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−25−

高純度ZnO単結晶の水熱育成とストイキオ

メト ノーの評価

坂上

HydrothermalGrowthandStoichiometricAssessmentofZnO SingleCrystalsofHighPurity

NoboruSAKAGAMI

(昭和62年10月31日受理)

Zincoxidesinglecrystalsofhighpurityhavebeengrownbythehydrothermalmethod addingapartialpressureofoxygenandusingplatinum‑linedautoclaveandultra‑purenutrient

reagents.

Thestoichiometricassessmentofthegrowncrystalswasinvestigatedbyempoloyinga coulometricanalysisuhichwasavailablefordetectingasmalldeviationinthestoichiometric constituent,suchasZn,+xO.TheconcentrationoftheexcessZnatomswasaccuratelyuptoO.1 ppmandtheelectricalresistivityoftheas‑growncrystalsobtainedintheorderoflO8Q‑cm.

LBrF一■■■■■0.

組成の僅かな偏位量,Xznの検出には,電気化学的な 分析法である電量分析法が有効であることが指摘さ

れている6,7,8)。

筆者は,従前より水熱法によりこの単結晶の育成 を試みてきたが,育成溶液にアルカリ溶媒のみを用 いた育成条件では, その育成環境が還元性雰囲気に なるため,育成された結晶は黄色味を帯びてZn原 子の過剰量も数ppmから十数ppmの範囲の値で検 出され,電気抵抗率も100〜102Q‑Cmの値を示し た8,9,10)。そこで,数年前より育成系内を酸素雰囲気に するために酸素発生剤,H202を添加し,ZnO単結晶 の高純度化を試みている。ここでは, この高純度 ZnO単結晶のストイキオメトリーの組成分析,電気 抵抗率および光学的性質等の結果について,従前の 育成条件で得られた黄色味を帯びた試料との比較検

討を行なう。

1 .

一一巨

ZnOは, その化学組成がZn過剰のため、形の半 導体で, また, その結晶構造(6mm)から圧電体と しても注目されてきた物質で, その粉体,焼結体お よび薄膜は, その物性の両面に渡って応用され,現 在,ペロブスカイト化合物と共に重要な電子セラ ミック材料となっている。 とくに,圧電材料として のZnOの利用は薄膜によって行なわれているが,膜 が多結晶で粒界の影響を受け,伝搬損失が大となI) 利用が不可能となる。そのために圧電トランス ジューサーおよび弾性表面波フィルタの高周波化に は,高純度ZnOの単結晶化が重要な課題となってい

る。

ZnO単結晶の水熱育成と結晶の諸性質について は,いくつかの報告がある。Liイオンドーフ°ZnO単 結晶の諸,,生質の評価,),圧電,誘電的性質2,3),X線ト

ポグラフイー,電子顕微鏡による内部欠陥4)の研究 等である。 しかし,育成条件と育成結晶の相関を基 礎にした結晶の化学量論比の評価に関しては, まだ 充分な研究は行なわれていないのが現状である。

ZnOは,前述のように過剰なZn原子のために、

形半導体であるが, そのストイキオメトリーの僅か な変化は,物理,化学的性質に大きな変化となって 示されることがわかっている。 しかしながら,過剰 Zn原子の量は100ppm以下と少な<,通常の分析 技術では非常に困難である5)。Zn,+xOのような化学

01日■■■︑■■■■一■■I■■B■■■■▽﹄■■■■■■■■■■■■﹄■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■DJ︲lllllIIllljF︽■■■■■■■■ロマ▲■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■画▽・■■■一

2. 実験方法

2. 1 単結晶の育成方法

水熱育成法についての装置および技術の詳細につ いては,別報に行なっているので9,'0), ここでは,新 しく採用した技術的な拡張に関連したことについて 述べる。育成に用いたオートクレーブは,内容積50 mlと350mlを有するもので,育成時に育成槽内の

温度検出ができるよう,陣設計されている。図'にそ

のオートクレープの構造を示す。適当な酸素分圧を

l I 1

q l l

昭和63年2月

(2)

1

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坂上

表1 高純度ZnO単結晶の育成条件

行I戊拙畷1mL.、 11 I楚療

I II ノJ 鰄糸分1f i容媒濃度 箙紫苑坐高l1 11乳 ライニング ガ戒II"

37()〜4()()℃

10〜15℃

7()()〜1()()()kg'cm2 1() 30kgcm2

KOH3.Omol+LiOHl.5mol H。O, ().l〜().25m()l

Z110焼結体lll()()℃, 24h) ''1f(0.3t)

15〜20da).s/run

30

︵旱仁︒︑①エ︶へ○一◎の﹄.m叩の﹄Q一⑮ご﹄⑯a

水熱育成用オートクレーブ構成図

図1

A:オートクレープ本体, F:電気炉

H: ヒータ, 1,2 :原料溶解部,結晶育成部の制御 0

温度計('印は育成槽内の温度計,T:それぞれの端

子)

0 1.0 2.0 3.O

H202 concentration (mol )

図2 H202添加濃度と発生酸素分圧の関係

育成溶液内に発生させる目的で,酸素発生剤,H202 を添加した。H202は強力な酸化剤であるため育成槽 は白金製のライニング管(厚さ0.3mm)で完全に密 封ざれオートクレーブ壁を保護している。本実験の 育成条件を表1にまとめて示した。添加したH202 濃度と発生する酸素分圧の関係を求めるため,充填 率65%のH20に対してH202を0〜0.25molでp‑

v‑T曲線を求め, その結果から育成温度領域では図 2に示すような酸素分圧曲線を得た。

2. 2 ストイキオメトリーの評価法

ZnOの化学組成は,精密にはZn,+xOと考えられ,

この過剰のXznの直接的な検出方法として最も有 効な方法の一つとして電量分析法があり,ここでは,

この方法を採用した。定電位量分析法と同様な電極 配置をとり,図3(a)にその構成図を示し同図(b)に電 気化学回路を示した。電解質に1.8molのH2SO4溶 液を用い,電極には,照合電極に飽和カロメル

(SCE),作用電極にHgフ。−ルおよび対向電極に白 金網を用い,各電極室の仕切I)はブリ ・ソトガラス フイルター(G4,−部は寒天ケル)で行なった。

SCE‑Hg間にポテンシオスタ・ソトによI),Hgに対 して0.2Vの電位を与え,塩化クロム(II)で洗浄し たN2ガスを電解質中に通じ,除酸素を行ない,Pt‑

Hg間の電流値が2〜5〃Aの一定値(background current)になるのを確めて,測定用のZnO結晶片を 投入しHgフ。−ル電極上に浮かべる。このとき試料 片が電解質に溶解し, Zn,+xOとしての過剰Zn原子 の酸化による電流が試料片がなくなるまで流れる。

この電流値を時間にして積分すればXznに対する 電気量が得られる。即ち, ZnOが溶解するに従って Znが過剰ならば電子がHg電極側に移動し,逆に Znが不足(O過剰)ならば, Hgから電子が奪われ る。これは,電気化学的にZnOの、形, p形の判定 にも使用できる。この測定は,試料の溶解を促し,

秋田高専研究紀要第23号

唖皇

(3)

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商純度ZnO単結晶の水熱育成とストイキオメトリーの評価

(2)光学的性質の測定法

光透過特性は300〜700nmの波長範囲でダフ ビームの光度計を用いて室温で測定した。試料はマ イクロ、ノーによl)切り出し,最終厚さ〜0.3mmで鏡 面研摩されている。同時に光導電特性も求めた。

(3) 格子定数の精密測定法

粉末X線回析法で, X線CuKQ/]線を用い、指数 3032, 0006, 1016および2240の値を用いた。回析角 の精度は, 1/100.の精度で求め, eleven9のSiの 28により角度補正して求めた。この方法で, 10‑4A の精度で格子定数が求められる。

(4) 電気抵抗率の測定法

抵抗率の測定は,通常の直流1−V法により,2極 法で行なった。試料片は1×1×5mm(長軸方向く 1010>)て長軸方向に電流を流した。電極はIn−Hg 合金(In:Hg=80: 20)を用い,電流電圧特性より オーミ 、ソクを確かめて測定された。

Va△g一地

electro lVtG

(II2SOIc )

コリ

I

pl

●七

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Ⅲユ Pt

I{ 9

pO

Znユ十

勺寺.̲..<} 十

ZnZ+

コ→111。

rolyt⑥

1− Zn。÷

Oコー anmpl。(

3. 結果および考察

好一

育成結晶の例を写真lに,今回の実験で得られた 高純度ZnO単結晶(group‑1)と従前のアルカリ溶 媒のみで育成した結晶(grOup‑2) と対比して示し

た。同写真が示すように,結晶相互の色調の差は明 瞭に示されている。group‑2の結晶は,特徴的な黄 色味を帯び、ておI) ,分析結果ではlppm以上の不純

物元素はLiのみであl) '0), この色調は,過剰Zn原 子の存在によるものと考えられる。

group‑1の結晶は, H20iの酸素剤を含んだ溶液

から育成され, group‑2の結晶は, この酸素剤フ リーの溶液から育成されたものである。表2に, こ れらのストイキオメトリー値からのずれ, Xzn量お よび電気抵抗率等の関係を示した。 ここで, 2,は gl‑oup‑2の結晶を空気中で700℃, 25時間Liの拡 (b)

図3 電量分析法の電極配置図(a)と電気化学回路(b)

baCkgr()LInd cLIrrentを安定化するたダ〕に, 温度を 48()()±().()5℃一定に制御して行なった。このXz,,量 は,次式によ )求めることかできる。

M×i×t 二二 81.38×Q×106

(ppm)

ここで,M:ZnOのモル重量(9) , i :電流(A), t : 時間(s) ,WzI,0 :試料菫型(10‑39), n:原子価数

(Zn ; 2) , F:フアラデイ定数, Q:電気量(C)。

この測定法て・XzI]は, 0.1ppmの精度まで検出が 可能て あることか示された。

2. 3 諸特性の測定法 (1) 不純物元素の検出

育成結晶に存在すると考えられる不純物元素は,

原料および育成系から導入されるもので, Li, K, Na,Fe,M11,Pt等である。これらの元素の分析は,

すべて原子吸光法により行なった。破砕した試料を 10 5 (9)まて精秤し, 10%HCl溶液中に入れ, 90℃

で蒸発乾固し,残I幸を純水で10mlに標定して分析 溶液とした。

写真1 育成ZnO単結晶

group‑1 :H202 0.25mol添加条件で育成 group‑2 :アルカリ溶媒のみで育成

(各右側の試料は, 0.3mm厚の測定用試料片)

I11

昭和63年2月

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1

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坂上

表2 分析結果と電気抵抗率

Temperatur・ロ48.OO40.O5oC

一一一一

Sample

groupNo Li(ppm) Xzn(ppm) Resis[ivily(Q‑cm)

1.12×108

2.30×108 7.52×107 8.64×107 8537●●●●7088 1.7

0.8 1.2 1.5 I

2.33×lO' 1.52×lOz 1.76×lO' 1.34×Iぴ

5677●●●の3421

13.5 19.7 14.2 21.6

2 p戸

目●陶幽︒○ベヨ︒﹃巳⑨二○.角い◎の﹃の

4.57×109 3.23×lOg 7.25×107 150

127 148

15.7 18.9 17.7 2

■■■■

OtherimpuritieS(K,Na,Fe,Mn,Pt):≦O.5ppm2':Theyweremadeto diffuseLi intogroup‑2Specimensa[7"。Cfor25hinair.

散処理を行なった。代表的な電量分析の電気化学電 流記録の例を図4に示した。記録に示すように,試 料を投下して電解質に試料が溶解しはじめると,

Xznに相当する電流がHg極からPt極に流れ,溶解 が終了すると,投入前のbackgroundの状態にもど ることが示されている。この電気量は,クーロンメー タによって求められ, また時間積分によっても求め ることがてきる。

この分析法は,電気化学電流の積分を基本として いるので, ZnOの化学溶解と同時に起こる過剰Zn の電気化学的な酸化に対して有効であり,従って電 極面積に左右きれない。 しかし,不純物元素の影響 については考慮する必要がある。表2の分析結果で,

最も多量に含まれている不純物Liについて,同程ま で含有するZnO焼結体試料を作成し, Liを全く含 まない結晶と比較した。その結果,前述のファラディ の法則によって算出されるZn量に95%以上の範囲 で一致し,Liの影響は検出のXzn量に殆んど影響を 与えないものと考える。

表2のgroup‑1は2と比較してXzn量の減少を 示しており,育成時の酸素雰囲気化の効果によるも ので,抵抗率も急激な増加を示ている。ZnO中に ドープきれているLiの作用に関して,もし,Zn格子 点にLiが置換するなら,格子間にある過剰Znドナ を補償して,アクセプタとして作用すると考えられ る3)。しかしながら,group‑2の場合,Liは約5ppm ドープされているが,高抵抗率の試料は存在しな かった。水熱条件下で育成されるZnO単結晶中の Liの挙動は簡単でないが,酸素剤を添加しない育成 条件下では,育成環境が還元性雰囲気となり9'10),育 成中のZnO結晶中の酸素欠陥部にLiO‑イオンとし て容易に入ることが考えられ''),Liがアクセフ°夕と

一一t±m●

図4 電量分析法による電気化学電流

(1 :group‑1, 2:group‑2, 2' :group‑2')

して作用しないことになる。一方,酸素剤を添加し た条件では,結晶中の酸素欠陥は顕著に減少し,Li+

は, Zn‑siteに入l) ,アクセプタとして作用するも のと考えられる。group‑2'の試料は,熱処理のため に高抵抗率を示しているが, Xznは殆んど処理前の group‑2と同程度である。これは,Liの高いドープ により抵抗率を補償したものであるが,Xznには変 化を与えないことを示している。

表3に,格子定数の測定結果を示す。これまでの X線による格子定数測定値は,ZnO結晶については 結晶をZn蒸気中で処理された値は, a, cの値共処 理前の値よりも増加する結果が報告されており'2),

これは,過剰Zn原子の増加によって格子定数が増 加することを示している。本実験の育成結晶は過剰 Zn原子,Xznが減少している結果を与えており,格 子定数a, cの値も減少している。このことは,以前 の報告の結果を支持している。

図5に,光透過特性と光導電特性と共にまとめて 示した。group‑1の試料では, 386nmに吸収を示 し,これは室温でのZnO基礎吸収端,385nm'3)にほ ぼ一致している。結晶中の過剰Zn原子,Xznが減少 するに従って,長波長側からこの吸収端に向って移

秋田高専研究紀要第23号

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高純度ZnO単結晶の水熱育成とストイキオメトリーの評価

Q‑cmまで増加し,酸素分圧のない場合に比べて格 段の高純度化が認められた。このような高い酸素分 圧のもとでは,育成中のZnO結晶の酸素原子欠陥は 顕著に減少させることが可能であり,同時にドープ 不純物Li+イオンはZn‑siteに占有されて,過剰の Zn原子のドナを補償して,アクセプタとして有効に 作用し,高い抵抗率を示している。更に高純度化を 試み,p形ZnOの可能性を共に大形の単結晶化が今 後の課題である。

表3 格子定数の測定結果

Group‑l

" 3.2490+Q00C

̲Group‑2

492+0̲(X)(】

c 5.2068i0.0006A 5.2073i0.0006A

噸︑

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︵●テ︶こ◎一幸星︽上申仁○二︒◎00076943

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本研究の一部は,昭和61年度日本板硝子材料工学

助成会の研究助成金の援助によるものである。ここ に感謝の意を表します。

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隈ノ/〃〃 800 I

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参考文献

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0 ユCO 4.⑥ 43. 5 SSO GOO 650 700

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woveIeng1h(nm)

ZnO単結晶の光透過特性と光導電特性 (室温,番号は図4と同じ)

図5 2)

動する傾向を示す。光導電性は,group‑2の試料を 除いて,ほぼこの吸収端の波長に示きれる。group‑

2の場合,XzI]もしくはO原子欠陥が多量のために,

不純物準位が縮退しているために,光導電性を示さ ないものと考えられる。group‑2'の場合,Li拡散処 理のために高い抵抗率を示すが,Liの過剰ドープ。の ために,結晶内に散乱体の導入も行なわれ,長波長 の可視光領域に一様な吸収によって,透過率が低下 が示されている。このことは, また,電子の移動度 の低下に作用することを考えられる'3)。

I↑11 3)

4)

5)

6)

7)

11 8)

9)

4.

10) 高純度ZnO単結晶は,酸素発生剤H202を育成溶 液に添加することによI),水熱法により育成するこ

とができた。この結晶のストイキオメトリーの評価 は,H202を添加しない従前の育成結晶試料と比較し て,電量分析法により0.1ppmまでの精度で検出す ることが可能である。育成系内の酸素分圧は,H202 0.25molのとき〜30kg/cm2まで増加し,結晶中の 過剰Zn原子は0.8ppmまで減少し,抵抗率は108

ll)

I

11111

12)

13)

1 I

1

1 8

昭和63年2月

参照

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