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理想的教師像における大学生と教師の違い

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Academic year: 2021

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奈良教育大学学術リポジトリNEAR

理想的教師像における大学生と教師の違い

著者 豊田 弘司, 三木 馨

雑誌名 奈良教育大学教育研究所紀要

巻 32

ページ 133‑136

発行年 1996‑03‑01

その他のタイトル The difference between underguraduates and teachers in the image of ideal teachers.

URL http://hdl.handle.net/10105/6888

(2)

奈良教育犬学教育研究所紀要 平成8隼第32号

理想的教師像における大学生と教師の違い}

豊田 弘司・三木  馨}

   (心理学教室)

要旨:112名の大学生と157名の現職教師に小学校、中学校、高校の理想的な教 師の特性に関する自由記述を求めた。その結果、大学生は教師の人間性に関す る特徴を理想的教師像において重視しているのに対して、現職教師は、児童・

生徒の理解を最も重視していることが示された。また、性差に関しては、男子 学生は小学校、中学校、高校における理想的教師像の特性に変化が認められた が、女子学生は一貫していた。一方、現職教師では性差はほとんど認められず、

教職経験によって理想的教師像における性差が消えていくことが示されれ キーワード:理想的教師像、大学生、現職教師

 教師の特徴を調べた研究は数多く行われている。例えば、杉村(1979)は、大学生に小学校、

中学校、高校時代の好きな教師と嫌いな教師の特徴を回想させ、時代ごとの好きな教師、嫌いな 教師の特徴を明らかにしている。同じように豊田(1994)は、印象に残っている教師を大学生に 回想させ、その教師が好きな教師であったか嫌いな教師であったかを調査しれその結果印象に 残った教師は好きな教師が圧倒的に多いということが明らかになった。さらに因子分析によって 印象に残った好きな教師の特徴を検討したところ、小学校、中学校、高校の各時代に、「信頼感」、

「快活さ」、「個人的な関わり」、「厳しい指導」、「授業のうまさ」という類似した5つの因子が抽 出された。その中でも「信頼感」、「快活さ」及び「授業のうまさ」の因子を構成する項目の評定 値は高く、これらの特徴が印象に残った好きな教師の特徴の中で重要なものであることが示され

た。

 上述した研究は、すべて大学生を対象とした調査であり、そのため、教育を受ける者からの教 師に求められる特徴は明らかになるとしても、教育を行う側からの教師に求められる特徴につい ては明らかではない。教師に求められる特徴を明らかにしていくには、教師の側からも調査する ことが必要であると考えられる。

 そこで本研究では、大学生と現職教師それぞれに教師に求められる特徴を自由記述によって報 告させ、両者の教師像の違いについて検討することを目的とする。なお教師側からの回答のしや すさも考慮して、質問には「理想的な教師」の特徴としてあげられるものを回答させるようにし た。なお理想的教師像については村瀬(1956)の中学生を対象にした調査がある。一そこでは「個 人的特質」、「学習指導」、「生活指導」の3群が理想的教師に求められる特徴としてあげられる。

 *The difference between underguraduates a皿d teaChers in t11e i㎜age of…deal teachers.

**Hiroshi TOYOTA and Kaoru MIKI (Department of Psycho1ogy,Nara University of Education)

(3)

しかしそこでは教師側への調査は行われていない。さらに時代的にも差があるものと思われる。

したがって、本研究によって現代の大学生と教師の抱く理想的教師像を明らかにすることができ ると考えられる。

方  法

 被調査者 大学生は第1著者の「教育心理学」の受講者116名(男子41名、女子75名)であり、

平均年齢は19歳3か月(18歳4か月一26歳6か月)であった。現職教師は第1著者による認定講 習会での「教育心理学」の受講者157名(男子86名、女子71名)で、平均年齢は36歳7か月(22 歳6か月一45歳6か月)であった。なお、これらの現職教師の平均教職年数は、13年1か月(2 年一18年)であった。

 材 料小学校、中学校及び高校の教師に求められる特徴を自由記述してもらうための用紙 は、B6判であり、最上部に「あなたにとって、理想的な教師の特徴を5つ書いて下さい」とい う教示が印刷されていた。そして、その下に、性別及び教職年数を記入する欄があり、さらにそ の下に理想的な教師像の特徴を記入する空欄が設けられていた。

 手  続 大学生と現職教師に対して、それぞれ別々に集団調査を実施した。被調査者は、用 紙に印刷されている上述の教示を読みあげられ、小学校、中学校及び高校の各時代ごとに理想的 教師像の特徴を記入していった。

結果と考察

 各時代ごとに5つの特徴の記述を求めたが、3つの特徴しか記述していない被調査者が多かっ たので、各被調査者について記述された第1番目の特徴から3番目の特徴を分析の対象とした。

分析においては、著者2名の合議の上で、意味内容の類似した特徴はまとめてカウントしていっ た。表1には、記述された数の多かった特徴の中で上位5つの特徴を示してある。

 大学生と現離教師の差 小学校における理想的教師像では、大学生、現職教師ともに共通して

「やさしい」、「明るい」、「いっしょに遊ぶ」が多くあげられた。これは、杉村(1979)が好きな 小学校教師の特徴として報告したものとほ廊寸応している。大学生と現職教師が異なる点として は、大学生では「対等につきあう」が男女ともに記述されている数が多いのに対して、現職教師 では「児童を理解する」、「愛情をもって接する」、「教育への情熱がある」が理想的な教師の特徴 としてあげられている。大学生においては実際の教育現場での経験がないのに対し、現職教師の 教職経験は豊富で、実際の指導において個々の児童・生徒を理解すること、愛情、情熱の大切さ

を十分にとらえているためであると考えている。

 中学校の理想的教師像では、どの被調査者群においても、「生徒を理解する」という特徴があ げられてい糺それに続いて、「指導力がある」、「授業がうまい」という特徴が多くあげられれ

「生徒を理解する」という特徴は、現職教師においては男女ともに最も多い数となっている。思 春期に位置する生徒の心情の理解に現場の中学校教師が苦労していることはよく知られているが、

現職教師は生徒の理解を最も重視していることがうかがえる。

(4)

表1 自由記述された理想的教師像の特徴における上位5項目 小学校における理想的教師

男子大学生

やさしい 明るい

いっしょに遊ぶ 道徳的である 対等につきあう

23(22.1)

6(5.8)

5(4.8)

5(4,8)

5(4.8)

男性教師

①児童を理解する

② 明るい

②教育への情熱がある

④ やさしい

⑤いっしょに遊ぶ

⑤愛情をもって接する

26(1O.3)

16(6.3)

16(6.3)

15(5.9)

14(5.5)

14(5.5)

女子大学生

やさしい いっしょに遊ぶ 明るい

対等につきあう ひいきしない

34(16,7)

26(12.7)

ユ9(9.3)

19(9.3)

16(7.8)

女性教師

① やさしい

②児童を理解する

③明るい

④愛情をもって接する

⑤児童が親しみやすい

⑤教育への情熱がある

⑤いっしょに遊ぶ

25く12,0)

22(10.6)

工6(7.7)

12(5.8)

10(4.8)

10(4.8)

10(4.8)

中学校における理想的教師 男子大学生

指導力がある やさしい 授業がうまい おもしろい 生徒を理解する 女子大学生

生徒を理解する 授業がうまい 相談できる

ひいきしない 対等につきあう

11(10.6)

10(9,6)

8(7.7)

7(6.7)

7(6.7)

19(9.4)

18(8.9)

15(7.4)

工4(6.9)

12(5.9)

男性教師

①生徒を理解する

②教育への情熱がある

③ 知識がある

④生徒と信頼関係がもてる

⑤指導力がある 女性教師

①生徒を理解する

② やさしい

③授業がうまい

③生徒が親しみやすい

③指導力がある

26(10.6)

19(7.8)

17(6.9)

16(6.5)

13(5.3)

21(11.2)

13(6.9)

12(6.4)

12(6.4)

12(6.4)

高校の理想的教師 男子大学生

授業がうまい 干渉しすぎない やさしい おもしろい 幅広い知識がある

女子大学生

授業がうまい 相談できる 対等につきあう 干渉しすぎない 生徒を理解する

14(13.7)

9(8,8)

9(8.8)

9(8,8)

8(7.8)

34(17.3)

15(7.6)

ユ5(7,6)

13(6.6)

12(6.1)

男性教師

①教科専門の知識がある

②生徒を理解する

③指導力がある

④生徒と信頼関係がもてる

⑤授業がうまい

⑤教育への情熱がある 女性教師

①生徒を理解する

②教科専門の知識がある

③相談できる

③授業がうまい

⑤生徒と信頼関係がもてる

34(13.4)

21(8.3)

20(7.9)

14(5.5)

13(5.1)

13(5、ユ)

21(11.1)

19(10.O)

16(8.4)

16(8.4)

13(6.8)

()内は%を示す

(5)

 高校においては、大学生では、男女ともに「授業がうまい」という特徴を最も多く記述してい る。これは進学を目指している高校生のおかれる立場を考えれば、教師に求められる重要な特性

として当然のことといえよう。一方、教師側は「授業がうまい」のみならず、さらに「教科専門 の知識がある」という特性を重視している。

 また、大学生においては、「干渉しすぎない」、「対等につきあう」、「やさしい」、「おもしろい」

などの生徒への対応及び人間性に関する特徴を重視しているのに対して、現職教師は、生徒指導・

学習指導全般に関わる特徴(「生徒との信頼関係がもてる」、「指導力がある」、「教科専門の知識 がある」、「教育への情熱がある」)を重視している。

 小学校、中学校、高校を通してみると、大学生では、一貫して教師の人間性に関する特徴が重 視され、現職教師では、児童・生徒の理解が一貫して重視されている。教職経験を積むことによっ て児童・生徒の理解が教育にとっていかに重要であるかを実感していくように思われる。

 性差性差に注目してみると、男子大学生では「やさしい」が、女子では「ひいきしない」、

「対等につきあう」が小学校から高校までの全時代を通して上位5つの中にあげられている。こ れらのことから、女子大学生が教師とは対等がつ公平な関係を理想的教師の特性として重視して いるのに対し、男子大学生は教師の人格的な温もりを重視していることがうかがえる。さらに、

女子学生は中学校と高校でほとんど変化ないが、男子学生ではその変化が大きい。大学生に好き だった教師及び嫌いだった教師の特徴を自由記述させた研究(豊田,1995)では、男子学生が女 子学生よりも回想する時代(小学校、中学校、高校)によって好きだった教師及び嫌いだった教 師の特徴に変動が大きいという結果を得ており、本研究の結果と類似しているといえよう。

 しかし、現職教師については、小学校、中学校、高校のいずれにおいても性差はほとんど見ら れず、教職経験によって理想的教師像において重視する特徴における性差は消失していくといえ

よう。言い換えれば、男性教師、女性教師の目指す理想的教師像に大きなずれはないということ

である。

引用文献 岸田元美 1968児童生徒の人問関係 明治図書

村瀬隆二 1956生徒の教師に対する好悪(倉石精一・苧阪良二・梅本尭夫編 1978教育心理   学新曜社より引用)

杉村健1979教育心理学近畿大学通信教育部

豊田弘司 1994回想による教師像と教師に対する印象の関係 奈良教育大学教育研究所紀要

  30, 93−98.

豊田弘司 1995回想による好き年教師・嫌いな教師 日本発達心理学会第6回大会発表論文集

  77.

参照

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