたのは、上記の 6つの 「つなが り」の うち、主 に Jの日本語 と f)の 教科学習 内容 との 「つなが り」 につ いてで あった。 つ ま り、 日本語指導が必要な児童生徒 に対 して、いか に 日本語 と教科の内容 を身につ けさせ るかが重要な議題 とされ て きたのである。そのため、当該児童生徒への
支援 といえば、大抵の場合、 「取 り出 し」や 「入 り込 み」 という指導形態 を とり、個別対応で支援 を行 うこ とが重視 されてきた。その状況 を図示す る と図1のよ うにな る。
① ① ◎ ・ Э
③ ① ① 9
① ① ①
③ ① ①
図1 従来の 「支援」の状況 (在籍学級教室内)
全体 は教室内を示 してお り、 「S」 は 「支援 者」、
「F」 は 「日本語指導が必 要な児童生徒」 、 「T」 は
「学級担任等の教員」 、 「J」 は 日本 人 をは じめ とし た 「マジ ョリティの児童生徒」 をそれぞれ表 している。
ここでのSの主な役割 は、 当該児童生徒のため に 「入 り込み指導」 にお いて授業 中の教科学習の補助 をす る ことであ り、また、 「取 り出 し指導」 にお いて別室で 日本語や教科内容 を教える ことであった。
しか し、残念なが らこのよ うな支援状況 の中か らは
「S一F」 間以外 の関係性 は生 まれ に くい。なぜな ら、
支援者 は通 常 、 当該 児童 生徒 の 日本 語や 教科 学習 の
「支援」 のた め に学校 (教室)に入 るか らで あ る。
「支援」 を忠実 に行お うとすれ ばす るほ ど、教室内に はSとFとの特別な空間ができあが ってい く。そ うな る と、教室内のTやJの中 には、 「Fを支援す るのは
Sの役割」 「Sは Fを支援 す るため に学 校 に来て い る」 とい う固定化 した意識ができあが って しま う。 し か し本来あるべ き支援 とは、Sのよ うな 「特別な人」
だ けがFに関われ ばよ い とい うもので はな い。 さまざ まな教員やFの周 りの児童 生徒た ち も一緒 に支援 に関 わ り、すべて の子 どもたちがFとともに成長 していけ るよ うな環境 を整える ことこそが重要なのではないか と筆者は考 える。
2.2 新 しい 「支援」のあ り方 2.2.l 文科 省『学習指導要領』か ら
外 国人児童生徒や海外か ら帰国 した児童 生徒等の異 文化 を背景 とした子 どもた ちの教育や指導 のあ り方 に 関 しては、文部科学省 (2008b・ 2008c)にもその記 述 が あ る。 この2つ は 「児童」 (小 学 校)の表 現 が
「生徒」 (中学校)に置 き換わ るだ けで内容的 には同 学 生ボランティアと日本 語支援 が必要な児童生徒 と
のつながり
学 生ポランティアと在籍学級担任教 員とのつなが り 日本語支援が必要な児童生徒と在籍学級担任教 員 らとのつなが リ
日本語 支援 が必要な児童生徒 とクラスメイトとのつ なが り
日本語 支援が必要な児童 生徒と日本語とのつなが リ
日本語支援が必要な児童生徒 と教科学習内容との つながり
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学生ボ ランテ ィアによる 「つ なが りづ く り」 の支援
じた め 、 ここで は 『小 学 校 学 習 指導 要領 解 説 総 則 編 』 いp78‑7動 か ら、注 目すべ き箇所 を以 下 引用す る。
なお、 引用文中のA〜Eの表示お よび下線 は筆者 によ る もので ある。
8 海外 か ら帰国 した児 童や外 国人の児童の指導 (第
1章第4の2(8))
(8)海外 か ら帰 国 した児童な どにつ いては、学校生 活への適応 を図る とともに、外国における生活経験 を 生かすな どの適切な指導 を行 うこと。
国際化 の進展 に伴 い、学校現場では帰国 児童や外国 人児童 の受 け入れが多 くな って いる。<中略>これ ら の児童 の受 け入れ に当た って は、一 人一 人の実態 を的 確 に把握 し、当該 児童が 自信や誇 りをもって学校生活 にお いて 自己実現 を図 る ことができるよ うに配慮す る
ことが大切である。 (A)
海外か ら帰国 した児童や外 国人の児童の中には、 日 本語の能 力が不十分であ った り、我が国 とは異な る学 習経験 を積んでいる場合が ある。 このため、 日本語 の 習得 につ いては、 日常 的な取組 を基本 としつつ、特 に 文字 の読み書 きにつ いては、段階的、効率的な指導 を 工夫す る ことが必 要で あ る。 (B)<中略>
特 に、言葉 の問題 とともに生活習慣 の違 いな どによる 不適応 の問題が生 じる場合 もあるので、教師 自身が当 該 児童の在留国に園心 をもち、理解 しよ うとす る姿勢 を保 ち、温か い対応 を図 る とともに、当該児童を取 り 巻 く人間関係 を妊 ま しい ものにす るよ う学級経営等 に お いて 配 慮 す る必 要 が あ る。 また、外国人児童につい て は 、課 外 にお いて 当該 国 の言 語 や 文化 の堂 習 の機 会 を設 け る こ とな どに も配 慮 す る こ上 が大tJJであ る。
(C)
また 、海外 か ら帰 国 した児 童 や 外 国人 の児 童 は、且 本 の 児童 が 経 験 して いな い外 国 で の貴 重 な 生活 経 験 を も って い る。外 国 で の 生活 や 外 国 の 文化 に触 れ た体 験 を、本 人の 各 教 科 等 の学 習 に 生か す よ うにす る と と も に、他 の 児童 の堂 習 に も生か す よ うにす る こ とが 大 切 で あ る。 さ らに、外 国で 身 に付 けた ものの 見方 や 考 え 方 、感1青や 情 緒 ゝ 外 国語 の能 力な どの特 性 を生かす よ
う配 慮 す る こと も大 切 で あ る。 (D)<中 略>
この よ うな 、 海 外 か ら帰 国 した 児 童や 外 国人 の児童 に つ い て は 、 本 人 に対 す る き め細 や か な 指 導 と と も に、他 の 児童 につ いて も帰 国 した 児童や 外 国 人 児童 の 長 所 や 特 性 を認 め 、 広 い視 野 を もって 異 文化 を理 解 し 共 に生 きて い こ つ とす る姿 勢 を育 て るよ う配 慮す る こ とが 大 切 で あ る。 そ して 、 この よ うな相 互 啓 発 を涌 じ て 、互 い に尊 重 し合 う態 度 を育 て 、 国際理 解 を深 め る と と も に、 国 際社 会 に生 き る 人間 と して望 ま しい能 力
│や態 度 を育 成 す る こ とが 期待 され る。 (E)
引用文中のA〜Eの箇所 のポイ ン トを筆者の観 点か らま とめてみ ると、次のよ うになる。
A:日本 の学校 に入 る外国人児童等が増加 して いる こ とを示す と同時 に、一人一人の児童の実態 にあわせ る こと、特 に当該児童 の場合はアイデ ンテ ィテ ィに 配慮 した対応が大切で あることが書かれて いる。児 童の 「自信や誇 り」 「自己実現」 とい う点では、 日 本人児童 も含 めたすべての子 どもたちの教育 にあて はまる事柄で ある ともいえるだろ う。
B:日本語 の指導、特 に読み書 き能力は習得 され に く いため、そ の指導 の必要性 について述べて いる。
Ci外国人児童等の場合、言葉 の問題だけではな く、
生活習慣 の違 いか ら問題が生 じる ことが ある。そ の ため、教師 自らが当該児童の背景 にある文化 を理解 しよ うと努 め、また 当該児童 とクラスメイ トらとの 間の人間関係が良好 に保て るよ う学級経営等 に配慮 す る必要性 を述べて いる。 このよ うな異文化 を理解 しよ うとす る姿勢 を示す ことや、良好な人間関係 を つ くる配慮 とい うのは、 「当該児童生徒 の周 りの環 境 を整え る」 とい うことに他な らない。 さ らに注 目 され るのは、当該児童の母言語・母文化学習への配 慮 にまで言及 して いる点である。
D:A〜 Cは、外国人児童等 に対す る指導 をどのよ う にす るか とい う視点か らの記述であったが、 D・ E では、当該児童 の存在が 日本人児童 らマジ ョリテ ィ の子 どもたちの教育 に とって も有益である ことが述 べ られて いる。 当該児童が もっている母文化や独 自 の経験は、決 して隠すべき ものではな く、む しろマ ジ ョリテ ィの子 どもたち との教育 の中で生か され て い くことが大切である とい う考 え方 を示 して いる。
そ してそれ を可能 にす るの も、や は り教師の力量で ある とい うことである。
E:ここでは、外 国人児童等 に対す るきめ細か い指導 の必 要性 とともに、当該児童 の長所や特性 を生か し、
マ ジ ョリテ ィの子 どもたちの視野 を広 げ、異文化 と 共 に生 きて い く姿勢 の育成 につなが るよ うに配慮す る ことが重要で ある と述べて いる。そ して最後 に、
「相互啓発」 のプロセスを経 ることによって、マイ ノ リテ ィで ある当該児童 とマ ジ ョリテ ィで ある 日本 人児童 とが互 いに尊重 し合 い、国際理解 を深 め、国 際社会 に生きる人間 としての能 力・態度が育成 され る ことを期待 して いると結んで いる。
つ ま り、以上 の文面の中には、マイ ノリテ ィとマ ジ ョリテ ィ との相互啓発 によって双方が変容 して い き、やがて はそ こに新 しい価 値が生み出 され る とい う 「多文化共生」 の 目標が掲 げ られて いるのである。
2.2.2 「A+B→ C」 の考え方
佐藤 (2001)は、 「学校 の多国籍化 、多民族化、多 文化化 の進行 は、学校 の支配 的な価 値 とそれ を支える 構造 とを顕在化 させ る」 と述べ、 「学校 での共生 を実 現す るには、そ う した支配 的な価値 とそれ を支える構 造 とい うコ ンテ クス ト自体 の問い直 しが求 め られ る」
と し、民族的なマイ ノリテ ィの子 どもの教育の推移 に つ いて以下のよ うに説明 して いる (pp141‑142).
。・・ 民族的なマイ ノリテ ィの子 どもの教育の推移 を 図 式 的 に説 明す るな らば、 当初 はマ イ ノ リテ ィをマ ジ ョリテ ィの文化 に組み込んでい くA(マジ ョリテ ィ の 文化)+B(マ イ ノ リテ ィの 文化)→ Aとい う
「同化教育」が中心であった。やがて、 「文化相対主 義 」 とい う視点が強調 され 、マイ ノ リテ ィの文化 を尊 重す る もののマジ ョリテ ィの文化 は固定 したままの、
いわ ばA tt B→ A tt Bと い う 「統合教育」 に向か って きた。つま り、帰国子女教育や外 国人の子 どもの教育 を 日本 の教育 とは別枠 で構想 し、 「分離主義」 を志向 して きたのである。 日本の教育 をそ のままに して、マ イ ノ リテ ィの子 どもの一方 的な譲歩 を要求 す るか 、あ るいは多 くの 「日本語教室」 のよ うに、学校の周縁 に 位 置づ ける とい う分離 型の教育 として展 開 されて きた のである。それがよ うや く、 「共生」 とい う理念の も と、マ ジ ョリテ ィとマイ ノリテ ィとの相互作 用を通 し て新 しい価値創造が可能 にな るよ うなA tt B→Cとい う 「共 生教育」 の必 要性が提起 され るよ うにな った。
2.2.1で引用 した 文科 省 (2008b)の記述 を上記文 中 の3つの 図式 に照 らし合わせ て み る と、そ こには
「A+B→ A」 の 「同化」で もな く、また 「A+B→
A+B」 の 「分離」で もな く、 「A tt B→C」 とい う
「共 生」 の考 え方 が見 えて くる。 つ ま り、国 (文科 省)として は学校現場 にお ける多文化化 の進行 に対 し て 、 「共生」の理念の方 向性 をもって臨 もうとして い る とい うことで ある。ただ、実際 にはほ とん どの学校 が マジ ョリテ ィ (日本 人)に焦点 を当てて 日頃の教育 活動 を営んで いるため、 日本 の学校 現場で はなかなか そ の理念 は浸透せず 、異文化 を背景 と した児童生徒 を 学校 に迎えて も、 「同化」や 「分離」 に陥 りがち にな る とい うことであろ う。
で は、 「A tt B→C」 とい う 「共 生」 の理念は どの よ うにすれ ば学校現場で実現が可能 とな るのだろ うか。
この難 しい課題に対 して1つの ヒン トを与えて くれ る のが 、学生ボ ランテ ィアによる 「つなが りづ くり」の 支援で ある。
2.3 「つなが りづ く り」支援の プロセス
「共 生」で大切な ことは、やは り何よ りも人 と人 と
の 「つなが り」であろう。本項では、2.1で示 した6 つ の 「つなが り」 の中か ら特 に J〜 Jに焦点 を当て 、 学 生ボ ランテ ィアが どのよ うに人 と人 との 「つ なが り づ くり」 に関与 して いるか 、図示 しなが ら述べてい く。
→ 学生 ボ ラ ンテ ィア (S)と日本語支援 が必要な児 童生徒 (F)とのつなが リ
これ は、Sと Fとが確固と した信頼関係 によ って結 びつ くことを意味 し、その後の学習活動 を円滑 に営 ん でい くた めの基盤 とな る 「つなが り」で ある (図2)。
この信頼関係 の構築な くしては、Sによ る以後 の支援 は成 り立たない といって も過言ではない。
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と当該児童生徒(F)との つなが り
b)学生ボランテ ィア (S)と学校の教員 (丁)との つなが り
この 「つなが り」 は、SとTとの信頼関係 の構築 を 意 味 して いる (図3)。 Fの支援 を充実 させ るために は、Tとの連携 は必要不可欠の要素である。なお、 こ こでの 「T」 は学級担任だ けではな く、Fの教育 に携 わ るすべての教員 を指す ものである。
図2 学生 {S)
図3 学生{S)と教 員{丁)とのつなが り
学生ボ ランテ ィアに よる 「つ なが りづ くり」の支援
c)日本語 指導が必要な児童生徒 (F)と在籍学級担 任教 員 ら (丁)とのつなが り
これ は、前頁 のS一 F、 S―Tとの 「つなが り」 を つ くった後、Sは Fと Tとの間に入 り、両者間の 「つ なが り」 をつ くる ことを意味 して いる (図4)。 日本 語が うま く使 えな いFは、Tとの関係性 をなかなか構 築で きず 、 またTも Fに対 して どのよ うに接 した ら良 いかがわか らな いケースが多 い。そ こでFが仲介 役 と な って、関係性が生まれ るよ うに双方 に働 きか けを行
うので ある。
図4 学生(S)を媒介 と した 当該児童生徒{F)と 教 員(丁)と のつながり
このFとTとの 「つなが り」 をつ くる ことの重要性 は、Sが支援 に入 らない時 もしくは将来的 に支援 に入 らな くな った際 にも、FとTとの間の関係性が持続 し、
Fを取 り巻 く環 境 が 整備 され る とい う点 にあ る (図 5)。 このよ うな関係性が生まれれ ば、Sが不在 の時 にも、Fは Tによ る直接 的問接 的な支援 を受 ける こと がで きるよ うにな る と考 え られ る。
図5 当該児童生徒 {F}と 教員{丁}とのつなが りの 持続
d)学生 ポランテ ィア (S)とクラス メイ ト (J)と
のつなが リ
2.1では0を 「日本語指導が必要な児童生徒 (F) とクラスメイ ト(J)とのつなが り」 として示 してい るが、dにお ける 「つなが りづ くり」 のプ ロセスを考 え ると、Sと Fとの 「つなが りづ くり」 (図6)の後 には、Sと 」との 「つなが り」 をつ くる ことが必 要で ある と考え られ る。そ こで、 ここで新た に 「Sと 」と のつなが り」 を付 け加 える ことに した (図 7)。 これ までの支援 のあ り方 を見 る と、Fへの直接支援 の考え 方 のみが語 られ ることが多かった。 しか し、 「Fを取 り巻 く環境 を整備す る」 という視点 に立て ば、SがF
以外 の児童生徒 ら (」)とも積極的 に 「つなが り」 を つ くることの重要性が見えて くる。
図6 学生(S)と当該児童生徒{F}とのつなが り
│││
図7 学生 {S)と クラスメイ ト{J)と のつなが り
e)日本語指導が必要な児童生徒 (F)とクラスメイ 卜(J)とのつなが り
d)の 後 の段階は、 「Fと Jとのつ なが り」 をつ くる ことである (図8)。 日本語能 力にハ ンデ ィがあるF
は、教室内 にお いて 」との良好 な関係性 を構築す る こ とがなか なか難 しい。そ こで dと同様 、Sが Fと J との仲介役 とな り、両者 に 「つなが り」が生 まれ るよ
うに双方へ働 きか け を行 うとい うもので ある。 こうし たFと Jとの 「つ なが りJをつ くる ことの重要性 は、
Sが支援 に入 らな い時 も しくは将来 的 に支援 に入 らな くな った際 に も、FとJとの間の関係性が持続 し、F
を取 り巻 く環境が整備 され る とい う点 にある (図9)。
良好 な関係性 が構 築 され る ことによ って 、Sが不 在の 時 に もFは」によ る何 らかの支援 を受 けることが可能 とな る。 また 、Fを温 か く受 け入れ て いるとい うクラ ス 内の 「支持的風 土」 (縫部 1999)の醸 成 に もつな げ る ことがで きる と考 え る。
図8 学生 {S)を 媒介 とした当該児童生徒{F〕 と クラスメイ ト{」 }とのつなが り
図9 当該児童生徒IF)とクラス メイ トIJ)との つなが りの持続
2.4 「多文化共生 コーデ ィネ ーター」 としての役割 ここまでS自身が F・ T・ 」との 「つなが り」 をつ くった 後、今度 は仲介 役 とな って 「F―T」 「F―
J」 相互の 「つなが り」へ と結びつ けるプロセス につ い て 述 べ て き た 。 こ れ を 佐 藤 (2001)の 図 式 (2.2.2)で 考 え て み る と、A(マ ジ ョ リテ ィ=教
員・ クラスメイ ト)とB(マイ ノ リテ ィ=当該児童生 徒)とをつなげtCという新 しい「共生の環境」とい う価値が創造されているということができるだろう。
∩
D①
つ ま り、支援者である学生ポ ランテ ィアはA tt B→C
とい う 「化 学反応」 を起 こす 際 の 「触 媒」 の役割 を 担 って いる ことにな る。そ して この 「化学反応」 は、
「A」 「B」 とい う異質の もの同士 を結びつ ける、い わ ば多文化共生の 「クロスカ ップ リング」 ともいえ る ものである。
支援者 を 「触媒」 とす る 「クロスカ ップ リング」 を 重ね る ことによ って 、 ク ラス 内 に 「多 文化共 生 の環 境」が倉1られて い く。そのプ ロセス を図で表 してみ る
と、以下のよ うにな る。
まず 、SがF・ T・ 」との 「つな が り」 をつ くる (図 10)。
図10 学生 (S)と 当該児童生徒 〔F)・ 教員{丁 )・
クラスメイ ト{J)と のつなが り
次に、F・ T・ 」相互が結びつ くようにそれぞれに 働きかけを行い、FOT・ 」との間に 「つなが り」 を つくり出す (図 11)。
図 ‖ 学生iS}を媒介 と した 当該児 童生徒 (F)・
教員(丁 )・ クラスメイ ト{」 )相 互のつなが り
そ して最終 的には、Sがそ の場か ら離れ た として も
FOT・ J相互 の 「つなが り」が持続す る 「多文化共 生の環境」が整備 され る (図 12).
学生 ボ ランテ ィアによる 「つ なが りづ く り」の支援
割は、Fの単なるサポーターではな く、教室内に多文 化共生の環境をつくるためにさまざまな人へ働きかけ を行 う「コーディネーター(coordinator)」 であると いうことができるだろう。
2.5 「つなが りづくり」支援の実際
静岡大学の日本語 。学習支援学生ボランテイア団体 は、2007年に学生 自身 によって 「ONES」 (ワン ズ)と名付けられた。そ してその設立以来、 「自立 と 共生」を理念に掲げて活動を行 ってきた。ONES学
生が 2010年に作成 した『ONES支 援手引き』に関 連の記述があった。その部分 を以下に引用する わ2)。
ONESの 目的
・「自立する」
外国人の子どもたちが 日本で生きていくために「自 立する」 ことを手助けします.
・「共生する」
子どもたちがクラスメイ トや周 りの子供たちと「共 生 していく」ための環境をつくります。
・「多様性を生かす」
子 どもの力を一歩一歩伸ば していき、子どもそれぞ れの違いや「多様性を生か し」ます。また支援をも とに、 日本人の子 どもたち に国際理解を促進 しま す。
上記か ら見て取れ るよ うに、ONESの 支援 は外 国 人の子 どもたちの 「自立」 を促 すだけではな く、 日本 人の子 どもたち との 「共 生」 の環境づ くりを目指 した ものである。そ して異な る人 同士 の 「多様性」 を生か す ことによ って国際理解へ とつな げ、子 どもたちの変 容 を願 って いる。 この 目的 を達 成す るために取 り組 ん で いる と考 え られ るのが、 ここまで述べてきた 「つな が りづ く り」 の支援で ある。
では、 このONESの 学 生 ボ ラ ンテ ィアたちは、具 体 的にどのよ うな 「つなが りづ くり」 を行 って いるの だ ろ うか。学生ボ ランテ ィアたち による支援 の実際 に つ いて、 これ までの支援記録やONES(2010の記述 の 中か ら主な実践例 を抽 出 し、以下に紹介す る。ON ES学生 も 日本語や教科学習 の支援 を行 って いるが、
ここでは彼 らの活動の特徴 をよ く示す、次の5つの人 と人 との 「つなが りづ くり」 を取 り上げる。
J 学生ボランティアと日本語支援が必要な児童生徒 とのつなが り
Ы 学生ボランティアと教員 とのつなが り
c)学生ボランティアとクラスメイ トとのつなが り
d)日本語支援が必要な児童生徒 と教員とのつなが り
d 日本語支援が必要な児童生徒 とクラスメイ トとの つなが り
図12 当該児童生徒{F)口 教員{丁 )・ クラスメイ ト {J)相互のつなが りの持続
こ こで図 10〜 図12を 2.1の図1と比べてみる と、
Sの役割 の違 いが 明白とな って くる。
図1では、Sは「Fを支援す る人」 として教室 に入 り、 「入 り込み」や 「取 り出 し」 による支援 を行 う支 援 者 で あ る 。 こ れ は い わ ばFの 「サ ポ ー タ ー (supporter)」 と して の存 在 であ る と言 うことがで き る。教室内の居場所 は物理的・精 神的 に どち らか とい えば周縁部 に位置づ け られ、 「Sと F」 の空間がそ こ にはで きあが っている。SがT・ 」に対 して働 きか け を行 うことは少な く、F―T、 F tt」 の 「つなが りづ く り」 に関与す る場面 もほ とん ど見 られ ない状態であ る。
一方 、図 10ではSの居 場所 は教室 内の中央部分 に 位 置づ け られ 、Fだけで はな くT・ Jに対 して も積極 的 に働 きか けを行 って いる。そ して次 の段階 として、
F一 T、 F―」の 「つなが りづ くり」 を意識 した支援 を展 開す る (図 11)。 そ れ は、Sが教 室 に入 らな い 日や 、や がて支援その ものか ら離れた 日の ことを見据 え、Fを取 り巻 く 「つなが り」が持続す るよ うに支援 を展 開 して いるので ある (図 12)。 こ こで のSの役
① 聰 ①
①
①
① ①
① ①
① ①
図1 従 来の 「支援」の状況
J 学生 ボ ラ ンテ ィア と 日本語支援が必要な児童生徒 との つなが リ
○当該児童 と仲良 くなるために、子 どもの興味・関心 のあ りそ うな こと/ものを取 り上げていろいろ試 し てみる。 (絵本、図鑑、ゲーム、お もちゃ、遊び道 具、絵カー ド、パソコン、絵 を描 く、外で遊ぶ等)
○ 当該児童生徒の母語を使ってみた り、出身国の文化 や習慣 を話題 として取 り上げた りする。
○使 う教材は、できるだけ学生の手作 りのものにする と子 どもたちはとても喜ぶ。
○少 しで もできるようになった ら、とにか くほめる。
○答え合わせの ときに花丸のつけ方 を工夫するとよい。
0 学生ボランテ ィアと教員 とのつなが り 実践例
○先生たちへのあいさつをしっか りと行 う。
○ 「取 り出 し支援」を行 う際の授業案をつ くり、事前 に教頭先生や担任の先生に見ていただ く。
○ 「取 り出 し支援」の後、先生にその報告を行い、以 後の支援計画 について相談する。
○ 「取 り出 し支援」や 「入 り込み支援」の際、当該児 童生徒の様子 について気づいた ことを先生に伝える。
○先生方は とにか く忙 しいが、休み時間等に学生の側 か ら積極的にコミュニケーションをとるようにアプ ローチする。また、担任の先生以外 との関係 も大切 にする。
○話す時間が取れない場合は、先生 との 「連絡・相談 ノー ト」などをつ くり、や りとりをするよう努める。
○支援 の形態 と しては主に 「取 り出 し」 と 「入 り込 み」があるが、子 どもの実態を見て両方の支援が必 要と感 じた ら、先生方に率直に相談 してみる。
c)学生ボランテ ィアとクラスメイ トとのつなが り
○学生ボ ランテ ィアの意識 として、外国人の子だけで はな く、 クラス全員 の子 どもたちを視野 に入れて支 援 を行 う。具体 的 には、 入 り込 みの際 に 日本 人の子
どもた ちの学習支援 も行 うよ うに心がける。
○特 に高学年 では、授業 中に自分だけ支援 され る こと を嫌 う子 もいるので、クラス全体 の子 どもたちを見 なが らそ の子 を指導す る と良い。
○ 日本 人の子 どもた ちの名前 を覚 え、積極 的 に話 しか けた り、休 み時間 にいっ しょに遊 んだ りして 、学生 自身が ク ラス メイ トと仲 良 くな るよ うにす る。
練習する。
○子 どもが担任の先生に今 日の 「取 り出 し授業」で勉 強 したことを報告する。
○子 どもが先生に何かお願 いしたい時、学 生ボ ラン ティアがその言い方 を教えて上手に言わせ るように する。 (例「先生、えんぴつ貸してください」)
J 日本語支援が必要な児童生徒とクラスメイ トとの つなが り
実践例
〇 「取 り出し」でクラスを離れるときに、大きな声で
「いってきます!」 と言い、帰ったときには 「ただ いま!」 と言わせる。担任の先生も協力 して くださ り、 クラスメイ トは大きな声で 「いって らっしゃ い!」 「がんばってね!」 や 「おかえ り!」 と返 し て くれた。 ③
O休み時間には、学生は外国人の子 どもと日本人の子 どもとが一緒に遊べるよ うに働きかける。外に出て 鬼 ごっこ、なわとび、 ドッジボール等で遊ぶ ことが できるし、室内でもハンカチ落としゲームな どがで きる。雨の 日にひ らがな トランプや漢字す ごろくな どをクラスメイ トと一緒 にやった ら、みんなが仲良 くなることができた。
○ひ らがなや漢字の学習の ときに、クラスメイ トの名 前を取 り上げて覚えさせて、友だちを名前で呼べる ようにする。
○ クラスメイ トに何か親切にして もらった ら、きちん と「あ りが とう」 と言えるようにする。
○外国人の子 どもが何かできないでいるときには、学 生がす ぐに教えて しまうのではなく、周 りのクラス メイ トに「教えてあげて」 と頼む。
○班での学習のときにクラスメイ トと外国人の子 ども との間に入って話 し合いを進める。 日本人の子 ども たちだけの話 し合いにな らないように (外国人の子
どもも参加できるように)話を振るよ うにする。
3.学生 による学びの振 り返 りと学校か らの評価 本章では当該支援活動が どのような学生の学びに結 びついているか、また、学生ボランティアを受け入れ ている学校側は学生の支援 をどのように評価 している かについて述べる。
3.1 学生 による学びの振 り返 り
学生ボランティアによる 「支援活動 を通 しての学び の振 り返 り」を以下に紹介する。 この中には、 「つな が りづくり」の実例がたくさん含まれている。 「交友 関係づ くり」 「日本語を話せる環境づ くり」 「人と人 とをつなぐ触媒 としての働き」 「他の子 どもたちへの まなざし」 「子 ども同士が助け合える環境」 「先生や クラスメイ トとの関わ り」等々である。紙面の都合上、
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学生 ボランテ ィアによる 「つ なが りづ く り」の支援
ここでは1人の学生の振 り返 りのみ しか紹介 できな い が、 この他 に も多 くの学 生ボ ランテ ィアたちが 「つな が りづ く り」 支援 の意義深 さを感 じ、報告 して くれて いる ことを付 け加えてお きた い。
・・・交友関係づくりは私が支援で一番大きな課題 として取 り組んだことです。なぜな ら、いくら日本語 を上手 に話せた としても、話す機会がなければ覚えた 日本語を使用することな く終わって しまうか らです。
覚えた 日本語を使えるよ うな、そ して使いた くなるよ うな環境を教室内に創 ってあげることが必要なので す。その点で、私 自身が外国人児童とクラスメイ トと の間に入ることで、貢献できたように思います。
外国人児童だけを見るのではなく、他の子 どもたち にも目を向けてあげることで、クラスの中で外国人児 童だけが 「特別」で、みんな と「一線を引いた存在」
ではな いことを理解 して もらえるよ うに心が けま し た。そ うすることで、同 じクラスメイ トとして外国人 児童 も対等 に接 してもらえるようにな りま した。一番 危険なのは、「○○にはポランティアの先生が来るか ら僕たちは何 もしな くて大丈夫だ」という考えを他の 子 どもたちが少 しで も感 じて しまうことです。む し ろ、クラスメイ トとして 「僕たちが○○の面倒を見て あげなければ」と感 じて もらうことが、私は一番大事 な ことだと思います。支援者 (私)がいな くても、子 どもたち同士が助け合 って生活できる環境 こそが、外 国人児童にとつて心地よい環境になるのです。私は、
今回の支援を通 して環境づ くりの大切さを一層深 く認 識 しま した。
支援をするか らにはそれな りの責任も伴いますが、
それ以上に達成 した時の喜びは大きかったです。○○
くんか ら、「ぼくのために毎週来てくれてあ りがとう ございます。おかげでぼくも日本語をうまくつかえる ようにな りま した。1年間楽 しかったです。あ りがと うございま した」という手紙をもらった時は1本当に 嬉 しかったです。
それ に加え、学校の先生方にも感謝 したいです。学 生 に「取 り出 し指導」をさせるということは、学校側 にも大きな リスクがあると思います。先生方は「支援 に来て くれてあ りがとう」 と言 つてくださいますが、
感謝 したいのはこち らの方です。このような貴重な体 験をさせていただき、本 当に感謝 しています。先生の 信頼を少 しで も勝ち得るために、私は「取 り出し」で どんな ことをやっているのか 「支援計画」を出すこと で、支援内容を伝えよ うと心がけま した。 これ もまた 担任の先生や教頭先生 と連携を保つ上で有効だったと 思います。私が「取 り出 し」での○○くんの様子をお 話 しすると、担任の先生 も○○ くんのご両親 と話 した ことや、 日本語指導センターでの様子、家での○○ く
んの様子な どを教えて くだ さいま した。私が見ていな い○○ くんの様子 を知る ことができ、支援 に生かす こ とがで きま した。
これで今年度の支援は終わ りま した。最終 日に、○
○ くんだ けでな くクラスの子 どもた ち も皆私が来る こ とを毎週楽 しみ に していた ということを聞きま した。
ONESの 活動のよいところは、支援者 と児童の一対
―の関係ではな く、先生 やクラスの子 どもたちとも関 わ る ことがで きるとい う点だ と思 います。支援者 自身 が担任の先生や クラスメイ トと仲 良 くなる ことで外 国 人児童 と先生、 クラスメイ トとの関係 も改善 され る と 感 じま した。来年度 も、機会 を見つけて この活動 にま た参加 した い と思 います。
(2009年 2月 学生Kによ る学びの振 り返 り)
3.2 学校か らの評価
静 岡市教育委員会学校教育課が 「日本語・ 学習支援 ボ ランテ ィア派遣制度」 に関するア ンケー ト調査 を実 施 した (2010年 12月)。 学 生ボ ランテ ィアによ る支 援活動 を学校側か ら評価 して も らう目的か らである。
結果 は以下の とお りであった。なお、 これ は調査 当時 にONESの 学 生が支援 に入って いた市内小中学校 6 校か らの集 計結果である。支援活動 自体や学生の姿勢 に対す る評価 は概ね肯定的で、要望 として も 「効果が あるので もっ と支援 の回数 を増や して ほ しい」 とい う 趣 旨の意見が多か った。
◎学生ボ ラ ンテ ィア支援の導入は効果があ りますか。
1 かな りある (4)
2 ある (2)
3 どち らともいえな い (0)
4 あま りな い (0)
5 ほ とん どな い (0)
◎ よろ しけれ ば上記の理 由をお書 き くだ さい。
○ 「1 かな りある」の意見
・横 にいてタイム リーに支援 して くれ るので とて も助 か る。
・ 日本語指導が必要な児童以外 にも、一斉の指示を聞 き取れな い児童 も支援 して くれ るのであ りがた い。
・ 日本語 を早 く覚え、生活面 (友達 関係な ど)が安定 する。
・授業内容の理解 によ り、学習意欲の向上を図ること がで きる。
・子 どもた ちが意欲 的 に学習に取 り組んでいる。
・子 どもた ちが 自分の想 いや学校 ・家庭での様子を親 しげに (学生 ボラ ンテ ィア に)話している。
・担任だ けで は当該児童 に常 に寄 り添 った指導はでき な い。そのため支援員が横で指導を して くれ ること
は大変効果がある。
○ 「2 ある」の意見
・訪問指導が週1回のところを埋めていて短期で集中 して学習ができるのでよい。
・児童に対 して心のケアができる。
・児童の学習意欲が向上 した。 (何をすればよいのか、
今や つていることが正 しいのか等をす ぐに質問でき るため、心の安心感が児童の表情 に表れている。)
◎ご意見・ご要望があればお書きください。
0回数が 多 くなる とあ りがた い。(複数 回答}
。日本語の理解 力を向上 させ、 日常の生活が楽 しくな るよ う関わ つて もらえる とあ りがた い。
・ できれ ば半 曰くらい支援 に入 ってほ しい。
自学生ポランテ ィアはとて も性格が良 く、ま じめな人 た ちなので、ぜひ来年度 も協力をお願 い した い。
・ 中にはまだ遠慮気味の学生 もいるので 、 もっと積極 的 に関わ ってほ しい。
・ 支援が必要な児童 に一生懸命 にかかわ り、支援 して くれ る。担任1人で はなかなか行 き渡 らな い指導の 貴重な補佐役 とな って いる。
4 ま とめ と今後の課題
学校現 場 に限 らず、 「多文化共生」 の実現 は決 して たやす い ことではな い。 しか し、学生ボ ランテ ィアた ちは 「A+B→ C」 を 目指 して 「つなが りづ く り」の 支援 を展 開 して いた。 これか らの支援 のあ り方 は、従 来 の 「支援す る人一 され る人」 とい う固定 した関係で はな く、 さまざまな人 と人 との 「つなが り」 をつ くり、
共 に協 力 し合 い、生きて いける環境 を整備す る ことに 向か って いかな けれ ばな らな い。そ して この 「フなが りづ く り」支援 は、その意識 さえ持て ば、若 い学生に 限 らず誰 で も実行可能な ものであるはず だ。
調 査 結 果 で は、学 校側 の評価 は肯 定 的 な ものが多 か ったが、学生ボ ランテ ィアによる人 と人 との 「つな が りづ くり」 に関す る記述 は少なか った。学生の学び の内容 と比較す ると、そ こには両者の 「支援」 に対す る考 え方 にまだ若千の開きがあるよ うに も感 じられ る。
今後 は 「A tt B→C」 の 「C」 には具体 的 にどのよ う な 事例 が挙 げ られ るのか 、実践 を通 して学 生 ボ ラン テ ィアたち とともに考えて いきた い。
謝 辞
本論 文の執筆 にあた り、静岡市教育委員会学校教育 課 指導 主事 の大石純詩先生 には、貴重な資料 を ご提供
いただ きま した。心よ り御礼 申 し上げます。
注
(1)静岡市 の3つの支援 制度 につ いて は静 岡市教育委 員会 学 校 教育課 ホームベー ジ(『日本語指導が必 要
な児童 生徒 を迎えるにあた って 』p41を 参 照の こと (http:〃 www.gakkyo.shizuoka.ednet.jp∠ siryo/nih ongosidou.pdf)。 「通級指導」は市内3箇所 の会場 で実施 されて いるが、交通手段がな い等の理由で通 級 で きな い児童 生徒 も少な くな い。 また 「訪 問指 導」は指導 を受け られ るのが原則 10回まで とい う 制約が あ り、 「適応相談Jは相談員が多忙 なため、
必 要な時 になかなか支援が受 け られな い という課題 が あるとい う。
(D静岡市で は 「外 国人児童 生徒」 の他 、 「海外か ら の帰国児童生徒」や 「国際結婚家庭 の児童生徒」等 の 日本国籍 の児童生徒 も含 めて 「日本語指導が必要 な児童生徒」 とし、必要な支援が受 け られ る体 制 を 整えて いる。
(3この 「い って きます/ただ いま」 の他 、 「友だち の名前 を呼ぶ」 「『あ りが とう』を言 う」等 の実践 につ いては、矢崎 (2004)の「ソー シャル スキル学 習 を取 り入れた 日本語支援」 を参照の こと。
引用・参考文献
文部科学省 佗008J 「平成 20年度 日本語指 導が必 要 な外国人児童生徒の受入れ状況」
(http://ww‖ mext.go.jp/b̲menu/houdou/21/07/̲̲i csFiles/afieldfile/2009/07/06/1279262̲2̲1.pdf) 文部科学省 (2008b)『 小学校学習指導要領解 説 総則 』 文部科学省 (2008c)『 中学校学習指導要領解説 総則 』 縫 部 義憲 (1999)『 入 国児童 のた め の 日本 語 教育 』ス
リーエー ネ ッ トワー ク
縫部義憲 (2006)「<基調講 演>多文化共 生社 会 にお け る繋が りの教育 と人 と関わ る力の育成」 『学び合 い の多文化協働教育 一これか らの学級 の姿 とは一 (静 岡大学生涯学習教育研究セ ンター・教育学 部共催公 開シンポジウム報告書)』 静岡大学pp H‑29 0NES(2010)『ONES支 援 手 引き』
佐藤郡衛 (2001)『 国際理解教育 一多文化共生社会の学 校 づ くり』明石書店
静岡市教育委員会 (2010)「 日本語指導が必要な外国人 児童生徒の受入状況 (資料)」
静 岡 市 教 育 委 員 会 学 校 教 育 課・ 静 岡 大 学 教 育 学 部 (200"『 日本語指導が必要な児童生徒 を迎 えるにあ た って 』
矢 崎満 夫(2000「外 国 人 児 童 と 日本 人 児 童 とのイ ン ター アクシ ョンのための 日本語支援 一教室 内ネ ッ ト ワー ク形成 をめ ざ した ソー シャルスキル学 習の試み 一」 『 日本語教育 』120号 日本語教育学会pp103‑
H2
矢崎満夫0宇都宮裕 章 (2007)「 言語支援 教育 の展 開一
「日本語支援学生ボランテ ィア」 による環境づ くり
―」『静岡大学教育学部附属教育実践総合 セ ンター 紀 要』第14号 pp157‑166