『ハムレット』の二つのエスペラント語釈に見る エスペラント語の造語法
‑カテゴリーを表す接尾辞‑
TheWo r dFor ma t i oni nEs pe r a n t o a sse e ni nTwoTr a ns l a t i o nsof Haml e t
( LaEs pe r a n t aVo r t f a r a d oVi d a t ae nDuTr a d u k o jd eHa ml e t o)
野 呂 俊 文
( To s hi f u mi No r o )
目次
1.エスペ ラン ト語について 1.エスペラン ト語 とは 2.文学作品のエスペラン ト語翻訳 3.自然言語 と人工言語
4.エスペ ラン ト語の特徴 5.エスペ ラン ト語の造語法 6.エスペ ラン ト語の単語の構造 7.エスペ ラン ト語における単語の創作
ⅠⅠ.『ハム レッ ト』のエスペラン ト語釈
1.ザメンホフ訳 とニューエル訳に見 るエスペ ラン ト語 2.二つの翻訳間の語嚢の隔た り
ⅠⅠⅠ.カテゴリーにかかわる接尾辞
1. 「行為」、r物」、「性質」、「人」を表す接尾辞 2. ・AD (行為を表す)
3. ・A3(物を表す) 4.・EC(性質を表す) 5. ・UL(人を表す)
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Ⅰ.エスペラン ト語について
1.エスペラン ト語 とは
エスペラン ト語はザメンホフによって創案 された言語である。ポー ラン ドの眼科 医ザメンホフ(LudwikLejzerZamenhof)(1859‑1917)は1887年 に40ペー ジの 小冊子 を発行 し、彼が創案 した言語 を世に発表 した。ザメンホフはDr.Esperanto
とい うペ ンネームを使用 したため、 この新 しい言語は 「エスペ ラン ト博士 (医師) の言語」と呼ばれ、やがてエスペ ラン ト語 と呼ばれ ることになった。Esperantoと は 「希望す る者」の意味であるが、作者のペ ンネームがそのまま言語名 となってい ったのである。
この小冊子は1887年にロシア語、ポーラン ド語、フランス語、 ドイツ語 の4つ の版で出版 され、翌年1888年には‑プライ語の版が続いた。1888年 に英語版 も出 版 されたが、訳がまずかったためす ぐに廃刊 とな り、1889年に別の人の英訳 で再 出版 された。同 じ1889年にはス ウェーデ ン語 とイデ ィッシュの版が出版 され た。
この小冊子にはこの言語の起源 と原則、この言語の実例、6ペー ジにわた る文法、
簡単な語嚢集な どが含 まれていた。
1888年にザメンホフは2冊 目の小冊子DuaL4'bL10del'11'DgV101'ntemacL'a(国際言 語の2冊 目の書)を今度はエスペ ラン ト語で発表 した。 この小冊子には最初 の小冊 子の読者か ら寄せ られた批判に対す る返事や、アンデルセ ンの童話Laombro(影) のエスペ ラン ト語釈、15のことわ ざ、2つの詩のエスペラン ト語訳な どが載せ られ ていた。
この2冊 目の小冊子の補遺で
Tiu色ilibretoestaslalastavorto,kiunmi elparolasenrolodeaatoro.De tiueitagolaestontecodel'lingvointernacianeestasJamPlimulteen mlaJmanOj,olenlamanojde丘iaaliaamikodelasanktaideo.Nidevas nunc人l●q egalelabori,aiula丘siafort0....Nilaborukajesperu!
この小冊子は私が作者 として発言す る最後のことばである。今 日とい う日か らこの国際言語の未来は私の手の中にあるとい うより、聖なる考えのすべて の他の友の手の中にあるのである。我々は全員が平等に自分の力に応 じて働 かなければな らない。 (…)働 き、希望 しようではないか !
とザメンホフは述べたが、この宣言によってザメンホフはエスペ ラン ト語の作者 と しての権限を放棄 し、エスペ ラン ト語はこの言語を使用す る人々のものとなってい くことになるのである。
2.文学作品のエスペラン ト語翻訳
ザメンホフの考えは単に基本的コミュニケーシ ョンに使用できる言語を作 ると い うことではなく、一つの完全な言語 を作るとい うことであった. したがって文学 も最初か ら一部分 として考 えられていたのである。ザメンホフ以外の人が最初 に出 版 したエスペラン ト語の出版物はAntoniGrabowski訳のプーシキンの短編 「吹雪」
であった.ザメンホフはある人か らCharlesDickensのT:heBattleofLL'leの ドイ ツ語訳を見せ られ、これ をエスペ ラン ト語に訳す ことはできないだろ うと言われた ので、この考えが間違 っていることを示すために、この作品をエスペ ラン ト語 に翻 訳 して出版 した。
エスペ ラン ト語の活動は教科書の作成に全力を傾 けるべ きであって、文学作品の エスペ ラン ト語‑の翻訳は時間の無駄であるとい う意見 もザメンホフのもとに寄 せ られた。 これに対 してザメンホフは、
LernolibroJ,anOnCado,k.t.p.estasnecesaj,sedliteraturoestasanka丘 necesa,nemalpli,sedeemultepli.
教科書、宣伝な どは必要であるが、文学 もまた必要であ り、よ り少な く必要 なのではなく、それ ら以上に必要なのである。
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と答 え、主要文学作品の良い翻訳ほど説得力を持つ ものはない と述べてい る。 この よ うな時期 の1894年に 『ハム レッ ト』のザメンホフによるエスペ ラン ト語釈が出 版 された。これはエスペ ラン ト語 とい う言語が最初に発表 されてか ら 7年 目の こと であった。 この翻訳 によって、文学作品不要論のよ うな論争 は収まることにな り、
エスペ ラン ト語の活動にも活力が生み出 された。
ザメンホフが彼 の最初の主要な翻訳 として 『ハム レッ ト』を選んだのは、シェー クス ピアが偉大 と見なされていた作家であ り、またシェークス ピアの作品の中でも
『ハム レッ ト』が最 も言及 され ることの多い傑作 と見なされていたか らであった。
『ハム レッ ト』では散文の箇所 と韻文の箇所があるが、ザメンホフはその翻訳の中 で弱強五歩格 (iambicpentameter)の韻律 を完全に使いこな してお り、この韻律 を エスペ ラン ト語に根付かせ ることとなった。このよ うに してこの言語ができてか ら わずか 7年 に してエスペ ラン ト語は世界の最高傑作が表現できる言語 となったので ある。
この 『ハ ム レッ ト』の翻訳は戯曲作品の本質を流ち ょうなェスペ ラン ト語 の詩行 で表現 した ものであって、必ず しも細かな点まで1語1句を忠実に移す ことを 目的 に した ものではなかった。ザメンホフ訳の 『ハム レッ ト』が出版 されてか ら68年 後の1962年 にL N.M.Newell(ニューエル)によって新たな 『ハム レッ ト』 のエ スペ ラン ト語‑の翻訳がな され ることになる。ニューエルはザメンホフとは異 な り、
原作‑の忠実 さを強調 した翻訳を作 り上げた。ニューエル訳によってザメンホフ訳 が取って代 られた とい うことではな く、二つの翻訳はそれぞれの特徴 を持ち、それ ぞれの良 さを持っている。
同一の作品が異 なる訳者 によってエスペ ラン ト語 に翻訳 されている例 としては、
他 にルイス ・キャロルの 『不思議の国のア リス』やェ ドガ一 ・アラン ・ポーの 『ア ッシヤー家の崩壊』な どがある (脚注).
DonaldBroadribb,trad.,LaAy印tUrOjdeAh'coeDML'Llando E.L Kearney,trad.,血 A搾ntutOjdeAJJ'cJoeDML'LlaDdo EdmundGrimleyEvanS,trad.,LaFaJodeLaDomoUsher EdwinGrobe,trad.,LaFalodeUSeL10・Domo
エスペ ラン ト語訳 『ハ ム レッ ト』に引き続 いて、ザ メンホフは次 々 と文学作品の エ スペ ラン ト語翻訳 を発表 していった。 ゴー ゴ リの 『検察官』(1907)、モ リエール の 『ジ ョル ジュ ・ダンダン』(1908)、ゲーテの 『タ クリス島のイ フィグ‑ ニエ』
(1908)、シラーの 『群盗』(1908)、旧約聖書 (1908)、ElizaOrzeszkowaの 『マル タ』
(1910)な どであった。
その後い ろいろな訳者 に よって世界の様 々な文学作品がエスペ ラン ト語 に翻訳 され ていった。また翻訳だけではな く、エスペ ラン ト語 で文学作品 も創 作 され るよ うになった。 日本 の文学作品でエスペ ラン ト語 に翻訳 され ているもの も数 多 くある。
た とえば、次の よ うな作品がェスペ ラン ト語 に翻訳 されてい る。芥川龍之介 「河童」,
「鼻」,「トロッコ」,「杜子春」、石川啄木 「一握 の砂」、 「悲 しき玩具」、井上靖 「楼 欄 」、 「異域 の人」、川端康成 「雪国」、木下順二 「夕鶴」、谷崎潤一郎 「春琴抄」、太 宰治 「ヴィヨンの妻」、中島敦 「山月記」、「名人伝」、「李陵」、森鴎外 「舞姫」、 「高 瀬舟」、 「山撒太夫」、「安部一族」、「文遣 い」、夏 目淑石 「薙路行」、樋 口一葉 「おほ っ ごも り」、 「わかれ道」、 「十三夜」、 「たけ くらべ」、星新一 「傑作 シ ョー トシ ョー
ト選」、宮沢賢治 「セ ロ弾 きの ゴーシュ」、 「注文の多い料理店 」その他 、西鶴 「好 色五人女」や 「万葉秀歌選」、「アイヌ神話集」な どその他多数の作品のエ スペ ラン
ト語訳 があ る。
3.自然言語 と人工言語
エスペ ラン ト語 はザメンホフとい う一人の人が作 り上 げた と言語 とい う意 味で は人工言語 であ る。では 日本語や英語な どのいわゆる 自然言語 とェスペ ラン ト語 と の間に、何 か本質的 な違いが存在す るのであろ うか。言語 としての機能の点 か ら見 た場合 、本質的 な違 いは何 も存在 しない と言 える。今 日ではエスペ ラン ト語 の母語 話者 も存在す ることが知 られている。これ は両親 が異なる少数民族の言語 の母語話 者 であって、エスペ ラン ト語 を通 じて結婚 し、生 まれた子供 にエスペ ラン ト語 で話 しかけた よ うな場合 に起 こる。あるいは父親が意図的に常にエスペ ラン ト語 で子供 に話 しかけて育てた場合な どに も、子供はエスペ ラン ト語 の母語話者 とな る。その
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よ うな場合、子供は友達が話 し、学校で も使用 されているその土地の言語のネイテ ィブス ピーカーにもなるので、必然的にバイ リンガル となる。子供はふつ う友達 と 同 じ話 し方 をしたがるものであ り、自分が一緒に遊ぶ子供たちがェスペ ラン ト語 を 話 さないので、エスペ ラン ト語で話す ことを嫌がるとい うことも報告 されている。
ただ言語 としてはエスペラン ト語は 自然言語 とまったく異な らないのである。
自然言語 といえども、必ず しも自然に発達 して今 日のよ うな姿になってい るわけ ではない。た とえば、古英語 をい くら詳細に観察 してみても、その言語が今 日の英 請‑ と変化 してい くことは、おそ らく誰にも予測できないであろ う。古英語 と現代 英語 とでは特にその語嚢において相違が大きい。古英語の語桑が 自然に変化 して現 代英語の語嚢 となったわけでは決 してない。古英語の語嚢の85%は失われ、フラン ス語系などの語嚢に取って代 られた と言われている。すなわち現代英語の語嚢の大 半は外来語で成 り立っている。エスペ ラン ト語の場合、100%が他の言語か ら取 り 入れ られた語根で成 り立っているが、英語 と比べた場合、それは単なる程度 の違い にす ぎず、本質的な相違ではない。 自然言語 といえども多 くの場合、自然に発展 し 変化 してい くわけではなく、文化的、政治的などの要因によって激 しく影響 を受け ることがある。 したがって 自然言語 と人工言語 とい う区別 も、後者がある個人によ ってある時点で創案 された言語であることを表すだけで、それ以上の意味を持つわ けではない。今 日世界中には6千 くらいの言語が存在す るとも言われているが、エ スペ ラン ト語は 日本語や英語 と同様、その うちの一つなのである。
4.エスペラン ト話の特徴
エスペラン ト語 とい う言語の特徴 を考えた場合、その大きな特徴 とは何で あろ う か。そのきわだった特徴は次の2点ではないだろ うか。
(1)規則的であって、原則的に例外が存在 しないこと。
(2)造語能力がきわめて優れていること。
まず (1)の例外が存在 しない ことは、エスペ ラン ト語の大きな特徴である。原則 的には、発音にも例外 とい うものはな く、(外国語の固有名詞などのスペ リングは別 として)スペ リングに も例外 はな く、文法にも例外はない。エスペ ラン ト語文法の 基本は16条の文法規則 に集約 されていることか らもわかるよ うに簡単な ものであ る。 したがって、エスペ ラン ト語学習者 は、英語学習者のように不規則動詞 の変化 や不規則な複数形な どによって悩まされ ることはない。
次に (2)の造語能力に関 してであるが、エスペ ラン ト語では語根 はほぼすべて他 の言語 か らの借用語であるので、ここで造語 とい うのは、語根 を使 って派生語や合 成語 を作 り出 してい く能力のことを指す。エスペ ラン ト語では語根 を組み合 わせた り、接頭辞、接尾辞、品詞語尾 によって派生語や合成語 として独 自の語嚢 を作 り出 してい く。通常、外国語の学習者 に とって大変なのは語嚢の習得である。エ スペ ラ ン ト語ではこの語嚢習得の労力を軽減す るために、接頭辞や接尾辞によって容易に 派生語 を作 り出せ るよ うになっている。接辞によって語 を10倍程度 にも増やす こ とができるので、もし500語を覚えれば、5000語 を暗記 したの と同 じ効果 を持つ とも言われ る.したがってエスペ ラン ト語の造語法はその文法の一部分 と言 って も よく、入門書や文法書には接頭辞、接尾辞 を中心 とした造語法の説明が必ず含まれ ているoエスペ ラン ト語の本格的な文法書 としてはK.Kalocsay,G.Waringh ien, PleLZaADall'zaGLTamat)'boとBertiloWennergren,1YeDaMaDIL'bz10deEspeLlanta Gramat)'hoがあるが、前者の場合、本文490ページ中162ページが、後者 の場合、
本文652ページ中116ページがそれぞれ造語法に当て られている。す なわ ち、前者 では33%が、後者では17.8%が造語法の記述に費や されていることになる。
5.エスペラン ト語の造語法
エスペ ラン ト語の単語には品詞語尾を付けて使用する語 と、語尾な しに語根 のみ で使用 され る自立語根 とがある。大多数の語は品詞語尾 を付けて使用 され る名詞、
形容詞 、副詞、動詞の4品詞であ り、これ らは品詞 によって語尾が決まってい る。
名詞には ・O、形容詞 には ・a、副詞 には ・e、動詞には・iとい う品詞語尾が付 く。
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例を挙げれ ば、名詞amiklo(友)、形容詞bella(美 しい)、副詞bonte(良く)、動詞 parolli(話す)な どで、これ らの語尾を取 り去った残 りの部分が語根である。複数 の語根 を持つ合成語などの場合は、語尾 を取 り去った残 りは語幹 と呼ばれ る。動詞 の場合、不定形の形が ・iで、直説法では現在は ・as、過去は ・is、未来は ・osであ り、仮定法は ・us、命令法は・uとなる。動詞の場合、 これ ら6個の語尾のいずれ かが付 くことになる。すなわちェスペ ラン ト語の名詞、形容詞、副詞、動詞 の4品 詞 には、‑0,・a,‑e,・i,・as,・is,・os,・us,・uとい う9種の語尾のいずれかが付 くことに なる。
一方、品詞語尾を付けずにそのまま用いることのできる語根が160個 くらいあるO これ らは 自立語根 と呼ばれ る。これ らは頻繁に用い られ る機能語であ り、原形副詞 (nun今、hodia丘今 日)、代名詞 (mi私、li披)、冠詞 (laその)、前置詞 (a1‑‑、
sur〜の上に)、相関詞 (kioなに、tieそこで)、接続詞 (kajそ して、seも し)、数 詞 (unu一、du二)、間投詞 (hoおお、haあっ)な どである。
英語では、た とえば、takeの過去形がtookにな り、mouseの複数形がmiceに なるな どの ように語根 自体が変化す る場合があるが、エスペ ラン ト語の語根 はそれ 自体は決 して変化す ることがない。エスペ ラン ト語では語根は積み木の最小ブロッ クのようなものであ り、それ 自体は変化せず、他の要素 とかな り自由に結びつ くこ とができる。
エスペ ラン ト語では意味が許す限 り、品詞語尾 を別の品詞語尾に変 えて、簡単に 品詞 を転換す ることができる.た とえば、kura引a(勇敢な)とい う形容詞 は、品詞 語尾 を変 えることによって、kn ra引e(勇敢に)とい う副詞や、kn ra針o(勇気)と い う名詞や、kuragIi(あえて〜す る)とい う動詞 に転換す ることができる。あるい はbroslo(ブラシ)とい う名詞は語尾を変 えることによってbroSli(ブラシをかけ る)とい う動詞 とな り、konstruJi(建築す る)とい う動詞はkonstrulo(建築)とい う名詞やkonstrula(建築の)とい う形容詞 となる。
この品詞語尾によって品詞を転換できる自由さは、通常は語尾を持たない 自立語 根にも及ぶ ことがある。品詞語尾を付けることによって、原形副詞のnun(今)は
nunla(今の、現在の)とな り、tro(あま りにも)はtrola(過度の)とい う形容詞 やtrole(余計に)とい う別の副詞に変わるoanta丘(〜の前に)とい う前置詞は anta引 a(以前の)とい う形容詞や、antaufe(前もって)とい う副詞や、anta引 i (前にある、先行す る)とい う動詞などに変わる。 丘ial(なぜ)とい う相関詞は kiallo(理由)とい う名詞にな り、tiam(その時)とい う相関詞はtiamla(その時の)
とい う形容詞になる。du(二)とい う数詞はdula(二番 目の)とい う形容詞 とな り、
unu(‑)とい う数詞 はunulo(単位)とい う名詞 となるoまたve(ああ)とい う間 投詞はvelo(嘆き)とい う名詞や、veli(嘆 く)とい う動詞になるといった具合であ る。
6.エスペラン ト語の単語の構造
語尾を持つ名詞、形容詞、副詞、動詞の 4品詞は語嚢の大多数 を占めるが、これ らの語の場合、最 も簡単なものは語根に品詞語尾を付けた 「語根 +語尾」の形 とな る。エスペ ラン ト語では原形副詞を除いて、これ らの品詞の語では必ず品詞語尾が 付 くことになる。語根に接頭辞や接尾辞が付いて派生語を形成する場合 も多い。そ の場合、「壷盤 +接尾辞 +語尾」、「接頭辞+豊艶+語尾」、「接頭辞+重畳 +接尾辞 +語尾」な どの形になる。長い語の場合、接尾辞を2個付けて、「接頭辞十重盤 + 接尾辞 +接尾辞+語尾」のような形になることもある.た とえばmallsanlul Iejlo
(病院)では、sanが中心的意味を持つ語根で、malが接頭辞で、ulとejが接尾辞 で、Oが語尾であ り、sanla(健康な)‑mallsanla(不健康な)一maltsanlullo(柄 人)‑malIsanlulJejlo(病院)とうい過程を経て語ができている。あるいは reJSanJigJeblla(健康を回復できる)とい う語 も、1個の接頭辞 と2個の接尾辞 と い う同 じ構造を してお り、sanfa(健康な)‑Sanligli(健康にす る)‑relsanfigJi (健康を回復 させ る)‑reJsanligleblJa(健康を回復できる)とい う過程を経 てでき ている。
1個の語根の代わ りに2個あるいはそれ以上の語根を持つ語が合成語 とい うこと になる。 しか し、エスペラン ト語では接頭辞や接尾辞などもすべてある意味では語
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根であ り、逆に語根 も接頭辞などとして使用 され るため、派生語 と合成語の 区別は 唆味になることが多い。語根 と語根を組み合わせ る場合、通常は、語根 と語根 を直 接組み合わせて 「蓮盤 +壷盤 +語尾」のような形になる.た とえば、bildlo(絵)と kartlo(はがき)か らはbildlkartlo(絵はがき)ができ、naturlo(自然)と scienclo(科学)か らはnaturlscienclo(自然科学)ができる.語根 を直接っ なげる と子音が連続 して発音 しづ らくなる場合は、それを避けるためにつなぎ母音 (主に
・O‑、ときに 甘 や ・i・)を挿入することもある。た とえば、lernli(学ぶ)とlibrlo
(本)か らIernlollibrlo(教科書)が作 られ る.この場合、発音 しやす くす るために つなぎ母音の ・o・が挿入 されている。しか し、つなぎ母音 を入れ るか どうか につい ては厳密な規則はなく、場合によっては語形の揺れを生 じることがある。
7.エスペラン ト話における単語の創作
エスペ ラン ト語ではある程度の接頭辞や接尾辞などに関す る造語法の知識 はテ キス トを読む場合に必須 となる。英語などにおいては、テキス トで使用 され ている 語は固有名詞を除けば、辞書に記載 されているのが普通である。 しか しエスペ ラン ト語の場合、合成語は当然のこと、派生語でも辞書に記載 されていないことがある。
そのような場合、読者は単語 を接頭辞、語根、接尾辞、語尾などに分解 して、辞書 に記載 されている語根か ら接頭辞や接尾辞の知識を駆使す ることによってその語 を理解することになる。逆に、文章を書 く場合 も、必要に応 じて語根に接頭 辞や接 尾辞を付け加 えて、自分で単語を創作 しなが ら書 くことになる。これは英語 な どの 場合 と比べて大きな違いではないだろ うか。英語でもシェークス ピアのよ うな独創 的な作家の場合、自分で単語 を作 りなが ら文章を書いていると思われ る場合 がある。
しか しそのような創作 された単語の数はさほど多 くはなく、また通常の人が書 く際 に単語を創作 しなが ら文章を作 るとい うことはあま りない。しか しエスペ ラン ト語 においてはこの語の創作 とい うことが絶えず起 こりうる。エスペ ラン ト語で書 く人 は接頭辞や接尾辞を駆使 し、あるいは語根 と語根 を組み合わせて、必要な単語 を作
り出 しなが ら文章を書 くことになる。
エ スペ ラン ト語辞書 の見 出 し語 の配列 には2種類 あ る。英語 な どの辞 書 と同 じア ル ファベ ッ ト順 に記載 され てい る単語 主義 の辞書 と、も う一つ は語根 がアル フ ァベ ッ ト順 の見 出 しとな り、そ の語根 か ら派生 した派生語や合成語 をそ の見 出 しの もと に集 めた語根 主義 の辞書 とで あ る。『ェ スペ ラン ト小辞典』 (大学書林)の よ うに前 者 の形 式 の もの もあ るが、主要 なエスペ ラン ト語 の辞書 には後者 の語根 主義 の形式 の辞書 が多 い. た とえば、1YeDaLlustn'taVortaL10deEspeLTaDtO2005,PleDa
VwtaL・odeEspe)・aDtOhunSuplemeDtO、Butler,ed.,EspezTaDtO‑EDg:ll'sh DIctJ'oDaL・Y,『ェ スペ ラン ト日本語辞典』、『新選 エス和辞典』 な どは語根 主義 で あ
り、語 根 を中心 と して見出 し語 がま とめ られ てい る。 これ はエ スペ ラン ト語 が語根 を中心 と して派 生語 を簡 単 に作 りうる言語 であ るこ との一つ の表れ で あ ろ う。
Ⅰ Ⅰ .
『ハム レッ ト』のエスペラン ト語訳1.ザ メ ンホ フ訳 とニ ュー エル訳 に見 るエスペ ラン ト語
『ハ ム レッ ト』 の 1幕 2場 129行 目か らのハ ム レッ トの独 白を例 に とって接 頭 辞や 接尾 辞が どの よ うに使用 され てい るか を見てみ よ う。(なお 、エ スペ ラ ン ト語 では 合 は 【d3】音 を、jは 【3】音 を、会は
U l
音 を、色は 【tJl音 を、Cは 【ts】音 を、jは b】音 を表 し、ま たa a
や e正 な どは二重母音 を表す。)原 文
0,thatthisbotoosolidmeshwouldmelt, Thawandresolveitselfintoadew!
OrthattheEverlastinghadnot丘Ⅹ'd Hiscanon'galnStSelf・slaughter!0God!God!
Howweary,stale,flatandunDrOfitable, Seem tomealltheusesofthisworld!
Fieon't!ahfie!'tisanunweededgarden,
Thatgrowstoseed;thingsrankandgrossinnature
= illニ
Possessitmerely.
ああ、 このあま りにも硬い肉体が 崩れ溶 けて露 と消えてはくれぬ ものか ! せ めて 自殺 を罪 として禁 じた もう
神 の按がなけれ ば。 ああ、 どうすれ ばいい ! おれ にはこの世のい となみのいっ さいが
わず らわ しい、退屈な、むだなこととしか見えぬ。
いやだいや だ !この世は雑草の伸び るにまかせ た 荒れ放題 の庭だ、胸のむかつ くよ うな ものだけが の さば りはび こっている。
ザメンホフ訳
Ho,kialne軸 辿塑型旦korpo, Nedis皿ud合askielpolv'envento!
Sin mem ppr̲tigikialmalpermesis LaPle麺otenca!Dio由grandaT.
Ho,kiel虫 垂由kajabomemindaj A●●
Aperascluュaggidelamondol. A
Fi,丘1.Gardenoplenadevenenai 妙 !由 herboj,tiesenescepte!
(小 田島雄志訳)
ニューエル訳
Ho,seeitromakulakarn'Sinfandus, 拠 ,kajsinsolvusen担堕担麺!
A丘sel'Eternanebarintaestus Per由 Ie合'lasinmortigon!Dio!
K
iomenuaj,tedaj,kaj声e̲n=Pe=!由
SaAjnasalmi lamorojdeeimondol.
Fi!Estasei倉ardeno̲neβark皇祖;
tie̲r=b̲a̲e=Qikrudaj,la丘natur'vulgaraj, GiAnPlenokupas.
ザメンホフ訳 を例に とって韻律 を見てみ ると、つぎのよ うな弱強五歩格 となって い ることがわかる。
Ho,kilalnetfandi引ashomlakorplo, Nedislflugi引askilelpollv'enventlo!
各行 は 「弱強 は弓強 I弱強 l弱強 t弱強 は弓」 とい う11音節 になっている。エスペ ラン ト語の場合、ふつ う単語の語末はアクセン トのない品詞語尾で終わるので、韻 文の各行末は 「弱強弱」とい う女性韻で終わることになる。またエスペラン ト語の 韻文では韻律の都合で名詞語尾の ・O、あるいは定冠詞 laの ‑aを省略す ることが 認 め られている。ザメンホフ訳に見 られ るpolv'、またニューエル訳に見 られ るkarn'、 Ie会'は名詞語尾の ・Oが省略 されたものであ り、ニューエル訳の l'EternaはIa Eternaの意味である。
上に引用 したシェー クス ピアの原文は、たまたま合成語や派生語が比較的多 く見 られ る箇所である。Everllastinigとself・slaughterは合成語であ り、
unJprofitlableとunlweedJedは派生語であるO英語の場合、派生語 もたいてい は固定 した形 となっていて、ふつ うすでに辞書に登録 されてい る形以外は認 め られ ない。 自由に造語に使用できる接頭辞や接尾辞 としては、否定の接頭辞のun・や、
副詞 を作 る・ly、名詞 を作 る・nessな どの接尾辞な ど少数のものに限 られ る。 なる ほ ど・ableな どは比較的 自由に使用できる接尾辞ではあるが、 ・ableを ・ibleに変 えてunpro丘tibleとす ることができず、impossibleの ・ibleを・ableに変 えて imposSableとした り、im・をun一に変 えてunpossibleとす ることができない こと
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か らもわかるよ うに、unprorltableやimpossibleはすでに固定 した形なのである.
このよ うに現代英語では接頭辞や接尾辞の自由に派生語を作 り出す能力はかな り 限 られたもの となっている。現代英語 と比べれば、古英語ははるかに豊かな造語力 を持っていたのであるが。
エスペ ラン ト語の場合、すべての接頭辞や接尾辞は意味が許す限 り自由に派生語 を作 り出す ことができる。 したがって派生語の うちのかな りの部分は辞書に記載 さ れていない もの となる。上記の引用文で二重下線 を施 した語は派生語ない しは合成 語であ り、‑本線の下線 を施 した語は品詞語尾を変えることによって元の品詞 とは 異なった品詞に転用 されている語である。
二重下線の派生語ない し合成語は (動詞は不定形で、また名詞、形容詞 な どは複 数形の語尾 ・jや対格語尾の ・nを除いた形で表す と)、ザメンホフ訳では hndli引 i(溶ける)、disfflugli引 i(飛び散る)、mortfigli(殺す)、mallpermesli(禁 止する)、Plejlpotencla(全能の)、abomenfindla(忌まわ しい)、mallbella(醜い)、 senJesceptle(例外な く)があ り、ニューエル訳ではakvli引 i(水 になる)、rosJerlo (露の しず く)、silntmortfigfo(自殺)、senlcella(目的のない)、neJsarklitla(除 草 されていない)、herblaelo(雑草)、plenlokupJi(完全に占有す る)がある.特に エスペ ラン ト語 らしい接辞についてのみ触れ ると、・ie・は自動詞 を作 る接尾辞、・ig・
は他動詞 を作る接尾辞であ り、mal・は正反対の意味を作る接頭辞である。 上記の 両エスペ ラン ト語釈か らも、エスペ ラン ト語では接頭辞、接尾辞を用いた派生語、
合成語の使用頻度が大きいことが見て取れ る。また、これ らの語の うちには辞書に 収録 されていない ものもある.disflug嬉i(飛び散る)、Plejpotenca(全能の)、akvi倉i (水になる)、 nesarkita(除草 されていない)、plenokupi(完全に占有す る)の5語 は、日本語で説明 されている代表的エスペ ラン ト語辞典である 『ェスペ ラン ト日本 語辞典』には収録 されていない語である。 しか し、た とえ辞書に収録 されていな く
とも、これ らの語の意味がす ぐにわかるところがエスペラン ト語の面 白い点である。
‑本線の下線 を施 した語は、必ず しも派生語 とい うわけではないが、品詞語尾を 変えることによって本来の品詞 とは異なった品詞で用い られている語である。mi
(私)‑mi Ia(私の)、homlo(人)‑homla(人の)、bestJo(戟)‑bestla(獣の)、agli (行動す る)‑agJo(行為)、venenlo(毒)‑venenJa(毒の)、si(自分)‑sila(自分の) な どでは品詞語尾が置き換えられた り、追加 され ることによって、品詞が転換 され ている。
エスペラン ト語では複数形の名詞だけでなく、複数形の形容詞にも・j(発音 は音 節 を形成 しない 「イ」音)が付 く。また、エスペ ラン ト語では 目的格であることを 示す対格形があ り、これは ・nで表 され る.複数形が対格である場合は、複数語尾 ・j のあ とにさらに ・nが付いて、・jnとい う形になる。これは形容詞 についても同 じで、
対格の名詞を修飾す る形容詞にも同 じよ うに ・nが付 く。 もし名詞が複数形対格で あれば、それを修飾す る形容詞 も複数形対格 とな り、同様に ・jnが付 くO
ドイツ語などは別 として、英語はもちろん、フランス語、イタ リア語、スペイン 語な どヨー ロッパの多 くの言語が、今 日では代名詞以外の対格形を失って しまって いる。エスペ ラン ト語が対格形を持ち、それが形容詞にまで及ぶ ことは、エスペ ラ ン ト語の文章にある種のいかにも文法的で重い感 じを与えることになってい るこ とは否定できない。しか し逆にそれはエスペラン ト語に明噺 さを与えることになっ ている。 目的格が 一mで明示 され るエスペ ラン ト語では、逆に ・nが付いていない 名詞はそれだけで主格であることがわかるのである。したがってエスペ ラン ト語で は英語のように 「主語 +動詞+ 目的語」とい う語順を必ず しも堅持す る必要 はなく なる。英語 と同様の語順が確かにエスペ ラン ト語でも多いのであるが、エスペ ラン ト語では語順は比較的 自由である。英語の場合、「主語+動詞」の語順が逆転 した 倒置や、目的語が動詞 よ り前に出た文は、英語学習者にある種の緊張を強い るもの である。 しか しエスペ ラン ト語ではこのよ うな語順の転倒 した文でも何の抵抗 もな く理解 される。た とえ 目的語がセ ンテンスの どの位置に置かれ ようとも、対格形に よってそれが 目的語であることが明 らか となるか らである。対格形 を持つ こ とで、
主格は対格語尾の不在によって明示 され ることとな り、またそれ以外の格は前置詞 で示 され るため、結果的にエスペ ラン ト語はラテン語などの格変化 を備 えた言語に 相 当す る格機能 を持つ こととなった。このことによって、エスペ ラン ト語は語順の
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柔軟性 を獲得 し、英語などに見 られ る語順の支配か ら解放 され ることとなったので ある。筆者は、対格形を保持 したことがェスペラン ト語の最大の長所の一つではな いか と考えている。
2.二つの翻訳間の詩集の隔た り
先に引用 した二つの 『ハムレッ ト』のエスペラン ト語訳の引用文を見てす ぐに気 づ くことは、両者の訳に同 じ語があま り見 られず、ほとん どの語嚢が異なっている とい うことである。この両訳書の語費が異なっているとい うことは、これ らの引用 文に限 られ ることではなく、両訳書全体について言えることである。他の言語の作 品か らのエスペ ラン ト語釈ですでに言及 した 『不思議の国のア リス』や 『ア ッシヤ ー家の崩壊』の場合は、異なる2種の翻訳の語嚢にそれほど大きな隔た りは感 じら れない。 したがって、必ず しもエスペ ラン ト語訳だか ら異なる翻訳の語桑が隔たる 傾 向があるとい うものでもなさそ うである。
ザメンホフは語学に堪能な人であった。 ロシア語、イデ ィッシュ、ポーラン ド語 に関 してはネイティブスピーカーであった といってよく、また父親が ドイツ語教師 であったため、ドイツ語 も流ちょうに話せた。フランス語、ラテン語、ギ リシア語、
‑プライ語、英語な どを学習 し、イタ リア語、スペイン語、 リトアニア語に も興味 を持っていた。 しか し英語はかな り後になって学習 したため、それほど堪能ではな かった とも言われている。『ハム レッ ト』 を翻訳す る際にも、 ドイツ語訳、そ して たぶんポーラン ド語釈や ロシア語訳、を参照 した と伝えられている。おそ らく原文 を見つつ、同時に ドイツ語訳などを参照 しなが ら、エスペ ラン ト語に翻訳 していっ たのではないか と想像 され る。これは、今 日でも翻訳者が翻訳する際、他の先行訳 者の翻訳を参照 しながら翻訳す ることがあるのに似ているかもしれない。その結果、
ザメンホフの 『ハム レッ ト』訳は原文の忠実な逐語訳 とい うより、原文の趣 旨をエ スペ ラン ト語で表 した翻訳 となっている。ニューエルのことばを借 りると、 「無数 の美 しい表現をもった明噺で、スピー ド感のある文体」(siaklara,rapidastilo,kaj sennombrajbela30deesprimo)(Newell,p.35)を作 り出 したのである. しか しそ
の反面、翻訳 しに くい難 しい表現な どを抜か していることがある。 これ に対 して、
ニューエルの方 は、より逐語訳に近い 「忠実な翻訳」(fidelatraduko)(p.35)を目 指 した。ある意味で、このことが両訳書の語桑の隔た りに影響 を与えているのかも
しれない。
も う一つ考え られ ることは、後か ら翻訳 されたニューエル訳では、先行のザメン ホフ訳 を強 く意識す るあま り、意識的あるいは無意識的にザメンホフが使用 したの とは異なる語嚢 を使用する方向にはた らいたのかもしれない。 もちろん、これは単 なる憶測に過 ぎない。しか し上に述べたザメンホフの翻訳事情 とニューエルが 目指 した忠実な訳 とい うことを考慮 しても、両訳書間の語嚢の隔た りは大きい と言わざ るを得 ない。先 に見たように、エスペ ラン ト語では派生語や合成語 を使用す る割合 が大 きい。辞書に記載 されていない単語を作 ることも多い くらいであるか ら、たと え同 じ語根 を用いた としても、実際に使用する派生語な どが異なった形になる可能 性は高い。 しか し先に示 した両駅の引用文か らもわかるよ うに、両訳書では語根 自 体が別 のものが使用 されていることが多い。いずれにせ よ、両翻訳のあいだの語嚢 の相違 は大 きいのである。
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カテゴ リーにかかわ る接尾辞 1.「行為」、「物」、「性質」、「人」を表す接尾辞エスペ ラン ト語で頻繁に使用 され る接尾辞に、「行為」、「物」、「性質」、「人」を 表す語 を作 る接尾辞がある.それ らは Iad,・a3,‑ec,・ulの4つであ り、 1Yena ALZall'zaGL・amatJ'bo(p.438‑)は、これ らが抽象物の 「行為」、r性質」と具象物の
「物」、「人」とい う最 も一般的なカテ ゴリーを表す語 を形成す るとい う意味で、そ れ らをカテゴリーにかかわる接尾辞 と呼んでいる。 これ らの接尾辞に名詞語尾 ・O
を付 けた ・ado,・ajo,‑eco,・uloについては、・ado(行為)と・eco(性質)が抽象名詞を 作 り、・a30(物)と‑ulo(人)が具象名詞 を作る.
以下の記述で、該当す る接尾辞がテキス トで何回使用 されているかを記 した場合 がある。ザメンホフ訳 とニューエル訳全体か ら主な派生語、合成語をほとん どすべ
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て拾ったっ もりであるが、思わぬ見落 としがあるかもしれない。 したがって使用頻 度を示す数字は厳密な数 と言 うよりも、「少なくともそれだけの数」 とい うくらい の意味で理解 していただけると有 り難い。また接尾辞の使用頻度 を数 える場合、同
じ単語が複数回使用 されている場合は全体で1回 と数 えた。なお、単語の前 に
★印を付けた箇所があるが、この小論ではザメンホフ訳およびニューエル訳 の両方 に見 られ る語 とい う特殊な意味で使用 したので、その点ご了解いただきたい。
lad,・a3,一ee,・ulの4つの接尾辞は重要な接尾辞であ り、『ハム レッ ト』の二つの エスペ ラン ト語訳においても使用頻度の点で上位に来る。使用頻度はザメンホフ訳 では、・adが81回、・a3が42回、・ecが53回、・ulが30回であ り、ニューエル訳 では・adが24回、‑a3が49回、・ecが25回、・ulが64回である。ザメンホフ訳 では・adの使用頻度がニューエル訳 と比べて3倍以上 と突出 して大きいが、これは 初期のエスペ ラン ト語において ・adが多用 され る傾向があったためであると考え
られる。次にこれ らの接尾辞をす こし詳 しく見ていきたい。なお、これ ら接尾辞に ついての記述は主にPleDaADall'zaGLTamatl'ko、PleDaMaL211'bL10deEsperaDta GLlamatl'ho、『ェスペ ラン ト日本語辞典』の3書に従った。
2. ・AD(行為を表す)
(1)・adoが名詞語幹に付 く場合。
たとえばkronlo(王冠)か らkronlad暮o(戴冠)、broslo(ブラシ)か らbrosIadlo (ブラッシング)等の名詞ができる。 これは
kronlo(王冠)‑kronli(王冠をかぶせ る)‑kronladlo(王冠をかぶせ ること) broslo(ブラシ)‑brosfi(ブラシをかける)‑broslao(ブラシをかける こと) とい う過程 を経ていると考えられ、名詞がいったん動詞の意味を持 ち、それ が さら に名詞化 されている。
(2)・adoが形容詞語幹に付 く場合。
た とえばverdta(緑の)か らverdladlo(緑であること)ができ、utilla(有用な) か らutilladlo(有用であること)ができる。 これ らも
verdJa(緑の)‑verd暮i(緑である)‑verdladfo(緑であること) utilla(有用な)‑utilJi(有用である)‑utilJadlo(有用であること) とい う過程 を経てお り、いったん動詞化 されてか ら、それが さらに名詞 になってい ることがわかる。
(3)・adoが動詞語幹に付 く場合。
ふつ う動詞語根の語尾である・iを名詞語尾の ・Oに変えれば、名詞形がで きるの で、・ado形は冗語的 とも言 えるが日 次のような場合に用い られ る。
a) 「行為の結果や産物」ではな く、「行為」そのものを示す。
た とえば、Skribladlo(書法)(書き物ではなく)、konstruladfo(建設)(逮 築物ではな く)、kantladlo(歌 うこと)(歌ではなく)、pensladlo(思考)(考 えではな く)等のよ うに ・adoは行為を表す。
b) 「行為の継続」を表す。
na引 adlo(競泳)、flug暮adJo(飛行)、man針 adJo(食事)な どでは行為 の継続が示 されている。
C) 「行為の反復」を表す。
pafladfo(射撃)、batlallo(戦闘)な どでは、瞬間的動作 を表す動詞に ついて 「反復」を表 してい る。 これ らの名詞の語尾 を動詞語尾 ‑iに変 えれ ば、「反復」を表すpafJadli(射撃を行 う)、batJal暮i(戦 う)な どの動詞が できる。
(4)動詞語幹に ・adiが付 く場合。
・adiは動詞語幹に付いて 「継続」や 「反復」を表す動詞を作る.た とえば、irladJi (行 き続ける、通 う)、pafladli(撃 ち続ける、何度 も撃つ)、man引 adli(食べ続け る)、batJadli(何度 も打つ)、lernJadJi(学び続ける)などであるo
(5)・adoが前置詞や間投詞に付 く場合。
た とえばanstata丘(〜の代わ りに)やsuper(〜の上方に)とい う前置詞 か ら anstata引 adlo(代わ りをす ること)やsuperJadlo(優勢であること)がで き、vivu (万歳 !)やhura (万歳 !)か らvivuladlo(万歳を唱えること)やhurladlo(万
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歳 を唱 えること)ができる.これ らの場合も、anstata引 i(代わ りをする)、superli (〜に優 っている)、Vivuli(万歳を叫ぶ)、hura暮i(万歳を叫ぶ)などの動詞を経由し てこれ らの名詞が作 られていると考えられる。
(6)形容詞語尾 ・aを付けた形。
・adoの語尾を・Oか ら・aに変えて ・adaとした形容詞形にす ることも可能である。
た とえば、kronladlaprocesio(戴冠式の行進)、brosladlabruo(ブラッシングの 騒音)などである。ただ し、ザメンホフ訳にも、ニューエル訳にもこれ らの形容詞 形は見 られない。
ザメンホフ訳の場合、・ad形の大多数は動詞語幹に・adoを付けて名詞化 したもの (上記 (3)の種葬)であ り、これ らは行為、継続、反復な どを表 している(48例)0
agado(活動)、alestado(臨席)、apla丘dado(拍手喝采)、atakado(攻撃)、 batalado(戦い)、belskribado(美 しい筆記)、bruado(騒ぎ立てること)、 'drinkado(飲酒)、ekparolado(発言)、fanfaronado(空威張 り)、farado(行 動)、forgesado(忘却)、fruktoportado(実 り多いこと)、gardado(見張 り)、 imagado(想像)、3urado(誓い)、kalkulado(計算)、kagado(隠 していること)、 komprenado(理解)、kreskado(成長)、kurado(走行)、la丘dado(賞賛す るこ
と)、ludado(演技)、★nesciado(無知)、★pafado(射撃)、palpado(手探 り)、 parolado(演説、談話)、pekado(罪)、penado(努力)、pensado(思考)、 persistado(根気)、petolado(たわむれ)、promesado(約束)、rampado(這 う こと)、regalado(もてな し)、restado(滞在)、ripetado(反復)、sciado(知っ ていること)、sindetenado(自制)、sinforgesado(自分を忘れ ること)、 sintenado(態度)、★skermado(フェンシング)、sonorado(鳴 り響 き)、suferado (苦 しむこと)、suspektado(疑っていること)、uzado(使用法)、versofarado(詩 作)、vivado(生活) (★印は両訳書で使用 されている語)
これ らの うちgardladlo(見張 り)はgardloと同義であ り、komprenJad]o(哩
解)はkompren暮Oと同義であって、・adは冗語 となっている。silnldeltenladlo
(自制)はdetenlisiln(自分を離 してお く)がsiJnldeJtenJo(自制)とい う合成語 とな り、さらにsilnldeltenladloとなったものである.やは りこの場合 も ・adは 冗語である.同様 にsiJnlforgesJadlo(自分 を忘れ ること)はforgesisin(自分を 忘れ る)か らsilnlforgeslo(忘我)が作 られ、それに さらに ・adが冗語的に付い た形であ り、またsiln暮tenladlo(態度)はtenlisiln(振 る舞 う)か らsiInJtenlo
(態度)か ら作 られ、それにさらに ・adが冗語的に付いた形である。動詞の場合 は、
sin(自分 自身を)が 目的語であるため、結合 して合成語 となることはない。
ニューエル訳 に見 られ る動詞語幹に ・adoを付 けて名詞化 した語 (15例)0
*drinkado(飲酒、深酒)、丘agado(下劣な行動)、gemado(うめくこと)、kriado (叫び続 けること)、maneado(食事)、mensogado(嘘 をつ くこと)、★nesciado (無知)、★pafado(射撃)、preparado(準備)、prezentado(上演)、regado(支 配)、repetado(反復)、★skermado(フェンシング)、studado(研究)、traktado (論議) (咋ロは両訳書で使用 されている語)
これ らの ・ado形は行為の意味をはっき りさせ る効果 を持 っている。た とえば、
krili(叫ぶ)とい う動詞の語尾を ・Oに変 えれば、krHo(叫び、叫び声)とい う名詞 ができるが、これに対 してkriladloは 「叫ぶ行為」、「叫び続 けること」 とい う行 為 の意味をはっき りと示す働 きがある。あるいはmensogli(嘘 をつ く)か らできた mensogloが 「嘘、虚言」を意味す るのに対 して、mensogladloは 「嘘 をつ く行 為」を意味す る.同様 に、gemli(うめく)の名詞形 色emioが 「うめき声」を表す のに対 して、倉emladloは 「うめくこと」とい う行為 を示す。
次に多いのが動詞語幹に・adiが付いて 「継続」、「反復」を強調 した動詞 (上記 (4) の種類)であ り、これには次のよ うな語が見 られ る。
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