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学習支援システム LePo を用いた反転授業の実践

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Academic year: 2021

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学習支援システム LePo を用いた反転授業の実践

総合情報処理センター  吉 崎 弘 一

1. はじめに

近年、学習の前提となる知識の伝達とそれを踏まえた応用的な学習を、小さな学習単位として 提供する授業形式の一つである「反転授業」が注目されている。反転授業とは、従来、授業時間 に教授者が一斉講義で伝達することが多かった知識を授業前の予習として提供し、それを踏まえ た応用的な内容を授業時間に行うというものである[1]。従来の一斉講義形式の授業と比べ、授業 時間内/外の取り組みが反転していることから、「反転授業」と呼ばれている。また、反転授業 の予習は動画で提供されることが多く、自宅等でのインターネット/動画視聴機器の普及も、こ の授業形式の導入を容易にしている。

今回、著者が 2014 年度に開講した科目で、この反転授業を試験的に導入した。前年度までの 同科目では、授業時間の約半分を教授者からの一斉講義に費やし、残りを学習者の主体的な活動 にあてることが多かったが、一斉講義中に集中力を欠いた状態の学生が散見された。このような 状態を改善することをねらいとして、今年度から反転授業を導入した。この反転授業の導入にあ たっては、「予習として提供する講義動画」と「授業時間における学生の主体的活動」を、それ ぞれ効果的なものになるよう検討を進めた。本論文では、このうち前者の予習活動での取り組み を中心に報告する。なお、今回の授業実践では独自開発した学習支援システム LePo[2]を用いたが、

同システムが提供するコースふせん機能[3]とコンテンツキュレーション機能[4]は、予習及び授 業時の活動を設計する上で、本質的な役割を果たした。

2. 授業での実践

2.1. 授業概要

今回の反転授業は、秋田大学の全学部の学生を対象とした「Web で学ぶ技術」(半期/選択科 目)で実践した。この科目は秋田大学の「教養ゼミナール」と呼ぶ科目群の 1 つであり、同科目 群は少人数を対象とした授業で、発表や討論を特に重視する点が特徴になっている。この「Web で学ぶ技術」では、Web を中心とする情報通信技術を用いた学習手法について、その特徴や 活用方法を理解することを学習の目的とし、MOOC(Massive Open Online Course)や Khan Academy、教育機関での PC 必携化などを授業内容として取り上げた。なお、2014 年度の同授 業は 10 名が履修した(内 1 名が途中で履修放棄)。

全 15 回の授業の内、3 回目以降の計 13 回の授業に予習動画・予習課題を設定し、反転授業を 実施した。また、毎回の授業における教材閲覧と課題評価には、学習支援システム LePo を用い、

学習目標の明示や課題を教員が評価する際のフィードバックについては、参考資料[3]の取り組み

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と同様に取り扱った。

2.2. 予習動画と予習課題

各回の授業で提供する予習動画は、教授者 である著者が作成したものとインターネット 上で公開されているものから構成し、授業 1 回あたりの平均視聴時間は 23 分であった。

著者が作成した動画は、PowerPoint で作成 したスライドを提示しながら説明する様子を、

MacOS(10.9)の QuickTime Player で画面収 録した。なお、今回の動画は全画面表示した スライド映像と著者の音声のみで構成し、教 授者の映像は含めていない。

インターネット上で公開されている動画につ いては、主に YouTube と TED の Web サイ トで公開されているものを用いた。これらの Web サイトでは HTML の iframe タグを用い た他サイトでの動画共有を可能にしており、

今回もこの機能を利用して、LePo に掲載する Web 教材にこれらの動画を埋め込んだ。今回 の授業では、情報通信技術による教育・学習 支援の最近の取り組みをテーマに取り上げて いることもあり、TED の Web サイトで公開 されている「ビデオによる教育の再発明」(サ ルマン・カーン氏)、「子供達にプログラミン グを教えよう」(ミッチェル・レズニック氏)、

「オンライン教育が教えてくれること」(ダフ ニー・コラー氏)など、授業内容に関連し、

適当な難易度の講演動画をインターネット上で 容易に見つけることができた。これらの動画 を予習動画として利用することで、学習者に 多様な講義内容と共にプレゼンテーションの 実演例として提供することを目指した。

なお、予習では動画視聴後に取り組む予習

図 1 予習課題のコースふせんの例

図 2 授業課題のストーリーシートの例

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課題も設定し、これも授業評価の対象に含めた。予習課題では、主に予習動画を踏まえて教授者 が指定した事項について、学習支援システムのコースふせんを用いて記載する(図 1 参照)。なお、

コースふせんに記載したテキストは、コース内の教授者及び学習者全員が閲覧することができる。

この予習課題は予習動画の視聴を促すと同時に、予習動画の理解を深めるために導入した。

2.3. 授業時間の活動

PC 実習室における授業時間(90 分)では、予習動画を補足する短時間の一斉講義、予習課題 を相互評価する活動に加え、コンテンツキュレーション活動を中心とする活動を取り入れた。予 習課題を相互評価する際には、コースふせんをスターの有無で評価した(図 1 参照)。

デジタルコンテンツを収集し、独自の文脈を持つ成果物を構築するコンテンツキュレーション 機能としては、学習支援システム LePo に、Web ページ上のテキスト・画像・動画の各種情報を、

収集・整理・共有・評価する機能を実装した[4]。このコンテンツキュレーション機能は、Web ペー ジ上のコンテンツをブラウザ上に登録したブックマークレットにより収集する「切り抜き」機能 と、この「切り抜き」と学習者がシステム上で書き込んだ「書き込み」からキュレーション成果 物を作成する「ストーリーシート」機能からを構成する(図 2 参照)。インターネット上の情報を 簡易な方法で引用しながら、学習者独自の視点に基づいた成果物を構築するコンテンツキュレー ション機能は、学習支援システム LePo の独特の機能になっている(現在、科目を限定して運用中)。

今回の実践ではこの機能を活用し、教授者が指定したテーマに基づき学習者がストーリーシート を作成した。また、ストーリーシートを他の学習者と共有し、内容に対する意見をコースふせん に記述するなどの相互評価も行った。ストーリーシートについては、授業最終回に実施したプレ ゼンテーションの構成を考える際にも活用した(同機能の詳細は参考資料[4]を参照)。

3. 実践の結果

授業最終回に履修者を対象に実施したアンケートの主な結果を表 1 に示す。アンケートは 7 件 法(7 非常に当てはまる〜 1 全く当てはまらない)で実施した。まず、予習動画の視聴状況を確 認する設問 1 からは、平均 23 分の予習動画を全て視聴したと回答した学生が多いことが分かる。

この高い値は予習課題と授業での活動が、予習動画の内容を踏まえたものにしたことが大きく影 響したものと思われる。また、設問 2 の結果からは、講義を対面の授業ではなく動画で視聴した ことへの不満は小さいことも確認できた。予習課題で利用したコースふせんは、容易に利用でき た(設問 3)だけではなく、学習への主観的な効果も確認できた。授業時間に行ったコンテンツキュ レーション活動については、学習を進める上での効果は、コースふせんを用いた活動と同程度に 高い(設問 6)のに対し、使い方については改善の余地があることも示唆された(設問 5)。

また、授業における一斉講義を減らし、学習者が個々に予習動画を聴講し、コースふせん・コ ンテンツキュレーションの活動を取り入れたことで、教授者の主観ではあるが、学習活動に積極

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的に取り組む学習者の割合が、前年度と比較して高い印象を受けた。このことは、課題条件とし て指定した文章量以上に自発的に記述する学習者の割合が高くなっていることなどから、その印 象を強くした。

表 1: 授業最終回に実施したアンケートの結果

設問 平均値(S.D.)

1. 予習動画は最初から最後まで視聴した 6.0 (1.0)

2. 予習の内容は、動画ではなく教室で教師から講義して欲しい 2.4 (1.1)

3. コースふせんの使い方は容易に理解できた 6.8 (0.4)

4. コースふせんを用いた予習課題の共有は、学習を進める上で役にたった 6.3 (0.9) 5. 切り抜き・ストーリーシートの使い方は容易に理解できた 5.9 (1.1) 6. ストーリーシートを用いた授業課題の共有は、学習を進める上で役にたった 6.3 (0.5)

4. おわりに

今回の授業実践では、大学の半期授業に反転授業を導入した。授業後のアンケートでは、平均 23 分の予習動画を最初から最後まで視聴したと回答した学生が多かった。今回の取り組みでは、

システムで動画視聴の有無は記録していないが、予習課題の記述内容から判断しても、妥当な結 果に思われる。この結果や反転授業を導入する以前と同程度の履修の途中放棄率(約 1 割)であっ たことは、今回の授業の履修者にとって、予習を課す反転授業が十分に受け入れられることを示 唆している。なお、この点は今回の実践科目が選択授業であり、授業内容への関心が強い履修者 が多かったと考えられることも、影響した可能性がある。

反転授業を導入した教授者の視点からは、今回は予習動画にインターネット上の関連動画を積 極的に活用したこともあり、反転授業導入前と比べて授業準備そのものは大きな負担にならな かった。授業時間における学習者主体の取り組みについては、今回はコンテンツキュレーション 活動を主に取り上げた。今後、学習者主体の活動に関する先行研究を参考にしながら、コンテン ツキュレーション活動を、より学習者に有益になるように機能・運用面での改善を進めていきた いと考えている。

参考資料

[1] ジョナサン・バーグマン,アーロン・サムズ,“反転授業”,オデッセイコミュニケーションズ,2014 [2] LePo, http://lepo.info/

[3] 吉崎弘一,“学習支援システム LePo を用いた学習者へのフィードバック促進”,秋田大学総合情報処 理センター広報誌 17 号,pp. 10-13, 2014

[4] 吉崎弘一,堀田博史,“コンテンツキュレーション機能を持つ学習支援システムの試作”,情報処理学会 第 77 回全国大会講演論文集,4, pp. 521 - 522,2015

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参照

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