2 章施設内医療から在宅療養へ
伊藤新一郎
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節 住 み や す い 社 会 と は ど の よ う な 社 会 で し ょ う か ?過去にも障害者と同居できる社会とか,差別の無い社会とかといった言葉が 盛んに使用されて来ました。しかし今ほど障害者や高齢者の問題を取り上げ た社会はありません。この動きは,良い意味だけでなしやがて迎える高齢社 会が経済基盤を破壊するのではないかと言う危機感から生まれているようにも 思えます。高齢社会が経済基盤を破壊するかどうかは別にして,過去もまた近 い将来もあまり経済的基盤に恵まれないであろう地域の住みやすさを検討する ことはつの解決策を導くことに間違い無いでしょう。そこで,離島の地域 医療を担当する私が,本項を論ずることになりました。
「全ての人に全ての機会は均等に与えられ個人がその能力の限界一杯努力 することができることJが,全ての人の権利です。そして,このことが確認で きれば,障害者と共に生きることを前提にいろいろなことを考えなければなら ないことが理解できます。一方,我々全員の意識を根底から変化させなければ ならない程,今日の社会は差別に満ちています。差別を生む意識や体制は,誤 りとして勇気を持って訂正し障害者を排除することで出来ている見せ懸けの 快適さや繁栄でなく,障害者と共に共有する快適性や繁栄を求めることが社会 の是となるよう努力することが必要です。「正常者」の我慢の範囲内で「障害 者」を救済するのでは無く,全ての人が,次に述べるようなノーマライゼ、イ ションの考え方で,より健康になるための努力をすることが大切だからです。
住みやすい社会とは,このような前提を当たり前と考えるような社会と思いま す。
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節 地 域 医 療 と は な ん で し ょ う か ?地域医療と言った時,実に多くの立場があることに驚かされます。
しかしここで問題にしている地域医療とは,住民が健康を守り増進すること を支援すること (primary health care) を含んだ広義の医療で,個人中 心に個人が係わる全ての環境を見据えて展開できなければならない運動のこと です。 WHO(世界保健機構)の提言である健康とは単に疾病や虚弱がな いだけでなく,身体的,精神的,社会的に極めて良好な状態」であり到達 しうる最高水準の健康」と言うものでしたが,もう一歩つっこんで言えば,
「障害を持っても可能な限り正常に近ずいた状態を追及した状態(ノーマライ ゼイション)Jであると,今日では考えられています。従って,私達の目指す 所は,いくら努力しでもそれで十分というものではなく,健康は,障害者を含 めた全ての人々の権利であり,住民l人l人の運動の中で勝ち取るものです。
さて,最近の出来事ですが,イラクのクエー卜侵攻に対する中東支援対策と して政府が決定した医療協力団の派遣に伴う協力要請が,各地の国立病院へな されました。厚生省から国立病院に「志願者」を要請する形がとられ,ある病 院には,プライマリーケアー(初期医療・総合医療)のできる医師が妥当であ るとの判断から要請されたという噂がありました。プライマリーケアーとは,
先に述べた「健康」の維持増進のための地域医療のための行動であり,集団防 衛のための政治或いは軍事行動とは合入れない性質です。私達は集団の利益の ためでなく,個人の個別利益である「健康」のため行動しており,そのために は,いかなる戦争にも反対であり反対のための抗義行動も地域医療の一部とさ え考えています。従って,戦争に反対し戦争のため傷つき病んだ人々を治療す ることになんら反対するものでもありませんしむしろ積極的に出掛けるべき と考えていますが,戦争と言う手段をまず否定しておくべきです。健康は,社 会の中で生活している個人にとって,侵されては成らない基本的権利です。
3節 住 民 は ど の よ う な 姿 勢 が 必 要 で し ょ う か ?
さて,サービスの受け手である住民はどのような姿勢が必要でしょうか。基 本的に、保健,医療や福祉は,住民の「ニーズJによって提供されるもので す。 FuchusV Rも,医療サービスの一般商品と比べた特性のlつ に 一 般 の商品・サービスではその売買を決めるものは需要であるのに対して,医療の 場合はニーズが重視されるJとニーズ」を取り上げています。ここでお断
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2章施設内医療から在宅療養へ
りしておかねばならないことは, Fry J.も述べているように,住民の 要 求"は常に「ニーズ」より大きくニーズJは利用し得る資源より大きいこ とです(解答の無い公式)。さらに重要なことは,保健・医療・福祉の「ニー ズ」は専門家が整理しそして住民に納得のいくのように説明しなければなら ないことです。保健・医療・福祉専門職は,いくつもの選択枝とその評価を上 げることが出来ますが,選択枝を選ぶのは住民・患者です。また,二木は,医 療サービスの質の向上は消費者である患者自らの参加によって持たらされるこ とを,強調しています。患者自身の基本的な参加は病歴を正しく提供すること ですが,その他,闘病意欲,闘病態度及び患者団体の運動が,医療に種々の影 響を持たらすでしょう。住民・患者の役割は医療専門職に助けられた共同作業 の一員と言うことであり,従来の考え方である医療の生産性を労働生産物の増 加(患者の社会復帰により生産性が増加する〉によってのみ評価することで は,障害者のノーマライゼーションや「生活の質 (QOL)Jを評価することは できません。住民の特に障害者の権利意識の無いところに,保健・医療活動は 成り立ち難くなっています。
権利に対しては,常に重大な責任を伴うものです。次に述べるインフォーム ドコンセントは,住民・患者自らが重大な責任を負うものです。これはもう,
ストアーで簡単な買い物をするような訳にはいかないことを意味しています。
医療の現場では,インフォームドコンセント(充分説明された納得)の必要性 が叫ばれ久しくなります。これは,医師に対して強く求められたものですが,
実は患者側にもっと重大な問題を提起しています。自分の健康を自分で管理す ることができないような疾病に対する無知は,自らの権利を放棄しているのと 同様です。また,虚疑に固められた癌患者さんに充分な治療と療養環境を提供 できないことは,医療関係者は周知しているはずですが,癌の告知に関して は,患者側,特に家族の方に虚偽の通告を望む者があまりにも多く, これがむ しろ癌の告知を遅らせている原因です。虚疑が医療となるような環境は改善し なければなりませんしインフォームドコンセントは,患者自らが重大な決断 をするための一過程であることを知るべきです。そうしない限り,医療は何時 までも与えられるもので有り続け,住民の手に戻ってくることはないでしょ
つ 。
福祉に至っては,日本の制度の歴史的な発展過程を反映し与えられるもの との認識はさらに強く,このため必要な福祉サービスを手にいれることも拒否 し施設内でくすぶり続けている患者の多いのが現実です。核家族化の進んだ 今日有終を迎えるに当たって,大なり小なり誰もが必要としている生活支 援も福祉である」というふうに,発想を変えなければいけません。
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節 高 齢 者 の 健 康 は , 医 療 サ イ ド ? 福 祉 サ イ ド ?厳原町は平成元年高齢者 (65才以上)に対するアンケート調査を実施しまし た。平成2年4月の厳原町の老齢人口は12.7%で(対馬全体でと, 14.7%), 今回の調査対象は2,120名,内1,712名80.8%が回答しています。注目すべき
は,健康状態に対するアンケートで, 26.9%が健康でないと答え,日常生活の 中で一番心配なことのトップにこれからの健康,次いで治療中の病気,そして 痴呆の心配をしています。
以上のアンケート調査は,実は極めて控えめな数字で,昭和59年から平成元 年までの成人病健診の問診では,通院中及び断続的治療を合わせると, 52.6%
が何らかの疾患で治療中です。この6年間の健診受診率 (40才以上)は58%
で,要医療者の受診傾向が大きいにしても,老人が実際に医療機関を受診する 機会が圧倒的に多いことには間違いはありません。このようにみると,高齢者 の健康については, もっと医療機関が責任を果たしてしかるべきです。もっと 老人福祉に対し医療関係者は関心を持つべきであり,医療関係者の発言を福祉 行政担当者も重視すべきです。福祉に医療が入り込むことを嫌わないで, もっ
と有機的連携に積極的であってもらいたいと思います。
一方,次に述べる在宅医療の経験から言うと,キュアーよりケアーの手を,
そしてもっと必要なことは,老人や障害者の日常生活の広がりが狭くなってい ることへの対応で,保健婦や医師等の役割は小さく,一般の人の役割が大きい ことにも住民自身が,気付かなければなりません。
在宅医療の目標が,障害者のノーマライゼーションであることは論を待ちま せんが,実は,介護者に対しては身体的・精神的負担を感じさせないことも,
重要です。介護者の過度な長期の負担は介護の愛を蝕み,障害者の介護者に対 する負い目は在宅医療の必要な人の快適性を大きく回害すると考えるからで
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す。在宅医療には,十二分な在宅福祉サービスが必要であり,個人を中心に,
保健・医療・福祉が一体となって提供されなければなりません。そこで,今後 私は在宅療養と言う言葉を使用し,保健・医療・福祉が一体となって行う在宅 福祉とか在宅医療を論じてみたいと思います。
5節 在宅療養とショートステイ(短期入所)の予約登録制
私達は,病院に併設されている厳原町健康管理センターと連携し訪問看護 を行って来ました。昭和59年,胆嚢癌末期の老婦人の家に帰りたいと云う強い 願望で始まった訪問看護は,翌年,専従看護婦及び外来看護婦の協力を得てシ ステム化して以来,急速にその需要は増大しました。昭和62年にピークに達し た病院の訪問看護も,町の体制整備が進むに従って漸減しています。昭和62年 から社会福祉協議会の家庭奉仕員(ホームヘルパー〕による入浴サービスや病 院の理学療法室の応援を得た機能訓練事業が開始され,昭和63年には新築移転 した病院内に町の住民福祉課の一部が移転し健康管理センターができ,町保健 婦は毎日病院のスタッフと交流できるようになりました。このためか,表 lを 見てお分かりのように,町の訪問看護延べ数は昭和63年から増加しています。
平成l年には町看護婦は4名に増員され,平成2年から機能訓練事業の開催日 表1 病院及び町が行ってきた在宅療養支援(介護)延べ数
S 60 S 61 S62 S63 H1 H 2 H 3 病 院 保 健 婦 訪 問 128 494 590 408 422 354 216 町 保 健 婦 訪 問 76 82 69 134 279 203 275 通 所 1) 、ノ 568 629 766 L 469 L 239 入 浴 サ ー ビ ス * 30 98 206 442 301 特 養 短 期 入 所 35 117 563
デ イ ケ ア ー L 015
メ口泊、 計 204 576 L 257 L 269 L 708 2,585 3,609
*家庭奉仕員の活動は,介護では入浴が大半で,その他生活支援が多くを占める。
この他病院のする訪問リハや社会福祉協議会の「一声運動J,ネットワーク事 業,食生活改善グループの給食サービスがある。
表2 脳卒中患者さんへの支援体制 発症I
入院~ADL の評価(病棟看護婦)
急性期ベッド上リハ(看護婦, P T, OT)
約2週後からリハ室での1)ハ開始, ADLの評価 CPT.OT)
「リハ回診JCPT.OT,病棟看護婦,地域看護係,主治医)
lM‑→「リハカンファランスJC病棟看護婦, P T, O T,主治医,その他の医師,
町保健婦,在宅総括者,時に社会福祉事務所担当者目標設定を行う.
3 Mー→第2回1)ハカンファランス 3月で目標に達することができないケース,在 宅支援の必要なケース等 目標修正
地域看護係は,適宜病棟訪問し家族と接触
退院前自宅訪問 CPT,OT,地域看護係),試験外泊・適所1)ハの実施 退院後の通院,在宅支援のための申請書提出,在宅支援スケジュール調整
「訪問看護検討会J(町保健婦,保健所,病院保健婦,医師,在宅総括者〉
:病院だけでスケジュール調整困難なケースを提出 退 院 」 退 院 時 指 導 ( 地 域 看 護 係 病 棟 PT, OT)
老人在宅情報提供(退院時看護サマリー):地域看護係を遥じ町保健婦へ 診療情報提供・退院時診療所へ、通所リハ連絡表は町保健婦へ
在宅」通院・適所リハのための搬送
支援 「リハ室デイケアーJI精神科デイケアーJI保健所デイテアー」
「高齢者サービス調整チームJ:保健所,町保健婦,へルパー,民生員等の参 加
「訪問看護検討会J:評価,経過報告や,目標の再設定
「機能訓練事業JCPT, OT,医師):QOL,ADLの維持増進
「訪問看護J,I往診J,I訪問リハ」の実施
再入院の受入れや福祉施設入所の相談(地域看護係)
が増える等,今日まで在宅医療の支援は増加し続けています。
また,平成4年度から厳原町は,短期入所(ショートステイ)の利用券の発 行に踏み切りました。これは予約登録制で,一度申請手続きをしておくと 1年 聞はいつでも電話 l本で特別養護老人ホームから迎えに来てもらえる制度で,
ショートステイを何時でも手軽に利用できることが,在宅医療の支援には大切 です。家族の身体的及び精神的負担を無くすことが,障害者の
QOL
に結び着 くことを理解しないと,在宅医療の推進価値はありません。我々は,そのため の運動拠点として保健活動部・在宅医療係を設置したのですが,あくまでも医 療機関の活動で制限があり,福祉に対する我々の期待は大きいものがありま‑ 192 ‑
2章 施 設 内 医 療 か ら 在 宅 療 養 へ
す。町の健康管理センターの病院併設により,医療と保健の連携は進みました が,社会福祉協議会の職員であるホームヘルパーと保健・医療の連携には,今 一つ隔靴掻停の感があります。思い切った体制の改革を検討しているところで す。
表2は,現在当院で行っている脳卒中患者さんの療養マニュアルです。入院 中から地域看護係がかなり係われるようになりましたが,病院スタッフだけで は患者さんのQ0 L (Quality of life)は上昇しません。現在定例化している 保健所婦長,町保健婦,在宅総括者,病院保健婦とで構成している訪問看護検 討会のみならず,次項で述べる高齢者サービス調整チームが今後ますます重要 な役割を担うと考えています。
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節 訪 問 看 護 検 討 会
当院,厳原町健康管理センター及び厳原保健所の保健婦により,昭和61年よ り訪問看護検討会を設け,在宅医療の推進を行って来ました。この会は,さま ざまなサービス機関からの細切れ押し付け事業でなく,障害者本位のサービス を提供できるように組織された会です。この会に,福祉協議会,福祉事務所,
民生員,食生活改善員・ボランティア,消防署及び警察署等,手を差し延べる ことのできる機関が全て必要に応じ参加してもらえたら, もっとすばらしい サービスが提供できると考え,平成元年には厳原町にもこの趣旨で「高齢者 サービス調整チーム」が結成されました。病院の診察室から「今日来られた患 者さんが,ちょっと来て下さいと言っていますj と家庭奉仕員に,夜間不安に 駆られ連絡して来られた1人暮らしの老人の所へちょっと覗いて来て下さ い」と近所のボランティアに連絡したいのです。訪問看護だけでは手が足ら ず,このままでは結局入院生活になってしまいそうな人の所へ,医療従事者の 目から見てより緊急性のある患者さんへ,保健婦以外にも生活の援助に行って もらえるよう助言のできるシステムを作るべきと考えています。私は,在宅療 養の必要な人を緊急避難的に優先して在宅福祉ザービスの計画を立てるべきだ と,主張したいのです。このためには,保健婦だけでなく診療上のリーダーで ある主治医が, もっと積極的に患者さんが帰る地域や家庭のことを考える必要 があります。私達は,住み慣れた地域を離れたくない全ての人が安心して何時
までも地域で暮らせるようになりたいものだと,考えています。
7節 老人保健法に基づく機能訓練事業は重要な意味があった!
1984年1月から1989年5月までの間に,対馬いづはら病院に入院しリハビリ テーションを受けた脳卒中患者186名の長期短期予後,特に自立度と療養先を 検討し通所リハビリテーションの意義について検討してみましょう。
日常生活動作 (ADL)を次のように定め評価しました。社会復帰:日常生 活に制限はない。復職の有無を問わない。家庭内自立:屋内に於いて自立して いるが,屋外に於いて一部介助・監視が必要。家庭内介助:屋内に於いても一 部介助・監視が必要。寝たきり:日常生活に於いてほとんど全介助が必要で,
車椅子移動の有無を問わない。
当院の入院1)ハ訓練期間の目標は,当面3月,最終6月としていますが,社 会復帰の100%及び退院時死亡の79.2%が3月 以 内 に 退 院 し 死 亡 退 院 は 25. 8%でした。
退院時の自立度は家庭内自立が最も多く, 48.5%でした。社会復帰は 13.8%,家庭内介助は23.2%,寝たきりは14.5%でした。
退院時自立度別にl年及び3年後の自立度の変化をみますと,社会復帰群で l年後100%A D L (Activity of Daily Life) は維持されているものの,退 院時ADLが低下するにつれ,経年的にADLは著しく低下してしています。
発症年齢}JIJ!こADLの変化をみますと, 60才代ではADLが良く維持されて いますが, 70才代以上では経年的にADLは著しく低下してしまいます。
自宅退院率は,社会復帰群94.7%,家庭内自立群94.0%,家庭内介助群 78. 1%寝たきり群75%です。,寝たきり群においても自宅への退院率は高いの が目立ちます。しかし退院1年以降,社会復帰群にあまり変化は見られないも のの, ADLが落ちるに従って自宅療養率の低下は著しくなります。
そこで,自宅退院した121例の内,通院のみの23例を除く98例の在宅支援別 に自立度の変化を検討してみました。訪問看護群では, 1年及び3年後の寝た きり・死亡が増加し家庭内介助は減少しています。訪問リハ群においても同 様で,家庭内介助は減少し自立度は低下しています。一方,通所リハを行い 得た群(通院リハもしている)では,通院1)ハ群と同様,社会復帰は9.1%か
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2章 施 設 内 医 療 か ら 在 宅 療 養 へ
ら18.2%と増加し家庭内自立の低下は通院1)ハ群に比し少ないのが分かりま す(表3)。通所リハとは老人保健法に基づく機能訓練事業のことで,簡単な リハビリ以外にも昼食会やリクレイションが含まれていることが特徴で,患者 さんの生活している地域で開催されています。
表3 自宅退院した121例の内,通院のみの23例を除く98olJの在宅支援別にみ た自立度の変化(支援は重複している)% :計に対する割合
退 院 時
l年 後 │ 社 会 復 帰 │ 家 庭 内 自 立 │ 家 庭 内介 助 │ 寝 た き り│死亡 ・ 不 明 3年 後
通院リハ のみ 計 26名 訪問看護 計 23名 訪問リハ 計 17 名
通所リハ
計 33名
通所リハ:適所1)ハを行い得た群で,通院リハもしている。
在宅支援別に療養先の変化を検討しでも,訪問看護,訪問リハも通院リハ群 の自宅療養率は, 3年後30.4,47.1%, 76.9%と著しく低下していますが,こ れに反し通所リハを行い得た群の自宅療養は90.9%と良く維持されています (表4)。このように,通所リハを行い得た群の
ADL
や自宅療養率が良好の ようにみえますので,通院リハのみ群と比較検討し適所リハの有用性につい てさらに検討してみましょう。通院リハ群と通所リハ群のパックグラウンドを比較してみますと,通所リハ
n u υ
表4 自宅退院した121例の在宅支媛別にみた 1年, 3年後の療養先
l 年 後 3 年 後 訪 問 看 護 計 23名 訪 問 リ ハ 計 17名 通 所 リ ハ 計 33名 通 院 リ ハ 計 26名 通 院 の み 計 23名
。 。
%:計に対する割合
福 祉 施 設 │ 死 亡 ・ 不 明
。 。
。 。
3.8%
3.8%
。
。
4
2 8.7%
5 21. 7 %
通所リハ:通所リハを行い得た群で,通院リハもしている。
群の年齢構成は,比較的高齢であるが有意差はありません。男女比は,通所リ ハ群で男性が,通院リハ群に女性が有意に多くなっています。また,通所リハ 群に退院時社会復帰が少なく, ADLの低下した者が有意に多いのがわかりま す。両群の疾患構成については,有意差を認めません。支援の継続について検 討すると,通所リハ群では通院リハも通所リハも極めて良く維持されているの に反し通院リハ群では,わずか3名しか通院リハは継続されていませんでし た(表5。)
家庭内自立以上のADLが3年後何例減少するか検討してみますと,通所リ ハ群と通院リハ群との聞には, 3年後で有意差(1 /24, 5/23, P <0. 05) があり,通所リハ群のADLの低下は少ないことが分かります。
3年後の自宅療養者の減少率を検討すると,通所リハ群と通院リハ群との聞 には,有意の傾向(3 /33, 6 /26, P < O. 1)があり,通所リハ群の減少は 少ないのが分かります。
通所1)ハ群は,通院リハ群と異なり男性で, ADLの悪い者が多いにもかか
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2章 施 設 内 医 療 か ら 在 宅 療 養 へ 表5 通所リハ及び通院リハ群のパックグラウンド
①通所リハ群(通所リハを行い得た群)
年 齢 60才 未 満 60 ‑ 69才 70 ‑ 79才 80才 以 上
男 性 8 8 7
女 性 2 3 4
。
合 計 10 30.3% 11 33.3% 11 33.3% 3.0.%
②通院リハ群 (通院リハのみの群〕
年 齢 60才 未 満 60 ‑ 69才 70 ‑ 79才 80才 以 上
男 性 4 2
女 性 8 6 4
メEコh、 圭ロt 12 46.2% 8 30.8% 5 19.2% 3.8%
③退院時ADLの比較
社 会 復 帰 家庭内自立 家庭内介助 寝 た き り 3.0% 23 69.7% 9 27.3% D 6 23.1% 17 65.4% 3 11. 5%
。
④疾患の比較
t 脳 出 血 脳 梗 塞 クモ膜下出血
8 25
。
7 19
。
⑤ 支 援 の 継 続 (3年目の状況)
│ 通 院 リ ハ │ 通 所 リ ハ I s 年 目 生 存 者 計 32名 22名
J仁Lコ呈ロ↓l
24名 9名 33名
合 計 8名 18名 26名
わらず良好な結果がえられたのは,通院リハや通所リハの継続に差があるため でした。これは,女性が積極的に夫を連れ出し,また多くの医療・福祉関係者 が適所リハに関与し,在宅支援が良く維持されるためと考えられます。対馬地 域の通院の便宜は極めて不良で,通院時聞を調べると,救急車でも15分と45分 の2峰性を呈します(県平均では15分のl峰性)。このような地域で通院を継 続することは,経済的も精神的にも極めて厳しいものがあり,行政,医療機関 及び住民の多くの係わりがなければ,障害者のノーマライゼーションやQOL
は維持されるものではありません。
ま と め
高齢者のノーマライゼーションやQOLのためには,基本的には脳卒中や老 人の大腿骨けい部骨折等の予防が重要です。しかし不幸にして疾病に履患し後 遺症を有しても,在宅療養の支援が種々の形で提供され,さらに介護者に対し ての配慮がされれば,療養場所が在宅を目指せないはずはありません。中でも 通所リハよる支援を加えることは,自立度を維持向上させ,自宅療養を継続さ せるベターな手段であり,地域のもっている潜在力を大いに発揮できる手段と 思います。医療も在宅療養まで視野に入らなければ,自己満足に終わってしま
うでしょう。
参 考 文 献
1 )日野原重明,紀伊圏献三訳:プライマリ・ケアとは何か 医療への新しいアプ ローチ .医学書院, 1981.
2) JI!口正吉訳:死ぬ瞬間,読売新聞社, 1980.
3 )二木立:医療経済学 臨床医の視角から .医学書院, 1991. 4)湯沢布矢子.保健婦のための保健活動の進め方.新企画出版社, 1985.
5 )岩崎栄:地域医療の基本的視座一実践・教育・研究の総合を求めてー.ベクト ル・コア, 1990.
6 )上回敏:リハビリテーションを考える.青木書庖, 1983.
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