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有価証券 と実定法規 に関す る若干の検討

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(1)

田 連 宏 康

目 次 1.はじめに

2. 商法の諸規定中の 「 有価証券」の意義 3. 有価証券 と民法 との関係

4.証券取引法上の有価証券 に関 して

5. おわ りに

1.はじめに

有価証券 とい う,多 くの実定法規 中に見受 け られ,社会生活 において もしば しば使用 され る言葉 は, ドイ ツ語 の Wert papi er の訳語 であ ることはい うま で もないが, ドイツにおいては,権利の主張に証券の所持を要す るとい う仕方 で私権が表章 されている証券, とい うブル ンナ‑以来の支配的な有価証券概念 が資本市場 における記名債務証書 の大量 の登場を契機 に見直 されつつあ ること が近時わが国に も紹介 されている。 1 )

ところで,「 有価証券を法 の世界 それ 自体 において把握 しよ うとす る態度 と 経済的観点 を もって有価証券を限界づけ目的づ けよ うとす る態度 とは,有価証 券法の研究 における二つの流れであるよ うに思われ る。 ブル ンナ‑は前者 に属 し,近時 は後者 の態度が ます ます好 まれてい る 」2) とい う指摘 もあるが,た と

1) 遠藤喜佳 「 西 ドイツにおける有価証券概念の見直 しとその実務的背景 について」手 研 376 号25 頁以下,同 「キ ュンベルの有価証券概念」宮崎産 1 巻 2 号 1 貢以下参照。

2)小橋一郎 『 商法論集 Ⅱ [ 商行為 ・手形( 1 ) ] 』( 昭 58 )38 頁。

〔 2 7 5 〕

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27 6 45 巻 第 3 号

えば,「 一般 的な有価証券理論 と して は商法の諸規定の立場 に も疑問の余地が あるが, とりわ け民法の有価証券 に関す る諸規定の うちには正 しい有価証券理 論の発達を阻害す るよ うな ものをす ら含んでいる」 として,「あ らゆ る有価証 券 に最小限必要 な本質的な要請 は,本来流通を前提す る有価証券 と しては,梶 利 の証券化 は本来権利の流通化,即 ち 『 権利の移転』を証券 と結合せ しめるこ

とによって, これを促進す ることにあるとい うべ く,‑‑従 って,有価証券の 定義 その もの も,権利 の流通化の便宜か ら,『 権利の移転 につ き証券 を必要 と す るもの』 と解すべ きである 」3) とされ る,わが国を代表す る有価証券論であ る石井照久博士 の所説 などは,なるほど典型的な経済的観点か らの有価証券論 といえ る

従来のわが国の有価証券法の研究の主流が有価証券を 「 法の世界それ 自体 に お いて」 ,す なわ ち実定法規 との関連 において把握 しよ うとす る もので はな か った ことは確かであろ う

それは,有価証券 とい う言葉が実定法規 において 様 々な意義で使用 されてい ることか ら,「 立法上有価証券 とされてい るものを そのまま学問上の有価証券の概念 とす ることはで きず,む しろ逆 に, まず有価 証券の本質を洞察 してその学問上の位置を定め,それを基礎 として法令中の有 価証券の意義をそれぞれ適用 に位置づ け又 は解釈す るはか ない 」4) とい う認識 があったためである。 しか しなが ら,上述のよ うに有価証券概念が動揺 し, さ

3 )石井照久 「 有価証券理論の反省」 竹田先生古稀記念 『 商法の諸問題 』( 昭 27 )441 頁, 451 頁。

4) 鈴木竹雄‑前田庸 『 手形法 ・小切手法 [ 新版 ] 』( 乎 4) 1 頁。同旨,西原寛一 「 有

価証券の概念と証券の流通性」法雑 4 巻 3・4 号 263 頁以下。このような認識は,

ドイツにおいても同様であり, たとえば, カナ‑リスは , 「 有価証券という概念は,

法律から簡単には取り出されえない。法律は,確かに有価証券という概念を多数の

規定において使用 しているが ( たとえば民法 232 条 ・234 条 ・37 2 条 ・437 条,商法

1 条 2 項 1 号 ・369 条 ・381 条,民事訴訟法 59 2 条 ・6 88 条 ・808 条 ・821 条,有価証

券寄託法 1 条等参照) ,一般的な概念規定はどこにもない。のみならず,法律が有

価証券という概念を必ず しも同一の意味において使用 しておらず,これにときには

広い意義を,ときには狭い意義を与えていることがわかる。それゆえ,有価証券の

一般的概念を詳細に規定することは,学説の任務であった 」 ( H uec k/Canari s ,

RechtderWert papi e re,12.Au r l .( 1 9 86 )5.1. ) と述べている。

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らに紙 を用 いない有価証券の可能性す ら模索 され る 5) な ど有価証券 のペー

パ ー レス化 6) が進展 しっっある今 日において議論の無用な混乱を避 けるため には,有価証券を経済的観点か ら把握す ることもさることなが ら,む しろこれ を実定法規 との関連 において把握することが要請 されているものというべきで はなかろうか。本稿は, このような問題意識か ら,実定法規の中で有価証券 と い う言葉がいかなる意義で使用 されているか,実定法規 と有価証券 とがいかな る関係にあるか といった点を検討 しようとするものである。 もっとも,有価証 券 に関連す る実定法規の数 は極めて多 い。 7) そ こで,本稿 においては,有価 証券 と密接な関連を有す る商法の諸規定の中で有価証券 とい う言葉がいかなる 意義で使用されているか という点を検討 した上で,有価証券 とわが国の一般私 法である民法 との関係について検討を加え,最後に最近改正された証券取引法 上の有価証券に関 して簡単に触れておきたい。

2. 商法の諸規定中の 「 有価証券」の意義

有価証券は,広 く企業取引以外の領域 において も利用 され うるものである。

それゆえ,実質的意義 における商法を企業法 ととらえ る場合 には, 8) 有価証 券法が実質的意義の商法に属す るものと解することは必ず しも妥当ではあるま い。 9) しか しなが ら,有価証券が主 として企業取 引の領域 において利用 され 5 )福瀧博之 「 手形 ・小切手の現代的課題 一紙 ( 証券)を用いない有価証券の可能性」

高窪利一先生還暦記念 『 現代企業法の理論 と実務』( 乎 5)254 貞以下参照。

6 )有価証券のペーパー レス化の意義は,権利移転の方法の 「帳簿化」にあるもの とさ れ る ( 神田秀樹 「ペーパ ー レス化 と有価証券法理の将来」河本一郎先生古希祝賀

『 現代企業 と有価証券の法理』( 平 6)1 57 頁) 0

7 )有価証券 とい う言葉を使用す る実定法規 と して,商法501 条 ・51 8 条 ・519 条 ・57 8 条 ・59 5 条,供託法 1 条 ・4 条,信託法 3 条,民事訴訟法1 1 2 条 ・430 条,破産法57 条 ・1 9 2 条 ・1 97 条 ・206 条,会社更生法 1 05 条,刑法 1 6 2 条 ・1 63 条,刑事訴訟法9 4 条,保険業法 2 条,証券取引法 2 条,有価証券に係 る投資顧問業の規制等に関す る 法律等参照。

8 )西原寛一 『日本商法論策一巻』( 改訂 2 版,昭25 )1 6 貢以下参照。

9 )同旨,西原寛一 『 商行為法 』 ( 増補 3 版,昭48 ) 4 頁,石井照久 ‑鴻常夫 『 手形法

・小切手法商法 Ⅴ 』 ( 第 2 版,昭5 3 )1 3 頁以下,服部栄三 『 商法総 則 [ 第3 版 ]』

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27 8 商 学 討 究 第 4 5 巻 第 3 号

ていることは疑 いな く,また,ドイツにおいては ,Wert papi e r とい う言葉 は, まず1 85 3 年の ブ リンクマ ンの商法の教科書 において使用 され,1 861 年の普通 ドイツ商法において法典上 は じめて使用されてお り ,1 0) わが国において も,育 価証券 という言葉は,まず明治1 7 年のロエス レル氏起稿商法草案において使用 され,明治23 年の旧商法において法典上 は じめて使用 されている。したが って, 有価証券が商法 と極めて密接な関連を有することは確かであろう

一さて, 現行商法 においては, 有価証券 とい う言葉 は ,501 条,51 8 条,51 9 条, 578 条および595 条に使用 されている。 ところで,有価証券 は,証券 に表毒 さ れた権利の相違などによって様 々に分類 され るはか, とくに権利者を指定す る 方法の相違によって記名証券,指図証券および無記名証券 に分類 され るとこ ろ,商法51 6 条 2 項 は,「 指図債権」および 「 無記名債権」の履行場所を債務者 の現時の営業所, もし営業所がないときはその住所 と規定 し,続 く同 5 1 7 条は,

「 指図債権」または 「 無記名債権」について履行期限の定めがあるときで も, 債務者 は,その期限到来後,所持人がその証券を呈示 して履行を請求 した時か ら遅滞の責任を負 う旨規定 している。商法517 条 は,いわゆる呈示証券性を規 定するものであ って,「 続 く二 ヵ条 との関連では商行為法中における有価証券 法の基本的な原則を定めたもの

」 11)

ともいわれ る。そ こで,まず, この分類 に 焦点を当てなが ら , 商法51 8 条および同51 9 条か ら取 り上げてい くこととしたい。

( 丑商法51 8 条 は,金銭その他の物 または有価証券の給付を目的 とす る有価証 券の所持人が証券を喪失 した場合に公示催告の申立を したときは,債務者にそ の債務の 目的物を供託 させ,または相当の担保を供 してその証券に従い履行 さ せ ることができる旨規定す るものである。本条が金銭その他の物または有価証 券の給付を目的 とする有価証券以外の有価証券にも類推適用 されるか否かにつ いては争 いがあるが,本条の有価証券 は,公示催告による除権判決が認め られ

( 昭 5 8 )1 2 頁以下。

1 0 )Vgl . Ri c har di , We r t papi e r r e c ht ( 1 987 ) S. 1 3 .

ll )田中誠二 ‑喜多了祐 ‑堀 口亘 ‑原茂太一 『コンメ ンタール商行為法』( 昭 4 8 )1 2 8

頁。

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るものでなければな らないところ,除権判決が認め られる証券については,金 銭その他の物または有価証券の給付を目的とす るか否か といった証券に表章 さ れた権利の相違を問わず,本条の特則を認めるのが妥当である 。1 2)

さて,公示催告手続については,民事訴訟法 764 条以下に規定があ り,同法 777 条 は,「 手形其 ノ他商法二無効 卜為 シ得へキコ トヲ定 メタル証書」の場合, および 「 法律上公示催告手続 ヲ許ス他 ノ証書二付キ其法律中二特別規定 ヲ設ケ サル」場合に公示催告による除権判決が認め られ るもの としている。そ こで, いかなる証券についてこれが認め られるかば,実体法の規定に委ね られ るとこ ろ,民法施行法 57 条 は,指図証券,無記名証券および 「 民法四七一条二掲ケタ ル証券」,すなわち無記名証券の‑変形である記名式所持人払証券 1 3 )につい てのみ これを認めていることか ら,残 る記名証券については,公示催告による 除権判決は認め られない ものと解するのが従来か らの通説である。1 4 )

これに対 し,現在 は,反対説 も有力である 。 1 5 )その根拠 は, とどのつまり, 記名証券について も,権利を行使するためには,証券を要す る以上,公示催告 による除権判決が認め られなければな らないという点に帰するが,積極的に流 通が予定 されていない記名証券については,譲渡の対抗要件 として民法 467 条 の通知 ・承諾を要す るもの と解すべ きであり ,1 6) それによって同条の対抗要件 1 2 ) 同 旨,小町谷操三 『商行為法論』( 昭 1 8 )11 2 頁,大隅健一郎 『 商行為法』( 昭 33 )

61 頁,西原 ・前掲注 9)11 5 頁,平出慶道 『 商行為法 [ 第 2 版]』( 平元) 21 4 貢。

1 3 ) 民法 471 条 の記名式所持人払証券の性質 については,免責証券 ととらえ る見解 も存 す るが ( 河本一郎 「 免責証券 について」神法 3 巻 1 号 171 頁以下) ,本文のよ うに無 記名証券の一変形 ととらえるのが通説 といえ る ( 我妻栄 『 新訂債権総論 ( 民法講義

Ⅳ)』( 昭 3 9 )56 3 頁,於保不二雄 『 債権総論 [ 新版]』( 昭 47 )326 貢以下参照) 0 1 4 ) 松本蒸治 『 商行為法』 ( 改訂 32 版,昭 4)97 頁,竹 田省 『 手形法小切手法』( 昭 3 1 )

7 2 頁, 田中誠二 『 新版商行為法』 ( 第 10 版,昭 33 )11 8 貢,伊沢孝平 『 手形法 ・小 切手法』( 昭 24 )229 貢以下,大隅 ・前掲注 1 2 )61 頁,西原 ・前掲注 9)11 5 頁,石 井 ‑鴻 ・前掲注 9) 5 4 頁以下参照。

1 5 ) 鈴木 ‑前 田 ・前掲注 4)345 頁以下,大隅健一郎 ‑河本一郎 『 注釈手形法 ・小切手 法』( 昭 52 )468 頁,平出 ・前掲注 1 2 )21 2 頁以下参照。

1 6 ) 拙稿 「 裏書禁止手形 における権利 と証券 との結合関係」商学討究 44 巻 1・2 号 295

頁以下参照。なお,記名社債 については,社債原簿の名義書換記載が民法 467 条の

通知 ・承諾 と同様 の意義を有す ることとなる ( 田中昭 ・新注会 ( 1 0 )307 条注釈 9

参照) 0

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280 商 学 討 究 第 45 巻 第 3 号

を具備 した権利者の安全は確保 されるか ら,その者がその権利を行使す るため には,必ず しも証券を要 しないものと解 され,公示催告による除権判決 も, こ れを認める必要はないとい うべ きである 。1 7 )なお,記名証券について原則 とし て公示催告による除権判決を否定 しなが ら,裏書禁止手形については,民事訴 訟法 7 77 条によって これを認める見解 も有力であるが ,1 8) 裏書禁止手形につい て も,譲渡の対抗要件 として民法 467 条の通知 ・承諾を要 し,同条の対抗要件 を具備 した者がその権利を行使す るためには,必ず しも証券の呈示および受戻 を要 しないもの と解すべ きであるか ら ,1 9) そのような 「中途半端な見解」2 0 )杏 採用することは,妥当とは思われない。

したが って,商法518 条 においては,有価証券 という言葉 は,記名証券を除 外 した指図証券および無記名証券を指す ものとして使用されていると解す るの が妥当である。そ して, この指図証券および無記名証券は,証券に表章 された 権利の相違を問わないもの と解すべ きであるが,乗車券や劇場の切符のような

「同様の証券が多数存在す るため,その同一性の識別が不可能ない し困難なも の」および 「 一般的に見て除権判決を受けるに値い しないような証券」は,本 条の有価証券か ら除外 され るであろう 。2

1)

②次に,商法51 9 条 は,手形法小切手法の諸規定を金銭その他の物 または有 価証券の給付を目的 とす る有価証券に準用す るものである。判例 は, このよう 1 7 ) ドイツにおいては,記名証券について も,権利の行使 に証券を要す るもの と解 され

ている。 しか し,それは,債権譲渡についていわゆる対抗要件主義が とられていな い ことか ら,善意 の債務者 による原債権者 および二重譲渡の第2譲受人への弁済を 有効 とす る ドイツ民法 4 07 条の適用を排除 し,証券を所持す る権利者 の安全を強調 す ることによって,証券の所持 に譲渡の対抗要件 としての機能を果たさ しめている 結果であると考え られ,債権譲渡 について対抗要件主義を とっているわが国におい て は, ドイツと同様 に解す る必要 はない と考え る ( 拙稿 ・前掲注 1 6 )308 貢以下参 照) 0

1 8 ) 竹 田 ・前掲注 1 4 )7 2 貢,伊沢 ・前掲注 1 4 )229 頁以下,石井 ‑鴻 ・前掲注 9)54 頁 参照。

1 9 ) 拙稿 ・前掲注 1 6 )306 頁以下参照。

20 ) 鈴木竹雄 『 商法研究 Ⅰ総論 ・手形法』( 昭 56 )40 6 頁。

2 1 )鈴木 ・前掲注 20 )404 頁。

(7)

な給付を目的 としない株券のような有価証券については,本条の類推適用を否 定 しているが , 2 2 )本条が準用 している裏書の要件 ・方式,白地式裏書の効力に 関する手形法 1 2 条ない し 14 条 2 項,選択無記名式小切手の効力に関する小切手 法 5 条 2 項,裏書の資格授与的効力に関す る小切手法 19 条および善意取得に関 する小切手法 21 条の諸規定を準用す る必要性 は,やはり金銭その他の物または 有価証券の給付を目的 とす るか否か といった証券に衰章 された権利の相違を問 わないものというべ きであるか ら,上記のような給付を目的 としない有価証券 について も,本条を類推適用すべきである 。2 3) ただ し,本条 における有価証券 は,善意取得が認め られるものでなければな らないか ら,本条において も,有 価証券 という言葉は,積極的に流通が予定 されていない記名証券を除外 した指 図証券および無記名証券を指す もの として使用されていると解 される。 この点

は,判例 ・通説の認めるところであ り,

24)

異論 はない.

上記のよ うに商法 51 8 条および同 519 条 において有価証券 とい う言葉が記名 証券を除外 した指図証券および無記名証券を指す ものとして使用されていると 解す ることは,上述のように商法517 条が 「 指図債権」または 「 無記名債権」

について呈示証券性 とい うその基本原則を商法 51 8 条および同 519 条 との関連 において定めたもの と解 されていることとまさに符合するところである。

③次に,商法501 条 は,商人概念の基礎 となる基本的商行為の一種である絶 対的商行為を規定す るものである。同条 は, 1号において絶対的商行為 となる 投機購買およびその実行行為の対象 として,有価証券を動産および不動産 とと もに掲げてお り,また, 2 号 において絶対的商行為 となる投機売却およびその 実行行為の対象 として,有価証券を動産 とともに掲げているが,本条の有価証 券の意義については,「 常 に譲渡性を前提 としなければな らない」2 5 )との記述 2 2 ) 大判大 5・3・6 民録 2 2 輯 1 80 頁, 大判 昭 2・5・23 民集 6 巻 270 頁 な ど多数。もっと

も,株式の善意取得 を認 め る商法 22 9 条が存在す る今 日において は,株券 に商法 51 9 条が適用 され るか否か とい う論争 は, ほとん ど実益がない。

2 3 ) 同旨,大隅 ・前掲注 1 2 )5 7 貢,西原 ・前掲注 9)1 1 1 頁。

2 4 ) 大判大 1 5・3・5 民集 5 巻 1 6 4 頁,西原 ・前掲注 9)11 1 頁, 田中誠二 ほか ・前掲 注 1 1 ) 1 46 頁参照。

2 5 ) 西原 ・前掲注 9)69 頁。

(8)

2 8 2 45巻 第 3号 がみ られ るはか,特有の議論 は見受 け られない。

思 うに,本条 においては,商法518 条 や同519 条 におけると同様 に有価証券 とい う言葉が記名証券を除外 した指図証券および無記名証券を指す もの として 使用 され るいると解す ることは妥 当ではあるまい。なぜな ら,たとえば記名証 券である記名社債 は, その表章す る権利が投機 の対象 とな ることは明 らかで あって,その投機を 目的 とした購買等を無記名社債の購買等 と区別 して,絶対 的商行為 としない理 由は存 しないと考え られ るか らである 。2 6) このよ うに, こ

こでは,権利者を指定す る方法の相違を問題 とすべ きではな く,本来な らば, 証券に表章 された権利が投機の対象 とな りうるか否かを問題 とすべ きところで あろうが,現代社会 において,証券化 されなが ら投機の対象 とな りえない権利 を考えることは極めて困難である

したが って,本条の有価証券には, とくに 限定を付す ることな く,歴史的に有価証券 とい う名で呼ばれて きた証券のすべ てが該当す るもの と解 してお くことが妥 当であろう

では,証拠証券および免責証券 と区別 され,記名証券を含めて歴史的に有価 証券 とい う名で呼ばれて きた証券 は,いかに概念規定 されるであろうか。私見 によると,債権譲渡についていわゆる対抗要件主義を とっているわが国におい ては,記名証券 は,権利の移転および行使に証券を要す るものではないが,証 券の発行 によってそれ以前 に存在す る権利 とは同一性のない新たな権利が発生 す るもの と解 され うることか ら,権利の発生 には証券を要す るもの といえる。

そ こで,有価証券を権利の発生,移転,行使の全部または一部 に証券を要す る もの とす るかつての有力説を文字通 りに解す る場合 には,記名証券を含めて歴 史的に有価証券 という名で呼ばれてきた証券を広 くその中に含めることがで き

るのではないか と考え られ る。㌘)

なお,商法501 条 4 号 は,「 手形其他 ノ商業証券二関スル行為」を絶対的商行 為 と規定 しているが, この商業証券の意義 については,商法51 8 条 および519 26 ) もっとも,現在では,記名社債は存在 しないものといわれている ( 田中昭 ・注 1 6 )

30 8 条注釈 5 参照) 0

27 ) 拙稿 ・前掲注 1 6 )295 頁以下 ,31 1 頁参照。

(9)

条の規定す る金銭その他の物または有価証券の給付を目的 とする有価証券 と解 する見解 2 8 )と広 く有価証券を意味す るものと解す る見解 2 9 )とが存す るO思 う に, この商業証券たる有価証券について も,本来な らば,証券に表章 された権 利が商取引,すなわち企業取引の対象 とな りうるか否かを問題 とすべきところ であるが,企業取引の対象 となりうる権利 は,決 して金銭その他の物 または有 価証券の給付を目的 とする権利に限 られるものではな く,証券化 されなが ら企 業取引の対象 とな りえない権利は考えに くい。 したが って, この商業証券 も, 商法 5 01 条の有価証券 と同様 に,記名証券を含めて歴史的に有価証券 という名 で呼ばれて きた証券,すなわち権利の発生,移転,行使の全部または一部に証 券を要す る証券 と広 く解 してお くことが妥当であろう

④最後 に,商法 5 7 8 条および同 5 9 5 条 は,貨幣,有価証券その他 の高価品に ついては,その種類および価格を明告されなければ,その運送の委託を受 けた 運送人またはその寄託を受 けた場屋の主人 は,損害賠償責任を負わない旨規定 するものである。 ここにおいて,有価証券 は,貨幣とともに高価品の例示 とし て掲げ られている。

さて,高価品 とは,容積 ・重量の割に著 しく高価な物品をいうものと解 され ているが,3 0 )なるほど,指図証券および無記名証券については,権利の行使に 証券を要す るため, 所持人が これを紛失 した場合には,除権判決を得なければ, 権利を行使す ることができず,さらに,その間に権利が善意取得 される可能性

もある。 したが って,指図証券および無記名証券については,その証券 自体の 価額 も,証券に表章 された権利の価額あるいは除権判決を得 るのに必要な費用 の価額に相当 し,上記の高価品の定義にまさにあてはまることとなろう。 これ に対 し,記名証券については,私見によると,権利の行使 に必ず しも証券を要 しないため,所持人が これを紛失 した場合にも,民法 4 67 条の通知 ・承諾を得 2 8 ) 小町谷 ・前掲注 1 2 )3 0 頁,田中誠二 『 前訂商法総則詳論』( 昭 5 1 )1 7 4 頁。

2 9 ) 大隅 ・前掲注 1 2 )1 2 頁,西原 ・前掲注 9)7 3 頁,服部 ・前掲注 9)4 5 7 頁,平出 ・ 前掲注 1 2 )4 9 頁以下参照。

3 0 ) 最判 昭 4 5・4・21 判時 5 9 3 号 8 7 頁参照。

(10)

284 商 学 討 究 第 4 5 巻 第 3 号

ていれば,必ず しも除権判決を得ず とも権利を行使で きるもの と解す るのが妥 当であ り ,31) その間に権利が善意取得 され る可能性 もない。 したが って,記名 証券 については,その証券 自体の価額 は,証券 に表章 された権利の価額 には到 底及 ばず,高価品の定義 にあて はま らない もの と考え られ,商法 578 条 および 同 595 条 において,有価証券 とい う言葉 は,商法 518 条 および同 51 9 条 と同様 に 記名証券を除外 した指図証券および無記名証券を指す もの として使用 されてい

ると解す るのが妥 当なので はなかろ うか 。3 2)

3. 有価証券と民法との関係

権利 と証券 との結合関係 に着 目 して形成 された有価証券概念 は,わが国おい て は,後述す る証券取引法上の有価証券概念 と区別す るために,一般私法上の 有価証券概念ない し民商法上の有価証券概念などと呼ばれ ることがある

そ こ で,次 に,有価証券 と私法の一般法であ る民法 との関係 について検討 したい。

わが民法 には, ドイツ民法 と異 な り,3 3 )有価証券 とい う言葉 は存在 しない。

もっとも,わが民法 に も,商法 516 条 2 項や同 517 条 と同様 に 「 指図債権」 ( 氏 366 条 ・469 条 ・470 条 ・472 条)および 「 無記名債権」 ( 民 86 条 3 項 ・473 条) といった言葉が存在 し, さ らに,民法 471 条 は, 「証書二債権者 ヲ指名 シタル モ其証書 ノ所持人二弁済スヘキ旨ヲ附記 シタ」記名式所持人払債権 について規 3 1 )拙稿 ・前掲注 1 6 )3 0 6 頁以下参照。

3 2 ) ドイツ民法 70 2 条 も,旅店主人の高価品に対する責任に関するわが商法 57 8 条およ び同 595 条と同趣旨の規定であるが,同条の有価証券については,たとえば,「 高 価な証券であるか否かが決定的であって,有価証券は,すべて価値を有する証券で あるから,それが権利を表章 しているか,ただ単に高価な証券を意味するかは,秩 るに足 りない問題である 」 ( Ri chardi , a. a.0.( Fn.1 0 )S.1 5 ) と解 されている。

その趣旨は,記名証券を同条の有価証券から除外するものではなかろうが, ドイツ においては,記名証券についても,善意取得は認められないものの,権利の行使に は証券を要 し,所持人がこれを紛失 した場合には,除権 判 決を得なければ,権利を 行使することができないことから,記名証券自体の価額は,少なくとも除権判決を 得るのに必要な費用の価額に相当し,高価品といえるであろう。

3 3 ) ドイツ民法においては, We r t papi e r という言葉は ,23 2 条 ,23 4 条 ,3 7 2 条 ,4 37

条 ,7 0 2 条 ,1 80 7 条 4 号などに広 く使用されている。

(11)

定 してお り, これ らの債権は,講学上,証券的債権 と呼ばれている。そこで, この証券的債権 と有価証券 とがいかなる関係にあるかが問題 となる。

まず,民法における指図債権および無記名債権 は,規定上,意思表示を譲渡 の効力発生要件 とし,その裏書および交付は,譲渡の対抗要件 とされているに す ぎず ( 民4 69 条 ・86 条 3 条 ‑同1 78 条) ,裏書および交付を譲渡の効力発生要 件 とする商法における有価証券たる指図証券および無記名証券 とは異なる。 し か し,民法学上の通説は,民法上の証券的債権 に関する規定を有価証券に表章

された債権 に関す る規定 と解 し,有価証券理論 に基づいて,民法上の指図債権 および無記名債権において も,その裏書および交付は,単なる譲渡の対抗要件 ではな く,その効力発生要件 と解すべきものとしてきた.3 4 )

これに対 して,近時は,たとえば,「 民法 は,有価証券については規定せず, その一歩手前の,債権の譲渡や行使 と証書の存在 とが密接に関連 している債権 について規定 し,これを民商法を通ず る一般原則 とした。もっとも, 起草者 は, これを有価証券 と呼んでお り,今 日の説 もこれを有価証券に関する規定 と考え てか,商法 との間に矛盾のあること,有価証券に しては流通の保護その他の点 で不十分なことなどを挙げて,立法論的に適当でないことを批判 しているが, これ らは有価証券その ものを規定 しているのでないか ら学者の批判 もやや的外 れである 。 」 「これ らは指名債権譲渡 と有価証券の譲渡 との中間に位置す るとい える」 として,必ず しも民法上の指図債権および無記名債権において も,その 裏書および交付を譲渡の効力発生要件 と解 さない見解が有力である。3 5 )また,

「 民法典の枠組か らいえば,四六九条以下の債権を証券的債権 と名付けるな ら ば,それは,商法など特別法上の有価証券 も含む上位概念であって ( 広義の証 券的債権) ,ただ,商法など特別法上の証券的債権 については,それぞれの特 別法の規定が優先するので,民法の規定の適用がないという理解 にな」るもの と解 しなが らも,結論的には,「 証券的債権 は,指名債権 と有価証券の中間に 3 4 ) 我妻 ・前掲注 1 3 )5 5 4 頁以下,於保 ・前掲注 1 3 )3 2 2 頁以下参照。

3 5 ) 星野英一 『 民法概論 Ⅲ ( 債権総論) 』( 補訂版,昭 5 8 )2 1 4 頁以下。同 旨,平井宜夫

『 債権総論 [ 第 2 版 ]』( 平 6)1 5 3 頁。

(12)

2 86 45 3

位置する債権である」 との上記有力説を支持す る見解 も存する。3 6 )

しか しなが ら,証券的債権であって,商法が適用 されない債権 は,「 商事二 関 シ」( 商 1 条)ない ものに限 られ ることとなるところ,商法 1 条の 「 商事」

の意義については争いもあるが,同条が商法典の適用について定めた ものであ ることか ら,商法典が規律 している事項および特別法によって商法典の適用を 受 けるもの とされている事項をい うもの と形式的に解 さざるをえない03 7 )そう だ とすると,指図債権および無記名債権 についての事項 は,商法典が規律 して いる事項であるか ら , 「 商事二関」す るものであることとな り,商法 51 7 条は, その規定す る指図債権および無記名債権について何 らの制限 も規定 していない ため,あ らゆる指図債権および無記名債権は,同条の適用を受 け,権利の行使 に証券を要す る呈示証券 となるものと解 される。民法施行法 57 条が指図証券お よび無記名証券について公示催告手続による除権判決を認めていることは, こ のように解す ることの裏付けとなろう。また , 「 民法四七一条二掲ケタル証券」 , すなわち記名式所持人払証券 も,無記名証券の一変形であるか ら,やはり呈示 証券 となるもの と解 され る。次 に,通説 に従 って,商法 51 9 条の有価証券 は,

「 金銭其他 ノ物又‑有価証券ノ給付 ヲ目的 トスル」 ものに限 られないものと解 す る場合には,同条が準用する手形法1 4 条 1 項によって,あ らゆる指図債権に おいて,その裏書 は,単なる譲渡の対抗要件ではな く,その効力発生要件 とな る。さらに,商慣習法上,あ らゆる無記名債権においては,その引渡は,単な る譲渡の対抗要件ではな く,その効力発生要件 とされ るもの と解すべ きであ り, この商慣習は,民法に優先す ることとなる ( 商 1条)。 したが って,あ ら ゆる指図債権および無記名債権は,権利の移転および行使 に証券を要す るもの とな り, これを有価証券 と認めないわけにはいかな くなると同時に,民法469 条および同86 条 3 項 ‑同1 78 条が適用 され る余地 は全 くな くなるというはかな い。 これに対 し,商法 51 9 条 は,弁済債務者の免責 に関す る手形法 4 0 条 3 項ま 36 )前田達明 『口述債権総論 [ 第 3 版 ] 』( 平 5)41 8 頁。

37 )同旨,大隅健一郎 『 商法総則 [ 新版 ] 』 ( 昭 53 )7 9 貢,石井照久‑鴻常夫 『 商法総則

商法 Ⅰ 』 ( 第 3 版,昭50 )5 4 貢以下。反対,服部 ・前掲注 9)35 頁以下。

(13)

たは小切手法35 条,および人的抗弁切断に関す る手形法1 7 条または小切手法22 条を準用 していないことか ら,有価証券である指図証券および無記名証券につ

いて民法 470 条, 同47 2 条 および同473 条 が適用 され ることとな ると解 され る。3 8 )したが って,「 商法上の有価証券 とは別 に,民法の前提 とす るところの 証券 との結合を予定 した債権が起草当時に考え られていたことは,事実 として 明 らかであ」3 9 )るとして も,現行法上は,民法の証券的債権に関する規定の う ち, 民法469 条および同86 条 ‑同178 条 は, 適用され る余地がな く, 民法470 条,同 471 条,同47 2 条および同473 条 は,有価証券である指図証券および無記名証券 に関す る規定であると考えざるをえない。 したが って,「 指名債権 と有価証券 の中間に位置する債権」は,実際上のみな らず,理論上 も存在 しないといえよ

。4 0)

なお,指図証券の質権設定は,証券の交付によって効力を生 じ ( 民363 条) , 質権設定の裏書が第三者に対す る対抗要件 となる ( 民366 条) 。また,無記名証 券の質権設定 は ,証券の引渡 しによって効力を生 じ ( 民法86 条 3 項 ‑同344 秦),証券の継続的占有が第三者に対す る対抗要件 となる ( 民法86 条 3 項‑同3 52 条) 。民法においては,「 記名証券」ない し 「 記名債権」 とい う言葉 は存在 し ないが,民法365 条 は,記名証券の一種である 「 記名 ノ社債」の質権設定につ いて社債原簿への記入が会社その他の第三者に対する対抗要件 となる旨規定 し ている。そ して,記名証券の質権設定 も,証券の交付によって効力を生 じ ( 氏 363 条) ,記名社債以外の記名証券については,第三債務者への通知 ・第三債務 者の承諾が第三債務者その他の第三者に対す る対抗要件 となる ( 民365 条) 。

38 ) 沢井裕 『注釈民法 ( ll ) 』( 昭 40 )40 2 頁 ( 西村信雄編) ,西原 ・前掲注 9)11 2 頁参 照。

39 ) 平井 ・前掲注 35 )1 5 3 頁。

40 ) 「 民法の立法者 は民法上の証券債権 も一般 に利用 されるもの と期待 していたと思わ

れ るが,金銭支払証券または預金証券についてわずかに前例をみたのであって,ほ

とんど実際上は行なわれていない」( 於保 ・前掲注 1 3 )3 22 頁参照) ものとされる。

(14)

2 8 8 商 学 討 究 第45巻 第 3号

4. 証券取 引法上 の有価証券 に関 して

わが国の一般社会生活において使用される有価証券 とい う言葉 は,証券取引 法上の有価証券概念に近いものと思われる。そこで,最後 に,本稿の問題意識

と関わる限度で,証券取引法上の有価証券に関 して簡単に触れてお く。

証券取引法 2 条 1 項は,同法における有価証券を列挙 しているが,たとえば 同条 4 号の 「 担保附又は無担保の社債券」には記名社債が含まれることか ら, 証券取引法における有価証券か ら記名証券を除外 して考えることはできないの に対 し,同項には典型的な有価証券 と考え られている小切手,貨物引換証,舵 荷証券および倉庫証券などは含まれていない。そのためか,証券取引法におけ る有価証券 は,「 権利の譲渡や行使の方式の面か ら把握 された民商法上の有価 証券概念 とは区別 されるべ きである 」4 1 )などともいわれるが,同条 1項におけ る有価証券に関する限 りは,商法における有価証券 と同様 に権利 と証券 との結 合関係に着 目して形成 された,私見によると,権利の発生,移転,行使の全部 または一部に証券を要する証券 という有価証券概念を基礎 としなが ら,投資上 の地位 とい う観点 , 4 2) さらには銀行業界 と証券業界の業務分野の調整 とい う政 策的観点か ら限定が加え られたものと理解 して もさしっかえあるまい0

しか しなが ら,「 証券取引法 においては,む しろ,証券または証書 に表示 さ れる権利 こそが重要であって,その権利について証券または証書が発行 されて いることは,本来どうで もよいことである。けだ し,その投資判断のための資 料の提供 として特別の情報開示を要求 し,それを専門的に取 り扱 う機関につい て特別の規制を し,その取引について特別の詐欺的 ・相場操縦的行為の禁止規 定を適用する必要性 は,それ らの権利について証券または証書が発行 されてい 4 1 )神 田秀樹 「 金融の証券化 と有価証券概念」商事11 87 号 4 頁。

42)神崎克郎 『 証券取 引法 [ 新版 ] 』( 昭 62 )1 20 頁。同 旨,鈴木竹雄 ‑河本一郎 『 証券

取引法 [ 新版 ] 』( 昭 5 9 )5 7 貢,神 田 ・前掲注 4 1 )4 貢以下。なお,証券取 引法上の

有価証券概念の本質 については,神 田 ・前掲注41 ) 2 頁以下,上村達男 「 証券取引

法65 条 と有価証券概念」商事11 93 号 2 頁以下等参照。

(15)

ることによるのではな く,その権利の性質 に由来す るか らである」4 3 )といった 理解が されてお り,すでに平成 4 年改正前の証券取引法 2 条 2 項 は,「 前号各 号 に掲げる有価証券 に表示 され るべ き権利 は, これについて当該有価証券が発 行 されていない場合 において も, これを当該有価証券 とみなす」 と規定 してい た。 もっとも, これは,「ほん らい証券が発行 されているものが証券取 引法上 の有価証券であるという前提 に立 っているか らこそ,まだ証券が発行 されてい な くて も, これを有価証券 とみなす こととしているわけであ」 り,「 二条二項 の規定 は,証券取引法上の有価証券概念が,一般私法上の有価証券概念の しが らみを脱 していない ことを示 している」4 4 )もの と解 されている。 しか し,改正 後の証券取引法 2 条 2 項 は,さ らに 「 次 に掲げる権利 は,証券または証書に表 示 されるべ き権利以外の権利であって も有価証券 とみな して, この法律を適用 す る」 と規定 してお り, この規定 は,「 現行法の有価証券概念 に関す る発想を 超えて,証券取引法上の有価証券概念が 『 張 り出 した』 もの」 とされ,「 ペー パーに表示 され ることが民商法上予定 されていない権利であって も証券取引法 上の有価証券 となる途が開かれた こととなる 」4 5) といわれ る。

わが国の証券取 引法 は, もともとアメ リカの1 933 年証券法および1 9 34 年証 券取 引所法 を尉酌 して制定 された ものであ り,アメ リカ法上の証券 は,ペー パーの有無にかかわ らず権利その ものを意味す るものとされている 。4 6 ) 上述の よ うに,証券取引法 2 条 1項における有価証券は,商法 における有価証券 と同 様に権利 と証券 との結合関係に着 目して形成 された有価証券概念を基礎 として いるもの と解 され,「 証券取 引法上 の有価証券概念が,一般私法上 の有価証券 概念の しが らみを脱 し」た もの とはいまだ評価で きないであろ うが,同条 2項 の改正 は,少 な くとも証券取引法の実質的な規制対象が権利 と証券 との結合関 係に着 目して形成 された有価証券概念を超越 していることをさ らに一層明確化 4 3 ) 神崎 ・前掲注 4 2 )1 2 6 頁。

4 4 ) 竹 内昭夫 「 証券取 引法上の有価証券」河本一郎先生還暦記念 『 証券取 引法体系』

( 昭 6 1 ) 28 頁。

4 5 ) 神 田秀樹 「 有価証券概念の拡大」商事 1 2 9 4 号 2 1 貢。

4 6 ) 神 田 ・前掲注 4 5 )2 3 貢参照。

(16)

290

した ものといえる。

商 学 討 究 第 45 巻 第 3 号

5 .おわ りに

株券等の保管及振替 に関す る法律 は,商法が株式の譲渡の効力発生要件 とし た株券の交付を要す るもの としていることとの関連で,参加者 口座簿等の振替 の記載を株券の交付に擬制す ることによって株券のペーパー レス化を実現 した もの といえ るが,最近, これは立法のあ り方 として中途半端であるとの認識か ら,有価証券のペーパー レス化に対応す るについては,権利の譲渡の効力発生 要件かつ対抗要件 として証券を要 し,善意取得が認 め られ るといった有価証券 法理の継承のみに意をそそ ぐので はな く,そのような有価証券法理か らひとま ず離れるべ きであるとの主張がなされている

。 47)

この主張の方向の妥当性 は, 疑いなきところであろうが,なお以下の点を指摘 しておきたい。

善意取得が認め られ るとい う点 は無論の こと,権利の譲渡の効力発生要件か つ対抗要件 として証券を要す るとい う点 も,私見 によると,指図証券および無 記名証券に関す る法理にす ぎず,記名証券 も含めた有価証券を貫 く法理ではな い。債権譲渡 について対抗要件主義をとっているわが国においては,記名証券 については,権利の譲渡に証券を要 しないのみな らず,権利の行使 にも証券を 要せず,証券の発行 によってそれ以前 に存在す る権利 とは同

性のない新たな 権利が発生す るもの と解 され うるという理論構成の 自然性か ら,単 に権利の発 生に証券を要す るもの と解 され うるにす ぎない。4 8 )そ こで,記名証券を有価証 券か ら排除 しようとす る見解 も存す るが ,4 9) 記名証券が歴史的に有価証券 とい

う名で呼ばれて きた ことは疑 いな く,商法 501 条 において も,有価証券 とい う 言葉 は,明 らかに記名社債 などの記名証券を含めた意義で使用 されているもの

と考え られ る。その意味で,有価証券を経済的観点か ら把握 して,記名証券に

) ヽtノ \ーノ 6 16 3 注 注 注 掲 掲 掲 前 前 前 ● ● ● 田 稿 井 神 拙 石 ー ヽ‑ノ \J 7 8 9 4 4 4

1 60 頁以下。

295 頁以下参照。

452 頁参照。

(17)

つ いて も,指図証券および無記名証券 と同様に権利の移転および行使に証券を 要す るもの と解 した り,あるいは記名証券を有価証券か ら排除 しようとす るこ とは,「 実定法それ自体 に根拠を有 しないアプ リオ リなや り方」5 0 )と評せざるを えないのではなかろうか。

そ もそ も,「 有価証券概念 をどう決定 した ところで,それによ って個 々の証 券群の法的性質の究明にはす こしも役立たないのであって,個 々の証券群の法 的性質 は有価証券の概念決定以前 において,当該証券に関す る実定法規,商慣 習法,商慣習に基づいて これを明確にすべ きもの」であ り , 「このように して その性質の明になった証券群のどこまでを有価証券 とい う名で呼ぶか とい う問 題 はその次 に くる第二次的な呼び名の問題」にす ぎない 。5 1 )換言すれば,有価 証券概念 は,歴史的に有価証券 という名で呼ばれて きた証券を広 く含め うるも のでなければな らず,またそのよ うな ものであ りさえすればよいのであって,

「たんに有価証券 としてあげ られ るものの外面的な特徴 に着眼 して,その最大 公約数をまとめているにす ぎない 」5 2) と批判 され るところの,有価証券を権利 の発生,移転,行使の全部 または一部に証券を要す る証券 と解す るかつての有 力説を筆者が今 日あえて支持 しよ うとす るの も,その趣 旨にはかな らない。 こ のよ うな 「 呼び名」 ともいえる有価証券 に関す る 「 法理」がペーパー レス社会 の足伽 となるような ことは本来あ りうべか らざることである。平成 4 年の証券 取 引法の改正 においては,「 証券取引法が民商法上新 たに有価証券を作 り出す ことを示唆す る法律 となるのは妥 当ではないとい う配慮」 もあったとの ことで あるが,5 3 )証券取引法の実質的な規制対象 は,すでに有価証券概念を超越 して いるのであ り,そのような配慮 は,無用であろう

本稿 は,有価証券を実定法規 との関連 において把握 しようとした ものである が,実質において雑考の域を越えない ものであり,今後 は,比較法的考察 も踏 50 )小橋 ・前掲 ( 注 2)38 頁。

5 1 )河本一郎 「 債権譲渡の対抗要件 と有価証券 一再 び記名証券 について ‑」神法 6 巻 1

・2 号2 41 頁。

52 )前 田庸 『 手形法小切手法入門』( 昭58 )1 3 貢以下。

53 )神 田 ・前掲注45 )1 9 頁。

(18)

2 92 商 学 討 究 第45 巻 第 3 号

まえて, さらに検討を重ねていきたい。

参照

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