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家族的責任のある正規雇用者のための    育児休業取得の実態と目標値

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家族的責任のある正規雇用者のための    育児休業取得の実態と目標値

愛知県市町と東海地区を中心として

山 田 清 美

1.はじめに

 少子社会の進行によって、家族的責任を持つ労働者の労働継続のためには、両親による育児 休業取得が今後必須となる。雇用機会均等法はこれまで女性を中心とした内容及び改正であっ たが、2007年改正の施行から差別の禁止が男女双方になったことによって、一方の性に偏りが ある分野に対して見直し、改善を図り、性に偏らず男女双方に次世代育成支援の取組みをすべ きことが課せられるようになった。また次世代育成支援対策推進は、仕事と家庭の調和を図り、

女性の継続就業を進めていく上においても、男性の育児休業の促進は重要であり、少子化対策 はじめあらゆる分野において男性の参加・参画を期待する傾向にある。言い換えれば、性別役 割分業の打破は男性の育児休業取得促進なくしてその効果を十分に浸透できない。

 本論は、仕事と家庭の調和を目指すための男女の育児休業取得とその促進について、愛知県 内の市町を中心に男性の育児休業取得目標値の実態とその社会背景の傾向を考察し、さらに比 較検討し分析することを主旨とする。特に本論では男性の育児休業取得に焦点を合わせる。

 男性の育児休業取得のその割合がこの15年ほど一向に増加していない1という実態がある。

男性は0.43%で1%にも満たない状況である。さらに300人未満の企業規模の事業所2では、

女性80.2%が取得し、男性は0.80%である。つまり301人以上でも300人未満の事業所でも 女性の方が男性より育児休業取得は高く、男性の方が女性よりも顕著に低い。その事業所別の 取得状況によって、男性が家族的責任を取りたくても取れない「日本的企業風土」について本 論では考察する。

 はじめに、男性の育児休業取得実態を詳述し、企業規模と育児休業取得の相関関係について 考察する。企業規模は男性の育児休業が取得し易い、或いは取得しにくいことと何らかの関係 があるのだろうか考察する。

 さらに男性の育児休業推進の実態を愛知県はじめ各府県を抽出し、その特定事業主による取 組みを紹介する。さらに愛知県と各府県との取組みの特徴の傾向を比較し、育児休業取得の実 態と社会背景から全体の傾向と問題を分析し考察する。

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1.1.男性の育児休業取得実態

 ここでは、企業規模別に分けて育児休業取得分析することがなぜ重要なのかということにつ いて詳述する。まず企業規模よって、その事業所の構成している従業員の男女比をみる。この ことはその事業所の持つ「企業風土」に深く結びついていく。つまりその企業の事業所の特徴 を作り出す下にある。その事業所の実態及び将来を推測可能な判断の下に置くことができ ると もいえよう。

 つまり企業規模の大きさから規模を構成している従業員の性別で、男女に占める割合のどち らが多いかによって、その企業の雇用労務管理及び職務が均等に行われているのかどうか判断 する要素を読みとることができるといえよう。また従業員の総数から正社員の男女比、或いは パート、派遣、臨時職員、アルバイト等の男女比は、どちらかの性に偏ってφれば、その事業 所では、なぜそのようになっているのか、その職務の内容を再検討する必要性があるといえよ

う。

 企業規模の重要性については具体的に次世代育成支援対策推進法の事業主の行動計画の中に もみられる。この事業主の行動計画にみる企業規模には具体的な数値が策定されている。つま り一般事業主の行動計画策定基準を企業規模301人以上と300人以下に分けている。厚生労働 省3によれば、301人以上の労働者を雇用する企業規模の事業所では、女性正規雇用者の出産を

した女性の94.1%が育児休業を取得している。

 企業規模と育児休業取得率の関係は、男性は女性に比べて相対的に大企業に勤務者が多く、

企業の責任者、管理職4者は現状では90%以上が男性であり、企業の決定権を持っている。男 性管理職が家族的責任を担った上で昇格すると、その影響力は大きく、アピール度は高く、企 業戦略にも影響がある。このような状況下で以下のことがいえる。301人以上の企業規模で あっても、或いは300人以下の企業規模であっても両者の育児休業取得の関係は、女性の取得 率が高く、男性は女性よりも低い5。つまりこのように企業規模の大きさ、大企業であること、

或いは中企業であることのような企業そのものの大きさと育児休業取得の多寡という相関関係 は少ない。

 その考察結果は、企業規模の大企業、中企業の中の男女比を分析すると、その事業所全体の 雇用者に、男性が多く女性が少ない型、女性が多く男性が少ない型及び男女ほぼ同数の型の三 パターンができた。

 以下にその内容を詳述する。

1.2.男女別雇用者数による三つの型

筆者による2006年実施の調査6の結果からの所見として、次の3つの型が東海地区事業所か ら抽出できた。

 第一の型として、大企業の男性の多い職場の中で女性の育児休業取得者が多いというパター

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ンである。これは取得できる内容の職務に女性が就いていると考えられた。つまり代替要員が 用意されているので、取得者が多くても実務には支障度が小さいことが考えられた。つまり毎 年入職者が後を絶たず、休職者の職務を全うすることができる。いわゆる単純作業の職務であ ろうと考えられた。つまりこの大規模の事業所には女性の管理職者が少ないということも裏付 けられた。

 第二の型は、女性が多く男性が少ないパターンである。つまり中規模の女性が多い職場で、

育児休業取得者が多い型というのは、本来女性の職種といわれてきた保健、医療・福祉系に属 するものである。つまりこれまで女性の育児休業取得者が多くいる職場というのは、性別職務 分離のある職域であるといえる。

 第三の型は、中規模で男女ほぼ同数のパターンである。ここでは学校と商社が該当した。こ の学校では男女比はほぼ同等であったが、育児休業取得者は少なく女性の役職者数は、男性と 比較すると少なく、女性の役職者のモデルが未だ少ない環境下にあった。

 商社については、比較的新しい事業所で、育児休業取得者は多く福祉系の医療器具販売企業 であり、医療・福祉系は近年特に男女のニーズの高い分野で、職場環境の取組みが進められて いることもあり、性別分業等の弱化、流動化が進行している職域である。

 上記のように、企業規模による育児休業取得率の相関性は見えてこない。つまり企業規模の 大、中そのものの大きさではなく、むしろその企業を構成する全従業員の男女比によって、育 児休業取得がし易い職場風土及びしにくい職場風土があることが推測された。つまり、職場風 土、及び従業員の男女比率は職種、職域に関係すると指摘することができる。

 以下、統計資料、地方自治体資料から、企業規模別、勤続年数別に育児休業取得率が何らか の変化があるかについての考察である。

2.育児休業取得率と勤続年数時系列比較

 先の節では、企業規模及び事業所職種と育児休業取得の関係を男女比から考察した。育児休 業取得は女性のみ対象という性に偏るものではない。家族的責任を持つ男女すべての労働者が 取得可能な権利となっている。今後事業所の対応についても男女共に取得奨励、手続き、情報 提供・周知方法、取得者への報酬制度、休業中の補助の充実等見直す必要がある。育児休業取 得する労働者が女性のみではなく、男性にも取り易いものとなるよう、取得促進施策にはどの ような方法が有効であるのか、実態を把握しつつ考察しよう。ここでは、女性の勤続年数とそ の背景を考察する。

2.1.勤続年数の性別格差一希望と現実の落差

 現状では、育児休業制度は女性の正規雇用者による取得は普及し始めたが、出産後も正規雇 用で継続就業する女性労働者が3割程度に留まっている。こうした現状で、さらに子育て期の

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女性労働者の就労継続意欲の強化と、他方事業所側の水面下での退職奨励をいかに無くすか等 の課題がある。このように、正規雇用による女性就労継続の顕著な伸張は増加してないことと 並行して、男性の育児休業取得は法制成立後10年以上を経た今でも1%に達しないという実 態がある。これほど日本男性が育児休業取得に消極的である実態にはどのような社会背景があ るのか、十分検討する必要がある。

 先進諸外国の20年程前の事例をみると行政による指導、支援策、強制があったこともあり、

男性就労者の3割程度が育児休業を取得し、家族の生活レベルには影響もなく、子育てにより 男性がより視野が広がった等のプラス評価がでていることと比較すると日本の実態は極めて特 異である。

 これまで述べてきたように女性のみの育児、子育ては性別を理由とする間接差別につながり やすい。職場の風潮としても男性が取ると昇格機会がなくなると考えており、育児休業は女性 のみという既成概念を言外に形成している。また事業所の多くは両性の育児休業を情報周知・

広報・推奨していない。手続き等も煩雑である。目標値達成していないことによる指導、罰則 もない現状では、行政による指導・奨励も実質的な強制力を持っていない。なお女性の継続就 業年数は近年の男性のそれが短縮していることと比べると、勤続年数が延長している。しかし 未だに男女勤続年数には格差があり、子育て期にある女性の就労継続の困難を顕著に示してい

る。

 以下は、図1「勤続年数別女性一般労働者構成比率の推移」を示すものである。

σ㌔  10㌔ 20㌔ 3σ㌔ 4仇  50㌔ 6σ㌔ 7(汎  8(X  9(}㌔ 10α㌔

昭和62年

平成9年

平et19年

平成19年(男性)

(平均勤続年数)

 (7.1年)

(8.4年)

(8.7年)

(13.3年)

ロO年  ■1〜2 □3〜4 目5〜9 ■10〜14 口15〜19 ■20年以上         図1 「勤続年数別女性一般労働者構成比率の推移」

出所:厚生労働省 賃金構造基本統計調査 平成19年 勤続年数階級別女性   http://www皿hlw.go.jp/shingi/2008/06/dl/sO617−3kpdf

 この図1から次の諸点が指摘できる。第一に、上記の昭和62年=1987年(平均勤続年数 7.1年)、平成9年=1997年(8.4年)、平成19年二2007年(8.7年)と女性の平均勤続年数は 微量ながら伸長傾向にあるようだ。第二に、勤続15年以上が時系列的に20年以上にわたって

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微増傾向にある。第三に、15年未満は僅かずつではあるが増減があり、一方向的変化ではない。

つまり女性の働き方は継続している人と途中で切れる人が混在しているようだ。

 1997年から2007年の5〜9年の勤続年数女性が26.5%から20.9%に減少しているが、これ は顕著な減少だがなぜなのか考察してみると、この背景には均等法の改正により男女賃金・地 位・昇格格差を違法とする判例が増加した。企業にとって女性は使いにくいという風潮が強化 され、裁判になると企業側敗訴或いは和解となり、女性の賃金、地位上昇する結果となる事例 が増加した。住友金属、住友化学などはその例である。

 近年ではコスト削減の下で正社員を事業主側が削減する一方、非正規社員が増加し、パート の分離されたコースでの管理職化が進んだ。にもかかわらず、非正規社員の処遇や雇用保障は 働き方に見合ったものではなく、残業が多く、低賃金、昇格・昇給なし、各種福祉、年金等が ないという労働環境に留め置かれている。

 こうした状況で多くの非正規職員は仕方がないと諦め、解雇が怖く口を閉ざしているのが現 状である。

 さらにその社会背景には、均等法により女性の長期就労を敬遠する事業者側の正社員への対 応があり、出産しそうな人にはそれとなく左遷、パート化を水面下で奨励、職場に居にくくさ せる等の事業主側の行動がある。また女性側もそれを感知し、辞退し、退職、或いはパートへ 移行する。また派遣法成立により、短期雇用で専門職も採用されるようになり、派遣会社への 登録によって技能を生かした働き方を期待することが逆に女性就労者に不利な条件を結果とし て、低賃金及び過剰労働の押し付けとなっている。

 その反面では、女性が自ら望む雇用の期間、或いは技能があれば実際に時給は上がる。年収 300万円以下、さらに103万円以下とは、逆に500万円以上という派遣労働、パートタイム労働

もある。またマイナス面では、不安定雇用、1年〜3年未満で仕事変更、或いは頻繁な労働・

職場等の移動がある。一般の企業で事務職が多く、正社員と同じ職務であっても雇用形態、雇 用されたときの待遇が違うという理由で何十年雇用されてもボーナスも社会保障、さらに十分 な年金等もない。不安定雇用状況の継続であり、正社員としての再雇用を希望しても不可能で ある。現実に一日5時間〜8時間、さらに長時間に及ぶ女性パートタイム労働者も増えている。

つまり、女性の勤続年数の伸び悩みは女性の労働意欲の低下にではなく、事業主側が家族的責 任を担う労働者、特に女性正規雇用者による各種休業制度活用を忌避する間接差別によって非 正規労働者に集中させられている結果であるといえる。

 一方、平成19年の男性と比較してみよう。男性の平均勤続年数は13.3年である。女性の平 均と比較すると4.6年長い。勤続20年以上の男性は25.9%であり、女性の11.0%とは倍以上 の開きがある。10年以上を比較しても男性の勤続年数長期者の割合が高い。一方10年未満で は男性の割合が低い。つまり男性は長期勤続型で女性は短期勤続型といえる。

 女性の勤続3〜4年(13.7%)は、勤続1〜2年(20.0%)及び5〜9年(20.9%)と比較 して勤続年数割合が落ちていることから、この時期女性にとっては結婚、出産、育児、家事専 担が、他方男性は長時間労働が家族のための家計主担者として固定化される。つまりこうした

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社会背景から女性は辞めたくないが辞めている。また男性は残業したくないが残業しないと生 活できないという実情がある。或いはサービス残業が横行し男性の非正規職員化の進行がサー ビス残業を強化に追込むなど根強くある性別分業の背景があり、その実態はこの15年程も変

化はない。

 現実には日本企業の労働者のなかで非正規職員の割合が増加し重要な労働力源となっている にも係わらず、雇用の条件は改善されず、少子化や人間関係の悪化等社会問題の解決は見えて こない。パートや派遣社員は、短期で雇用され、期限が切れたらまた雇用条件の見直し、技術 の習得、知識、経験等加味されず、技能・知識の蓄積が不可能である。

 このような労働形態の多様化がある反面、正規雇用の女性労働者が働き易いように権利を労 働者に与えると、企業は最初から女性を雇用しなくなる。このため、女性正規雇用の権利促進 でなくむしろ後退すると危惧する人もいる7。

 一方、非正規雇用の枠が拡大したことにより、労働者側の勤務日、労働時間の選択が可能で、

労働したい期間・時間に自分の小遣いが稼げる等プラス面もある。さらに恩恵は、消費者の個 人の利便性、つまり都合のよい生活が維持されている場合もある。正社員女性の若年労働者の 多くが出産・育児によって退職し、その後再就職で非正規雇用となっているため、高度産業化 社会にあって、経験・技術レベルの高い労働力は不足している。この時期女性がこの次世代育 成役割を一人で担うことなく、男性と双方で分かち合い、担うことができるようにしてゆくこ とは今後必要条件となる。このような社会変化に適応するために、均等法は改正され、両性双 方で家族的責任を担う必要があることを明言している。つまり育児・子育て、介護等は、女性 のみに与えられた性別役割ではなく、個別社会条件下で形成された社会的規範であり文化的構 築である。これまでの女性のみの役割から変更ができ男女が共に担うべき役割なのである。

 次にどのような変革への道があるのか考察する。

2.2.施策推進の背景

 女性が四年生の大学を卒業し、職業を持ち、結婚は晩婚化してきている。つまり出産する年 齢が遅くなり、子どもを産む数が減少してきた。そして結婚、妊娠、出産、育児で女性はこれ までの就業を辞めて育児・子育て、介護、家事のために家庭に入る。数年後家庭のことをしな がら再び就業する。しかし家庭との両立は働く時間、賃金、将来性、雇用条件、社会保障等は じめ、必ずしも自分の希望に適うものばかりではなく、どちらかといえば女性の再就職につい ての企業・事業所の対応は遅れている。つまり企業では働き盛りの男性はサービス残業時間が 延長され、就労時間後社外での付き合いは減ってはきているものの未だに続いている。今後さ らに少子化が進む一方で高齢化も進行し、さらに団塊世代の退職期となり、基幹的労働者は減 少していくことは周知のことである。

 1986年以降、雇用機会均等法が施行し、その後2度にわたり改正された。さらに男女共同参 画基本法(1999年)、次いで少子化対策として次世代育成支援対策推進法(2005年)ができた。

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このように国、地方公共団体、企業が連携して、家族的責任を持つ男女労働者の育児休業取得 を促進し仕事と家庭の調和を推進している。男性が育児休業を取得することによって女性だけ でなく育児・子育ては男女双方によるもので、家族的責任者として人間の成長過程の重要な時 期に親として携わり、子どもとの係わりを形成していく有用な次世代育成のための休業を企業 社会において、取り易い風潮を形成することが2000年以降、特に重要視されるようになってき

た。

 つまり次世代を担う子どもたちを育成することは個人のみならず、社会、企業の責任でもあ る。しかしながら、男性の育児休業取得は現実的には進んでいない状況下にある。とはいえ、

それを着実に実行していかなければ、少子化は歯止めが掛からず女性は子どもを産みたくても 産めない、若年労働者減少はさらに加速していくことは明らかである。

 このような社会背景を再度確認した上で、具体的に国及び地方自治体はどのような施策の基 に、次世代育成支援対策を推進しているのか。その具体策と実績を次節で検討する。

3.家族的責任を持つ労働者の育児休業取得目標値設定の実態

 既述してきたように少子社会にあって、老後の安定した年金確保のためにも女性の継続就業 は必須であり、男女が共に仕事と育児・家事を協働していくために、男性の育児休業取得は国 を挙げての政策として推進されている。特に次世代育成支援対策推進法は、具体的に行動計画 を事業主に義務付けている。その事業主とは、企業の一般事業主及び特定事業主である。すな わち特定事業主の下には都道府県市町の地方公共団体の職員が対象となる。家族的責任のある 労働者が仕事と子育てを両立するよう行動計画が義務付けられた。特定事業主の行動計画は都 道府県市町村で、5年を1期として前半計画を策定し、後半実施前に前半を見直し及び再構し て公表しなければならないことになっている。本節では、男性の育児休業取得の浸透度及び促 進における問題点を考察する。各府県市町の特定事業主による育児休業取得策定目標値をみて

いく。

3.1.愛知県下各市町の目標値

 特定事業主は、各府県市町で設定した男性の育児休業取得達成目標値を指標として使用する。

具体的には国の指針基準値と東海地区(愛知県8、岐阜県、三重県、静岡県)、大阪府及び福岡県 の男性の育児休業取得達成目標値を使用する9。東海地区を中心にして比較し、さらに男女の目 標値の違いを考察する。

 愛知県内の県市町の特定事業主は、労働基準局へ行動計画を提出する行動計画の内に男性の 育児休業取得目標値を策定している。因みに特定事業主とは、愛知県の場合は、愛知県知事、

愛知県議会議長、愛知県選挙管理委員会等1°10団体である。

 以下は、国の策定値と愛知県内の市町による表1「愛知県内市町職員の男性の育児休業取得

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目標値」である。

表1 愛知県内市町村職員男性の育児休業取得目標値(特定事業主)(%)

男性 女性

政策策定値 10%(2017年) 80%(2015年)

愛知県職員 愛知県策定値 70%(2009年) 99%

名古屋市 5%(2009年) 100%

安城市 50%(2009年) 特に設定せず

豊明市 10%(2009年) 90%以上

愛知県内の

s町職員 日進市 55%(2010年) 特に設定せず

瀬戸市(一般事業主)

@  (特定事業主)

6%(2011年)

T0%(2009年)

75%

P00%

長久手町 10%(2012年) 特に設定せず 資料出所:各公式サイト参照 筆者作成

 上記の表1より、一般事業主の達成年及び達成値は、まだわずかで上記では瀬戸市のみ提示 がある。ここでは特定事業主の策定目標値に注目する。この特定事業主の行動計画の男性の育 児休業取得は、将来的には一般私企業へも拡大していくことが期待されている。この表1の特 定事業主のように愛知県内の市町において目標策定値は一定ではない 1。

 同県内において地域間の格差によって、情報、伝統的習慣文化、人間関係、地域の力関係、

ジェンダーにおいて男女平等の参画は同じではなく、その地域によって伝統的習慣文化を顕在 に保持し続けている地域もあるようで、政令都市のような大都市と新たにこれまでの町村が合 併により新しく市に格上げされた市町においては格差があろう。

 愛知県の男性70%(2009年) 2、女性99%(2009年)、名古屋市13は、男性5%(2009年)、

女性100%(2009年)、安城市 4男性50%、女性設定なし、瀬戸市 5男性50%(2011年)、女性 100%(2011年)である。豊明市 6男性10%、女性設定なし、日進市17男性55%(2010年)、

女性設定なし、長久手町 8男性10%(2012年)、女性設定なしである。

 豊橋市はじめ他27市7町19では、男性及び女性の取得目標値は今のところ具体的に数値設 定されていなかった。2008年4月1日付けでは、上記の豊橋市をはじめ他市では、各自の市町 の数値は明らかでなかったが、市町も特定事業主であるから行動計画を策定しなければならず、

目標値は取上げず検討中であると考える。また策定値目標についてもこれらの豊橋市はじめ他 市町は、大きく変化というのはあまり期待できない。つまり期待できない理由があるために未 策定として残ったのであるから、前半の5年間で様子をみて、後半の5年間で目標値の見積も りを加えていくであろう。愛知県では政令都市の名古屋市が中心となり県内市町村への先がけ となることが期待したいところではあるがかなり厳しいことが、その目標値からも推察できる。

 次に国と愛知県内の策定値を比較すると、国の策定値より愛知県内の男性の策定値が低い市 町は、明確な男性の育児休業取得目標値の策定のない豊橋市はじめ27市7町を除くと名古屋

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市だけである。つまり愛知県の県と安城市と日進市の男性の目標値は、国の策定値を上回って いる。そして豊明市、長久手町は国と同じ策定値である。

 さらに女性の場合は、国の策定目標値より愛知県と名古屋市、瀬戸市、豊明市は高くなって いる。安城市、日進市、長久手町では女性の目標値が特に設定されていなかった。

 女性については、名古屋市及び瀬戸市は全員が希望通り取得されているので現状維持であり、

安城市、日進市、長久手町のいずれも女性はほぼ申し出どおり取得できているので特に取得値 は策定していない。しかし100%ではない愛知県では、取りたくても取れない状況の場合、あ えて取得しない場合、取得は強制ではなく、本人の希望を第1とし、取得しない場合のあるこ とからあらかじめ1%引いて策定している゜°。

 はじめにのところで述べてきた男性の育児休業取得率と、上記の男性の目標値はかけ離れて いる。これに対して愛知県では、「職員の子育て応援プログラム」を作成し、保育園送迎等必要 な申出のあった職員には時差勤務の配慮、子どもの出生時における休暇制度の出産前後8週間 に5日以上の休暇の取得、・父親となる職員に休暇計画を作成し積極的休暇の取得を21年度ま でに70%の取得を目指している。同県は、先のプログラムを作成する際に男性職員にアンケー

トを取り、7割の職員が子どもの出生時に休暇を取得したいとの回答があり、希望者全員に休 暇取得できる職場環境を目標として策定した値ということである21。つまり現実重視よりも希 望者重視の策定値ということになる。さらに庁内託児施設の設置等の必要性を検討したが愛知 県の保育環境が良好なことから今のところ積極的に取り組んでいく状況にはないが見守る姿勢

を持っている。

 以上のように愛知県内では、5市1町の目標値が具体的な数値表示になっているが、全体と しては、まだ具体的数値が表示されていない状況下にある。具体的設定値のなかった市町の中 には、若い市もあり、家族的責任の多い労働者を抱える市もある。又逆に過疎化、或いは合併 して新しい市となった市もある。これらの実態を踏まえて、愛知県独自の特定事業主の男性の 育児休業取得目標値はかなり高く設定されている。つまり男女の設定値の相違は、女性はほぼ 希望通り取得でき、男性は目標の最小値から最大値をみても時限付き前半においてこの目標値 を達成することは困難な状況が予想され、男女の育児休業取得に差のあるこ.とは明らかで、さ らにこの男女差は新たな間接差別へと結びついていくことが推測できる。

 次に、特定事業主の男性職員が育児休業を取得する取組みの特徴をみていく。

3.2.男性の育児休業取得への取組みの特徴

 はじめに愛知県内市町の男性の育児休業取得への取組みの特徴を、表2「特定事業主男性の 育児休業取得策定目標値と取組みの特徴」によって比較する。

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表2 特定事業主男性の育児休業取得策定目標値と取組みの特徴 愛知県

 男性70%

 女性99%

名古屋市  男性5%

 女性100%

豊明市  男性10%

 女性設定せず

妻の出産前後8週間に5日以上の育児に係る休暇、育児休暇を含む取得。職員が 育児に参加すること、育児休業取得は当たり前という雰囲気づくりを啓発。育児 短時間勤務利用、代替職員確保。

10日以上連続分べん看護職免及び年次休暇取得率75%目標。業務分担、副担当制 導入、必要な応援措置、臨時的任用職員、代替要員確保。3歳に達しない子の養 育、配偶者が育児休業取得していない場合取得可。

企業の模範となる体制づくりの推進のために設定。一般事業主にも同様に10%の 目標値を目指して取組むことが理想。特定事業主は、企業に先駆けて市県職員が 率先体制の整備。妻の出産前後5日間の休暇

資料出所:各公式サイト参照 筆者作成

 名古屋市を除く、愛知県22及び豊明市の男性の育児休業取得への取組みの特徴は、出産前後 8週間において5日以上の休暇は育児休業取得と同様にみなし、普及に力を入れている。その ためには、育児休業取得は当たり前という雰囲気づくりを啓発している。さらに代替要員確保、

一般事業主に先駆け地方自治体職員が率先して取得し、模範となり推進に取組んでいる。因み に名古屋市は、10日以上連続分べん看護職免及び年次休暇取得率を75%の目標としている。

育児休業取得は、名古屋市では、3歳まで取得できる。

 男性の育児休業取得目標値は県職員の70%に対し、市職員の5%は育児休業取得の困難さが 顕著である。確かに一般企業のサラリーマンにとっては、妻の出産、子の育児休業取得を取得 することは、よほど大きな企業で、制度が周知徹底され、先駆者がいれば後続する人もでやす いであろうが、現状では、取得することは難しいことであり、妻は専業主婦を選択している。

つまり制度は知っているが、自らその制度を活用、利用することは少ない。その点、特定事業 主による一般企業の人の先駆けとなるよう使命がある職員からの普及は、職場で融通がきく、

或いは代替担当者が見つかる等対応可能な部署、共働き夫婦で核家族の子の預け先等が空き待 ちのケースでは取得者が出ている。共働き夫婦で、近くに両人に代わって育児をしてくれる人 がいないケースでは、出産休業、育児休業に関して、専業主婦より敏感に情報収集をせざるを 得ないであろう。

 事業主は、こうした情報に合わせて如何に労働者に周知しているか。その広報方法、或いは 全く知られていないとしたら、労働者側の反応がないという前に、周知の方法等検討すべき事 柄として、問題であり、労務管理の課題となる。つまり行政が懸命になっても労働者が感心な

しという状況が生まれ、それが問題となる。

 愛知県周辺の東海3県地区、静岡県、岐阜県と三重県及び他府県の特定事業主による男性の 育児休業取得目標値は、静岡県男性5%(2009年)、女性100%、岐阜県男性10%(2011年)、

女性80%、及び三重県は男性3%(2009年)、女性100%である。

 以下、東海3県の表3「特定事業主男性の育児休業取得策定目標値と取組みの特徴」である。

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表3 特定事業主男性の育児休業取得策定目標値と取組みの特徴 岐阜県

@男性10%

@女性80%

企業の子育て支援の取組の必要性、事例紹介等直接企業に出向いて説明、取組む。

キ時間労働縮減の推進。育児休業取得職員の補充は正職員、昇任昇格、勤務評定 剳s利に十分配慮。妻の出産5日以上の休暇

三重県

@男性3%

@女性100%

育児休業や部分休業積極的周知。妻の出産5日以内休暇、業務分担見直し。取得 オ易い雰囲気の醸成。定期的に制度の趣旨徹底、職場の意識改革、職場復帰支援、

x業中各種情報提供。自宅研修受講、参加配慮。職員の健康面配慮。該当職員の ニ務、生活配慮。総勤務時間縮減。

静岡県

@男性5%

@女性100%

育児休業取得代替要員確保可能な限り正規職員で代替措置。妻の出産5日間以上 x暇、取得事例の紹介。経済的支援の充実。育児休業手当金制度。地方職員共済 g合及び互助会掛金免除制度拡大。職員住宅優先。

資料出所:各公式サイト参照 筆者作成

 表3より、東海3県の取組み及び特徴を考察しよう。岐阜県esでは、特定事業主が一般企業 へ直接出向き、事例紹介、男性の育児休業取得の説明、配慮、促進等を促し、育児休業取得を したからといって、昇任、昇格、勤務評定等には不利にならないよう十分配慮することを説明 し、さらに長時間労働縮減の増進等に取組みをしている。

 三重県aでは、愛知県内市町よりもさらに男性の育児休業取得値が低い。育児休業、部分休 業を積極的に周知し、職場の意識改革、制度の趣旨の徹底を定期的に行なっている。さらに業 務や生活に応じた配慮及び勤務時間の縮減が図られている。

 静岡県25では、代替要員は正規職員で代替措置を講じている。経済的支援の充実、掛金の免 除制度、さらに職員住宅へ優先的に入居できるように図っている。

 東海3県にしても共通して指摘できることは、愛知県市町と同様に妻の出産時に5日間の休 暇取得を推進している。一方男女の取得目標値の差異は特異である。この状況を改善していく ために次世代育成支援対策法はできたのであるが、この法律には特に罰則等はない。積極的促 進してその成果のある企業等には、後述するが、援助金、認証等が与えられる。

 次に大阪府及び福岡県の取組みをみていく。大阪府は男性10%(2014年)、女性85%である。

福岡県は男性5%(2009年)、女性100%の取組みの特徴を比較する。

表4 特定事業主男性の育児休業取得策定目標値と取組みの特徴

大阪府 おおさか子育てパパ支援システム導入。産前産後出産、育児に係る連続5日間以 男性10% 上取得。仕事時間と生活時間のバランスがとれる多様な働き方を選択。働き方の 女性85% 見直し、多様就業型ワークシェアリング普及促進。

福岡県 産前産後に出産・育児に係る休暇5日以上取得。父親の育児休業、部分休業の取

男性5% 得。若手職員にライフプランセミナー開催。子育て期の生活設計ノウハウ、情報 女性100% 提供。性別役割分担意識の是正。

資料出所:各公式サイト参照 筆者作成

(12)

 上記の表4より大阪府caでは、「おおさか子育てパパ支援システムの導入」として、出産前後 の休暇から育児に関して連続5日間以上の取得の推奨、また多様な働き方の選択として、ワー クシェアリングの普及、さらに子育て期の生活設計から短時間勤務、長時間労働縮減が挙げら れている。これらは育児支援ばかりでなく仕事と生活に応じた配慮、必要に応じた両立支援と

しての措置等でもある。

 福岡県゜「では、大阪府と同様に父親となる職員に5日間以上の育休、休暇、部分休暇の取得 等を推進し、さらに若手職員へ具体的なライフプランセミナーを開催し、子育て期の生活設計 について情報提供をし、性別役割分担意識の是正を図っている。

 職場で各事業主、事業所が行動計画として考案し策定したことであり、これらが実践されて ゆけば、時限付きの前半の5年の取組み見直し時にさらに強化、促進され、後半の5年後には、

男性の育児休業取得も、意識の変革も、またこうした各事業主の取組みも各地で浸透していく 傾向にあると分析できる。そして女性の中でも地域格差はあると認識した上で、男女の取得割 合の違いはやはり特異であると指摘できる。男性側の顕著な目標値の少なさが、男性は取得し なくてもよい制度という先入観を形成している。或いは男性が取得すると変わり者と思われる 風潮がまだある。

 次は各府県の次世代育成推進策の進度を特定事業主の行動計画から考察する。

3.3.特定事業主の行動計画策定率と市町数

 特定事業主が策定した行動計画ZZが既に労働基準局に提出されている府県市町の数は、以下 の表5「行動計画が既に策定されている府県」である。

表5 行動計画が既に策定されている府県

府 県 総市町数 策定率(%) 未策定市町数

愛知県 63 60.3 10

三重県 29 48.3 7

岐阜県 42 59.5 7

静岡県 42 78.6 4

大阪府 43 97.7 1

福岡県 66 53.0 12

資料出所:男女共同参画に関する計画の策定状況 参照 筆者作成     http://www.pref.aichi.jp/cmsfiles/contents/0000012/

    12811/kosodate_0321minaoshi.pdf

 上記の表5から行動計画が既に策定され策定率の高い府県は、大阪府(97.7%)、静岡県

(78.6%)、愛知県(60.3%)、岐阜県(59.5%)、福岡県(53.0%)、三重県(48.3%)の順と なっている。さらに未策定数の県市の数は、大阪府1つ、静岡県4つ、岐阜県、三重県共に7 つ、愛知県10、福岡県12である。つまりここでは、大阪府の特定事業主の行動計画策定済み

(13)

が、後1つの市町のみとなっており、大阪府の次世代育成支援対策が他府県より進んでいるこ とが分かる。次に静岡県が続いている。三重県は市町の総数は他府県より少なく、行動計画策 定率も他より低く、さらに行動計画未策定数もある。愛知県の場合は、市町の数が岐阜県、三 重県及び静岡県よりも多いが、行動計画は大体6割が策定済みであるが、未策定市町数も他府 県よりもやや多い。福岡県においては、県市町の総数が66でほぼ愛知県の63と同様であり、

策定率53.0%は愛知県60.3%より低く、未策定数も12で比較該当のなかで低くなっている。

つまり行動計画策定済みの大阪府と未策定数の多い福岡県は特定事業主の行動計画の取組み状 況は対照的といえよう。

 つまり愛知県の特定事業主の行動計画の策定の状況は、全国的には突出している訳でもなく、

全く遅れているということでもないということが分る。言い換えれば、愛知県の特定事業主の 行動計画策定の進度は全国と足並みが揃っているといえよう。

4.男性の育児休業取得の進まない理由

 ここでは、男性の育児休業取得の進まない理由を考察する。多様な理由、個別事情があるこ とは推測されるが、ここでは労働時間と仕事と育児の両立支援策の整備・利用状況に限定して 考察する。

4.1.労働時間

 筆者の既刊論文29によると男性も平日の労働時間が定時に終われば、家事・育児もできると 考えていると日本の長時間労働が男性の育児休業取得の阻害要因と指摘され、家事・育児がで

きないのは、男性の労働時間が長いからという調査分析結果であった。

 しかし本当にそうであろうか。日本の労働時間を各国の雇用者一人当たりの年間労働時間と 比較したものが図2となっている。

       労働時間と失業率    時間および割合

2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200

 0    ドイツ   イタリア   日本   ノルウェー スゥェーデン  イギリス   アメリカ

       図2 雇用者一人当たりの年間労働時間

資料出所:OECD r世界の主要統計』2007年版、スウェーデンの失業率(2004年)筆者作成

1801 1775 1804

1672

1587

1437 1360

9.4 7.7 4.4 46 6.4 4.8 5」

(14)

 この年間労働時間国際比較をみても顕著であるように、ノルウェーの1360時間(失業率 4.6%)、イギリス1672時間(失業率4.8%)に対して、日本は1775時間(失業率4.4%)と高 い労働時間になっている。さらに報告されている日本の労働時間にはサービス残業などは含ま れず、実質労働は国際統計に報告されているものより多いことは周知である。

 つまり所定外労働時間のサービス残業は長くなっているSD。

 因みにノルウェーは、男女共同参画指数ジェンダーエンパワーメント指数は世界的に高い。

また親の帰宅時間の国際比較によれば、男性の帰宅時間調査が最近国際比較され、スウェーデ ンの男性は平均午後5時頃に帰宅、日本の男性は午後8時以降となっている3 。女性の場合は、

日本が午後6時頃、スウェーデンは午後5時頃となっている。

 つまり日本の労働時間の長時間は、男女共に帰宅時間をみても他の先進諸国よりも遅く、一 日の生活時間からも実証されている。また通勤時間が長いことも労働拘束時間の延長となって

いる。

 さらに日本の生活慣習とも関連している。つまり男性の家族以外の主たる交際相手は、職場 の同僚男性との交流とされ、労働時間後、週末などでも同僚とのレクリエーションが優先され る。日本社会ではレクリエーション活動も男女別活動が多く、欧米などのカップル単位交際と 異なる。この相違が仕事と育児の両立対策、及び男性の育児休業利用に対しても違いがあるこ

とは推測される。

 以下は、表6「仕事と育児の両立支援策の整備・利用状況」である。

表6 仕事と育児の両立支援策の整備・利用状況

(単位:%)

   育児休業制度 驪ニ規模

制度が整っており、

?pされている

制度は整っているが

?ワり利用されない 制度も対応もない

1,000人以上 50.8 44.3 3.8

301〜1,000人 44.2 45.5 5.8

101〜 300人 28.8 45.8 15.7

51〜 100人 17.6 39.4 19.4

21〜 50人 12.6 38.5 24.5

0〜 20人 4.7 13.3 31.4

資料出所:男女共同参画会議少子化と男女共同参画に関する専門調査会平成18年12月     http://www.gender.go.jp/danjo−kaigi/syosika/houkoku/work−honbun.pdf

 上記の1000人以上の企業規模では、制度が整って、さらに利用されているが50.8%、301〜

1000人では44.2%である。企業規模が101人〜300人では28.8%、51〜100人は17.6%。

21〜50人は12.6%、0〜20人は4.7%である。

 つまり企業規模が大きくてもその事業所の構成の男女比によって取得がし易いのか、或いは 取得しにくいのかは既述してきた。つまりこの仕事と家事・育児の両立支援策の制度が整って、

(15)

利用されている人たちは、取得できる職場環境、つまり職種、職域に属し、先例となる育児休 業取得モデルがおり、代替要員がいる職場と推測できるが、残りの半数は取得できない、男性 の多い、女性の少ない企業であろうと推測できよう。

 制度は整っているが、あまり利用されないは、1000人以上では44.3%、301〜1000人は 45.5%、101〜300人は、45.8%、51〜100人は39.4%、21〜50人は38.5%、0〜20人は 13.3%である。つまりここでは、6割程度が取得している。つまり制度はあっても先例となる モデルが少なく、後の4割はおそらく妊娠・出産、育児、家事、介護等の該当者は辞めている ことが推測できる。

 次に、制度も対応もないは、1000人以上3.8%、301〜1000人は5.8%、101〜300人は、

15.7%、51〜100人は19.4%、21〜50人は24.5%、0〜20人は31.4%である。

 ここでは、育児休業の制度ばかりでなく他の雇用条件等について取得できる権利があると 知っていたとしてもあまり利用できない正規職員及び非正規職員の多い職場であることが推測 できる。

 つまり制度が整っており、利用されているのは、1000人以上の企業規模が多く、制度は整っ ているがあまり利用されないのは、1000人以上も、301〜1000人も、101〜300人もほぼ近似 値であるが、制度も対応もないのは、21〜50人、0〜20人と小規模となっている。つまり日 本の企業は中小企業が多く、制度があってもあまり利用されないという現状がある。

 この背景には、これまで出産、育児・家事等で休業する男性モデルがいなかったこと、唯一 の家計の支え手が男の甲斐性とみなされ、性別役割分業に偏っていた背景があるが、次世代育 成にとっては、男女双方にこれら出産休業、育児休業と積極的休業取得が国の政策として策定

され具体的目標値を定め促進されるように事態は変容してきた。

4.2.男性の育児休業取得の低迷と奨励策

 男性の育児休業取得の推進について本論で考察してきたことから、男性の育児休業取得が進 まない要因に、労働時間の長さのみの国別比較からは、日本の長時間労働は男性の過剰労働で あることは指摘できるが、男性の育児休業取得のこれほどまでに低い割合、及び企業規模によ る違いが促進できない要因と何らかの相関性については、この統計資料のみでは判断できない が、企業規模の大きい事業主が家族的責任を持つ労働者に理解があるという分けでもない。ま た大企業に男性が育児休業を取りやすい風潮が形成されているわけでもない。むしろ日本独特 の横並び意識で同種、同レベル事業主と同じようにしておくという意識の結果ではなかろうか。

つまりその内実の取得割合をみると大企業に男性の育児休業取得者が多い訳でもない。

 結婚、出産、育児に該当している人たちは、これまで一億総中流意識という中で育ち、帰宅 すれば母親が自宅にいて、一家の大黒柱は父親であった。親がそうしてきたので、自分たちも そのように生活設計を持っているという人は、時代が高度経済成長時代とは違い、親がしてき たような生活はできないかもしれないが、贅沢をしなければ、妻が家にいて子育てをもちろん

(16)

本人が望んでそうしたいのであれば、父親は自分のしたい事を少し抑えれば子どものミルク代 ぐらい稼いでくることはできるので、お互いに望む形として仕事と家庭を築きたいという人も いる。しかしながら、フリータ、ニート、就職氷河期の人たちで派遣、転職組み、短時間雇用、

非正規職員となった人たちは、育児休業取得の前例等がない職場に属し、或いは制度はあって も実際には制度とは、かけ離れた、言い出せるような職場環境ではない。例え取得ができるこ とを勧められたとしても日本企業の場合、他の職員、従業員への配慮として負担がかかること を先に考え、家庭のことは、私的なこととして、優先順位から遠ざけてしまう。つまり日本の 場合、前例を突破するより横並びを優先するそれが、現時点での男性の育児休業取得の限界で あろうと考察できよう。

 さらにこれが直接的な促進を妨げている強力な理由でないとすれば、どのような方法や手段 で進めていくことが政策の指針に近づけるのであろうか。労働時間及び企業規模の他に仕事と 育児の調和を目指すためには、どのように取組んでいくことが必要であるのか。ここでは政府 による指導の有効な手法をみていこう。

4.3.奨励策の事例

 財団法人21世紀職業財団では、男性の育児参加を促進するモデル的な取組みを実施したと き32、及び男性の育児参加を可能とするような職場作りに向けたモデル的な取組みを行う事業 主を財団法人21世紀職業財団地方事務所長が指定し、実際に取組みが行なわれた場合は援助 金が支給される。

 100人以下の企業に育児休業取得者、短時間勤務制度の利用者が初めて生じた事業主に支給 される助成金制度である。受給は対象者が始めて出た場合、2人目まで支給される㌢

 他にも中小企業子育て支援助成金1人目、育児休業の場合100万円、2人目の場合60万円、

短時間勤務の場合、利用期間に応じて60万円、80万円、又は100万円で、2人目からは20万 円、40万円、60万円が支給される。この他、以下のように仕事と家庭の両立支援バックアップ が事業主へある。

 また自社の男性の育児休業取得取組みの行動計画を策定する際に以下の利点がある。自社の 現状や従業員のニーズを把握して、計画期間、目標の設定、目標達成のための対策設定をし、

計画を実施する際、次世代育成支援対策推進法に基づく認定マーク「くるみん」を活用するこ とができる。つまり企業のイメージアップを図ることである。このマークを自社に付けること によって働き甲斐、働きやすい、社員を大事にする等、対外的にアピールすることができ人材 確保に期待ができる。

 こうして男性が育児休業を取得することによって、事業主側にはプラスになることもある。

2030を過ぎると2000年と比較し大学新卒者は6割を切る。つまり近い将来求人難時代が来 る。そうした時に女性の労働力を積極的活用することは企業の戦略となり、生産力向上維持、

企業イメージアップ等のメリットとなる。そのためには、女性の労働力を男性と同様とするこ

(17)

とが必須であり、それには、女性の抱えている家事・育児・介護等の役割を男女双方で担うこ とによって、女性の継続就業は企業にとって重要な意味を持つことになる。つまり次世代育成 支援ということは、女性の就業継続を支援することと男性の育児休業取得という関係が企業の 重要な人材管理の柱となり、企業の将来を導く。こうした企業を行政は、ファミリー・フレン

ドリー企業として認証し表彰している。

 この他に、男性の育児休業取得促進を勧めていくためには企業の指導者始め職場における人 権・男女平等研修等の促進、或いは家庭及び地域等においても男女が共に参画して、活動が分 かち合えるよう促進していくこと。男性の育児休業ばかりでなく、働き方の見直し、多様な労 働条件の見直し、対象を自社のみでなく、地域の子育て支援等を実施していくことが、結果的

に効果のある男性の育児休業推進につながっていくと考察する。

5.まとめ

 本論は仕事と家庭の調和を目指すための男性の育児休業取得とその促進について、愛知県内 の市町を中心に男性の育児休業取得目標値の紹介とその背景の問題について考察した。

 育児休業取得者の男女の相関関係は、取得率にどのように影響するのか考察した。企業の決 定権は、女性に比べて相対的に大企業に勤務する男性が多いためその影響力は大きい。

 このような社会背景の下で、特定事業主は、各府県市町においてそれぞれの男性の育児休業 取得目標値を策定した。その結果、本論では以下のような結論を得た。地域ごとに目標値にば らつきがあること。その目標値は、全国的統一の策定基準方式によるものでもなく、具体的な 根拠等の説明がないこと、男女の目標値の格差は、むしろ男性は取得しなくてもよいという意 識形成の背景となることが危惧される。つまりこの目標値は行政担当者による根拠が不明の目 標値提示である。育児休業が取りたくても取れない日本的企業風土に風穴を開けるには、次世 代育成対策推進法の前半期の5年目に当たるつまり来年、各特定事業主が行動計画として策定

した男性の育児休業取得率の結果が具体的数値となる。

 さらに男性の育児休業取得推進に役立つように、国を挙げての政策は成果が求められ、それ に応えられるよう再構築し、既述したような強力な具体策、つまり、策定値に対する効果及び 評価、見直し、検討が後半に向けて徹底した企業への周知、推進、取組みが必須で求められる。

さらに男性の育児休業取得の促進は、間接差別に大いに関係しているということを社会背景か ら全体の傾向を考察した。

 また、それ以上に重要な所見として、男性が育児休業取得できない理由の分析結果として、

固定的な性別役割分業に大きな変化はまだ見られない。

 これを打破する対策として男性の育児休業取得のモデル事業としての援助金が支給される制 度、中小企業の子育て支援助成金支給等が企業に取組みされる情報提供は、男性の育児休業取 得の後続者に有用な情報、手段として考えられることを考察した。

 育児休業が取得しにくい理由として男女の賃金格差も挙げられるが、本論では男性の給与が

(18)

女性より高くても育児休業を取得することによって、学べることの有用性が重要であろうと考

える。

 今後の課題として、女性の多くは未だ結婚、出産、育児、介護等によって男性と同じように 継続就業の実現は達成されてはいない。この男女双方による継続就業の実現は、固定的な性別 役割分業の打破を男性の育児休業取得によって、男女双方が継続就業することが可能となるよ う本論ではその側面を追究してきた。しかしながら、本論では、比較的労働条件、環境の整っ た特定事業主による次世代育成支援対策推進の行動計画による男性職員の育児休業取得促進に よるものであった。一般企業では、まだ育児休業の制度の周知、実際に手の届くような制度そ のものではなく、前例なし、育児休業取得するより就業していた方が横並び的に目立たず、突 出したことなしの職場で私生活を見せず、企業戦士としている方が、無難な評価を得ることが できるという職場の風土によって、男性の育児休業取得促進は、困難な状況にある。よって今 後の課題は、一般企業の事業主による男性の育児休業取得の促進と仕事と家庭の両立可能な一 端へと導くであろうと考える短時間雇用労働への側面さらに個別事業所による奨励策の実施な どからワーク・ライフ・バランス及び女性の継続就業を追究していくことを今後の課題とした いo

1 資料出所:内閣府男女共同参画「少子化と男女共同参画に関する社会環境の国内分析報告書」参  考

2 http://www.mhlw.go.jp/houd皿/2007/08/hO809−1/03−26.html   資料出所:厚生労働省「平成18年度女性雇用管理基本調査」

3 資料出所:注2前掲

4 資料出所;http://www.gender.go.jp/ 内閣府

5 資料出所:注2前掲

6 山田清美(2006年調査)『家族的責任を担う労働者への対応についての調査』2005年に東海ジェ  ンダー研究所の資金援助を得て実施できた。

7 資料出所:内閣府規制改革会議報告「過度に女性労働者の権利を強化すると、かえって最初から  雇用を手控える結果となるなどの副作用を生ずる可能性もある」

8資料出所:http://www.pref.aichi.jp/cmsfiles/contents/0000012/12811/kosodate_

 0321minaoshi.pdf

9 これらは、各公式サイトのホームページより情報収集直接、市町担当窓口及び厚生労働省へのメー  ル調査によって検索・情報収集をした。

10 愛知県特定事業主は以下のようである。

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