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1.保育所第三者評価事業のこれまでの経緯

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山梨県における保育所第三者評価事業の現状

真 宮 美奈子/山 内 淳 子 はじめに

平成18年11月、「学校法人山梨学院」が、「山梨県福祉サービス評価推進機構」によ り、福祉サービス第三者評価機関として認証された。同法人のなかで、その業務を担 うのが、「山梨学院生涯学習センター地域福祉サービス研究部シリウス(以下 シリウ ス)」である。シリウスは、当面、山梨県内の福祉施設のなかでも特に認可保育所を 対象として、第三者評価事業を実施していくこととなっている。

山梨県内では、平成18年11月までに、学校法人山梨学院を含む計5法人が福祉サー ビス第三者評価機関としての認証をうけている。すなわち、福祉サービス第三者評価 事業の実施体制は、ほぼ整った段階にあり、いよいよ本格的な事業の推進がはかられ ようとしている。

認可保育所を対象とした第三者評価事業は、平成14年、全国保育士養成協議会(以 下 保養協)によってスタートした。以来、保育所第三者評価事業をとりまく状況は、

現体制が整うまでのこの4年間で大きく変化した。急激とも言える変化に対応しつ つ、その推進を積極的に図ろうとする動きが見られる一方で、山梨県内の認可保育所 の第三者評価受審数は伸び悩んでいるのが現状である。推進側と、受審する保育現場 との間に、第三者評価に対する認識の差があることは否めない。その進むべき方向性 については、未だ模索段階にある。

本稿では、シリウスの発足に携わった者として、山梨県の保育所第三者評価事業の これまでの経過と現状の整理に取組み、それを通して、第三者評価事業が保育現場に とって有意義なものとなるよう、その方途を探りたい。

1.保育所第三者評価事業のこれまでの経緯

「福祉サービス第三者評価」とは、「社会福祉法人等の提供する福祉サービスの質 を事業者及び利用者以外の公正・中立な第三者機関が専門的かつ客観的な立場から 行った評価」のことをいう1)

老人施設等の福祉施設が提供する福祉サービスの第三者評価事業は、平成9年、当 時の厚生省において検討が始まった社会福祉基礎構造改革において、その理念を具体

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化する仕組みの一つとして位置づけられた。社会福祉基礎構造改革は、社会環境の変 化による国民の福祉需要の増大・多様化を背景として、社会福祉諸制度の基盤となる ものの見直しを図ろうとしたものであった。平成12年4月には、介護保険制度がス タートした。同年5月には、制定以来約半世紀ぶりに社会福祉事業法が改正され、そ の名称も社会福祉法に変更された。これらにより、福祉サービスは従来の「措置制 度」から「契約による利用制度」へと大きく転換した。そうした状況では、利用者は、

自らにふさわしい、より質の高い福祉サービスを求めることができる。事業者は、質 の高いサービスを提供しなければ、利用者から選択されることが困難となる。結果、

「福祉サービスの質の向上」と「利用者への情報提供」を目的とする福祉サービス第 三者評価事業が、その必要性を増していったのである2)

法的にも、社会福祉法第78条に「社会福祉事業の経営者は、自らその提供する福祉 サービスの質の評価を行うことその他の措置を講ずることにより、常に福祉サービス を受ける者の立場に立って良質かつ適切な福祉サービスを提供するよう努めなければ ならない」と明記された。

こうした背景のもと、保育所第三者評価事業は、平成14年、保養協によってスター トした。その後、平成16年5月には、厚生労働省が、福祉サービス第三者評価事業の さらなる普及・定着を図ることを目的として、「福祉サービス第三者評価事業に関す る指針について」を発出した。これにより、全国社会福祉協議会(以下全社協)が、

保育所を含む福祉施設の福祉サービス第三者評価事業の中心的役割を担うこととなっ た。全社協策定の新評価基準ガイドライン等が示され、さらに、各都道府県に一つ、

福祉サービス第三者評価事業の推進を担う組織が設置されることとなった。この推進 組織の業務は、評価機関認証要件や評価基準・評価手法の策定、評価機関の認証、評 価調査者養成研修など多岐に渡っている。保育所第三者評価事業についても、保養協 に代わって、全社協および各都道府県の推進組織が、その中心的役割を担うこととな り、平成14年より開始されてきた保養協による評価も、平成19年度までとされた。現 在、新体制への移行が進められてきている。

2.山梨県における保育所第三者評価事業の推進状況

山梨県福祉サービス評価推進機構の活動状況

① 山梨県福祉サービス評価推進機構の体制

福祉サービス第三者評価事業の推進を担う組織として、山梨県では、平成17年「山 梨県福祉サービス評価推進機構」が山梨県社会福祉協議会に設置された。その業務と して、以下の9項目が挙げられている。「評価機関の認証に関すること」「評価基準の

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福祉サービス事業所  利用者・家族 

評価機関 

(NPO,各種法人等) 

事務局  山梨県社会  福祉協議会  各部会 

山梨県 

【山梨県福祉サービス評価推進機構】 

・推進機構の運営  運営委員会 

(6名) 

評価・研究専門委員会 

(8名) 

認証・公表専門委員会 

(8名) 

支援  申込 

・評価機関の認証、情報開示 

・評価結果情報の公開 

・評価事業の苦情等の対応 

・評価内容の相談支援 

・評価基準の策定 

・評価調査者の研修 

・評価事業の普及・啓発 

・評価に関する調査研究  評価 

申請  認証  報告 

策定・改訂に関すること」「評価結果の集約・公表に関すること」「評価内容について の相談支援に関すること」「評価結果についての苦情に関すること」「評価に関する情 報収集、調査研究、評価システムの改善に関すること」「評価についての啓発・推進 に関すること」「その他評価事業に関し必要なこと」である。

組織は、「運営委員会」「認証・公表委員会」「評価・研究専門委員会」で構成され ている。また、児童部会、障害部会、高齢者部会もあり、各委員会の補助的な業務を 担っている。主な業務は、図1のとおりである。

② 山梨県における保育所第三者評価事業の特長

「山梨県福祉サービス評価推進機構」が定める「山梨県福祉サービス第三者評価機 関認証要綱」(以下 認証要綱)「山梨県福祉サービス保育所第三者評価機関認証要綱 実施要領」(以下 認証要綱実施要領)をもとに、山梨県における保育所第三者評価事 業の特長について取り上げたい。その際、全社協が定める「福祉サービス第三者評価 機関認証ガイドライン」(以下 認証ガイドライン)との比較を行なう。認証ガイドラ

図1 山梨県福祉サービス評価推進機構の体制

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インは、各都道府県で認証要綱策定にあたって参考とされるものであり、認証要件と して満たすことが求められる目標を具体的に示したものである。「山梨県福祉サービ ス評価推進機構」が定める「認証要綱」「認証要綱実施要領」は、「認証ガイドライ ン」と比べて、認証要件が厳しく設定されている。以下では、その部分を中心に取り 上げる。

一つは、評価調査者の要件についてである。「認証要綱」第2条「評価を行なう のに必要な資格や経験を有する者」の詳細が「認証要綱実施要領」第4条に記載され ている。「福祉・医療・保健業務の有資格者で当該業務を5年以上経験している者 組織の運営管理等業務を5年以上経験している者 調査関係機関等で調査業務 や経営相談を5年以上経験している者 福祉・医療・保健・経営分野の学識経験者 で当該業務を5年以上経験している者 その他、前各号に揚げる者と同等の能力を 有していると推進機構が認める者」である。山梨県では、以上のいずれかに該当する ことが、評価調査者の要件である。これに加え、有資格者や学識経験者等に求められ るより詳細な条件も、具体的に明記されている。一方、「認証ガイドライン」では、

「当該業務等の経験を3年以上している者、又はこれと同等の能力を有していると認 められる者」でよいとされている。業務内容を熟知した評価調査者を起用すること で、評価の質を確保しようとする「山梨県福祉サービス評価推進機構」の姿勢がうか がえる。

もう一つは、一件の第三者評価についての評価体制についてである。「認証ガイド ライン」では、「一件の第三者評価に2人以上の評価調査者が一貫してあたること」

とされているのみである。一方、「認証要綱」第7条では、「一件の評価は、3人以 上の評価調査者が一貫して実施すること。なお、評価結果は、評価機関が設置する評 価決定委員会において当該評価調査者を含む委員の合議により決定すること」とされ ている。山梨県では、3人で評価を実施し、評価決定委員会との合議によって評価結 果の決定をする体制を整えることで、評価結果の客観性、公正・中立性が確保される と推察される。

その他、「山梨県福祉サービス評価推進機構」では、保育所の「訪問調査」は一日 を通して行なうこと、保護者全員にアンケートを実施することなども定めている。保 育内容を重視した評価を進めていこうとする姿勢がうかがわれる。

しかしながら、同機構は、「評価基準」については、全社協のガイドラインをその まま採用している。山梨県の実態をふまえた、「評価基準」の見直しが今後の課題と 言えよう。

③ 第三者評価機関認証の現状

平成19年2月現在、「山梨県福祉サービス評価推進機構」により認証されている第

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三者評価機関を表1に示した。このうち、保育所の第三者評価の実施が可能な評価機 関は、4法人である。平成17年度、18年度の第三者評価実施の実績としては、10件あ るが、いずれも知的障害者施設又は老人福祉施設であり、保育所ではまだない3)

保育所の第三者評価は、今後一層の推進が期待される段階であり、第三者評価の意 義や効果について、保育現場に理解してもらうための積極的取組が必要であろう。

④ 事業所説明会への保育所の参加状況

「山梨県福祉サービス評価推進機構」では、第三者評価推進のための取組の一つと して、県内の社会福祉施設を対象とした事業所説明会を主催している。平成18年度に 実施された事業所説明会への参加施設数は、118施設(130名)であった。このうち、

保育所の数は、48施設(54名)であり、山梨県内の認可保育所240施設のうちの2割 に留まった。

こうした状況からも、山梨県内の保育所が、第三者評価を受審しようとする意識に は、十分いたっていない現状がうかがわれる。

保育現場の意識と推進上の課題 ―これまでの調査をもとに―

① 山梨県内の全認可保育所を対象とした調査

山梨県内では、平成14年から平成17年までの間に、保養協による第三者評価を受審 した保育所は、7園あったものの、前述の通り、平成19年2月現在、「山梨県福祉サー ビス評価推進機構」から認証を受けた第三者評価機関による第三者評価を受審した保

表1 山梨県福祉サービス第三者評価機関一覧

(認証日:平成17年11月22日)

(追加認証日:平成18年11月15日)

認証番号 法人名

(代表者名) 所在地 評価

調査者 評価対象サービス K 第0611103号 社団法人

日本経営士会 東京都千代田区 9名 児童福祉施設、障害者・

児施設、老人福祉施設 K 第0611104号 株式会社

山梨県環境科学検査センター 山梨県甲斐市 9名 児童福祉施設、障害者・

児施設、老人福祉施設

(認証日:平成18年2月13日)

K 第0501103号 特定非営利活動法人

福祉サービス・どう見るネット 山梨県甲府市 6名 児童福祉施設、

障害者・児施設

(認証日:平成18年11月15日)

K 第0601001号 学校法人 山梨学院 山梨県甲府市 12名 児童福祉施設(認可保 育所のみ)

K 第0100002号 日経 WAM 株式会社 山梨県甲府市 4名 老人福祉施設

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育所は0園である。新体制への移行は、まだ十分ではない。

保養協による第三者評価から全社協主導の第三者評価への移行期にあたる平成16年 度に、山梨県内のすべての認可保育所(計254施設)を対象に行なった調査(各園に7 部ずつアンケートを配布、総配布数1778、回収数909、回収率51%)でも、新体制への移行 の難しさをうかがわせる現場の意識が明らかとなっている4)

調査では、「保育所第三者評価についてよく知っている」は全体の約3割にとどま り、「少し知っている」が約6割、「知らない」が1割を超えていた。保育士では勤続 年数が下がるほど「知らない」の割合がふえていき、5年以下の保育士では3割に近 く、直接子どもと関わる保育士、特に若い保育士たちには、第三者評価の存在は十分 に浸透していないことが明らかとなった。さらに、「全国社会福祉協議会によって新 評価基準等のガイドラインが示されたこと」については、全体の約5割の人が「知ら ない」と回答し、保育所第三者評価に関わる急激な変化に対応できていない保育現場 の実態が明らかとなった。

保育所第三者評価の意義については、「園の(自分の)保育のよいところ、足りない ところを知ることができる」「園の(自分の)保育を向上させることができる」といっ た期待が最も強いことも明らかとなった。その一方で、受審への消極性の要因につい ては、「忙しく余裕がない」が1位であったものの、「評価項目、評価方法」「評価調 査者」の適切性に対して不安を抱いている人が多くいることが注目された。

こうした結果は、めまぐるしく変わる第三者評価事業の動向を保育現場に確実に伝 えていくための取組が必要であること、さらに、評価基準、評価方法、評価調査者に 対する信頼を保育現場から得るための真摯な取組こそ、保育所第三者評価事業の推進 の要であることを示唆するものであった。

② 山梨県内の第三者評価受審園を対象とした調査

これまでの調査では、保養協による第三者評価を受審している園が、全社協・「山 梨県福祉サービス評価推進機構」主導の第三者評価(全社協策定の新評価基準による評 価)に対して、どのような意識をもっているかについても明らかにされている5)

調査は、山梨県 A 保育園の園長1名、主任1名、保育士2名の計4名を対象に行 われた。A 保育園は、平成14年度に保養協による保育所第三者評価を受審、さらに 平成17年9月、「山梨県福祉サービス評価推進機構」主催の「評価調査者養成研修会」

の訪問調査実習を受け入れていた。すなわち、片方は実習とはいえ、保養協、全社協 2つの第三者評価を経験している唯一の園であった。調査は、平成17年12月、A 保 育園が実習協力の一環で受けた全社協主導の第三者評価についてインタビューを行う ものであった。

回答結果から、全社協策定の新評価基準については、数及び内容の重複の調整、保

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育所に適合した内容への変更などの検討の必要性がうかがわれた。また、保育所側の 評価基準に対する適切な理解を促すための、評価の根拠となる事例集の必要性も示唆 された。

評価調査者についても、不安が語られた。保育者が日頃行っている保育の内容を十 分に理解したうえで評価を行ってほしいとの強い要望があった。保育現場の実態を踏 まえた評価が行える、評価調査者の養成の必要性が示唆された。

また、別の調査では、山梨県内の受審園が第三者評価に対してどのような効果を感 じているかも明らかになっている6)。平成14年度に保養協による第三者評価を受審し た園の感想ではあるが、「山梨県福祉サービス評価推進機構」推奨の評価手法等が、

保養協のものを参考に策定されていることからも、今もなお参考にされるべき資料で ある。

調査では、「第三者評価への準備そのものが、学習となる」「保育内容の評価が職員 の励みとなる」「職員が自信をもてるようになる」「職員に主体性が育つ」「職員同士 のコミュニケーションが一層はかられるようになる」「主任等にリーダーシップが育 つ」「園に活気がうまれる」といった効果を、受審園が感じていることが明らかと なった。第三者評価を受けるための準備それ自体が、保育の質を高めていくものであ ることをうかがわせる結果であった。

しかしながら、前述の山梨県内の全認可保育所を対象とした調査では、これらの効 果が一般の保育現場に十分理解されていないことも明らかとなっている。こうした一 連の調査結果は、受審園の生の声を聞ける機会を設けるなど、第三者評価の効果につ いて保育現場に正しく理解してもらうための一層の取組の必要性を示唆するもので あった。

③ 保育現場の意識をふまえた推進のあり方

上述の各種調査によって、保育所第三者評価を推進していくうえでの課題が見出さ れていった。その後、今日に至るまで、「山梨県福祉サービス評価推進機構」は、こ れらの課題に向かって取組んできていると言える。各種説明会・研修会、パンフレッ ト、ホームページ等を通して、保育現場への情報提供は積極的になされている。ま た、前節で示した通り、同機構は、全社協のガイドランが示す最低基準を上回る各種 の規定を行っており、これらも保育現場の意識をふまえ、保育現場からの信頼を得る ための取組としてみなすことができる。例えば、前述の通り評価調査者は3名とする ことを義務づけている。また、1日を通した観察を推奨するなど、保育内容を重視し た評価を進めようとしている。

しかしながら、いまだ新体制下での受審園が0であることから、一層の取組が必要 であることは言うまでもない。特に、評価基準については、前述の通り全社協のガイ

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ドラインをそのまま採用しているといった状況にあるため、今後の検討が望まれる。

3.シリウス発足の経緯と今後の方向性

発足の経緯

保育所第三者評価事業誕生の経緯については、前述した通りである。その重要性が 叫ばれるなか、学校法人山梨学院は、これへの取組を社会的使命のひとつと考え、平 成18年4月、かねてより「地域社会の産業、福祉、教育、文化の発展に資する」こと を目指して地域貢献に努めてきた山梨学院生涯学習センター内に、「地域福祉サービ ス研究部シリウス」を設置することとなった7)。その後、シリウスは、各種規程の整 備等、申請のための準備を進め、平成18年11月、「山梨県福祉サービス評価推進機構」

より、福祉サービス評価機関としての認証を受けた。シリウスは、当面、山梨県内の 福祉施設のなかでも認可保育所のみを対象として、第三者評価事業の実施を担ってい くこととなっている。

シリウスの特長

保育所第三者評価事業の目的は、「福祉サービスの質の向上」「利用者への情報提 供」である。これらにくわえ、シリウスは、「保育現場の輝きこそが未来の社会を支 える」という理念をもって第三者評価事業に取組んでいる。保育現場は子どもたちと 保育者が共につくりだすところである。それゆえどちらか片方のみではなく、保育者 と子どものどちらもが輝くことこそ、何より大切であると考えているのである。こう したシリウスの思想は、長年、児童福祉の向上を願って、保育者養成に全力を尽くし ていた山梨学院短期大学保育科の取組に裏打ちされたものであることは言うまでもな い。

このような思想にたつシリウスは、前述の保育現場の意識もふまえながら、その特 長を5つのキャッチフレーズとして示し、重視している。「子どもたちにも保育者に もあたたかなまなざしで」「地域の保育現場の皆様とともに」「保育現場をよく知る評 価調査者」「園の特長に目を向けながら」「子どもたちの幸せな未来を願って」であ る。すなわち、シリウスでは、保育現場をよく知る評価調査者が、地域の実態をふま え、保育観察を大切にしながら、子どもたちにも保育士にもあたたかいまなざしで、

それぞれの園の特長を見つけだしていくことに重きをおいているのである。

評価調査者については、福祉・医療・保健分野の専門家として、保育園長・保育士 経験者、保育行政経験者、保育の学識経験者、保健師等、保育現場をよく知る人材を そろえている。組織運営管理分野の専門家についても、税理士、管理職経験者、組織

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運営の学識経験者等、豊富な人材を有している。保育現場をよく知る、専門性の高い 評価調査者による評価実績を積み重ねることによって、保育現場から信頼をよせられ る評価機関となることを目指している。

今後の課題―シリウス調査員へのアンケート調査をもとに―

保育現場にとって有意義な第三者評価事業を実施していけるよう、シリウスでは、

平成18年11月、シリウス内の評価調査者を対象に保育所第三者評価事業に関する意識 調査を行った。

回答結果から、評価調査者に関しては、保育現場の実態および評価基準を十分に理 解することの重要性と、そのための研修等の充実の必要性が示唆された。さらに、自 己の保育観に影響されることなく、評価基準をもとに公平で客観的な評価を行うこと や、相手との信頼関係を保ちながら評価を行うことを、評価調査者が課題としてとら えていることも、うかがわれ、これについても今後の研修の充実が望まれる。また、

複数で評価を行う効果を最大限に発揮するための、評価調査者間の具体的な連携のあ り方を今後検討していく必要性も示唆された。

評価基準については、評価調査者間で評価にばらつきが生じないよう、判定基準を 形式化、具体化する必要性が示唆された。また、保育現場の実態に即した内容へと見 直しを図っていく必要性もうかがわれた。保育現場に直接評価に行く評価機関の立場 から、推進機構に対しても今後積極的に提言していかなくはならないだろう。

評価方法についても、より信頼性、妥当性の高い評価を実施していけるよう、訪問 調査の回数も含め、今後検討していき、シリウスの理念にかなった方法を探っていく 必要性が示唆された。

おわりに

山梨県の保育所第三者評価事業のこれまでの経過と現状の整理に取組んだ結果、次 の3点が今後の課題として明らかとなった。

一つ目は、第三者評価事業の意義に関する保育現場の理解を継続して求めていくこ とである。山梨県では、保育現場の第三者評価への意識は、まだ十分ではない。前述 した「山梨県福祉サービス評価推進機構」主催の事業所説明会への保育所の参加状況 や、現場へのアンケート調査結果からそれは明らかである。

「山梨県社会福祉サービス推進機構」と各第三者評価機関とが共に、保育所第三者 評価の意義を継続して伝えていかなければならない。それと同時に、保育現場に内在 する受審への不安事項を取り除く取組を行っていく必要がある。評価基準に対応した 事例集の作成が有効な方法の一つとして挙げられる。また、山梨学院短期大学保育科

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をはじめとする山梨県内の保育士養成校も、保育者養成を通じて、その普及に努めて いく必要があるだろう。

二つ目は、評価基準に関する検討である。山梨県における現行の評価基準は、前述 の通り、全社協策定のガイドラインをそのまま採用したものである。保育現場や評価 調査者への調査では、山梨県の特色と保育現場の実態を踏まえた、評価基準の策定を 求める意見がみられた。評価調査者からは、判断基準の具体化を求める声も聞かれ る。より信頼性、妥当性の高い評価を実施していけるよう、改善が求められるといえ る。これらを、推進機構に一任することなく、実際に評価を実施する評価機関も、積 極的に提言していくことが重要であろう。

三つ目は、評価調査者の評価の質を高めていくことの必要性があげられる。保育現 場の実態と評価基準の十分な理解に裏付けられた信頼性、妥当性の高い評価の実施は もちろんのこと、受審園との信頼関係の構築、評価調査者間の連携等が今後一層望ま れる。

「山梨県福祉サービス推進機構」が実施する評価調査者養成研修の一層の充実が重 要である。また、実際に評価を行った評価調査者や受審園からの意見を収集し、具体 的な課題の発見に努めることが有効であろう。それと同時に、各評価機関がそれぞれ の理念のもと、評価調査者の質をさらに高めるための養成研修を行っていくことが不 可欠である。

これらを踏まえ、今後、シリウスにおいても、保育現場に有意義な第三者評価実施 に向けた努力を継続していきたい。

〈引用・参考文献〉

1)厚生労働省「福祉サービス第三者評価事業に関する指針について」(平成16年5月7日)

2)全国社会福祉協議会:福祉サービス第三者評価事業とは http : //www.shakyo-hyouka.

net/about/index.html〔2007.2.19確認〕

3)山梨県社会福祉協議会:山梨県の福祉サービス第三者評価機関一覧

http : //www.y-fukushi.or.jp/new/service̲evaluation/index.html〔2007.2.19確認〕

4)山内淳子・三神敬子・中野隆司・真宮美奈子 2005 保育所第三者評価に関する意識調 査 ―山梨県内の保育所を対象として― 全国保育士養成協議会第44回研究大会研究発 表論文集、174−175.

5)真宮美奈子・山内淳子・三神敬子・中野隆司 2006 山梨県における保育所第三者評価 の動向と現場の意識 保育学会第59回大会発表論文集、774−775.

6)真宮美奈子・三神敬子・中野隆司・山内淳子 2004 保育所第三者評価に関する報告

―被評価園からみた効果と課題― 保育学会第57回大会発表論文集、812−813.

7)山梨学院生涯学習センター規程

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