航空機ファイナンスにおけるリスク管理
その他のタイトル Risk Management in Aircraft Financing
著者 羽原 敬二
雑誌名 關西大學商學論集
巻 41
号 5‑6
ページ 275‑298
発行年 1997‑02‑25
URL http://hdl.handle.net/10112/6501
6 (1997 2
(
275) 19航空機ファイナンスにおけるリスク管理
羽 原 敬
I
は じ め に
航空会社の最も大きな資産は,航空機であり,通常は,航空機を自己所 有して運航するのが原則である。しかし,それでは多数の高額の航空機を 所有する場合に資金的な余裕が十分でなかったり,長期的な資産繰り計画 がうまくいくとは限らず,多額の負担になるという問題が生じる。こうし た事態に対処するため,航空機購入の最適な資金調達方法を惟界中の航空 会社に提供する航空機ファイナンス業務においては,各国の法律およぴ税 制等を理解し,より有利な資金調達手段を作り出す高度な財務上の技術力 が必要とされる。さらに,航空機の鑑定,整備や需要動向の把握,航空会 社への販売チャネル,国際法務問題などについても,専門性の高い実務上 の知識が要求される。たとえば,最近では,米欧の航空機販売商戦が激化 するなかで,新しい手段として,航空機ファイナンスの証券化が導入され つつある。
航空機ファイナンス
1)は,航空運送事業の中心母体である航空会社(航空 機運航者)すなわち借手
(lessee)としての立場からと,金融市場における 主体としてのリース会社や金融機関すなわち貸手
(lessor)としての立場か
l) 航空会社が航空機製造会社等から機材を購入•取得する場合に,利用される金融
の総称である(冨田鋼一郎「航空機リースの急成長」『ていくおふ』
No.48, 1989年 ,
38ページ)。
20 (276)
第
41巻 第
5• 6号合併号
らの両方の視点において検討される必要がある。本稿では,主に貸手の側 から航空機リース
2)事業がどのように展開され,またリスク処理手段がど のように利用されているのかという点について,考察してみることとした。
II
航空機ファインナンスの進展
現在の航空機ファイナンス市場における資金需要は,特にバプル崩壊以 後低下傾向が見られ,航空会社の不況等で,航空機の購入が落ち込んでい
2) リース
(lease)という用語は,賃貸借契約を意味しているが,一般的には,一方 の当事者が賃貸人・レッサー
(lessor)となり,賃借人・レッシー
(lessee)である 他方の当事者に対して,一定の賃貸料その他の付随的サーピスの対価を受け取るこ とを条件として,一定期間財の使用と占有を認める契約をいう(神戸大学会計学研 究室編「会計学辞典』同文舘,
1,259ページ),と理解されるが,国際的に統一され たリースの定義はなく,会計,税務,企業金融など,立場によってそれぞれ定義さ れている(松岡憲司「賃貸借の産業組織分析』同文舘,
1994年 ,
9ページ)。
わが国のリース会計基準では,特定の物件の所有者たる貸手(レッサー)が,当 該物件の借手(レッシー)に対し,合意された期間(リース期間)にわたり,これ を使用収益する権利を与え,借手は,合意された使用料(リース料)を貸手に支払 う取引と定義している(「リース取引に係る会計基準に関する意見書」企業会計審議 会平成
5年
6月)が,民法および商法においては, リースの概念が特に規定されて いない。ここでのリース取引の範囲は広く,通常リースと呼ばれているもの以外に,
レンタル,チャーター,賃貸借などが含まれる。
広義のリースは,賃貸借全般を意味するが,狭義のリースは,金融的性格の強い ファイナンス・リースを意味する。リースは,一般的にファイナンス・リースとオ ペレーティングリースに分類されるが,レッサー側とレッシー側とで同一に分類さ れるイギリスのリース分類基準と,そうではないアメリカのものとがある。
リース取引は,賃貸借,金融.売買の異なる目的を同時に達成させる複合的な取 引であるとされている。(秋山政明『リース会計の実務』<第
3版>中央経済社,
1996年 ,
2ページ,太田昭和監査法人編
r新版リースの会計処理と税務』中央経済社,
1995
年 ,
48‑49ページ,小宮山賢「「リース取引の会計処理及び開示に関する実務指
針」の解説」『企業会計』
Vol.46, No. 5, 1994年 ,
113‑120ページ,日本公認会計士
協会会計制度委員会「リース取引の会計処理及び開示に関する実務指針」「企業会計j
V ol.46, No. 4, 1994年 ,
136‑143ページ。)
航空機ファイナンスにおけるリスク管理
(277) 21たが,アジア圏,特に中国を中心として航空需要,更新需要が高まってき ている傾向がある。従って,その需要を満たすための航空機の購入には,
今後ともかなり多額の資金が必要になると予測され,対応策が求められる。
航空会社の機体購入資金の調達方法については,一般の資金調達と同じ ように内部留保や償却を利用する以外に,中古機売却などの内部資金と,
社債発行,金融機関からの借入れ,転換付の証券発行による市場性資金の 導入,およびリースなどのいわゆる外部資金とに分けられる。この外部資 金の調達には,さまざまな金融手段を複合的,多面的に組み合わせた方法 があり,資金調達方法そのものがいろいろと変化してきている鸞必要とな る資金量が膨大なだけに,調達手段の多様化は不可欠である。そこで,航 空会社にとって合理的な航空機調達手段として最もよく利用されているの がリースである。
航空機ファイナンス発展過程をみると,ほぼ
1940年代から
1950年代まで は,航空機の調達費用は,営業収入に比べてあまり大きくはなかったため,
内部資金でそれに対応可能であった。特に高い償却率により,償却金は内 部資金の重要な源泉となっていた。しかし,
1950年代以降は,内部資金だ けでは不十分で,外部資金の調達に目が向けられるようになり,
1960年代 以降,ジェット機が導入されると,借入金で処理をしなければならない財 務事情が生じてきた。大手航空会社は,それに対し金融的にはかなり資金 力を持っており,長期の資金あるいは年金基金,生命保険会社よりの借入 れなどを利用することが多かったが,航空機が大型化,価額が高額化し,
運行機数も多く必要になった。すなわち,ジェット機の大型化,いわゆる 乗客の多量輸送が実現され,航空機の調達費用が高額になってきた。そこ で,最初はエクイティ・ファイナンス(新株発行を伴う資金調達)などに 依存していたが,
1960年代中頃より,機体メーカーから直接購入する以外
3)
松岡憲司,前掲書,
152ページ,冨田銅一郎『航空機ファイナンスの現状と将米』
航空政策研究会,
1990年 ,
12‑13ページ。
22 (278)
第
41巻 第
5• 6号合併号
に , リース方式が登場することとなった。
1970年代には,直接購入からリ ースによる機材調達が一般化した時代であった丸
1978
年にはアメリカ国内の航空規制緩和による影響が大きく表われ,航 空業界の競争が激化し,金融的にかなり苦しい立場に陥った航空会社がリ ースを用いると同時に,多様なファイナンス手段を利用するようになって きた。とりわけ,先行き不透明で, しかも航空機の需要予測がかなり困難 な時代には,一般のファイナンスとして航空機を購入する,あるいは自己 所有するよりも, リースによる手段を採用して,資金的な活用,資金繰り を向上させる方法を選ぶことが考えられる。
日本における海外リース取引に関する動きとしては列
1978年(昭和
53年)に,政府が外貨準備高急増に対する減少対策として,輸入物件に対し
日本輸出入銀行による緊急輸入外貨貸付制度を適用したことが挙げられ る。この対象として大きくとりあげられたのが航空機の輸入であった。し かし,多数の航空機を輸入しても,国内航空会社
3社の需要と関係もあり,
ここで脚光を浴ぴたのがリース会社による航空機の輸入および海外航空会 社へのリースであった。この場合, リース契約の対象となった航空機の購 入金額は
100億円以上の巨額であるため,航空会社
1社に対する与信リスク は非常に大きくなる。したがって,単一のリース会社が貸手となっている 場合,万一借主である航空会社に信用不安が起こったときは,貸手である リース会社の経営にも重大な影響を与える可能性がある。そこで,貸手側 の与信リスクを分散する手段として,数社のリース会社が共同してリース を行う,いわゆる協調リース契約方式が採用されることになった。
すなわち緊急輸入の代金には輸銀の外貨貸し制度を利用した低利の資金 がリース会社等に融資され,その資金で航空機を購入して海外の航空会社
4)松岡憲司,前掲書, 153
ページ。
5)
角田一雄「国際リースの実務問題」『税務弘報』
Vol.33,No.8,中央経済社,
1985年 ,
77‑78ページ,白木武男「協調リースの実務問題」『税務弘報』
Vol.33,No. 8, 1985年 ,
84ページ,宮内義彦『リースの知識』
H本経済新聞社,
1993年 ,
133ページ。
( 2 7 9 ) 2 3 にリースすることが考案された。巨額の取引となる航空機購入の大部分は 協調リース団が組成され,幹事リース会社に対して貸し付けられた日本輸 出入銀行の資金は,協調リースの参加会社に転貸しされ,参加会社はその 持分に応じて航空会社に対する与信リスクを負担する形をとった。この制 度は海外の航空会社に大きな関心を呼ぴ,いわゆるサムライ・リースとし て
1979年
3月までに航空機数
31機,購入額ベースで総額
9億
3400万米ドル のリース実績を上げ, 日本の外貨事情に対する対外摩擦の緩和に大きな貢 献をなすとともに, リース取引の海外展開においても効果的な役割を果た
した。<資料 1 >
<資料
1>航空機リースの仕組み(シンジケートの組成)
協 調 リ ー ス 団
機材の選定・決定
そ の 後
1980年
12月にわが国の外国為替法の改正・施行により,外為法 の基本理念が原則禁止から原則自由へと転換し, リース会社が在外貨物を 非居住者から購人したため,それをさらに非居住者にリースまたは割賦販 売する取引が,対価の受払いを特殊決済方法に該当しない方法で行うかぎ り,規制を受けないことになった。この外為法改正により,わが国のリー ス会社は,海外とのリース取引(クロスポーダー・リース)が行えるよう になり,世界の経済情勢もリース会社にとって都合のよい状況であった。
つまり,世界同時不況による資金需要の停滞のため国内金融機関の低利・
24 (280)
第
41巻 第
5• 6号合併号
安定資金の流出により割安な国内円資金が調達しやすくなったこと,およ ぴアメリカの高金利による低利の長期固定資金の不足ならぴに原油価格の 上 昇 等 に よ る 航 空 会 社 の 業 績 悪 化 に 帰 因 す る 資 金 需 要 の 高 ま り な ど で あ る。このような環境下において,国際リースとしてのクロスポーダー・リ ースは,外貨建てによる国際航空機リースに代り,同じような協調方式に よる国内円資金を利用した円建ての国際航空機割賦売買取引,いわゆるシ ョーグン・リースが主流を占めるようになった。
当時は
1ドル
260円で円高基調であったが,やがてドル金利が落ち着く と,将軍リースも実施できなくなった。金利先物,為替先物,オプション によるデリバテイプ市場もまだ十分発達していなかったため,それからし ばらくの間は「籠抜けリース」と呼ばれる規制外の取組みが散発的に行わ れた叫
航空機ファイナンスに関しては,後進国では国威による航空機の調達,
先進国では輸出金融または税務指向的な取組みが中心となっている。
日本で最初にレヴァレッジド・リースが取り組まれたのは,
1985年
2月 に当時のオリエント・リース(現在のオリックス)と H 本貨物航空との間 で,ポーイング
747‑F型機に対して契約された航空機リースである。これ は,アメリカのレヴァレッジド・リースを改良して日本の税制度にあうよ うに修正した日本型レヴァレッジド・リース,通称ジャパ・レヴァと呼ば れるものであった。<資料 2 >
このリース・システムは,税法上の耐用年数よりも長いリース期間を設 定することによって生じる償却メリットを利用するものであり,航空機リ ースの分野において多くみられ積極的に活用されている。ただし,日本型 レヴァレッジド・リースについては,課税上の弊害が指摘されたことから,
国税庁より
1988年 ( 昭 和
63年)に通達が出され,これによりリース期間が 法定耐用年数の
120%を超えるリース取引はリースと認められなくなり,制
6)
三井リース事業業務部編『リース産業界』教育社,
1994年 ,
119‑127ページ。
く資料 2 > 日本型レヴァレッジド・リースの仕組み
リース契約 リース料
約が加えられている丸
匿名組合契約により 購入価額の
20%出資
購入価額の
80%融資
(通常ノン・リコース)
借入金返済
現在注目されているオペレーティング・リースは,航空機メーカーの販 売代理店として業務実績をもつ総合商社が取り扱っていたが.今後航空機 ファイナンスの分野で成長が期待され, リース会社も参入を図っている。
オペレーティング・リースは.収益性が高いが, リスクも大きい事業であ るため. リスク管理が重要であり,世界的な情報力,機体に対する専門知 識強力な資本力に基づく国際的な財務体制およぴ強固な協調体制の確立 が不可欠とされている丸
7)
[ i ] 上書.、品
1.li鋼一郎.前掲書.
20‑23ページ。
8) 1978
年
7月に政府が緊急輸入外貨貸し制度を設け.外国製の航空機を買い付けた 海外の航空会社(国内の航空会社も同様)でもリースをすれば. H 本の輸入として
u 本輸出入銀行が1
0億ドルの枠で外貨を低利で(当時ドルの長期金利水準は
2桁に 近かったが.この制度では 8 %台)貸し付けられることになった。これがサムライ・
リースという名称で呼ばれていた。しかし.
1:1本で輸入通関を受けなければ輸入に 計上されないことが判明し.
1年ほどで廃止になった。
サムライ・リース以後航空機ファイナンスの知識・経験と人材を得た
11本のリー ス会社などが.当時のドル金利に比べ非常に安い円金融を提案しサービスに努めた ため.円建ての民間資金による航空機リースが始まった。これを将軍リースと呼ぴ.
純民間金融であるが.当時同名の小説が有名になったため.それが 1 昔用されたもの
26 (282)
第
41巻 第
5• 6サ合併号
I I I 航空機ファイナンスの形態
リースの形態叫こは,①個々の航空会社の信用力に基づき航空機購入資 金を融資する,通常の融資と同じファイナンス・リース,②節税目的で行 うレヴァレッジド・リース,③航空会社への侶用よりも,機体の資産とし ての価値に依存したアセットベース・ファイナンス
10)であるオペレーティ ング・リースが挙げられる。
ファイナンス・リースは,最も碁本的なリース形態であり,ほぼ
10年か ら
15年の長期契約で,航空会社が実質の航空機所有者になる。したがって,
リスクや管理の責任は,航空会社が負担することになる。
1970年代にわが 国の外貨減らしのために行われたサムライ・リースと言われるものも,政 府の輸出信用制度を活用した低利の貸付金制度により,ファイナンス・リ ースを利用した方法である。これには,信用力を高めるための金融機関の
である。しかし,
1ドル
260円ぐらいであった 1 リの為替が
200円に近づくと,為替リ スクに対する特戒感が高まり,その後の取引はできなくなった。
航空機は購入金額が大きいので,与伯
l)スクを分散させるため,航空機リースで は蔽
iネ
l:やリース会社が取組みのシェアをシンジケーションの形で分担していたが,
L
1
本刑レヴァレッジド・リースでは一般の企業が出資者として参加している。各持 分は,サムライや将軍リースから比べると小さく,参加する側からもリースを受け る側からも,多数の参加をうまく処理することが望まれ,その手段として
2種類の 組合方式が用いられている。任意組合
(NinniKumiai ; N K)は,民法に甚づく組 合員が物件を共同で所有し,それぞれが契約の当事者となり,共同レッサーとして リースする形態である。これに対し,匿名組合
(TokumeiKumiai ; T K)は,両 法に規定されており,営業者と組合員の区別があって,営業者が第三者に対して権 利・義務閾係を持つが,組合員は単に営業者に出資してその損益の分配に与えるだ けの関係で,第三者に対しては権利・義務関係を持たない形態である。(舟橋克剛『レ ヴァレッジドリース日本型』社団法人金融財政事梢研究会,
1995年 ,
57ページ。)
9)
松岡憲司,前掲書,
153‑154ページ。
1 0 ) 貸出金の桓l 収を主として機体の価値に依存するファイナンスである。すなわち,
リース案件に関するリスクの審査甚準に機体の価値リスクという尺度を採り入れた
ものである。
協カ・協調があったが,結局はファイナンス・リースの一形態と考えられ るものである。
これに対して,レヴァレッジド・リース<資料
1>は,購入価額の
2割 から
4割を出資し,機体の名義上の所有者となることにより,借入れを行 なって節税する方法である。この節税の仕方により,アメリカ型と日本型 に分けられる。このレヴァレッジとは,テコのことで,アメリカにおいて 発達した手段である。すなわち,テコの原理を使うように,少ない自己資 金の負担で大型の高価な物件を買うごとく,航空機リースを行うことであ る。このレヴァレッジド・リースに参加する投資家は,自己資金として,
出資金を一定額(通常
20%程度)を負担し,残額を銀行等金融機関から借
<資料 1 >レヴァレッジド・リースの基本構成
出 資 者
(Equity Investor)信託配当金
̀ ス : ] ] 儡
I機材購入資金
所有主受託者
(Owner Trustee)レッサー
(貸手) 長期資金
貸付契約 保
約 担
※ 2 契
契約受託者
(Indenture Trustee)長期資金提供者
(Debt Lendor)材 却 機 売
リース料
元本・金利の返済 機材購入資金
支払
製 造 業 者 ※
1出資(機材代金の
20 40%)※ 2 リース債権・抵当権譲渡
28 (284)
第
41巻 第
5 ・ 6号合併号
り入れることにより,わずかな出資金で物件全体の減価償却費と借入金に 対する支払金利を費用として計上できる利点がある。この投資家に対する 利点をリース料軽滅の形で,ューザー(レッシー)である航空会社に還元 するリース方式である。このシステムは,アメリカと日本の節税の違いが あるため, 日本の場合は,わが国の制度に対応できるようにアメリカ型を 改良したものである。あくまでも,税務上の利益を追求することが目的で あるが,これについては租税条約等を利用したタックス・スペアリング・
リースや,国ごとの税法の違いを活用して,借手と貸手がそれぞれの国で 償却を得る方式のダブル・ディップ・リース
II)などが挙げられる。
オペレーティング・リースは,安定した航空機の担保価値を背景に, レ ヴァレッジド・リースからさらに進んで,投資家が航空機の価値に着目し て資金投資を行うものである。当然リスクが数々伴うが,多様なニーズに 対して利点を半受する可能性があるために生まれたものである。ファイナ ンス・リースが,主として新造機の導入に必要な資金の融資に近いリース 形態であるのに対し,オペレーティング・リースは,中古機,新造機を問 わず航空機の資産価値について,貸手(レッサー)が主にリース契約終了 時のリスクを負うリース形態である。オペレーティング・リースは,様々 な仕組みの組成が可能であるが,大きく 3種類に分けられる。
最も甚本的な形態である匿名紺合方式・
1賞却型オペレーティング・リー ス(第
1類型) <資料
2>は,一般には利益の繰延べを目的としており,
出資金の
2倍前後の課税所得を繰り延べることが可能である。また,商法 上の規定の匿名組合方式に基づく出資により,出資金は貸借対照表上投資 勘定に載るため,会計処理上も簡便である。さらに,借入金部分に関する 金融機関の設定およぴ案件全般にわたり,アレンジャーであるリース会社
1 1 ) 海 外 向 け I I 本型レヴァレッジド・リースのレッシーに外地で節税能)]のある法人
をサブ・レッサーとしてあて, もう一方の本来のレッシーにサプ・リースさせ,そ
のサプ・レッサーにも現地の 1 賞却などタックス・メリットをとらせ,最終リース料
を 引 き 下 げ て 競 争 す る も の ( 舟 橋 克 剛 , 前 掲 翡
221ページ)。
<資料
2>( 第
1類型)匿名組合方式・償却型オペレーティング・リース
①匿名組合契.一
に基づく出資
匡. I i
日⑧事業損益分配
(購入価額の約25%) ( 契 約 )
②資金の借入(購入
⑤機材のリース 価額の約 75%)
(リース契約) リース会社
(営業者) (金銭消費貸借契約)
⑥リース料の支払 ⑦借入金の返済
④機材購入代金 支払
(100%)機種の選定・決定
が手続きを行うので,投資家の手続きも簡単である。
これに対して,任意組合方式・ 1 賞却型オペレーティング・リース(第
2類型) <資料 3 > は,民法上の組合契約に基づき,投資家が航空機を所有 する方式である。投資家が単独ならば,任意組合組成の必要はない。一般 に,この事業に投入した資金の
2倍ほどの課税所得を繰り延べることがで きる。また,共有持分に応じて資産と借入金を貸借対照表上に計上するた め,資産・負債とも膨らむ資産効果が得られる。なお,投資に際しては,
投資家は定款に航空機賃貸業を加える必要がある。さらに, リース料の入 金,借入金の元本・金利返済等の入出金処理に加えて,減価償却等に関す
る会計処理が必要となる。
以上の他に,単独所有方式・資産型オペレーティング・リース(第
3類
型)は,第
2類型と同じ仕組みで,資産効果とキャピタルゲインを得るこ
とに重点を置いた方式であるが,物件の
30%程度の資金で大きな償却資産
を持つことができる点に特徴がある。
30 ( 2 8 6 ) 第
41巻 第
5• 6号合併号
<資料
3>( 第
2類型)任意組合方式・ 1 賞却型オペレーティング・リース
任 意 組 合
( ? 竺 ] ) 竺 ( 9 □ : 9 『 」
⑤リース料の支払 鼠 鼠 鼠
①資金の借入
(購入価額の 約
75%程度)
⑥借入金の返済
③機材購入代金の支払
⑦リース期間満了後の
②機材の購入 \ 機材売却
(投資家が単独の場合は,任意組合組織の 必要はなく,任意組合=投資家となる。)
w
航 空 機 リ ー ス 事 業 と リ ス ク 処 理 1 ファイナンス・リースの特徴
国際航空機市場
(中古機業者)
ファイナンス・リースの主な特徴としては,以下の事項が挙げられる。
( 1 ) リース契約期間中に借手 ( l e s s e e ) は,取得価額を全額支払わねばなら ない,フル・ペイアウト
(fullpeyout) である。したがって,貸手は, リ ース期間中に投下資金の金額が返還されることを期待できること。
( 2 ) 1 0 年から 15 年の長期にわたるリース契約であり,当該資産としての航 空機の耐用年数が, リース期間にかなり近いこと。
( 3 ) リース期間満了後における資産としての航空機の持つ残存価値をほと んど考慮していないこと。ファイナンス・リースでは,通常資産が借手に 移転するが,買手がない場合もあり,また非常に安い価額でオプションの 対象となる方法もある。
( 4 ) 資産を貸手に返還する時期については,フル・ペイアウトの期間が満
了しない限りは返還できないこと。つまり,原則として中途解約はできな
い。やむをえず中途解約する場合には,残存債務を金額支払わねばならな
し 、
゜
( 5 ) 貸手が機材を選択することはないこと。一般に.借手が条件に合った 機材を選ぴ,貸手がそれを購入して貸付ける手配をする。
( 6 ) 完全にネットであること。つまり,借手が当該資産についての保険.
税金,修理費など,すぺての費用を負担する仕組みになっている。
以上より,ファイナンス・リースでは.取引上貸手が所有しているとい うよりも,むしろ実質的には借手が所有している状態で所有者に近い地位 にあり,貸手は金融上の利益を得て,担保を付け融資する融資者の立場に あるといえる。実質的に販売に近く,割賦購入に近い金融の一形態として,
機材所有に伴う種々のリスクは.借手によって負担されている
12)ファイナンス・リースの形態と関係当事者にとっての利点およぴ欠点に ついては,次のように概略することができる
13)0形態 関係当事者 利 点 欠 点 その他の影響
①ローン 航空会社 ●キャッシュ・フ ●貸借対照表 J : に ●機体を資産 ロー上,機体購 長期借入れとし として l i t 」 ・ ・ 最も単純なフ 入資金の負担を て記帳されるた するため,
ァイナンスの 長期に繰り延べ めに.負債/
11航空会社が 形態で.長期 ることができる。 己資本比率 減価償却を の借入れを行 ●機体の所有権は,
(Debt/Equity行うことに ぃ.航空機の 航空会社に帰属
Ratio)が 悪 化 なり,航空
購入資金に充 するため.機体 する。 会社が充分
てるもの。 価額が高鵬して な課税所得
いる時期であれ を計上して
ば.機体を売却 いる場合に
し.借入金は期 は.節税効
前弁済すること 果が得られ
によって売買益 るが,逆の
を得ることがで 場合には負
きる。 担となる。
貸手 ●純粋な金融取引 であり,貸手は,
12) Bruee M. Buck,
「航空機のオペレーティング・リース」『リース』
1989年
3月号,
2 3
ページ。
13)
安野健二「航空機ファイナンスの損得計尊」[航空梢報』
1987年
11月号.
92‑93ペ
ージ。
3 2 ( 2 8 8 ) 第
41巻 第
5• 6号合併号
形態 恨
1係当事者 利 点 欠 点 その他の影饗 金利利鞘および
手数料を期
1寺で きる。
製造業者 ●機体の売買契約 は,航空会社と 製造企業との間 で 直 接 締 結 さ れ.ファイナン スには通常製造 業者は
1具
Vj・しな いが,信用力が 著しく低い航空 会社に対して査 金調達を行うこ とが蔽大の販売 手段となること もあり,製造業 者が副次的に資 金調達の利益を 享受する場合が ある。
●製造業者も森金 調達に積極的に 関与せざるをえ ない環境になっ てきている。
②割賦販ぅピ シンジケート ローンの場合と同 ローンの場合と詞 団は,契約上 じ 。 じ 。
I { l i 事会社, リ 機体売買の当 ース会社呼が 事者にはなる シンジケーシ が.機体の仕 ョンを組成す 様・機能等に ることによっ ついては一切 て機体を購人 関与しない。
し,航空会社 に延べ払いの 条件で売却す るもの
③レヴァレッ 航空会社 ●投資家は,貨借
ジド・リース 対照表上の資産
として機能を計
税務上の特典 上し,滅価倣却
を利用したリ を行うことによ
ースの一種。 る節税効果を利
商事会社やリ 用して, 自己の ース会社等が 投資利
I!!.l りを確
製造業者から 保する。結果と
形態 関係当事者 利 点 欠 点 その他の影響
機体を購入の して航空会社は
うえ課税所得 投資家出資分に
を計上してい つき,ほぼ無利
る投資家に対 子の資金を調達
し延べ払いで したのと同様の
売却,投資家 効果を得る。全
が航空会社へ 額割賦販売を受
リースするも けるのに比べて
の 返済費用は安く
なる。
貸手・製造業 ローン・割賦販売
者 の場合と同じ
2
レヴァレッジド・リースの特徴
レヴァレッジド・リースの特徴については,以下の点が一般に指摘されて いる。
( 1 ) レヴァレッジ(テコの作用)効果
出資金額の約
4倍の大型償却メリットを享受できる。
( 2 ) 利益の繰り延べ
出資金額の約
2倍の課税所得を繰り延べることができる。
( 3 ) 会計処理の簡便性
匿名組合方式による出資のため,会計処理が簡単である。
( 4 ) 税務上の取扱い
国税庁の通達等により,税務上の諸基準が整備され,制約は課されて いるが,対策を講じておくかぎり,安全に投資できる。
3
レヴァレッジド・リースのリスクと対応
14)レヴァレッジド・リースのリスクは,法令の改廃により影響を受けるリ スクなど経済環境の変化に伴うリスクと, リース物件事態の損害などによ るリスクであるリース契約事態に内包するリスクの二つに大きく分けられ
14)
太田昭和監査法人,前掲書,
221‑222ページ。
3 4 ( 2 9 0 ) る 。
( 1 ) 税率の変更
第
41巻 第
5 ・ 6号合併号
レヴァレッジド・リースによる利益の繰延は,将来的に税率が下がるこ とが予想される場合により有効となり,税率が上がる場合,利益の繰延効 果は薄れる。すなわち,税率が下がれば有利となり,税率が上がれば不利
となる。
( 2 ) 通達等による規制
過度な節税の享受に対しては, レヴァレッジド・リースの組成について 通達等で規制を設けることが考えられる。通達等で制約を課せられれば,
その範囲内で組成せざるをえなくなり,節税メリットが減少する。
( 3 ) 減価償却率の変更
減価償却率が変更されると,損金に計上される滅価償却費の額が変動す るため,節税額も影響を受けることになる。すなわち,減価償却率が高ま れば有利になり,逆に減価償却率が低くなれば不利となる。
( 4 ) 為替リスク
入金されたリース料は,借入金返済(外貨建)と出資金に対するリター ン(円建)に充当される。この際のリース料の支払いは,借入金返済部分 が外貨建で支払われ,出資金に対するリターン部分は円建で支払われるた め,為替リスクの影響は受けない。
( 5 ) リース物件の事故による損傷
リース物件に事故が発生し,一部破損または全損になる場合がありうる。
リース物件には保険が付されており, リース物件の事故によるリスクは保 険金で手当されることになる。
( 6 ) リース物件使用者の破産
リース物件使用者が破産し, リース料の支払いが不能になることが発生
しうる。この場合の損害は,原則として出資者が出資割合に応じて負担す
ることになる。ただし, リース物件の処分が可能であるため, リース物件
の価値が十分にあれば,損害を最小限にとどめることができる。
4
オペレーティング・リースの特徴
15)( 1 ) 貸手は,複数のリース契約または資産の販売により,元本回収と利益 を得ることを計画する。
( 2 ) ファイナンス・リースでは, リース期間が通常 1 2 年から 1 5 年であるの に対し,より短<,
3年から
7年またはさらに短期間で設定可能である。
( 3 ) リース期間満了後,所有権が借手に移転しない。貸手が所有権を留保 して機材を返還されると,航空機を処分する,つまり売却するかまたは改 めてリース契約を継続するかという意思決定が可能である。したがって,
リース期間満了後の時点で機材の残存価額が貸手の利益に非常に影響を与 える。すなわち,売却する場合,航空機の資産価値についてリスク(アセ ットリスク)を負うことになるが,航空機市場の動向およぴ中古機市場の 相場によっては,キャピタルゲインを得ることも可能となる。
( 4 ) 弾力性がある。
特に,返還時期については期間の調整ができる場合が多いが,このよう な弾力性はファイナンス・リースには見られない。
( 5 ) ファイナンス・リースの場合には,利用者である借手が必要な機材を 入手・確保するが,オペレーティング・リースでは,貸手が必要な機材を 購入した後,借手を求めることになる。ファイナンス・リースは,金融を 売る取引であるが,オペレーティング・リースにおける貸手の業務は,金 融と機材を販売する商取引である。
( 6 ) リース会社のネット・リースである。
すべての運営費用等は,借手が負担し,借手が金額をネットでリース料 を支払う。
( 7 ) 航空機自体が資産としてオペレーティング・リースに適した次のよう な利点を持っている。
①高額物件として価値があること。
15) Bruee M. Buck,
前掲論文,
3 〜 4ページ。
36 (292)
第
41巻 第
5• 6号合併号
②重大な技術上の変更が,将来においても大きく影響を与える可能性 がないこと。航空電子機器類の性能向上・改善,騒音防止規制,燃料 節約技術などは,技術革新が著しく進展することが考えられ,中古機 への適用も求められるが,それによって中古機の価値がまったくなく なることはまずありえない。
③航空機の耐用年数が非常に長いこと。
④燃料費が現在のところ比較的安価であること。
⑤航空機市場においては,代替性が高いこと。
( 8 ) レッサーは,航空機を購入の上所有し,減価償却を行うので,当面の 事業収支の赤字によって利益の繰り延べ効果が得られる。
( 9 ) 航空機の整備および保険管理は, リース契約上物件使用者としての航 空会社に義務付けられているので,レッサーにとっで煩雑な業務の負担が 軽減される。
5
オペレーティング・リースの関係当事者にとっての利点および問題点
16)( 1 ) 航空会社にとっての利点
①キャッシュフロー上も,バランスシート上も大きな資金負担および負 債/自己負担比率 (D/E レシオ)の悪化を生じず,機材を調達できること。
ファイナンス・リースと異なり,完全なオフ・バランスシートとなるため,
大手優良航空会社にとっても機材調達の簡便な手法として利用できる。また,
外資不足の状態にある国の航空会社にとっても有益な機材調達手段である。
②旅客動向の変動に対応しやすいこと。
将来の需要予測に基づき策定された中・長期の路線計画を,何らかの事 由により変更する必要が生じた場合,状況に応じて機体の処分や保有機数 の増加などの処置が簡便かつ短期間で行うことができる。
③技術革新への対応が容易であること。
航空機の技術革新の進展は早く,常に航空機に関する種々の新しい航空
1 6 ) 安野健,前掲論文,
93‑94ページ。
技術開発が手掛けられている状況にある。そのため,航空会社にとって機 種選定は重大な意思決定であり,またいったん選定した機種が航空会社の 要求条件に合致しなくなった場合の損失は,無視できないものとなる。そ のため,オペレーティング・リースにより機材を導入することによって機 種選定リスクを極力最小化することができる。
( 2 ) 製造業者にとっての利点
①航空機を安定的に販売できること。
特に評価が確定していない機種に対してまとまった注文量が確保され,オ ペレーティング・リースにより市場に受入られていくことは,結果的にマ ーケティング戦略の手段となる。さらに,航空機の開発決定をする段階に おいて,ある程度のまとまった注文量を得られれば,製造業者としても開 発費回収の予定を立てることができる。
②政情不安,経済力不足,外資不足等のカントリー・リスクが増大して いる国に対しては,外部からの資金援助を得ずに,メーカーだけで航空機 を販売することが困難である。しかしながら,機体を引きあげられること が確実になっていれば,オペレーティング・レッサーは事業活動を行うこ とができる。メーカーにとって,金融機関の協力を得られないような利用 者に対する販売が,オペレーティング・レッサーにより実現することは,
限界的な需要を開発することにもなる。
( 3 ) 製造業者にとっての問題点
①これまでの発注に応じた航空機製造は,需要に応じて供給がなされて きたが,オペレーティング・リースにより需給バランスが乱れる可能性が ある。
②オペレーティング・レッサーが,メーカーと競合関係を生じることが ありうる。柔軟な販売条件で売込み活動を図れるオペレーティング・レッ サーは,メーカーの対抗すべき相手となりうるため,投機的リスクの負担 が大きくなる。
( 4 ) 貸手にとっての利点
3 8 ( 2 9 4 ) 第
41巻 第
5• 6号合併号
①一つの機体を不特定多数の航空会社に
3年〜
5年の期間で貸し繋ぐた め,貸し繋げないリスクに見合った利益を期待することができる。
②短期のリースで貸し繋ぐだけでなく,航空会社の希望によっては,所 有航空機を売却することにより利益を得ることができる。
6
オペレーティング・リースのリスクと対応 ( 1 ) アセット・リスク
リース物件の処分価額により,投資家の当初の投資額を全額回収できな くなるリスクが生じる。したがって, リース物件の選択基準として,重視 する必要があるのは以下の点である<資料
1> 。
①市場性の高い機材
市場性の低い機材はリース期間満了後の処分が困難であり,アセット・
リスクは当然高くなる。市場性は,製造業者,機体の型式,エンジンの型 式,騒音基準,製造機数,使用者数およぴ整備状態などの要因によって大
きく影響を受ける。
②機材購入価額及ぴリース料の妥当性
当初の機材の価額が市場価額より高い場合,および当初の機材価額が妥 当な価額であってもリース料が低い場合には, リース期間満了後に希望す る売却額(残存価額)が市場価額を上回る可能性がある。
( 2 ) 為替変動リスク
通常リース料は米ドル建である。したがって,航空機材の一部をドル建 借入れした場合には,借入部分の為替リスクは回避できる。しかし,自己 資金部分が円資金である(円資金をドル転換する)場合については,円・
ドルの為替変動リスクを負うことになる。すなわち,円・ドルの為替ルー トが円高に進めば,元の円資金を回収するために必要なドル建水準が高く なるために,アセット・リスクも増大することになる。
( 3 ) クレジット・リスク
リース先の航空会社が万一倒産した場合,投資金額の回収には機材の転
売・転リースを行わねばならない。したがって, リース先の航空会社につ
いては,与信力およぴ機材の維持管理機能に優れている航空会社を極力選 定する必要がある。
( 4 ) カントリー・リスク
リース先航空会社の所在する国によっては,有事の際にリース機材を没 収あるいは微用するリスクが発生する国もある。また, リース先航空会社 が倒産した場合にも, リース物件の引上げを認めないリスクが生じる国も ある。したがって,このようなリスクの少ない航空会社を極力選定する必 要がある。
( 5 ) 保険事故リスク
リース機材が保険事故を発生させた場合,機体の残存価値がなくなるが,
航空会社側に機体保険,第三者賠償責任保険,乗客賠償責任保険などを付 するようリース契約上義務づけられているので,保険金によってドル建投 資額相当の回収を図ることができる。しかし,予期せぬ時期に保険金収入 による大きな利益が上がってしまうことになる。
7
その他のリース形態,ウォークアウェイ・リースの特徴
17)航空会社に対して中途解約の権利を与えており,ファイナンス・リース とオペレーティング・リースの中間的な仕組みを持つ形態である。期間は 長期にわたり,本質はファイナンス・リースに近いものである。通常のフ ァイナンス・リースの場合は,中途解約は中途買い上げ,すなわち期前弁 済を意味するが,ウォーアウェイ・リースは,中途で航空機を返却するこ とにより一切の契約関係を破棄することができる。ただし,いつでも返却 できるオペレーティング・リースとは異なり,特定の時期(たとえば 5 年
目または
10年目)を定め,返却のオプションを認めている。
( 1 ) 航空会社にとっての利点
基本的にはファイナンス・リースであるため,負担する費用は長期のフ ァイナンス・リースとほぼ同等であるが,特定の時期に機体を返却できる
17)同上. 94
ページ。
4 0 ( 2 9 6 ) 第
41巻 第
5• 6号合併号
ため,オペレーティング・リースのもつ柔軟性も享受できる。ただし,現 実には,返却条件の調整も難しく,航空会社にとって有利な点が多いため,
極めて優良な航空会社でなければ,これに類似した仕組みで航空機を導入 することは困難である。
( 2 ) 貸手にとっての利点
①特定の時期に返却のオプションを認める以上,それに見合った利益を 求めるため,その分だけ通常のファイナンス・リースより高い利益を期待 することができる。
②機体が返却された時点で第三者に高く売却できれば,その差額が利益 となる。
( 3 ) 製造業者にとっての利点
機体の販売という点からは,有利不利はないが,新開発の航空機を販売 拡大していくためには,製造企業が積極的にリース事業へ関与していくこ
とおよび新しい手法の開発が促進されることになる。
<資料
1>アセットペース・ファイナンスが着目される背最 航空会社 多額の資金需要
資金調達能力の拡大 金融機関 リスク軽滅手段の開発 製 造 業 者 新 世 代 航 空 機 の 開 発
派生型開発•生産体制の確立
売込み競争の激化
新造機の生産価額上昇 環 境 条 件 航 空 規 制 緩 和
(deregulation)航空会社の民営化
(privatisation)環境対策
騒音規制 空港条件 新規路線 旅客需要
航空機需要(新規•取替え)
V おわりに一ー航空機リース債権の証券化と今後の動向一_ー 航空機リースの処理手段に新しいさまざまな広がりがでてきているが.
その一つが航空機ファイナンスの証券化である。
H 本で手掛けたのは,大和証券の英国現地法人である。マレーシア航空 に対しエアバス
2機を購入するための債券を発行し.それに英国政府の保 証をつけることで信用力を得ることにより,低コストの資金調達を実現す る仕組みができた。いわゆる資本市場での調達に英国政府機関が保証する 方式をとるため.プロジェクト・ファイナンスにも応用可能であるが.こ うした航空機リース債権の証券化(
SecuritizingAircraft Leases)は . リ ース・ファイナンスの需要の増大に対応する解決策として考え出された手 法である。つまり.資金供給源を増やすため.小口証券化によって多数の 投資家の資金を利用することができる。この案件では.大和証券が英国に 特別会社を設立し.この会社が債券を発行する形態をとっている。そして.
債券の発行により調達した資金をマレーシア航空に貸付け,その際に英国 政府の
ECGD(輸出信用保証局)がこの貸付けに保証をつけている。この 英国の輸出保証局が.商業銀行の融資以外に資金調達に関与する結果.マ レーシア航空にとっては通常の銀行からの借入れよりもずっと低いコスト で資金調達が可能となった。
航空機製造業者にとってみると,エアバスなどはポーイング社にかなり 押され気味で.販売競争力が低下しているが,これを強化する手段として
もセキュリテイゼーション(証券化)が利用できることになる。
これに対応し,ポーイング杜に対しては,アメリカの輸出入銀行が保証 料を引き下げるなどの対抗処置をとっている。こうした航空商戦の激化す るなかで.資金調達が英国政府の保証という形で実施されてエアバスを支 援しており.当然フランス, ドイツなどの輸出保証機関が追随すると考え られる。したがって.航空機に関する資金調達手段の多様化のなかでは.
セキュリタイゼーションがもっと進んでいくと予想される。
以上の事情から判断されるように.航空機ファイナンスについては.今
42 (298)
第
41巻 第
5• 6号合併号
後とも引続き,①全地球規模での情報収集力,②機体に関する広範囲かつ 正確な専門知識,③強力な資本力,④航空機価格および中古機市場の的確 な評価・予測,⑤機体の整備状況およぴ各種規制に対する適応状況の点検,
⑥レヴァレッジド・リースやストラクチャード・ファイナンスなどの仕組 みや手法の開発⑦燃料価格の予想,⑧各国の税制およぴ会計制度の把握,
といったリスク分析に伴う高度な能力が一層求められている。
くその他参考文献>
.嶺輝子『アメリカリース会計論』多賀出版,
1986年 。
•新井清光·加古宜士編著『リース取引会計基準詳解」中央経済社, 1994年。
・服部勝『借手,貸手それぞれの立場から見た新リース会計基準』税務研究会出版局,
1994