空気中の自然放射性核種の測定と放射線教育教材への応用
佐 藤 美千代,岩 田 吉 弘
Measurement of natural radioactive nuclides in the air and its application to teaching materials for radiation education
SATOH, Michiyo
1; IWATA, Yoshihiro
2*1
Ogachi Junior High School, Yuzawa 019-0204, Japan
2
Department of Chemistry, Faculty of Education and Human Studies, Akita University, Akita 010-8502, Japan
Abstract
We developed a method to collect natural radioactive nuclides in the air by a simple method. Dust contained in the air in the storage room was sucked with a vacuum cleaner and collected on a cotton paper used as a filter. The radioactive nuclides,
214Pb and
214Bi from
222Rn were collected on the filter. The radiation dose had enough quantity to analysis using a GM counter for education. The PC was connected to the GM counter and displayed the change of the radiation dose in real time. The PC calculated the apparent half-life of the radioactive nuclides, and the half-life was approximately 40 minutes.
We applied this measurement to the radiation education teaching material for junior high school students. This teaching material promoted that a student understood "radioactive decay of the atom", "half-life" and "the measurement of the radiation".
Keywords : radiation education, teaching material, natural radioactive nuclide, radioactive decay, radon
1.はじめに
平成 20 年改訂の中学校学習指導要領に「放射線の性 質と利用にも触れること」と記載され,中学校における 放射線教育が 30 年ぶりに復活した。
保坂らは,中学校理科における放射線の学習に関し て,60%を超える中学校理科教員が放射線の指導に関し て「自分自身の教材研究の不足」,「知識の不足」を問題 点と考えていることを明らかにした
1)。さらに,教科書 と中学生のための放射線副読本
2)を主たる教材として授 業を受けた生徒群と,専門家による指導,観察・実験を 伴う授業を受けた生徒群を比較することで,前者の生徒 にはあまり変容は見られないが,後者の生徒には明らか な変容が見られることを明らかにした
3)。これらの結果 を受けて,保坂は全ての中学校で専門家を招いて授業を 行うことは困難であるが,少なくとも中学校理科教員に よって「観察・実験」を行うことを標準の指導計画とす ることを提案している。
平成 23 年の福島第一原子力発電所の苛酷事故を受け,
平成 28 年度改訂の中学校理科の教科書では,放射線に
関する項目が増えた。なかでも「原子の壊変」, 「半減期」,
「放射線の測定」の項目は,ほとんどの教科書で改訂後 に記述されるようになった。これらの項目は放射線の理 解に重要であるが,包括的に理解をすすめる実験教材は 教科書にほとんど示されていない。
一方,放射線教育用教材の「はかるくん」による放射 線測定のテキストには,学校内の数ケ所で放射線を測り 自然放射線量の違いを調べる実験や,遮蔽効果などの放 射線の性質を調べる実験が示されている
4)。内田らは,
中学校理科の授業で生徒に放射線測定器「はかるくん」
を使ってガンマ線による実効線量を測定させることで,
放射線の性質と測定値の大小関係から様々な考察をさせ ることが可能であることを明らかにした。しかし,ガン マ線は天井や壁などの建築材や家具や大地など四方八方 から,少々の遮蔽物は通り抜けてくるので,特定の物体 だけからくる放射線を区別して測ることはできない。課 題としては,「はかるくん」では発生源を特定できず,
測定しているものが宇宙線なのか,大地からの放射線な のか,何を測定しているのかについて実際に確かめるこ
( Memoirs of the Faculty of Education and Human Studies )
Akita University(Natural Science)
73,17 − 22(2018)
とはできないことにある。ガンマ線の透過性があるため,
対象物を測定器の面に接しさせる場合においても,対象 物以外からくる放射線の影響を避けられないとしてい る
5)。
大地からの放射線は,岩石や土壌中存在するウラン系 列(親核種:
238U,半減期 45 億年)とトリウム系列(親 核種:
232Th,半減期 140 億年)およびそれらの子孫核 種,加えて
40K からのガンマ線である。その年間実効線 量は,日本人1人あたりの 0.33 mSv とされ,外部被曝 の約 1/2 をしめる。ウラン系列のラドン(
222Rn),トリ ウム系列のトロン(
220Rn)とその子孫核種は,内部被曝 においても主たる放射線源である。特に,吸引による内 部被曝の 0.48 mSv のうち 99%は,これらによる
6)。 ラドンとその子孫核種は地下室などの密閉空間に滞留 しやすく,子孫核種はホットアトム効果でイオンとして 存在して,周囲の塵に付着している。この塵を捕集する ことで身近な放射線源として理科教育教材とした例があ る。J. Gastineau は,帯電させた玩具のゴム風船に地下 室内のラドンの子孫核種を吸着捕集後,風船たたみ,教 育用ガイガーカウンターで測定する方法を提案してい る
7)。この方法は捕集に特別な装置を必要とせず,測定 器も安価である。しかし捕集には,かなり広い密閉され た地下空間が必要である。日本では,もともとラドン量 が少なく
6),地下室も一般的な生活環境に少ない。
関根らは,東北大学における文系学生を対象とした理 科実験科目「文系学生のための自然科学総合実験」の一 つの実験課題として,身近な放射線の存在を認識する理 科実験プログラムを実施している
8, 9)。このプログラム では,小部屋に滞留したラドンの子孫核種から生成する 短寿命放射性核種をハイボリュームエアサンプラーで捕 集し,放射線管理用 GM サーベイメータでβ線を測定 している。大学教育で求められる定量的な考察ができる 反面,特殊で高価な装置が必要となる。
ラドンの子孫核種を家庭用掃除機で捕集し,β線測定 装置で測定する実験テキストがある
10)。この実験テキス トでは,捕集した放射性核種からの放射線が「はかるく んⅡ」により 70cpm 以上必要とされている。しかし具 体的に,どのような採取場所で,どのような捕集するか が示されておらず,教材として利用しにくい。また文部 科学省からの「はかるくん」の貸出事業は,平成 26 年 度末で終了した。
本研究では,効率が高く,安価な教育用ガイガーカウ ンターで計測可能で,しかも簡便なラドンの子孫核種の 捕集法を開発した。捕集した空気中の自然放射性核種は,
放射線源として,教育用 GM 計数管で線量変化を測定 できる。これを中学校での放射線教育において,「原子 の壊変」,「半減期」および「放射線の測定」の理解を促
す教材に応用した。
また,教育用 GM 計数管による計測では,パソコン を使用した。これまで本研究室では,観察・実験を行う 過程でのパソコンの利用では,観察・実験の代替として ではなく,自然を調べる活動を支援し,強化し,触発す ることを助ける知的で創造的な道具として位置づける教 材開発を行ってきた
11‒13)。本研究においても放射線量の リアルタイムの計測結果の表示や,半減期の解析におい てパソコンを利用し,創造的な道具としての活用に成功 した。
2.実験
2.1 放射線測定装置
ガ イ ガ ー ミ ュ ー ラ ー 測 定 器 と し て, 放 射 線 管 理 用 GM サ ー ベ イ メ ー タ( 計 数 窓 径 5.0 cm,Aloka 製 TSC‒319H)を単独で,あるいは教育用 GM 計数管(計 数窓径 1.3 cm,Vernier 製 VRT‒BTD)をインターフェー ス(Vernier 製 Go! Link)を経由しパソコンに接続して 用いた。データ解析ソフトは,Logger Pro3(Vernier 製)
を用いた。
2.2 集塵方法
集塵機としてダイヤフラム形ポンプ(アルバック製,
DA‒15D,風量 12 L/min)と家庭用掃除機(風量 900 L/min)を比較した。
集塵フィルターの選択では,ラドンとその子孫核種の 放出源として,燐灰ウラン鉱(ウラン量 1.6 g)を大型 吸引濾過鐘(容積 17 L)に入れ,24 時間放置した空気 を用いた。フィルターとして,掃除機用ダストパック,
ガラス繊維濾紙,コットンワイパーなどを,家庭用掃除 機の吸引口に取り付けた。濾過鐘内の空気を掃除機で 20 秒間吸引し,フィルターにラドンとその子孫核種を 捕集した。
放射性核種の付着したフィルターはポリ袋に入れ,放 射線管理用 GM サーベイメータの計数窓に密着させ,
1分間放射線を計測した。
2.2 校舎内でのラドンとその子孫核種の採取と測定
コットンワーパーを二重にしたフィルターを掃除機の 吸引口に取り付け,大学や中学校の物品庫等の空気を5 分間吸引した。フィルターに捕集した放射性核種からの 放射線は,放射線管理用 GM サーベイメータあるいは 教育用 GM 計数管で1分あるいは2分計測した。
3.結果と考察
3.1 身近な放射線源のラドンとその子孫核種
ラドン(Rn)は,天然に存在する放射性壊変系列で
あるウラン系列の途中にある
226Ra(半減期 1600 年)が 壊変して生成される
222Rn(半減期 3.8235 日)と,トリ ウム系列の
224Ra(半減期 3.66 日)が壊変して生成され る
220Rn(半減期 55.6 秒)がある。このラドンとそれら の子孫核種が一般生活環境に存在する放射線源として問 題となる。通常,ウラン系列の
222Rn を「ラドン」と呼び,
トリウム系列の
220Rn を「トロン」と呼んでいる。
岩石や土壌,身の回りのコンクリートの中にも含まれ ているラジウム(
226Ra,
224Ra)が壊変してラドンとトロ ンになると固体化合物の状態から貴ガスとなり,空気中 に散逸する。
ラドンは半減期が約4日であり,広く空間へ拡散する ので,家屋においては床下や室内の建材中から散逸した ラドンは換気率の低い部屋に侵入して濃縮され,高い濃 度になることがある。
トロンは半減期が約1分であり,生活環境においては,
土壁やコンクリートなど室内の建材中の
224Ra から散逸 した場合だけが問題となり,壁などの表面付近で高濃度 になるが,部屋全体が高濃度になることはない。
ラドンもトロンも,被曝線量への寄与は,ラドン,ト ロンそのもののガスによるものは小さく,空気中での壊 変で生じる子孫核種の吸入によるものがほとんどであ る。ラドンは室内で高濃度になる可能性があり,また空 気中で壊変して,短寿命放射性核種を生成する。ラドン の属するウラン系列の壊変図を図1に示す
12)。
222
Rn から順番に,
218Po(半減期3分),
214Pb(半減期 26.8 分),
214Bi(半減期 20 分),
214Po(半減期 0.164 ミリ秒)
が次々と生成しては壊変し,比較的長い半減期の
210Pb
(半減期 22.3 年)にいったん落ち着く。
222
Rn から子孫核種は,ホットアトム効果でイオン化 しているため,空気中の塵に沈着しやすい
8)。それらを 人が吸入することにより気管支や肺胞などの呼吸器官に
沈着して,
218Po,
214Bi が放出するα線の照射が,比較的 高い被曝線量の原因とされている。なお,図1に示す通 り,
214Bi がベータ壊変して生じる
214Po のアルファ線が 被曝の原因であるが,
214Po の半減期が1.6 × 10
− 4秒と 極めて短いため,このアルファ線は事実上
214Bi から発 生しているとみなせる。
日本人の自然放射線による年間実効線量において,吸 引摂取による内部被曝の内訳で,ラドンとその子孫核種 によるものは,0.37 mSv/ 年,トロンとその子孫核種よ るものは,0.07 mSv/ 年とされており,その合計は自然 放射線による被曝の 22%をしめる
6)。アメリカでは,岩 盤のラジウム含有量が大きいことと,家庭にも地下室が あることで,ラドンとその子孫核種による内部被曝が深 刻な公衆衛生問題の一つとなっている。このことからア メリカ合衆国環境保護庁で中高校生向けに放射線教育活 動を行っている
13)。
放射線教育で一般的に用いられている放射線源は,超 長寿命の
232Th(半減期 140 億年)や
40K(半減期 12 億年)
であるため,放射能の減衰を測定することはできない。
222
Rn から最初に生まれる
218Po は半減期が短いために簡 単には測定できないが,次に生成する
214Pb と
214Bi は半 減期が 20 ~ 30 分程度である。これは限られた授業時 間内で放射線を測定とその結果から放射能の減衰,すな わち原子の壊変の教材として適している。
214Pb と
214Bi からのベータ線の測定では,放射性核種の見かけ上の半 減期が約 40 分となる
8‒10)。
前述の通り,空気中の
214Pb と
214Bi は,いわゆる NORM
(Naturally Occurring Radioactive Materials)であり放射 線量も小さい。半減期は短いため,取り扱う上での被曝 線量も無視でき,放射線障害予防法など法令での規制も ない。このように自然由来のラドンの子孫核種は教材と しての放射線源として適当であると考えられる。
3.2 集塵機の選択
ダイヤフラム型ポンプの吸引口にフィルターホル ダ(ADVANTEC,PRO‒47)を付け,ガラス繊維濾紙
(ADVANTEC,GA100)をセットした。家庭用掃除機の 吸い込み口に掃除機用ダストパックをかぶせた。採取場 所は,A 大学1階物品庫とした。
ダイヤフラム型ポンプで5時間,翌日に掃除機で1時 間採取した。採取後,直ちに放射線管理用 GM サーベ イメータで1分測定し,その後,教育用 GM 計数管で 2分毎の測定を行い,放射線量の減衰を解析した。
放射線管理用 GM サーベイメータでの測定では,ダ イヤフラム型ポンプで 450cpm,掃除機で 2090cpm で あった。教育用 GM 計数管の測定では,ダイヤフラム 型ポンプで 33.7cpm,掃除機で 450cpm であった。ダイ
図1 ウラン系列の壊変図扌:主な壊変経路, :確率 0.02%以下
ヤフラム型ポンプは長時間安定に吸引できるが,掃除機 の効率には劣っていため,以後集塵機には家庭用掃除機 を用いることとした。掃除機で捕集した放射性物質から の放射線量は,計数率の小さい教育用 GM 計数管でも 解析に十分大きかった。そこで半減期を解析したところ,
約 40 分となり,ラドンの子孫核種の
214Pb(半減期 26.8 分)
および
214Bi(半減期 20 分)が捕集されていると判断した。
3.3 フィルターの選択
フィルターの選択には,できるかぎりラドンの子孫核 種濃度の等しい空気を吸引し,放射線量を比較する必要 がある。一方,室内のラドン濃度の決定要因は,床下の 土壌や建材中の
226Ra 濃度はもとより,室内の濃縮の変 動要因である室内への侵入率,屋外への排出に関連する 換気率,さらにこれらの要因とも関連する気温,風向,
風速,降雨などの気象条件も重要であるとされている
6)。 密閉性の高い物品庫のような室内でも,これらの条件を 一定にすることは難しい。そこで
226Ra を含有するウラ ン鉱石を密閉容器内に一定時間放置して,鉱石から発生 するラドン(
222Rn)とその子孫核種が滞留した空気を試 料とすることとした。
24 時間毎に異なるフィルターを付けた掃除機で,ウ ラン鉱石を入れた大型吸引濾過鐘の空気を 20 秒間吸引 し,フィルターからの放射線を放射線管理用 GM サー ベイメータで1分間測定の3回繰り返し,平均値をまと めた(表1)。空気の吸引量は,吸引口の風速を風速計
(Laser liner 製,Multi Test‒Master,口径 33 mm)で測 定し求めた。捕集するフィルターとして,コットンワイ パー(クレシア,キムワイプ),掃除機ダストパック(ア イム,そうじ機用取り替えパック),防塵マスク(ワイパー サプライ,Leaf Mask),ガラス繊維濾紙(ADVANTEC,
GA100),コーヒーフィルター(UCC,コットン 100%)
を用いた。
全てのフィルターで 20 秒の吸引で空気の入替回数は 5回以上となり,濾過鐘内に滞留していた空気は十分吸 引できた。ガラス繊維濾紙は放射線量が最大となり,塵 を最も多く捕集できた。しかし空気の吸入量が最小で,
掃除機への負荷が大きいと判断された。また,ガラス繊
維濾紙は耐久性が小さく,粉々になりやすい。一方,コッ トンワイパー(キムワイプ)二重にした場合,ガラス繊 維濾紙に比べ放射線量は約 1/2 となったが,これまで使 用していた掃除機用ダストパックに比べると放射線量は 三倍増加した。コットンワイパーは一般的で安価な商品 で,耐久性も大きい。これらのことから,今後フィルター としてキムワイプを二重にして用いることとした。
3.4 フィルター上の放射性核種の保持
学校現場でのラドンとその子孫核種の採取場所とし て,物品庫等の密閉空間が想定される。この空間体積は 10 ㎥以上あるため,掃除機による 5 分から 15 分程度の 吸引が必要になる。フィルターに採用したコットンワイ パーの耐久性とともに,捕集された放射性核種が脱離し ないことを確かめる必要がある。
このため,3.3で行った,20 秒吸引,1分間測定の サイクル(単位操作時間 約1分 30 秒)を 35 回,60 分間にわたって繰り返し,コットンワイパーに付着した 放射性核種からの放射線量の変化を調べた(図2)。
放射線量は,4回までの測定で増加したが,やがて減 少し,60 分後に 1/2 となった。繰り返し吸引では,捕 集時間中に発生した短半減期の
218Po とその子孫核種を 捕集できるため,一時的に放射線量が増える。その後の 放射線量の減少の原因は放射性核種の壊変あるいはフィ ルターからの脱離が考えられる。これまで,ラドンの子 孫核種(
14Pb と
214Bi の混合物)の見かけの半減期は約 40 分であった。本実験ではそれよりも減少速度が小さ いことから,コットンワイパーに捕集された放射性核種 は安定に保持されていることが確認された。見かけ上の 半減期が 60 分程度となったのは,繰り返し吸引により,
218
Po とその子孫核種を追加して捕集できていることが 原因と思われる。
掃除機による吸引時間は総計 12 分で,吸引量は6㎥
となった。実際の採取では,掃除機への負担や授業展開 などから,5分間の吸引とした。
表1 種々のフィルターでのウラン鉱石から発生したラ ドンの子孫核種の捕集
0 200 400 600 800 1000 1200 1400
0 5 10 13 16 20 23 26.5 30 33 36.5 40 43 46.5 50 53 56.5 60
経過時間 (分)
放 射線 量
( cp m )
図2 燐灰ウラン鉱(ウラン量1.6g)から発生したラドンの子孫核 種を繰り返し吸引したフィルターからの放射線量の経時変化 図2 燐灰ウラン鉱(ウラン量 1.6g)から発生したラ ドンの子孫核種を繰り返し吸引したフィルターか らの放射線量の経時変化
3.5 フィルター上の放射性核種の保持
これまでの結果からコットンワイパー二重のフィル ターを用い,掃除機で5分間吸引する集塵方法で,実際 の学校現場での空気から,放射線核種を捕集できるか調 べた。採取場所は秋田大学3カ所,A中学校2カ所,B 中学校1カ所の計6カ所とした。
秋田大学では,270 から 2090cpm の放射線を測定で きた。放射線量が大きかった場所は,コンクリートがむ き出しで,窓のない部屋であった。
一般的な校舎において,1階から2階への階段の踊り 場下は,物品庫になっている。A中学校2カ所の物品庫 はいずれもコンクリートむき出しであった。窓のある物 品庫は 350cpm に対し,窓がない物品庫は 2060cpm と 大きな違いがあった。
B中学校の物品庫は,コンクリートがむき出しで,窓 はなかった。集塵により 5400cpm の放射線源が得られ た。教育用 GM 計数管でも 900cpm となり, 「原子の壊変」
に関する教材に必要な条件である 70cpm 以上を十分満 たいた。
3.6 身近な自然放射性核種の測定
B中学校の物品庫の空気から,放射線教育教材に用い ることの可能な放射性核種が得られたので,引き続き放 射線量の解析を行った。
この物品庫は,階段下の容積約 10 ㎥の小部屋である。
掃除機で吸引した空気は風速計の値から 3.2 ㎥と見積も られ,部屋の空気の 32%に相当する。教育用 GM 計数 管での 2 分毎の計数値をパソコンに取り込み,リアルタ イムで表示,解析した画面を図3に示す。
測定開始時の計数は約 900cpm であり,測定器のパル ス音を発生させると,ピーという連続音となった。計数 値は時間と共に減少し,3時間後にはバックグラウンド レベルになった。計数値 A (cpm)を下記の時間 t (分)
に対する一次反応として,指数関数で近似した。
A = A
0e
‒λtここで A
0は初期値 , λは壊変定数(/ 分)である。
最 小 自 乗 法 に よ る 近 似 の 結 果, A
0=940 ± 9cpm, λ
=0.0180 ± 0.0002/ 分となった。λの値から見かけの半 減期として,35.8 分が得られた。
中学校の物品庫の空気といった身近な環境に放射性核 種が存在すること,放射性核種は放射線を出しながら減 少していくこと,減少する割合は半減期で示されるなど,
放射線教育で重要なとされる「放射線の測定」,「原子の 壊変」,「半減期」の理解を促す教材に応用できることが 確かめられた。
3.7 授業実践
B中学校第3学年の生徒 50 名を対象に,本法と「は かるくん」による放射線測定,霧箱による放射線観察を 組み合わせた授業実践をおこなった。詳細は別報で行い,
ここでは本法と関連する部分のみ記述する。
授業は2校時連続で行われ,冒頭に,物品庫の空気か らラドンの子孫核種の捕集を行い,放射線量の測定を開 始した。
その後,放射線の説明,実験等の授業を展開したが,
その間,パソコンには2分毎の放射線計数値が保存しつ つ計時変化をモニターに表示した。B中学校で捕集し たラドンの子孫核種からの放射線測定では, A
0=226 ± 4cpm,λ =0.0177 ± 0.0005/ 分,見かけの半減期として,
39.1 分が得られた。
授業後半で,生徒に解析画面を提示することで「はか るくん」や霧箱の実験で得た放射線に関する知識との統 合をはかった。
アンケート等により以下についての理解が深まったこ とを確認できた。1) 身の回りに放射線源がある 2)
放射性核種が壊変することで放射線が生じる 3) 放射 性核種には半減期があり,放射性物質がいつまでも放射 線を出し続けるわけではない。
本研究では,空気中の自然放射性核種を身近な場所か ら簡便な方法で捕集する方法を開発した。得られた放射 線量は,教育用 GM 計数管を用いて解析するために十 分であった。計数管をパソコンと接続し,放射線量の変 化をリアルタイムで表示すると同時に半減期の解析を 行った。従来行われていた「はかるくん」や霧箱を用い た放射線教育教材と組み合わせることで, 「原子の壊変」,
「半減期」および「放射線の測定」の理解を促す授業実 践に応用し,その教育効果が示された。
図3 A中学校倉庫の大気から採取した放射性核種からの放射線 の経時変化の解析画面
図3 B中学校倉庫の大気から採取した放射性核種から の放射線の経時変化の解析画面
参考文献